JP5020747B2 - 含フッ素共重合体の製造方法 - Google Patents
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また、本発明は、不純物源となる金属元素濃度が低減されており、液晶・半導体製造装置分野における搬送ロール、シール材、ホース、チューブなどとして、あるいは電気分野におけるリチウム二次電池のポリマー電解質形成用高分子マトリックスなどとしての用途に好適であるような、含フッ素共重合体およびその架橋(加硫)成形体に関する。
また、リチウムイオン二次電池などに使用されるポリマー電解質においても、金属元素の混入は、リチウムイオンの移動が妨害されることなどにより、ポリマー電解質のイオン伝導度の低下を引き起こし、また、充放電サイクル時の放電容量の低下などを引き起こす原因となることが考えられるため望ましくない。
しかしながら、エラストマー領域の含フッ素共重合体を得る場合には、含フッ素モノマ
ーの反応性やバッチ効率の観点から乳化重合法の方が有利である。
含フッ素共重合体をpH調整剤の存在下に乳化重合法により製造するに際して、上記pH調整剤としてアンモニア水を用い、
上記乳化重合法で得られた含フッ素共重合体水性分散液中の含フッ素共重合体を凝析させて含フッ素共重合体を分取するに際して、上記凝析剤として、カチオン系界面活性剤および水溶性有機溶媒を水溶性有機溶媒100重量部に対して、カチオン系界面活性剤0.3〜40重量部の量で用い、かつ、
上記カチオン系界面活性剤として、式:「(R4N+)X-」(R:炭素数1〜22のア
ルキル基、および水素原子の何れかを示し、4個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、4個のRが同時に水素原子であることはない。X:ハロゲン原子を示す。)で表されるものを用いることを特徴としている。
本発明に係る含フッ素共重合体は、上記の製造方法により得られ、得られた含フッ素共重合体中の金属元素濃度が1ppm以下であることを特徴としている。
本発明に係る含フッ素共重合体加硫成形品は、上記の含フッ素共重合体を加硫成形してなる。
<含フッ素共重合体の製造方法>
本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法では、含フッ素共重合体をpH調整剤としてのアンモニア水の存在下に乳化重合法により製造し、その好ましい態様では、得られた含フッ素共重合体水性分散液から含フッ素共重合体を凝析剤により凝析させて分取している。
[乳化重合]
以下、このような含フッ素共重合体の製造方法について分説すると、本発明では、まず、含フッ素共重合体を乳化重合法により製造しているが、該乳化重合の際には、原料モノマー(例:フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等の含フッ素ビニル系モノマー)、乳化剤、開始剤、水好ましくはイオン交換水、pH調整剤としてのアンモニア水の他、必要により、連鎖移動剤(例:メタノール,エタノール,イソプロパノール)等が用いられる。これらの配合成分は、何れも金属元素を含有しないものであることが望ましい。
F15COO-])、パーフルオロノナン酸アンモニウム(NH4 +[C8F17COO-])、
パーフルオロヘプタン酸アンモニウム(NH4 +[C6F13COO-])が挙げられる。
上記条件下に、オートクレーブ等の反応器中で乳化重合して得られる含フッ素共重合体(固形分)の反応液(含フッ素共重合体水性分散液)中の濃度は、特に限定されないが、例えば、5〜40重量%程度である。
[凝析]
次いで、上記含フッ素共重合体水性分散液(反応液)を凝析剤により処理して含フッ素共重合体を凝析させるが、その際には、前述したようにカチオン系界面活性剤と水溶性有機溶媒とを含む凝析剤が好ましく用いられる。
(式(A)中、Rは、炭素数1〜22のアルキル基、該アルキル基中の水素原子の少なくとも一部がフッ素置換されたフルオロアルキル基、および水素原子の何れかを示し、4個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、4個のRが同時に水素原子であることは
ない。Xは、ハロゲン原子またはアセトキシ基を示す。)で表されるものなどが挙げられる。
式[I]:
アルキル基(好ましくはC1〜22のアルキル基)の何れかを示す。R1、R2、R3、R4中に含まれる水素原子は、その一部または全部がフッ素置換されていてもよい。)
で表され、モノアルキルモノメチルアンモニウムクロライド、モノアルキルジメチルアンモニウムクロライド、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、トリアルキルモノメチルアンモニウムクロライド、テトラアルキルアンモニウムクロライドなどの、メチル基を有していてもよいアルキルアンモニウムクロライド(但し、これら化合物[I]中のアルキル基は、R1と同様のものである。);
あるいは、上記式(A)中のXがアセトキシ基(CH3COO-)である、
式[II]:
キル基、好ましくはC10〜22の長鎖アルキル基を示し、R2、R3、R4は、水素原子
、アルキル基(好ましくはC1〜22のアルキル基)の何れかを示す。R1、R2、R3、
R4中に含まれる水素原子は、その一部または全部がフッ素置換されていてもよい。)
で表され、モノアルキルアミン酢酸塩、モノアルキルジメチルアミン酢酸塩などの、メチル基を有していてもよいモノアルキルアミンの酢酸塩(モノアルキルアミンアセテート)(但し、これら化合物[II]中のアルキル基は、R1と同様のものである。);
モノアルキルアミン(但し、該アルキル基は、C1〜22のアルキル基);
等が挙げられる。
n:1〜22程度の整数))等が挙げられる。
なお、上記カチオン系界面活性剤に代えて、金属塩(例:塩化カルシウム、塩化ナトリウム、カリミョウバン)などに代表される金属化合物を含むものを凝析剤として用いると、凍結凝析法など凝析法の如何に依らず、含フッ素共重合体中の不純物金属の含有量が高くなってしまう(後述する比較例1〜3参照)。
ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド類;
アセトンなどのケトン類;
エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピ
レングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロンパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル1,3−ブタンジオール、2メチルペンタン−2,4−ジオール、3−メチルペンタン−1,3,5トリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、グリセリンなどのアルキレングリコール類;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;
グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどのグリセロール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル;
チオジエタノール、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダリジノンなどが挙げられる。
本発明では、凝析剤に含まれるカチオン系界面活性剤として、特に、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドに代表される界面活性剤[I]を用い、しかも、水溶性有機溶
媒として上記脂肪族アルコールを組み合わせて用いると、凝析性が良好であり、洗浄性も良好となるため好ましい。
なお、本発明では、この濾別された水相のイオン伝導度が10μS/cm以下、好ましくは0.2〜4.0μS/cm程度になるまで、含フッ素共重合体のイオン交換水による洗浄、濾過を繰り返した後、乾燥することにより、金属元素濃度が著しく低減された、高
純度の含フッ素共重合体を分離(分取)することが望ましい。
[得られた含フッ素共重合体の用途]
上記のように分離・精製して得られた含フッ素共重合体は、常法に従って、溶融成形されて溶融成形品として、あるいは加硫(架橋)成形されて加硫(架橋)成形品として用いられる。
本発明に係る含フッ素共重合体の製造方法によれば、乳化重合法、好ましくは金属元素含有原料を用いない乳化重合法により得られた含フッ素共重合体水性分散液から、各種の金属元素濃度が著しく低減(例:1ppm以下)された高純度含フッ素共重合体あるいはその加硫(架橋)成形体を簡単な方法で得ることができる。
<金属含有量の測定>
試料の含フッ素共重合体2gに、濃硫酸を1ml添加して、電気炉にて650℃の温度で1時間加熱して灰化を行った。
量を行った。
[参考例1]
内容量100リットルのSUS316製のオートクレーブ内に、
パーフルオロオクタン酸アンモニウム(アニオン性界面活性剤、NH4 +[C7F15CO
O-]) ・・・・・1.0kg(2.3モル)、
25%アンモニア水(pH調整剤)0.02kg(アンモニア:0.3モル)、
イオン交換水 ・・・・・60kg(3331モル)、
を仕込み、十分に脱気を行った後、連鎖移動剤としてのイソプロパノール0.01kg(0.2モル)、および初期仕込みとして、
フッ化ビニリデン[VdF] ・・・・・5kg(78.1モル)、
クロロトリフルオロエチレン[CTFE、ClFC=CF2]・・0.30kg(2.
6モル)、
を仕込み、55℃に加温すると、オートクレーブの内圧は、2.5MPa・Gとなった。
オートクレーブから取り出された水性分散液の固形分濃度(測定法:赤外水分測定装置を使用、測定条件:120℃で60min.。以下同様。)は、26wt%であった。
内容量100リットルのSUS316製のオートクレーブ内に、
パーフルオロノナン酸アンモニウム(アニオン性界面活性剤、NH4 +[C8F17COO-]) ・・・・・2.1kg(4.9モル)、
25%アンモニア水 ・・・・・0.04kg(0.6モル)、
イオン交換水 ・・・・・50kg(2776モル)、
を仕込み、十分に脱気を行った後、連鎖移動剤としてのメタノール0.01kg(0.3モル)および初期仕込みとして、
テトラフルオロエチレン[TFE] ・・・・・0.8kg(0.3モル)、
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[FEVE]2.2kg(8.0モル)、
を仕込み、80℃に加温すると、オートクレーブの内圧は0.85MPa・Gとなった。
オートクレーブから取り出された水性分散液の固形分濃度は31wt%でああった。
[参考例3]
内容量100リットルのSUS316製のオートクレーブ内に、
パーフルオロオクタン酸アンモニウム・・・・0.14kg(0.3モル)、
25%アンモニア水 ・・・・・0.02kg(0.3モル)、
2−ブロモテトラフルオロエトキシトリフルオロエテン(FBrVE、Br−C2F4O−CF=CF2) ・・・・・0.13kg(0.5モル)、
イオン交換水 ・・・・・33kg(1832モル)、
を仕込み、十分に脱気を行った後、連鎖移動剤としての1−ブロモ−2−ヨードテトラフルオロエタン0.07kg(0.2モル)および初期仕込みとして、
フッ化ビニリデン[VdF] ・・・・・7.5kg(117モル)、
テトラフルオロエチレン[TFE]・・・・・1.7kg(17.0モル)、
ヘキサフルオロプロピレン[HFP]・・・5.5kg(36.7モル)、
を仕込み、50℃に加温すると、オートクレーブの内圧は3.4MPa・Gとなった。
重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が0.2MPa・Gまで降下した時点で、重合を完結させた。
[参考例4]
参考例3において、25%アンモニア水0.02kg(0.3モル)の代わりに、リン酸水素二ナトリウム・12水和物を0.1kg(0.3モル)の量で用いた以外は、参考例3と同様の操作を行い、含フッ素共重合体水性分散液を得た。
[実施例1〜3]
参考例1〜3において得られた含フッ素共重合体水性分散液10kgを、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1重量%のエタノール溶液10kgに、常温(25℃)℃、常圧下に1時間かけて滴下して含フッ素共重合体の凝析を行い、得られた含フッ素共重合体の含有金属濃度を測定した。
結果を併せて表1に示す。
参考例1において得られた含フッ素共重合体水性分散液10kgを、1重量%の塩化カルシウム水溶液10kgに1時間かけて滴下して含フッ素共重合体の凝析を行い、得られた含フッ素共重合体の含有金属濃度を測定した。
[比較例2]
参考例2において得られた含フッ素共重合体水性分散液10kgを、10重量%の塩化ナトリウム水溶液10kgに1時間かけて滴下して含フッ素共重合体の凝析を行い、得られた含フッ素共重合体の含有金属濃度を測定した。
[比較例3]
参考例3において得られた含フッ素共重合体水性分散液10kgを、1重量%のカリミョウバン水溶液10kgに1時間かけて滴下して含フッ素共重合体の凝析を行い、得られた含フッ素共重合体の含有金属濃度を測定した。
[比較例4]
参考例4において得られた含フッ素共重合体水性分散液10kgを、−25℃による凍結凝析を行い、得られた含フッ素共重合体の含有金属濃度を測定した。
[比較例5]
参考例4において得られた含フッ素共重合体水性分散液10kgを、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1重量%のエタノール溶液10kgに1時間かけて滴下して含フッ素共重合体の凝析を行い、得られた含フッ素共重合体の含有金属濃度を測定した。
[実施例4および比較例6]
実施例3、比較例3においてそれぞれ得られた含フッ素共重合体を用いて、表2に示す配合処方に従い調製した含フッ素エラストマー組成物を、8インチロールミルにより素練りを行い、次いで、表2に示した加硫条件により加硫を行い、加硫成形体を作製した。
表1〜2を参照すると、得られた上記各加硫成形体のうちで、実施例3で得られた含フッ素共重合体を用いた加硫成形体(実施例4)は、比較例3で得られた含フッ素共重合体を用いた加硫成形体(比較例6)に比して、金属元素濃度が低減されており、液晶・半導体製造装置分野における搬送ロール、シール材、ホース、チューブなどとして、あるいは電気分野におけるリチウム二次電池のポリマー電解質形成用高分子マトリックスなどとして好適に使用される。
Claims (2)
- 含フッ素共重合体をpH調整剤の存在下に乳化重合法により製造するに際して、上記pH調整剤としてアンモニア水を用い、
上記乳化重合法で得られた含フッ素共重合体水性分散液中の含フッ素共重合体を凝析させて含フッ素共重合体を分取するに際して、上記凝析剤として、カチオン系界面活性剤および水溶性有機溶媒を水溶性有機溶媒100重量部に対して、カチオン系界面活性剤0.3〜40重量部の量で用い、かつ、
上記カチオン系界面活性剤として、式:「(R4N+)X-」(R:炭素数1〜22のア
ルキル基、および水素原子の何れかを示し、4個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、4個のRが同時に水素原子であることはない。X:ハロゲン原子を示す。)で表されるものを用いることを特徴とする含フッ素共重合体の製造方法。 - 上記乳化重合が、乳化剤としてのアニオン系界面活性剤の存在下に行われることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
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