JP5034355B2 - 四輪駆動車のトルク配分制御装置 - Google Patents
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Description
これにより、車体速が所定値以下の極低速領域で、車体速が上昇するほど目標伝達トルクを低下させることで、発進時の加速性能向上と、タイトコーナーブレーキング現象の発生との両立を図っている。
本発明の課題は、タイトコーナーブレーキング現象を効果的に抑制しつつ、発進時加速性能を向上させることである。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態の四輪駆動車の構成を示す。
図1に示すように、1はエンジンであり、2は自動変速機であり、3はフロントディファレンシャルであり、4はリアディファレンシャルであり、5は右前輪であり、6は左前輪であり、7は右後輪であり、8は左後輪であり、9はトルク配分クラッチ(トルク配分アクチュエータ)である。この車両は、トルク配分コントローラ10、右前車輪速センサ11、左前車輪速センサ12、右後車輪速センサ13、左後車輪速センサ14、アクセル開度センサ15及び舵角センサ16を備えている。
ここで、目標伝達トルクが大きくなるほど、トルク配分クラッチ9の締結力が大きくなり、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動が制限され、すなわち、より4輪駆動傾向が強くなり、目標伝達トルクが小さくなるほど、トルク配分クラッチ9の締結力が小さくなり、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動が許容され、すなわち、より2輪駆動(本実施形態では前輪駆動)傾向が強くなる。
図2に示すように、処理を開始すると、ステップS1において、車輪速センサ11〜14により各輪の車輪速を検出する。
続いてステップS2において、前記ステップS1で検出した車輪速に基づいて、車体速Vを算出する。例えば、4輪の各輪の車輪速をセレクトロー処理して、最小値の車輪速を選択し、その車輪速に基づいて車体速Vを算出する。
続いてステップS3において、車体速が所定値(例えば2.75km/h)以上か否かを判定する。ここで、車体速Vが所定値V1以上の場合(V≧V1)、通常制御域(通常速度域)にあるとして、ステップS4に進み、車体速Vが所定値V1未満の場合(V<V1)、ステップS7に進む。
ステップS5では、アクセル開度及び前後輪速度差に基づいて目標伝達トルクを設定する。例えば、前記特許文献1に開示されているように、車輪速センサ11〜14により得た各輪の車輪速を基に、前後輪速度差が大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する、すなわち、トルク配分クラッチ9の締結力を大きくして、左右前輪11,12と左右後輪13,14との差動を制限する。また、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きい値に設定する。これにより、発進時や加速時に4輪に分配するトルク配分により駆動スリップの発生を未然に抑えて、加速性能を向上させることができる。そして、当該図2に示す処理を終了する。
一方、前記ステップS3で車体速が所定値未満であるとして進むステップS7では、極低速領域の目標伝達トルクの設定をする。
図3に示すように、処理を開始すると、先ずステップS21において、4輪の各輪の車輪速をセレクトロー処理して、最小値の車輪速を選択し、その車輪速に基づいて車体速Vを算出する。
なお、全輪の車輪速に基づいて、車体速Vを算出(全輪の車輪速の平均値として車体速Vを算出)することもでき、予め決めた特定の車輪(例えば駆動輪)の車輪速に基づいて、車体速Vを算出することもできる。
ステップS24では、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定する。具体的には、車体速Vが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくする。
図4は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
続いてステップS26において、アクセル開度θが所定値θ1(例えば5%)以上か否かを判定する。ここで、アクセル開度θが所定値θ1以上の場合(θ≧θ1)、ステップS27に進み、アクセル開度センサ15から得たアクセル開度θが所定値θ1未満の場合(θ<θ1)、当該図3(ステップS7)の示す処理を終了する。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図4の場合(同図(c))と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、アクセル開度が大きくなるほど大きくなる。例えば、目標伝達トルクは、極低速領域内で速度の高い領域では、車体速の増加に対して減少割合が極力抑えられる。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図4や図5の場合(同図(c))と比較してわかるように、極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)において、操舵角が小さくなるほど、予め大きい値となるように目標伝達トルクを設定する。例えば、操舵角が小さい領域では、低摩擦路面において駆動輪が初期空転しないような値として目標伝達トルクを設定し(目標伝達トルクが大きくなる傾向)、操舵角が大きい領域では、タイトコーナーブレーキング現象が発生しないような値として目標伝達トルクを設定する(目標伝達トルクが小さくなる傾向)。
動作は次のようになる。
トルク分配コントローラ5では、車輪速センサ11〜14により各輪の車輪速を検出し、検出した車輪速に基づいて、車体速Vを算出する(前記ステップS1→ステップS2)。そして、車体速Vが所定値V1以上で、かつ操舵角δが所定値δ1以上であれば、アクセル開度及び前後輪速度差に基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS3→ステップS4→ステップS6)。また、車体速Vが所定値V1以上で、かつ操舵角δが所定値δ1未満であれば、操舵角及びアクセル開度に基づいて目標伝達トルクを設定する(前記ステップS3→ステップS4→ステップS5)。
以上のように設定、さらには補正した目標伝達トルクによりトルク配分クラッチ9による締結力が制御される。すなわち、所望の4輪傾向又は2輪傾向となるように各輪の駆動力が制御される。
作用及び効果は次のようになる。
前述のように、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、車体速Vに基づいて目標伝達トルクを設定し、設定した目標伝達トルクを、舵角センサ16で検出した操舵角δに基づいて補正している(前記ステップS24、ステップS25)。具体的には、車体速Vが大きくなるほど、目標伝達トルクを小さくなるように設定し、そのように設定した目標伝達トルクをタイトコーナーブレーキング現象の発生しない範囲でできる限り大きくなるように補正している。
これにより、転舵角δが小さくなっている状態で発進するとき、すなわち、より直進に近い状態で発進するときには、目標伝達トルクが大きくなり、転舵角δが大きくなっている状態で発進するとき、すなわち、転舵状態で発進するときには、目標伝達トルクが小さくなる。このようにすることで、直進発進時には、大きい値に設定した目標伝達トルクにより、円滑に発進でき、転舵発進時には、小さい値に設定した目標伝達トルクにより、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制できる。
ここで、極低速領域では、駆動輪の駆動トルクが大きくなると、もともとタイトコーナーブレーキング現象の発生がし難くなる。その一方で、駆動トルクが大きいときに目標伝達トルクが小さいままだと、駆動輪の初期空転が顕著になり、発進時加速性能が悪くなる。このようなことから、アクセル開度θが大きくなるほど、目標伝達トルクを大きくすることで、転舵発進直後などの極低速領域で、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制しつつも、発進時加速性能を向上させることができる。
すなわち、前記第1の実施形態では、通常速度域と極低速領域との境界を示す所定値V1を2.75km/hとし、極低速領域と極々低速領域との境界を示す所定値V2を1km/hとしている。しかし、所定値V1,V2は他の値とすることもでき、例えば実験値や経験値を基に所定値V1,V2を設定する。
また、アクセル開度センサ15は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を実現しており、トルク配分コントローラ10のステップS26及びステップS27の処理は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段を実現している。
次に第2の実施形態を説明する。
(構成)
図7は、本発明を適用した第2の実施形態の車両の構成を示す。
図7に示すように、第2の実施形態の車両の基本的構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一であるが、第2の実施形態の車両では、舵角センサ16に換えて、走行路の路面摩擦係数を検出する路面摩擦センサ17を備えている。以下の説明では、第2の実施形態の車両において、前記第1の実施形態の車両の構成と同一符号を付してある構成については、特に言及しない限りは同一である。
図8は、その極低速領域の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図9は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図3の場合と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、路面摩擦係数μが小さくなるほど大きくなる。
以上のように、特に第2の実施形態では、極低速領域用の目標伝達トルクの設定において(前記ステップS7)、路面摩擦係数μが所定値μ1以下であれば、路面摩擦係数μに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS31→ステップS32)。具体的には、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
また、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、路面摩擦係数μに基づいて補正する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS33又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28→ステップS33)。具体的には、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
これにより、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)又は極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、路面摩擦係数μに基づいて目標伝達トルクを補正している(前記ステップS32又はステップS33)。具体的には、いずれの車速領域でも、路面摩擦係数μが小さくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
また、車体速が極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)で転舵状態にある場合には、路面摩擦係数μに基づく目標伝達トルクの補正を、路面摩擦係数μが所定値μ1以下であることを条件に実施している。これにより、転舵発進していることでタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性が高くなっている状況下で、路面摩擦係数μが大きい路面で目標伝達トルクを大きくしてしまいタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性をさらに高めてしまうことを防止しつつ、低摩擦路面における発進時加速性能を向上させることができる。
次に第3の実施形態を説明する。
(構成)
図10は、本発明を適用した第3の実施形態の車両の構成を示す。
図10に示すように、第3の実施形態の車両の基本的構成は、前記図1に示した第1の実施形態の車両の構成と同一であるが、第3の実施形態の車両では、舵角センサ16に換えて、走行路の道路勾配を検出する勾配センサ18を備えている。以下の説明では、第3の実施形態の車両において、前記第1の実施形態の車両の構成と同一符号を付してある構成については、特に言及しない限りは同一である。
図11は、その極低速領域の目標伝達トルクの設定処理の処理手順を示す。
図12は、車速(同図(a))と目標伝達トルク(同図(c))との関係の一例を示す。なお、同図(b)は、従来技術において設定される目標伝達トルクの例を示す。
同図(c)に示す目標伝達トルクは、前記図3の場合と比較してわかるように、極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)において、道路勾配αが大きくなるほど大きくなる。
以上のように、特に第3の実施形態では、極低速領域用の目標伝達トルクの設定において(前記ステップS7)、道路勾配αが所定値α1以上であれば、道路勾配αに基づいて目標伝達トルクを補正する(前記ステップS41→ステップS42)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
また、4輪の車輪速のうちの最小値の車輪速に基づいて算出した車体速Vが所定値V2未満であれば、又は車体速Vが所定値V2以上であっても、操舵角δが所定値δ1未満であれば、転舵角δに基づいて設定した目標伝達トルクを、道路勾配αに基づいて補正する(前記ステップS21→ステップS22→ステップS28→ステップS43又は前記ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS28→ステップS43)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるように補正する。
これにより、車体速が極々低速領域(例えば1km/h未満の車速領域)又は極低速領域(例えば1km/h〜2.75km/hの車速領域)にある場合、道路勾配αに基づいて目標伝達トルクを補正している(前記ステップS42又はステップS43)。具体的には、道路勾配αが大きくなるほど、目標伝達トルクが大きくなるような補正をしている。
Claims (4)
- エンジントルクにより前輪及び後輪を駆動する駆動系に配置され、目標配分値に基づいてエンジントルクを前輪と後輪とに分配するトルク分配手段と、
車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前記トルク分配手段による前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定する目標配分値設定手段と、
前記車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合にも操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をする補正手段と、
を備え、
前記目標配分値設定手段は、車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにし、
前記補正手段は、前記操舵角検出手段が検出した操舵角が小さくなるほど前記凸となる傾向が強くなるように、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を補正することを特徴とする四輪駆動車のトルク配分制御装置。 - アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段をさらに備え、前記補正手段は、前記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が高くなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をすることを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動車のトルク配分制御装置。
- 走行路の路面摩擦係数を検出する路面摩擦係数検出手段をさらに備え、前記補正手段は、前記路面摩擦係数検出手段が検出した路面摩擦係数が小さくなるほど、前記目標配分値設定手段が設定した目標配分値を大きくする補正をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の四輪駆動車のトルク配分制御装置。
- エンジントルクを目標配分値に基づいて前輪と後輪とに分配する四輪駆動車のトルク配分制御装置において、
車体速が発進直後の所定の速度領域にある場合、該車体速が大きくなるほど、前後輪のトルク配分が前輪又は後輪の何れかに偏るように前記目標配分値を小さい値に設定するとともに、そのときの操舵角に基づいて前記設定した目標配分値を増加補正して、前記目標配分値をタイトコーナーブレーキング現象が発生しない範囲内で変化させるものであって、
車体速が前記所定の速度領域内で速度が低い極々低速領域にある場合、該車体速に依らず、前記目標配分値を一定値に設定し、車体速が前記所定の速度領域内で速度が高い極低速領域にある場合、該車体速の増加に対する前記目標配分値の減少割合が多くなるように該目標配分値を設定することで、車体速が大きくなるほど目標配分値が大となる方向に凸となるようにするとともに、操舵角が小さくなるほど前記凸となる傾向が強くなるように前記目標配分値を補正することを特徴とする四輪駆動車のトルク配分制御装置。
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