JP5028625B2 - 人工血管の製造方法 - Google Patents

人工血管の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5028625B2
JP5028625B2 JP2007524523A JP2007524523A JP5028625B2 JP 5028625 B2 JP5028625 B2 JP 5028625B2 JP 2007524523 A JP2007524523 A JP 2007524523A JP 2007524523 A JP2007524523 A JP 2007524523A JP 5028625 B2 JP5028625 B2 JP 5028625B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
blood vessel
artificial blood
group
substrate
functional group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007524523A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2007007452A1 (ja
Inventor
勉 古薗
邦夫 宮武
良一 田中
正弘 岡田
昌司 安田
弘幸 角野
美和 益田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Health Sciences Foundation
Original Assignee
Japan Health Sciences Foundation
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Health Sciences Foundation filed Critical Japan Health Sciences Foundation
Priority to JP2007524523A priority Critical patent/JP5028625B2/ja
Publication of JPWO2007007452A1 publication Critical patent/JPWO2007007452A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5028625B2 publication Critical patent/JP5028625B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61LMETHODS OR APPARATUS FOR STERILISING MATERIALS OR OBJECTS IN GENERAL; DISINFECTION, STERILISATION OR DEODORISATION OF AIR; CHEMICAL ASPECTS OF BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES; MATERIALS FOR BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES
    • A61L27/00Materials for grafts or prostheses or for coating grafts or prostheses
    • A61L27/50Materials characterised by their function or physical properties, e.g. injectable or lubricating compositions, shape-memory materials, surface modified materials
    • A61L27/507Materials characterised by their function or physical properties, e.g. injectable or lubricating compositions, shape-memory materials, surface modified materials for artificial blood vessels
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61LMETHODS OR APPARATUS FOR STERILISING MATERIALS OR OBJECTS IN GENERAL; DISINFECTION, STERILISATION OR DEODORISATION OF AIR; CHEMICAL ASPECTS OF BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES; MATERIALS FOR BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES
    • A61L27/00Materials for grafts or prostheses or for coating grafts or prostheses
    • A61L27/40Composite materials, i.e. containing one material dispersed in a matrix of the same or different material
    • A61L27/44Composite materials, i.e. containing one material dispersed in a matrix of the same or different material having a macromolecular matrix
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61FFILTERS IMPLANTABLE INTO BLOOD VESSELS; PROSTHESES; DEVICES PROVIDING PATENCY TO, OR PREVENTING COLLAPSING OF, TUBULAR STRUCTURES OF THE BODY, e.g. STENTS; ORTHOPAEDIC, NURSING OR CONTRACEPTIVE DEVICES; FOMENTATION; TREATMENT OR PROTECTION OF EYES OR EARS; BANDAGES, DRESSINGS OR ABSORBENT PADS; FIRST-AID KITS
    • A61F2/00Filters implantable into blood vessels; Prostheses, i.e. artificial substitutes or replacements for parts of the body; Appliances for connecting them with the body; Devices providing patency to, or preventing collapsing of, tubular structures of the body, e.g. stents
    • A61F2/02Prostheses implantable into the body
    • A61F2/04Hollow or tubular parts of organs, e.g. bladders, tracheae, bronchi or bile ducts
    • A61F2/06Blood vessels

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Transplantation (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Oral & Maxillofacial Surgery (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Composite Materials (AREA)
  • Vascular Medicine (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Prostheses (AREA)

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮細胞を早期に人工血管に増殖させることができる、より本物の血管に近い能力を持つ人工血管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に市販されている人工血管は血管内留置時に血管内皮細胞が増殖しにくいことが知られている。
【0003】
そして、この問題を解決するため、種々の人工血管の開発が行なわれている。具体的には、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン等の生体由来の材料を表面にコートした人工血管(特許文献1および非特許文献1〜4)、繊維表面にマイクロメートルオーダーの孔を持つ人工血管(特許文献2)、壁孔からの漏血防止と力学的強度低下による仮性内膜厚の増大という欠点を補うため二層化延伸性ポリテトラフルオロエチレン人工血管(非特許文献5および6)、内皮細胞、平滑筋細胞または血管内皮細胞などの血管由来細胞をあらかじめ内腔に播種・培養して作製したハブリッド型人工血管(非特許文献7〜9)が提案されている。
【特許文献1】
特開平5−344988号公報(1993年12月27日公開)
【特許文献2】
特開平8−332218号公報(1996年12月17日公開)
【非特許文献1】
濱口美穂他,人工臓器,25,208(1996)
【非特許文献2】
谷川隆洋他,人工臓器,25,224(1996)
【非特許文献3】
N. Zempo, A.W. Clowes, Restenosis: pathogenesis and management, Long-term Results in Vascular Surgery, ed by JST Yao, Pearce WH, Appleton & Lange, Norwalk, Connecticat, 1993,19
【非特許文献4】
大島永久他,人工臓器,23,825(1994)
【非特許文献5】
片見一衛他,人工臓器,25,455(1996)
【非特許文献6】
T.R. Kohler, et al., Surgery, 112,901(1992)
【非特許文献7】
石橋和幸他,人工臓器,25,733(1966)
【非特許文献8】
進藤俊哉他,人工臓器,25,204(1996)
【非特許文献9】
Y. Noishiki, et al., Nat. Med. 2,90(1996)
【発明の開示】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示のコラーゲンを表面にコートした人工血管では、当該人工血管を生体内に留置した際、このコラーゲンが生体内で分解してしまい、経時的に人工血管における内皮細胞増殖効果を示さなくなる。また、上記特許文献1および非特許文献1に開示の人工血管で用いられるコラーゲンの多くは牛等の動物由来の材料を原料に製造されており、近年の牛海綿状脳症の問題等から、動物由来タンパク使用についても問題が指摘されている。同様に、非特許文献2に開示の人工血管で用いられるフィブリンはヒト血液製剤由来のものであるため、生物学的安全性が危惧される。さらに、非特許文献4に開示のゼラチン、コラーゲン、アルブミンを表面にコートした人工血管では、異種のゼラチンやコラーゲンに対する生体反応と思われる術後不明熱の発生が認められている。つまり、生体由来の材料を用いた場合には、感染症等の原因となる場合があるなど、生物学的安全性が問題となる。
【0005】
また、非特許文献3に開示のフィブロネクチンを表面にコートした人工血管では、当該人工血管内に張られる仮性内膜が肥厚することが確認された。また、コラーゲンには凝血作用があり、人工血管内に血栓が集積することも知られている。これでは、人工血管の内径を小さくすると、血流が阻害され、人工血管として使用不可能となる可能性がある。
【0006】
また非特許文献4に開示のゼラチン、コラーゲン、アルブミンを表面にコートした人工血管も大口径の人工血管である。
【0007】
また非特許文献5および6に開示された二層化延伸性ポリテトラフルオロエチレン人工血管は、抗血栓性や生体組織適合性が十分であるとはいえず、特に内径6mm以下の人工血管では十分な開存率は得られないなど、ヒトに移植を行なった事例でも、十分な効果が認められず、今後の産業上の利用は期待できない。
【0008】
また非特許文献7〜9に開示されたハブリッド型人工血管は、細胞採取源設定の困難さ、製造法の複雑さ、滅菌の困難さ、コスト増などが問題である。
【0009】
また、上記特許文献2に開示の多孔体を内部に有する人工血管の場合には、まだ研究段階であり、人工血管内への早期の血管内皮細胞が増殖することについては明確に証明されていない。
【0010】
また、ポリエステル製人工血管など、人工血管血液の漏れを防ぐために、プレクロッティング処理が必要な人工血管もあった。ここでプレクロッティング処理とは、人工血管を埋植する前に、患者から採取した血液に浸す作業のことを言う。これでは患者に負担がかかるため、プレクロッティング処理の必要が無い人工血管の開発が必要である。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、動物を含む生体由来の材料を用いることなく、かつ、人工血管内に血管内皮細胞が早期に増殖することが可能な生体親和性の高い人工血管の製造方法を提供することにある。
【0028】
本発明に係る人工血管の製造方法は、上記課題を解決するために、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含んでなる人工血管基材と生体親和性を有する生体親和性セラミックス粒子とが化学結合してなる人工血管の製造方法であって、人工血管基材に対して、表面処理を行った後、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合させることにより、当該人工血管基材表面にバインダーと化学結合を形成する水酸基を含むバインダー反応性官能基を生成するバインダー官能基生成工程と、上記バインダー反応性官能基と化学結合可能な反応基および上記生体親和性セラミックス粒子と化学結合可能な反応性官能基を有するバインダーを上記人工血管基材が有する上記バインダー反応性官能基と反応させることにより、上記人工血管基材に反応性官能基を導入する反応性官能基導入工程と、上記反応性官能基と上記生体親和性セラミックス粒子とを反応させる直接反応工程とを含むことを特徴としている。
上記生体親和性セラミックスとは、生体適合性(組織適合性、無毒性)の高い(優れた)セラミックスである。上記生体親和性セラミックスとしては、具体的には、例えば、リン酸カルシウムおよび酸化チタン少なくとも一方が挙げられる。
上記人工血管基材とは、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含んで構成されるものである。この人工血管基材とは、筒状の形状をしており、例えば、従来のポリエステル、ポリウレタンからなる人工血管も含まれる。
また、上記凝血効果を有するコラーゲンや、仮性内膜が肥厚する上記フィブロネクチンを用いないため、血流が阻害される恐れが無い。このため、本願発明にかかる人工血管は、上記大口径のみでなく(非特許文献4参照)、より内径の小さい中小口径の人工血管にも好適に用いることができる。ここで人工血管において、一般的に内径が6mmを超えるものを「大口径の人工血管」といい、4mmを越え6mm以下のものを「中口径の人工血管」といい、4mm以下のものを「小口径の人工血管」という。また6mm以下の人工血管を総じて「中小口径の人工血管」という場合がある。
【0029】
上記の構成によれば、上記材料を含む人工血管基材に表面処理を行った後、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合させることにより、当該人工血管基材の表面にバインダーと化学結合を形成する水酸基を含むバインダー反応性官能基を生成している。
【0030】
そして、上記バインダー反応性官能基とバインダーとを反応させることにより、上記人工血管基材に生体親和性セラミックス粒子と化学結合可能な反応性官能基を導入し、この反応性官能基と生体親和性セラミックス粒子を反応させている。
【0031】
これにより、人工血管基材表面に上記生体親和性セラミックス粒子が化学結合した人工血管を製造することができる。
【0032】
つまり、上記人工血管基材に対して表面処理を行なった後、上記化合物をグラフト重合させることで、当該人工血管基材の表面にバインダー反応性官能基を生成することができるので、このバインダー反応性官能基を足場として、上記生体親和性セラミックスを化学結合させることができる。
【0033】
また、上記の構成によれば、上記加水分解処理に比べ、生成する水酸基を含むバインダー反応性官能基の数が多くなると考えられる。これは、加水分解処理の場合、切断された高分子鎖の断片のみが水酸基となることに比べ、上記表面処理を行なうことで、表面全体に上記化合物をグラフト重合させることが可能となるためである。よって、上記人工血管基材表面における上記生体親和性セラミックス粒子の被覆率が、より向上した人工血管を得ることができると考えられる。
【0034】
そして、人工血管を生体内(血管内)に埋植した場合には、血管内皮細胞が当該生体親和性セラミックス粒子を足場として増殖することができる。そして、人工血管の表面には生体適合性セラミックス粒子が化学結合しているので、当該生体適合性セラミックス粒子が上記人工血管基材から脱離することが少ない。このため、増殖した血管内皮細胞が、生体適合性セラミックスととともに、脱離することが少ない。
【0035】
このように、上記製造方法によって人工血管を製造することで、生体由来の材料を用いることなく、かつ、人工血管内に血管内皮細胞が早期に増殖することが可能な生体親和性の高い人工血管を製造することができる。
【0036】
そして、人工血管を生体内(血管内)に埋植した場合には、血管内皮細胞が当該生体親和性セラミックス粒子を足場として増殖することができる。上記血管内皮細胞の増殖により埋植初期から当該人工血管内に、薄く、構造的に安定した内膜が形成される。そのためプレクロッティング処理の必要がない。
【0037】
そして、人工血管の表面には生体適合性セラミックス粒子が化学結合しているので、当該生体適合性セラミックス粒子が上記人工血管基材から脱離することが少ない。このため、増殖した血管内皮細胞が、生体適合性セラミックスととともに、脱離することが少ない。
【0038】
また、血管内皮細胞および細胞間基質が、当該人工血管基材の界面に侵入する効果(アンカリング効果)を奏する。このため、当該人工血管内における血栓の剥離が抑制されるという効果を奏する。
【0040】
また、コラーゲン等の生体由来の材料を用いないため、生物学的安全性が確保され、さらに滅菌、輸送、保存が容易という効果を奏する。
【0041】
このように、上記製造方法によって人工血管を製造することで、生体由来の材料を用いることなく、かつ、人工血管内に血管内皮細胞が早期に増殖することが可能な生体親和性の高い人工血管を製造することができる。
【0042】
本発明に係る人工血管の製造方法は、上記課題を解決するために、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含んでなる人工血管基材と生体親和性を有する生体親和性セラミックス粒子とが化学結合してなる人工血管の製造方法であって、上記人工血管基材に対して、表面処理を行った後、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合させることにより、当該人工血管基材表面にバインダー反応性官能基を生成するバインダー反応性官能基生成工程と、上記バインダー反応性官能基と、当該バインダー反応性官能基と化学結合可能な反応基を有する生体親和性セラミックス粒子の反応基を反応させる反応工程とを含むことを特徴としている。
【0043】
上記の構成によれば、上記材料を含んでなる人工血管基材に対して上記表面処理を行った後、上記化合物をグラフト重合させることにより、人工血管表面に上記反応基を有する生体親和性セラミックス粒子を化学結合させるためのバインダー反応性官能基を生成することができる。具体的には、上記ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも1つの材料を含んでなる人工血管基材に対して上記表面処理を行った後、上記化合物をグラフト重合させることにより、上記人工血管基材の表面にバインダー反応性官能基を生成している。そして、このバインダー反応性官能基と、上記生体親和性セラミックス粒子の反応基とを反応させることにより、人工血管の表面に生体親和性セラミックス粒子を化学結合させることができる。
【0044】
従って、上記の構成とすることで、人工血管表面に生体親和性セラミックス粒子を化学結合させることができるので、上記人工血管を生体内に埋植した場合には、血管内皮細胞を、生体親和性セラミックス粒子を足場として増殖させることができる。
【0045】
これにより、生体由来の材料を用いることなく、かつ、人工血管内に血管内皮細胞が早期に増殖することが可能な生体親和性の高い人工血管を製造することができる。
【0046】
本発明に係る人工血管の製造方法において、上記表面処理は、コロナ放電処理、オゾン処理、紫外線−オゾン処理、プラズマ処理からなる群から選ばれる少なくとも1つの表面処理であってもよい。
【0047】
上記の構成によれば、上記表面処理後のグラフト重合において、更に高い上記化合物の導入率が得られる。よって、上記人工血管基材の表面に生成するバインダー反応性官能基の数が多くなる。
【0048】
従って、上記人工血管基材表面における上記生体親和性セラミックス粒子の被覆率が、より向上した人工血管を得ることができる。
【0049】
ここで、コロナ放電処理を用いると、上記人工血管基材表面をラジカル修飾することで、上記化合物をグラフト重合させることができる。そこで、上記人工血管基材表面にコロナ放電処理を行うことにより上記化合物を導入し、上記人工血管基材の表面にバインダー反応性官能基を生成する。
【0050】
また、プラズマ処理とは、放電等により原子核のまわりを回っていた電子が原子から離れ、正イオンと電子に分かれた荷電粒子を含む気体であるプラズマを用いた表面処理法である。上記プラズマ処理は、核融合の研究や半導体製造プロセスなどに応用されており、そのプロセスの低温化や制御性の良さからスパッタリング、エッチングや化学蒸着法(CVD:Chemichal vapor deposition)等による薄膜製造に利用されている。そこで、上記人工血管基材表面にプラズマ処理を行うことにより上記化合物を導入し、上記人工血管基材の表面にバインダー反応性官能基を生成する。
【0051】
オゾンは、反応活性が非常に高い酸化剤として古くからよく知られており、その酸化力を活用したオゾン処理は、「洗浄」、「水質浄化」、「殺菌・消臭」、「漂白」などへの産業に既に広く応用されている。このオゾン処理により人工血管基材表面に上記化合物を導入し、上記人工血管基材の表面にバインダー反応性官能基を生成する。
【0052】
紫外線−オゾン処理は、オゾンガスに紫外線を照射することにより上記オゾン処理より高い酸化力を示すことが出来る。よって、紫外線−オゾン処理を用いて、人工血管基材表面に紫外線−オゾン処理を行うことにより、バインダー反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを導入し、上記人工血管基材の表面にバインダー反応性官能基を生成する。
【0053】
本発明に係る人工血管の製造方法において、上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、ビニルメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEMAと称する)、アクリル酸2−ヒドロキシメチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルからなる群から選ばれる少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
【0054】
上記の構成によれば、これらの(メタ)アクリル酸エステルは、より好適に上記人工血管基材とグラフト重合する。よって、上記人工血管基材の表面に生成するバインダー反応性官能基の数が多くなる。
【0055】
従って、上記人工血管基材表面における上記生体親和性セラミックス粒子の被覆率が、より向上した人工血管を得ることができると考えられる。
【0056】
本発明に係る人工血管の製造方法において、上記反応工程の前に、上記生体親和性セラミックス粒子に上記反応基を導入する反応基導入工程を行う構成であってもよい。
【0057】
上記の構成によれば、上記生体親和性セラミックス粒子に反応基を導入しているので、上記反応基を有していない生体親和性セラミックス粒子であっても、上記人工血管基材と化学結合させることができる。
【0063】
本発明に係る人工血管の製造方法において、上記生体親和性セラミックス粒子は、リン酸カルシウム焼結体である構成がより好ましい。
【0064】
上記リン酸カルシウム焼結体とは、非晶質のリン酸カルシウムを高温で焼結させることにより得られる、結晶度が高くなっているものである。上記リン酸カルシウム焼結体は、結晶度が高いため、生体内に埋植した場合でも溶解することなく、長期間生体内に留置させることができる。
【0065】
上記の構成によれば、上記生体親和性セラミックス粒子として、リン酸カルシウム焼結体を用いている。これにより、得られた人工血管を生体内に埋植した場合であっても、人工血管基材の表面に結合させたリン酸カルシウム焼結体が溶解することがない。このため、上記人工血管を長期間、生体に埋植する用途においても好適に使用することができる。
【0066】
本発明に係る人工血管の製造方法において、上記生体親和性セラミックス粒子が、リン酸カルシウムおよび酸化チタンの少なくとも一方であり、上記反応性官能基が、イソシアネート基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、および4‐メタクリロキシエチルトリメルリテートアンハイドライド基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基である構成がより好ましい。
【0067】
上記イソシアネート基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、および4‐メタクリロキシエチルトリメルリテートアンハイドライド基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基は、上記リン酸カルシウムおよび/または酸化チタンと直接化学結合することができる。従って、生体親和性セラミックス粒子として、リン酸カルシウムおよび/または酸化チタンを用い、かつ、上記人工血管基材に、上記官能基を導入することにより、上記リン酸カルシウムおよび/または酸化チタンに前処理を施すことなく結合させることができる。
【0068】
本発明に係る人工血管の製造方法において、上記生体親和性セラミックス粒子の粒子径が、10nm〜1000nmの範囲内である構成がより好ましい。
【0069】
上記の構成によれば、上記生体親和性セラミックス粒子として、粒子径が10nm〜1000nmの範囲内のものを使用している。これにより、上記生体親和性セラミックス粒子と人工血管基材とをより強固に化学結合させることができる。また、上記生体親和性セラミックス粒子が化学結合することによって上記人工血管基材の例えば、弾性等の特性を損なわせることがない。
【0070】
本発明に係る人工血管の製造方法において、上記人工血管基材は、繊維からなる構成がより好ましい。
【0071】
上記の構成によれば、上記人工血管基材は、繊維から構成されている。具体的には、複数の繊維によって筒状の人工血管基材を構成している。
【0072】
これにより、例えば、弾性および剛性等の人工血管基材として必要な特性を有する人工血管基材を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】参考例における人工血管基材の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。
【図2】参考例の人工血管基材を用いて行なった細胞接着試験の結果を示す蛍光顕微鏡画像を示す図面である。
【図3】参考例において、比較例である比較人工血管基材を用いて行なった細胞接着試験の結果を示す蛍光顕微鏡画像を示す図面である。
【図4】参考例において、比較例であるコラーゲンコート人工血管を用いて行なった細胞接着試験の結果を示す蛍光顕微鏡画像を示す図面である。
【図5】実施例において、水酸基の導入が、FT−IR ATRにより確認された結果を示す図面である。
【図6】実施例におけるHEMA人工血管基材の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。
【図7】実施例において、アルコキシル基の導入が、FT−IR ATRにより確認された結果を示す図面である。
【図8】実施例1におけるKBE人工血管基材の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。
【図9】実施例における本願発明にかかる人工血管の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。
【図10】実施例において、比較例および本願発明にかかる人工血管基材の細胞接着試験の結果を示す図面である。
【図11】実施例における、本願発明に係るアパタイトコーティング人工血管の外観および当該人工血管の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。
【図12】実施例において、犬の左頚動脈の血管に対して、アパタイトコーティング人工血管および未処理人工血管を埋植する様子を示す図面である。
【図13】実施例において、埋植から2週間経過した後の未処理人工血管およびアパタイトコーティング人工血管を、外観の観察、ヘマトキシリンーエオジン染色(以下、「HE染色」と称する)およびフォンビルブランド染色(以下、「VW染色」と称する)により評価した結果を示す図面である。
【図14】実施例において、埋植から4週間経過した後の未処理人工血管およびアパタイトコーティング人工血管を、外観の観察、ヘマトキシリンーエオジン染色およびフォンビルブランド染色により評価した結果を示す図面である。
【図15】実施例において、埋植後の人工血管内における、血管内皮細胞の伸展距離を比較した結果を示す図面である。
【図16】実施例において、埋植後の人工血管内に形成された血栓の厚さを比較した結果を示す図面である。
【図17】実施例において、埋植から2週間経過した後の人工血管をα―smooth muscle actin染色(以下、「α―SMA染色」と称する)により評価した結果を示す図面である。
【図18】実施例において、埋植から4週間経過した後の人工血管をα―SMA染色により評価した結果を示す図面である。
【図19】実施例において、埋植から2週間経過した後のアパタイトコーティング人工血管とコラーゲンコート人工血管を切断した外観を示す図面である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。すなわち、本実施の形態にかかる人工血管は、人工血管基材の表面に生体親和性を有する生体親和性セラミックス粒子が化学結合してなる構成である。これについて以下に説明する。
【0081】
(1.人工血管基材)
ここで、人工血管基材について説明する。上記人工血管基材とは、本発明において、人工血管を構成している材料の一つである。この人工血管基材は、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、および、フッ素系樹脂の少なくとも1つの材料を含んで構成されている。より具体的には、上記人工血管基材は、上記材料が表面に存在している。そして、上記人工血管基材は、筒状構造を有している。
【0082】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体、および、ポリエステル−ポリエステルブロック重合体等の少なくとも1つが挙げられる。
【0083】
上記ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ジオールとイソシアネートからなるポリウレタン材料、パンデックス、ジイソシアネート−ポリエーテルブロック共重合体、ジイソシアネート−ポリエチレングリコールブロック共重合体等の少なくとも1つが挙げられる。
【0084】
上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)ポリビニリデンフルオライド(PVDF)ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等の少なくとも1つが挙げられる。
【0085】
なお、上記人工血管基材を構成する材料としては、上記ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、および、フッ素系樹脂の1つだけを用いて構成されていてもよく、これら材料のうち、複数の材料を組み合わせて構成されていてもよい。
【0086】
そして、上記人工血管基材は、上記材料からなる複数の繊維を用いて構成されていることがより好ましい。
【0087】
具体的には、上記複数の繊維を、例えば、編み、織り、組み等の処理、より詳細には、たて編み、よこ編み、三軸編み、袋織り、組紐などの少なくとも1つの方法によって、筒状構造を形成していることが好ましい。
【0088】
なお、上記人工血管基材の構造としては上記に限定されるものではなく、例えば、不織布等によって、筒状構造を形成していてもよい。
【0089】
また、人工血管基材として、例えば、従来のポリエステル、ポリウレタンまたはPTFEからなる人工血管を使用することもできる。
【0090】
また、上記人工血管基材を構成する材料について、上記ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂以外の材料(生体親和性の高い材料)が含まれていてもよい。換言すると、上記人工血管基材を構成する材料としては、上記ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂が50重量%以上含まれており、他の材料が含まれていてもよい。例えば、上記人工血管基材が繊維から構成されている場合、上記ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる繊維と他の材料からなる繊維とを用いて上記人工血管基材が形成されていてもよい。なお、上記他の材料としては、一般に流通している従来の人工血管を構成している材料等であればよい。
【0091】
そして、上記人工血管基材は、加水分解処理を行なうことにより、その表面に水酸基を有している。この加水分解処理については後述する。
【0092】
(2.生体親和性セラミックス粒子)
次に、上記生体親和性セラミックス粒子について説明する。上記生体親和性セラミックスとは、生体適合性(組織適合性および/または無毒性)の高い(優れた)セラミックスである。上記生体親和性セラミックスとしては、具体的には、例えば、リン酸カルシウムおよび酸化チタンの少なくとも一方が挙げられる。
【0093】
〔酸化チタン〕
上記酸化チタンは、例えば、化学式;TiO等で表される化合物であるとともに、この化合物の表面に水酸基を有するものである。すなわち、本実施の形態にかかる酸化チタンとは、表面に水酸基を有している酸化チタンを示す。
【0094】
具体的に説明すると、酸化チタンが化学式TiOで表される化合物である場合、この酸化チタンの表面を最も多く占めている結晶面、すなわち、アナターゼ型の(001)面とルチル型の(110)面とには、2種類の水酸基が存在している。その1つは、Ti4+と結合しているターミナルOH基であり、もう1つは、2個のTi4+と結合しているブリッジOH基である(清野学著、酸化チタン 物性と応用、技法堂出版、2000参照)。
【0095】
このように、上記酸化チタンの表面には水酸基が存在している。
【0096】
そして、上記酸化チタンは、生体組織との親和性、生体環境における安定性および無毒性が優れているために、医療用材料として好適である。
【0097】
〔リン酸カルシウム〕
上記リン酸カルシウムは、生体活性が高い、すなわち、生体親和性が高く、生体適合性を有している。上記リン酸カルシウムとしては、具体的には、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、リン酸トリカルシウム(β(α)−リン酸トリカルシウム(Ca(PO))、メタリン酸カルシウム(Ca(PO)、オクタリン酸カルシウム(OCP)、Ca10(PO、Ca10(POl2等が挙げられる。なお、上記リン酸カルシウムは、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。また、上記リン酸カルシウムには、水酸イオンおよび/またはリン酸イオンの一部がストロンチウムイオン、バリウムイオン、ナトリウムイオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン等で置換された化合物等が含まれていてもよい。そして、上記リン酸カルシウムとしては、上記例示のうち、生体適合性が高い点で、ハイドロキシアパタイトが好適である。
【0098】
そして、上記リン酸カルシウムとして、リン酸カルシウムを焼結させたリン酸カルシウム焼結体(リン酸カルシウムセラミックスとも呼ばれる)を使用することがより好ましい。リン酸カルシウム焼結体は、非晶質のリン酸カルシウムと比べて、結晶性が高く、生体において溶解性が低い。上記リン酸カルシウム焼結体は、アモルファス(非晶質)のリン酸カルシウムを焼結させることにより得られる。具体的には、例えば、アモルファスのリン酸カルシウムを600℃〜1300℃の温度範囲内で所定時間、焼結させることにより、リン酸カルシウム焼結体を得ることができる。上記リン酸カルシウムを焼結させることによって、結晶性を高めることができ、例えば、生体内に導入(埋植)した場合における溶解性を小さくすることができる。このリン酸カルシウム焼結体の結晶性の度合いは、X線回折法(XRD)により、測定することができる。具体的には、各結晶面を示すピークの半値幅が狭ければ狭いほど結晶性が高い。
【0099】
そして、本実施の形態にかかるリン酸カルシウムの表面には、Ca10(PO(OH)が存在していることがより好ましい。このCa10(PO(OH)は、リン酸カルシウムの表面に存在していればよく、リン酸カルシウム全量に対して、0.1重量%程度含まれていればよいが、50重量%以上含まれていることがより好ましく、90重量%以上含まれていることがさらに好ましい。また、上記リン酸カルシウムには、リン酸カルシウムの水酸イオンおよび/またはリン酸イオンの一部が炭酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン等で置換された化合物が含まれていてもよい。さらに、上記リン酸カルシウムには、アモルファスのハイドロキシアパタイトを焼結する際に生じる、リン酸三カルシウム等が含まれていてもよい。
【0100】
また、上記リン酸カルシウム焼結体は、生体組織との親和性および生体環境における安定性が優れているために、医療用材料として好適である。また、上記リン酸カルシウム焼結体は、生体内で溶解し難い。従って、生体内で長期間、生体活性を維持することができる。
【0101】
ここで、上記リン酸カルシウム焼結体の製造方法について説明する。本実施の形態にかかるリン酸カルシウム焼結体は、アモルファスのリン酸カルシウムを焼結させることにより得ることができる。上記リン酸カルシウムは、湿式法や、乾式法、加水分解法、水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。
【0102】
また、例えば、リン酸カルシウム焼結体を製造する場合、上記アモルファスのリン酸カルシウムを焼結させる焼結温度の下限値としては、600℃以上がより好ましく、700℃以上がさらに好ましく、800℃以上が特に好ましい。焼結温度が600℃よりも低いと、焼結が十分でない場合がある。一方、焼結温度の上限値としては、1300℃以下がより好ましく、1250℃以下がさらに好ましく、1200℃以下が特に好ましい。焼結温度が1300℃よりも高いと、リン酸カルシウムが分解する場合がある。従って、焼結温度を、上記範囲内とすることにより、生体内で溶解し難い(結晶性が高い)リン酸カルシウム焼結体を製造することができる。また、焼結時間としては、特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0103】
また、上記リン酸カルシウムの焼結温度およびリン酸カルシウム焼結体の粒子径を制御することにより、例えば、得られたリン酸カルシウム複合体を生体内に埋入させたとき、リン酸カルシウム焼結体の溶出速度を制御することができる。つまり、上記焼結温度および上記粒子径を制御することにより、用途に応じた、リン酸カルシウム複合体の物性を設計することができる。
【0104】
また、生体組織との親和性および生体環境における安定性が優れているために、例えば、リン酸カルシウム焼結体を構成する材料として、ハイドロキシアパタイト焼結体またはβ−リン酸トリカルシウムを用いることがより好ましい。また、ハイドロキシアパタイト焼結体は、生体内で溶解し難い。従って、例えば、上記ハイドロキシアパタイト焼結体を用いて人工血管を製造した場合には、生体内で長期間、生体活性を維持することができる。
【0105】
〔生体親和性セラミックス粒子の形状〕
上記生体親和性セラミックス粒子の形状は粒子状である。そして、上記粒子の粒子径としては、上記生体親和性セラミックス粒子と上記人工血管基材とが化学結合することにより、人工血管基材の表面に固定できる程度の粒子径であればよい。具体的には、上記粒子径の下限値としては、0.001μm以上がより好ましく、0.01μm以上がさらに好ましい。一方、上記粒子径の上限値としては、1000μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。上記粒子径が1000μmよりも大きいと、または、0.001μmよりも小さいと、生体親和性セラミックス粒子と上記人工血管基材との結合が相対的に弱くなり、得られる人工血管を生体に埋入した場合に、上記人工血管基材から生体親和性セラミックスが剥離する場合がある。
【0106】
ここで本明細書中において使用される場合、用語「粒子径」は、粒子の形状に対する最大内接円の直径が意図され、例えば、粒子の形状が実質的に円形状である場合はその円の直径が意図され、実質的に楕円形状である場合はその楕円の短径が意図され、実質的に正方形状である場合はその正方形の辺の長さが意図され、実質的に長方形状である場合はその長方形の短辺の長さが意図される。当該「粒子径」は走査型電子顕微鏡(SEM)等で測定すればよい。また当該「粒子径」は、任意に選択される粒子の粒子径を測定し、その平均値を計算することにより求めればよい。
【0107】
(3.バインダー)
ここで、上記人工血管基材に、上記生体親和性セラミックス粒子と化学結合する反応性官能基を導入するために用いるバインダーについて説明する。
【0108】
上記バインダーは、水酸基と反応することができる反応基と上記生体親和性セラミックス粒子と化学結合可能な反応性官能基とを有している。
【0109】
上記反応基としては、水酸基と反応できるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、アルコキシシリル基、イソシアネート基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0110】
また、上記反応性官能基としては、生体親和性セラミックス粒子と化学結合可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記生体親和性セラミックス粒子が、酸化チタンおよび/またはリン酸カルシウムカルシウムである場合には、上記反応性官能基としては、イソシアネート基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、および4‐メタクリロキシエチルトリメルリテートアンハイドライド基等の少なくとも1つの官能基が挙げられる。
【0111】
そして、上記反応基と反応性官能基とを有するバインダーの具体例としては、例えば、上記反応基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。この反応基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の少なくとも1つを用いることができる。
【0112】
上記バインダーがシランカップリング剤である場合には、当該バインダーは上記アルコキシシリル基を有している。
【0113】
上記、アルコキシシリル基とは、Si−OR(Rはアルキル基を示す)を含む基を示している。そして、アルコキシシリル基には、≡Si−OR,=Si−(OR),−Si−(OR)等を含むものとする。なお、上記≡および=は、三重結合、二重結合のみを示すものではなく、それぞれの結合の手が、異なる基と結合していてもよい。従って、例えば、−SiH−(OR)や−SiH−(OR)等もアルコキシシリル基に含まれる。そして、上記Si−ORのRとは、アルキル基または水素を示している。つまり、本実施の形態では、ヒドロキシシリル基もアルコキシシリル基の一種であるものとする。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基等が好適に用いることができる。
【0114】
そして、上記人工血管基材に、加水分解処理を行なうことにより、当該人工血管基材の表面に水酸基を生成した後、この人工血管基材と上記バインダーとを反応させることにより、上記人工血管基材に上記反応性官能基を導入することができる。
【0115】
(4.人工血管の製造方法)
ここで、上記人工血管の製造方法について説明する。上記人工血管の製造方法では、人工血管基材を加水分解することで当該人工血管基材の表面に水酸基を生成する水酸基生成工程を行なう。その後、水酸基生成工程によって、人工血管基材の表面に生成した水酸基を用いて上記生体親和性セラミックス粒子を化学結合するためには、大別すると2通りの方法がある。
【0116】
具体的には、(1)人工血管基材の表面に存在する水酸基と上記バインダーとを反応させる反応性官能基導入工程を行なうことにより人工血管基材の表面に上記反応性官能基を導入した後で、この反応性官能基と上記生体親和性セラミックス粒子とを反応させる直接反応工程を行なう、(2)上記生体親和性セラミックス粒子と上記バインダーとを反応させる反応基導入工程を行なうことにより生体親和性セラミックス粒子表面に上記反応基を導入した後、当該反応基と人工血管基材の表面に存在する水酸基とを反応させる反応工程を行なう、の2通りの方法である。なお、上記(2)の方法において、最初から上記生体親和性セラミックス粒子が上記反応基を有している場合には、上記反応基導入工程を行わなくてもよい。以下に各工程について説明する。
【0117】
〔加水分解による水酸基生成工程〕
本実施の形態では、上記人工血管基材を加水分解することで、上記人工血管基材の表面に水酸基を生成する。より具体的には、上記人工血管基材を構成しているポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの高分子材料に対して、加水分解を行なうことで、高分子材料の主鎖を部分的に切断するとともに、その切断した末端を水酸基としている。
【0118】
つまり、本実施の形態では、加水分解処理を行なうことにより、人工血管基材を構成しているポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂および/またはフッ素系樹脂の高分子鎖(主鎖)を途中で切断して、その切断した末端を水酸基としている。
【0119】
具体的には、上記ポリエステル系樹脂を加水分解した場合には、主鎖を構成しているエステル結合が切断され、その切断された末端が水酸基となる。
【0120】
また、上記ポリウレタン系樹脂を加水分解した場合には、主鎖を構成しているウレタン結合が切断され、その切断された末端が水酸基となる。
【0121】
このようにして、上記水酸基生成工程では、人工血管基材表面に存在する上記樹脂の主鎖を途中で切断して、その切断された末端を水酸基としている。これにより、人工血管基材の表面には、水酸基が存在することとなる。
【0122】
そして、上記人工血管基材を構成しているポリエステル系樹脂および/またはポリウレタン系樹脂を加水分解する際、加水分解条件を制御することで、表面に水酸基が存在する人工血管基材の物性を制御することができる。つまり、加水分解条件によって、上記加水分解を行なうことによって、生成させる水酸基の数および加水分解処理された後の人工血管基材の例えば、弾性および剛性等の物性を制御することができる。以下に加水分解条件について詳述する。
【0123】
上記人工血管基材を加水分解処理するには、例えば、上記人工血管基材を塩基性溶液(アルカリ溶液)に浸漬すればよい。より詳細には、所定の濃度の塩基性溶液中に上記人工血管基材を攪拌しながら所定温度かつ所定時間浸漬すればよい。
【0124】
上記塩基性溶液を構成している溶質としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムアンモニア水溶液、カルボン酸及びジカルボン酸等の強アルカリ塩(ナトリウム、カリウム等)、オレイン酸ナトリウムRCOONa(Rはアルキル基を示す)、高級脂肪酸の強アルカリ塩(ナトリウム、カリウム等)、スルホン酸系の強アルカリ塩(ナトリウム、カリウム等)、アミン系の塩基な等が挙げられる。また、上記塩基性溶液を構成している溶媒としては、特に限定されるものではなく、上記溶質の種類および上記人工血管基材を構成している材料等により適宜選択すればよい。具体的には、水、有機溶媒等が挙げられる。そして、塩基性溶媒としては、上記人工血管基材を構成している材料が有機物であることから、塩基性水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム水溶液がより好ましい。
【0125】
上記塩基性溶液の規定度としては、1×10−5〜1Nの範囲内がより好ましく、1×10−4〜0.5Nの範囲内がさらに好ましく、1×10−3〜0.25Nの範囲内が特に好ましい。上記塩基性溶液の規定度が1Nよりも大きい場合には水酸基を生成した人工血管基材の物性を保つことが出来ず、最終的な人工血管としての機能を発揮しないばかりでなく人工血管基材より分子が脱落してしまうことがある。一方、上記塩基性溶液の規定度が、1×10−5Nよりも小さい場合には、当該加水分解処理によって人工血管基材の表面に水酸基を十分に生成することができなくなり当該人工血管基材と上記生体親和性セラミックス粒子とを十分に化学結合させることができない場合がある。
【0126】
換言すると、上記加水分解処理に用いる塩基性溶液のpHの好適な範囲としては、pH9〜pH14の範囲内がより好ましく、pH10〜pH13.75の範囲内がさらに好ましく、pH11〜pH13.5の範囲内が特に好ましい。上記塩基性溶液のpHが14よりも大きい場合には、水酸基を生成した人工血管基材の物性を人工血管として好適に使用できる物性とすることが困難になり、最終的に製造される人工血管としての機能を発揮しない場合がある。また、人工血管基材表面より分子が脱落してしまう場合もある。一方、上記塩基性溶液のpHが9よりも小さい場合には、当該加水分解処理によって人工血管基材の表面に水酸基を十分に生成することができなくなり当該人工血管基材と上記生体親和性セラミックス粒子とを十分に化学結合させることができない場合がある。
【0127】
また、上記塩基性溶液に上記人工血管基材を浸漬して加水分解する際、上記加水分解を行なう温度としては、10℃〜90℃の範囲内がより好ましく、20℃〜80℃の範囲内がさらに好ましく、30〜70℃の範囲内が特に好ましい。上記加水分解を行なう温度が10℃よりも低い場合には、上記人工血管基材の加水分解が十分に進行しない場合があり、上記人工血管基材表面に生成する水酸基の数が所望の数だけ生成しない場合がある。また、上記加水分解を行なう温度が、10℃以下の場合には、上記人工血管基材を浸漬している塩基性溶液の熱対流が起こらない場合があり、当該人工血管基材の表面が均一に加水分解されない場合がある。一方、上記加水分解を行なう温度が90℃よりも高い場合には人工血管基材の物性を保つことが困難となり、人工血管基材が変性する場合がある。つまり最終的に得られる人工血管が所望の機能を発揮しない恐れがある。また、基材表面より分子が脱落してしまう恐れがある。
【0128】
また、上記水酸基生成工程を行なう際には、上記人工血管基材を塩基性溶液中で攪拌しながら加水分解させることがより好ましい。このときの攪拌条件としては、上記人工血管基材に対して均一に加水分解処理が行なえるように、塩基性溶媒が人工血管基材の周囲を対流させることができる条件であることがより好ましい。
【0129】
そして、上記塩基性溶媒を攪拌するためには、例えば、スターラー等を用いて溶液を攪拌すればよい。このときの攪拌速度(スターターの回転速度)としては、400rpm以下が好ましく、300rpm以下がさらに好ましく、200rpm以下が特に好ましい。上記攪拌速度が400rpm以上である場合には、人工血管基材の物性を損なう恐れがある。
【0130】
このようにして、上記水酸基生成工程では、一定の条件下で上記人工血管基材の加水分解処理を行なうことにより、当該人工血管基材を構成する上記樹脂の結合を途中で切断して、この切断した部分を水酸基にしている。
【0131】
また、人工血管基材表面にバインダーと化学結合を形成する水酸基を含むバインダー反応性官能基を生成することが可能であれば、上記加水分解による水酸基を生成する方法に限られるものではなく、上記人工血管基材を表面処理した後、酢酸ビニル、および、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物をグラフト重合させる方法を用いても、人工血管基材に好適にバインダー反応性官能基を生成することができる。
【0132】
以下に、上記人工血管基材の表面処理をする方法としてコロナ放電処理を用い、上記水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとして、HEMAを用いる方法を説明する。
【0133】
〔コロナ放電によるバインダー反応性官能基生成工程〕
本実施の形態では、上記人工血管基材をコロナ放電処理した後、HEMAとグラフト重合させることにより、上記人工血管基材の表面にバインダー反応性官能基を生成する。より具体的には、上記人工血管基材を構成しているポリエステル系樹脂ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1つの高分子材料に対して、コロナ放電処理を行なうことで、上記材料の表面をラジカル修飾した後に、HEMAをグラフト重合させることで、上記人工血管基材表面に水酸基を生成している。
【0134】
つまり、本実施の形態では、コロナ放電処理した後、HEMAをグラフト重合させることにより、人工血管基材表面をラジカル修飾して、水酸基を有するHEMAをグラフト重合させることで、上記人工血管基材表面に水酸基を生成する。これにより、人工血管基材の表面には、水酸基が存在することとなる。
【0135】
本実施形態によれば、上記加水分解による水酸基の生成工程と比較して、上記人工血管基材を構成しているポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂および/またはフッ素系樹脂の引っ張り強度などの物性を劣化させること無く、水酸基を生成することができる。
【0136】
以下にコロナ放電処理を行った後、HEMAをグラフト重合させることによる水酸基生成工程の条件について詳述する。
【0137】
コロナ放電処理の方法は特に限定されるものではなく、また既存のコロナ放電処理装置を適宜採用すればよい。例えば、標準気体(20℃,1気圧)における交流の実行値は、20KV/cm〜10000KV/cmが好ましく、さらに好ましくは22KV/cm〜5000KV/cm、特に好ましくは25KV/cm〜1000V/cmである。10000V/cm以上では電極が熱を持ち基材の物性を損なう場合があり、20V/cm以下ではコロナ放電が開始せず機材の表面改質ができない場合がある。
【0138】
HEMAと上記コロナ放電処理した人工血管基材とのグラフト重合の具体的な方法は特に限定されるものではなく、適宜最適な条件を検討の上、実施すればよい。例えば、重合温度は0℃〜200℃であることが好ましく、さらに好ましくは5℃〜150℃の間であり、最も好ましくは10℃〜100℃である。200℃以上の場合は基材自体の物性を損な場合があり、0℃以下の場合は大気中でコロナ放電を行うので基材表面に水蒸気が結露して基材表面を通電してしまう可能性があり表面処理ができなくなる場合がある。また上記グラフト反応を行なう際の雰囲気は、大気、窒素ガス、またはアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気でもよいが、コロナ放電を誘導するため標準状態の大気がさらに好ましい。また上記グラフト反応の反応時間は、目的の水酸基生成量に応じて調整可能であるが、1分〜3000分が好ましく、さらに好ましくは5分〜600分であり、特に好ましくは10分〜120分である。3000分以上はグラフト重合が進みすぎて基材物性が悪くなる場合があり、1分以下は十分な水酸基の導入ができない場合がある。
【0139】
なお、本実施の形態では、上記人工血管基材を表面処理する方法として、コロナ放電処理を用いたが、上記表面処理後にグラフト重合させる化合物の足場が形成される限り、これに限られるものではなく、例えば、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線−オゾン処理を用いても良い。また、上記グラフト重合させる化合物としてHEMAを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシメチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよく、また、酢酸ビニルを用いてもよい。
【0140】
次に、上記人工血管の製造方法において、上記水酸基生成工程の後で、(1)反応性官能基導入工程および直接反応工程を行なう方法について説明する。
【0141】
〔反応性官能基導入工程〕
上記反応性官能基導入工程では、上記バインダー反応性官能基生成工程後の人工血管基材と上記反応性官能基を有するバインダーとを反応させる、より詳細には上記人工血管基材表面に存在しているバインダー反応性官能基と上記バインダーが有する反応基とを反応させることにより、上記人工血管基材表面に反応性官能基を導入する。
【0142】
ここで、上記バインダーとして、上記アルコキシシリル基を有しているシランカップッリング剤(化合物)を用い、人工血管基材表面に反応性官能基であるアルコキシシリル基を導入する方法について説明する。なお、人工血管基材に反応性官能基を導入する方法は、この方法に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。
【0143】
上記シランカップリング剤は、化学式(1)に示すような化学構造をしている。
【0144】
Z−Si≡(OR) ・・・(1)
上記Zは、上記人工血管基材が有する水酸基と反応する反応基であればよく、具体的には、例えば、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、ジエン基等が挙げられる。また、上記ORとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、上記化学式(1)中の反応基であるZとSiとは、高分子鎖で結合されていてもよく、低分子鎖で結合されていてもよく、直接結合されていてもよい。
【0145】
すなわち、上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0146】
次に、(A)人工血管基材が有する水酸基と、(B)末端に反応性官能基であるアルコキシシリル基および上記水酸基と反応可能な反応基を有するシランカップリング剤と、を重合することにより、上記人工血管基材に上記反応性官能基であるアルコキシシリル基を導入する。
【0147】
具体的には、上記シランカップリング剤と上記人工血管基材とを、重合開始剤、溶媒の存在下で重合させることにより、人工血管基材にアルコキシシリル基を導入することができる。
【0148】
上記溶媒としては、ベンジルアルコール、メタノールおよびトルエン等の溶媒が好適に使用される。また、重合開始剤としては、例えば、過酸化水素等を用いればよい。
【0149】
上記シランカップリング剤の使用量(添加量)の下限値としては、上記人工血管基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。上記使用量が10重量%よりも少ないと、十分な量のアルコキシシリル基を導入することができない場合がある。一方、上記使用量の上限値としては、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。上記使用量が500重量%よりも多いと経済的でない。
【0150】
また、重合は、窒素雰囲気下で行うことがより好ましい。重合温度の下限値としては、−20℃以上がより好ましく、0℃以上がさらに好ましく、20℃以上が特に好ましい。重合温度が−20℃よりも低いと、重合が十分に起こらず、無機基材に官能基が導入されない場合がある。一方、重合温度の上限値としては、120℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましく、90℃以下が特に好ましい。重合温度が120℃よりも高いと、重合量をコントロールできなくなる。また、人工血管材料の物性を変化させる可能性もありかつ経済的でもない。なお、重合時間としては、所望の導入率(人工血管基材にアルコキシシリル基が導入される割合)となるように適宜設定すればよい。
【0151】
また、人工血管基材に対する上記反応性官能基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。ここで、導入率とは、人工血管基材の単位重量あたりに導入されたシランカップリング剤の重量の割合である。上記導入率が0.1重量%以上であれば、上記人工血管基材に、十分な生体親和性セラミックス粒子を結合させることができる。一方、上記導入率の上限値としては、特に限定されるものではないが、上記導入率が100重量%よりも高いと、人工血管基材に結合する生体親和性セラミックス粒子の量が多くなりすぎ経済的でない場合がある。なお、上記反応性官能基の導入率については、最終的に得られる人工血管の使用目的に合わせて適宜設定すればよい。
【0152】
また、人工血管基材にアルコキシシリル基を導入するためにシランカップリング剤が有する反応基(アルコキシシリル基ではない)と、人工血管基材の水酸基とを水系溶媒中で反応させる場合には、シランカップリング剤のアルコキシシリル基を、界面活性剤を用いて保護することにより、水系溶媒中であっても、人工血管基材にアルコキシシリル基を導入することができる。
【0153】
次に、上記反応性官能基がイソシアネート基である場合について説明する。反応性官能基であるイソシアネート基および反応基をそれぞれ末端に有する上記バインダーと人工血管基材と重合させて、人工血管基材にイソシアネート基を導入する場合には、イソシアネート基が反応溶媒中の活性水素と反応して失活する恐れがあるために、脱水ジメチルスルフォキシド、脱水ジメチルフォルムアミド等の脱水溶媒中で反応させることが好ましい。
【0154】
また、活性水素を有する、水またはアルコール中で、末端にイソシアネート基有するモノマーを上記活性基と反応させる場合には、上記イソシアネート基が上記活性水素と反応するため、イソシアネート基を保護する必要がある。具体的には、例えば、上記イソシアネート基を、フェノール、イミダゾール、オキシム、N−ヒドロキシイミド、アルコール、ラクタム、活性メチレン複合体等のブロック剤を用いて、保護することにより重合を行うことができる。イソシアネート基を保護している上記ブロック剤は、加熱することにより脱離させることができる。従って、イソシアネート基を有するバインダーをブロック剤で保護した後、このバインダーの反応基と人工血管基材が有する水酸基とを反応させた後に加熱することにより、人工血管基材にイソシアネート基を導入することができる。
【0155】
上記ブロック剤として、例えば、フェノールを用いた場合、110〜120℃の範囲内で加熱することにより、イソシアネート基を保護しているブロック剤を脱離させることができる。また、ブロック剤として、例えば、イミダゾールを用いた場合には110〜130℃の範囲内、オキシムを用いた場合には130〜150℃の範囲内で加熱することにより、上記ブロック剤を脱離させることができる。上記ブロック剤としては、具体的には、例えば、メチルサリチレート、メチル−p−ヒドロキシベンゾエート等のフェノール含有化合物;イミダゾール;メチルエチルケトキシム、アセトンオキシム等のオキシム含有化合物等が挙げられる。また、人工血管基材に導入された活性基の種類によっては、例えば、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド等のN−ヒドロキシイミド含有化合物;メトキシプロパノール、エチルヘキサノール、ペントール、エチルラクテート等のアルコール含有化合物;カプロラクタム、ピロリジノン等のラクタム含有化合物;エチルアセトアセテート等の活性メチレン化合物等を使用してもよい。
【0156】
なお、人工血管基材に、アルコキシシリル基またはイソシアネート基を導入する方法としては、上記説明の方法に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
【0157】
〔直接反応工程〕
上記直接反応工程では、上記反応性官能基が導入された人工血管基材と生体親和性セラミックス粒子とを直接反応させる。これにより、生体親和性セラミックス粒子と人工血管基材とが化学結合によって結合された人工血管を製造できる。
【0158】
以下に、生体親和性セラミックス粒子としてハイドロキシアパタイト焼結体を用い、人工血管基材としてアルコキシシリル基が導入されたものを用いる場合について説明する。
【0159】
アルコキシシリル基が導入された人工血管基材と(以下、「導入物」と称する)ハイドロキシアパタイト焼結体とを化学結合させるには、例えば、導入物にハイドロキシアパタイト焼結体を吸着させた後、加熱すればよい。
【0160】
具体的には、ハイドロキシアパタイト焼結体を分散させた分散液に、上記導入物を浸漬することにより、導入物の表面にハイドロキシアパタイト焼結体を吸着させる。そして、上記表面に吸着したハイドロキシアパタイト焼結体とアルコキシシリル基とを加熱することで反応させる。
【0161】
上記ハイドロキシアパタイト焼結体を分散させる分散媒としては、具体的には、例えば、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。上記例示の溶媒のうち、ハイドロキシアパタイト焼結体を良好に分散させたり、アルコキシシリル基を保護している界面活性剤を脱離させたりするという点で、アルコール類が好適に使用される。これら分散媒としては、1種類のみを用いてもよく、また、複数の分散媒を併用して使用してもよい。また、例えば、ヘキサンやトルエン等の炭化水素系溶媒を用いる場合、ハイドロキシアパタイト焼結体を良好に分散させるためには、例えば、(1)スターラー等の攪拌装置で強力に攪拌する、(2)超音波装置を用いて分散させる、(3)上記攪拌装置および超音波装置を併用する、等の方法を用いればよい。
【0162】
上記分散液の調製において、ハイドロキシアパタイト焼結体の添加量の下限値としては、上記分散媒に対して、0.01重量%以上がより好ましく、0.02重量%以上がさらに好ましく、0.05重量%以上が特に好ましい。上記ハイドロキシアパタイト焼結体の添加量が0.01重量%よりも少ないと、上記導入物の表面に均一にハイドロキシアパタイト焼結体が吸着せず、均一な被覆表面を形成できなくなる場合がある。一方、上記ハイドロキシアパタイト焼結体の添加量の上限値としては、上記分散媒に対して、5.0重量%以下がより好ましく、4.0重量%以下がさらに好ましく、3.0重量%以下が特に好ましい。上記添加量が5.0重量%よりも多い場合には、上記導入物の表面に吸着するハイドロキシアパタイト焼結体の量よりも、分散液に残存するハイドロキシアパタイト焼結体の量が著しく多くなり経済的でない。
【0163】
上記導入物の表面に吸着したハイドロキシアパタイト焼結体の水酸基と上記導入物に導入されているアルコキシシリル基とを反応させる反応温度の下限値としては、25℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上が特に好ましい。上記反応温度が25℃よりも低いと、ハイドロキシアパタイト焼結体と上記アルコキシシリル基とが反応しない場合がある。一方、上記反応温度の上限値としては、200℃以下がより好ましく、175℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。上記反応温度が200℃よりも高い場合には、導入物が分解する場合がある。
【0164】
なお、上記分散液に導入物を浸漬した後、反応させる前に、上記分散媒と同じ溶媒で、導入物を洗浄することがより好ましい。上記分散液に浸漬した後の導入物の表面には、ハイドロキシアパタイト焼結体が積層されており、洗浄しないで反応させると、ハイドロキシアパタイト焼結体が積層されるため、導入物の物性を損なわせる場合がある。
【0165】
また、必要に応じて、真空条件下で反応させてもよい。真空条件下でハイドロキシアパタイト焼結体とアルコキシシリル基とを反応させることにより、より早くハイドロキシアパタイト複合体を製造することができる。なお、真空条件下で反応させる場合、反応を行う圧力としては、0.01mmHg(1.33kPa)〜10mmHg(13.3kPa)の範囲内が好ましい。圧力を上記範囲内とすることにより、ハイドロキシアパタイト焼結体の水酸基とアルコキシシリル基とを反応させる際に発生するメタノール(エタノール)を除去することができる。
【0166】
なお、用いる無機基材の種類、および、官能基の種類によって、上記反応工程の反応条件や溶媒の種類等は適宜変更すればよい。
【0167】
また、上記の説明では、生体親和性セラミックス粒子としてハイドロキシアパタイト焼結体を用いた例について説明しているが、生体親和性セラミックス粒子として酸化チタンおよび/またはリン酸カルシウムを用いる場合にも上記と同様の方法を行なえばよい。
【0168】
このようにして、生体親和性セラミックス粒子が人工血管基材の表面に化学結合した人工血管を製造することができる。
【0169】
そして、上記の製造方法によって人工血管を製造した場合には、生体親和性セラミックス粒子を前処理することなく用いることができる。従って、上記生体親和性セラミックス粒子の性質を変性させることなく、人工血管を製造することができる。
【0170】
次に、上記人工血管の製造方法において、上記水酸基生成工程の後で、(2)反応基導入工程および反応工程を行なう方法について説明する。
【0171】
〔反応基導入工程〕
上記反応基導入工程では、上記生体親和性セラミックス粒子と上記バインダーとを反応させて上記生体親和性セラミックス粒子表面に水酸基と反応可能な反応基を導入する。
【0172】
ここで、上記バインダーとして、上記アルコキシシリル基(反応性官能基)と上記反応基とを有するシランカップリング剤を用い、生体親和性セラミックス粒子として酸化チタンを用いる場合について説明する。
【0173】
上記シランカップリング剤のアルコキシシリル基と酸化チタンとを反応させる際の反応条件としては、反応の種類、用いるシランカップリング剤の種類等によって異なり、特に限定されるものではない。また、上記反応の種類としては、例えば、乾式法や湿式法等が好適である。
【0174】
乾式法の場合には、高速攪拌機中に酸化チタンの粒子を投入して、そこに、一端に反応基、他端にアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を滴下、または、スプレーにより添加し均一に攪拌した後に乾燥させればよい。このとき、シランカップリング剤の添加量としては、酸化チタン粒子1重量部に対して0.0001〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0175】
一方、湿式法の場合には、有機溶媒中に、酸化チタンの粒子とシランカップリング剤とを添加して、攪拌しながら、室温〜150℃の温度範囲内で、10分〜10日間反応させた後、溶媒および未反応のシランカップリング剤を除去して、乾燥させればよい。
【0176】
このとき、用いる有機溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。上記有機溶媒の使用量の下限値としては、酸化チタン粒子(酸化チタンの粒子)1重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。上記有機溶媒の使用量が0.1重量部よりも少ない場合には、反応系が均一になり難く、酸化チタン粒子の表面が均一に修飾されない場合がある。一方、上記有機溶媒の使用量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、1000重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。上記有機溶媒の使用量が1000重量部よりも多い場合には、経済的でない。
【0177】
シランカップリング剤の添加量の下限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、0.0001重量部以上がより好ましく、0.001重量部以上がさらに好ましい。シランカップリング剤の添加量が0.0001重量部よりも少ない場合には、酸化チタン粒子の表面に導入される反応基の量が十分でなくなる恐れがある。一方、シランカップリング剤の添加量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤の添加量が10重量部よりも多い場合には経済的でない。なお、この理由については、上記乾式法の場合も同様である。
【0178】
また、反応温度の下限値としては、室温(25℃)以上がより好ましい。反応温度が室温よりも低い場合には、反応に長時間を要する場合がある。一方、反応温度の上限値としては、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。反応温度が150℃よりも高い場合には、シランカップリング剤の末端の、アルコキシシリル基および/または反応基が好ましくない副反応を起こす場合がある。
【0179】
また、反能基導入工程によって、反応基が導入された酸化チタンの光触媒活性を長時間持続させるためには、上記反応温度は、80℃程度が好ましい。
【0180】
〔反応工程〕
反応工程では、上記水酸基生成工程により人工血管基材表面に生成された水酸基と、反応基導入工程により酸化チタンに導入された反応基とを反応させる。これにより、生体親和性セラミックス粒子と人工血管基材とが化学結合によって結合された人工血管を製造できる。なお、具体的な反応条件については、上記直接反応工程と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0181】
このようにして、生体親和性セラミックス粒子が人工血管基材の表面に化学結合した人工血管を製造することができる。
【0182】
(5.人工血管)
本実施の形態にかかる人工血管は、上記人工血管基材の表面に生体親和性セラミックス粒子が化学結合されてなる構成である。
【0183】
そして、上記生体親和性セラミックス粒子の人工血管基材に対する被覆率の下限値としては、人工血管基材の表面の面積を100%とした場合、10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、25%以上が特に好ましい。上記被覆率が10%よりも少ない場合には、血管内皮細胞が人工血管表面に十分に接着しない場合がある。一方、上記被覆率の上限値はないが上記被覆率が100%以上、すなわち、人工血管基材に結合している生体親和性セラミックス粒子の上にさらに生体親和性セラミックス粒子が積層した構造である場合、この積層している生体親和性セラミックス粒子は、人工血管基材と化学結合しておらず、物理的に吸着しているだけなので、脱離することがある。このため、上記人工血管は、人工血管基材に生体親和性セラミックス粒子が単層で化学結合していることが特に好ましい。
【0184】
また、得られた人工血管における生体親和性セラミックス粒子層の厚さとしては、人工血管基材の厚さにより異なるが、例えば人工血管基材厚さを100%としたとき、0.0001%〜100%の範囲内がより好ましく、0.001%〜10%の範囲内がさらに好ましい。上記生体親和性セラミックス粒子層の厚さを上記範囲とすることにより、人工血管基材の特性を損なわせることなく、生体適合性の優れた人工血管を得ることができる。
【0185】
なお、上記の説明では、人工血管基材として、ポリエステル系樹脂および/またはポリウレタン系樹脂を用いて、これら人工血管基材を加水分解処理した後、生体親和性セラミックス粒子を結合させている。しかしながら、人工血管基材を構成する材料としては、上記ポリエステル系樹脂および/またはポリウレタン系樹脂だけでなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のポリエチレンのフッ化物を用いてもよい。上記人工血管基材として、ポリエチレンのフッ化物を用い、これを加水分解した場合には、当該ポリエチレンのフッ化物の末端が加水分解されることになり、当該末端に水酸基が生成することとなる。そして、上記末端に生成した水酸基を用いて、上記製造方法、すなわち、(1)反応性官能基導入工程および直接反応工程、(2)反応基導入工程および反応工程のいずれかを行なうことにより、人工血管を製造してもよい。
【0186】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0187】
〔実施例〕
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。また、実施例では、人工血管基材として市販されているポリエステル製の人工血管を用い、生体親和性セラミックス粒子としてハイドロキシアパタイト焼結体を用いた例について説明するが、これに限定されるものではない。
【参考例】
【0188】
(ハイドロキシアパタイト焼結体の製造方法)
まず、参考例にかかるハイドロキシアパタイト焼結体の製造方法につい説明する。
【0189】
連続オイル相としてドデカン、非イオン性界面活性剤として曇天31℃のペンタエチレングリコールドデシルエーテルを用いて、上記非イオン性界面活性剤0.5gを含有している連続オイル層40mlを調製した。次に、上記調製した連続オイル層にCa(OH)分散水溶液(2.5モル%)を10ml添加した。そして、得られた分散液を十分に撹拌した後、その水/オイル(W/O)乳濁液に1.5モル%のKHPO溶液10mlを添加して、反応温度50℃で、24時間撹拌しながら反応させた。得られた反応物を遠心分離により分離することにより、ハイドロキシアパタイトを得た。そして、上記ハイドロキシアパタイトを800℃の条件で、1時間加熱することにより、ハイドロキシアパタイト焼結体の粒子(以下、「HAp粒子」と称する)を得た。このHAp粒子は、単結晶体であり、長径が150〜400nmであった。
【0190】
(人工血管のバインダー反応性官能基造方法)
〔水酸基生成工程〕
まず、ソックスレー抽出済みのポリエステル製人工血管を人工血管基材として用い、この人工血管基材0.03gを、0.2N水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、60℃で30分間反応させることにより、加水分解処理を行なった。
【0191】
その後、加水分解処理した人工血管基材を多量の純水で洗浄した後、この人工血管基材を60℃で乾燥させた。
【0192】
〔反応基導入工程〕
次に、加水分解処理した人工血管基材を窒素雰囲気下で、3つ口フラスコ中に投入し、さらに、重合溶媒であるベンジルアルコール45mlおよびシランカップリング剤であるγ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン5mlを添加し、85℃で30分間膨潤させた。
【0193】
その後、反応開始剤として過酸化水素水785μlを添加した後、85℃で2時間反応させた。そして、反応後の人工血管基材をエタノール中で1時間攪拌することにより洗浄した。次に、上記人工血管基材を取り出し、70℃で30分間減圧乾燥した。これにより、人工血管基材に水酸基を生成した。
【0194】
このときの反応時間におけるアルコキシシリル基の導入率を表1に示す。なお、上記導入率は、未処理の人工血管基材の重量をAg、水酸基導入後の人工血管基材の重量をBgとして、下式(1)により求めた。
【0195】
導入率(重量%)=((B−A)/A)×100 ・・・(1)
【表1】
【0196】
〔反応工程〕
次に、上記のようにして製造したハイドロキシアパタイト焼結体粒子をエタノール中に、2重量%となるように分散させた分散液を調製した。
【0197】
そして、上記分散液に上記アルコキシシリル基が導入された人工血管基材を1時間浸漬することで、上記人工血管基材表面にハイドロキシアパタイト焼結体粒子を吸着させた。その後、上記人工血管基材を取り出し、エタノールで数回洗浄した。
【0198】
次に、人工血管基材表面に吸着したハイドロキシアパタイト焼結体と当該人工血管基材に導入されたアルコキシシリル基とを反応させるために、上記ハイドロキシアパタイト焼結体が吸着した人工血管基材を80℃で2時間、カップリング反応を行った。反応後、得られた反応物をエタノール中に浸漬して、1分間超音波を照射することで、未反応のハイドロキシアパタイト焼結体粒子を除去し、本発明にかかる人工血管を得た。そして、得られた人工血管を走査型電子顕微鏡にて観察した。その結果を図1に示す。
【0199】
上記の結果から、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子が人工血管基材の表面に結合していることが分かる。
【0200】
(細胞接着試験)
次に、上記参考例にて得られた、人工血管の細胞接着試験を行った。これについて以下に説明する。
【0201】
24マルチウェルディッシュに静置した上記人工血管、上記人工血管基材として使用したポリエステル製人工血管(本実施例において、以下、「比較人工血管」と称する)および当該比較人工血管の表面をコラーゲンコートもの(本実施例において、以下、「コラーゲンコート人工血管」と称する)に対して、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)をそれぞれ1×10個/mlずつ播種した。なお、上記比較人工血管およびコラーゲンコート人工血管は、比較例に相当する。
【0202】
そして、培養液としてEBM−2(牛血清、ゲンタマイシン/アンフォテシリンB、ハイドロコーチゾン、hFGF−B、VEGF、R3−1GF−1、アスコルビン酸、hEGF)を用いて、一昼夜、培養を行った。
【0203】
培養後、上記人工血管、比較人工血管およびコラーゲンコート人工血管をリン酸緩衝液で十分に洗浄した後、HOECHST 33342で染色し、蛍光顕微鏡で観察した。上記人工血管の結果を図2、比較人工血管の結果を図3およびコラーゲン人工血管の結果を図4として示す。
【0204】
また、上記蛍光顕微鏡の結果より、上記顕微鏡画像うち、1mm四方の画像を上記図2〜図4の同じ箇所からそれぞれ抜き出し、人工血管、比較人工血管およびコラーゲンコート人工血管のそれぞれに接着している細胞数をそれぞれ3箇所計測した。この3箇所の結果の平均を表2に示す。
【0205】
【表2】
この結果より、本参考例の人工血管の場合には、細胞接着性が比較例(比較人工血管)と比べて著しく向上しておりまたコラーゲンコートの人工血管(コラーゲンコート人工血管)と比較しても差異が無いことが分かる。
【実施例1】
【0206】
(水酸基導入工程)
人工血管基材はポリエステル製人工血管を用いた。電圧100Vで12秒間コロナ放電処理を人工血管基材に施した。その後、上記コロナ放電処理が施された人工血管基材とHEMAとを、通常の大気圧状態下において、60℃で60分間、反応させることにより、グラフト重合させた。その後、上記グラフト重合させた人工血管基材を、1分間、エタノール中で超音波処理した。その後、上記超音波処理後の人工血管基材を、2時間エタノールで洗浄した後、乾燥させた。これにより水酸基が生成された人工血管基材を得た(上記乾燥後の人工血管基材を、以下および図において「HEMA人工血管基材」と称する)。
【0207】
上記水酸基の生成をFT‐IR ATRにて確認したものを図5に示す。図5において、(a)は比較例である比較人工血管の結果を示し、(b)はHEMA人工血管基材である。
【0208】
また、上記乾燥後の人工血管基材の表面を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を図6に示す。
【0209】
(反応基導入工程)
次に、水酸基が生成された人工血管基材をドクター試験管に入れ、そこにペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)40mg/純水18ml水溶液、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE503)1000μl、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)73μlの混合水溶液を添加した。(i)液体窒素による凍結、(ii)脱気、(iii)解凍、(iV)窒素置換からなる(i)から(iv)の工程を2回繰り返すことで、脱酸素した。
【0210】
次に、上記脱酸素後の反応溶液を60℃の湯浴で60分加熱した。その後、未反応モノマーおよびホモポリマーを除去するために、上記加熱後の反応溶液から人工血管基材を取り出し、エタノール中で撹拌しながら2時間洗浄した(この洗浄後の人工血管と、以下および図において、「KBE人工血管基材」と称する)。
【0211】
アルコキシシリル基の導入をFT−IR ATRにて確認した結果を図7に示す。図7において、(a)は比較例である比較人工血管の結果を示し、(b)はKBE人工血管基材の結果を示し、(c)はγ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE503)の単量体の結果を示す。
【0212】
なおこの時のグラフトポリマー導入率は約2.2%であった。ここでグラフトポリマー導入率とは以下の数式により算出されるものである。なお、人工血管基材の重量をDg、KBE人工血管基材の重量をEgとして、下式(2)により求めた。
導入率(%)=((E−D)/D)×100 ・・・(2)
また人工血管基材の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を図8に示す。
【0213】
(アパタイト複合化工程)
本実施例にかかるハイドロキシアパタイト焼結体粒子は、参考例に示した方法と同様に製造した。製造したハイドロキシアパタイト焼結体粒子を、2重量%となるようにエタノールに分散させることにより、分散液を調製した。上記分散液に上記KBE人工血管基材を入れ、1時間撹拌することで、上記KBE人工血管基材にハイドロキシアパタイト焼結体粒子を吸着させた。その後、上記ハイドロキシアパタイト焼結体粒子が吸着した人工血管基材を取り出し、エタノールで数回洗浄した。
【0214】
次に、人工血管基材表面に吸着したハイドロキシアパタイト焼結体粒子と当該人工血管基材に導入されたアルコキシシリル基とを反応させるためのカップリング反応を行った。反応条件は、80℃で2時間である。カップリング反応により得られた反応物をエタノール中に浸漬して、超音波を2分間照射することで、未反応のハイドロキシアパタイト焼結体粒子を除去し、本発明にかかる人工血管を得た。本発明にかかる人工血管を走査型電子顕微鏡にて観察した図を図9に示す。
【0215】
(細胞接着試験)
24マルチウエルディッシュに静置した上記人工血管、人工血管基材として使用したポリエステル製人工血管(本実施例において、以下、「比較人工血管」と称する)および当該比較人工血管の表面にコラーゲンコートしたもの(本実施例において、以下、「コラーゲンコート人工血管」と称する)に対して、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)をそれぞれ1×10個/mlずつ播種した。なお、上記比較人工血管およびコラーゲンコート人工血管は、比較例に相当する。
【0216】
そして、培養液としてEBM−2(牛血清、ゲンタマイシン/アンフォテシリンB、ハイドロコーチゾン、hFGF−B、VEGF、R3−1GF−1、アスコルビン酸、hEGF)を用いて、4時間培養を行った。
【0217】
培養後、上記人工血管、比較人工血管およびコラーゲンコート人工血管をリン酸緩衝液で洗浄し、5%グルタールアルデヒド溶液にて固定し、50%、60%、70%、80%、90%および100%のエタノールで段階的に脱水し、最後はn−ブタノールで脱水した。上記3サンプルの細胞接着性を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を図10に示す。図10において、(a)は本願発明に係る人工血管の走査型電子顕微鏡画像を示し、(b)は比較例であるコラーゲンコート人工血管の走査型電子顕微鏡画像を示し、(c)は比較例である比較人工血管の走査型電子顕微鏡画像を示す。
【0218】
(結果)
図10に示す結果により、本願発明に係る人工血管に対する細胞の接着性は、比較人工血管およびコラーゲンコート人工血管のいずれの血管よりも向上したことが分かった。
【実施例2】
【0219】
以下、実施例および比較例を用いた動物実験により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。本実施例では、本発明に係る人工血管として、実施例において作製した人工血管(本実施例において、以下、「アパタイトコーティング人工血管」と称する)を用いたが、これに限定されるものではない。また、用いた比較例については後述する。なお、本実施例に用いた、アパタイトコーティング人工血管の外観および操作型電子顕微鏡画像を図11に示す。図11において、(a)は本願発明に係る人工血管の外観であり、(b)は当該人工血管の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す。
【0220】
(比較例の調製)
実施例においてKBE人工血管基材と称した、ハイドロキシアパタイト焼結体粒子と複合化する前の人工血管を比較例として用いた(本実施例において、以下「未処理人工血管」と称する)。また、エチレンオキサイドガス滅菌(以下、「EOG滅菌」と称する)したポリエステル製人工血管に0.1%コラーゲン(商品名:Cellmatrix I−C、新田ゼラチン株式会社製)をコートしてコラーゲンコーティング人工血管を調製した(本実施例において、以下、「コラーゲンコート人工血管」と称する)。
【0221】
(動物実験)
供試動物として、犬(HDB犬、交雑犬、雄、8ヶ月齢、25〜30kg)を4頭用い、人工血管の埋植は以下のようにして行った。
【0222】
供試動物に対して、麻酔前投与として1頭当たりジアゼパム注射液(セルシン)10mg/2ml、硫酸アトロピン注射液(硫酸アトロピン)1mg/2ml、塩酸ケタミン(ケタラール)10mg/kg、注射用アンピシリンナトリウム(注射用ビクシリン)1g/4ml、および持続吸入麻酔剤としてエスカイン(イソフルラン)2%を施した。
【0223】
手術手技として、ヘパリンを100(IU/kg)を静脈注射しつつ、上記犬の頸部腹側を正中切開した。その後、左右の頸動脈の内、片側の1本を50mm切除し、EOG滅菌した未処理人工血管(内径5mm、長さ50mm)に置換して、ナイロン(商品名:ネスコスーチャー、USP No.7−0、アルフレッサファーマ株式会社製)で縫合した。その後、他方の頚動脈を、アパタイトコーティング人工血管(内径5mm、長さ50mm)に置換して、上記ナイロンで縫合した。上記左右の頚動脈が、上記未処理人工血管および上記アパタイトコーティング人工血管に置換される前後の状態を図12に示す。図12において、(a)は未処理人工血管が埋植される前の血管を示し、(c)はアパタイトコーティング人工血管が埋植される前の血管を示し、(b)は未処理人工血管が埋植された血管を示し、(d)はアパタイトコーティング人工血管が埋植された血管を示す。また図12の(e)は、埋植された血管全体の外観を示す図面であり、上側の血管は、未処理人工血管が埋植されたものであり、下側の血管は、アパタイトコーティング人工血管が埋植されたものである。
【0224】
次に、筋肉および皮下を吸収性縫合糸(商品名:Vicryl、USP No.4−0、ETHICON社製)にて連続縫合、および皮膚をナイロン糸(商品名:EIP、USP No.2−0、株式会社秋山製作所製)にて結節十字縫合した。 その後、2週間飼育したものおよび4週間飼育したものを、それぞれ2頭ずつ安楽死処置の上、埋設した人工血管を取り出した。取り出した人工血管を、リン酸緩衝液で洗浄後、10%緩衝ホルマリン溶液に浸漬して組織サンプルとした。
【0225】
一方、コラーゲンコート人工血管(内径5mm、長さ50mm)とアパタイトコーティング人工血管(内径5mm、長さ50mm)を、犬の頸動脈に埋植して、2週間後に摘出した後、比較した。埋植法は上記埋植法と同様にして実施した。
【0226】
全ての動物実験は「国立循環器病センター動物実験指針」を遵守して行った。
【0227】
(評価法)
評価は、外観観察、走査型電子顕微鏡観察、HE染色、VW染色およびα‐SMA染色を行った。
【0228】
(HE染色)
HE染色は、単に組織の形態を観察するときに用いられる、細胞核、細胞質を染色する方法であり、大半の組織に対して共通に用いられる最も一般的な組織染色法である。
【0229】
まず、A液(ヘマトキシリン 1.0g、エタノール 10ml)及びB液(カリミョウバン 50g、超純水 800ml)を作製した。次に、上記A液と、上記B液と、ヨウ素酸ナトリウム0.2gとを混合し、1時間静置した。その後、グリセリン200mlを混合した。この混合液を、以下、単に「ヘマトキシリン」と称する。
【0230】
また、HE染色に用いるEosin液は、水 100ml、エオジンY 1.0g、エリスロシンを混合したものを保存液として保管しておき、使用時に上記保存液を80%エタノールで4倍に希釈し、10%酢酸を1ml混合して用いた。なお、エリスロシンの量は染色の結果に応じて適宜調整すれば良い。
【0231】
組織サンプルのパラフィン切片は、染色篭に並べて入れた後、キシレンに5分浸ける。これをもう一度繰り返した後、100%、90%、80%、70%および50%のエタノールに、段階的にそれぞれ、5分間、5〜6回浸けた。
【0232】
その後、水で洗浄して、脱パラフィンされているか確認した。
【0233】
脱パラフィンを確認した後、上記ヘマトキシリンに5分浸けた。その後、水流の勢いが強い部分が組織サンプルに直接接触しないように注意しながら、流水で組織を洗浄した。
【0234】
次に、上記洗浄後の組織サンプルを上記エオジン液に、5分間、5〜6回浸けた後、水で洗浄した。
【0235】
その後、組織サンプルを、50%、70%、80%、90%、95%のエタノールに段階的にそれぞれ、5分間、各々3回浸ける。さらに、100%エタノールに、5分間、10回浸けることにより脱水した。
【0236】
さらに、組織サンプルをキシレンに5分間、5回浸ける。さらにこれを4回繰り返すことで透徹した。
【0237】
透徹後、封入剤(マリノール)をカバーグラスに少量滴下して、空気が混入しないように組織サンプルを封入した。乾燥させた後、顕微鏡で観察した。
【0238】
(VW染色)
組織サンプルのパラフィン切片は37℃で乾燥させたものを用いた。なお、賦活処理は施していない。組織サンプルを脱パラフィンした後、水で洗浄した。脱パラフィン法は上記HE染色で用いた方法に準じた。
【0239】
次に、組織サンプルと、80%メタノールと、0.6%過酸化水素とを混合して15分間反応させた。上記反応後、水洗した後、組織サンプルと、3%過酸化水素とを混合して15分間反応させた。上記反応後、水洗した後、組織サンプルをTBST(50mM Tris-HCl、pH7.6、0.15M NaCl、0.05%Tween)に5分間浸けた。
【0240】
次に、1次抗体反応として、組織サンプルと、100倍に希釈した抗ヒト平滑筋線維アクチン・1A4・マウスモノクローナル抗体(DAKO社製、code NO.:M0841)と室温で30分間反応させた。1次抗体反応の後、上記TBSTで洗浄した。
【0241】
次に、ENVISION染色法により染色した。ENVISION染色法は、ENVISION染織システムであるENVISION+/HRP<マウス一次抗体用>(DAKO社製、code NO.:M4001)を用いた。このとき、反応温度は室温として、反応時間は30分間とした。その後、上記TBSTで洗浄した。
【0242】
次に、組織サンプルをジメチルアミノアゾベンゼン(DAB)で発色させて、水で洗浄した後、上記ヘマトキシリンを用いて核染色を行なった。核染色の後、組織サンプルを水で洗浄することで色出しした。
【0243】
上記色出し後、脱水、透徹、封入した。なお、脱水、透徹、封入は、上記HE染色で用いた方法に準じた。
【0244】
(α‐SMA染色)
α‐SMA染色は、上記VW染色に準じて行なった。ただし、以下の点においてVW染色と異なる。
【0245】
上記脱パラフィン後に組織サンプルを水で洗浄後、プロテイナーゼKを用いて22.5℃で1分間、抗原の賦活処理を行なった。上記1次抗体反応における上記抗ヒト平滑筋線維アクチン・1A4・マウスモノクローナル抗体は、500倍希釈希釈のものを用いた。また、上記核染色後の色出しは行なわなかった。
【0246】
(結果)
埋植から2週間後における上記評価による結果を図13に示す。図13において、(a)は未処理人工血管を切断したものの外観を示す図面であり、(b)は(a)の吻合部付近を拡大した図面であり、(c)は(a)の吻合部の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。(d)は切断した未処理人工血管をHE染色に供した図面であり、(e)は(d)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(f)は(d)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。(g)は切断した未処理人工血管をVW染色に供した図面であり、(h)は(g)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(i)は(g)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。(j)はアパタイトコーティング人工血管を切断したものの外観を示す図面であり、(h)は(j)の吻合部付近を拡大した図面であり、(l)は(j)の吻合部の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。(m)は切断したアパタイトコーティング人工血管をHE染色に供した図面であり、(n)は(m)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(o)は(m)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。(p)は切断したアパタイトコーティング人工血管をVW染色に供した図面であり、(q)は(p)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(r)は(p)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。
【0247】
また、埋植から4週間経過後の上記評価結果を図14に示す。図14において、(a)は未処理人工血管を切断したものの外観を示す図面であり、(b)は(a)の吻合部付近を拡大した図面であり、(c)は(a)の吻合部の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。(d)は切断した未処理人工血管をHE染色に供した図面であり、(e)は(d)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(f)は(d)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。(g)は切断した未処理人工血管をVW染色に供した図面であり、(h)は(g)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(i)は(g)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。(j)はアパタイトコーティング人工血管を切断したものの外観を示す図面であり、(h)は(j)の吻合部付近を拡大した図面であり、(l)は(j)の吻合部の表面の走査型電子顕微鏡画像を示す図面である。(m)は切断したアパタイトコーティング人工血管をHE染色に供した図面である。(n)は(m)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(o)は(m)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。(p)は切断したアパタイトコーティング人工血管をVW染色に供した図面であり、(q)は(p)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の内膜側を拡大した図面であり、(r)は(p)の中で、実線で四角に囲んだ部分の内、血管の外膜側を拡大した図面である。
【0248】
埋植後の未処理人工血管およびアパタイトコーティング人工血管をそれぞれ切断して、外観を観察した結果によれば、未処理人工血管の吻合部に形成された細胞表面より、アパタイトコーティング人工血管の吻合部に形成された細胞表面が滑らかであった。このことから、アパタイトコーティング人工血管は未処理人工血管に比べ、早期に潤滑面が形成されることが分かった(図13(a)、〜(c)、図13(j)〜(l)、図14(a)〜(c)、図14(j)〜(l)を参照)。
【0249】
次に、HE染色の結果から、アパタイトコーティング人工血管表面に形成される細胞外マトリクスは、未処理人工血管表面に形成される細胞外マトリクスに比べ成熟していることが分かった(図13(d)〜(f)、図13(m)〜(o)、図14(d)〜(f)および図14(m)〜(o)を参照)。
【0250】
また、図13(d)および(m)内に実線で円形に囲んだ部分からは、未処理人工血管では血流により組織が剥離しているが、アパタイトコーティング人工血管では、組織の剥離が無いことが分かった。
【0251】
次に、埋植から2週間後のVW染色の結果によれば、未処理人工血管の場合、外膜側では血管が新生されず、内膜側では血管内皮細胞が重層するが、アパタイトコーティング人工血管の場合、外膜側の血管新生は良好であり、内膜側では血管内皮細胞が単層で伸展していた(図13(g)〜(i)および図13(p)〜(r)を参照)。
【0252】
また、埋植から4週間後のVW染色の結果によれば、未処理人工血管の内膜側に伸展した血管内皮細胞の厚さは、重層かつ不均一であるが、アパタイトコーティング人工血管の内膜側の血管内皮細胞は、単層で均一かつ滑らかに伸展していた(図14(g)〜(i)および図14(p)〜(r)を参照)。
【0253】
この結果から、アパタイトコーティング人工血管は、埋植初期に、薄く安定した偽内膜が形成されることが分かった。
【0254】
次に、供試人工血管内への血管内皮細胞の伸展距離を比較した結果を図15に示す。図15において、縦軸は血管内皮細胞が伸展した長さを示し、単位はミリメートルであり、横軸は、埋植後から経過した時間を示すものであり、単位は週であり、(a)で示される棒線が未処理人工血管における血管内皮細胞が伸展した長さを表し、(b)で示される棒線がアパタイトコーティング人工血管における血管内皮細胞が伸展した長さを表す。
【0255】
図15によれば、アパタイトコーティング人工血管は、未処理人工血管に比べ、血管内皮細胞の伸展距離が長かった。この結果から、アパタイトコーティング人工血管は、細胞の足場として好適であることが分かった。
【0256】
次に、供試人工血管内に形成された血栓の厚さを比較した結果を図16に示す。図16において、埋植後の人工血管内に形成された血栓の厚さを比較した結果を示す図面であり、縦軸は血管内皮細胞が伸展した厚さを示し、単位はマイクロメートルであり、横軸は、埋植後から経過した時間を示すものであり、単位は週であり、(a)で示される棒が、未処理人工血管内に形成された血栓の厚さを表し、(b)で示される棒が、アパタイトコーティング人工血管内に形成された血栓の厚さを表す。
【0257】
また、未処理人工血管の場合、埋植から2週間後は、血球成分主体の血栓が形成されたことが確認され、埋植から4週間後は、炎症性細胞による血栓が形成されたことが確認された。一方、アパタイトコーティング人工血管の場合は、血管基材の界面に細胞外マトリクスが侵入したことが確認された。
【0258】
この結果から、アパタイトコーティング人工血管は、血栓の剥離が抑制され、細胞外マトリクスが血管基材の界面に侵入するというアンカリング効果があることが分かった。
【0259】
次に、α‐SMA染色の結果について、埋植から2週間後の結果を図17に示す。また、埋植から4週間後の結果を図18に示す。
【0260】
図17において、(a)は、未処理人工血管の内、内膜側を200倍に拡大した図面であり、(b)は、外膜側を200倍に拡大した図面であり、(c)はアパタイトコーティング人工血管の内、内膜側を200倍に拡大した図面であり、(b)は、外膜側を200倍に拡大した図面であり、矢印(i)は内膜側の人工血管の繊維であり、(ii)は外膜側の人工血管の繊維である。
【0261】
また、図18において、(a)は、未処理人工血管の内、内膜側を100倍に拡大した図面であり、(b)は、(a)の内、実線で円形に囲まれた部分を200倍に拡大した図面であり、(c)は、未処理人工血管の内、外膜側を200倍に拡大した図面であり、(d)は、未処理人工血管の内、内膜側を100倍に拡大した図面であり、(e)は、(d)の内、実線で円形に囲まれた部分を200倍に拡大した図面であり、(f)は、未処理人工血管の内、外膜側を200倍に拡大した図面であり、矢印(i)は内膜側の人工血管の繊維であり、(ii)は外膜側の人工血管の繊維である。
【0262】
この結果によると、未処理人工血管の場合とアパタイトコーティング人工血管の場合とを比較すると、未処理人工血管の場合の方が、略丸形状の細胞が多い。これは未成熟の平滑筋細胞であることを示す。しかし、アパタイトコーティング人工血管の場合は、紡錘状の細胞が多い。これは成熟した平滑筋細胞が多いことを示している。
【0263】
この結果から、アパタイトコーティング人工血管の方が、成熟した平滑筋細胞による人工血管の内膜および外膜の形成の速度が速いことが分かった。
【0264】
次に、コラーゲンコート人工血管とアパタイトコーティング人工血管を埋植した結果を図19に示す。図19において、(a)は、アパタイトコーティング人工血管を切断した外観を示す図面であり、(b)は、コラーゲンコート人工血管を切断した外観を示す図面である。
【0265】
コラーゲンコート人工血管では、血管内に血栓が集積し、血流を阻害していたことが分かる。よって、内径5mm以下の中小口径の人工血管に、コラーゲンコーティングの人工血管を用いることは不適であるということが分かった。上述したとおり、コラーゲンを表面にコートした人工血管は、大口径のものが通常用いられるため(非特許文献4参照)、この現象が弊害となることが少ない。
【0266】
一方、アパタイトコーティング人工血管では、血管内に血栓が集積することがなく、血流を阻害することはなかった。よって本発明に係る人工血管は、従来公知の人工血管ではなし得なかった内径5mmの中口径の人工血管としても好適であることが示された。
【産業上の利用の可能性】
【0267】
本発明の人工血管は、生体内に長期間に埋植する用途に特に好適である。よって、本発明は、医療機器産業において特に有用である。

Claims (9)

  1. ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含んでなる人工血管基材と生体親和性を有する生体親和性セラミックス粒子とが化学結合してなる人工血管の製造方法であって、
    人工血管基材に対して、表面処理を行った後、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合させることにより、当該人工血管基材表面にバインダーと化学結合を形成する水酸基を含むバインダー反応性官能基を生成するバインダー反応性官能基生成工程と、
    上記バインダー反応性官能基と化学結合可能な反応基および上記生体親和性セラミックス粒子と化学結合可能な反応性官能基を有するバインダーを上記人工血管基材が有する上記水酸基と反応させることにより、上記人工血管基材に反応性官能基を導入する反応性官能基導入工程と、
    上記反応性官能基と上記生体親和性セラミックス粒子とを反応させる直接反応工程とを含むことを特徴とする人工血管の製造方法。
  2. ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含んでなる人工血管基材と生体親和性を有する生体親和性セラミックス粒子とが化学結合してなる人工血管の製造方法であって、
    上記人工血管基材に対して、表面処理を行った後、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合させることにより、当該人工血管基材表面にバインダーと化学結合を形成する水酸基を含むバインダー反応性官能基を生成するバインダー反応性官能基生成工程と、
    上記バインダー反応性官能基と、当該バインダー反応性官能基と化学結合可能な反応基を有する生体親和性セラミックス粒子の反応基を反応させる反応工程とを含むことを特徴とする人工血管の製造方法。
  3. 上記表面処理は、コロナ放電処理、オゾン処理、紫外線−オゾン処理、プラズマ処理からなる群から選ばれる少なくとも1つの表面処理であることを特徴とする請求項またはに記載の人工血管の製造方法。
  4. 上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、ビニルメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシメチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルからなる群から選ばれる少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項またはに記載の人工血管の製造方法。
  5. 上記反応工程の前に、上記生体親和性セラミックス粒子に上記反応基を導入する反応基導入工程を行うことを特徴とする請求項に記載の人工血管の製造方法。
  6. 上記生体親和性セラミックス粒子は、リン酸カルシウム焼結体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の人工血管の製造方法。
  7. 上記生体親和性セラミックス粒子が、リン酸カルシウムおよび酸化チタンの少なくとも一方であり、
    上記反応性官能基が、イソシアネート基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、および4‐メタクリロキシエチルトリメルリテートアンハイドライド基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基であることを特徴とする請求項に記載の人工血管の製造方法。
  8. 上記生体親和性セラミックス粒子の粒子径が、10nm〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の人工血管の製造方法。
  9. 上記人工血管基材は、繊維からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の人工血管の製造方法。
JP2007524523A 2005-07-12 2006-04-20 人工血管の製造方法 Active JP5028625B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007524523A JP5028625B2 (ja) 2005-07-12 2006-04-20 人工血管の製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005203517 2005-07-12
JP2005203517 2005-07-12
JP2007524523A JP5028625B2 (ja) 2005-07-12 2006-04-20 人工血管の製造方法
PCT/JP2006/308293 WO2007007452A1 (ja) 2005-07-12 2006-04-20 人工血管およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2007007452A1 JPWO2007007452A1 (ja) 2009-01-29
JP5028625B2 true JP5028625B2 (ja) 2012-09-19

Family

ID=37636852

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007524523A Active JP5028625B2 (ja) 2005-07-12 2006-04-20 人工血管の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5028625B2 (ja)
WO (1) WO2007007452A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007061100A1 (ja) 2005-11-28 2007-05-31 Japan Science And Technology Agency フロック加工された体内留置型医療機器、該体内留置型医療機器の製造方法、および該体内留置型医療機器の製造装置
EP3508228A1 (en) * 2016-08-30 2019-07-10 SofSera Corporation Ceramic particle carrying medical tube and/or cuff
JP7333552B2 (ja) * 2018-07-10 2023-08-25 帝人ナカシマメディカル株式会社 硬組織インプラント

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001172511A (ja) * 1999-12-15 2001-06-26 Nof Corp リン酸カルシウム−高分子複合体、製造方法及び用途
JP2004051952A (ja) * 2002-05-30 2004-02-19 Japan Science & Technology Corp ハイドロキシアパタイト複合体およびその製造方法、ならびに、それを用いた医療用材料
JP2004143417A (ja) * 2002-08-30 2004-05-20 National Cardiovascular Center 酸化チタン複合体およびその製造方法、ならびに、それを用いた医療用材料

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06285151A (ja) * 1993-04-01 1994-10-11 Nippon Sherwood Kk 非晶質リン酸カルシウムをコートした医療用具
JP2001254264A (ja) * 2000-03-08 2001-09-21 Nicca Chemical Co Ltd ハイドロキシアパタイト−繊維複合体の製造方法
JP4145711B2 (ja) * 2003-04-30 2008-09-03 独立行政法人科学技術振興機構 リン酸カルシウム複合体およびその製造方法、ならびに、それを用いた医療用材料

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001172511A (ja) * 1999-12-15 2001-06-26 Nof Corp リン酸カルシウム−高分子複合体、製造方法及び用途
JP2004051952A (ja) * 2002-05-30 2004-02-19 Japan Science & Technology Corp ハイドロキシアパタイト複合体およびその製造方法、ならびに、それを用いた医療用材料
JP2004143417A (ja) * 2002-08-30 2004-05-20 National Cardiovascular Center 酸化チタン複合体およびその製造方法、ならびに、それを用いた医療用材料

Also Published As

Publication number Publication date
WO2007007452A1 (ja) 2007-01-18
JPWO2007007452A1 (ja) 2009-01-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10729813B2 (en) Extracellular matrix-derived gels and related methods
Yoshimoto et al. Development of layered PLGA membranes for periodontal tissue regeneration
JP5599722B2 (ja) 脱細胞化網マトリックス及びその使用
AU2019203902A1 (en) Methods for preparation of a terminally sterilized hydrogel derived from extracellular matrix
Griffin et al. Enhancing tissue integration and angiogenesis of a novel nanocomposite polymer using plasma surface polymerisation, an in vitro and in vivo study
US20090130162A2 (en) Implantable tissue compositions and method
Malm et al. Enlargement of the right ventricular outflow tract and the pulmonary artery with a new biodegradable patch in transannular position
WO1992017218A1 (fr) Vaisseau sanguin artificiel et composite
WO2010081408A1 (zh) 一种生物活性组织再生膜及其制备方法
An et al. Physiochemical properties and resorption progress of porcine skin-derived collagen membranes: In vitro and in vivo analysis
JP5701757B2 (ja) 無細胞マトリックス接着剤
Wu et al. Mechanically stable surface-hydrophobilized chitosan nanofibrous barrier membranes for guided bone regeneration
WO2006038866A1 (en) Improved coating comprising a bioadhesive polyphenolic protein derived from a byssus-forming mussel
JPWO2003028782A1 (ja) 生体組織再生用複合材料
JP5028625B2 (ja) 人工血管の製造方法
Guo et al. Anticalcification potential of POSS-PEG hybrid hydrogel as a scaffold material for the development of synthetic heart valve leaflets
JPH07194689A (ja) 外科用複合材料
JP2008228744A (ja) 生体由来移植用組織の石灰化を抑制するための処理方法および処理された組織
JP6529090B2 (ja) in situティッシュ・エンジニアリング
JP4570445B2 (ja) ハイブリット複合体を表面に備える体内留置型医療用デバイスの製造方法
JP2006263144A (ja) 生体軟組織代替移植材料およびその製造方法
CN1649620A (zh) 医疗装置
Hendrawan et al. Fibroblast matrix implants—a better alternative for incisional hernia repair?
WO2003015836A1 (en) Material and method for promoting tissue growth
Jeon et al. Decellularized Non-cross-linked Collagen Membranes for Guided Bone Regeneration in Rabbit Calvarial Defects

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090327

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120117

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20120208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20120208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120307

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120515

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121001