JP5035765B2 - Dnaポリメラーゼの調製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNAポリメラーゼとその調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNAの合成技術は、近年のバイオテクノロジーに欠かすことのできない重要な技術の一つである。特に、PCRをはじめとするDNAを酵素的に合成する手法は、幅広い分野で応用されている。DNAの酵素的な合成には、鋳型に対して相補鎖を合成する鋳型依存的な反応と、鋳型を必要としない塩基の重合反応とが知られている。このうち、鋳型に依存する相補鎖の合成反応は、その反応特異性の高さのために、DNAの合成、検出、単離、同定、そしてシーケンシングなど、DNAを取り扱うあらゆる場面で応用されていると言って良い。
【0003】
酵素的な相補鎖合成反応の反応特異性は、大きく分けて、プライマーのアニールの特異性、そして相補鎖の合成過程における塩基の取りこみの正確さに大きく左右される。プライマーの特異性は、その塩基配列によって大きく左右される。したがって、原則として、鋳型に固有の塩基配列を含むようにデザインすることによって、プライマーの特異性を高めることができる。一方、塩基の取りこみの正確さについては、酵素そのものの改良や、反応条件の最適化等によって、大幅に改善された。
【0004】
しかし現実には、このような反応特異性の改善のための努力にも関わらず、DNAポリメラーゼによる相補鎖合成反応における非特異的な反応生成物を完全に抑制することは困難とされている。非特異的な反応生成物は、DNAの検出方法においては、バックグランドシグナルの増大と、それに伴う検出感度の低下の原因となる。また、非特異反応が起きることは、目的とする反応の効率が低下することを意味している。特にPCRにおいては、何らかの原因でいったん誤った反応が開始すると、その増幅効率の高さゆえに、目的としない反応が爆発的に進行してしまう。その結果、目的とする反応が、様々な妨害を受けることになりかねない。
したがって、DNAポリメラーゼを利用した相補鎖合成反応においては、非特異的な反応の原因を取り除くことが、未だに大きな課題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、DNAポリメラーゼ自身に存在する、相補鎖合成反応における非特異的な反応の原因を取り除くことを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、DNAポリメラーゼに夾雑する物質と、相補鎖合成反応における非特異的な反応の関連に着目した。従来よりDNAポリメラーゼに夾雑するDNAによる非特異反応については報告がある(Schmidt, et al.,1991 Biotechniques 11:176-177))。そして、製造段階におけるDNAの夾雑防止や、DNAの除去について努力が払われている。しかしこれらの努力にもかかわらず、テルムス・アクアティクス(Thermus aquaticus)をはじめとするテルムス属微生物由来のDNAポリメラーゼが、鋳型やプライマーの存在しない条件下で、高分子のDNAを合成する場合があることを、本発明者らが明らかにした(Hanaki, et al.,1997 Biochem. Biophys. Res. Commun. 238:113-118)。この高分子DNAは、AとTとが交互に並ぶ1本鎖、または2本鎖の(dA-dT)であった。本発明者らは、この高分子DNAを生成する原因が、DNAポリメラーゼと共純化されたRNAにあるのではないかと考えた。
【0007】
すなわち、まずRNAが鋳型とプライマーとして働き、逆転写反応によって10塩基前後のオリゴ(dA-dT)が合成される。続いて、このオリゴ(dA-dT)は、それ自身がセルフプライミングを起こして伸長したり、あるいは異なるオリゴ(dA-dT)が2本鎖を形成して互いに鋳型とプライマーとなって、しだいに長いDNAへと伸長する。本発明者の知見によれば、この非特異的な高分子DNAの合成は、long PCRの条件、すなわちアニーリング反応とDNA合成反応を68℃で同時に行う場合にも認められる(実施例1)。
【0008】
DNAポリメラーゼは細菌などの生物から抽出される。市販のDNAポリメラーゼは、通常は、原料となる生物に由来するDNAやRNA等の不純物を、限外ろ過や各種のカラムクロマトグラフィー等を用いて除去する工程を経て製造されていることは言うまでも無い。一般に流通しているDNAポリメラーゼの精製過程において、DNAポリメラーゼと遊離した状態で存在する夾雑物の多くは除去することができる。しかし公知の精製過程は、本発明者らが明らかにした、高分子DNAを生じる原因となるDNAポリメラーゼと共純化されたRNAの除去を期待するには不充分なものであった。つまりDNAポリメラーゼは、通常の精製方法では取り除くことができないRNAを伴っていることを本発明者らは明らかにした。
【0009】
そこで本発明者らは、実質的にRNAを含まないDNAポリメラーゼを提供するための方法について研究を重ねた。その結果、高分子DNAを生じることの無いDNAポリメラーゼを提供できる方法を確立し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下のDNAポリメラーゼ、およびこのDNAポリメラーゼの調製方法、そしてこのDNAポリメラーゼを利用したDNAの合成方法に関する。
【0010】
〔1〕 RNAの除去工程を含む、RNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼの調製方法。
〔2〕 RNAの除去工程が、RNアーゼを作用させることによって行われる〔1〕に記載の方法。
〔3〕 RNアーゼがRNアーゼAである〔2〕に記載の方法。
〔4〕 DNAポリメラーゼが、テルムス属微生物由来のDNAポリメラーゼ、またはその変異体である〔1〕に記載の方法。
〔5〕 テルムス属微生物が、テルムス・アクアティクス、またはテルムス・サーモフィルスである〔4〕に記載の方法。
〔6〕鋳型DNAにアニールしたプライマーをDNAポリメラーゼによって伸長する工程を含むDNAの合成方法において、前記DNAポリメラーゼがRNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼであることを特徴とするDNAの合成方法。
〔7〕次の工程を含む、DNAの分析方法。
(1)〔6〕に記載の方法によってDNAを合成する工程、および
(2)工程(1)の生成物の有無、生成物の量、生成物の生成速度、および生成物の長さからなる群から選択されるいずれかの指標に基づいて、DNAを分析する工程
〔8〕RNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼ組成物。
〔9〕RNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼからなるDNAの分析用組成物。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、RNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼを提供する。PCRにおける非特異的な反応を抑制するためのアプローチとして、PCRに先だって、cDNAに共存するRNAを酵素的に分解する方法が知られている(Maudru T.et.al.,1997 J. Viol. Methods , Jul;66/2:241-261)。cDNAは、RNAを鋳型として合成されたDNAであるから、RNAが共存するのは、ある意味では当然のことである。しかし精製された酵素として販売されているDNAポリメラーゼに夾雑するRNAが非特異的な反応の原因となっており、そしてそれを除去することで非特異的な反応を阻止できることは、本発明者らが見出した新規な知見である。すなわち本発明は、DNAポリメラーゼとともに精製されたRNAの除去工程を含む、RNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼの調製方法に関する。DNAポリメラーゼとともに精製されたRNAとは、精製によって取り除くことができなかったRNAを言う。
【0012】
本発明において、RNAを実質的に含まないとは、原則として次のように定義される。すなわち、精製DNAポリメラーゼを、鋳型やプライマーとなるDNAの非存在下で、基質となるdNTPsとともに相補鎖合成反応が可能な条件でインキュベートしたとき、新たなDNAの合成が検出されないことを言う。本発明者らの知見によると、DNAポリメラーゼにRNAがわずかでも含まれ 、かつ相補鎖合成に必要なヌクレオシドが存在すれば、たとえば1日、早ければ数時間のうちに新たなDNAが合成される。
【0013】
なお相補鎖合成が可能な条件とは、当該DNAポリメラーゼが、鋳型と適切なプライマーさえ存在すれば、検出可能なレベルの新たなDNAの合成が可能な条件を言う。更に、新たなDNAの合成が検出されないことは、DNAが検出限界に満たない場合を含む。つまり、微量のDNAが合成されたとしても、そのレベルが検出限界に満たない場合には、実質的にRNAを含まないと言うことができる。そのDNAポリメラーゼを用いた相補鎖合成反応において用いられる一般的な検出方法によって、事実上DNAが検出されない場合に、検出限界に満たないとみなす。
【0014】
DNAポリメラーゼの用途を予め想定するのが難しい場合には、一般的な用途に合わせて、許容可能な夾雑RNAのレベルを設定することもできる。本発明のDNAポリメラーゼは、そのレベル以下となるようにRNAを除去することにより、製造される。一般的な用途としては、たとえばPCRを示すことができる。PCRは、鋳型に対して指数的に新たなDNAを作り出す反応である。したがって、DNAポリメラーゼの用途の中では、現在のところ、DNAポリメラーゼに共存するRNAに起因する非特異的な反応を生じやすい用途の一つと言える。
【0015】
したがって、鋳型の非存在下、PCRと同様の条件で反応させて、新たなDNAの生成が確認できなければ、実質的にRNAを含まないと推定できる。このとき、DNAポリメラーゼは、PCRにおいて想定されるDNAポリメラーゼの使用量を上回る条件とすることによって、より厳しい水準で共存RNAのレベルを評価することができる。DNAポリメラーゼの使用量が多いということは、共存するRNAの量も多くなるので、より高い感度でRNAを確認できることを意味する。
【0016】
DNAポリメラーゼに共存するRNAを確認するためのPCRの条件としては、たとえば実施例1における鋳型DNA(λDNA)が存在しない条件を挙げることができる。このときRNAを鋳型として生成するDNAは、電気泳動的に、高分子のスメアなバンドとして確認することができる。
【0017】
本発明のDNAポリメラーゼは、その由来を限定されない。RNAの夾雑によって高分子DNAを非特異的に生じるDNAポリメラーゼであれば、本発明を応用することができる。したがって、本発明のDNAポリメラーゼは、逆転写酵素活性を有するDNAポリメラーゼと言うこともできる。このようなDNAポリメラーゼとしては、たとえばテルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、テルムス・フラーブス(Thermus flavus)、あるいはサーモコッカス・リトラリス(Thremococcus litoralis)等に由来するDNAポリメラーゼを示すことができる。
【0018】
本発明のDNAポリメラーゼには、これらDNAポリメラーゼの変異体が含まれる。変異体とは、DNAポリメラーゼを構成するアミノ酸配列に変異を導入した酵素を言う。アミノ酸配列の改変には、アミノ酸残基の置換、欠失、付加、あるいは挿入が含まれる。アミノ酸配列の変異により、DNAポリメラーゼの性質を改変する方法が公知である。具体的には、反応特異性や温度安定性等の性状が改変されたDNAポリメラーゼが知られている。
【0019】
中でも、好熱細菌Thermus aquaticus に由来するTaqポリメラーゼは、現在のところPCRをはじめとするDNAの酵素的な合成反応に、広く利用されている酵素であり、しかもRNAに起因する非特異的の問題の大きい酵素である。したがって、Taqポリメラーゼは、本発明のDNAポリメラーゼとして好ましい。
【0020】
本発明のRNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼは、たとえばRNAを酵素的に分解することによって得ることができる。RNAの分解には、RNアーゼA、RNアーゼII、RNアーゼIII、あるいはRNアーゼU等を用いることができる。RNアーゼAを用いる場合、pH6−9、30−40℃で、十分量のRNアーゼAをDNAポリメラーゼに作用させることにより、RNAは分解される。反応時間は、DNAポリメラーゼの使用目的やRNアーゼAの使用量によって変動するが、通常5分以上、好ましくは10分〜30分、あるいは30分〜1時間程度インキュベートする。pHや温度、反応液を構成する緩衝液などは、DNAポリメラーゼの活性を保護できる条件を選択するのが望ましい。更に、RNアーゼA処理のための反応液が、処理後のDNAポリメラーゼによるDNAの合成反応を妨害しないように配慮する。
RNAの酵素的な除去方法は、DNAポリメラーゼの酵素活性に対するダメージが小さいので、本発明におけるRNAの除去方法として望ましい。
【0021】
RNアーゼAによってDNAポリメラーゼに夾雑するRNAを除去する場合、RNアーゼAは一定の条件下でRNAの確実な除去を期待できるだけの十分な量で使用する。具体的には、250U/mLのDNAポリメラーゼ溶液に対して、たとえば10U、通常50U、好ましくは100U以上用いれば、多量のRNAが夾雑する場合であっても、比較的短時間のうちに、RNAを確実に除去することができる。
【0022】
一般に、高濃度のRNアーゼAはDNAポリメラーゼのDNA合成反応を妨げる可能性がある。またRNアーゼAは耐熱性を有するので、加熱によって失活させることも難しい。したがって、RNAの分解後は、DNAポリメラーゼ溶液からRNアーゼAを除去しておくことが望ましい。RNアーゼAは、処理後のDNAポリメラーゼ溶液を、抗RNアーゼA抗体を固定化したカラムを通過させることによって吸着除去することができる。あるいはRNアーゼAを不溶性担体に結合した不溶性酵素として用いれば、DNAポリメラーゼ溶液を容易に分離することができる。
【0023】
RNアーゼAによるDNAポリメラーゼの処理は、RNAが夾雑するDNAポリメラーゼを含む溶液にRNアーゼAを接触させることにより実施される。したがって、たとえば従来の手法によって製造されたDNAポリメラーゼ(RNAが夾雑している)に対して、出荷時にRNアーゼAを添加することも、RNAの除去方法として有効である。保存、あるいは流通段階において、RNアーゼAの酵素活性を発現できる条件を与えることができれば、使用時にはDNAポリメラーゼに夾雑するRNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼとすることができる。また、流通過程においては、凍結乾燥などの、酵素作用が制限された状態に置かれる場合であっても、使用前にRNアーゼAが夾雑するRNAを除去するのに十分な条件を与えることによって、RNAを除去することもできる。しかし、上述のとおりRNアーゼAは失活させることが困難で、DNAポリメラーゼの反応を阻害する恐れがあることから、製造段階でRNアーゼAをDNAポリメラーゼから除去しておくことが望ましい。
【0024】
本発明におけるDNAポリメラーゼに共存するRNAの除去方法として、物理的な方法を用いることもできる。たとえば、DNAポリメラーゼを可逆的に変性させて、ともに精製されたRNAを遊離させ、その後DNAポリメラーゼを回収する。回収したDNAポリメラーゼをリフォールディングさせて、もとの構造を再構成すれば、RNAを除去したDNAポリメラーゼを得ることができる。DNAポリメラーゼの可逆的な変性条件としては、8M尿素や6Mグアニジンのような蛋白質変性剤による処理等を示すことができる。
【0025】
本発明のDNAポリメラーゼ組成物における、DNAポリメラーゼは、目的とするDNAの合成反応に利用しやすい濃度とするのが有利である。具体的なDNAポリメラーゼの含有量としては、組成物100μLあたり、たとえば200U〜1000U、通常500Uを例示することができる。このような酵素使用量とすれば、一般的なDNAの合成反応において、100μLの反応液に対して0.5〜2.5μLの酵素組成物を添加することにより、DNAの合成反応のための反応溶液とすることができる。すなわち、反応液100μLに対して、一般に1〜5U、通常2.5〜5UのDNAポリメラーゼが用いられる。
【0026】
本発明のDNAポリメラーゼ組成物には、更に一般に酵素製剤に添加される公知の要素を添加することができる。適当な緩衝剤に加えて、たとえば、糖類、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミンなどの保護剤を添加することができる。また、酵素活性の発現に必要な金属イオンを加えることも、酵素の活性の保持に有効である。たとえばTaqポリメラーゼは酵素活性の発現にマグネシウムイオンを要求する。更に、酵素活性に影響を与えない防腐剤を添加することもできる。
【0027】
更に本発明は、本発明に基づいて調製されたDNAポリメラーゼを利用した、DNAの合成方法に関する。すなわち本発明は、鋳型DNAにアニールしたプライマーをDNAポリメラーゼによって伸長する工程を含むDNAの合成方法において、前記DNAポリメラーゼがRNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼであることを特徴とするDNAの合成方法を提供する。
【0028】
本発明のDNAの合成方法において、鋳型DNAとは、一般にPCRなどのDNA合成方法において鋳型として用いることができるあらゆるDNAを含む。プライマーについても同様に、一般にDNAの合成反応に用いるプライマーを利用することができる。本発明のDNAの合成反応は、公知のDNAポリメラーゼによる合成反応と同様の条件で実施することができる。たとえばPCRの原理に基づくDNAの合成反応に本発明を応用する場合、反応に必要な要素は、たとえば以下のような条件で混合される。
鋳型DNA:10〜1000コピー
プライマー:0.1〜1μM
dNTPs:0.02〜0.2mM
Taq DNAポリメラーゼ:1〜5U/100μL
【0029】
上記のような反応溶液を、たとえば以下に示すような温度サイクル条件でインキュベートすれば、本発明に基づいてDNAを合成することができる。
第1サイクル:
94℃/1分間、68℃/10分間
第2サイクル以降:(10〜35サイクル)
94℃/30秒間、68℃/10分間
【0030】
本発明に基づくDNAの合成方法は、DNAの分析に有用である。本発明において、DNAの分析とは、DNAの有無を確認するための検出方法、鋳型DNAの量を決定する定量方法、あるいはDNAがどのような塩基配列で構成されているのかを確認する同定方法、更にはDNAの塩基配列を決定するシーケンシングなどが含まれる。DNAの分析方法においては、合成生成物の有無、その量、生成速度、あるいは長さ等を測定することにより、鋳型となるDNAが分析される。たとえばDNAの合成反応の生成物が生じれば、試料中に含まれるDNAがプライマーに相補的な塩基配列を含んでいたことがわかる。したがって、鋳型に依存しない非特異的な合成生成物は、誤った分析結果を与える原因となる。本発明のDNAの合成方法においては、RNAに起因する非特異反応が抑制されるため、正しい分析結果を期待できる。
【0031】
【実施例】
実施例1:
2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(AmpliTaq DNAポリメラーゼ;PEアプライド・バイオシステム)を含む50μLの反応液(1.5mM塩化マグネシウム、10mMトリス塩酸[pH8.3]、50mM塩化カリウム)に0.2mMのdNTPs(GeneAmp dNTPs;PEアプライド・バイオシステム)、任意の濃度の一組のプライマーDNAと1ngλDNA(ラムダDNA)を加えた。対照としてDNAを加えない反応液も調製した。それらの反応液はサーマルサイクラーTP240(宝酒造)により、以下に示すようなlong PCRの条件で保温した。プライマーには、次に示す配列番号:1および配列番号:2からなるオリゴヌクレオチド(ライフテック・オリエンタル)を用いた。
配列番号:1:5'-ggaactgaagaatgccagagactccgctga-3'
配列番号:2:5'-atggtggcggcatacatcgccttcacaatg-3'
【0032】
第1サイクル: 94℃/1分間、68℃/10分間
残り24サイクル:94℃/30秒間、68℃/10分間
【0033】
反応後の反応液を1%のアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。結果を図1に示す。
λDNAを加えない反応液において非特異的なDNA合成を認め、それはPCRで一般的なプライマーDNA濃度に影響されなかった。λDNAを加えた反応液では期待される3000塩基長のDNA増幅を認めたが、非特異的なDNA合成も認められた。非特異的に合成されたDNAは、λDNAを加えない反応液と同様に、非特異的な高分子DNA(すなわちポリ(dA-dT))合成によるものと考えられる。
【0034】
実施例2
はじめに、2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(AmpliTaq DNAポリメラーゼ;PEアプライド・バイオシステム)を含む20μLの反応液(1.5mM塩化マグネシウム、10mMトリス塩酸[pH8.3]、50mM塩化カリウム)に、5Uまたは0.5UのRNアーゼA(日本ロシュ)を加え(または加えないで)37℃で30分間保温した。次にそれぞれの反応液へ終濃度0.2mMのdATPとdTTP(GeneAmp dNTPs;PEアプライド・バイオシステム)を含む30μLの反応液(1.5mM塩化マグネシウム、10mMトリス塩酸[pH8.3]、50mM塩化カリウム)を加えて50μLとし、65℃で3時間保温した。対照として、上記50μLの反応液に更に0.2μMのオリゴ(dA-dT)10(サワデーテクノロジー)を加えて、同じく65℃で3時間保温した。それぞれの反応液を1.5%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで可視化した。結果を図2に示す。
【0035】
鋳型プライマーとしてオリゴ(dA-dT)10を加えた反応液では、RNアーゼAによるDNA合成阻止は認めなかった。一方、鋳型・プライマーを含まない反応液では、5UのRNアーゼAにより、非特異的な高分子DNA(ポリ(dA-dT))合成が阻止された。これらの結果は、DNAポリメラーゼにポリ(dA-dT)合成の鋳型・プライマーとなるRNAが共存することを示している。
【0036】
実施例3
はじめに、2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(AmpliTaq DNAポリメラーゼ;PEアプライド・バイオシステム)を含む10μLの反応液(1.5mM塩化マグネシウム、10mMトリス塩酸[pH8.3]、50mM塩化カリウム)に、0.01Uまたは0.001UのRNアーゼA(日本ロシュ)を加え(または加えないで)37℃で30分間保温した。次にそれぞれの反応液へ終濃度0.2mMのdNTPs(GeneAmp dNTPs;PEアプライド・バイオシステム)と、0.5μMの1組のプライマーDNA:配列番号:1および2(ライフテック・オリエンタル)と1ngλDNA(ラムダDNA)を加えて50μLとし実施例1で示したlong PCRの条件で保温した。対照としてλDNAを加えない反応液も調製した。それぞれの反応液を1%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで可視化した。結果を図3に示す。
long PCRの条件においては、0.01UのRNアーゼAにより非特異的な高分子DNA(ポリ(dA-dT))合成を阻止することができた。
【0037】
【発明の効果】
本発明によって、RNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼが提供される。DNAポリメラーゼに夾雑するRNAは、核酸の合成反応において非特異的な反応の原因となる。本発明のDNAポリメラーゼを用いれば、RNAに起因する非特異反応を阻止することができる。RNAに起因する非特異反応の生成物は、高分子のDNAである。たとえばPCRなどの核酸の増幅反応においては、こうして生成する高分子のDNAがバックグランドシグナルとなり、増幅生成物の検出を妨げていた。本発明のDNAポリメラーゼを利用することにより、バックグランドシグナルを小さくすることができる。その結果、本発明のDNAポリメラーゼによれば、より高感度に、反応生成物を検出することができる。
【0038】
PCRのような、高度な増幅をともなうDNAの合成反応においては、非特異的な反応による生成物も爆発的に増幅されてしまう。特に、目的とする鋳型の量が少ない場合には、非特異的な反応の生成物に陵駕されてしまい、目的とする反応の生成物を確認できなくなってしまう恐れさえある。
【0039】
また、RNAに起因する非特異的な反応は、反応効率の低下の原因にもなる。多量のDNAポリメラーゼが、合成すべきではないRNAを鋳型とする核酸の合成反応にかかわることは、それだけ目的とするDNAの合成反応の効率が低下することになる。
【0040】
本発明のDNAポリメラーゼを得るためのRNAの除去工程は、たとえばRNアーゼAなどの酵素を利用して、温和な条件下で、容易に行うことがきる。つまり本発明は、高度な特異性を持つDNAの合成反応を、簡単な酵素処理で実現することができる、優れた技術を提供する。
【0041】
【配列表】
Figure 0005035765
Figure 0005035765

【図面の簡単な説明】
【図1】long PCRの条件下における高分子DNAの生成を示す写真。Mで示したレーンは分子量マーカー、その他のレーンは1ngλDNAとλDNA無添加に対して、0−1μMのプライマーを加えて反応させた後の反応液を電気泳動した結果を示す。
【図2】RNアーゼAによる高分子DNAの生成阻止作用を示す写真。Mで示したレーンは分子量マーカー、その他のレーンはオリゴ(dA-dT)10の有無(+/-)に対して、0−5UのRNアーゼAを加えた反応液を電気泳動した結果を示す。
【図3】long PCRの条件下における、RNアーゼAによる高分子DNAの生成阻止作用を示す写真。Mで示したレーンは分子量マーカー、その他のレーンはプライマーの有無(+/-)に対して、0−0.01UのRNアーゼAを加えた反応液を電気泳動した結果を示す。

Claims (10)

  1. RNAを含むDNAポリメラーゼからRNAを除去する工程を含む、RNAを実質的に含まないDNAポリメラーゼの製造方法であって、該除去工程により、鋳型に依存しないDNA合成が抑制されたDNAポリメラーゼを製造する方法。
  2. RNAの除去工程が、RNアーゼを作用させることによって行われる請求項1に記載の方法。
  3. RNアーゼがRNアーゼAである請求項2に記載の方法。
  4. DNAポリメラーゼが、テルムス属微生物由来のDNAポリメラーゼである請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. テルムス属微生物が、テルムス・アクアティクス、またはテルムス・サーモフィルスである請求項4に記載の方法。
  6. 鋳型DNAにアニールしたプライマーをDNAポリメラーゼによって伸長する工程を含むDNAの合成方法であって、前記DNAポリメラーゼがテルムス属微生物由来の変異していないDNAポリメラーゼであって、RNAを実質的に含まない、鋳型に依存しないDNA合成が抑制されたDNAポリメラーゼであることを特徴とするDNAの合成方法。
  7. 次の工程を含む、DNAの分析方法。
    (1)請求項6に記載の方法によってDNAを合成する工程、および
    (2)工程(1)の生成物の有無、生成物の量、生成物の生成速度、および生成物の長さからなる群から選択されるいずれかの指標に基づいて、DNAを分析する工程
  8. テルムス属微生物由来の変異していないDNAポリメラーゼを含むDNAポリメラーゼ組成物であって、RNAを実質的に含まない、鋳型に依存しないDNA合成が抑制されたDNAポリメラーゼ組成物。
  9. テルムス属微生物由来の変異していないDNAポリメラーゼであって、RNAを実質的に含まない、鋳型に依存しないDNA合成が抑制されたDNAポリメラーゼからなるDNAの分析用組成物。
  10. テルムス属微生物が、テルムス・アクアティクス、またはテルムス・サーモフィルスである請求項8または9に記載の組成物。
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