JP5037771B2 - グリコシル化されたハイブリッド産物およびその産生方法と利用 - Google Patents
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Description
発明の属する技術分野
本発明は、グリコシル化されたハイブリッド産物、中でもポリケチドやグリコペプチドなどの天然産物と、その調製方法に関する。本発明は、特に、基質としてポリケチド、ペプチド、ポリケチド−ペプチドのいずれかを与えられたとき、クローニングした微生物のグリコシルトランスフェラーゼが特定のグリコシル化された誘導体を産生する能力を簡便にテストすることのできる組み換え細胞に関する。
【0002】
発明の背景
ポリケチド・エリスロマイシンA、グリコペプチド・バンコマイシンなどの抗菌化合物や、芳香族ポリケチド・ダウノルビシン、グリコペプチド−ポリケチド・ブレオマイシンなどの抗腫瘍化合物といった数多く存在している天然産物が生物活性を持つためには、グリコシル化が重要である。ポリケチドは、さまざまな構造を有する多数の天然産物からなる1つの分類名であり、その中には、抗菌特性やそれ以外の薬理学的特性を有する多くの化合物が含まれる。具体的には、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ラパマイシン、アベルメクチン、モネンシン、エポシロン、FK506などが挙げられる。中でも、ポリケチドは、放線菌族の細菌に関係しており、ストレプトミケスによって豊富に産生される。ポリケチドは、脂肪酸の生合成と同様の方法を用い、アシルチオエステルを濃縮する操作を何回も繰り返すことによって合成される。天然のポリケチドに見られる構造上の多様性は、(通常は)酢酸塩またはプロピオン酸塩を“出発”単位または“伸長”単位として選択していることと、各濃縮操作の後に観測されるβ-ケト基の処理度が異なることに起因する。処理ステップの具体例としては、還元してβ-ヒドロキシアシルにすること、還元後に脱水して2-エノイルにすること、完全に還元して飽和アシルチオエステルにすることなどが挙げられる。これら処理ステップの結果として得られる立体化学産物も、鎖の各伸長サイクルごとに特徴がある。ポリケチド鎖は、通常は、特別なやり方で環になっており、酵素によりさらに修飾されて最終ポリケチドになる。リボソーム非依存性のペプチドシンテターゼにより産生される天然のペプチドは、この活性化されたアミノ酸の場合には、同様に何段階もの繰り返しを経て合成される。生まれる鎖は、同様にさらに修飾され、十分に生物活性のある分子となる。ポリケチドとペプチドが混合した化合物(以後、ケチド単位とアミノ酸単位の両方を含むものと定義する)も知られており、その生物活性は、やはりグリコシル化パターンとそれ以外の修飾パターンの影響を受ける。このようにして生まれた化合物は、特に価値がある。というのも、その中には、駆虫剤、殺虫剤、免疫抑制剤、抗真菌剤、抗菌剤などの用途が知られている多数の化合物が含まれているからである。
【0003】
ストレプトミケスおよびそれと密接に関係している糸状菌族は、ポリケチド代謝物を豊富に産生する。病気治療において重要なポリケチドがこれまでに多数同定されているとはいえ、より強力な、あるいはまったく新しい生物活性を持った新規なポリケチドが相変わらず必要とされている。14員環マクロライドやグリコペプチドなどの抗生物質に対して耐性のある病原体の出現が疑いもなく増えているということは、人類と動物の健康に重大な脅威が及んでいることを示している。現在のところ、新規なポリケチド代謝物を得る方法としては、ストレプトミケスその他の天然の菌株を大規模にスクリーニングする方法などがある。それは、役に立つ分子を直接産生させること、または増殖培地に添加する既存のポリケチドを特定の誘導体に生物転換できる酵素活性の存在を見つけ出すことを目的としている。こうした方法は時間とコストがかかる。また、全細胞を用いた生体内変化が、副反応によって、あるいは生物転換を起こす細胞内酵素の濃度または活性が低いことによって制限される可能性がある。生物活性のあるポリケチドは複雑であるため、完全な化学的合成を大規模に行なうことは容易でない。既存のポリケチドを化学的に修飾することが広く行なわれてきたが、この方法では望ましい多くの変更を施すことは容易でない。
【0004】
他方で、ポリケチド・シンターゼをコードする遺伝子を遺伝子工学で作ることにより変化したポリケチドを生合成する方法、ポリペプチド・シンターゼをコードする遺伝子を遺伝子組み換えで作ることによりリボソームによらずに合成されたポリペプチドを生合成する方法が開発されている。ポリケチドの生合成は、ポリケチド・シンターゼとして知られる一群の鎖形成酵素によって開始される。2種類のポリケチド・シンターゼ(PKS)が放線菌において報告されている。1つはタイプIのPKSと呼ばれ、マクロライド系のエリスロマイシン、オレアンドマイシン、アベルメクチン、ラパマイシンのためのPKSがその代表的なものである。このタイプのIのPKSは、ポリケチド鎖伸長の各サイクルに対応する別々の酵素群または“伸長モジュール”からなる(Cortes, J.他、Nature、第248巻、176〜178ページ、1990年)。この明細書で用いる“伸長モジュール”という用語は、β-ケトアシル-ACPシンターゼ(“KS”)ドメインから次のアシルキャリヤータンパク質(“ACP”)ドメインまでの連続したドメイン群のことを意味し、この伸長モジュールが、ポリケチド鎖伸長の1サイクルを実行する。
【0005】
エリスロマイシン産生PKS(6-デオキシエリスロノリドBシンターゼ(DEBS)としても知られる)のモジュール5にあるケトレダクターゼ・ドメインにおいてDNAをコードしている部分にフレーム内欠失があると、エリスロマイシンのアナログである5,6-ジデオキシ-3-α-ミカロシル-5-オキソエリスロノリドB、5,6-ジデオキシ-5-オキソエリスロノリドB、5,6-ジデオキシ, 6β-エポキシ-5-オキソエリスロノリドBが形成されることがわかっている(Donadio, S.他、Science、第252巻、675〜679ページ、1991年)。同様に、DEBSのモジュール4にあるエノイルレダクターゼ・ドメインの活性部位の残基を、対応するPKSをコードしているDNAの遺伝子組み換えによって変化させ、サッカロポリスポラ・エリトラエアに導入すると、6,7-無水エリスロマイシンCが産生された(Donadio, S.他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、7119〜7123ページ、1993年)。WO 93/13663には、DEBS遺伝子にさらに別のタイプの遺伝子操作をすると、変化したポリケチドを産生させうることが記載されている。しかしこのような数多くの試みは、何も産生させないことが報告されている(Hutchinson, C.R.とFujii, I.、Annu. Rev. Microbiol.、第49巻、201〜238ページのうちの231ページ、1995年)。
【0006】
WO 98/01546には、2つ以上の天然PKSに由来する(特に、異なる生物に由来する)PKS遺伝子の一部を利用して遺伝子組み換えによりハイブリッドのタイプIのPKS遺伝子を作ることと、このような組み換え遺伝子を利用して変化したポリケチド代謝物を産生させることが記載されている。
もう一方のPKSはタイプIIのPKSと呼ばれ、芳香族化合物のシンターゼがその代表的なものである。タイプIIのPKSは、鎖伸長のための活性酵素群を1つしか含んでおらず、それが連続したサイクルで再使用される(Bibb, M.J.他、EMBO J.、第8巻、2727〜2736ページ、1989年;Sherman, D.H.他、EMBO J.、第8巻、2717〜2725ページ、1989年;Fernandez-Moreno, M.A.他、J. Biol. Chem.、第267巻、19278〜19290ページ、1992年)。タイプIIのPKSのための“伸長”単位は、一般に酢酸塩単位であり、特定のシクラーゼが存在していると、完全な鎖を環化して芳香族化合物にするための好ましい経路が決まってしまう(Hutchinson, C.R.とFujii, I.、Annu. Rev. Microbiol.、第49巻、201〜238ページ、1995年)。ハイブリッド・ポリケチドは、タイプIIのPKS遺伝子を含むDNAのクローンを、別のタイプIIのPKS遺伝子クラスターを含む菌株に導入することによって得られている。例えば、アクチノロジン(青色染色したストレプトミケス・コエリコロルからのポリケチド)に関する遺伝子クラスターに由来するDNAを、ストレプトミケス・ガリレウスというアントラキノン・ポリケチド産生菌株に導入する(Bartel, P.L.他、J. Bacteriol.、第172巻、4816〜4826ページ、1990年)。
【0007】
タイプIIのPKSをストレプトミケス・コエリコロルを宿主細胞にして発現させるときにタイプIIのPKS内でポリケチド鎖伸長に必要なドメインの最少数(“最少PKS”)が、例えばWO 95/08548に規定されている。それは、actI遺伝子の産物である以下の3種類のポリペプチドを含まねばならないというものである。まず最初はKSである。2番目は、CLFという名称のポリペプチドである。このCLFは、KSと接する末端部のアミノ酸配列がKSと似ているが、KSの重要な活性部位の残基、すなわちシステイン残基が、グルタミン残基で置換されているか、グルタミン酸残基で置換されている(whiE遺伝子産物(Chater, K.F.とDavis, N.K.、Mol. Microbiol.、第4巻、1679〜1691ページ、1990年)などの胞子色素のPKSの場合)。そして最後がACPである。CLFは、最少PKSによって産生されるポリケチド鎖の鎖の長さを決める因子であることが、例えばWO 95/08548に述べられている。しかしストレプトミケス・グラケスケンスを宿主細胞としてオクタケチド・アクチノロジンに関するCLFをデカケチド・テトラセノマイシンに関するCLFの代わりに用いる場合には、ポリケチド産物がデカケチドからオクタケチドに変化しないことが見いだされている(Shen, B.他、J. Am. Chem. Soc.、第117巻、6811〜6821ページ、1995年)。CLFの機能が正しく特定されていないことを反映して、別の命名法として、KSをKSαと呼び、CLFをKSβと呼ぶことが提案されている(Meurer, G.他、Chemistry and Biology、第4巻、433〜443ページ、1997年)。最近の国際特許出願WO 00/00618には、CLFと、タイプIのPKSの多酵素におけるその等価物であるいわゆるKSQドメインとが、ポリケチド鎖の合成開始に関係していることが示されている。例えばWO 95/08548には、アクチノロジンPKS遺伝子を他のタイプIIのPKS遺伝子クラスターからの異種DNAで置換してハイブリッド・ポリケチドを得ることが記載されている。
【0008】
このようにタイプIとタイプIIの両方のPKS遺伝子を遺伝子組み換えで作れるため、ポリケチドの生合成を組み合わせて新規な天然産物のさまざまなライブラリーを作り、そのライブラリーをスクリーニングすることにより、望ましい生物活性を有するものを見つけ出せる可能性が出てくる。しかし組み換えPKS遺伝子によって産生されたアグリコンは全部ではなく一部だけがグリコシルトランスフェラーゼやそれ以外の修飾酵素により処理され、成熟ポリケチドのアナログになる可能性がある。したがってそのような新規なアグリコンをグリコシル化された特定の産物に効果的に変換するには、追加プロセスが必要とされる。さらに、クローニングした別のグリコシルトランスフェラーゼと活性化された糖の別の補体とを含む組み換え細胞を利用した効果的なグリコシル化法が考案されると、コンビナトリアル・ポリケチド・ライブラリーの多様性を顕著に大きくする新しい手段となろう。
【0009】
グリコシル化が生物活性に影響を及ぼすことは周知であるため、特定の糖単位が合成されてポリケチド代謝物およびポリペプチド代謝物に結合するプロセスを制御する遺伝子と酵素に関する研究が精力的に行なわれてきた(概説に関しては、Trefzer, A.他、Natural Products Reports、第16巻、283〜299ページ、1999年を参照のこと)。そのような代謝物(例えば非常に多くの異なるデオキシヘキソースとデオキシアミノヘキソース)の研究により、見つかったグリコシル置換のタイプはが極めて多彩であることが明らかになった(概説に関しては、Liu, H.-W.とThorson, J.S.、Annu. Rev. Microbiol.、第48巻、223〜256ページ、1994年を参照のこと)。グルコシル化された多数のポリケチドとペプチドに関する生合成遺伝子クラスターをシークエンシングすることにより、そのような糖生合成遺伝子の存在が明らかになるとともに、グルコシル基を糖の活性化された形態(例えばdTDP-またはdUDP-の形態)からアグリコン受容体に転移させるグリコシルトランスフェラーゼをコードしている遺伝子の存在が明らかになった。例えばサッカロポリスポラ・エリトラエアの中にあるエリスロマイシン生合成遺伝子クラスターのeryB遺伝子とeryC遺伝子は、それぞれL-ミカロースおよびD-デソサミンを生合成してそれをエリスロマイシンAのアグリコン前躯体に結合させることに関与していることが明らかになった(Dhillon, N.他、Mol. Microbiol.、第3巻、1405〜1414ページ、1989年;Haydock他、Mol. Gen. Genet.、第230巻、120〜128ページ、1991年;Salah-Bey, K.他、Mol. Gen. Genet.、第257巻、542〜553ページ、1998年;Gaisser, S.他、Mol. Gen. Genet.、第258巻、78〜88ページ、1998年;Gaisser, S.他、Mol. Gen. Genet.、第256巻、239〜251ページ、1997年;Summers, D.他、Microbiology、第143巻、3251〜3262ページ、1997年)。WO 97/23630とWO 99/05283のどちらにも、特定の1つの糖生合成遺伝子を除去することにより変化したエリスロマイシンを調製すると、変化した糖がアグリコンに結合することが記載されている。したがってWO 99/05283には、例えばデソサミンがミカミノースで置換されたエリスロマイシン(eryCIVノックアウト)またはデスメチルミカロシル・エリスロマイシン(eryBIIIノックアウト)が、低レベルではあるが検出可能なレベルで産生されることが記載されている。他方、デソサミンがD-キヌボースで置換されたメチマイシンのアナログ(Borisova, S.A.他、Org. Lett.、第1巻、133〜136ページ、1999年)、またはミクロモノスポラ・エキノスポラからのカリケアマイシン遺伝子クラスターのcalH遺伝子をメチマイシン産生菌株に組み込むことによって得られるメチマイシンのアナログ(Zhao, L.他、J. Am. Chem. Soc.、第121巻、9881〜9882ページ、1999年)が生産されている。同様に、バンコマイシンを産生するアミコラトプシス・オリエンタリスからクローニングしたグリコシルトランスフェラーゼを用い、アメリカ合衆国特許第5,871,983号に従ってD-キシロースまたはD-グルコースを互いに密接な関係のあるグリコペプチドのアグリコンに結合させることにより、ハイブリッド・グリコペプチドが生産されている(Solenberg, P.他、Chem. Biol.、第4巻、195〜202ページ、1997年)。個々の糖生合成遺伝子の突然変異体と、立体特異性が異なる似た遺伝子との間の種間の作製を利用することにより、ハイブリッド芳香族ポリケチドも産生されている。したがって、天然のダウノサミンの代わりに4'エピ-ダウノサミンが組み換えストレプトミケス・ペウケティウスの中に産生され、それがダウノサミン・グリコシルトランスフェラーゼによってアグリコンと結合し、ドキソルビシンの代わりに抗腫瘍誘導体であるエピルビシンが生成される(Madduri, K.他、Nature Biotechnology、第16巻、69〜74ページ、1998年)。これらのすべてのケースにおいては、グリコシルトランスフェラーゼの特異性により、活性化された別の糖を置換することが可能になったが、アグリコンとグリコシルトランスフェラーゼは互いに異種ではなかった。ストレプトミケス・アンティビオティクスのオレアンドロース・グリコシルトランスフェラーゼoleG2をクローニングしてエリスロマイシンを産生するサッカロポリスポラ・エリトラエアに組み込むと、C-3位のクラジノース/ミカロースがラムノースで置換された新規なエリスロマイシンが、他の産物とともに得られた(Doumith, M.他、Mol. Microbiol.、第34巻、1039〜1048ページ、1999年)。宿主細胞が活性化されたラムノースを産生すること、また、グリコシルトランスフェラーゼoleG2が活性化されたラムノースを引き寄せるとき、存在していることがわかっている活性化されたミカロースと競合することが推定された。
【0010】
発明の要約
本発明は、外部から供給されたある範囲の鋳型アグリコンまたは内部で産生されたある範囲の鋳型アグリコンにある範囲の活性化された糖を結合させる能力をクローニングしたグリコシルトランスフェラーゼが有するかどうかを迅速にスクリーニングできる場合には、そのグリコシルトランスフェラーゼが、アグリコンと糖の両方の基質に対して驚くほどの柔軟性を示すことと、この方法によって、グリコシル化されたポリケチドを高い収率で生産できることを示す。こうすることにより、新しい糖を個々のポリケチド(遺伝子組み換えによって変化したポリケチドも含む)と結合させる問題だけでなく、糖を組み合わせて結合させることでポリケチド・ライブラリーの多様性を大きくする問題も解決できる。特に驚くべきなのは、グリコシル化された新規な産物を、1つ以上の要素が互いに異種である系において産生させうることである。なお要素の選択は、鋳型アグリコン、糖の一部、グリコシルトランスフェラーゼ、宿主、および/または糖の上記一部が鋳型アグリコンに結合する前または結合した後にその糖の一部を修飾することのできる酵素をコードしている遺伝子の中から行なう。好ましい実施態様では、2つ、3つ、4つの要素、またはすべての要素が互いに異種である。
【0011】
したがって、本発明の第1の特徴によれば、糖の1つ以上の部分を鋳型アグリコンに転移させることによってグリコシル化されたハイブリッド産物を産生させるため、
グリコシルトランスフェラーゼ(GT)をコードしている核酸を用いて微生物宿主細胞を形質転換し、
鋳型アグリコンをGTに供給することによりGTに糖の1つ以上の部分をその鋳型アグリコンに転移させてグリコシル化されたハイブリッド産物を産生させる操作を含む方法において、
上記の糖の1つ以上の部分、鋳型アグリコン、グリコシルトランスフェラーゼ、宿主細胞のいずれかが他の要素と異種である方法が提供される。
【0012】
グリコシル化されたハイブリッド産物は、ダウミスら(上記文献)が報告している化合物M1〜M4(例えばC-3位のクラジノース/ミカロースがラムノースで置換されているエリスロマイシン)とは異なっていることが好ましい。
別の特徴によれば、本発明により、グリコシルトランスフェラーゼ(GT)をコードしている核酸を用いて形質転換された宿主細胞であって、GTが宿主細胞とは異種であり、GTが宿主細胞内で糖の1つ以上の部分を鋳型アグリコンに転移させることによりグリコシル化されたハイブリッド産物が産生される宿主細胞が提供される。
【0013】
さらに別の特徴によれば、本発明により、グリコシル化されたハイブリッド産物の産生方法であって、上記の宿主細胞を培養し、その結果産生された産物を単離する操作を含む方法が提供される。鋳型アグリコンを宿主細胞に供給する実施態様では、宿主細胞が鋳型アグリコンを産生するのではなく、鋳型アグリコンを宿主細胞に提供する追加ステップを含むことが可能である。
【0014】
さらに別の特徴によれば、本発明により、この明細書に記載したいずれかの方法によって得ることのできるグリコシル化されたハイブリッド産物が提供される。
本発明のいくつかの実施態様では、“グリコシル化されたハイブリッド産物”は、鋳型アグリコンと糖の一部が互いに異種のグリコシル化されたハイブリッド産物である。この明細書に記載した方法では、グリコシル化されたハイブリッド産物の産生または修飾に用いる系の1つ以上の要素は互いに異種であってよい。なお要素としては、鋳型アグリコン、糖の一部、微生物の菌株/宿主細胞、糖の一部を鋳型アグリコンに結合させる触媒となるグリコシルトランスフェラーゼ、糖の一部が鋳型アグリコンに結合する前または結合した後にその糖の一部を修飾することのできる修飾遺伝子などが挙げられる。グリコシル化されたハイブリッド産物に対しては、菌株を用いて、または培地から単離した後に、さらにプロセシングまたは誘導体化を行なうこともできる。
【0015】
本発明では、“鋳型アグリコン”は、例えばグリコシルトランスフェラーゼによるプロセシングを通じて活性化された糖の1つ以上の部分を鋳型に転移させることのできるポリケチド、ペプチド、ポリケチド−ペプチド混合物のいずれかである。鋳型アグリコンにおけるグリコシル化には、異種GTによって導入される以外の形態のグリコシル化が含まれていてもよい。細胞は、異種の1つ以上の修飾遺伝子をさらに含んでいてもよい。修飾遺伝子としては、例えば、糖の一部を鋳型アグリコンに結合させる前または結合させた後にその糖の一部に対してメチル基の転移、ヒドロキシル化、エポキシ化といった反応を行なわせることのできる酵素または他のタンパク質をコードしている遺伝子が挙げられるが、それだけに限られるわけではない。別の方法として、あるいは以上に加えて、同種の1つ以上の修飾遺伝子を除去または修飾することにより、ハイブリッド産物にさらに多様性を持たせることができる。
【0016】
いくつかの実施態様では、鋳型アグリコンは、微生物の菌株により産生させることができる。この菌株は、天然のもの、または鋳型を産生させることのできる1つ以上の遺伝子または遺伝子クラスターを用いて形質転換したもののいずれかである。例えば微生物の菌株が自然にポリケチドを産生する場合には、この菌株の内部で産生されたポリケチド・鋳型アグリコンを用いること、または遺伝子組み換えによってこの菌株によるこの鋳型の産生をなくすか不活性化することが可能である。後者の場合、例えば後述するスクリーニング法において、細胞を1つ以上のPKS遺伝子またはPKS遺伝子クラスターで形質転換して異種の鋳型を産生させることと、1つ以上の鋳型を外部から宿主細胞に供給することの両方またはいずれか一方を実行することが可能である。
【0017】
すでに説明したように、アグリコンは、タイプIまたはタイプIIの1つまたは複数の組み換えポリケチド・シンターゼ遺伝子をさらにクローニングして組み込んだ宿主細胞に産生させることができる。組み換えPKS遺伝子としては、天然のPKS遺伝子、突然変異した天然のPKS遺伝子、ハイブリッドPKS遺伝子のいずれかが可能である。なおハイブリッドPKS遺伝子は、少なくとも2つの異なる天然のタイプIのPKS遺伝子クラスターまたはタイプIIのPKS遺伝子クラスターからの部分で構成される。また、組み換えPKS遺伝子としては、タイプIまたはタイプIIのハイブリッドPKS遺伝子のライブラリーも可能である。PKS遺伝子集合体の具体例としては、タイプIのポリケチド・マクロライド系抗生物質であるリファマイシン、アベルメクチン、ラパマイシン、イムノマイシン、エリスロマイシン、ナルボマイシン、オレアンドマイシン、ピクロマイシン、スピラマイシン、チロシンを産生する遺伝子;アンフォテリシンB、カンジシジン、ニスタチン、ピマリシンなどのポリエンを産生する遺伝子;モネンシン、サリノマイシン、セムドゥラマイシン、テトロナシンなどのポリエーテルを産生する遺伝子;アクチノロジン、ダウノルビシン、オキシテトラシクリン、テトラシクリンなどのタイプIIのポリケチドを産生する遺伝子が挙げられる。
【0018】
好ましい宿主細胞菌株は放線菌であり、より好ましい菌株として挙げられるのは、サッカロポリスポラ・エリトラエア、ストレプトミケス・コエリコロル、ストレプトミケス・アウェルミティリス、ストレプトミケス・グリセオフスクス、ストレプトミケス・キンナモネンシス、ストレプトミケス・フラディアエ、ストレプトミケス・ロンギスポロフラウス、ストレプトミケス・ヒュグロスコピクス、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、ストレプトミケス・ラサリエンシス、ストレプトミケス・ウェネズエラエ、ストレプトミケス・アンティビオティクス、ストレプトミケス・リウィダンス、ストレプトミケス・リモスス、ストレプトミケス・アルブス、アミコラトプシス・メディテッラネイ、ストレプトミケス・ツクバエンシスなどである。好ましい菌株と、それを本発明で使用するのに合った形態にするのに好ましい修飾の具体例を以下に説明する。
【0019】
本発明で使用するのに適切なグリコシルトランスフェラーゼ(GT、それが生合成される通常の状況、通常の基質特異性を記載する)としては以下のものがある。
サッカロポリスポラ・エリトラエアのエリスロマイシン経路からのデソサミニルトランスフェラーゼeryCIIIとミカロシルトランスフェラーゼeryBV。
【0020】
ミクロモノスポラ・メガロミケアのメガロマイシン経路からのデソサミニルトランスフェラーゼmegCIII、ミカロシルトランスフェラーゼmegBV、メゴサミニルトランスフェラーゼ。
ストレプトミケス・アンティビオティクスのオレアンドマイシン経路からのオレアンドロシルトランスフェラーゼoleG2(ラムノースとオリボースも転移させる)とデソサミニルトランスフェラーゼoleG1。
【0021】
ストレプトミケス・フラディアエのチロシン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼtylMII、デオキシアローストランスフェラーゼtylN、ミカロシルトランスフェラーゼtylCV。
ストレプトミケス・ミカロファキエンスのミデカマイシン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼmidI、デオキシアローストランスフェラーゼ、ミカロシルトランスフェラーゼ。
【0022】
ストレプトミケス・ウェネズエラエのピクロマイシン/ナルボマイシン経路からのデソサミニルトランスフェラーゼdesVII。
サッカロポリスポラ・スピノサのスピノシン経路からのラムノシルトランスフェラーゼとフォロサミニルトランスフェラーゼ。
ストレプトミケス・ノドススのアンフォテリシン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼamphDI。
【0023】
ストレプトミケス・アウェルミティリスのアベルメクチン経路からのオレアンドロシルトランスフェラーゼ。
ストレプトミケスのニスタチン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼ。
アクチノプラネス・カエルレンスのポリエン67-121C経路からのミコサミニルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ(ミコサミンに転移させる)。
【0024】
ストレプトミケス・オリワケアオウスTu2353のエロラマイシン経路からのラムノシルトランスフェラーゼelmGT。
ストレプトミケス・アルギラケウスのミトラマイシン経路からのオリボシルトランスフェラーゼmtmGIV。
ストレプトミケス・ペウケティウスのダウノマイシン経路からのダウノサミニルトランスフェラーゼdnrS。
【0025】
ストレプトミケス・フラディアエTu2717のウルダマイシン経路からのロジノシルトランスフェラーゼurdGT1c、オリボシルトランスフェラーゼurdGT1b、ロジノシルトランスフェラーゼurdGT1a、オリボシルトランスフェラーゼurdGT2。
【0026】
上記の方法は、鋳型アグリコンの産生および/またはそれに続くプロセシングに関与する微生物宿主細胞内の1つ以上の遺伝子を除去または不活性化し、天然の鋳型アグリコンまたは産物の産生を抑制または変更するステップをさらに含んでいることが好ましい。
【0027】
さらに別の特徴によれば、本発明により、グリコシル化された複数のハイブリッド産物を産生することのできるライブラリーを生成するため、
1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ(GT)をコードしている核酸を用いて微生物宿主細胞を形質転換し、
1つ以上の鋳型アグリコンをGTに供給することによりGTに糖の1つ以上の部分を鋳型アグリコンに転移させてグリコシル化された上記複数のハイブリッド産物を産生させる操作を含む方法において、
上記の糖の1つ以上の部分、鋳型アグリコン、グリコシルトランスフェラーゼ、宿主細胞のいずれかが他の要素と異種である方法が提供される。
【0028】
さらに別の特徴によれば、本発明により、望む特性を有するグリコシル化されたハイブリッド産物を見つけるためにライブラリーをスクリーニングする操作をさらに含む方法が提供される。
好ましい実施態様では、このライブラリーは、グリコシル化された2つのハイブリッド産物を含んでいるが、グリコシル化されたハイブリッド産物を少なくとも10個含んでいることがより好ましく、グリコシル化されたハイブリッド産物を少なくとも50個含んでいることがさらに好ましく、グリコシル化されたハイブリッド産物を少なくとも100個含んでいることがそれ以上に好ましい。
【0029】
一実施態様では、本発明により、グリコシル化されたハイブリッド産物のスクリーニング方法であって、
1つの微生物宿主細胞、または2つ以上の異なる微生物宿主細胞を、それぞれ、その微生物菌株と異種のグリコシルトランスフェラーゼ(GT)をコードしている核酸を用いて形質転換して作ることにより宿主細胞のライブラリーを形成し、
このライブラリーを1つ以上の鋳型アグリコンに供給し、
このライブラリーをスクリーニングして、GTによって産生されたグリコシル化されたハイブリッド産物の中から糖の1つ以上の部分を鋳型アグリコンに転移させたものを探す操作を含む方法が提供される。
【0030】
この明細書の方法は、グリコシル化された望むハイブリッド産物を産生する宿主細胞を単離し、それをさらに処理(例えば細胞を培養し、産生された産物を単離)して産物が大量に得られるようにする操作を含んでいることが好ましい。ハイブリッド産物の多様性を最大にするためには、スクリーニング法において、少なくとも2つの異なる宿主細胞、および/または、鋳型アグリコン、および/または、グリコシルトランスフェラーゼ、および/または、活性化された糖の一部、および/または、糖の一部を鋳型アグリコンに転移させる前または転移させた後にその糖の一部を修飾することのできる異種の修飾遺伝子を使用することが好ましい。使用する異なる細胞および/または鋳型は、少なくとも3つであることがより好ましく、少なくとも5つであることがさらに好ましく、少なくとも10であることがさらに好ましく、少なくとも20であることがさらに好ましく、少なくとも50であることが最も好ましい。
【0031】
このスクリーニング法により、多数の新規なハイブリッド産物を生成させてスクリーニングすることができるため、生成させてテストする産物の数と多様性が最大になる。望ましいハイブリッド産物は、その(例えば抗生物質としての)生物活性によって検出することができる。
本発明を利用した別の多くの方法でハイブリッド・グリコシドを産生させうることは、当業者には明らかであろう。例えば、
(1)必要なすべての遺伝子を、別々に、または単一のカセットとして同じ細胞に入れることによって、あるいは
(2)発現したいくつかの遺伝子を含む組み換え細胞を用いた1回の発酵による産物を、今度は発現した残りの遺伝子を含む2回目の生体内変化を起こさせる菌株に供給するという具合に段階式に行なうことによって可能である。
【0032】
後者の場合、本発明の方法には、
鋳型アグリコンと糖の一部のいずれか一方を第1の宿主細胞の中で第1の産物として産生させ、
必要に応じてこの第1の産物を第1の宿主細胞の培養物から精製し、
この第1の産物を、鋳型アグリコンと糖の一部のうちで残っているほうをコードしている1つ以上の遺伝子と、1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼとを含む第2の宿主細胞に添加することにより、糖の一部をグリコシルトランスフェラーゼに転移させてグリコシル化されたハイブリッド産物を産生させる操作を含めることができる。
【0033】
第1の産物は、精製の程度がさまざまでよい。すなわち第1の産物は、濾過した上清として、あるいは単離した形態で、あるいは第2の宿主細胞での産生に問題のない任意の精製度で使用することが可能である。
いくつかの実施態様では、宿主細胞は、クローニングして発現させる糖生合成遺伝子をさらに含むことが可能である。含まれる遺伝子は、天然のデオキシ糖または新規なデオキシ糖を供給するのに必要な全遺伝子群(例えば放線菌細胞に共通する代謝中間物から活性化されたdTDP-ミカロースを作るのに必要とされる、サッカロポリスポラ・エリトラエアなどからのあらゆる特異的eryB遺伝子)、あるいは、いくつかの遺伝子が失われているために変化した状態になった活性化された糖を提供する遺伝子群、あるいは内部デオキシヘキソース生合成経路によって産生される活性化された糖のタイプを変更するいくつかの個々の遺伝子だけである。したがって、本発明により、鋳型アグリコンを修飾する1つ以上の遺伝子を用いて宿主細胞を形質転換することができる。それは、例えば、鋳型の既存の機能を変化させることを目的としてグリコシル化が可能な別の位置を提供するため、あるいは、グリコシル化されたハイブリッド産物を下流でプロセシングすることに関与する別の位置を提供するためである。
【0034】
細胞内部でのポリケチドの生合成を特異的に抑制するセルレニンの存在下で細胞をさらに培養すること、および/または、細胞内に天然の状態で存在している1つ以上のPKS遺伝子を突然変異させて除去または不活性化することができる。いずれの場合にも、供給されたアグリコンとの競合が減る。
さらに別の特徴によれば、本発明により、この明細書に記載したいずれかの方法によって得ることのできるグリコシル化されたハイブリッド産物が提供される。
【0035】
さらに別の特徴によれば、本発明により、糖の一部を鋳型アグリコンに結合させることによって得られる、グリコシル化された新規なハイブリッド産物が提供される。ハイブリッド産物の例としては、
(a)7位においてエリスロノリドに結合した1つ以上の天然の糖、
(b)エリスロノリドに結合した1つ以上のラムノースまたは置換された(例えばメチル基)ラムノース、
(c)エリスロノリドに結合した1つ以上のミカロースまたは置換されたミカロース、
エリスロノリド(例えばエリスロノリドB)上に(a)、(b)、(c)の糖置換基を組み合わせたもの
のいずれかを含むハイブリッド産物が挙げられる。
【0036】
エリスロマイシンの鋳型に基づくハイブリッド産物の例としては、
(a)7位においてエリスロマイシンに結合した1つ以上の天然の糖、
(b)エリスロマイシンに結合した1つ以上のミカロースまたは置換されたミカロース、
(c)エリスロマイシンに結合した1つ以上のミカミノースまたは置換されたミカミノース、
エリスロマイシン(例えばエリスロマイシンA)上に(a)、(b)、(c)の糖置換基を組み合わせたもの
のいずれかを含むハイブリッド産物が挙げられる。
【0037】
チラクトンの鋳型に基づくハイブリッド産物の具体例としては、
(a)チラクトンに結合した1つ以上のグルコースまたは置換されたグルコース、
(b)チラクトンに結合した1つ以上のデソサミノースまたは置換されたデソサミノース、
(c)チラクトンに結合した1つ以上のミカミノースまたは置換されたミカミノース、
(d)チラクトンに結合した1つ以上のラムノースまたは置換されたラムノース、
(a)、(b)、(c)、(d)の糖置換基の組み合わせ(例えばラムノースとミカミノース)がチラクトンに結合したもの(例えば23-O-ラムノシル-5-O-ミカミノシル-チラクトン)
のいずれかを含むハイブリッド産物が挙げられる。
【0038】
本発明のハイブリッド産物の特別な例としては、
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドB、
3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドB、
3-O-(2',3',4'-トリス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドB、
3-O-ミカロシル-エリスロノリドB、
8a-ヒドロキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドB、
8,8a-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドB、
8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドB、
8-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドB、
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、
3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、
3-O-(2',3',4'-トリス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、
5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンA、
5-O-ミカミノシル-4''-O-ミカロシル-エリスロマイシンA、
5-O-グルコシル-チラクトン、
5-O-デソサミニル-チラクトン、
23-O-ラムノシル-5-O-ミカミノシル-チラクトン、
5-O-(2'-O)-ビス-グルコシル-チラクトン、
3-O-ラムノシル-8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドB、
3-O-ラムノシル-8,8a-ジヒドロキシ-エリスロノリドB、
3,5-ジ-O-ミカロシル-エリスロノリドBがある。
【0039】
さらに別の特徴によれば、本発明により、この明細書に記載した方法を実行するため、宿主細胞を形質転換する遺伝子群を組み立てて1つのカセットにする方法が提供される。グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子とメチルトランスフェラーゼ遺伝子をさまざまに組み合わせた遺伝子カセットを作製する方法は、以前に報告されている方法(WO 00/77181A2)に変更を施し、actII-Orf4調節遺伝子の制御下で発現させる遺伝子カセットを構成するというものである。適切な菌株をバックグラウンドにしてこれら遺伝子カセットを発現させるというのは、新規なポスト-PKS修飾ポリケチドを、ランダムに、または制御下で産生させる強力な方法である。この方法は、XbaI制限部位をPCR断片の3'末端と5'末端に導入することに基づいている。バックグラウンドの菌株のDamメチラーゼに対して感受性のあるPCR断片の5'末端にXbaI部位を導入すると、この部位がXbaIによってそれ以上に消化されることがなくなる。各遺伝子のシャイン−ダルガーノ配列の5'末端を残したままにするため、これら遺伝子を含むpSG142由来の構造体を鋳型として用いた。dam-宿主菌株(例えば、大腸菌ET 12567、McNeil他、Gene、第111巻、61〜68ページ、1992年)から単離したプラスミドDNAを用いると、増幅した遺伝子をXbaI断片として単離することができる。大腸菌DH10Bなどの活性なDamメチラーゼを含む宿主菌株を用いると、これら断片を順番にクローニングして遺伝子カセットに組み込むことができる。この方法により、同じやり方を何度も繰り返すことによって長さと順番が異なる遺伝子カセットを構成する手段が提供される。ここに説明したこのやり方に関する概略と単離した遺伝子カセットを図18に示す。いくつかのケースでは、ヒスチジン・タグをコードする核酸を遺伝子カセットの3'末端に融合した場合に、末端の遺伝子の発現が驚くほど増加した。
【0040】
上記宿主細胞の中に2つ以上の遺伝子を導入して発現させる必要がある場合には、必要なすべての遺伝子産物の同等な発現を保証しながらいかにしてこの目的を達するかについて、当業者であれば多数の方法が容易に思い浮かぶであろう。しかし本発明により、この目的を達成するための新規な方法と発現カセットがさらに提供される。一実施態様では、糖経路の個々の遺伝子、あるいは異種修飾遺伝子、あるいは両方のタイプの遺伝子を先頭から末尾まで段階を追って連続的に組み立てることができる。そのため、これら遺伝子を共通した1つのプロモータの制御下にある単一のDNA領域に置くことができるだけでなく、単一のユニットまたはカセットとしてのこれら遺伝子に対して同時にさらに遺伝子操作を行なうことも容易にできる。このようなカセットの一部を構成している各遺伝子は、天然の遺伝子でも修飾した遺伝子でもよく、天然遺伝子を合成したものでもよい。なお天然の遺伝子は、上記宿主細胞から得られたもの、あるいは上記宿主細胞とは異種のものが可能である。
【0041】
したがって、さらに別の特徴によれば、本発明により、1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子と、プロモータの制御下で作用可能式に連結した1つ以上の補助遺伝子とを含む発現カセットが提供される。すでに説明したように、発現カセットを用いて形質転換した宿主細胞に糖の1つ以上の部分を産生させ、次いでその部分を鋳型アグリコンに転移させることが可能であるためには、補助遺伝子として、1つ以上の糖(“糖経路の遺伝子”)の生合成に関与するタンパク質をコードしている遺伝子を利用することができる。異種補助遺伝子の別の例としては、糖の一部をGTによってアグリコンに転移させる前または転移させた後にその糖の一部または鋳型アグリコンのプロセシングを行なうことに関与する酵素が挙げられる。そのような酵素の具体例としては、鋳型アグリコンのヒドロキシル化において重要なメチルトランスフェラーゼやP450などが挙げられる。カセット内の遺伝子は、単一の、好ましくは強力なプロモータの制御下に置かれることが好ましい。さらに、本発明の発明者は、末端の遺伝子に隣接する(すなわち3'末端のすぐ隣りにある)ヒスチジン・タグをコードしている核酸配列を発現カセットに含めることにより、カセット内でプロモータから遠い位置にある遺伝子の発現が向上することを見いだした。
【0042】
さらに別の特徴によれば、本発明により、1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子と、1つ以上の補助遺伝子とを含む発現カセットを作製する方法が提供される。この方法は、1つのプロモータの制御下で遺伝子相互の機能を関連づける操作を含んでいる。この方法にはさらに、発現カセットを用いて宿主細胞を形質転換し、この発現カセット内の遺伝子を発現させて、GTと、補助遺伝子がコードしているタンパク質とを産生させる操作を含めることができる。
【0043】
さらに別の特徴によれば、本発明により、このような発現カセットを用いて形質転換した宿主細胞が提供される。
本発明の実施態様を添付の図面を参照してこれから具体的に説明するが、本発明がこれら具体例に限定されることはない。
【0044】
材料と方法
大腸菌XL1-ブルーMR(ストラタジーン社)と大腸菌DH10B(ジブコBRL社)を、サムブルックらが記載している(『分子クローニング、実験室マニュアル』第2版、1989年、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー出版社)ようにして2×TY培地で増殖させた。ベクターLitmus28とpUC18をニュー・イングランド・バイオラブズ社から入手し、ベクターpQE-16をキアジェン社から入手した。ベクターpIJ702(Katz他、J. Gen. Microbiol.、第129巻、2703〜2714ページ、1983年)は、D.A.ホップウッド(ジョン・イン・インスティチュート、ノリッジ、イギリス)の好意により提供された。cosAB35に由来する6.2kbのBglII断片を含むベクターpUC2GをクローニングしてpUC18に導入したものは、J.サラス(オビエド大学、スペイン)の好意により提供された。コスミドcos25G8に由来する5076bpのPvuII断片を含むベクターpLQD1をクローニングしてpUC18に導入したものは、J.サラス(オビエド大学、スペイン)の好意により提供された。
【0045】
ストレプトミケス・フラディアエ・コスミド・ライブラリーから単離したコスミド番号7は、J.コルテスの好意により提供された。大腸菌形質転換細胞は、100μg/mlのアンピリシンを用いて選択した。サッカロポリスポラ・エリトラエアのNRRL2338-レッド変異菌株(Hessler他、Appl. Microbiol. Biotechnol.、第47巻、398〜404ページ、1997年)は、J.M.ウェーバーの好意により提供され、液体培地用のM1-102寒天(Kaneda他、J. Biol. Chem.、第237巻、322〜327ページ、1962年)、R2T20(Yamamoto他、J. Antibiot.、第34巻、1304〜1313ページ、1986年)、R2T2(R2Tと同じ(Weber他、J. Bacterial.、第164巻、425〜433ページ、1985年)だが、ペプトンはなし)、TSB(ディフコ社)の上で30℃に維持した。枯草菌ATCC6633を報告されている(Gaisser他、1997年、前掲文献)ようにして用い、バイオアッセイによりエリスロマイシンの産生を評価した。このアッセイに変更を施し、J.-M.ミシェル(ヘキスト・マリオン・ルセル社、ロマンヴィル、フランス)の好意により提供されたエリスロノリドBまたは3-α-ミカロシル-エリスロノリドBを供給した後のエリスロマイシンの産生を調べた。両方の代謝物(10mMのストック溶液を10μl)を、サッカロポリスポラ・エリトラエア層の中に切り込んで入れた寒天ウエルに添加し、報告されているやり方(Gaisser他、1997年、前掲文献)で30℃にて一晩インキュベートし、枯草菌層内のサッカロポリスポラ・エリトラエア・コロニーの周辺における抑制領域の広がりを評価した。サッカロポリスポラ・エリトラエアに組み込んだ発現ベクターは、プラスミドpCJR24(Rowe他、Gene、第216巻、215〜223ページ、1998年)由来のものであった。25μg/mlのチオストレプトンを用い、プラスミドを含むサッカロポリスポラ・エリトラエアを選択した。抗生物質の産生を調べるため、報告されているやり方(Gaisser他、1997年、前掲文献)に従ってサッカロポリスポラ・エリトラエア菌株をスクロース−コハク酸塩培地(Caffrey他、FEBS Lett.、第304巻、225〜228ページ、1992年)の中で増殖させ、細胞を遠心分離により回収した。チラクトンは、B.ウィルキンソン(グラクソ・グループ・リサーチ社、スティーヴェネッジ、イギリス)の好意により提供された。10mg/mlのストック溶液150μlを500mlのサッカロポリスポラ・エリトラエア発現用培養物に添加した。
【0046】
DNAの操作とシークエンシング
サムブルックら(1989年、前掲文献)が記載しているようにしてDNAを操作し、PCRで増幅し、電気穿孔を行なった。サッカロポリスポラ・エリトラエアに関するプロトプラスト形成と形質転換の方法は報告されている通りである(Gaisser他、1997年、前掲文献)。DIG DNA標識キット(ベーリンガー・マンハイム社)を用いてジゴキシゲニンで標識したプローブを用い、サザン・ハイブリダイゼーションを行なった。DNAのシークエンシングは、サンガーら(P.N.A.S. USA、第74巻、5463〜5467ページ、1977年)の方法で実施した。ここでは、アプライド・バイオシステムズ373Aシークエンサを用いて二本鎖DNA鋳型上での自動化DNAシークエンシングを行なった。配列データは、スタデン・プログラム(Staden, R.、Nucl. Acids Res.、第12巻、521〜528ページ、1984年)と、ジェネティックス・コンピュータ・グループ(GCG、バージョン10)というソフトウエア・パッケージ(Devereux他、Nucl. Acids Res.、第12巻、387〜395ページ、1984年)を用いて分析した。
【0047】
抽出と質量分析
それぞれの発酵培養液10mlを遠心分離し、上清のpHを9に調節した。上清を同じ容積の酢酸エチルで2回抽出した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、水分を完全に蒸発させ、0.3mlのアセトニトリル/水(1:1 v/v)に再び溶解させた。バイオQ(マイクロマス社、マンチェスター、イギリス)またはフィニガンLCQ(フィニガン、カリフォルニア州)という装置を用いて質量分析を行なった。高分解能のスペクトルがブルーカー・バイオアペックスII FT-ICR(ブルーカー社、ブレーメン、ドイツ)で得られた。
【0048】
NMRによる分析を行なうため、細菌培養液を遠心分離し、上清のpHを約9に調節した。上清を同じ容積の酢酸エチルで3回抽出し、抽出液をまとめ、乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で水分を蒸発させたところ、黄色の固形物が得られた。最終的な精製は、ギルソン315システムにおいて21mm×250mmのプロディギーODS3カラム(フェノメネックス社、マックルズフィールド、イギリス)を用いて逆相HPLCを行なうことにより実現した。移動相は、CH3CNが45%と20mMのNH4OAcが55%[HCOOHによりpH5.5]からなる2相システムとして21ml/分の速度で吸引したが、25分間でCH3CNが95%になるまで直線的に増加した。
【0049】
1Hの核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、800MHzではブルーカー・アヴァンスDRX800により、500MHzではブルーカー・アヴァンスDRX500により取得した。13CのNMRスペクトルは、100MHzにてブルーカー・アヴァンスDRX400スペクトロメータで取得した。NMR分析用のサンプルはCD3ODに溶かし、測定は300Kで行なった。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)は、ヒューレット・パッカードHP1100液体クロマトグラフを用いて行なった。液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、タンデム質量分析(MS/MS)、MSnのスペクトルは、フィニンガムMAT社(サンノゼ、カリフォルニア州)のLCQを用いて取得した。高分解能四重極飛行時間型MS/MSデータは、マイクロマス社(マックルズフィールド、イギリス)のQTOFを用いて取得した。高分解能MSnは、ブルーカー・ダルトニクス・バイオアペックスII4.7Tフーリエ変換イオン・サイクロトロン共鳴質量分析器を用いて取得した。そのとき、外部較正物質としてPEGを用いた。
【0050】
染色体におけるeryBVの欠失(図1A)
XbaI/NheIとXbaI/SpeIを用いてベクターpNCO28(Gaisser他、1997年)(図1A)を消化させ、3.8kbのバンドと0.4kbの断片を単離し、それらを連結して導入することにより大腸菌DH10Bを形質転換した。eryBVが欠失したベクター構造体であるプラスミドpNCOΔを単離し、SpeI/NheI連結部位をシークエンシングにより確認した。そのプラスミドは、BglIIを用いて消化させた後、BglIIで切断したpIJ702と連結し、それを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpNCOΔpIJ702を単離し、それを用いてサッカロポリスポラ・エリトラエアNRRL2338(赤変異体)を形質転換した。チオストレプトン耐性のあるコロニーを選択し、染色体への組み込みをサザン分析によって確認した。2回目の組み換えを行なえるようにするため、組込体を30℃にてTSB培地(ディフコ社)で少なくとも4回継代培養した。単一のコロニーをチオストレプトン感受性とエリスロマイシン産生によりスクリーニングした。ClaI/PstIとNcoIで消化させた野生型菌株と突然変異体Δorf14の染色体DNAを、プラスミドpNCOΔの1.5kbのNcoI断片を用いて調べることにより、染色体においてeryBVの1247ntが欠失していることを確認した。野生型サッカロポリスポラ・エリトラエアを分析したところ、ハイブリダイゼーションの後、予想された2.9kbのClaI/PstIバンドと2.7kbのNcoIバンドが見られた。Δorf14の染色体DNAを同様にして処理すると、1.6kbのClaI/PstI断片と1.5kbのNcoI断片だけが検出された。これは、eryBVが除去されていたことを示している。突然変異体Δorf14をバイオアッセイで調べた。枯草菌層内のサッカロポリスポラ・エリトラエア・コロニーの周辺には、抑制領域が観察されなかった。これは、この突然変異体菌株がエリスロマイシンAを産生していないことを示している。
【0051】
染色体におけるeryCIIIの欠失(図1B)
NcoI/XhoI(図1B)を用いてプラスミドλSE55(Haydock他、Mol. Gen. Genet.、第230巻、120〜128ページ、1991年)を消化させ、2.4kbの断片をクローニングし、NcoI/XhoIで消化させたベクターLitmus28に組み込んだ。プラスミドpLitNXを単離し、制限酵素による消化とシークエンシングによりその特性を明らかにした。鋳型としてのλSE55と、プライマーSG10 5'-GGCGATGTGCCAGCCCGCGAAGTT-3'およびSG11 5'-AGCCGTCACCGGCCATGGTCGTCGGCATCT-3'を用い、573ntの断片をPCRにより増幅し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングしてSmaIで切断したpUC18に組み込んだ。このプラスミド構造体は、配列を調べた後、NcoIで消化させ、0.5kbの断片を単離し、NcoIで消化させたpLitNXと連結し、それを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpLitNXを単離し、正しい挿入体にはeryCIIIに1191ntの欠失があることを、制限酵素による消化とシークエンシングによって確認した。プラスミドpLitNXをBglIIで消化させ、以前にBglIIで処理したpIJ702と連結し、この混合物を用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpLitNXPIJを上記のようにして単離し、それを用いてサッカロポリスポラ・エリトラエアΔorf14を形質転換した。組み込みは、サザン・ブロット・ハイブリダイゼーションで確認した。継代培養した後、上記のように単一のコロニーをチオストレプトン感受性によりスクリーニングした。チオストレプトンに対して感受性のあるコロニーを小さなパッチの中で増殖させ、よく増殖した領域から切り出した寒天を、3α-ミカロシル-エリスロノリドBを含むバイオアッセイ用プレートの上に置いた。単離したサッカロポリスポラ・エリトラエア菌株DM(Δorf14Δorf8)の周辺には、抑制領域が観察されなかった。染色体における1247ntの欠失は、突然変異体Δorf14に対してサザン・ブロット・ハイブリダイゼーションを上記のようにして行なうことにより確認した。NcoIとClaI/BglIIで消化させた野生型菌株と突然変異体DM(Δorf14Δorf8)の染色体DNAを、ジゴキシゲニンで標識した573ntのDNA断片をプライマーSG10とSG11で増幅したものを用いて調べることにより、染色体においてeryCIIIの1191ntが欠失していることを確認した。野生型サッカロポリスポラ・エリトラエアを分析したところ、ハイブリダイゼーションの後、予想された1.7kbのNcoIバンドと12.4kbのBglIIバンドが見られた。DMの染色体DNAを同様にして処理すると、11kbのBglII断片と0.5kbのNcoI断片だけが検出された。これは、eryCIII遺伝子の1.2kbが除去されていたことを示している。
【0052】
染色体におけるeryAの欠失
複数の異種グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を含むサッカロポリスポラ・エリトラエア突然変異体菌株にさまざまなアグリコンを供給できるようにするため、JC2/Del60(Rowe他、1998年、前掲文献)について以前に報告されているeryAの欠失をサッカロポリスポラ・エリトラエア突然変異体菌株DMにも導入した。サッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2を単離し(図2)、3つの欠失すべて(ΔeryAΔBVΔCIII)をサザン・ブロット分析で確認した。サッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2の培養液をエレクトロスプレー質量分析で分析した。エリスロマイシンAと前躯体代謝物のいずれに対応するピークも見られなかった。
【0053】
eryBVを発現させるプラスミドの作製
プライマー1518 5'-GGGGGATCCCATATGCGGGTACTGCTGACGTCCTTCG-3'と1519 5'-GAAAAGATCTGCCGGCGTGGCGGCGCGTGAGTTCCTC-3'を用いたPCRによりeryBV遺伝子を増幅した。これらプライマーは、eryBVの5'末端にBamHI部位とNdeI部位を導入し、3'末端にBglII部位を導入する。T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理した後、PCR産物をクローニングしてSmaIで切断したpUC18に組み込み、得られたプラスミドを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。単離したプラスミド中のeryBVの配列を調べた後、制限酵素BamHIとBglIIを用いてこのプラスミドを消化させ、1.2kbの断片を単離し、それを同様にして消化させたベクターpQE-16の断片と連結した。その結果、C末端のヘキサヒスチジン・タグがeryBVに導入された。このpQE-16由来のプラスミドをNdeIとXbaIで消化させ、2.2kbの断片を単離し、それを以前にNdeIとXbaIで切断したベクターpCJR24と連結することにより、プラスミドpSG2414を得た。このプラスミドを導入してサッカロポリスポラ・エリトラエアのゲノムを組み換えられるようにするため、エリスロマイシン生合成クラスター(Pereda他、Gene、第193巻、65〜71ページ)のermE遠位フランクからのコスミドcos6B(Gaisser他、1997年、前掲文献)に由来する1.7kbのNcoI断片を単離し、クローニングして、pQE-16由来のNcoI部位に導入した。最終構造体をpSG142と名づけた。
【0054】
eryCIIIを発現させるプラスミドの作製
eryCIIIを発現させるため、プライマーSG14 5'-GAAAAGATCTTCGTGGTTCTCTCCTTCCTGCGGCCAG-3'とSG15 5'-GGGGGATCCCATATGCGCGTCGTCTTCTCCTCCAT-3'を用い、λSE55を鋳型としてeryCIIIを増幅した。1287bpのDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離し、eryCIIIの配列を確認した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.2kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGCIIIを単離した。
【0055】
oleG2を発現させるプラスミドの作製
oleG2を発現させるため、プライマーOle3 5'-GGCGGATCCCATATGCGCGTACTGCTGACCTGCTTCGCC-3'とOle4 5'-CCAGATCTGCCCGCATGGTTCCCGCCTCCTCGTCC-3'を用い、プラスミドpUCG2またはストレプトミケス・アンティビオティクスの染色体DNAを鋳型としてoleG2を増幅した。PCR断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離し、oleG2の配列を確認した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.3kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGOLEG2を単離した。
【0056】
tylM2を発現させるプラスミドの作製
tylM2(Gandecha他、Gene、第184巻、197〜203ページ、1997年)を発現させるため、プライマーTyl1 5'-GTGGAGATCTCCTTTCCGGCGCGGATCGGGACCG-3'とTyl2 5'-GGGGGATCCCATATGCGGGTACTGCTGACCTGTATCG-3'を用い、コスミド番号7またはストレプトミケス・フラディアエの染色体DNAを鋳型としてtylM2を増幅した。プライマーpTyl2は、既知のグリコシルトランスフェラーゼの配列を相互に比較して決定した。公開されている配列(登録番号X81885)では21位のメチオニンが開始コドンとなっている。最近の更新(X81885/1999年6月)で指摘されたtylM2のDNA配列における変更は、本件の仕事で独立に確認した。PCRで増幅したDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離し、tylM2の配列を確認した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.3kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGTYLM2を単離した。
【0057】
desVIIを発現させるプラスミドの作製
desVII(Xue他、P.N.A.S. USA、第95巻、12111〜12116ページ、1998年)を発現させるため、プライマーPik1 5'-GGAGGATCCCATATGCGCGTCCTGCTGACCTCGTTCG-3'とPik2 5'-GGGGTGCAGATCTGTGCCGGGCGTCGGCCGGCGGG-3'を用い、ストレプトミケス・ウェネズエラエの染色体DNAを鋳型としてdesVIIを増幅した。PCRで増幅したDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離し、desVIIの配列を確認した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.3kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGDESVIIを単離した。
【0058】
tylHを発現させるプラスミドの作製
tylH(Fouces他、Microbiology、第145巻、855〜868ページ、1999年)を発現させるため、プライマーTylH1 5'-CCGCCCGGCCCAGATCTCCGCGGCCCTCATGCGT-3'とTylH2 5'-TTGAGGCCGCAGCGACATATGTCCTCGTCCGGGGA-3'を用い、ストレプトミケス・フラディアエの染色体DNAを鋳型としてtylHを増幅した。PCRで増幅したDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.6kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGTYLH1を単離した。
【0059】
tylNを発現させるプラスミドの作製
tylN(Fouces他、1999年)を発現させるため、プライマーTyl5 5'-GGGCATATGCGCATAGCGTTGCTGACCATGGGCT-3'とTyl4 5'-GGCCAGATCTGCCGGGGGTGTGTGCCGTGGTCCGGG-3'を用い、ストレプトミケス・フラディアエの染色体DNAを鋳型としてtylNを増幅した。PCRで増幅したDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.3kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGTYLNを単離した。
【0060】
tylHとtylNの両方を発現させるプラスミドの作製
プラスミドpSGTYLHをBglIIで消化させ、プラスミドpSGTylNをAflII/NheIで消化させた。これらの断片に対し、クレノウ・ポリメラーゼ(サムブルック他、1989年、前掲文献)を用いてフィルイン反応を行なわせた。DNAに由来するベクターpSGTYLHを単離し、TylNをコードしている1.5kbの断片と連結した。大腸菌DH10Bをこの連結混合物を用いて形質転換した。プラスミドpSGTYLHNを単離した。
【0061】
oleDを発現させるプラスミドの作製
oleD(Hernandez他、Gene、第134巻、139〜140ページ、1993年)を発現させるため、プライマーOleD1 5'-CCGGATCCCATATGACCACCCAGACCACTCCCGCCCACATC-3'とOleD2 5'-CGAGATCTCAAAGCGGATCTCTGCCGGTCGGAACGGA-3'を用い、pLQD1(Louis M. Quiros)またはストレプトミケス・アンティビオティクスの染色体DNAを鋳型としてoleDを増幅した。PCRで増幅したDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.3kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGOLEDを単離した。
【0062】
3-O-ラムノシル-エリスロノリドBと3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロノリドBの単離
プラスミドpSGOLEG2を導入してサッカロポリスポラ・エリトラエア突然変異体DM細胞を形質転換し、形質転換されたこの菌株の培養液をゲサーら(1997年)とゲサーら(1998年)が記載しているようにして分析した。サッカロポリスポラ・エリトラエア突然変異体DM(pSGOLEG2)をエレクトロスプレー質量分析で分析したところ、異なる2つの新しいピークがm/z=555とm/z=571の位置に存在していることが明らかになった。これらのピークは、増殖、抽出、分析の条件を同じにしたサッカロポリスポラ・エリトラエア菌株DMの培養液には存在していなかった。MS/MS実験により、m/z=571のイオンが断片化してm/z=425のイオン(エリスロノリドBのナトリウム塩EB-Na+に対応)になったことが明らかになった。これは、m/z=146(ラムノース)が失われたことに対応している。m/z=555のイオンの断片化パターンは、m/z=571のイオンの断片化パターンと同じだったが、16質量単位だけ下方にシフトしていた。これは、ヒドロキシ基が失われたことを示す。これは、m/z=555の化合物がラムノシル-6-デオキシエリスロノリドBであることの証拠だった。これらの構造を確認するため、培養液1.5リットルを用いて4.6mgの3-O-ラムノシル-エリスロノリドBと2.7mgの3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロノリドBを精製した。両方の化合物を分析し、構造を1Hと13CのNMRによって完全に確認した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
spnIを発現させるプラスミドの作製
プライマーSpnI1 5'-CTTCATATGAGTGAGATCGCAGTTGCCCCCTGGTCG-3'とSpnI2 5'-AACAGATCTGCCGCCCTCGACGCCGAGCGCTTGCC-3'を用いてPCRによりSpnI遺伝子を増幅した。これらプライマーにより、SpnIの5'末端にはNdeI部位が、3'末端にはBglII部位が導入される。サッカロポリスポラ・スピノサの染色体DNAを鋳型として用いた。このPCR産物をT4ポリヌクレオチドキナーゼで処理した後、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入し、得られたプラスミドを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。単離したプラスミド中のspnIの配列を調べ、制限酵素NdeIとBglIIを用いてこのプラスミドを消化させた。1.2kbの断片を単離し、それを同様にして消化させたベクターpSG142の断片と連結した。その結果、C末端のヘキサヒスチジン・タグがspnIに導入された。この最終構造体をpSGSpnI(図6)と名づけた。公開されているDNA配列登録番号AY007564との違いが検出された(図6B)。
【0068】
spnKを発現させるプラスミドの作製
spnKを発現させるため、プライマーSpnK1 5'-TCATCCATATGTCCACAACGCACGAGATCGAAACCGT-3'とSpnK2 5'-TCTGCAGATCTCTCGTCCTCCGCGCTGTTCACGTCGGCCA-3'を用い、サッカロポリスポラの染色体DNAを鋳型としてspnKを増幅した。1.2kbのDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離し、spnKの配列を確認した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.2kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGSpnKを単離した(図6)。C末端のヘキサヒスチジン・タグがSpnKに導入された。
【0069】
SpnHを発現させるプラスミドの作製
SpnHを発現させるため、プライマーSpnH1 5'-TTCTAGAGATCTACCACAACCTGGTATTCGTGGAGAA-3'とSpnH2 5'-AACATATGCCCTCCCAGAACGCGCTGTACCTGG-3'を用い、サッカロポリスポラの染色体DNAを鋳型としてspnHを増幅した。PCRで増幅したDNA断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離し、spnHの配列を確認した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、0.9kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGSpnHを単離した(図6)。
【0070】
生体内変化菌株SGT2pSGSpnI、SGT2pSGSpnK、SGT2pSGSpnHの単離
プラスミド構造体pSGSpnI、pSGSpnK、pSGSpnHを用いてサッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2(Gaisser他、2000年)を形質転換した。形質転換体は、染色体DNAを単離した後、PCR分析を行なうことによって確認した。PCR産物を制限酵素により消化させて評価したところ、SpnI、SpnK、SpnHに関するDNA断片のパターンは予想通りであった(図7、図8、図9)。
【0071】
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製
3-O-ラムノシル-エリスロノリドB(Gaisser他、2000年)を用いた供給実験を、報告されている(Gaisser他、1997年)ようにして行なった。菌株SGT2とSGT2pSGSpnIの培養物に3-O-ラムノシル-エリスロノリドBを供給し、30℃にて3〜5日間にわたってインキュベートし、エレクトロスプレー質量分析で分析した(図10)。SGT2pSGSpnIの上清において、新しいピークが、保持時間17.5分、m/z=545([M-H2O]H+)、m/z=585([M]Na+)の位置に見られた。
【0072】
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの単離
上に説明したような標準的な微生物学の方法を用い、3-O-ラムノシル-エリスロノリドBを含むDMpSGOleG2培養物の上清1リットルを無菌濾過し、SGT2pSGSpnI培養物に供給した。保持時間17.5分、m/z=545([M-H2O]H+)、m/z=585([M]Na+)の上記の新しい化合物を、以前に報告されている(Gaisser他、2000年)ようにしてこの培養物の上清から単離した。この新しい化合物は、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBであることがわかった(図11)。
【0073】
【表5】
【0074】
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの供給
3-O-ラムノシル-エリスロノリドBを供給したSGT2pSGSpnI培養物を、30℃でインキュベートした。標準的な微生物学の方法を用い、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBを含む上清を遠心分離し、無菌濾過し、菌株SGT2とSGT2pSGSpnKの培養物に添加した。上清を30℃で数日間インキュベートした後、エレクトロスプレー質量分析で分析した(図12)。保持時間20.7分、m/z=559([M-H2O]H+)、m/z=599([M]Na+)の新しいピークが検出された。これは、菌株GT2pSGSpnKの培養物の上清中に3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBが存在していることを示す。この新しい化合物をNMRで分析するのに十分な量を用意するため、プラスミドpSGSpnIKHを単離した。
【0075】
発現プラスミドpSGSpnIKHの作製
プラスミドpSGSpnHをBglIIで消化させ、ベクターDNAを単離した後、遺伝子spnHとspnKの両方を含む発現プラスミドを単離した。プラスミドpSGSpnKをAflII/NheIで消化させ、1.5kbのDNAバンドを単離した。単離したDNA断片を用い、サムブルックら(1989年)が報告しているようにしてフィルイン反応を行なわせた後、連結と、大腸菌DH10Bの形質転換を行なった。プラスミドpSGSpnHKを単離した(図13)。プラスミドpSGSpnHKをXbaIで消化させ、ベクターDNAを単離した。プラスミドpSGSpnIをAflII/NheIで消化させ、1.5kbのDNAバンドを単離した。単離したDNA断片を用い、サムブルックら(1989年)が報告しているようにしてフィルイン反応を行なわせた後、連結と、大腸菌DH10Bの形質転換を行なった。プラスミドpSGSpnIKHを単離し(図13)、サッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2を形質転換した。
【0076】
3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製
標準的な微生物学の方法を用い、3-O-ラムノシル-エリスロノリドBを含むDMpSGOleG2培養物の上清1リットルを無菌濾過し、SGT2pSGSpnIKH培養物に添加した。この培養物の上清から新しい化合物を単離し、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製において記載した方法を用いてNMRで分析した。この新しい化合物は、3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBであることがわかった(図14)。
【0077】
【表6】
【0078】
m/z=613の小さなピークが検出された。MS/MS分析によれば、このピークは3-O-(2',3',4'-トリス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBを表わしている(図15)。
【0079】
3-O-ラムノシルエリスロマイシンと3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロマイシンの形成
プラスミドpSGCIIIを用いてサッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2細胞を形質転換して突然変異体菌株SGT2pSGCIIIを作り、形質転換したこの菌株の培養液を、ゲサーら(1997年)とゲサーら(1998年)が記載しているようにして分析した。3-O-ラムノシル-エリスロノリドBを含むサッカロポリスポラ・エリトラエア突然変異体DM(pSGOLEG2)の培養液からの上清をSGT2pSGCIII細胞に供給した。エレクトロスプレー質量分析を用いて上清を分析したところ、3-O-ラムノシルエリスロマイシンDに対応する新しいピークがm/z=706の位置に存在していることが明らかになった。
【0080】
後述する遺伝子カセット法を利用して両方の化合物を単離した。
【0081】
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDの単離
標準的な微生物学の方法を用い、3-O-ラムノシル-エリスロノリドBを含むDMpSGOleG2培養物の上清1リットルを無菌濾過し、SGT2pSGSpnIの培養物に添加した。この培養物の上清に3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBが含まれているかどうかを分析し、「材料と方法」の項に記載したようにして抽出した。粗抽出物を1mlのメタノールに溶かし、SGT2pSGSeryCIII培養物に添加した後、30℃にて4日間にわたってインキュベートした。上清を分析したところ、大きなピークがm/z=720の位置に検出された。3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製において記載した方法を用いて新しい化合物を分析した。この新しい化合物は、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDであることがわかった(図16B)。
【0082】
【表7】
【0083】
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDの生物活性
以前に報告されている(Gaisser他、1998年)ようにして、枯草菌ATCC6633を使用してバイオアッセイを行なった。3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDの生物活性を評価するため、エリスロマイシンA(シグマ社)と3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDのアリコートそれぞれ1.1mgを200μlのメタノールに溶かし、10倍希釈液を多数用意した。フィルタ円板をこれら希釈液10μlに浸し、2×TYプレートの上に置いた。プレートには、以前報告されている(Gaisser他、1997年)ようにして一晩培養した枯草菌を接種した寒天を載せてある。枯草菌層内における抑制領域の広がり方を評価した。枯草菌層内でフィルタ円板の周囲に広がっているハローのサイズから、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDの生物活性が、指示菌株としての枯草菌ATCC6633におけるエリスロマイシンAの約100分の1以下であることがわかった(図17)。
【0084】
3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDの単離
標準的な微生物学の方法を用い、3-O-ラムノシル-エリスロノリドBを含むDMpSGOleG2培養物の上清1リットルを無菌濾過し、SGT2pSGSpnHKI培養物に添加した。この培養物の上清に3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBが含まれているかどうかを分析し、「材料と方法」の項に記載したようにして抽出した。3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBが含まれている分画を単離した。3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの乾燥抽出物を1mlのメタノールに溶かし、SGT2pSGSeryCIII培養物に添加した後、30℃にて4日間にわたってインキュベートした。上清を分析した。大きなピークがm/z=734の位置に検出された。この化合物を単離し、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製において記載した方法を用いて分析した。この新しい化合物は、3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDであることがわかった(図16C)。
【0085】
【表8】
【0086】
サッカロポリスポラ・エリトラエア菌株SGT3(ΔeryCIIIΔeryBVΔeryBVI)の作製
供給アッセイにおいてミカロシル-エリスロノリドBによる汚染を防ぐため、プラスミドpHhol(Gaisser他、1997年)を用いてサッカロポリスポラ・エリトラエア菌株SGT3(ΔeryCIIIΔeryBVΔeryBVI)を単離した。サッカロポリスポラ・エリトラエア菌株DMの形質転換と突然変異体SGT3の単離を、以前報告されている(Gaisser他、1997年)ようにして行なった。チオストレプトンに対して感受性のある突然変異体31番、33番、34番、25番を探すため、PCR分析により染色体DNAを分析した。以前報告されている(Gaisser他、1997年)ようにして、プライマーを用いて染色体DNAに対してPCRを行なった。予想された360bpの断片が野生型DNAから増幅され、制限酵素PstIによる消化の後には、サイズが約100bpと約300bpの2つのバンドが検出された。SGT3の染色体DNAを鋳型としたサンプルにおいて300bpの断片を増幅したところ、この断片がPstIによる消化に対する耐性を有することがわかった。この結果は、eryBVIにおける60bpの欠失がSGT3のゲノムに導入されたことを示している。この菌株は、後述する遺伝子カセットを発現させるためのバックグラウンドとして用いる。
【0087】
olePを発現させるプラスミドの作製
olePを発現させるため、プライマーOleP1 5'-CTCCAGCAAAGGACACACCCATATGACCGATACGCACA-3'とOleP2 5'-CGGCAGATCTGCCGGCCGTCACCAGGAGACGATCTGG-3'を用い、プラスミド3gh2を鋳型としてolePを増幅した。PCR断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に導入した。この構造体を組み込んで大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離し、olePの配列を確認した。この構造体をNdeI/BglIIで消化させた後、1.3kbの断片を単離し、NdeI/BglIIで消化させたベクターpSG142の断片と連結し、これを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGOlePを単離した。
【0088】
菌株SGT2pSGOlePに対するエリスロノリドの供給
プラスミド構造体pSGOlePを用い、「材料と方法」の項に記載したようにしてサッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2(Gaisser他、2000年)を形質転換した。形質転換体は、染色体DNAを単離した後にPCR分析を行なって確認した。6-デオキシエリスロノリドB、エリスロノリドB、3-O-ミカロシル-エリスロノリドB、3-O-ラムノシル-エリスロノリドB(Gaisser他、2000年)、エリスロマイシンAを用いた供給実験を以前報告されている(Gaisser他、1997年)ようにして行なった。菌株SGT2とSGT2pSGOlePの培養物にこれら化合物を供給し、30℃で3〜5日間にわたってインキュベートし、エレクトロスプレー質量分析により分析した。SGT2pSGOlePの上清において新しいピークが見られたのは、6-デオキシエリスロノリドB(m/z=434[M]NH4 +)、3-O-ミカロシル-エリスロノリドB(m/z=578[M]NH4 +とm/z=580[M]NH4 +)、3-O-ラムノシル-エリスロノリドB(m/z=580[M]NH4 +とm/z=582[M]NH4 +)を供給した場合である。エリスロノリドB、エリスロマイシンAを含む上清では新しいピークは検出できなかった。これらの新しい化合物に関するMS/MS分析結果は、6-デオキシエリスロノリドB、3-O-ミカロシル-エリスロノリドB、3-O-ラムノシル-エリスロノリドBの8,8a-エポキシ誘導体または8,8a-ジヒドロキシ誘導体が存在していることを示していた。
【0089】
8a-ヒドロキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBと8-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBの調製
「材料と方法」の項に記載した方法を用い、60mgの3-O-ミカロシル-エリスロノリドBを供給したSGT2pSGOleP培養物の上清2.5リットルを増殖させて新しい化合物を単離した。新しい化合物の構造は、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製に関して説明した方法を用いてNMR分析により確認した。3-O-ミカロシル・エリスロノリドBに由来する化合物は、8a-ヒドロキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBと8,8a-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBであると同定された(図21)。
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
【表12】
【0094】
8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドBと8-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドBの調製
プラスミドpSGOlePを用い、「材料と方法」の項に記載したようにして6-デオキシエリスロノリドB産生菌株であるサッカロポリスポラ・エリトラエアSGT1(ΔeryBV、ΔeryCIII、ΔeryF)を形質転換した。形質転換体は、染色体DNAを単離し、PCR分析によって確認した。SGT1とSGT1pSGOlePの培養物を以前報告されている(Gaisser他、2000年)ようにして増殖させ、上清を「材料と方法」の項に記載したようにしてエレクトロスプレー質量分析で分析した。上清中の2つの主な化合物を精製し、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製に関して説明した方法を用いてNMRで分析した。m/z=401[M-H2O]H+の産物は、最近報告された(Shah他、2000年)6-デオキシエリスロノリドBの8,8a-ジヒドロキシ誘導体であると同定された。m/z=385[M]H+の化合物は、8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドBであることが確認された(図22)。培養物の上清のよりマイナーな化合物は、8-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドBであると同定された(図22)。
【0095】
【表13】
【0096】
【表14】
【0097】
【表15】
【0098】
【表16】
【0099】
遺伝子カセットの単離方法
actII-Orf4調節遺伝子の制御下で発現する遺伝子カセットを作製する方法が以前に報告されている(WO077181 A2)が、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子とメチルトランスフェラーゼ遺伝子のさまざまな組み合わせを含む遺伝子カセットを調製する方法は、この以前の方法を適した形に変えたものである。これら遺伝子カセットを適切な菌株をバックグラウンドにして発現させるというのは、ポスト-PKSで修飾した新規なポリケチドを、ランダムに、または制御下で産生させる強力な方法である。この方法は、XbaI制限部位をPCR断片の3'末端と5'末端に導入することに基づいている。XbaI部位をバックグラウンドの菌株のDamメチラーゼに対して感受性のあるPCR断片の5'末端に導入すると、この部位がXbaIによってそれ以上消化されなくなるであろう。各遺伝子のシャイン−ダルガーノ配列の5'末端を残しておくため、これら遺伝子を含むpSG142由来の構造体を鋳型として用いた。大腸菌ET12567などのdam-宿主菌株から単離したプラスミドDNAを用い、増幅した遺伝子をXbaI断片として単離した。大腸菌DM10Bなどの活性Damメチラーゼを含む宿主菌株を用い、これら断片を順番にクローニングし、遺伝子カセットに導入した。この方法により、同じことを何度も繰り返して長さと順番が異なる遺伝子カセットを作製する手段が得られる。ここに説明した方法の概略と単離した遺伝子カセットを図18に示す。
【0100】
この方法に関する以下の実施例は、HindIII制限部位とNdeI制限部位をPCR断片の5'末端に導入し、XbaI制限部位、BglII制限部位、EcoRI制限部位をPCR断片の3'末端に導入したoleG2のPCR断片を単離することに基づいている。制限酵素HindIIIとEcoRIを用いてこの断片を消化させてクローニングし、それをpUC19に導入した後、このpUC19を同様にして消化させた。プラスミドpSGcasoleG2を単離した。遺伝子spnI、spnK、spnH、eryCIIIをPCR法で増幅した。バックグラウンドとなる菌株のDamメチラーゼによるメチル化に対して感受性のある5'末端にXbaI制限部位を導入した。3'末端にXbaI制限部位を導入した。これら遺伝子を含むpSG142由来の構造体を鋳型として用いた。PCR断片を上に説明したようにしてT4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングしてSmaIで切断したpUC18に組み込んだ。これらクローンのDNA配列は、シークエンシング分析で確認した。この構造体を形質転換してバックグラウンドとなるdam-菌株の中に入れた後、DNAを単離し、XbaIを用いて消化させた。挿入体のサイズが約0.8〜1.3kbのXbaI断片を単離し、連結して、XbaIで切断したpSGcasoleG2に組み込んだ。遺伝子カセットをpUC19の中で組み立てた後、制限酵素NdeI/BglIIを用いてそれぞれの構造体を消化させ、遺伝子カセットをコードしているDNA断片を単離し、クローニングして、NdeI/BglIIで消化させたpSG142のベクターDNAに組み込んだ。得られたプラスミドを導入することによりSGT3を形質転換した。形質転換体は、上に説明したようにして分析した。
【0101】
以下のプライマーを使用した。
【0102】
【表17】
【0103】
SGT3pSGcasoleG2spnIの分析
上記の方法を利用してSGT3pSGcasoleG2spnIクローンを単離した。細胞を「材料と方法」の項に記載したようにして増殖させ、培養物の上清を分析した。予想通り、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBと3-O-(2'-O-メチルラムノシル)-6-デオキシエリスロノリドBが検出された。
【0104】
SGT3pSGcasoleG2spnIspnKの分析
上に説明した方法を用いてSGT3pSGcasoleG2spnIspnKを単離した。細胞を「材料と方法」の項に記載したようにして増殖させ、培養物の上清を分析した。予想通り、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBと3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBが検出された(図19)。培養物の上清にはさらに別の新規な化合物も含まれていたため、それを単離した。その構造は、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製に関して説明した方法を用い、NMR分析によって確認した。この新規な化合物の構造は、3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)-6-デオキシエリスロノリドBであることがわかった(図19)。
【0105】
【表18】
【0106】
SGT3pSGoleG2spnIspnKeryCIIIの分析
上に説明した方法を用いてSGT3pSGoleG2spnIspnKeryCIIIを単離した。細胞を「材料と方法」の項に記載したようにして増殖させた。SGT3pSGcasoleG2spnIspnKeryCIII培養物の上清は、デソサミン糖残基が結合した化合物をほんの少量しか含んでいなかった。
【0107】
SGT3pSGoleG2spnIspnKeryCIIIhisの分析
eryCIIIを発現させるプラスミドの作製について説明した方法を用い、caeryCIII2とSG14を組み合わせたプライマーを用いたPCR産物を単離した。上に説明した方法を用い、遺伝子カセットpSGcasoleG2spnIspnKeryCIIIhisを作製した。菌株SGT3pSGcasoleG2spnIspnKeryCIIIhisを単離し、「材料と方法」の項に記載したようにして増殖させた。「材料と方法」の項に記載した方法を用いてクローン培養物の上清を評価した。3-O-マンノシル-エリスロマイシンD、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)-6-デオキシエリスロマイシンD、3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)-6-デオキシエリスロマイシンDが検出された(図20)。したがって、ヘキサヒスチジン・タグをEryCIIIのC末端に導入すると、デソサミン糖残基から基質へのグリコシルの転移が改善されるように見える。この結果は、遺伝子カセットの末尾の遺伝子の発現が、タンパク質のC末端にヘキサヒスチジン・タグを融合させることによって向上する可能性のあることを示している。
【0108】
OlePカセット
olePを遺伝子カセットが並んでいる中に組み込むため、プライマーOlePcass1 5'-GGGTCTAGATCCGGACGAACGCATCGATTAATTAAGGAGGACAGATATGACCGATACGCACACCGGACCGACACC-3'とOlePcass2 5'-GGGGTCTAGAGGTCACCAGGAGACGATCTGGCGTTCCAGTCCGCGGATCA-3'を用いた。プラスミドpSGOlePを鋳型として用いたPCR断片を単離し、T4ポリヌクレオチドキナーゼで処理し、クローニングして、SmaIで切断したpUC18に組み込んだ。この構造体を導入して大腸菌DH10Bを形質転換した後、この構造体を単離して配列を確認した。プラスミドpSGOlePcassを用いてdam-大腸菌株ET12567を形質転換した。プラスミドDNAを単離し、XbaIで消化させた後、1.3kbの断片を単離し、XbaIで消化させた構造体のベクター断片と連結させ、それを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。これら構造体の概略を図23に示す。
【0109】
3-O-ラムノシル-8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドBの調製
上に説明した方法を用いてサッカロポリスポラ・エリトラエア菌株SGT1pSGcasoleG2olePを単離し、「材料と方法」の項に記載したようにして細胞4リットルを増殖させた。培養物の上清を単離し、3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの調製に関して説明したようにして分析した。新しい2つの化合物として3-O-ラムノシル-8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドBと3-O-ラムノシル-8,8a-ジヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドBが検出された(図24)。3-O-ラムノシル-8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドBの構造は、NMRで確認した。
【0110】
【表19】
【0111】
【表20】
【0112】
olePを発現させるプラスミドの作製
公開されている配列(登録番号AJ002638)の中にある可能な複数の開始コドンのうちのどれがoleG1の発現に用いられているかを明確にするため(図25)、さまざまな構造体をテストした。このテストでは、「材料と方法」の項に記載した方法を用い、3-O-ミカロシル-エリスロノリドBを供給した後のサッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2におけるeryCIIIの突然変異の相補性を測定した。エリスロマイシンAの産生が少ないことによってわかる相補性は、ベクターpSGOleG1を用いたときにだけ観察された(図26)。プライマー7390 5'-CCGCCATATGAGCATCGCGTCGAACGGCGCGCGCTCGGC-3'とOle2 5'-TCAGATCTCCGCCTTCCCGCCATCGCGCCGGTGGCAT-3'を用いてプラスミドpSGOleG1を単離し、OleG1を増幅した。クローニングの手順は、oleG2を発現させるプラスミドの作製に関して説明したのと同じである。図25に示した公開されている開始コドンまたはそれ以降のATGコドンのうちの1つを用いた発現ベクターは、3-O-ミカロシル-エリスロノリドBを供給した後のSGT2におけるeryCIIIの突然変異に対する相補性を持っていなかった。この結果は、OleG1の発現に必要な正しい開始コドンが、olePの停止コドンと重なっているATGであることを示している(図25)。
【0113】
oleG1ではなくoleG2の基質としての6-デオキシエリスロノリドB
サッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2から出発し、上に説明した標準的な微生物学の方法を用いてeryF遺伝子に欠失を導入することにより、突然変異体SGQ1(SGT2DeryF)を作製した。プラスミド構造体pSGOleG2、pSGOleP、pSGOleG1を用いてSGQ1を形質転換した後、6-デオキシエリスロノリドBを含むSGT1培養物を無菌濾過した上清を用い、供給実験を「材料と方法」で説明したようにして行なった。結果は、OleG2とOlePの両方とも、6-デオキシエリスロノリドBを基質として受け入れることを示している(図27)。ただしOlePのほうがOleG2よりも受け入れる割合は少ない。6-デオキシエリスロノリドBはOleG1の基質ではない。
【0114】
OlePの基質としての3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロノリドB
標準的な微生物学の方法を用い、3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロノリドBを含むSGT1pSGOleG2培養物の上清を無菌濾過し、SGQ1、SGQ1pSGOleG2、SGQ1pSGOleP、SGQ1pSGOleG1の培養物に添加した。これら培養物の上清に関する分析結果は、3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロノリドBがOlePの基質であり、OleG1の基質ではないことを示している(図28)。
【0115】
8,8a-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBの供給
SGT1pSGOleG1の細胞培養物を「材料と方法」の項に記載したようにして増殖させた中に、以前に報告されている(Gaisser他、2000年)ようにして8,8a-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBを供給した。上に説明したようにして培養物の上清を分析した結果は、8,8a-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBがOleG1の基質であることを示している。
【0116】
SGT3の中でのpSGcassOleG2EryCIIIの発現
プライマーcasoleG21とcasoleG22(上記の説明を参照のこと)を用い、プラスミドpSGOleG2のDNAを鋳型として(Gaisser他、2000年)、oleG2遺伝子を増幅した。PCR産物を連結してSmaIで切断したpUC18に組み込み、それを用いて大腸菌株DH10Bを形質転換した。PCR産物の配列を確認した。得られたプラスミドを制限酵素EcoRIとHindIIIを用いて消化させた後、EcoRI/HindIIIで消化させたpUC19と連結させ、大腸菌株DH10Bを形質転換した。得られたプラスミドをpSGcassOleG2と名づけた。
【0117】
プライマーcaseryCIIIとcaseryCIII2(上記の説明を参照のこと)を用い、プラスミドpSGEryCIIIのDNAを鋳型として、遺伝子eryCIIIを増幅した。PCR産物を連結してSmaIで切断したpUC18に組み込み、それを用いて大腸菌株DH10Bを形質転換した。PCR産物の配列を確認した。得られたプラスミドを組み込んでdam大腸菌株ER12567を形質転換した。形質転換体のDNAを単離し、制限酵素XbaIを用いて消化させた。1.3kbのDNA断片を単離し、XbaIで消化させたpSGcassOleG2と連結し、それを用いて大腸菌株DH10Bを形質転換した。制限酵素による消化を利用してeryCIIIの正しい向きを調べ、プラスミドpOleG2EryCIIIを単離した。制限酵素NdeI、BglII、DraIを用いて消化させた後に約2.8kbのDNAバンドを単離し、NdeI/BglIIで消化させた発現ベクターpSG142と連結させ、それを用いて大腸菌株DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGcassOleG2EryCIIIを単離し、それを用いてサッカロポリスポラ・エリトラエア突然変異体SGT3を形質転換した。チオストレプトン耐性のあるコロニーを選択した。この菌株培養物の上清を以前に報告されている(Gaisser他、1997年)ようにして単離し、エレクトロスプレー質量分析で分析した。保持時間9.2分、m/z=706のピークが検出された。これは、上清中にラムノシル-エリスロマイシンDが存在していることを示す。m/z=690の別のピークも見つかった。これは、ラムノシル-6-エリスロマイシンDが存在していることを示す(図16を参照のこと)。
【0118】
エリスロマイシン感受性枯草菌層中で形質転換した細胞の塊の周囲において抑制領域がどのように広がるかを標準的なバイオアッセイで観察することにより、得られたエリスロマイシンのアナログの抗菌活性を証明した。
【0119】
5-O-グルコシル-チラクトンと5-O-デソサミニル-チラクトンの単離
エレクトロスプレー質量分析を利用して基準となるチラクトンを分析したところ、大きなピークがm/z=377の位置に、小さなピークがm/z=359とm/z=417の位置に現われた。eryBVとeryCIIIの両方が欠失している菌株STG2にチラクトンを供給したときには、培養物の上清においてm/zが557と579の位置にピークが検出された。これらピークは、グルコシル化されたチラクトン誘導体に対応していると思われる。これは、チラクトンを基質として受け入れるサッカロポリスポラ・エリトラエアの中に別のグルコシルトランスフェラーゼが存在していることを示す結果である。しかしチラクトンを供給したサッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2(pSGTYLM2)培養物の上清を分析したところ、大きなピークがm/z=552の位置にあることがわかった。このピークは、MS/MS実験においてm/z=158とm/z=359に分かれた。これは、サッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2(pSGTYLM2)の発現培地に5-O-デソサミニル-チラクトンが存在していることを示す。想定される5-O-グルコシル-チラクトンと5-O-デソサミニル-チラクトン(培養液1.5リットルからそれぞれ2.2mgと2.0mgを採取)を1Hと13CのNMRで分析したところ、構造が5-O-グルコシル-チラクトンと5-O-デソサミニル-チラクトンであることが完全に確認された(それぞれ図5Aと図5Bを参照のこと)。
【0120】
【表21】
【0121】
【表22】
【0122】
【表23】
【0123】
【表24】
【0124】
23-ヒドロキシ-5-O-ミカミノシル-チラクトンの産生
サッカロポリスポラ・エリトラエア菌株SGT2pSGTylM2を以前に報告されている(Gaisser他、1997年)ようにして増殖させた。(以前のような24時間後ではなく)48時間後に、チラクトンをこの培養物に供給した。エレクトロスプレー質量分析を利用して上清を分析したところ、新しいピークがm/z=552の位置に見られた。これは、5-O-デソサミニル-チラクトンと同定された。m/z=568の位置にある第2のピークもこの上清において検出された。この化合物をMS/MS実験で分析したところ、サッカロポリスポラ・エリトラエア菌株SGT2pSGTylM2の発現培地に5-O-ミカミノシル-チラクトンが存在していることが確認された。この上清のアリコートをSGT2pSGTYLH培養物に供給した。この培養物を分析したところ、5-O-ミカミノシル-チラクトンのピークであるm/z=568がm/z=584に移動していた。この結果は、5-O-ミカミノシル-チラクトンがTylH遺伝子座(Fouces他、1999年)の発現によってさらに処理されたことを示している。TylH遺伝子座は、tylH1(3Fe-4Sタイプのフェレドキシン)とtylH2(P450タイプのシトクロム)という2つの遺伝子で構成されてC23の酸化に関係する酸化還元系を形成していると考えられており、培養物の上清中に23-ヒドロキシ-5-O-ミカミノシル-チラクトンを産生する。
【0125】
23-O-ラムノシル-5-O-ミカミノシル-チラクトンの産生
5-O-ミカミノシル-チラクトンを含む上清のアリコートをサッカロポリスポラ・エリトラエアSGT2pSGTYLHN培養物に供給した。エレクトロスプレー質量分析を利用して上清を分析したところ、新しいピークがm/z=730の位置に見られた。m/zが146だけシフトしたことは、培養物の上清中に23-O-ラムノシル-5-O-ミカミノシル-チラクトンが存在していることを示す。
【0126】
5-O-(2'-O)-ビス-グルコシル-チラクトンの単離
SGT2pSGOLEDの培養物にチラクトンを供給した。この培養物の上清は、m/zがジグルコシル-チラクトンの構造と矛盾しない新しい生成物を含んでいる。この化合物を上に説明したようにして精製し、1Hと13CのNMRで構造を完全に確認した。
【0127】
【表25】
【0128】
【表26】
【0129】
遺伝子カセットを作製するための方法を用い、5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAと5-O-ミカミノシル-(4"-O-ミカロシル)-エリスロマイシンAを単離する方法を開発した(図32)。
【0130】
ミカミノース生合成経路をコードする遺伝子カセットの単離
チロシン生合成遺伝子クラスター(登録番号sf08223とx81885)からtylMIII、tylB、tylMIを増幅することにより、TDP-D-ミカミノースの合成にとって重要な遺伝子をコードする遺伝子カセットを単離した。そのとき、ストレプトミケス・フラディアエの染色体DNAと以下のプライマーを用いた。
【0131】
【表27】
【0132】
「材料と方法」の項に記載した方法を用い、PCR断片をクローニングしてSmaIで切断したpUC18に組み込んだ。クローニングした断片の配列をDNA配列分析により確認した。TylMIとTylM3については公開されている配列との違いが検出されなかったが、TylBでは、公開されているTylBの配列と比べて8個の領域でアミノ酸が変化していた(図33)。
【0133】
上に説明した方法を用いて遺伝子カセットをpUC18の中に組み立てた(図34)。構造体pUC18TylMIII-tylBとpUC18TylMIII-tylB-tylMIを単離し、制限酵素を用いた消化によって確認した。プラスミドpUC18TylMIII-tylB-tylMIをNdeIを用いて消化させ、約3.5kbの挿入体を単離し、NdeIで消化させたpSGCIII、pSGTYLM2、pSGDESVII、pSGTYLCVと連結させた(図35)。制限酵素を用いた消化によって正しい向きであることを確認した。
【0134】
サッカロポリスポラ・エリトラエアGG1の単離
プラスミドpNCO62(Gaisser他、1997年)をdam-大腸菌宿主菌株から単離し、制限酵素BalI/BclIを用いて消化させた。以前に報告されている(Salah-Bey他、1998年)ようにして0.9kbの欠失をeryCIVに導入するため、標準的な微生物学の方法でDNA断片の両端部をフィルインの状態にした後、連結を行ない、大腸菌DH10Bに対して電気穿孔を実施した。プラスミドpGG17を単離し、配列分析と制限酵素による消化で確認した。選択マーカーをこのプラスミド構造体に導入するため、プラスミドpIB060を用いてチオストレプトン耐性遺伝子を含む1.1kbの断片を単離し、pGG17と連結し、pGG1を作製した(図36)。このプラスミドを用いてeryCIVの欠失を野生型サッカロポリスポラ・エリトラエアのゲノムに導入した。サッカロポリスポラ・エリトラエア菌株GG1を単離するため、以前に報告されている方法(Gaisser他、1998年)を用いた。
【0135】
サッカロポリスポラ・エリトラエアSGQ2の単離
プラスミドpGG1を用いてeryCIVにおける0.9kbの欠失(Salah-Bey他、1998年)をサッカロポリスポラ・エリトラエア突然変異体SGT2に導入し、四重突然変異体SGQ2を作製した。その際、以前に報告されている微生物学の方法(Gaisser他、1998年)を利用した。この突然変異体ができたことを確認するため、プラスミドpSGCIIIを用いてSGQ2を形質転換し、SGQ2pSGCIIIを単離した。「材料と方法」の項で説明したようにして細胞を増殖させ、以前に報告されている(Gaisser他、2000年)ようにしてこの培養物に3-O-ミカロシル-エリスロノリドBを供給した。「材料と方法」の項で説明した方法を用いて細胞培養物の上清を調べたところ、2つの新しいピークがm/z=750とm/z=713の位置に検出された(図37)。「材料と方法」の項に記載したMS/MS法を用い、これらの化合物が5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAと3,5-ジ-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAであることを確認した。
【0136】
5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAの産生向上
ミカミノース遺伝子カセットtylMIII-tylB-tylM1をクローニングしてプラスミドpSGCIIIのNdeI部位に正しい向きに導入することによってプラスミドを作り、このプラスミドを用いてSGQ2を形質転換し、菌株SGQ2p(ミカミノース)CIIIを単離した。「材料と方法」の項で説明したようにして細胞を増殖させ、以前に報告されている(Gaisser他、2000年)ようにしてその培養物にミカロシル-エリスロノリドBを供給した。「材料と方法」の項で説明したようにHPLC-MSを利用して細胞培養物の上清を調べたところ、ピークがm/z=750とm/z=713の位置に検出された。しかし5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAに対応するm/z=750の物質の量は、他のピークの物質と比べて顕著に増加していた。
【0137】
tylCVを発現させるプラスミドの作製
tylCVを発現させるため、tylCV1 5'-GCCTGACGAAGGGTCCTGCCATATGGCTCATATTGCATT-3'とtylCV2 5'-GCGTGGGCCGGCCGGAGATCTGGCCGCGGGGGACAGCA-3'を用い、サッカロポリスポラ・フラディアエのゲノムDNAを鋳型として、tylCVを増幅した。PCR断片を単離し、eryCIIIを発現させるプラスミドの作製において説明したようにしてクローニングした。上に説明したように、NdeI/BglIIを用いて消化させた後、1.2kbの断片を単離し、同じ制限酵素で消化させたpSG142と連結させ、それを用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。プラスミドpSGTYLCVを単離した。
【0138】
5-O-ミカミノシル-(4"-O-ミカロシル)エリスロマイシンAの産生
プラスミドpSGtylCVを用いてSGQ2を形質転換し、菌株SGQ2pSGTylCVを単離した。「材料と方法」の項で説明したようにして細胞を増殖させ、5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAを含む菌株SGQ2p(ミカミノース)CIIIからの上清を以前の実験(Gaisser他、2000年)と同様にして濾過した。「材料と方法」の項で説明したようにHPLC-MSを利用して菌株SGQ2pSGtylCVの細胞培養物の上清を分析したところ、新しいピークがm/z=894の位置に検出された。このピークは、5-O-ミカミノシル-(4"-O-ミカロシル)エリスロマイシンAに対応している。
【0139】
【表28】
【0140】
【表29】
【図面の簡単な説明】
【図1A】 eryB中に1247塩基対の欠失があるサッカロポリスポラ・エリトラエアΔorf14を単離した図である。tsrは、チオストレプトン耐性を意味する。
【図1B】 eryBV中の欠失とeryCIII中の1191塩基対の欠失の両方を含むサッカロポリスポラ・エリトラエア菌株DMを単離した図である。tsrは、チオストレプトン耐性を意味する。
【図2】 発現プラスミドpSG142の構造図である。EryRHSは、エリスロマイシン生合成遺伝子クラスターのermE遠位フランクからのDNA断片を意味する。
【図3】 クローニングしたグリコシルトランスフェラーゼ(glctr)がインビボでアグリコンをグリコシル化する能力を有するかどうかをスクリーニングする方法の概略図である。
【図4】 3-O-ラムノシル-エリスロノリドBと3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロノリドBの構造図である。
【図5A】 5-O-デソサミニルチラクトンの構造図である。
【図5B】 5-O-グルコシルチラクトンの構造図である。
【図6】 プラスミドpSGSpnI、pSGSpnK、pSGSpnHの概略図である。
【図6B】 spnI/SpnIと公開された配列登録番号AY007564のDNA配列を比較した図(上)とアミノ酸配列を比較した図(下)である。訂正したヌクレオチド配列とアミノ酸配列に含まれる変化を下線で示してある。
【図7】 SGT2pSGSpnIの染色体DNAを鋳型として用いて行なったspnIの分析結果である。
【図8】 SGT2pSGSpnKの染色体DNAを鋳型として用いて行なったspnKの分析結果である。
【図9】 SGT2pSGSpnHの染色体DNAを鋳型として用いて行なったspnHの分析結果である。
【図10】 ラムノシル-エリスロノリドBを供給した後にSGT2とSGT2pSGSpnIの培養物の上清を分析した結果である。
【図11】 3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの構造図である。
【図12】 3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBを供給した後にSGT2とSGT2pSGSpnKの培養物の上清を分析した結果である。
【図13】 プラスミドpSGSpnHKとpSGSpnHKIの概略図である。
【図14】 3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの構造図である。
【図15】 3-O-(2',3',4'-トリス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドBの構造図である。
【図16】 3-O-ラムノシル-エリスロマイシンD(A);3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD(B);3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD(C)の構造図である。
【図17】 3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンDとエリスロマイシンAに対するバイオアッセイの結果である。
【図18】 oleG2、spnI、spnH、spnK、eryCIIIからなる遺伝子カセットを単離する方法を示す。
【図19】 SGT3pSGcasoleG2spnIspnKの培養物の上清を分析した結果である。
【図20】 SGT3pSGcasoleG2spnIspnKeryCIIIの培養物の上清を分析した結果である。
【図21】 8a-ヒドロキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBと8,8a-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドBの構造図である。
【図22】 8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドBと8-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドBの構造図である。
【図23】 遺伝子カセットを構成して組み込むことによりサッカロポリスポラ・エリトラエアを形質転換する方法である。
【図24】 3-O-ラムノシル-8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドBと3-O-ラムノシル-8,8a-ジヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドBの構造図である。
【図25】 oleG1開始領域のDNA配列である(登録番号AJ002638)。
【図26】 サッカロポリスポラ・エリトラエアのSGT2とSGT2pSGOleG1におけるeryCIIIの突然変異が相補性を持つかどうかを示す結果である。3-O-ミカロシル-エリスロノリドBを以前報告されている(Gaisser他、2000年)ようにして培養物に供給した。3-O-ミカロシル-エリスロノリドBが存在していることは、保持時間が20分の位置にピークがあることに現われている。保持時間が15.7分の位置のピークとm/z=734は、エリスロマイシンAが存在していることを示す。
【図27】 6-デオキシエリスロノリドBを、SGQ1、SGQ1pSGOleG1、SGQ1pSGOleG2、SGQ1pSGOlePに供給した結果である。主な化合物の構造を示してある。
【図28】 3-O-ラムノシル-6-デオキシエリスロノリドBを、SGQ1、SGQ1pSGOleG1、SGQ1pSGOleG2、SGQ1pSGOlePに供給した結果である。主な化合物の構造を示してある。
【図29】 23-O-ラムノシル-5-O-ミカミノシル-チラクトンの構造図である。
【図30】 23-O-ラムノシル-5-O-デソサミニル-チラクトンの構造図である。
【図31】 5-O-(2'O-)-ビス-グルコシル-チラクトンの構造図である。
【図32】 5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAと5-O-ミカミノシル-(4"-O-ミカロシル-)エリスロマイシンAの構造図である。
【図33】 遺伝子tylMI、tylM3、tylBの配列であり、公開された配列と比べるとtylBにおいて8個の領域でアミノ酸が変化していることがわかる。
【図34】 pUC18tylMIII-tylB構造体とpUC18tylMIII-tylB-tylMI構造体を作るために用いるpUC18の中の遺伝子カセット集合体である。
【図35】 pSGCIII、pSGTYLM2、pSGDESVII、pSGTYLCVの制限地図である。
【図36】 プラスミドpGG1の制限地図である。
【図37】 5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンAと3,5-ジ-O-ミカロシル-エリスロノリドBの質量スペクトルである。
Claims (34)
- 糖の1つ以上の部分を鋳型アグリコンに転移させることによってグリコシル化されたハイブリッド産物を産生させるため、
a)微生物宿主細胞における1又は複数の内因性ポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子を除去又は不活性化させ、前記微生物宿主細胞による天然のグリコシル化された産物の産生が抑制されるようにし;
b)グリコシルトランスフェラーゼ(GT)をコードする核酸を用いて前記微生物宿主細胞を形質転換し、
c)外因性鋳型アグリコンをGTに供給することによりGTに糖の1つ以上の部分をその外因性鋳型アグリコンに転移させてグリコシル化されたハイブリッド産物を産生させる操作を含む方法において、
上記の糖の1つ以上の部分、外因性鋳型アグリコン、グリコシルトランスフェラーゼ、宿主細胞のいずれかが他の要素と異種である方法。 - 外因性鋳型アグリコンと糖の一部が互いに異種である、請求項1に記載の方法。
- 外因性鋳型アグリコンおよび/または糖の一部が、宿主細胞とは異種である、請求項1に記載の方法。
- 外因性鋳型アグリコンと、糖の一部と、GTが、宿主細胞とは異種である、請求項1に記載の方法。
- 宿主細胞を、上記糖の一部を産生する1つまたは複数の遺伝子で形質転換する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- グリコシルトランスフェラーゼが、
(a)サッカロポリスポラ・エリトラエアのエリスロマイシン経路からのデソサミニルトランスフェラーゼeryCIIIまたはミカロシルトランスフェラーゼeryBV;
(b)ミクロモノスポラ・メガロミケアのメガロマイシン経路からのデソサミニルトランスフェラーゼmegCIII、ミカロシルトランスフェラーゼmegBVまたはメゴサミニルトランスフェラーゼ;
(c)ストレプトミケス・アンティビオティクスのオレアンドマイシン経路からのオレアンドロシルトランスフェラーゼoleG2(ラムノースとオリボースも転移させる)またはデソサミニルトランスフェラーゼoleG1;
(d)ストレプトミケス・フラディアエのチロシン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼtylMII、デオキシアローストランスフェラーゼtylNまたはミカロシルトランスフェラーゼtylCV;
(e)ストレプトミケス・ミカロファキエンスのミデカマイシン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼmidI、デオキシアローストランスフェラーゼまたはミカロシルトランスフェラーゼ;
(f)ストレプトミケス・ウェネズエラエのピクロマイシン/ナルボマイシン経路からのデソサミニルトランスフェラーゼdesVII;
(g)サッカロポリスポラ・スピノサのスピノシン経路からのラムノシルトランスフェラーゼまたはフォロサミニルトランスフェラーゼ;
(h)ストレプトミケス・ノドススのアンフォテリシン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼamphDI;
(i)ストレプトミケス・アウェルミティリスのアベルメクチン経路からのオレアンドロシルトランスフェラーゼ;
(j)ストレプトミケスのニスタチン経路からのミカミノシルトランスフェラーゼ;
(k)アクチノプラネス・カエルレンスのポリエン67-121C経路からのミコサミニルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ(ミコサミンに転移させる);
(l)ストレプトミケス・オリワケアオウスTu2353のエロラマイシン経路からのラムノシルトランスフェラーゼelmGT;
(m)ストレプトミケス・アルギラケウスのミトラマイシン経路からのオリボシルトランスフェラーゼmtmGIV;
(n)ストレプトミケス・ペウケティウスのダウノマイシン経路からのダウノサミニルトランスフェラーゼdnrS;
(o)ストレプトミケス・フラディアエTu2717のウルダマイシン経路からのロジノシルトランスフェラーゼurdGT1c、オリボシルトランスフェラーゼurdGT1b、ロジノシルトランスフェラーゼurdGT1aまたはオリボシルトランスフェラーゼurdGT2である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 - 糖の一部および/または鋳型アグリコンを修飾する酵素を、その糖の一部を鋳型アグリコンに結合させる前または結合させた後に用いる操作をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 上記酵素がメチルトランスフェラーゼまたはP450である、請求項7に記載の方法。
- 宿主細胞を、上記酵素をコードする異種遺伝子で形質転換する、請求項7または8に記載の方法。
- 外因性鋳型アグリコンを、ポリケチド、ポリケチド−ペプチドの混合物、ペプチドからなるグループの中から選択する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- ポリケチドを、タイプIのポリケチドとタイプIIのポリケチドからなるグループの中から選択する、請求項10に記載の方法。
- 外因性鋳型アグリコンが、6-デオキシエリスロノリドB、エリスロノリドBまたはチラクトンのいずれかである、あるいはこれらの誘導体である、請求項10に記載の方法。
- グリコシル化されたハイブリッド産物であって、
(a)チラクトンと結合した1つ以上のラムノースまたは置換されたラムノース;
(b)エリスロマイシンと結合した1つ以上のミカロースまたは置換されたミカロース、
(c)エリスロノリドまたはエリスロマイシンと結合した1つ以上のミカミノースまたは置換されたミカミノース、;
(d)チラクトンに結合した1つ以上のグルコースまたは置換されたグルコース;
(e)チラクトンに結合した1つ以上のデソサミノースまたは置換されたデソサミノース;
(f) エリスロノリドまたはエリスロマイシン上に(a)、(b)、(c)の糖置換基を組み合わせたもの;並びに
(g) チラクトン上に(a)、(b)、(c)の糖置換基を組み合わせたもの;
からなる群から選ばれる、グリコシル化されたハイブリッド産物。 - 3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロノリドB、
3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドB、
3-O-(2',3',4'-トリス-O-メチルラムノシル)エリスロノリドB、
8a-ヒドロキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドB、
8,8a-エポキシ-3-O-ミカロシル-エリスロノリドB、
8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドB、
8-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドB、
3-O-(2'-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、
3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、
3-O-(2',3',4'-トリス-O-メチルラムノシル)エリスロマイシンD、
5-O-ミカミノシル-4''-O-ミカロシル-エリスロマイシンA、
5-O-グルコシル-チラクトン、
23-O-ラムノシル-5-O-ミカミノシル-チラクトン、
5-O-(2'-O)-ビス-グルコシル-チラクトン、
3-O-ラムノシル-8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドB、
3-O-ラムノシル-8,8a-ジヒドロキシ-エリスロノリドB、
3,5 ジ-O-ミカロシルエリスロノリドB、
3-O-ラムノシル-8,8a-ジヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドB、
8,8a-エポキシ-3-O-ラムノシルエリスロノリドB、
8,8a-デヒドロ-6-ミカロシルエリスロノリドB、
3-O-(2',3'-ビス-O-メチルラムノシル)-6-デオキシエリスロノリドB、
3-O-(2'-メチルラムノシル)-6-デオキシエリスロノリドB、
5-O-ミカミノシル-エリスロマイシンA及び
23-O-ヒドロキシ-5-O-ミカミノシル-チラクトン、
からなる群から選ばれる、化合物。 - 8,8a-デヒドロ-6-デオキシエリスロノリドB、
8-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドB、
8,8a-エポキシ-6-デオキシエリスロノリドB及び
8,8a-ジヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドB、
からなる群から選ばれる、化合物。 - 宿主細胞における1又は複数の内因性ポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子が除去又は不活性化され、前記宿主細胞による天然のグリコシル化された産物の産生が抑制されるようになった、グリコシルトランスフェラーゼ(GT)をコードする核酸を用いて形質転換した宿主細胞であって、GTが宿主細胞とは異種であり、この細胞内で糖の1つ以上の部分を外因性鋳型アグリコンに転移させて、グリコシル化されたハイブリッド産物を産生させる、宿主細胞。
- 1つ以上の補助遺伝子を用いて宿主細胞をさらに形質転換する、請求項16に記載の宿主細胞。
- 補助遺伝子が、糖の一部の生合成に関与するタンパク質をコードする糖経路遺伝子であり、そのことによって、発現カセットを用いて宿主細胞を形質転換してこの宿主細胞に糖の一部を産生させ、それを外因性鋳型アグリコンに転移させることが可能となる、請求項17に記載の宿主細胞。
- 補助遺伝子が、その糖の一部を外因性鋳型アグリコンに結合させる前または結合させた後に糖の一部および/または外因性鋳型アグリコンを修飾する酵素を含む、請求項16又は17に記載の宿主細胞。
- 上記酵素がメチルトランスフェラーゼまたはP450である、請求項19に記載の宿主細胞。
- 宿主細胞が放線菌株である、請求項16〜20のいずれか1項に記載の宿主細胞。
- 放線菌株を、サッカロポリスポラ・エリトラエア、ストレプトミケス・コエリコロル、ストレプトミケス・アウェルミティリス、ストレプトミケス・グリセオフスクス、ストレプトミケス・キンナモネンシス、ストレプトミケス・フラディアエ、ストレプトミケス・ロンギスポロフラウス、ストレプトミケス・ヒュグロスコピクス、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、ストレプトミケス・ラサリエンシス、ストレプトミケス・ウェネズエラエ、ストレプトミケス・アンティビオティクス、ストレプトミケス・リウィダンス、ストレプトミケス・リモスス、ストレプトミケス・アルブス、アミコラトプシス・メディテッラネイおよびストレプトミケス・ツクバエンシスからなるグループの中から選択する、請求項21に記載の宿主細胞。
- グリコシル化されたハイブリッド産物を産生させる方法であって、請求項16〜22のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養し、その結果として産生された産物を単離する操作を含む方法。
- グリコシル化された複数のハイブリッド産物を含んで成るライブラリーを生成するため、
a)微生物宿主細胞における1又は複数の内因性ポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子を除去又は不活性化させ、前記微生物宿主細胞による天然のグリコシル化された産物の産生が抑制されるようにし;
b)1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ(GT)をコードする核酸を用いて前記微生物宿主細胞を形質転換し、
c)1つ以上の外因性鋳型アグリコンをGTに供給することによりGTに糖の1つ以上の部分を外因性鋳型アグリコンに転移させてグリコシル化された上記複数のハイブリッド産物を産生させる操作を含む方法において、
上記の糖の1つ以上の部分、外因性鋳型アグリコン、グリコシルトランスフェラーゼ、宿主細胞のいずれかが他の要素と異種である方法。 - 1つ以上の補助遺伝子を用いて宿主細胞をさらに形質転換する、請求項24に記載の方法。
- 補助遺伝子が、糖の一部の生合成に関与するタンパク質をコードする糖経路遺伝子であり、そのことによって、発現カセットを用いて宿主細胞を形質転換してこの宿主細胞に糖の一部を産生させ、それを外因性鋳型アグリコンに転移させることが可能となる、請求項25に記載の方法。
- 補助遺伝子が、その糖の一部を外因性鋳型アグリコンに結合させる前または結合させた後に糖の一部および/または外因性鋳型アグリコンを修飾する酵素を含む、請求項25又は26に記載の方法。
- 上記酵素がメチルトランスフェラーゼまたはP450である、請求項27に記載の方法。
- グリコシル化されたハイブリッド産物のライブラリーをスクリーニングして望む特性を有するものを見つける操作をさらに含む、請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。
- ライブラリーが、異なる少なくとも2つのグリコシル化されたハイブリッド産物を含む、請求項24〜29のいずれか1項に記載の方法。
- ライブラリーが、異なる少なくとも10種類のグリコシル化されたハイブリッド産物を含む、請求項24〜29のいずれか1項に記載の方法。
- ライブラリーが、異なる少なくとも100種類のグリコシル化されたハイブリッド産物を含む、請求項24〜29のいずれか1項に記載の方法。
- 望むグリコシル化されたハイブリッド産物を産生する宿主細胞を単離する操作をさらに含む、請求項24〜32のいずれか1項に記載の方法。
- 宿主細胞を培養し、その結果として産生された産物を単離する操作をさらに含む、請求項33に記載の方法。
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