JP5024796B2 - ナノサイズ粉体の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)出発溶液となる単一成分もしくは多成分の金属塩溶液(通常は水溶液)を調製する。
(2)沈殿剤(還元剤)の水溶液を調製する。
(3)出発の単一もしくは多成分の金属塩溶液を還元的に分解して、目的の最終生成物(A)もしくは中間生成物(B)の沈殿物、コロイド懸濁液又はゲル溶液を得る。
(4)洗浄及び乾燥と遠心分離等を繰り返して、最終生成物又は焼成処理前の中間体を分離する。
(5)前記(4)における洗浄及び乾燥の間に、沈殿等で得られた中間体からなる粉体を脱集塊化、すなわち、微粒化させる。
(6)上記微粒化した中間体を熱分解または焼成処理して、最終生成物となる粉体を得る。
しかし、多成分の前駆体を原料とする場合は、単一成分を原料とするのに比べて一層困難であり、しばしば不均質な多相の化合物の沈殿が起こる。その結果、非常に温和な条件で最初の成分の核形成、成長、凝集及びそれに続く堅固な集塊化が数秒以内で起こる。同時に、更に高い温度で通常は、第二成分の核形成が始まる。この反応は、初めの反応よりも時間がかかり、また、しばしば違ったpHを必要とする。この共沈した最終生成物は強固に集塊化した非均質な合成粉体であり、性状はナノ結晶的であるが、通常は不均質な形態を有するμmサイズの強固な集塊物からなる(後述する図10参照)。最終の固溶体に到達するには、一般にこの多成分合成粉体は高い焼成温度を必要とする。したがって、これらの粉体の高密度化には高温度及び長時間を要していた。
この合成反応に影響を及ぼす因子は、燃料の種類、燃料と酸化剤との比率、前駆体混合物の水含有量等であり、また、燃焼反応の機作は複雑である。顕微鏡的な小さい単結晶、すなわち結晶子(crystallite )サイズ、比表面積、集塊物の大きさ及びその凝集状態の強弱等の粉体の特徴は、一義的には、エンタルピー又は燃焼によって生じる炎温度によって支配される。この炎温度は、燃料の性質と燃料/酸化剤の比率とに依存している。燃焼の間に大量の気体が急に発生すれば、プロセスの熱を浪費し、温度上昇を制限し、そして、一次粒子間の局所的な焼結(sintering )の確率を減らすこととなる。さらには、気体の発生は、粒子間の接触を制限して、強固な凝集のない集塊物の生成を助ける場合もあった。
上記構成によれば、最初に粉体の原料から前駆体集塊物を化学的に沈殿させる際に爆発性化合物を含ませ、この爆発性化合物を含む前駆体集塊物を爆発させることで、高エネルギーの爆発波の衝撃によって、複合的爆発による集塊の微粉化を引き起こし、ナノサイズの粉体を、再現性良く製造することができる。
上記構成によれば、最初に粉体の原料から前駆体集塊物を化学的に沈殿させ、前駆体集塊物に予め調製したナノサイズの爆発性化合物を浸み込ませ、この爆発性化合物を含む前駆体集塊物を爆発させることで、高エネルギーの爆発波の衝撃によって複合的爆発による集塊の微粉化を引き起こし、ナノサイズの粉体を再現性良く製造することができる。
塩を形成する陰イオンは、好ましくは、硝酸イオン、塩酸イオン、硫酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、オキシ水酸化イオン、水酸イオンの何れかである。ナノサイズ粉体は、好ましくは、セラミックからなる。また、ナノサイズ粉体は、好ましくは、セラミックにナノサイズの金属が混合された金属及びセラミック複合粉体からなる。
上記構成によれば、均質な形態と正確な化学量論比を有するナノサイズの単一の金属又は多成分からなる金属酸化物粉体、すなわち、ナノサイズのセラミック粉体を、極く短時間に合成することができる。セラミックとして、金属酸化物粉体にドーパント酸化物が固溶したナノサイズのセラミック粉体も合成できる。さらには、金属で修飾された金属酸化物、すなわち、金属及びセラミック複合粉体をも合成することができる。
2:添加剤(ドーパント)成分
3:基質成分
4:爆薬微粒子
10:爆発性成分を含む多成分からなる前駆体集塊物
12:ナノ爆発
15:2つのナノ粒子混合体
16:ナノ粒子固溶体
最初に、本発明のナノ爆発合成によるナノサイズ粉体の製造方法について説明する。
本発明のナノサイズ粉体の第1の製造方法は、第1〜3の工程を含み構成されている。第1の工程では、粉体の原料を溶かした媒体から、単一又は多成分からなる前駆体集塊物を化学的に沈殿させる際に、前駆体集塊物を爆発性化合物によって飽和させるか又は爆発性化合物をナノレベルに浸み込ませ、爆発性化合物を含む前駆体集塊物を調製する。
第2の工程として、爆発性化合物を含む前駆体集塊物を、その成分的及び形態的均質性を維持しながら、洗浄し、乾燥する。
第3の工程として、乾燥させた爆発性化合物を含む前駆体集塊物を、ナノスケールで爆発させるのに十分な昇温速度で加熱し、爆発させることにより単一又は多成分からなるナノサイズ粉体を得る。
この製造方法によれば、最初に粉体の原料から前駆体集塊物を化学的に沈殿させる際に爆発性化合物を含ませ、この爆発性化合物を含む前駆体集塊物を爆発させることで、高エネルギーの爆発波の衝撃によって、複合的爆発による集塊の微粉化を引き起こし、ナノサイズの粉体を、再現性良く製造することができる。
この製造方法によれば、最初に粉体の原料から前駆体集塊物を化学的に沈殿させ、この前駆体集塊物に予め調製したナノサイズの爆発性化合物を浸み込ませ、この爆発性化合物を含む前駆体集塊物を爆発させることで、高エネルギーの爆発波の衝撃によって、複合的爆発による集塊の微粉化を引き起こし、ナノサイズの粉体を、再現性良く製造することができる。なお、本明細書では、「ナノスケール又はナノサイズの粒子」とは、直径が約1〜100nmの粒子と定義する。また、ナノサイズの粉体は、セラミック粉体、又は、金属及びセラミック複合粉体とすることができる。このセラミック粉体は、単一成分もしくは多成分からなる。
次に、工程ST6に示すように、前駆体集塊物において、熱デトネーション(熱爆発)と、複合的な多箇所でのナノ爆発が起こる。前駆体集塊物を、熱デトネーションの温度まで超高速に加熱すると、多箇所でのナノ爆発が前駆体集塊物の内部に広がっていく。爆発性化合物がシクロトリメチレントリニトラミンの場合には、熱デトネーションの温度は約230℃である。熱デトネーションの開始反応はナノサイズ領域、すなわちホットスポットで始まる。このホットスポットにおいては、衝突/ショック波のエネルギーを蓄積でき、これを化学エネルギーに転換でき、そして反応が開始する。
このような爆薬としては、例えば、シクロトリメチレントリニトラミン(C3 H6 N6 O6 )、トリニトロトルエン(TNT)、ニトログリセリン、グリセリン等があり、特に好ましくは、シクロトリメチレントリニトラミンを使用することができる。
なお、シクロトリメチレントリニトラミンは、広く使われている爆発性化合物で、RDX又はヘキソーゲンの別名もあり、ヘキサメチレンテトラミン(C6 H12N4 )と濃硝酸(HNO3 )とを反応させると得られる。ヘキサメチレンテトラアミンと硝酸との反応は、初めに、ヘキサメチレンジナイトレートが形成され、引き続くナイトレーションの反応で、ホルムアルデヒドと共にシクロトリメチレントリニトラミンが形成される。
図3から明らかなように、シクロトリメチレントリニトラミンの熱分解の3段階が示されている。約180°の温度でシクロトリメチレントリニトラミンの発火が始まる。昇温速度が高いほど、理想の発火温度と実際の発火温度とのギャップは小さくなる。加熱温度に依存するが、昇温速度を早くするほど理論的な発火温度と実験的に決定した発火温度とのギャップは大きいように見える。202〜205℃がシクロトリメチレントリニトラミンの融点であり、230℃はシクロトリメチレントリニトラミンの熱爆発が起こる温度である。発火反応の最初に、TG分析はサンプルの重量が、約10.8重量%増加していることを検出している。
このような現象は、周囲の空間から反応によって酸素を捕捉していると考えれば説明できる。発火は瞬間的に、ナノ秒以内に熱デトネーションへと変わり、シクロトリメチレントリニトラミンは爆発する。TG及びDTAシステムの熱電対温度計で検出される温度でさえ、瞬間的に約100℃上昇する。
ここで、金属またはカチオンとなる金属を例示すれば、セリウム、ガドリニウム、ランタン、などの各種ランタノイド(希土類元素)、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛、バリウム、チタニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、鉛、銅、錫、スカンジウム、インジウム、珪素、鉄、ストロンチウム、及び金や白金等の貴金属元素などが挙げられる。
金属又はカチオンと塩を形成する陰イオン(以下、適宜アニオンと呼ぶ)を例示すれば、硝酸イオン、塩酸イオン、硫酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、オキシ水酸化イオン、水酸イオン等である。
(1)最初に各成分が均質又は比較的均質に(予備)分布する多孔性凝集物/集塊物を形成しうること、
(2)微細な一次結晶子(primary crystallites)が得られ、予備合成の間に堅固な集塊化を起こさないこと、のたった二つである。
また、金属硝酸塩(多成分のときはその合計量)を媒体(通常は水)に溶かすときのモル濃度は限定されないが、通常0.001〜2M(ここで、Mはモル濃度を示し、1M=1mol/1000cm3 )程度である。
また、各々のカチオン源となる金属硝酸塩等の出発原料とヘキサメチレンテトラアミン溶液との混合は、単純な拡散、一方の溶液の他方溶液への注入、一成分の他方成分へのスプレー等で行うことができる。通常は、ヘキサメチレンテトラアミン等の沈殿剤が金属塩溶液に拡散していく。
また、多成分金属前駆体を調製する場合は、ちょうど溶けた予め合成された塩水溶液の中への多成分の懸濁物が、ヘキサメチレンテトラアミン等の沈殿剤とともに拡散していき、注入されあるいはスプレーされる。
これにより、金属の硝酸塩又は他の塩とヘキサメチレンテトラアミンとが反応し、沈殿が生じる。用いる材料によって沈殿時間が変化する。完全に沈殿が終わるのに、20〜85℃の温度で、長時間、例えば2〜200時間を要することがある。しかし、セリア(二酸化セリウム)の場合は、沈殿は、70℃で短時間に完了する。
爆薬としてシクロトリメチレントリニトラミンを用いる場合、シクロトリメチレントリニトラミンの流去を防ぎながら、かつ、多成分系などの前駆体集塊物の洗浄及び乾燥の間に、前駆体粉体の成分的及び形態的均質性を維持する必要がある。このため、生成した前駆体集塊物を適当な洗浄液を用いて何回かの繰り返し洗浄を行い、残留しているHNO3 などの酸や他のアニオン性の不純物を除けばよい。この洗浄液としては、エタノールなどを使用できる。引き続いて、上澄みが透明になるまで遠心分離し、洗浄し、最後に乾燥機により、例えば60℃で残ったエタノールなどの洗浄液をゆっくり蒸発させて、除去する。この際、乾燥間の爆発性化合物の着火を防止するためには、乾燥処理に制限温度があることである。この温度は、用いた爆発性化合物の着火温度である。シクロトリメチレントリニトラミンの場合は、平均粒子径にもよるが、着火温度は170〜180℃である。乾燥は、この着火温度以下で行う必要がある。
爆発性化合物を含む複雑な前駆体集塊物、すなわち、爆発性化合物付き前駆体集塊物を、よく乾燥した粉体として塊化させずにそのまま、あるいは、一軸性プレス機等を用いて塊化させて容器に入れる。上記工程は、爆発性化合物の着火温度で行う。
さらに、上記爆発性化合物付き前駆体集塊物の乾燥及びその後の焼成処理の間における、爆発性化合物の着火を防止するためには、上記爆発性化合物付き前駆体集塊物を、爆発性化合物の燃焼温度から、その融点を経て、その熱デトネーションの温度へと急速に上昇させる必要がある。熱デトネーションは、加熱速度に大きく依存している。例えば、爆薬がシクロトリメチレントリニトラミン(CH2 −N−NO2 )の場合には、自発的な複合的N−NO2 結合の開裂は加熱速度に大きく依存し、これが230℃から360℃の範囲で変動する。N−NO2 結合の開裂は、孤立した分子又はクラスターの方が固体状に大量に置かれた分子よりも小さなエネルギーによって起こる。
これにより、爆発性化合物含有多成分複合集塊物を、熱デトネーションの温度まで超高速に加熱すると、多箇所でのナノ爆発が、多成分前駆体集塊物の内部に広がっていく。この際、開始反応はナノサイズ領域、すなわちホットスポットで始まる。
これらの工程を経ると、高エネルギーの爆発波の衝撃によって、複合的爆発による集塊の微粉化を引き起こすこととなる。そして、複合的爆発の間に高温となるので他成分への一成分の固体溶解度を増加させることとなる。このため、均質な形態と正確な化学量論比を有するナノサイズの単一の金属又は多成分からなる金属酸化物粉体、すなわち、ナノサイズのセラミック粉体を、極く短時間に合成することができる。また、セラミックとして、金属酸化物粉体にドーパント酸化物が固溶した、ナノサイズのセラミック粉体も合成できる。さらには、金属で修飾された金属酸化物、すなわち、金属及びセラミック複合粉体をも合成することができる。
これにより、均質な形態と正確な化学量論比を有する、ナノサイズの単一成分もしくは多成分からなる、セラミック粉体、又は、金属及びセラミック複合粉体を製造することができる。このため、平均粒径が2〜15nmの一次結晶子を含むナノ粉体が製造できる。また、これらのナノ粉体による粒度分布20〜80nmのナノ凝集物が製造できる。
次に、図4(B)は、爆発性成分を含む多成分からなる前駆体集塊物10が、熱デトネーションする寸前の状態を示している。
そして、図4(C)は、爆発性成分を含む多成分からなる前駆体集塊物10がナノ爆発12し、生じた均一凝集物からなるナノ粒子固溶体16の形成を伴う脱集塊化による微粉化状態を示している。図示するように、2つのナノ粒子混合体15のナノ爆発によりナノ粒子固溶体16が微粉化状態で生成する。
ここで、硝酸セリウム+硝酸ガドリニウムの合計モル比は1.0モルである。そして、これらの材料を合計濃度が0.1mol/1000cm3 (すなわち、0.1M)となるように秤量し、蒸留水に溶かし全量が250cm3 のナノ粉体合成材料からなるストック溶液とした。なお、セリウム及びガドリニウムの量とヘキサメチレンテトラアミンの量は、製造するナノ粉体の組成によって変えればよいが、モル比で1/1.5〜1/5の範囲とした。
最初に、ナノ粉体合成材料からなる反応液を400〜1000rpmの回転速度で撹拌しながら、ヘキサメチレンテトラアミンからなる沈殿剤水溶液を加え、70℃で加熱して、反応液からガドリニア(Gd2 O3 )と共にセリア(CeO2 )を共沈させた。
反応液と沈殿剤水溶液とが混合されると、この混合液のpHは7.1に低下した。セリウム酸化物の合成は22℃で始まった。そして、ガドリニウム硝酸塩とヘキサメチレンテトラアミンとの反応は、46℃で、pH6.4で始まり、ミルク状の白色沈殿を生じた。しかし、セリアを完全に沈殿させるには、22〜50℃では100〜110時間という長時間を要したが、70℃程度の温度で撹拌するとセリアを早く沈殿させることができる。この70℃の温度で、5時間撹拌するとセリアは100%沈殿した。
しかし、最初の粒子の集塊化を伴うトータルのガドリニアの沈殿は、もっと低い温度で、わずか100〜600秒以内に起こる。その結果、最初にガドリニア集塊物が生成する。次に、ガドリニア集塊物の表面において、セリアの核形成、成長及び集塊化が起こる(図12参照)。
次に、3成分系前駆体集塊物の洗浄をし、最後に乾燥機を用い60℃で、残エタノールをゆっくり蒸発させ、乾燥した。
測定した3成分系前駆体集塊物の粒子サイズ、すなわち粒径分布は、37〜630nmと広かった。このような広範囲の粒径分布は、ガドリニウム及びセリウム酸化物が同時には沈殿していないことに起因する。
乾燥及びその後の焼成処理の間のシクロトリメチレントリニトラミンの着火を防止するために、上記合成物粉体集塊物を、シクロトリメチレントリニトラミンの燃焼温度(〜180℃)から、その融点(〜204℃)を経て、その熱デトネーション(〜230℃)の温度へと急速に上昇させた。そして、多成分前駆体集塊物中で、複合的な、多箇所でのナノ爆発を生起させ、ナノサイズのセリア及びガドリニアからなる粉体(以下、適宜、セリア−ガドリニア粉体と呼ぶ)、すなわち、セリアへガドリニアが固溶されたセラミック粉体を得た。この工程の後で、得られた粉体をさらに温度450℃で熱焼成を行った。
図5から明らかなように、熱デトネーション(〜230℃)の温度を越え、約280℃近傍のシクロトリメチレントリニトラミンの熱爆発により、DTA分析では、図3に示したシクロトリメチレントリニトラミン単体の熱爆発と同様に、強い発熱ピークが生じることが分かる。この発熱は、多成分前駆体集塊物の体積へ均一に分布したシクロトリメチレントリニトラミンが複合的なナノ爆発を起こしたことを示すものである。そして、同時には、TG分析においては、急激な重量変化が生じることが分かる。
これにより、高エネルギーの爆発波の衝撃によるナノ粉体の複合的爆発の脱集塊を引き起こすこととなり、また、複合的爆発の間に短時間に高温となるので一成分の他成分への固体溶解度を増強させることとなる。つまり、高温度の衝撃が、ガドリニアを同時にバラバラにして、セリアにガドリニアが固溶した、セリア−ガドリニア固溶体、すなわち、多成分系の固溶体が形成された。
図7は、セリア−ガドリニアのナノ粉体のXRDパターンであり、(a)が実施例1で得たセリア−ガドリニア固溶体、(b)が後述する比較例1の臨界昇温速度未満の条件下、すなわち通常の燃焼ルートで合成したセリア−ガドリニア固溶体を示している。図において、横軸は角度2θ(°)を、縦軸はX線回折強度(任意目盛り)を示している。
図7から明らかなように、実施例1で得たセリア−ガドリニア固溶体からなるナノ粉体は、Ce0.8 Gd0.2 O1.95の組成(図中の黒丸印(●)参照)を有し、ほぼ化学量論的組成であることが分かる。つまり、Ce0.8 Gd0.2 O2-δのδが0.05と非常に小さい。そして、Ce0.8 Gd0.2 O1.95に帰因するXRDピークは、比較的ブロードであり、これは実施例1で得た粉体が、非常に微細な一次結晶子で構成されていることを示すものである。また、実施例1の粉体においては、比較例1で観察されるCe2 O3 (図中の三角印(△)参照)及びGd2 O3 (図中の黒四角印(■)参照)に関連する弱い反射が消えていることが分かる。これにより、実施例1においては、ナノサイズのセリア及びガドリニアからなる粉体、すなわち、セリアへガドリニアが固溶、あるいはドープされたセラミック粉体が得られることが分かる。
次に、硝酸セリウム水溶液を作製した。硝酸セリウム水溶液中のガドリニア濃厚懸濁液とヘキサメチレンテトラアミン溶液は、70〜90℃、1000rpmで、6時間加熱した。このため、3〜4nmのガドリニアの一次結晶子が集まり、4〜340nmの集塊物となり、合成されたセリアで覆われていた。
これにより、ナノサイズのセリアにガドリニアが固溶した、すなわち、せリア−ガドリニア粉体を得た。この粉体において、一次結晶子の平均粒径が11nmであり、凝集物の粒径分布は20〜70nmで、均質な形態と正確・精密な化学量論とを有している(表1参照)。
最初に、水溶液中での塩化ガドリニウム(6水塩)からのガドリニウム前駆体化合物の核形成は、セリア(CeO2 )合成の前に、1600rpmで撹拌しながら塩化ガドリニウム水溶液中にヘキサメチレンテトラアミンをスプレーすることで行ない、ガドリニア懸濁液とした。ここで、塩化ガドリニウム(6水塩)1(モル比)に対して、ヘキサメチレンテトラアミン2.5(モル比)の量を用いた。塩化ガドリニウム(6水塩)を脱イオン水に溶かして、最終のカチオン源の合計濃度を0.1Mとした。ヘキサメチレンテトラアミンを含む溶液の総量は200cm3 で行なった。
続いて、上澄みから合成物粉体を分離し、これを再分散させ、実施例1と同様に乾燥した。この合成物粉体は、シクロトリメチレントリニトラミン付きのセリウム及びガドリニウム化合物ならなる3成分系前駆体集塊物である。その粒径分布は、13〜175nmであった。
次に、上記3成分系前駆体集塊物を、実施例1と同様に第3の工程を行い、熱デトネーション(〜230℃)の温度へと急速に上昇させ、その表面及び内部で、多箇所で、かつ、複合的なナノ爆発を生起させ、ナノサイズの粉体を合成した。
しかしながら、450℃での焼成後の粒径サイズの分布は、ナノ爆発で得た合成粉体の15〜40nmから、12〜55nmへと若干大きく広がった。
最初に、沈殿剤となるヘキサメチレンテトラアミンによる塩化セリウム水溶液からのセリアの沈殿は、70℃で、1000rpmで撹拌することにより行なった。初めのpH8.45は22℃においてヘキサメチレンテトラアミン溶液で測った。セリウム酸化物の合成は22℃で始まり、70℃の温度で5時間撹拌し、セリアを100%沈殿させ、セリア凝集物を得た。得られたセリア凝集物の粒径は、18〜230nmであった。上記各材料及び溶液の組成は実施例1に準じたものとした。
図8は、実施例4で単独に合成したシクロトリメチレントリニトラミン粒子のTEM像を示す写真である。倍率は10万倍である。図8から明らかなように、粒径20〜40nm程度の比較的粒度の揃ったナノサイズの粒子であることが分かる。
次に、よく乾燥させ、再分散させたシクロトリメチレントリニトラミン付きのセリアからなる2成分系前駆体集塊物を、シクロトリメチレントリニトラミンの熱デトネーション(〜230℃)の温度へと急速に上昇させ、引き続いて比較的緩やかに450℃へ加熱し、焼成する2段単一プロセスを適用した。これにより、複合的で、かつ、多箇所でのナノ爆発がその2成分系集塊物の上で起こる。
実施例4においては、CeO2 のナノサイズ粉体を得た。この粉体の平均粒径は、6〜45nmであった(表1参照)。
最初に、3mol%のイットリア(Y2 O3 )を固溶したナノサイズの正方晶ジルコニア粉体を、次のようにして金属塩化物と尿素ゾルから熱水沈殿させ、洗浄し、再分散させることで製造した。
具体的には、ナノ粉体合成の出発材料として、ジルコニウム塩化物酸化物(8水塩)(ZrOCl2 ・8H2 O、純度は99%)と、尿素(NH2 CONH2 、純度は99%)と、塩化イットリウム(6水塩)(YCl2 ・6H2 O、純度は99.99%)と、を用いた。試薬はすべて高純度化成品製である。ジルコニウム塩化物酸化物(8水塩)と、塩化イットリウム(6水塩)とで、3mol%のY3+を含むZr4+の0.1M水溶液を粉体調製のために用意し、24時間撹拌混合により均質化し、保存した。
上記水溶液に、尿素を混合し、初期pHが1.2又は1.2以下のゾル200cm3 を、撹拌混合により均質化させた後、このゾルを熱水処理した。熱水処理は、ゾルを、容積が250cm3 のフッ素樹脂製テトラハイドロフロン容器にその80容量%を占めるように満たし、ステンレス鋼でできた耐圧容器に入れ、容器を密封した。その後、ゾルを、150℃までに加熱するように制御した乾燥機中に置き、10時間の熱水処理を行い、熱水沈殿した凝集物を洗浄し、再分散させ、3mol%のイットリアを固溶したナノサイズの正方晶ジルコニア(以下、適宜、イットリアドープ無水ジルコニアと呼ぶ)粉体を得た。一方、シクロトリメチレントリニトラミンの合成は、別途、実施例4と同様にして行なった。
次に、超音波処理によって再分散させ、少し集塊化したイットリアドープ無水ジルコニアは、実施例4と同様にしてシクロトリメチレントリニトラミンで浸漬した。
次に、よく乾燥し、再分散した、シクロトリメチレントリニトラミン付きのイットリアドープ無水ジルコニアからなる多成分系集塊物(粒径が24〜190nm)を、シクロトリメチレントリニトラミンの融点(〜204℃)を経て、その熱デトネーション(〜230℃)の温度へと急速に上昇させ、複合的な、多箇所での、ナノ爆発を起こさせると共に、脱集塊を起こさせた。その爆発の前のナノ秒以内に、溶解したシクロトリメチレントリニトラミンがジルコニアの弱く凝集した集塊物に含浸して、その集塊物の粉砕とともに爆発する。引き続いて500℃までの非等温的加熱をし、焼成を行い、不純物を除去し、合成を終了した。
これにより、実施例5においては、3mol%のイットリアを固溶したナノサイズの正方晶ジルコニア粉体を得た。この粉体の平均粒径は約30nmであった(表1参照)。
最初に、1〜7nmの白金を含有したイットリア固溶ジルコニアのナノ凝集物は、次のようにして製造した。
イットリアでドープし、少し集塊化したジルコニア粉体の水懸濁液100cm3 を、テトラクロロプラチネート2カリウム塩(K2 PtCl4 、和光純薬製)とともに混合した。具体的には、マグネチックスターラを用いて5時間撹拌後、Pt(II)イオン(Pt2+)を音化学的還元処理により、金属Ptへ還元した。この音化学的還元処理には、周波数可変型の超音波発生器(株式会社カイジョー製、4021型)を用い、白金ナノ粒子を、ジルコニア集塊物の細孔中及びその表面へ析出させ、ナノサイズの白金を含有したイットリア固溶ジルコニアのナノ凝集物を得た。
次に、実施例5と同様な方法で、ナノサイズの白金を含有したイットリア固溶ジルコニアのナノ凝集物へシクロトリメチレントリニトラミンを浸漬させ、洗浄し、再分散し、乾燥し、シクロトリメチレントリニトラミン付きのイットリア固溶無水ジルコニアからなるシクロトリメチレントリニトラミン付きのイットリアドープ無水ジルコニアからなる多成分系集塊物(粒径が3〜265nm)を得た。この多成分系集塊物を実施例5と同様に、容器に入れ、熱デトネーション(〜230℃)の温度へと急速に上昇させた。
この反応後、白金を含有する3mol%のイットリア固溶ジルコニアのナノ粉体、すなわち、金属―セラミック複合粉体のナノ粉体が得られた。このナノ粉体の大きさは、15〜40nmであった(表1参照)。
比較例1〜3として、第3の製造工程のナノ爆発工程の代わりに、通常の燃焼工程により450℃まで昇温した以外は、それぞれ、実施例1乃至3と同様に、セリア−ガドリニア合成物を製造した。昇温は5℃/分とし、爆薬を含む前駆体集塊物が、爆発を起こす臨界昇温速度未満の昇温速度とした。
図9から明らかなように、検出されたDTA曲線には明確な発熱ピークが存在しない。すなわち、サブクリティカルな温度−時間の条件は、ホットスポットへの複合的な熱デトネーションを妨げ、単にシクロトリメチレントリニトラミンがゆっくり燃焼するだけであり、単に燃焼経路が生じているだけで、ナノ爆発が生じていないことが分かる。
X線回折パターンの測定からは、比較例1の臨界昇温速度未満の条件で、すなわち、従来の燃焼ルートで合成したナノ凝集物は、凝集物の中にセリウム及びガドリニウムが存在することが分かった(図7(b)参照)。また、比較例2及び3においても、比較例1と同様に凝集物の中にセリウム及びガドリニウムが存在することが分かった。
次に、上記二成分中間体化合物からなる集塊物を製造するために、尿素(和光純薬製)を沈降剤として用いた。尿素は脱イオン水に溶解して、1−xMの塩化セリウム及びxMの塩化ガドリニウム当り2Mの濃度とした。塩化セリウム尿素水溶液200cm3 と、塩化ガドリニウム尿素水溶液100cm3 との2試料を用意した。全量は300cm3 である。
続いて、予め60℃に加熱した200cm3 の尿素水溶液及び塩化セリウム尿素水溶液を用い、尿素水溶液を攪拌条件1600rpmで塩化セリウム尿素水溶液中にスプレーすることで、塩化セリウム尿素水溶液中にセリアの核を形成した。これに続く所定温度での攪拌は10時間とし、セリア懸濁液を作成した。
最後に生成物を水洗し、実施例1と同様に、さらに、超音波装置(島津製、USP−600型)を用いてエタノール(関東化学製、99.5%)中にセリア及びガドリニアからなる集塊物を再分散させた。
最後に、セリアとガドリニウム中間体化合物とシクロトリメチレントリニトラミンとからなる3成分系前駆体集塊物を、10000rpm、15分の遠心分離で上澄みから分離した。この粉末は残存反応副生物を除去するために脱イオン蒸留水を用いて水洗した。水洗に続いてエタノ−ルで2度洗浄し、続いて遠心分離して、新鮮なエタノール中への再分散を行ない、最後に、乾燥器を用いてエタノールの最終蒸発(T=70℃)を行なって乾燥した。このようにして、合成したナノ爆発前の3成分系前駆体粉体の粒径は28〜740nmであった。
図11から明らかなように、実施例8のセリア−ガドリニア(Ce0.8 Gd0.2 O1.95)粉体は、セリアにガドリニアがドープされた平均粒径が6〜14nmの一次結晶子であり、凝集物の粒度分布は18〜67nmで、均質な形態と精密な化学量論的組成とを有している。そして、450℃で焼成した後の粉体の粒径は22〜74nmとなった。表2は実施例8及び後述する比較例4で得たナノサイズ粉体の粒径を示している。
これにより、実施例8の合成方法においても実施例1〜3と同様に、ナノサイズのセリア及びガドリニアからなる粉体、すなわち、セリアへガドリニアが固溶、あるいはドープされたセラミック粉体が得られることが判明した。
比較例4として、第3の製造工程のナノ爆発工程の代わりに、通常の燃焼工程により450℃まで昇温した以外は、実施例8と同様に、セリア−ガドリニア合成物を製造した。昇温は5℃/分とし、爆薬を含む前駆体集塊物が、爆発を起こす臨界昇温速度未満の昇温速度とした。
表2に示すように、比較例4の前駆体粉体の粒径は30〜1260nmであり、通常の燃焼工程及び450℃での焼成後のセリア−ガドリニア(Ce0.8 Gd0.2 O1.95)粉体の粒径は230〜360nmとなった。
Claims (9)
- ナノサイズ粉体の製造方法であって、
上記粉体の原料を溶かした媒体と爆発性化合物とを化学的に沈殿させて、該爆発性化合物を含む単一又は多成分からなる前駆体集塊物を調製する第1の工程と、
上記爆発性化合物を含む前駆体集塊物を、その成分的及び形態的均質性を維持しながら洗浄し乾燥する第2の工程と、
上記乾燥させた爆発性化合物を含む前駆体集塊物を加熱して爆発させることにより単一又は多成分からなるナノサイズ粉体を得る第3の工程と、
を含むことを特徴とする、ナノサイズ粉体の製造方法。 - ナノサイズ粉体の製造方法であって、
上記粉体の原料を溶かした媒体から単一又は多成分からなる前駆体集塊物を化学的に沈殿させ、該前駆体集塊物に予め調製したナノサイズの爆発性化合物を浸み込ませ、爆発性化合物を含む前駆体集塊物を調製する第1の工程と、
上記ナノサイズの爆発性化合物を含む前駆体集塊物を、その成分的及び形態的均質性を維持しながら洗浄し乾燥する第2の工程と、
上記乾燥させたナノサイズの爆発性化合物を含む前駆体集塊物を加熱して爆発させることにより単一又は多成分からなるナノサイズ粉体を得る第3の工程と、
を含むことを特徴とする、ナノサイズ粉体の製造方法。 - 前記第3の工程の後で、さらに、ナノサイズ粉体を熱処理すること特徴とする、請求項1又は2に記載のナノサイズ粉体の製造方法。
- 前記爆発性化合物は、シクロトリメチレントリニトラミン、トリニトロトルエン(TNT)、ニトログリセリン、グリセリンの何れかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のナノサイズ粉体の製造方法。
- 前記粉体の原料は、金属又は金属を含む塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のナノサイズ粉体の製造方法。
- 前記金属は、セリウム、ガドリニウム、ランタンなどの希土類元素、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛、バリウム、チタニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、鉛、銅、錫、スカンジウム、インジウム、珪素、鉄、ストロンチウム、金や白金などの貴金属元素の何れか、又は、これらの金属の組み合わせであることを特徴とする、請求項5に記載のナノサイズ粉体の製造方法。
- 前記塩を形成する陰イオンは、硝酸イオン、塩酸イオン、硫酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、オキシ水酸化イオン、水酸イオンの何れかであることを特徴とする、請求項5に記載のナノサイズ粉体の製造方法。
- 前記ナノサイズ粉体は、セラミックからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のナノサイズ粉体の製造方法。
- 前記ナノサイズ粉体は、セラミックにナノサイズの金属が混合された金属及びセラミック複合粉体からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のナノサイズ粉体の製造方法。
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