JP5022070B2 - 高強度部材締結用タッピングねじの製造方法 - Google Patents

高強度部材締結用タッピングねじの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、下穴をあけた980N/mm以上の高強度部材に、雌ねじを成形しながら締結する高強度タッピングねじに関するものである。
自動車の製造・組立てには、安全性・耐久性・経済性等が考慮された上でスポット溶接やねじによる締結など様々な結合方式がとられている。
その中で、鋼板どうしや、鋼板と部品等を組み立てする場合に多く用いられているのが鋼製鋼板用タッピン類(以降タッピングねじとする)による締結方式である。
タッピングねじによる締結方式は相手材となる鋼板にプレス等で専用下穴をあけ、タッピンねじの雌ねじ成形機能を利用して締結する方式である。
タッピングねじによる信頼性のある安全締結を実現するため、使用材料、ねじ各部の寸法制度は例えばJISB1122、機械的性質はJISB1055で規格化されている。
従来から使用されている鋼製のタッピングねじは、JISG3539に規定の冷間圧造用炭素鋼線:SWCH16A〜SWCH22Aが用いられ、冷間圧造加工→ねじ転造加工→熱処理(浸炭あるいは浸炭窒化焼入れ、焼戻し)→防錆処理(メッキ、ベーキング)の工程を経て製造されている。
タッピングねじには、タッピング機能としての高い表面硬さと、ねじとしての強度、延性・靭性を両立させ、施工時の頭飛びや施工後の遅れ破壊を防止することが必要で、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1では炭素の含有量を低めた上で、Mn等の焼入れ性元素を含有させた低炭素鋼が提案され、鋼中のP、Sの低減が遅れ破壊特性向上に有効として提案されている。
特許文献2では、特許文献1と同様に素材成分においてMn量を高め、炭素含有量を低めた素材で浸炭焼入れ焼戻しを行い、表面硬さで560〜600HV、内部硬さで320〜360HVのタッピングねじを製造し、耐遅れ破壊特性向上として伸線加工時の潤滑皮膜にP(リン)を含まない潤滑剤を使用することで浸炭部への浸燐を防止することが提案されている。
特許文献3では、スチールハウス用のドリリングタッピングねじとして低炭素高Mn鋼を用い、表面硬さで550HV以上、内部硬さは、亀裂の進展を抑制しねじの頭飛び発生を防止するため320〜400HV範囲に規定したものが開示されている。
特許文献4では、タッピング性能を兼備したボルトが提案されており、内部硬さを200〜320HVに低く抑えることで靭性を確保している。
特公平5−63542号公報 特開平9−67625号公報 特開平10−196627号公報 特開2001−247937号公報
ところで、二輪車も含め、自動車業界や建設機械業界などでは高強度鋼の採用が進展し、例えば、自動車業界での鋼板強度は、JISG3134のSPFH、JISG3135のSPFCに規定されているように、490N/mm〜980N/mm以上で、使用目的に応じて使い分けされている。
現時点において、自動車業界では、980N/mm以上の高張力鋼板が多数使用されているが、今後、更なる軽量化を目的に、高張力鋼板の使用比率および使用鋼板の高強度化が進むことが予想される。
従って、タッピングねじも相手材(被締結材)の高強度化に伴い、表面硬さや、耐遅れ破壊特性をより一層の向上させ、信頼性を向上させることが必要である。
しかしながら、特許文献1〜4記載の高強度ねじは、締結する相手材の強度については記載がなく、ねじ切対策として記載されている、表面硬さ、内部硬さの個々の規定も980N/mm以上の高張力鋼板への有効性は不明である。
また、特許文献1では耐遅れ破壊特性を向上させるため、P、Sを0.008%以下に低減することが提案されているが不純物元素の低減は製造コストが高く、耐食性に関しては何ら対策が講じられていない。
特許文献2、特許文献3、特許文献4も同様に、いずれも締結後のねじのメッキ剥離と腐食による耐遅れ破壊の劣化に関しては着目しておらず、施工後のねじの耐食性という点で、今後益々相手材が高強度化する中で締結ねじの信頼性が不十分である。
このように、特許文献1〜4記載のタッピングねじの製造方法は、引張り強さ980N/mm以上の高強度材を相手材とするタッピングねじの製造方法として十分な信頼性が得られるものとは言い難い。
本発明は、このような状況に着目してなされたもので、引張り強さ980N/mm以上の高強度部材用としてねじ切れが発生せず、更に耐食性も兼備したタッピングねじとその製造方法を提供するものである。
本発明者等は引張り強度980N/mm以上の自動車用鋼板を対象とするタッピングねじについて種々検討を行い以下の知見を得た。
1.タッピングねじによる締結では相手材に下穴を成形するが、自動車用鋼板の場合、プレス等剪断加工によるため、下穴のエッジ部(タッピングねじが雌ねじを成形する部位)は加工硬化によって当初の鋼板硬さよりも硬度が上昇する。
2.タッピングねじの表面硬さのみ高くすると、締結時にねじ切れを発生するようになるので、表面硬さに応じてねじの内部硬さも高くし、ねじ全体としての強度を高くしなければならず、特に、引張り強度980N/mm以上の高強度鋼板用のタッピンねじの設計においては、表面硬さと内部硬さ間で適切なバランスを取ることが非常に重要である。
3.雌ねじ成形時の相手材とねじの状況を詳細に調べると、ねじと相手材との間で発生する摩擦で熱影響が生じ、ねじ表面の硬さが低下するばかりでなく、耐食性を考慮して実施しているメッキの剥離をもたらす。メッキが剥離した部分には錆が発生し遅れ破壊の原因である水素の侵入を促進するので、タッピングねじ素材で耐食性の向上は必須である。
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.締結しようとする鋼板の引張強度(N/mm )に応じて表面硬さを調整する、高強度部材締結用タッピングねじの製造方法であって、
質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.2%以下、Mn:0.8〜2%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.05〜2%、Ni:0.05〜2%、Al:0.02〜0.1%、N:0.01%以下、更に、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.005〜0.05%、Cr:2%以下、Mo:0.3%以下、B:0.0005〜0.005%の一種または二種以上を含有し、残部、鉄及び不可避的不純物からなる鋼を熱間圧延後、冷間加工でねじ形状に成形し、
次いで浸炭焼入れ後焼戻し処理を行い、ねじの表面硬さ(HV1)が下記式を満し、かつねじの内部硬さが320超え〜430HVで、表面から0.1mm位置における硬さが480HV以上で、内部の金属組織における旧オーステナイト結晶粒度をNo.8以上とすることを特徴とする高強度部材締結タッピングねじの製造方法
HV1≧HV2
ここで、HV1はねじの表面硬さ(ビッカース硬さ)で、HV2は{TS×3/9.81+160}×1.3で求まる値を小数点以下四捨五入した値とし、TSは締結しようとする鋼板の引張強度(N/mm)とする。
本発明によれば、引張り強度980N/mm以上の高強度鋼板用として、雌ねじ成形と締結力維持に十分な表面硬さと内部硬さ及び硬化層深さを有し、ねじのメッキ剥離による防錆の低下に対しては十分な耐食性を有し、結晶粒微細化で靭性と耐遅れ破壊特性を向上させたタッピンねじが得られ産業上極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、1.素材の成分組成、2.前記成分組成の素材を熱間圧延後、冷間加工でねじ形状に成形し、次いで浸炭焼入れ後焼戻し処理した後のねじの硬度分布を規定する。以下、詳細に説明する。成分組成の説明において%は質量%とする。
1.素材の成分組成
C:0.01〜0.15%
Cは鋼の強度を確保するのに重要な元素であり、0.01%未満ではねじの強度が得られず、施工時にねじ切れを引き起こす。一方、0.15%を超えるとねじの内部硬さが高くなりすぎて、靭性を低下させる。また、ねじ施工時に被締結材との摩擦熱により歪時効硬化を引き起こし靱性の低下を招く。従って、C含有量を0.01〜0.15%の範囲内に限定する。
Si:0.2%以下
Siは脱酸材として重要な作用をするので、製鋼段階においては必ず添加するが、鋼材段階まで残存しなくてもよく、Siは変形抵抗を増大させ、冷間加工性を低下させる。しかし、本発明においてはC含有率を低目に抑えているので、0.2%までは添加しても冷間加工性の低下は小さい。一方、Siは焼入れ性を高めることもできるのでSi含有量を0.2%以下にする。
Mn:0.8〜2%
Mnは鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の組織を微細にすると共に、組織内のマルテンサイトの割合を高め、靱性を確保するのに重要な元素である。この目的のためにはMnは0.8%以上の添加を必要とする。しかし、2%を超えて添加してもその効果は飽和するので上限を2%とし、添加量は0.8〜2%とする。
P:0.015%以下
Pはオーステナイト粒界に偏析して、粒界強度を弱め、靭性、耐遅れ破壊特性を劣化させる。このように、Pは本発明において不純物元素であるので、その含有量を0.015%以下とする。
S:0.015%以下
SもP同様にオーステナイト粒界に偏析して、粒界強度を弱め、靭性、耐遅れ破壊特性を劣化させる。またMnSを形成して鋼の変形能を低下させる。また、MnSは亀裂発生の起点となる。このように、Sは本発明において不純物元素であるので、その含有量を0.015%以下とする。
Cu:0.05〜2%
Cuは鋼に耐食性を付与するのに有効で、本願発明においては需要な元素である。この元素を適正量添加することはねじの施工時に被締結材との間の摩擦により生じるねじ山、ねじ谷部のメッキ剥離部の錆生成を防ぎ、水素の侵入を防止し耐遅れ破壊特性の向上には非常に有効である。
この効果を発揮させるには0.05%以上の添加が必要である。一方で、2%を超えて添加しても耐食性向上効果は飽和し、逆に熱間圧延時に表面疵が発生しやすくなり冷間加工性が劣化するので上限を2%とする。
Ni:0.05〜2%
NiもCu同様に鋼に耐食性を付与するのに有効で、本願発明においては重要な元素である。この元素を適正量添加することはねじの施工時に被締結材との間の摩擦により生じるねじ山、ねじ谷部のメッキ剥離部の錆生成を防ぎ、水素の侵入を防止し耐遅れ破壊特性の向上には非常に有効である。
また、鋼の靭性も向上させるので、内部硬さが高くても靭性の劣化を防ぐ効果もある。この効果を発揮させるには、0.05%以上必要で、一方で多量に添加してもその効果は飽和し、且つ非常に高価な元素で経済性も考慮して上限を2%とする。
sol.Al:0.02〜0.1%
Alは脱酸材として必要な元素であるばかりでなく、粒界に偏析するNをAlNとして固定して粒界強度を高める作用を有する。Alによるこのような効果を発揮させるためには、sol.Al(酸可溶Al)として0.02%以上の量が必要である。
しかしながら、sol.Alが0.1%を超えると、溶鋼中のAl量が増加し、鋳造段階でのノズル詰まり、及び鋼材中のAl増加によって靭性が劣化する。従って、sol.Al含有量を0.02〜0.1%の範囲内とする。
N:0.01%以下
Nは粒界に偏析し、粒界強度を弱め、靭性、耐遅れ破壊特性を劣化させる。また、ねじ施工時の被締結材との摩擦熱により歪み時効硬化を起こして靭性を低下させる。このようにNは本発明において不純物元素であるので、その含有量を0.01%以下とする。
Ti,Nb,V、Cr,Mo,Bの一種または二種以上
Ti:0.005〜0.05%
Tiは結晶粒の微細化効果を有し、靭性、耐遅れ破壊特性を向上させるため、本願発明に於いては重要な元素である。この効果を発揮するには0.005%以上の添加が必要である。
一方で、0.05%を超えて添加しても、この効果は飽和するのみならず、Tiが高すぎると、硬質のTiN、TiCが多数形成し、加工性が低下する他、合金コストもかかる。従って、Ti含有量を0.005〜0.05%の範囲内に限定する。
Nb:0.005〜0.05%
NbもTiと同様、結晶粒の微細化効果を有し、靭性、耐遅れ破壊特性を向上させるため、本願発明に於いては重要な元素である。この効果を発揮するには0.005%以上の添加が必要である。
一方で、0.05%を超えて添加しても、この効果は飽和するのみならず、Nbが高すぎると、硬質のNb系炭窒化物が多数形成し、加工性が低下する他、合金コストもかかる。従って、Nb含有量を0.005〜0.05%の範囲内に限定する。
V:0.005〜0.05%
VもTi、Nbと同様、結晶粒の微細化効果を有し、靭性、耐遅れ破壊特性を向上させるため、本願発明に於いては重要な元素である。この効果を発揮するには0.005%以上の添加が必要である。
一方で、0.05%を超えて添加しても、この効果は飽和するのみならず、Vが高すぎると、硬質のV系炭窒化物が多数形成し、加工性が低下する他、合金コストもかかる。従って、V含有量を0.005〜0.05%の範囲内に限定する。
Cr:2%以下
Crは、焼入性を高め、強度を確保するのに有用な元素である。しかし、2%を超えて添加してもその効果は非常に小さく、高価な合金であるので経済性も考慮して上限は2%に設定する。
Mo:0.3%以下
Moは、焼入性を向上させる有用な元素である。しかし、0.3%を超えて添加すると炭化物が多量に生成し靭性が低下する。従って、上限を0.3%とする。
B:0.0005〜0.005%
Bは微量の添加で焼入れ性を向上させる作用を有する。また、BNを形成してNの粒界偏析を防止する。Bによるこのような効果を発揮させるためには0.0005%以上添加する必要がある。
しかしながら、0.005%を超えて添加するとボロンセメンタイトを析出して粒界強度を弱め、靭性、耐遅れ破壊特性が劣化する。従って、B含有量を0.0005〜0.005%の範囲内に限定する。
2.浸炭焼入れ焼戻し後のねじの硬度分布
ねじの表面硬さ(HV1)≧HV2
本パラメータ式はタッピングねじで、引張り強度980N/mm以上の自動車用鋼板に雌ねじを成形した際、ねじ山つぶれが生じないように、表面硬さ(HV1)を相手材の硬さと下穴周辺の加工硬化した硬さ分布を考慮して規定するもので、ねじの表面硬さ(HV1)は、{TS×3/9.81+160}×1.3で求まる値を小数点以下四捨五入した値であるHV2以上とする。
ここで、TSは締結しようとする鋼板の引張強度(N/mm)でHV1,HV2はビッカース硬さとする。
図2は、引張り強度980N/mm以上の自動車用鋼板にプレス等剪断加工で加工した下穴周辺の硬さ分布を示し、下穴の周囲(1mm以内)はせん断加工によって、鋼板の平均硬さよりも30%程度硬化する。図1は下穴周辺の硬さ試験を説明する図で、(a)は平面図、(b)は断面図を示す。
ねじ表面の硬化層深さ
相手材が980N/mm以上の高強度材の場合、ねじ施工後も所定の締結力を保持するためには、ねじの表面硬さだけでなく、その硬化層深さも重要で、本発明では、表面から480HV以上の硬化層を少なくとも表面から内部へ0.1mmの位置まで有するものとする。
ねじ内部硬さ
980N/mm以上の高強度部材に雌ネジを成形しながらねじ切れせずに締結する為には、内部硬さは320超えが必要である。一方で内部硬さが430HVを超えると靭性が低下し、施工後すぐに頭飛びが発生したり、耐遅れ破壊特性が劣化する。従って、内部硬さは320超え〜430HVの範囲とする。
内部硬さを320超え〜430HVとした場合、例えば、内部硬さを370HVとすると、タッピングねじの引張強さは1200N/mm以上となり素材の遅れ破壊特性向上を図る必要がある。このため、旧オーステナイト結晶粒を結晶粒度No.8以上とし、金属組織を微細化する。尚、本発明で、内部硬さとは、D/4〜D/2範囲の位置を指すものとする(ここでD:ねじ谷の径)。
本発明に関わるタッピングねじは常法により熱間圧延後、冷間加工でねじ形状に成形し、次いで浸炭焼入れ後焼戻し処理を行って製造する。各工程における製造条件は、上述した硬さ分布と金属組織が得られるように適宜選択する。
表1に示す化学成分を有する鋼材を150kg/ch、真空溶解炉にて溶製し、116角のビレットに鍛伸後、熱間圧延により6.0mmφ線材に熱間圧延を行った。
表1において、No.1〜No.16が本発明例、No.17〜30が比較例、No.31は従来例(SWRH18A)である。
Figure 0005022070
得られた線材を冷間伸線、冷間鍛造、ねじ転造後、浸炭窒化焼入れ焼戻しを行い、更に酸洗・メッキ後、200℃の4時間のベーキング処理を施してタッピングねじとした。ねじはJISB1122十字穴付きトタスタッピンねじ−2種−4X9である。
ねじの表面硬さは浸炭窒化焼入れ焼戻し後にねじ頭部を、表面から0.1mm位置は、ねじ谷の縦断面部を、内部硬さもねじ縦断面のねじ谷から1/4D部をそれぞれビッカース硬度計(荷重:300g)で測定した。タッピング性能評価試験(ねじ込み試験)、頭部のじん性試験は以下の要領で実施した。
1.タッピング性能評価試験(ねじ込み試験):
・被締結材:980N/mm2(300HV)、1200N/mm2(367HV)の高張力鋼板、
下穴:Φ3.6、厚み:3.2mm
・締付けトルク:37kgf
・評価方法:N=5個締付け、ねじ込み時のかじり、ねじ切れ、首下までねじ込みができなかったねじ
を不良とした。またねじ込み後の頭飛び判定は、鋼鈑にねじ込んだ状態で−5℃以下の冷凍庫に48時間入れて行い、1個でも頭が飛んだ場合は不良と判定した。
2.頭部のじん性試験:JISB1055の頭部じん性試験に準拠。
ただし角度は30°で実施した。
各5個実施し、1個でも頭飛び、首下割れが生じた場合は不良と判定。
表2(その1)、表2(その2)にタッピングねじのねじ込み試験および頭部じん性試験の結果を示す。
Figure 0005022070
Figure 0005022070
表2(その1)において、No.1〜16は本願発明範囲の化学成分を有する鋼材から製造されたタッピングねじである。表面硬さが前記パラメータ式を満足するように調整され、更に内部硬さも本願発明範囲内で、結晶粒微細化やNi添加などの種々の対策により靭性が良好であるために、ねじ込み性、頭部じん性は非常に良好である。
一方、No17〜34は比較例、No.35,36は従来例(SWRH18)で下記の通りである。
No.17:炭素量が低いために内部硬さが低く、ねじ込み時にねじ切れを起こしている。No.18:炭素量が高いために内部硬さが本願発明の範囲を外れ高くなりすぎているために靭性が低下し,ねじ込み時の頭飛び、頭部じん性試験での頭飛びを起こしている。
No.19:Siが高いために内部硬さが高くなりすぎて靭性が低下し、ねじ込み時に頭飛び、頭部じん性試験で頭飛びが発生している。
No.20:Mnが低いために焼入れ性が低下し内部硬さが低くなったためにねじ込み時にねじ切れを起こしている。
No.21:Pが上限を超えて高いために粒界が弱められ靭性が低下した。
No.22:Sが上限を超えて高いために粒界が弱められ、またMnSが多量に生成したために靭性が低下した。
No.23:Cuが本発明の範囲よりも低いがタッピング性能評価試験(ねじ込み試験)、頭部のじん性試験による評価は上述した本発明例と比較して遜色はない。ただし、後述するようにCuが低いために耐食性が劣り遅れ破壊特性は悪い。
No.24:Niが低いために靭性が低下し、頭部じん性試験は首下割れが発生している。
No.25:sol.Alが低いために鋼中の酸化物が非常に多く、かつ粒界に多量に偏析し粒界強度を弱めたため靭性が低下しねじ込み時及び頭部じん性試験時に頭とびが発生している。
No.26:sol.Alが高く鋼中にAlが多いために靭性が低下し、ねじ込み時及び頭部じん性試験時に頭とびが発生している。
No.27:Nが高いため粒界にNが偏析し粒界強度を弱めたためじん性が低下し頭部じん性試験で頭飛びが発生した。またNが高いために被締結材との間に発生した摩擦熱により歪時効硬化が大きくなり靭性が低下したためねじ込み時に頭飛びが発生した。
No.28:Moが高く鋼中の炭化物が多量に発生したため靭性が低下しねじ込み時および頭部じん性試験で頭飛びが発生している。
No.29:Tiが低いために浸炭あるいは浸炭窒化処理時に結晶粒が粗大化しすぎて靭性が低下し、ねじ込み時および頭部じん性試験で頭飛びが発生している。これは、Nb、Vも同様である。
No.30:Tiが高く鋼中にTi系の炭窒化物が多量に析出したため靭性が低下しねじ込み時および頭部じん性試験で頭飛びが発生している。これはNb、Vも同様である。
No.31:従来鋼のSWCH18A素材のタッピンねじあるが、表面硬さ、内部硬さともに本願発明の範囲内だが、内部硬さに対してじん性を向上させる対策(例えば、Niの添加、結晶粒微細化など)が何も施されていないため靭性が低下しねじ込み時及び頭部じん性試験で頭飛びが起きている。
表2(その2)に表面硬さを変えたねじ、及び相手材の引張強度を変えた場合のねじ込み性能評価の結果を示す。
No.32〜34は表1の鋼No.4の鋼材である。また、No.35、36は従来鋼でSWRH18A(表1の鋼No.31)の鋼材である。
No.32は表面硬さ、内部硬さともに本発明の範囲内であり、ねじ込み性能は全く問題なく良好である。しかし、No.33は表面硬さが前記パラメータ式を満足せず、また内部硬さも低く、ねじ込み時にねじ切れを起こしてねじ込み不良となった。
No.34は、No.32のねじを,相手材を1200N/mmに変えた場合の例で、ねじの表面硬さは前記パラメータ式を満足しない。そのため、ねじ込み性能が不良となった。従来例(SWRH18)のうち、No.35はねじの表面硬さとねじ内部硬さの両者が硬くてねじ込み試験において頭飛びが発生した。No.36はねじ内部硬さが低く、ねじ山つぶれ、かじりが発生した。
3.遅れ破壊試験
(腐食試験による耐遅れ破壊特性評価)
・被締結材:980N/mmの高張力鋼板(300HV)、下穴:Φ3.6、厚み:3.2mm、スプリングワッシャを組み込み
・締付けトルク:37kgf
・評価方法:各10個締付け状態で、乾湿繰返しの腐食促進試験を実施。1個でも頭が飛んだ場合、不良と判定。
※乾湿繰返しの腐食条件
1サイクル=塩水噴霧(30℃、3%NaCl)×8時間+乾燥(30℃、60%RH)×16時間を7サイクル実施。
表3に遅れ破壊試験の結果を示す。No.37〜39は開発鋼でねじ部にメッキ剥離は起きていたが、耐食性元素であるCu、Ni添加の効果で耐食性が良好のため錆発生が抑制され水素の侵入が防止できたことによって遅れ破壊が起きなかった例である。
一方、No.40はCuが低く、No.41はNiが低く耐食性が劣るために、メッキ剥離部に多量に錆が発生し、そのため侵入水素量が多く遅れ破壊が起きている例である。
このようにタッピングねじは被締結材との間に発生する摩擦により必ずメッキが剥離するので、本発明例のようにCu、Niを適正量添加し素材自体の耐食性を向上させることは耐遅れ破壊特性の向上に非常に効果があることが明らかとなった。
Figure 0005022070
4.低温暴露による耐遅れ破壊特性評価:
・被締結材:980N/mm2の高張力鋼板(300HV)、下穴:Φ3.6、厚み:3.2mm、スプリングワッシャを組み込み
・締付けトルク:37kgf
・評価方法:各10個締付け状態で、冷凍環境と室温環境に繰返し暴露し、1個でも頭が飛んだ場合、不良と判定。
1サイクル=-10℃以下の冷凍環境X24時間+室温環境(10℃)X24時間 を3サイクル実施。
表4に低温靭性試験の状況を示した。No.42〜44は、耐食性元素、表面、内部硬さ、旧オーステナイト結晶粒度が本願発明の範囲内で、低温靭性が良好であった。一方、No.45は微細化元素が添加されておらず、その結果旧オーステナイト結晶粒が大きいために低温靭性が低く、1サイクル目で5個以上頭飛びが発生し、広義の遅れ破壊特性が低下した。
Figure 0005022070
下穴周辺の硬さ試験を説明する図で、(a)は平面図、(b)は断面図。 引張り強度980N/mm以上の自動車用鋼板にプレス等剪断加工で加工した下穴周辺の硬さ分布を示す図。

Claims (1)

  1. 締結しようとする鋼板の引張強度(N/mm )に応じて表面硬さを調整する、高強度部材締結用タッピングねじの製造方法であって、
    質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.2%以下、Mn:0.8〜2%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.05〜2%、Ni:0.05〜2%、Al:0.02〜0.1%、N:0.01%以下、更に、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.005〜0.05%、Cr:2%以下、Mo:0.3%以下、B:0.0005〜0.005%の一種または二種以上を含有し、残部、鉄及び不可避的不純物からなる鋼を熱間圧延後、冷間加工でねじ形状に成形し、
    次いで浸炭焼入れ後焼戻し処理を行い、ねじの表面硬さ(HV1)が下記式を満し、かつねじの内部硬さが320超え〜430HVで、表面から0.1mm位置における硬さが480HV以上で、内部の金属組織における旧オーステナイト結晶粒度をNo.8以上とすることを特徴とする高強度部材締結用タッピングねじの製造方法
    HV1≧HV2
    ここで、HV1はねじの表面硬さ(ビッカース硬さ)で、HV2は{TS×3/9.81+160}×1.3で求まる値を小数点以下四捨五入した値とし、TSは締結しようとする鋼板の引張強度(N/mm)とする。
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