JP5033928B1 - 有機系産業廃棄物の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機系廃棄物の処理方法において、処理物を有効利用しない最終処分を前提とした上で、簡易な施設及び運用によって処理可能でありかつ消費エネルギーを大幅に低減する。
【解決手段】有機系廃棄物を主資材として含む発酵資材を発酵槽に投入し、発酵時に発生する気体のみを発酵槽から排出させつつ連続発酵させる発酵工程と、発酵工程の途中で発酵槽に対して新たな前記発酵資材を複数回追加投入する追加投入工程と、発酵槽内の収容物全体の水分含有率が自燃可能な値以下となった後に、発酵分解物を前記発酵槽から取り出す取出工程と、を有する有機系廃棄物の処理方法である。有機系廃棄物が重金属を含み、発酵分解物において重金属が濃縮されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、発酵を用いた有機系廃棄物の処理方法に関する。
有機系廃棄物(主として産業廃棄物)には、水産廃棄物、農産廃棄物、畜産廃棄物及び食品加工廃棄物等がある。有機系廃棄物の多くは、通常、大量の水分を含んでいるため、処理が困難となっている。例えば、ホタテウロは約75%、イカゴロは約60%の水分を含む。また、有機系廃棄物の中には、重金属を含むものもある。例えば、水産廃棄物であるホタテウロ並びにイカ、タコ及び魚類の内臓などはカドミウム等の重金属を多く含む。重金属を一定以上含む水産廃棄物は、厳重な最終処理が求められており、その処理費用の軽減が課題となっている。
有機系廃棄物の従来の主な処理方法としては、酸処理後の電解による方法、焼却による方法及び発酵分解による方法がある。
酸処理後の電解による方法としては、例えば特許文献1がある。特許文献1では、酸処理により電解液中で廃棄物を融解し、電気分解により電解液中のカドミニウムを電極に集積して除去し最終固化処理を行う。
焼却による方法としては、例えば特許文献2、3がある。特許文献2では、有害なホタテウロの産業廃棄物に、水分調整用成形材及びカロリー附加材並びに脱塩素剤を適量加え、粉砕混合したのちペレット化したウロ入り混合固形化燃料にし、これを燃焼するよう構成されている。特許文献3では、有機系廃棄物を150〜1000℃で乾留処理して炭化物とし、ダイオキシン発生を防止するために脱塩した後に焼却している。なお、塩分を含む廃棄物は、ダイオキシン発生のない800℃以上の高温焼却が必要である。また、重金属を含む焼却灰は電気分解、コンクリート固化などの最終処分が必要である。
発酵による方法では、例えば、家畜糞尿とバーク、オガコ、チップ、紙などの水分調整材に水産廃棄物を加え撹拌し、微生物による好気的発酵を促す方法がある。処理費用は低額であるが、重金属を一定以上含む場合には発酵分解物の堆肥としての農地還元が制限される。また規制値以下でも農地への連続的投与については重金属の蓄積に対する懸念があり、投入総量を抑制する必要がある。特許文献4、5、6は重金属を含む水産廃棄物の発酵による処理方法を開示している。特許文献4の処理方法は、水産廃棄物をメタン発酵処理した後、消化汚泥を酸処理して重金属を抽出するものである。特許文献5の処理方法は、ホタテウロを発酵分解処理した後の溶液を電気分解してカドミウムを析出除去するものである。特許文献6の処理方法は、イカゴロを特殊な嫌気性複合微生物を用いて発酵させてカドミウムを低減するものである。
特開2005−040726号公報 特開平10−311521号公報 特開平8−94056号公報 特開2003−190913号公報 特開2005−40726号公報 特開2000−319084号公報
従来の有機系廃棄物の処理方法には、以下のような問題点が挙げられる。
特許文献1の電解方式では、コストを下げるために、カドミウム除去後の廃棄物を中和処理及び乾燥して肥料・餌料などの製品として販売する。電解方式は、施設の建設及び運転の費などが高額である。
特許文献2の焼却方式では、ホタテウロから水分を除去して固形化燃料とする過程において複雑で大規模な機械加工施設が必要である。特許文献3の焼却方式では、乾留処理と焼却処理の2段階の加熱が必要であり、重油等の大量の化石燃料を消費する必要がある。従来の焼却方式は、焼却自体に要する燃料以外に、焼却に先立って行う水分低減のために燃料を消費するものであった。
また、従来の発酵方式は、発酵後に得られる処理物を堆肥や飼料等に有効利用することを目的としていた。従って、重金属を含む有機系廃棄物では、発酵後に酸処理や電解処理などの重金属除去を除くための処理と組み合わせたり、発酵において重金属を低減できる特殊な微生物を用いたりすることが必要であった。
従来の有機系廃棄物の処理方法の多くは、処理物を有効利用しようとするものであったため、水分低減や重金属除去のために複雑で大規模な施設や特殊な菌が必要であったりエネルギー消費量が多大であったりしていた。また、処理物を有効利用せずに焼却する場合であっても、焼却自体の燃料に加えて焼却前の水分低減に燃料を消費していたのでエネルギー消費量が多大となっていた。
以上の現状に鑑み、本発明は、有機系廃棄物の処理方法において、処理物を有効利用しない最終処分を前提とした上で、簡易な施設及び運用によって処理可能でありかつ消費エネルギーを従来のいずれの方式に比べても大幅に低減できる処理方法を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するべく本発明は、以下の構成の有機系産業廃棄物の処理方法を提供する。
本発明による有機系産業廃棄物の処理方法の態様は、重金属を含む有機系産業廃棄物を主資材として含む発酵資材を発酵槽に投入し、発酵時に発生する気体のみを前記発酵槽から排出させつつ連続発酵させる発酵工程と、前記発酵工程の途中で前記発酵槽に対して新たな前記発酵資材を複数回追加投入する追加投入工程と、前記発酵槽内の収容物全体の水分含有率が自燃可能な値以下となり、かつ、追加投入された前記発酵資材に含まれる水分に相当する量の水分が蒸発した後に、発酵分解物を前記発酵槽から取り出す取出工程と、を有し、前記発酵工程及び前記追加投入工程では、前記発酵資材の投入及び追加投入並びに前記気体の排出以外には、前記発酵資材の攪拌のみを行い、かつ、前記発酵分解物において前記重金属が濃縮されているものである。
記の態様において、前記取出工程により取り出された前記発酵分解物を、焼却炉にて焼却する焼却工程を有することが、好適である。
また、上記の態様において、前記焼却工程により発生する焼却灰の少なくとも一部を、前記発酵工程において追加投入する前記発酵資材に含めることが、好適である。
また、上記の態様において、前記焼却工程により発生する排熱を回収し、前記焼却工程に供される前の前記発酵分解物の予備乾燥に用いることが、好適である。
また、上記の態様において、前記取出工程により取り出された前記発酵分解物を、固化剤による固化処理又は埋め立て処理により最終処分する工程を有することが、好適である。
また、上記の態様において、前記有機系産業廃棄物が水産廃棄物、農産廃棄物、畜産廃棄物及び食品加工廃棄物のうちの1又は複数の種類の有機系産業廃棄物であることが、好適である。
本発明の有機系廃棄物の処理方法においては、有機系廃棄物を主資材として含む発酵資材を、発酵槽に複数回追加投入して連続発酵させ、発酵時に発生する気体のみを発酵槽から排出させる。
発酵工程では、発酵反応又は発酵熱により発生する気体、例えば水蒸気、二酸化炭素、メタンガス、気化アルコール等は、発酵槽から排出させる。特に、発酵熱により発酵資材から蒸発する水分すなわち水蒸気が排出されるため、発酵資材の水分含有率は減少していく(なお、新たな発酵資材の追加投入時には一時的に増えるが、発酵工程全体を見れば次第に減少していく)。一方で、気体以外の液体及び固体は発酵槽から外部に出さず発酵資材中に留める。発酵により分解されて体積が減少することに加えて水分が蒸発することにより、気化しない成分は発酵資材中で濃縮されることとなる。
本発明の処理方法は、発酵資材を追加投入する作業と、通常行われる切り返しなどの撹拌作業が主たる作業であり、これらの簡易な作業のみで行うことができる。施設についても、発酵時に発生する気体のみを排出させる機能をもつ発酵槽で行うことができる。また、発酵工程では特殊な菌や燃料も不要である。従って、発酵工程のための施設や運用のコストを、極めて低くすることができる。
さらに、本発明の処理方法では、発酵槽内の発酵資材の水分含有率が自燃可能な値以下となった後に、発酵槽内の発酵資材を発酵分解物として発酵槽から取り出す。取出しの時期は、発酵槽内の発酵資材の水分含有率に基づいて判断される。「自燃可能な水分含有率」とは、着火物により着火されると補助燃料無しで燃焼が持続する水分含有率であり、40%以下とされている。自燃可能な水分含有率を超える水分を有する場合は、補助燃料が必須である。因みに、補助燃料を用いて燃焼可能な水分含有率は70%が上限とされている。有機系廃棄物には、これ以上の水分含有率をもつものが多く、水産廃棄物では90%に及ぶものも多い。
取り出された発酵分解物は、自燃可能であるので、そのまま焼却する場合、水分含有率の多いものに比べて大幅に燃料量を低減することができる。また、一時的に密閉容器等で保管する場合も低体積かつ軽量となっているので保管スペースが少なくかつ運搬も容易である。さらに、保管期間の後、直ちに少ない燃料量にて焼却することが可能である。
また、発酵分解物を、そのまま固化処理又は埋め立て処理より最終処分する場合も、水分が低減されているので、固化し易くかつ省スペースである。
有機系廃棄物が重金属を含む場合、発酵工程により重金属が濃縮される。本発明では、有機系廃棄物の有効利用を前提としないので、重金属を除去する必要はなく、むしろできるだけ濃縮することが望ましい。その結果、発酵分解物を焼却処理する場合も、固化処理又は埋め立て処理する場合も、重金属を効率的に処理できる。
例えば、焼却処理する場合、焼却灰中に含まれる重金属の量に関わらずその都度焼却灰を特別管理産業廃棄物として最終処分する必要がある。従って、発酵工程により廃棄物中の重金属をできるだけ濃縮した上で焼却することにより、特別管理産業廃棄物としての最終処分の頻度及び費用(焼却灰重量に基づいて課金)を低減できる。
また、焼却灰の一部を発酵資材として含めれば、焼却灰の量をさらに低減でき、最終処分の費用を低減できる。さらにまた、焼却工程の排熱を回収して焼却前の発酵分解物の予備乾燥に利用すれば、焼却のための燃料量をさらに低減でき、コストを低減できる。
さらにまた、発酵工程により廃棄物中の重金属の濃度が十分に高まった場合、焼却して焼却灰を最終処分するか、そのまま固化処理又は埋め立て処理により最終処分するかを、コストを勘案して選択できる。例えば、燃料価格の高騰による焼却運用費用の高騰などを勘案する。
本発明の対象となる有機系廃棄物としては、水産廃棄物、農産廃棄物、畜産廃棄物又は食品加工廃棄物が好適であり、これらのうちの幾つかが混在する廃棄物であってもよい。特に、水分の多いもの及び/又は重金属を含むものに対して好適である。
以上の通り、本発明では、新たな発酵資材を複数回追加投入して連続発酵させることで、水分を大幅に低減し、また、重金属を濃縮することが可能である。複数回に亘って追加投入する形態は、例えば毎日同程度の量の有機系廃棄物が発生するような産業の態様にマッチングしており、好適である。
図1は、有機系廃棄物の処理方法を適用した処理システムの一実施例を概略的に示した構成図である。 図2は、水産廃棄物を発酵資材の主資材とした場合の水分含有率の変化を示したグラフである。 図2の試験における当初の発酵資材(主資材と各副資材)と発酵分解物の重金属成分分析結果を示す表である。 図4は、有機系廃棄物の処理方法の一例であり焼却工程を含む場合の流れ図である。 図5は、有機系廃棄物の処理方法の別の例であり焼却工程を含まない場合の流れ図である。 図6は、第1実施例における追加発酵資材の成分の変化量を示したグラフである。 図7は、第2実施例における追加発酵資材の成分の変化量を示したグラフである。
以下、本発明の実施例を示した図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の有機系廃棄物の処理方法を適用した処理システムの一実施例を概略的に示した構成図である。以下の工程は、開放型のオープンピット式発酵槽でも実施可能である。
発酵槽1は、その容積は限定されないが、例えば幅6m、長さ52m、深さ2.5m(容積780m)であり、屋根を備えたほぼ閉鎖された空間となっている。太陽光の透過性の高い屋根や壁とすれば、太陽熱によって発酵資材の乾燥が進むので好ましい。
発酵工程の途中である発酵槽1内には発酵資材2が蓄積されている。蓄積された発酵資材2に対して、複数回に亘って新たな発酵資材7が、投入装置3により供給される。投入装置3は、新たな発酵資材7を満遍なく供給するために、図示の両矢印のように、発酵槽1の上方を水平方向に移動しながら供給することが好適である。
また、発酵槽1内の発酵資材2に対して、時々、オーガー等の撹拌装置4により切り返し等の撹拌処理を行う。撹拌装置4も、満遍なく発酵資材2を撹拌するために、水平方向に移動しながら撹拌することが好適である。しかしながら、オープンピット式発酵槽では、撹拌装置4は必須ではなく、ホイールローダー等の重機により撹拌する。
発酵槽1内での発酵工程において発生する気体は、白矢印で示すように、発酵槽1の外部に誘導され、バイオフィルター等の脱臭装置5により脱臭処理されて、外部に排出される。発酵時に発生する気体は、発酵反応により生じるものと、発酵熱により発酵資材中の成分が蒸発して生じるものとがある。例えば、炭酸ガス、メタンガス、気化アルコール、水蒸気等である。水蒸気の大部分は、発酵熱により発酵資材中の水分が蒸発して生じるものである。発酵槽1から気体を積極的に排出させるために適宜のファン(図示せず)を設けてもよい。また、自然に排出させるのみでもよい。
さらに、発酵槽1内に通風するためにエアコンプレッサ等の通風装置6を備えることが好適である。通風によっても水分を低減できる。しかしながら、通風装置は必須ではない。また、排熱が得られる環境では、排熱を利用して乾燥を促進してもよい。
発酵工程の途中における発酵槽1からは、気体のみが排出される。発酵工程においては、液体及び固体は外部に排出されない。
本発明の有機系廃棄物の処理方法は、有機系廃棄物を主資材として含む発酵資材7を、発酵槽1に複数回追加投入して連続発酵させ、発酵時に発生する気体のみを発酵槽1から排出させる発酵工程と、発酵槽1内の発酵資材2(発酵槽内の収容物全体)の水分含有率が自燃可能な値以下となった後に、発酵分解物を発酵槽1から取り出す取出工程と、を少なくとも有するものである。
本発明の有機系廃棄物の処理方法の詳細な説明に先立って、用語の説明をする。
「発酵資材」は、発酵槽1に投入して発酵させるための資材全体を意味する。発酵資材は、主資材と副資材とから構成されている。
発酵資材の「主資材」は、処理対象である有機系廃棄物からなる。有機系廃棄物は、発酵をもたらす微生物の増殖にとって適度な比率の窒素成分と炭素成分に加え、酸素と水分を含む。有機系廃棄物は、水産廃棄物、農産廃棄物、畜産廃棄物及び食品加工廃棄物のうちの1又は複数の種類を指す。
水産廃棄物の例としては、水産業及び水産物加工業において排出される廃棄物、ホタテウロ、イカ・タコのゴロ、魚類内蔵、ひれ、貝殻、甲殻類の殻、魚介類加工屑、海草屑等がある。農産廃棄物の例としては、農業及び農産物の収穫・集荷・加工により排出される廃棄物、わら類、籾殻、ぬか、トウモロコシ屑、種子殻、果実粕、植物油粕、余剰農産物等がある。畜産廃棄物の例としては、畜産業及び畜産物加工業において排出される廃棄物、牛糞・鶏糞などの家畜・家禽の排泄物、家畜・家禽の内臓、骨、羽毛、ひずめ、角、革、血液、卵殻等の解体残渣及び死体等がある。
「副資材」は、水分調整材、発酵種、pH調整材等である。水分調整材の例としては、バーク、オガコ、剪定枝チップ、紙、わら等がある。発酵種の例としては、発酵分解物(戻し)がある。
なお、同じ有機系廃棄物(例えば牛糞)が、発酵資材中の主資材として含まれる場合と、副資材として含まれる場合がある。主資材として含まれる場合は、直接の処理対象であり大量に含まれることになる。副資材として含まれる場合は、水分調整材、発酵種、pH調整材等の機能を果たす程度の量で含まれる。主資材は、当然に必須要素である。一方、副資材は、発酵促進のために含めることが好適であるが、必須要素ではない。
「発酵分解物」は、水分含有率が自燃可能な値以下となった、発酵槽内の収容物を意味する。発酵分解物における有機物の分解率は必ずしも100%でなくともよい。取出工程では、発酵分解物を取り出すことになる。試験では、発酵分解物において、追加した発酵資材の水分の92.6%〜97.2%が減少し、有機物の71.6%〜86.5%が分解しているという結果が得られている。追加した発酵資材中の水分のほとんどが発酵熱により蒸散することになる。
「複数回追加投入」とは、例えば当初に所定量の発酵資材又は発酵床(予め別途発酵させて作ったもの)が投入された発酵槽に対し、適宜の間隔で複数回、新たな所定量の発酵資材を発酵槽に追加投入する意味である。
なお、当初に発酵槽内に投入されるものとしては、発酵資材のみの場合、発酵床のみの場合、発酵資材と発酵床の混合物の場合のいずれでもよい。「発酵床」は、本発明による処理方法を開始する前に予め作るものであり、発酵床を用いる場合は当初投入時にのみ用いる。発酵床の材料は、本発明の処理方法の対象とする有機系廃棄物でなくともよく、特に限定しない。
発酵資材を追加投入する「適宜の間隔」は、例えば1日(すなわち毎日)であるが、これ以外の間隔(例えば半日、2〜3日、一週間等)でもよい。また、必ず一定の間隔で、すなわち規則正しい間隔で投入する必要はない。
発酵資材を追加投入する「複数回」の回数も、限定されないが、例えば、毎日1回2ヶ月間投入すれば約60回である。好適には、5回以上、さらに好適には10回以上である。また、特に回数を定めずに、永続的に追加投入をしてもよい。
追加投入する発酵資材の「所定量」は、当初の発酵資材又は発酵床の所定量とは異なってもよい。また、毎回必ず同じ量を投入する必要はない。例えば、当初の所定量は比較的多くし、追加発酵資材の所定量は、当初の所定量よりも少なくする。
具体的数値の目安として例示すると、次のようになる(この例に限定されない)。
当初の発酵床 :147〜149t
1日の追加発酵資材 :4.7kg/m〜32kg/m/日
(mは、発酵槽1m当たり)
投入期間 :150日〜330日
「取出工程」では、発酵槽内の全体の発酵分解物を一度に取り出す必要はなく、一部でもよい。発酵槽内の収容物全体の水分含有率が自燃可能な値以下となっていれば、新たな発酵資材の追加を続ける一方で、一部の発酵分解物を取り出すといった運用も可能である。取出工程では、先ず、適当なメッシュサイズの篩いを通すことにより、篩上に残る未分解物は発酵槽に還元し、篩下の発酵分解物のみを取り出す。
「重金属」は、ヒ素、カドミウム、水銀、鉛、亜鉛、銅、コバルト、クロム、ニッケル、等である。有機系廃棄物、特に水産廃棄物(ホタテウロ、イカゴロ等)に多く含まれることが多い。発酵槽内の発酵資材の発酵が進むと、灰分の中に蓄積する。試験では、発酵分解物において、当初の発酵資材又は発酵床に比べて、カドミウム濃度が8〜20mg/kg(乾燥重量)増加した。
本発明の処理方法では、追加投入する量、間隔及び回数は、適用対象となる有機系廃棄物の処理量及び発酵条件等に依存するので、特定の範囲に限定することはできない。しかしながら、当初の発酵資材のみで発酵を行う一般的な発酵方法とは異なる。本発明の処理方法では、発酵槽内に発酵段階の異なる発酵資材が混在している状態となっている。先に投入された発酵資材の発酵が進んで発酵分解物となると、後から投入される発酵資材にとっては発酵種及び/又は水分調整材と同じ役割を果たす。
後述する図6〜図8の実施例で示すが、発酵資材を次々に追加投入して発酵させても十分な水分低減及び重金属濃縮の効果が得られる。また、発酵資材を追加投入して発酵させる形態は、多くの産業廃棄物の発生状況ともマッチングしている点で、好ましいといえる。例えば、毎日発生する廃棄物を、毎日発酵槽に追加投入して処理することができる。
図2は、水産廃棄物を発酵資材の主資材とした場合の水分含有率の変化を示したグラフである。この試験は、発酵による水分含有率の低減効果を調べるために行ったので、発酵資材の追加投入は行わず、当初に投入した発酵資材のみを発酵させる試験を行った。
試験開始後9日〜25日までは通風発酵を行い、その後は堆積発酵を行った。
3種の発酵資材の成分は、次の通りである(「%」は重量%)。
(i)ホタテウロ区(全量5.1t):ホタテウロ16.7%、剪定枝チップ16.7%、牛糞7.8%、発酵種(戻し)58.5%
(ii)イカゴロ区(全量5.1t):イカゴロ16.7%、剪定枝チップ16.7%、牛糞7.8%、発酵種(戻し)58.5%
(iii)ヒトデ区(全量6.2t):ヒトデ41.1%、剪定枝チップ6.5%、牛糞13.7%、発酵種(戻し)38.7%
上記の各発酵資材を各発酵槽に投入して撹拌し通風すると、翌日には発酵が進み、温度は60℃〜75℃に達した。これを、一定間隔で切り返すことにより温度は60℃以上に保たれ、3ヶ月程度で有機物が分解し、全体の体積が50%に低減した。図2に示す通り、当初約70%であった水分含有率が、約1ヶ月後に約20〜40%となり、約3ヶ月後には20〜30%に低下した。
図3は、図2の試験における当初の発酵資材(主資材と各副資材)と発酵分解物の重金属成分分析結果を示す表である。乾燥重量で比較している。副資材の発酵種とした戻しの発酵分解物の重金属濃度に比べて、発酵後の発酵分解物の重金属濃度は、上昇している。これは、主資材に含まれていた重金属に由来して濃度が高まったものである。
図4は、本発明による有機系廃棄物の処理方法の一例であり、焼却工程を含む場合の流れ図である。
先ず、当初投入工程を行う(ステップS11)。水産廃棄物、農産廃棄物、畜産廃棄物等の有機系廃棄物を主資材とする発酵資材を発酵槽に投入する。発酵資材には、副資材として、牛糞、剪定枝チップなどの水分調整材、発酵分解物を発酵種として加え、発酵を開始する。
続いて、発酵槽内で通気、撹拌を行いつつ連続発酵させる発酵工程を行う(ステップS12)。発酵槽内の発酵資材の水分含有率が自燃可能な値以下となったか否かを確認する(ステップS13)。水分含有率の確認は、追加投入の都度行う必要はない。数回の追加投入毎に行ってもよい。また、水分含有率が自燃可能な値となる期間や追加投入の回数が経験的に判明している場合は、途中で確認する必要はない。
水分含有率が自燃可能な値以下となっていない場合は、発酵資材を追加投入する追加投入工程を行い(ステップS14)、発酵を持続させる。
水分含有率が自燃可能な値以下となった場合は、発酵分解物の取出工程を行うが、それに先立って、発酵槽内の収容物を取り出して篩分け工程を行う(ステップS15)。篩分け工程は、広い意味での取出工程の一部と考えてもよい。発酵槽内の収容物の全体を取り出しても、一部を取り出してもよい。一部を取り出した場合は、さらに発酵資材の追加投入を行って発酵を持続させてもよい。
篩い分け工程では、発酵槽から取り出した収容物を適当なメッシュサイズの篩いに通す。篩上に残るチップ等の未分解物は発酵槽に再び投入する。そして、篩下の発酵分解物のみを取り出す取出工程を行う(ステップS16)。このように、篩下の発酵分解物のみを後工程に供することにより、最終処分物が減容され、最終処分費用を削減できる。
発酵分解物の篩分けの実施例を、以下に示す。
ア)発酵資材の割合:牛糞尿3.8t、ホタテウロ 4.8t、チップ4.5t(3cmの篩目を通したチップ)
イ)発酵期間:56日
ウ)篩分:篩目1cm、篩振動時間2分間、発酵槽内から取り出した収容物2kg
エ)結果(括弧内は百分率):篩上1.05kg(52.5%)、篩下0.95(47.5%)
オ)考察:篩上には、未分解物のチップが多く含まれていた。チップを含む未分解物は新たな水分調整剤として発酵槽に投入できる。
次に、取り出した篩下の発酵分解物をロータリーキルン等を用いて予備乾燥させる(ステップS17)。予備乾燥は省略することもできる。
その後、発酵分解物を焼却炉にて焼却する焼却工程を行う(ステップS18)。焼却炉の形状は、例えば小型ではストーカー炉(火格子)又は電気炉を用い、大型炉では砂を用いた流動床炉を使用する。発酵分解物の中に、副資材の木質系材料や家畜糞尿に由来する植物繊維が含まれている場合は、焼却時に助燃剤としての役割を果たすので好ましい。
なお、水産廃棄物や畜産廃棄物には、塩化ナトリウム(塩分)が含まれているために低温で燃焼する場合にダイオキシン類が発生する。このため800℃以上での燃焼が必要とされる。発酵分解物は、少なくとも自燃可能な水分含有率以下となっているので、どのような温度で焼却する場合であっても、水分の多い状態で焼却する場合に比べて燃料量を低減することができる。なお、焼却工程で発生する排熱を回収し、予備乾燥に利用してもよい。あるいは、発酵槽内の発酵資材の乾燥のために排熱を利用してもよい。
焼却後に、焼却灰を回収する焼却灰回収工程を行う(ステップS19)。発酵分解物には、カリウムやナトリウム、石灰、リンなどの灰分が多く含まれているため、10%以上が焼却灰となる。重金属を含む有機系廃棄物を処理した場合は、焼却灰中にカドミウムなどの有害重金属が含まれる。焼却灰の一部は、pH調整材として発酵資材の副資材に含めてもよい。発酵槽内のpHが低下すると発酵効率が低下し悪臭が増加するが、このような場合に、アルカリ資材である焼却灰を戻すことが有効である。これにより、最終処分される焼却灰の量も低減できる。
最後に、焼却灰の最終処分を行う(ステップS20)。最終処分工程は、直接コンクリート又はガラスにより固化する固化処分か、又は、埋め立て処分により行う。重金属を含む場合は、特別管理産業廃棄物として遺漏を防ぐためにこのような厳重な最終処分が必要となる。
図5は、本発明による有機系廃棄物の処理方法の別の例であり、焼却工程を含まない場合の流れ図である。
ステップS21〜S26は、図4のステップS11〜S16と同じである。この場合は、ステップS26の取出工程に続いて、発酵分解物をそのまま最終処分する(ステップS27)。最終処分工程は、図4のステップS19と同様に、直接コンクリート又はガラスにより固化する固化処分か、又は、埋め立て処分により行う。
以下、本発明を適用した追加投入連続発酵の実施例を2例示す。
第1実施例は、以下のように行った。
<発酵床の準備>
本実施例では、予め、木質チップ、オガコ等の水分調整材と発酵種の副資材を加えて撹拌したものに、主資材として野菜236t、ホタテウロ263t、イカゴロ80t、計579tを約2カ月間投入し、その後約1.5カ月投入を休止して発酵床を馴養して、所定量の発酵床を作った。なお休止中に通風は行った。この発酵床に対して有機系廃棄物を主資材とする発酵資材を追加投入していく方法を採った。なお、発酵床の調製工程自体は、本発明による処理方法の構成には含まれない。
<追加投入連続発酵の実施>
・当初の発酵床の投入:発酵床 579t
・馴養期間 :3.5ヶ月
・追加発酵資材の投入:野菜くず 8.6t/日(10.0kg/m/日)
生ホタテウロ 8.6t/日(4.7kg/m/日)
茹ホタテウロ 8.6t/日(14.7kg/m/日)
()内は発酵槽1m当たり
・投入期間 :2ヶ月
・追加発酵資材の全追加量: 344t
(野菜くず 234t)
(生ホタテウロ 61t)
(茹ホタテウロ 49t)
図6は、第1実施例における追加発酵資材の成分の変化量を示したグラフである。
発酵槽内で撹拌されるので、当初の発酵床と追加発酵資材とは混合され実際は区別できない。図6の終了時発酵分解物では、当初発酵床相当分を図示することにより、追加発酵資材の成分の変化量を示した。結果は次の通りである。
・追加発酵資材の全追加量中の成分:
水分 299.8t
有機物 39.9t
灰分 3.8t
・発酵分解物中の追加発酵資材由来の成分:
水分 0.0t
有機物 5.4t
灰分 4.0t
連続発酵2ヶ月後には、追加発酵資材の水分は全て蒸発し、有機物は5.4t、灰分は4.0t、にまで減少した。追加発酵資材の全追加量の減少率は97.2%、有機物分解率は86.5%と計算された。また、カドミウム濃度は、当初発酵床の48.6mg/kg(乾燥重量)から発酵分解物の57.1mg/kg(乾燥重量)に増加した。
第2実施例は、以下のように行った。
<発酵床の準備>
上記の第1実施例後に4ヶ月間随時主資材を投入して馴養し、同様に行った。
<追加投入連続発酵の実施>
・当初の発酵床の投入:発酵床 約100t
・馴養期間 :4ヶ月
・当初の発酵床の投入:発酵床 146.7t
・追加発酵資材の投入:生ホタテウロ 17.3t/日(32.0kg/m/日)
茹ホタテウロ 17.3t/日(32.0kg/m/日)
()内は発酵槽1m当たり
・投入期間 :2ヶ月
・追加発酵資材の全追加量: 449.2t
図7は、第2実施例における追加発酵資材の成分の変化量を示したグラフである。
発酵槽内で撹拌されるので、当初の発酵床と追加発酵資材とは混合され実際は区別できない。図7の終了時発酵分解物では、当初発酵床相当分を図示することにより、追加発酵資材の成分の変化量を示した。結果は次の通りである。
・追加発酵資材の全追加量中の成分:
水分 358.9t
有機物 80.7t
灰分 9.6t
・発酵分解物中の追加発酵資材由来の成分:
水分 2.7t
有機物 22.9t
灰分 7.5t
連続発酵2ヶ月後には、追加発酵資材の水分は2.7t、有機物は22.9t、灰分は7.5tまで減少した。追加発酵資材の全追加量の体積低減率は92.6%、有機物分解率は71.6%と計算された。また、カドミウム濃度は、当初発酵床の55mg/kg(乾燥重量)から75mg/kg(乾燥重量)に増加した。
1:発酵槽
2:発酵資材(発酵槽内)
3:投入装置
4:撹拌装置
5:脱臭装置
6:通風装置
7:発酵資材(追加投入用)

Claims (6)

  1. 重金属を含む有機系産業廃棄物を主資材として含む発酵資材を発酵槽に投入し、発酵時に発生する気体のみを前記発酵槽から排出させつつ連続発酵させる発酵工程と、
    前記発酵工程の途中で前記発酵槽に対して新たな前記発酵資材を複数回追加投入する追加投入工程と、
    前記発酵槽内の収容物全体の水分含有率が自燃可能な値以下となり、かつ、追加投入された前記発酵資材に含まれる水分に相当する量の水分が蒸発した後に、発酵分解物を前記発酵槽から取り出す取出工程と、を有し、
    前記発酵工程及び前記追加投入工程では、前記発酵資材の投入及び追加投入並びに前記気体の排出以外には、前記発酵資材の攪拌のみを行い、かつ、
    前記発酵分解物において前記重金属が濃縮されていることを特徴とする有機系産業廃棄物の処理方法。
  2. 前記取出工程により取り出された前記発酵分解物を、焼却炉にて焼却する焼却工程を有することを特徴とする請求項1記載の有機系産業廃棄物の処理方法。
  3. 前記焼却工程により発生する焼却灰の少なくとも一部を、前記発酵工程において追加投入する前記発酵資材に含めることを特徴とする請求項に記載の有機系産業廃棄物の処理方法。
  4. 前記焼却工程により発生する排熱を回収し、前記焼却工程に供される前の前記発酵分解物の予備乾燥に用いることを特徴とする請求項又はに記載の有機系産業廃棄物の処理方法。
  5. 前記取出工程により取り出された前記発酵分解物を、固化剤による固化処理又は埋め立て処理により最終処分する工程を有することを特徴とする請求項1記載の有機系産業廃棄物の処理方法。
  6. 前記有機系産業廃棄物が水産廃棄物、農産廃棄物、畜産廃棄物及び食品加工廃棄物のうちの1又は複数の種類の有機系産業廃棄物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の有機系産業廃棄物の処理方法。
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