以下、本実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態を示す図である。図1に示す移動通信システムは、音声パケットデータを無線で伝送することができる。この移動通信システムは、無線基地局10,10aおよび移動局20を有する。ここで、移動局20の現在の接続先は無線基地局10であるとする。
無線基地局10は、バッファメモリ11および送信部12を有する。バッファメモリ11は、取得した移動局20宛ての音声パケットデータをバッファリングする(ステップS1)。送信部12は、バッファメモリ11にバッファリングされた音声パケットデータが所定量(例えば、N個(Nは2以上の自然数)の音声パケットデータに対応するデータ量以上のデータ量)に達するのを待って、移動局20への音声パケットデータの無線送信を開始する(ステップS2)。音声パケットデータの送信は、例えば、バッファメモリ11の先頭から順に(先に到着した順に)音声パケットデータを取り出して所定の周期で送信することで行う。送信すべき(再生される)音声パケットデータの順とは異なる順で音声パケットデータを取得する場合には、音声パケットデータ等に含まれる順序情報(シーケンス番号等)を用いて順番通りにバッファメモリ11から音声パケットデータを取り出し、送信すればよい。
その後、移動局20が無線基地局10aへハンドオーバを行うことが決定されると、送信部12は、バッファメモリ11にバッファリングされている全ての移動局20宛ての音声パケットデータまたはバッファリングされている複数N個(例えば、2個の音声パケットデータのデータ量以上の量)の移動局20宛ての音声パケットデータを移動局20に無線送信する(ステップS3)。ここで、ハンドオーバ決定後の音声パケットデータの無線送信は、ハンドオーバ前の送信スケジュールに従ったタイミングで行ってもよいし、ハンドオーバ前の送信スケジュールに依存しない任意のタイミングで行ってもよい。また、バッファリングされている音声パケットデータを1回に纏めて送信してもよいし、複数回に分割して送信してもよい。更に、無線伝搬状況により全ての音声パケットデータを送信することが困難な場合、送信可能な分の音声パケットデータだけ送信してもよい。
移動局20は、受信部21および再生部22を有する。受信部21は、無線基地局10が所定の周期で送信する音声パケットデータを無線で受信する。また、受信部21は、ハンドオーバ決定後に、バッファメモリ11にバッファリングされていた全ての音声パケットデータを無線で受信する。再生部22は、受信部21が受信する音声パケットデータを所定のタイミングに基づいて再生する。ここで、再生部22は、ハンドオーバ決定後、無線基地局10a経由での音声パケットデータの受信を開始するまでの間は、受信部21がハンドオーバ決定後に無線基地局10から受信した音声パケットデータを所定のタイミングに基づいて再生する。
このような移動通信システムによれば、無線基地局10のバッファメモリ11にバッファリングされた音声パケットデータが所定量に達してから、送信部12により音声パケットデータの無線送信が開始される。そして、移動局20の受信部21により音声パケットデータが無線で受信され、再生部22により音声再生が行われる。その後、移動局20が無線基地局10aへハンドオーバを行うことが決定されると、送信部12によりバッファメモリ11にバッファリングされている全ての(または複数N個または2個のデータ量以上の量または送信可能な最大限の)音声パケットデータが無線送信される。そして、受信部21により音声パケットデータが無線で受信され、再生部22によりこの音声パケットデータに基づいてハンドオーバ完了前でも継続して音声再生が行われる。
これにより、ハンドオーバの際に移動局20に到着する音声パケットデータが遅延することを抑制することができる。従って、移動局20はハンドオーバ実行中も所望の周期で継続して音声パケットデータを再生することができ、音声再生品質の低下が抑制される。
なお、無線基地局10は、ハンドオーバ決定後、ハンドオーバ前の送信スケジュールを無線基地局10aに通知するようにしてもよい。これにより、無線基地局10aは移動局20への音声パケットデータの送信処理を円滑に引き継ぐことができる。また、無線基地局10は、音声パケットデータが連続的に到着する区間(有音区間)と背景雑音パケットデータが連続的に到着する区間(無音区間)とが交互に現れる場合、有音区間の開始毎に音声パケットデータのバッファリングを行うようにしてもよい。また、無線基地局10は、有音区間後に最初に背景雑音パケットデータが到着した際に、移動局20にその旨の信号を送信するようにしてもよい。これにより、移動局20はより早く受信モードの切り替えを行うことができる。
[第1の実施の形態]
以下、第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図2は、移動通信システムのシステム構成を示す図である。第1の実施の形態に係る移動通信システムは、パケットデータを無線で伝送する通信システムである。この移動通信システムは、無線基地局100,100a,100b、移動局200,200aおよび上位局300を有する。
無線基地局100,100a,100bは、それぞれの電波到達範囲(セル)内にいる移動局と無線通信を行うことができる無線通信装置である。無線基地局100,100a,100bは、上位局300と有線または無線のネットワークで接続されている。また、無線基地局100と無線基地局100aとは有線または無線のネットワークで接続されている。無線基地局100,100a,100bは、セル内の移動局から取得するパケットデータを上位局300に転送する共に、上位局300から取得するパケットデータを無線送信することができる。また、無線基地局100,100aは、ハンドオーバの際、上位局300を経由せずにパケットデータを適切な無線基地局に転送することができる。
移動局200,200aは、無線基地局100,100a,100bと無線通信を行うことができる無線端末装置である。移動局200,200aは、例えば、携帯電話機である。移動局200,200aは、無線基地局経由で他の移動局との間でパケットデータを送受信することができる。移動局200,200aが送受信するパケットデータには、例えば、VoIP(Voice over Internet Protocol)パケットデータがある。
上位局300は、移動局200,200aが現在属するセルを管理し、取得したパケットデータをパケットの宛先に応じて適切な無線基地局に転送する中継装置である。上位局300は、例えば、コアネットワーク内に配置されたパケット交換機に相当する。
なお、無線基地局100,100a,100bと上位局300との間に、他の中継装置を設置してもよい。また、無線基地局100と無線基地局100aとが直接通信を行うのではなく、上位局300経由で通信を行うようにしてもよい。ここでは、現在、移動局200は無線基地局100,100aの電波を受信していると共に無線基地局100を接続先としており、移動局200aは無線基地局100bを接続先としているものとする。
次に、無線基地局100および移動局200のモジュール構成について説明する。なお、無線基地局100a,100bは、無線基地局100と同様のモジュール構成によって実現できる。また、移動局200aは、移動局200と同様のモジュール構成によって実現できる。
図3は、無線基地局の機能を示すブロック図である。無線基地局100は、バッファメモリ110、スイッチ120、スケジューラ130、送受信部140、送受信アンテナ150および制御部160を有する。
バッファメモリ110は、到着したVoIPパケットデータを一時的に格納するメモリである。バッファメモリ110には、2つの格納領域が設けられている。一方の格納領域には、上位局300から受信したVoIPパケットデータが格納される。他方の格納領域には、隣接する無線基地局である無線基地局100aから受信したVoIPパケットデータが格納される。2つの格納領域は、物理的に2つのメモリ装置を設けることで実現してもよいし、1つのメモリ装置の記憶領域をソフトウェア的に2つに分割することで実現してもよい。バッファメモリ110は、制御部160の制御に応じて、格納されたVoIPパケットデータをスイッチ120に出力する。
スイッチ120は、バッファメモリ110から出力されるVoIPパケットデータを、その送信先に応じて振り分ける。移動局200に無線送信するVoIPパケットデータである場合、スイッチ120はそれをスケジューラ130に出力する。無線基地局100aまたは上位局300に転送するVoIPパケットデータである場合、スイッチ120はそれを対応する有線または無線のネットワークに出力する。
スケジューラ130は、移動局200との無線通信に用いる無線リソース(送信タイミングおよび送信周波数帯域)を管理する。スケジューラ130は、スイッチ120から出力されるVoIPパケットデータおよび他のパケットデータを取得すると、送信に用いる無線リソースを特定して、送受信部140にパケットデータを出力する。
送受信部140は、スケジューラ130からパケットデータを取得し、制御部160から無線通信に関する各種制御情報を取得する。そして、送受信部140は、パケットデータおよび制御情報の符号化・変調を行い、送受信アンテナ150に出力する。また、送受信部140は、送受信アンテナ150から受信信号を取得し、復調・復号を行う。ここで得られたパケットデータは、その宛先に応じて転送するために内部に取り込まれ、得られた制御情報は、制御部160に出力される。
送受信アンテナ150は、送信・受信共用のアンテナである。送受信アンテナ150は、送受信部140から取得する送信信号を無線送信する。また、送受信アンテナ150は、移動局200から受信する受信信号を送受信部140に出力する。
制御部160は、移動局200・無線基地局100a・上位局300から取得する各種制御情報やパケットデータの送受信状況に基づいて、無線基地局100全体を制御する。また、制御部160は、必要に応じて移動局200・無線基地局100a・上位局300に対して各種制御情報を出力する。制御部160は、スケジューラ管理部161、測定部162、HO処理部163およびバッファ管理部164を有する。
スケジューラ管理部161は、スケジューラ130を制御し、パケットデータの送信スケジュールを管理させる。特に、スケジューラ管理部161は、移動局200とVoIPパケット通信を開始する際に、Persistent Schedulingを行うことをスケジューラ130に指示する。Persistent Schedulingでは、音声を再生するための音声パケットデータが連続的に伝送される区間(有音区間、Talkspurt区間)と、背景雑音を再生するための背景雑音パケットデータのみが連続的に伝送される区間(無音区間、silent区間)それぞれについて、所定の周期の無線リソースが一括で予約される。有音区間と無音区間とでは送信周期は異なってよい。また、スケジューラ管理部161は、VoIPパケット通信の継続中に、必要に応じて再スケジューリングを行ってもよい。
測定部162は、無線基地局100,100aから移動局200への通信リンク(下りリンク)の無線品質を示す測定情報(Measurement Report)を収集する。測定情報は、移動局200からの制御情報として受信される。測定情報には、例えば、CQI(Channel Quality Information)が含まれている。
HO処理部163は、測定部162が収集する測定情報を継続的に監視し、移動局200についてハンドオーバ(HO:HandOver)が必要か否か判断する。例えば、HO処理部163は、無線基地局100と移動局200との間の無線品質よりも無線基地局100aと移動局200との間の無線品質の方が良好になると、ハンドオーバが必要と判断する。そして、HO処理部163は、移動先の無線基地局(例えば、無線基地局100a)・移動局200・上位局300との間で各種制御情報を送受信し、ハンドオーバ処理を実行する。一方、もし無線基地局100が移動先の無線基地局として機能する場合、HO処理部163は、移動元の無線基地局からの無線通信の引き継ぎに必要な各種処理を実行する。
バッファ管理部164は、バッファメモリ110に格納されているVoIPパケットデータを管理する。具体的には、バッファ管理部164は、有音区間の開始時に所定量の音声パケットデータをバッファメモリ110にバッファリングさせる。その後、有音区間に応じた周期(例えば、20ms周期)で、移動局200宛ての音声パケットデータをスイッチ120に順次出力させる。また、無音区間では、無音区間に応じた周期(例えば、160ms周期)で、移動局200宛ての背景雑音パケットデータをスイッチ120に順次出力させる。
また、バッファ管理部164は、有音区間中にHO処理部163によって移動局200のハンドオーバが決定されると、バッファメモリ110に格納されている全ての(または複数N個または2個のデータ量以上の量または送信可能な最大限の)移動局200宛ての音声パケットデータをスイッチ120に出力させる。なお、設定により有音区間開始時のバッファリング量は変更可能である。また、設定により有音区間開始時のバッファリングを行わないようにすることも可能である。
図4は、移動局の機能を示すブロック図である。移動局200は、送受信アンテナ210、送受信部220、バッファメモリ230、スイッチ240、再生部250および制御部260を有する。
送受信アンテナ210は、送信・受信共用のアンテナである。送受信アンテナ210は、無線基地局100,100aから受信する受信信号を送受信部220に出力する。また、送受信アンテナ210は、送受信部220から取得する送信信号を無線送信する。
送受信部220は、送受信アンテナ210から受信信号を取得し、復調・復号を行って自局宛てのパケットデータおよび制御情報を抽出する。ここで得られたパケットデータのうちVoIPパケットデータはバッファメモリ230に出力され、得られた制御情報は、制御部260に出力される。また、送受信部220は、送信するパケットデータを取得すると共に、制御部260から送信する制御情報を取得する。そして、送受信部220は、パケットデータおよび制御情報の符号化・変調を行い、送受信アンテナ210に出力する。また、送受信部220は、スイッチ240からビット誤りを含むVoIPパケットデータを取得すると、取得したVoIPパケットデータに応じて再送要求を行う。
再送は、次のVoIPパケットデータの送信タイミング(有音区間であれば、例えば、20ms後の送信タイミング、無音区間であれば、例えば、160ms後の送信タイミング)が訪れる前に行うこともできる。
バッファメモリ230は、送受信部220から出力されるVoIPパケットデータを一時的に格納するメモリである。バッファメモリ230に格納されたVoIPパケットデータは、制御部260によってビット誤りの有無が検査される。そして、制御部260の制御に応じて、VoIPパケットデータが順次スイッチ240に出力される。
スイッチ240は、バッファメモリ230から出力されるVoIPパケットデータを、ビット誤りの有無に応じて振り分ける。ビット誤りがないVoIPパケットデータは、再生部250に出力する。ビット誤りがあるVoIPパケットデータは、送受信部220に出力して、再送制御の対象とする。なお、再送処理を効率的に行うために、ビット誤りのあるVoIPパケットデータをバッファメモリ230に残しておき、再送パケットデータと合成(HARQ(Hybrid Automatic Repeat Request)合成)するようにしてもよい。
再生部250は、バッファメモリ251を有している。バッファメモリ251は、VoIPパケットデータを一時的に格納するメモリである。再生部250は、スイッチ240から取得するVoIPパケットデータをバッファメモリ251に格納する。また、再生部250は、バッファメモリ251から、有音区間または無音区間に応じた周期でVoIPパケットを順次抽出し、復号して音声再生(プレイアウト)を行う。
制御部260は、無線基地局100,100aから取得する各種制御情報やパケットデータの送受信状況に基づいて、移動局200全体を制御する。また、制御部260は、必要に応じて無線基地局100,100aに対して各種制御情報を出力する。制御部260は、測定部261、再送要求部262、再生管理部263およびHO処理部264を有する。
測定部261は、無線基地局100,100aから移動局200への下りリンクそれぞれの無線品質を継続的に測定する。無線品質の測定は、例えば、無線基地局100,100aが定期また不定期で送信するパイロット信号を捕捉することで行うことができる。そして、測定部261は、測定情報を現在の接続先の無線基地局(例えば、無線基地局100)宛てに制御情報として出力する。この測定情報には、例えば、CQIが含まれる。
再送要求部262は、送受信部220による再送要求を制御する。具体的には、再送要求部262は、バッファメモリ230に格納されたVoIPパケットデータのビット誤りの有無を検査し、ビット誤りがある場合にはVoIPパケットデータを送受信部220に戻すように制御する。そして、再送要求部262は、再送要求信号を送受信部220に出力し、送受信部220が現在の接続先の無線基地局に対して再送要求を行うように制御する。ここで、再送制御では、誤りを含むビット範囲を特定して再送要求を行い、そのビット範囲に限定してパケットデータを再送してもらうことも可能である。
再生管理部263は、再生部250による音声再生を制御する。例えば、再生管理部263は、VoIPパケットデータの復号・再生を開始するタイミングや、有音区間および無音区間それぞれにおけるVoIPパケットデータの復号・再生周期を指定する。なお、有音区間開始時に音声パケットデータが所定量に達するまでバッファリングを行い、それから音声パケットデータの復号・再生を開始するように制御することも可能である。
HO処理部264は、現在の接続中の無線基地局から制御情報としてハンドオーバ指示の通知を受けると、移動元の無線基地局との間のリンク切断および移動先の無線基地局との間のリンク設定を行う。そして、HO処理部264は、移動先の無線基地局経由でパケット通信を再開するよう送受信部220を制御する。
ここで、有音区間中にハンドオーバの決定がなされると、送受信部220は、移動元の無線基地局にバッファリングされていた全ての(または複数N個または2個のデータ量以上の量または送信可能な最大限の)音声パケットデータを無線で受信する。この音声パケットデータは、バッファメモリ251に格納される。そのため、ハンドオーバの決定から移動先の無線基地局経由による通信再開までの間、音声パケットデータの受信が中断されても、再生部250は当初スケジューリングされた周期で音声再生を継続することができる。
次に、以上のような構成を備える移動通信システムにおいて実行される処理の詳細を説明する。以下では、移動局200が、移動局200aからのVoIPパケットデータを無線基地局100経由で受信し、その後、無線基地局100aにハンドオーバを行うというシナリオを考える。具体的には、(1)VoIPパケット通信の開始前に無線基地局100と移動局200との間でなされるメッセージ送受信、(2)無線基地局100におけるVoIPパケットデータの送信制御、(3)無線基地局100,100aおよび移動局200それぞれのハンドオーバ制御の順に説明する。
図5は、バッファリングメッセージの送信例を示す図である。無線基地局100は、移動局200に対して、VoIPパケット通信の開始前にバッファリングメッセージ141を制御情報として無線送信する。
バッファリングメッセージ141には、バッファリング指示情報(Buffering Indicator)とバッファリング量情報(Buffering Amount)とが含まれている。バッファリング指示情報は、無線基地局100または移動局200による有音区間開始時のバッファリングの有無を示す情報であり、例えば、1ビットで表現される。バッファリング量情報は、何パケット分の音声パケットデータをバッファリングするかを示す情報であり、例えば、2〜3ビットで表現される。バッファリングの有無およびバッファリング量は、固定された値を用いてもよいし、通信状況に応じて動的に決定される値を用いてもよい。
ここで、バッファリング指示情報の意味は複数通りの解釈が可能である。バッファリング指示情報における0,1それぞれが何の意味を有するかは、無線基地局100と移動局200との間で予め合意しておく。以下、3つの解釈例を挙げる。第1の解釈は、0のとき移動局200でのバッファリングは必須とし無線基地局100でのバッファリングは任意とし、1のとき無線基地局100でのバッファリングは必須とし移動局200でのバッファリングは任意とするという解釈である。第2の解釈は、無線基地局100でのバッファリングは必須とし、移動局200でのバッファリングは0のときは行わず1のときに行うという解釈である。第3の解釈は、移動局200でのバッファリングは必須とし、無線基地局100でのバッファリングは0のときは行わず、1のときは行うという解釈である。
このように、無線基地局100および移動局200のバッファリング状況を明確にし、各装置がそれに従うことで、過剰なバッファリングが行われて移動局200と移動局200aとの間の伝送遅延が大きくなったり、バッファリングが不十分なために音声再生品質が低下したりすることを防止し、最適化を行うことが可能となる。なお、バッファリングの有無とバッファリング量の既定値を設定しておき、既定値と異なるときのみバッファリングメッセージを送受信するようにしてもよい。また、バッファリングの有無とバッファリング量の何れか一方のみを含むバッファリングメッセージを送受信してもよい。
この場合、バッファリングメッセージ141には、バッファリング指示情報が含まれず、バッファリング量情報だけ含めることもできる。バファリング量情報は、何パケット分の音声パケットデータをバッファリングするかを示す情報であり、例えば2〜3ビットで表現される。バッファリングの有無およびバッファリング量は、固定された値を用いてもよいし、通信状況に応じて動的に決定される値を用いてもよい。
ここで、バッファリング量情報は複数通りの解釈が可能である。バッファリング指示情報における例えば2〜3ビットそれぞれが何の意味を有するかは、無線基地局100と移動局200との間で予め合意しておく。以下、3つの解釈例を挙げる。第1の解釈は、バッファリング量がある指定量のとき移動局200でのバッファリングは該量だけは必須とし無線基地局100でのバッファリングは任意とするか、無線基地局100でのバッファリングは該指定量だけは必須とし移動局200でのバッファリングは任意とするという解釈である。第2の解釈は、無線基地局100でのバッファリングは必須とし、移動局200でのバッファリング量が0のときは行わず0以外のときに該指定量だけは行うという解釈である。第3の解釈は、移動局200でのバッファリングは必須とし、無線基地局100でのバッファリングは0の時は行わず0以外のときに該指定量だけは行うという解釈である。
図6は、バッファリングメッセージの他の送信例を示す図である。図5に示したバッファリングメッセージの送信例では、無線基地局100が移動局200に対してバッファリングの有無とバッファリング量とを指定するようにしたが、逆に移動局200が無線基地局100に対してバッファリング有無とバッファリング量とを指定するようにしてもよい。ここでは、VoIPパケット通信の開始前に、移動局200が無線基地局100にバッファリングメッセージ221を制御情報として無線送信している。
バッファリングメッセージ221の意味は、前述のバッファリングメッセージ141の意味と同様である。ただし、バッファリング指示情報の0,1の意味付けを逆にしてもよい。例えば、0は無線基地局100でバッファリングを行うことを意味し、1は移動局200でバッファリングを行うことを意味するようにしてもよい。
次に、無線基地局100におけるVoIPパケットデータの送信制御について説明する。なお、以下では、無線基地局100でバッファリングを行うものとする。
図7は、パケット送信制御の手順を示すフローチャートである。以下、図7に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS11]制御部160は、移動局200との間でPersistent Schedulingに関するシグナリングを行う。例えば、制御部160は、RRC(Radio Resource Control)層において無線リソースの設定処理を行い、L1(レイヤ1:物理層)/L2(レイヤ2:MAC(Medium Access Control)層)において変調方式の設定処理を行う。そして、制御部160は、スケジューラ130および送受信部140を制御して、VoIPパケットデータを送信できる状態にする。
[ステップS12]制御部160は、有音区間の開始であるか否か、すなわち、移動局200宛ての音声パケットデータの先頭がバッファメモリ110に到着したか否か判断する。有音区間の開始である場合には、処理がステップS13に進められる。有音区間の開始でない場合には、処理がステップS15に進められる。
[ステップS13]制御部160は、バッファメモリ110にバッファリングメッセージで指定された量(例えば、2〜3パケット分)の移動局200宛ての音声パケットデータがバッファリングされるのを待つ。
[ステップS14]制御部160は、ステップS13のバッファリングが完了すると、バッファメモリ110を制御して、バッファリングされている音声パケットデータを有音区間に対応する周期(例えば、20ms周期)で順次出力させる。これにより、移動局200への音声パケットデータの間欠的・周期的な無線送信が開始される。その後、処理がステップS12に進められる。なお、制御部160は、音声パケットデータを到着順に出力させるのではなく、必要に応じて順序の並べ替えを行ってもよい。
[ステップS15]制御部160は、無音区間の開始であるか否か、すなわち、移動局200宛ての背景雑音パケットデータの先頭がバッファメモリ110に到着したか否か判断する。無音区間の開始である場合には、処理がステップS16に進められる。無音区間の開始でない場合には、処理がステップS17に進められる。
[ステップS16]制御部160は、次に背景雑音パケットデータを送信する順番になると、バッファメモリ110を制御して、バッファリングされている背景雑音パケットデータを無音区間に対応する周期(例えば、160ms周期)で順次出力させる。これにより、移動局200への背景雑音パケットデータの間欠的・周期な無線送信が開始される。その後、処理がステップS12に進められる。
[ステップS17]制御部160は、移動局200と移動局200aとの間のVoIPパケット通信が終了したか否か判断する。通信が終了した場合には、移動局200宛てのVoIPパケットデータの送信制御を終了する。通信が終了していない場合には、処理がステップS12に進められる。
このようにして、無線基地局100は、VoIPパケット通信の開示にPersistent Schedulingを行い、音声パケットデータは有音区間に対応する周期(例えば、20ms周期)で無線送信すると共に、背景雑音パケットデータは無音区間に対応する周期(例えば、160ms周期)で無線送信する。また、無線基地局100は、有音区間の開始時は、所定量(例えば、2〜3パケット分)の音声パケットデータをバッファリングしてから、無線送信を開始する。
次に、無線基地局100,100aおよび移動局200それぞれのハンドオーバ制御について説明する。
図8は、移動元無線基地局のハンドオーバ制御の手順を示すフローチャートである。以下、図8に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS21]制御部160は、無線基地局100,100aと移動局200との間の無線品質を示す測定情報を制御情報として移動局200から取得する。
[ステップS22]制御部160は、ステップS21で取得した測定情報に基づいて、移動局200が他の無線基地局(例えば、無線基地局100a)にハンドオーバを行う必要があるか否か判断する。ハンドオーバの必要がある場合には、処理がステップS23に進められる。ハンドオーバの必要がない場合には、処理がステップS21に進められ、次に測定情報を取得するのを待つ。なお、以下では無線基地局100から無線基地局100aへハンドオーバを行うと決定されたものとして説明する。
[ステップS23]制御部160は、無線基地局100aに対してハンドオーバ要求を送信する。ハンドオーバ要求には、例えば、移動局200の識別情報や移動局200が要求するQoS(Quality of Service)など移動局200に関する情報が含まれる。なお、以下では無線基地局100aへのハンドオーバが許可されるものとして説明する。
[ステップS24]制御部160は、ステップS23で送信したハンドオーバ要求に対する許可応答を無線基地局100aから受信すると、無線基地局100aに対して音声パケットデータについてのスケジュール情報を送信する。スケジュール情報には、例えば、音声パケットデータのバッファリング量、前回スケジューリングを行った時刻、次回再スケジューリングを行う予定であった時刻などが含まれる。
時刻の通知方法は、例えば次の4つの方法が考えられる。(1)絶対時刻指定方法:前回スケジューリングを行った時刻、次回スケジューリングを行う予定であった時刻はそれぞれ移動元基地局が具備している絶対時刻で指定する。(2)相対時刻指定方法:前回スケジューリングを行った時刻は移動元基地局の絶対時刻で指定し、次回再スケジューリングを行う予定であった時刻は、前回スケジューリングを行った時刻から何秒後に生じるかを指定する。(3)サブフレーム絶対番号指定方法:前回スケジューリングを行った時刻として移動元基地局が具備しているサブフレーム番号を指定し、次回再スケジューリングを行う予定であった時刻もサブフレーム番号で指定する。(4)サブフレーム相対番号指定方法:前回スケジューリングを行った時刻として移動元基地局が具備しているサブフレーム番号を指定し、次回再スケジューリングを行う予定であった時刻は、前回スケジューリングを行ったサブフレームから何サブフレーム後かを指定する。以上の場合において、移動元基地局と移動先基地局で時刻やサブフレームのずれを共有しておいてもよい。
[ステップS25]制御部160は、移動局200に対するハンドオーバ指示を出力する。送受信部140は、制御部160が出力したハンドオーバ指示を制御情報として移動局200に無線送信する。
[ステップS26]制御部160は、バッファリングされている全ての(または複数N個または2個のデータ量以上の量または送信可能な最大限の)移動局200宛ての音声パケットデータをバッファメモリ110に出力させる。このとき、バッファメモリ110には、有音区間開始時のバッファリング量程度(例えば、当初バッファリングしたパケット数プラスマイナス1個の範囲内)の音声パケットデータが格納されていると期待される。送受信部140は、バッファメモリ110から出力された音声パケットデータを移動局200に無線送信する。
また、送受信部140は、必要に応じて、音声パケットデータを送信した旨および送信した音声パケットデータ量を示す信号をL1/L2制御信号として無線送信する。ただし、移動局200がBlind Detectionを行う場合は、この制御信号は必ずしも必要でない。
なお、制御部160は、バッファリングされている背景雑音パケットデータおよび出力処理後に到着した移動局200宛てのVoIPパケットデータについては、無線基地局100aに転送する。
[ステップS27]制御部160は、無線基地局100aからリソース解放指示を受信すると、上位局300・無線基地局100・移動局200の間のVoIPパケット通信のために予約されているリソースを解放する。
このようにして、移動元の無線基地局である無線基地局100は、移動局200から継続的に取得する測定情報に基づいて、ハンドオーバが必要か否かと移動先の無線基地局とを決定する。そして、ハンドオーバを決定すると、無線基地局100は、移動先の無線基地局に対してVoIPパケット通信を引き継ぐために用いられるスケジュール情報を送信すると共に、移動局200に対してバッファリングしている全ての(または複数N個または2個のデータ量以上の量または送信可能な最大限の)音声パケットデータを無線送信する。その後、無線基地局100経由でVoIPパケットデータを伝送するためのリソースが解放される。
なお、上記ステップS24のスケジュール情報の送信は、ステップS23のハンドオーバ要求の送信と同時に行うことも可能であり、また、ハンドオーバ要求の送信後から無線基地局100aがVoIPパケットデータの無線送信を開始するまでの任意のタイミングで行うこともできる。また、上記ステップS26の音声パケットデータの無線送信は、無線基地局100aよりハンドオーバ応答を受信してから移動局200が無線基地局100aと同期確立を行うまでの間の任意のタイミングで行うこともできる。また、上記では下りリンクの無線品質に基づいてハンドオーバを行うか決定したが、上りリンクの無線品質も参照するようにしてもよい。
図9は、移動先無線基地局のハンドオーバ制御の手順を示すフローチャートである。以下、図9に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお、以下では、無線基地局100の制御部160に相当するモジュールとして、無線基地局100aは制御部160aを備えているものとする。
[ステップS31]制御部160aは、無線基地局100からハンドオーバ要求を受信すると、ハンドオーバ要求に含まれる情報に基づいて、移動局200のハンドオーバを許可するか否か判断する。そして、制御部160aは、判断結果を無線基地局100に応答する。なお、以下ではハンドオーバを許可する場合について説明する。
[ステップS32]制御部160aは、無線基地局100からスケジュール情報を受信する。そして、制御部160aは、スケジューリング情報に基づいて、音声パケットデータのバッファリング量や送信開始のタイミングを決定する。例えば、制御部160aは、スケジュール情報によって通知されたバッファリング量を設定可能な最大値とし、それ以下の範囲で実際のバッファリング量を決定することができる。
[ステップS33]制御部160aは、移動局200からの要求に応じて、移動局200との間で同期確立を行い、VoIPパケット通信可能な状態にする。
[ステップS34]制御部160aは、移動局200について無線基地局100から無線基地局100aへのハンドオーバが完了したことを上位局300に報告する。これにより、上位局300では移動局200宛てのパケットの伝送経路の設定が変更される。
[ステップS35]制御部160aは、ステップS34で送信したハンドオーバ完了報告に対する応答を上位局300から受信すると、Persistent Schedulingにより移動局200との間のVoIPパケット通信に用いる無線リソースが確保されるよう制御する。
[ステップS36]制御部160aは、無線基地局100に対して、移動局200のVoIPパケット通信についてのリソースを解放するよう指示する。
このようにして、移動先の無線基地局である無線基地局100aは、ハンドオーバ要求後に移動元の無線基地局から受信するスケジュール情報に基づいて、音声パケットデータのバッファリング量や送信開始のタイミングを調整する。そして、無線基地局100aは、上位局300にハンドオーバ完了報告を送信して、移動局200宛てのVoIPパケットデータの伝送経路を変更させる。これにより、無線基地局100aは、移動元の無線基地局からVoIPパケット通信を円滑に引き継ぐことができる。
なお、スケジュール情報は、ハンドオーバ要求と同時に受信する場合もあり、また、ハンドオーバ要求の受信後からVoIPパケットデータの無線送信を開始するまでの何れかのタイミングで受信する場合もある。
図10は、移動局のハンドオーバ制御の手順を示すフローチャートである。以下、図10に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS41]制御部260は、無線基地局100,100aからの受信信号に基づいて、各下りリンクの無線品質を測定する。無線品質の測定は、例えば、受信信号に含まれるパイロット信号を捕捉することで行われる。そして、制御部260は、測定結果を示す測定情報を出力する。送受信部220は、この測定情報を制御情報として無線基地局100に無線送信する。なお、測定情報の送信は、例えば、無線基地局100が指定した周期で継続的に行われる。
[ステップS42]制御部260は、無線基地局100から制御情報としてハンドオーバ指示を受信したか否か判断する。ハンドオーバ指示を受信した場合には、処理がステップS43に進められる。ハンドオーバ指示を受信していない場合には、処理がステップS41に進められ、次に測定情報を送信するタイミングを待つ。
[ステップS43]制御部260は、音声パケットデータを送信したことを示すL1/L2制御信号を受信したか否か判断する。L1/L2制御信号を受信した場合には、処理がステップS45に進められる。L1/L2制御信号を受信していない場合には、処理がステップS44に進められる。
[ステップS44]制御部260は、Blind Detectionにより、無線基地局100からの受信信号に含まれている音声パケットデータに相当する信号を検出する。
Blind Detectionにおいては、例えば、無線基地局100からの受信信号について、音声パケットデータが抽出される可能性のある複数の抽出方法の候補について順に音声パケットデータの抽出を試行し、音声パケットデータが抽出された場合に、その抽出方法が適切な抽出方法であったと決定する。なお、音声パケットデータが抽出されたかどうかは、所定の音声パケットデータの形式に合致するか検査したりすることで行うことができる。
[ステップS45]制御部260は、ステップS43で検出したL1/L2制御信号またはステップS44の検出結果(決定した抽出方法)に基づいて、無線基地局100からの受信信号に含まれる音声パケットデータの全てを抽出するよう送受信部220に指示する。これにより、無線基地局100にバッファリングされていた音声パケットデータが、再生部250のバッファメモリ251に格納される。
[ステップS46]制御部260は、無線基地局100から受信したハンドオーバ指示で指定される移動先の無線基地局である無線基地局100aとの間で同期確立を行い、VoIPパケット通信可能な状態にする。
このようにして、移動局200は、下りリンクの無線品質の測定情報を無線基地局100に継続的に送信する。そして、無線基地局100によってハンドオーバが決定されると、無線基地局100にバッファリングされている全ての(または複数N個または2個のデータ量以上の量または送信可能な最大限の)音声パケットデータを無線で受信する。これにより、移動局200は、有音区間でハンドオーバが発生しても、無線基地局100にバッファリングされていた音声パケットデータに基づいて、音声再生を継続することができる。なお、バッファリングされていた音声パケットデータは、ハンドオーバ指示前に受信する場合もある。
図11は、ハンドオーバ制御処理の流れを示すシーケンス図である。以下、図11に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS51]移動局200は、無線基地局100,100aとの間の無線品質を測定し、測定情報を無線基地局100に送信する。
[ステップS52]無線基地局100は、ステップS51で受信した測定情報に基づいてハンドオーバを決定し、移動先の無線基地局として無線基地局100aを選択する。そして、無線基地局100は、無線基地局100aにハンドオーバ要求を送信する。
[ステップS53]無線基地局100aは、ステップS52で受信したハンドオーバ要求に基づいて呼受付制御を行い、移動局200の受け入れを許可することを決定する。そして、無線基地局100aは、無線基地局100にハンドオーバ応答を送信する。
[ステップS54]無線基地局100は、移動局200のVoIPパケットデータの送信スケジュールを示すスケジュール情報を無線基地局100aに送信する。
[ステップS55]無線基地局100は、移動局200に無線基地局100aへのハンドオーバを行うよう指示する。
[ステップS56]無線基地局100は、バッファリングされている全ての音声パケットデータを移動局200に送信する。このとき、無線基地局100は、音声パケットデータを送信した旨およびパケット量を示す制御信号も送信する。なお、これ以降に無線基地局100に到着したVoIPパケットデータは、基地局100の判断によって無線基地局100aに回送されるか、回送されずに基地局100により廃棄される。
[ステップS57]移動局200および無線基地局100aは、VoIPパケット通信のための接続を確立する。
[ステップS58]無線基地局100aは、上位局300にハンドオーバ完了報告を送信する。
[ステップS59]上位局300は、ステップS58で受信したハンドオーバ完了報告に基づいて、移動局200宛てのパケットの転送先を無線基地局100aに変更する。そして、上位局300は、無線基地局100aにハンドオーバ完了応答を送信する。
[ステップS60]無線基地局100aは、無線基地局100にリソース解放指示を送信する。無線基地局100は、上位局300・無線基地局100・移動局200の伝送経路のために確保しているリソースを解放する。
なお、ステップS56の音声パケットデータの送信は、ステップS53からステップS57までの間に行えばよい。また、ステップS54のスケジュール情報の送信は、ステップS52から無線基地局100aがVoIPパケットデータの送信を開始するまでの間に行えばよい(ステップS52に含ませて送信してもよい)。
次に、バッファリングされている音声パケットデータを無線送信するタイミングの詳細について説明する。無線送信のタイミングには複数通り考えられる。以下、3つの具体例を挙げる。
図12は、パケットの流れの第1の例を示す図である。図12の例では、移動局200aが音声データを含む音声パケット(図中では数字1〜7で表記)を20ms間隔で送信し、その後、背景雑音データを含む背景雑音パケット(図中ではNと表記)を160ms間隔で送信する。ここでは、音声符号化方式としてAMR(Adaptive Multi-Rate)を用い、符号化レートを12.2kbpsとした場合を想定している。
移動局200aが送信した音声パケット(音声パケット#1〜#4)は無線基地局100に転送される。ここで、伝送時間は輻輳などの影響により一定とならないため、無線基地局100への音声パケットの到着間隔は厳密に20msにはならない。無線基地局100は、3つの音声パケット(音声パケット#1〜#3)がバッファリングされるのを待ち、その後、20ms間隔で移動局200に音声パケットを無線送信する。移動局200への音声パケットの到着間隔も厳密に20msにはならない。移動局200は、バッファメモリを用いて受信間隔の揺れを吸収して、受信した音声パケットに含まれるデータを順次20ms間隔で復号・再生する。
ここで、無線基地局100に音声パケット#3,#4がバッファリングされている状態で、無線基地局100から無線基地局100aへのハンドオーバが決定されたとする。すると、無線基地局100は、ハンドオーバ前のスケジュールで特定される20ms周期の送信タイミングのうちハンドオーバ決定後に最初に到来するタイミングで、音声パケット#3,#4を移動局200に無線送信する。移動局200は、受信した音声パケットをバッファリングしておく。
その後、移動局200aが送信した音声パケット(音声パケット#5〜#7)は無線基地局100aに転送される。無線基地局100aは、無線基地局100から受信したスケジュール情報に基づいて、バッファリング量を3パケットと決定し、3つの音声パケット(音声パケット#5〜#7)がバッファリングされるのを待ち、その後、20ms間隔で移動局200に音声パケットを無線送信する。移動局200は、無線基地局100aが音声パケットの送信を開始するまでの間は、無線基地局100から纏めて受信した音声パケットに基づいて音声再生を継続することができる。
また、移動局200aが音声パケット#7の後に送信した背景雑音パケットは、無線基地局100aに転送される。無線基地局100aは、音声パケット#7を送信してから160ms後に、背景雑音パケットを移動局200へ無線送信する。移動局200は、音声パケット#7のデータを再生してから160ms後に、背景雑音パケットに含まれるデータを復号して背景雑音を再現する。
このように、無線基地局100にバッファリングされている音声パケットを、元々スケジューリングされているタイミングで無線送信することで、送信のための無線リソースの確保が容易となる。
図13は、パケットの流れの第2の例を示す図である。音声パケットおよび背景雑音パケットの伝送の全体的な流れは図12に示したものと同様である。ただし、無線基地局100は、元々のスケジュールに拘わらず、ハンドオーバ決定後できる限り早いタイミングで、バッファリングされている音声パケットデータを移動局200に無線送信する。ここで、できる限り早いタイミングとは、例えば、送信のための無線リソースを確保可能なタイミングのうち最も早いタイミングである。
このように、無線基地局100にバッファリングされている音声パケットを、元々スケジューリングされているタイミングに拘わらず可能な限り早いタイミングで無線送信することで、移動局200への音声パケットの到着が再生のタイミングに間に合わないリスクをより低減することができる。
図14は、パケットの流れの第3の例を示す図である。音声パケットおよび背景雑音パケットの伝送の全体的な流れは図12に示したものと同様である。ただし、無線基地局100は、バッファリングされている音声パケットデータを1回に送信せずに、複数回に分けて送信する。
このように、複数回に分けて送信することで、送信のための無線リソースの確保がより容易となる。なお、各回の送信タイミングは、図12に示した例のように元々スケジューリングされているタイミングとしてもよいし、図13に示した例のように元々スケジューリングされているタイミングに依存しない任意のタイミングとしてもよい。
このような移動通信システムを用いることで、移動局が所定の周期で音声パケットデータを再生中にハンドオーバが生じても、音声パケットデータの到着が再生タイミングに間に合わない危険性を低減できる。また、移動元の無線基地局から移動先の無線基地局にスケジュール情報が送信されるため、音声パケットデータの伝送の引き継ぎが円滑に行われる。従って、ハンドオーバ時の音声再生品質の低下が抑制される。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
第2の実施の形態に係る移動通信システムは、図2に示した第1の実施の形態に係る移動通信システムと同様のシステム構成によって実現できる。また、第2の実施の形態に係る無線基地局および移動局は、図3に示した無線基地局100および図4に示した移動局200と同様のモジュール構成によって実現できる。ただし、有音区間から無音区間への切り替わり時の制御が、第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態で用いた符号と同様の符号を用いて第2の実施の形態を説明する。
図15は、パケット送信制御の他の手順を示すフローチャートである。以下、図15に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS61]制御部160は、移動局200との間でPersistent Schedulingに関するシグナリング(制御信号の送信)を行う。そして、制御部160は、VoIPパケットデータを送信できる状態にする。
[ステップS62]制御部160は、有音区間の開始であるか否か判断する。有音区間の開始である場合には、処理がステップS63に進められる。有音区間の開始でない場合には、処理がステップS65に進められる。
[ステップS63]制御部160は、バッファメモリ110にバッファリングメッセージで指定された量(例えば、2〜3パケット分)の移動局200宛ての音声パケットデータがバッファリングされるのを待つ。
[ステップS64]制御部160は、ステップS63のバッファリングが完了すると、バッファリングされている音声パケットデータを有音区間に対応する周期(例えば、20ms周期)で順次送信するよう制御する。その後、処理がステップS62に進められる。
[ステップS65]制御部160は、無音区間の開始であるか否か判断する。無音区間の開始である場合には、処理がステップS66に進められる。無音区間の開始でない場合には、処理がステップS68に進められる。
[ステップS66]送受信部140は、制御部160の指示に基づいて、有音区間から無音区間への移行を示す制御信号を移動局200に送信する。
[ステップS67]制御部160は、バッファリングされている背景雑音パケットデータを無音区間に対応する周期(例えば、160ms周期)で順次送信するよう制御する。その後、処理がステップS62に進められる。
[ステップS68]制御部160は、移動局200と移動局200aとの間のVoIPパケット通信が終了したか否か判断する。通信が終了した場合には、移動局200宛てのVoIPパケットデータの送信制御を終了する。通信が終了していない場合には、処理がステップS62に進められる。
このようにして、無線基地局100は、音声パケットデータの取得後に背景雑音パケットデータを取得すると、有音区間から無音区間への移行を示す制御信号を、移動局200に送信する。これにより、移動局200は無音区間への移行をより早く認識できる。
そして、移動局200は、Persistent Schedulingにより特定されるタイミング以外の時間帯は受信回路の電源をOFFにすることができる。このとき、送受信周期の長い無音区間への移行をいち早く認識できると、有音区間の終了後即座に受信回路の電源をONにする回数を減らすことができ、移動局200の消費電力をより抑制することができる。
図16は、パケットの流れの第4の例を示す図である。音声パケットおよび背景雑音パケットの伝送の全体的な流れは図12に示したものと同様である。ただし、無線基地局100aは、最初の背景雑音パケットを送信する前に制御信号を移動局200に送信する。例えば、無線基地局100aは、最初の背景雑音パケットの到着直後に、背景雑音パケットの送信順番がいつ到来するかを制御信号で通知することが考えられる。また、最後の音声パケット(音声パケット#7)の送信と同時またはその直後に、次に背景雑音パケットを送信することを制御信号で通知することも考えられる。
このように、元々スケジューリングされている背景雑音パケットの送信タイミング(最後の音声パケットを送信してから160ms後)の前に制御信号を送信することで、移動局200はより早く無音区間への移行を知ることができる。これにより、移動局200は、最後の音声パケット受信から160ms経過しなくても、160ms周期の間欠受信モードに移行することができる。
なお、到着したVoIPパケットが音声パケットであるか背景雑音パケットであるかは、例えば、パケットサイズに基づいて判断することができる。背景雑音パケットは音声パケットよりもパケット長が短いことが多いためである。
図17は、パケットの流れの第5の例を示す図である。音声パケットおよび背景雑音パケットの伝送の全体的な流れは図16に示したものと同様である。図17では、無線基地局100aは、最後の音声パケットの送信後、制御信号に代えてまたは制御信号と共に背景雑音パケットを移動局200に送信する。すなわち、無線基地局100aは、最初の背景雑音パケットについては、元々スケジューリングされている背景雑音パケットの送信タイミングに拘わらず送信を行う。移動局200は、受信した背景雑音パケットをバッファリングし、元々スケジューリングされているタイミングで復号して背景雑音を再現する。
このように、制御信号に代えてまたは制御信号と共に背景雑音パケットを送信するによっても、移動局200はより早く無音区間への移行を知ることができ、より早く160ms周期の間欠受信モードに移行することができる。
このような移動通信システムを用いることで、第1の実施の形態と同様の効果を得られる。更に、第2の実施の形態に係る移動通信システムを用いることで、移動局200の消費電力が低減される。
なお、上記第1の実施の形態および第2の実施の形態で示した具体的な装置構成を、他の装置構成に変更することも可能である。例えば、無線基地局および移動局に複数のアンテナを設けて、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を行うようにしてもよい。また、ハンドオーバの決定を無線基地局が行う代わりに、移動局やコアネットワーク内のサーバ装置が行うようにしてもよい。
また、無線部分については、CDMAやOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)などの種々の多重化方式を採用でき、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)などの種々の変調方式を採用でき、畳み込み符号やターボ符号などの種々の符号化方式を採用することができる。
上述した実施例を別の側面から表現すると、移動局において所定の周期で利用されるデータブロック(再生に供される音声パケットデータ)を、無線基地局から移動局に無線送信する移動通信システムにおける制御方法において、取得した移動局宛てのデータを記憶部(基地局のバッファメモリ)に格納し、記憶部(バッファメモリ)内の移動局宛てのデータが、所定量(例えば、複数N個の音声パケットデータ)に達するのを待って、その後、所定の周期(例えば20ms)で記憶部内のデータを移動局に順次無線送信する処理を開始し、移動局についてのハンドオーバが決定されると、他の無線基地局へ接続が切替えられる前に、記憶部(バッファメモリ)に記憶されているデータのうち、少なくともデータブロックのN(2以上の自然数)個分以上のデータを一度に移動局に無線送信するともいえる。ここで、所定量は、データブロックのN(2以上の自然数)個分以上であるとする(図12参照)。もしくは、無線伝播状況により、データブロック2個に対応するデータ量以上のデータ量である。
これによれば、移動局宛てのデータが、所定量(例えば、複数N個の音声パケットデータ)に達するのを待ってから無線基地局から音声パケットデータの送信が開始されるので、無線基地局の切り替えの必要が生じた場合に、記憶部に複数のデータブロック分のデータが格納されている可能性が高まり、その複数のデータブロックを一度に移動局に無線送信するから、移動局は、その受信からある程度の時間、無線基地局からデータブロックを受信しなくとも所定の周期で利用するデータブロックを、その複数のデータブロックでまかなうことができる。
また、上述した実施例を別の側面から表現すると、相手装置(例えば移動局)に対して、所定の周期で音声パケットデータを無線送信する無線装置(例えば基地局)と相手装置とを備えた移動通信システムにおける制御方法において、相手装置(例えば移動局)の接続先が、その無線装置から他の無線装置に切替えられる場合に、切替え前において、所定の周期(例えば、音声区間におけるPersistent Scheduling)に従っていないタイミングで音声パケットデータを無線装置(例えば基地局)から送信し、相手装置(例えば移動局)は、所定の周期に従っていないタイミングで送信される音声パケットデータを受信するともいえる(図13参照)。
これによれば、所定の周期に従っていないタイミングで音声パケットデータを無線装置から送信するため、所定の周期が訪れる前に音声パケットデータを送信してしまい、切り替えの作業を早期に開始し、完了することも可能となる。
また、上述した実施例を別の側面から表現すると、無線基地局から移動局へ音声パケットデータの送信を行う移動通信システムにおける制御方法において、無線基地局と移動局とのうち、少なくとも一方が、他方に対して、無線基地局のバッファメモリに所定量の音声パケットデータが格納されてから、無線基地局のバッファメモリに格納された音声パケットデータの送信を無線基地局が開始する所定のバッファリング処理を実行するか否かを示す制御信号、または、移動局のバッファメモリに所定量の音声パケットデータが格納されてから、移動局のバッファメモリに格納された音声パケットデータの再生を移動局が開始するバッファリング処理をするか否かを示す制御信号を送信し、制御信号を受信した無線基地局または移動局は、制御信号に基づいて送信制御または再生制御を行うともいえる。
上述したバッファリングメッセージがこの制御信号の1例であるが、このような制御信号を送信し、受信側がそれに従うことで、バッファリング処理をどの装置で実行するか、しないかを円滑に制御することができる。
また、上述した実施例を別の側面から表現すると、相手装置に対して、第1の周期で音声パケットデータを無線送信するモード(例えば有音区間におけるモード)から、第1の周期より長い第2の周期で背景雑音パケットデータを無線送信するモード(例えば、無音区間におけるモード)に切替えて送信を行う無線装置と相手装置とを備えた移動通信システムにおける制御方法において、モードの切り替えにより最初に送信される背景雑音パケットデータの送信タイミングよりも早いタイミングで、モードの切り替えを通知する信号を無線通信装置から相手装置に送信し、相手装置は、その信号を受信して受信制御に用いるともいえる。
これによれば、相手装置は、モードの切り替わりを早期に検出し、受信制御に利用することができる。例えば、相手装置は、第1の周期より長い第2の周期による無線送信モードの切り替わりを早期に認識し、第1の周期に従った受信処理を行わない動作を実行するように切替えることもできる。例えば、第2の周期の最初の送信まで受信部の電源をオフとしたり、他の信号の受信を行うようにすることもできる。図17の例では、制御信号の受信からNの最初の受信までの期間、受信部の電源をオフとすることもできる。
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。