JP5017097B2 - 設計デコイタンパク質を用いる溶液相バイオパニング方法 - Google Patents

設計デコイタンパク質を用いる溶液相バイオパニング方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本願は、2004年4月26日に出願された米国仮出願第60/565,674号および米国仮出願第60/565,633号への優先権の利益を請求し、それらの内容は引用することにより完全に組み込まれる。ここに提出する出願はコンピューター可読ディスク上に配列表を含有し、その資料は引用することにより本明細書に組み込まれる。
本発明は、抗体組み合わせライブラリーのファージディスプレイを利用する選択したエピトープに結合する抗体の選択の方法に関する。本発明は、また、そのような方法により製造される抗体に関する。
ポストゲノム時代において、薬剤開発における努力は、現在、疾病状態におけるmRNA発現レベルのマイクロアレイ分析のような技術によりこれまでに同定された重要なタンパク質の機能を特異的にブロックすべき方法を見出すことに焦点が当てられることができる。プロテオミクスは、タンパク質が協調的経路においてそして結合パートナーとしての両方で相互に相互作用する方法を理解することを包含する新しい科学である。タンパク質の構造活性相関には、共通ドメインのマッピングおよび機能に関与する三次元立体構造を同定することが包含される。タンパク質に関する三次元(3D)情報へのアクセスもまた、日常的になっている。例えば、NCBIは、構造−構造類似性検索サービスであるVASTと称されるツールへの一般アクセスを維持する。それは新たに決定されたタンパク質構造の3D座標を分子モデリングデータベース(MMDB)およびタンパク質データベース(PDB)におけるものと比較する。
ファージディスプレイ技術は、ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列がバクテリオファージのコートタンパク質に遺伝子的に融合され、ファージビリオンの外側上に融合タンパク質のディスプレイをもたらし、一方、融合物をコードするDNAはビリオン内に存在するインビトロ選択技術を表す。ディスプレイされるタンパク質とそれをコードするDNAとの間のこの物理的関連は、「バイオパニング」と称される簡単なインビトロ選択手順により、各々がその対応するDNA配列と関連している、タンパク質の膨大な数のバリアントのスクリーニングを可能にする。
ファージ、リボソーム、酵母および細菌ディスプレイライブラリーは、多数のタンパク質もしくはペプチドを照会するための手段である。リボソームディスプレイは、タンパク質がRNAに結合した状態のままでmRNAをそれらのコグネイトタンパク質に翻訳する方法である。核酸コーディング配列は、RT−PCRにより回収される(非特許文献1)。酵母ディスプレイは、接合型システムの一部である、膜結合アルファ凝集素酵母接着受容体、aga1およびaga2の融合タンパク質の構築に基づく(非特許文献2)。細菌ディスプレイは、細胞膜もしくは細胞壁と関連する輸送細菌タンパク質への標的の融合に基づく(非特許文献3)。
ハイブリドーマ技術と比較した場合、ファージおよび他の抗体ディスプレイ方法は、インビトロでそして抗原への宿主効果もしくはその逆の可能性の制約なしに抗原標的に対する選択を操作する機会を与える。インビトロ選択方法の1つの特別な利点は、標的タンパク質上の様々な部位に結合する抗体を得るために選択手順を操作できることである。
ファージライブラリーは機能特性と関連する遺伝物質の検索を簡単にするが、ライブラリーから最も良い候補を単離するために多段階パニング戦略が必要とされる。一方、ポリペプチドリガンドの機能ドメインに関する構造情報が既知である場合には、特定の定義されたドメインでリガンドに結合する抗体またはペプチドもしくはタンパク質のような他の結合パートナーを選択する方法を有することが望ましい。ドメインもしくはエピトープ指向(directed)パニングは、標的タンパク質に結合する抗体を選択する日常的な方法になっている。そのような選択は、選択的パニング、除外パニング、リガンド捕獲、減法的パニングもしくはパスファインダー選択として様々に知られている方法を利用する抗体の段階的選択を用いることにより主に成し遂げられている(非特許文献4)。
減法的パニングでは、重複するが完全に同一ではない結合部位を有する標的(1つもしくは複数)を用いて不要な結合物(binder)を除外することができる。この戦略は、癌細胞への結合物を除外するための正常細胞の使用におけるような未知の抗原に対してさえ結合物を同定するために使用されている。あるいはまた、いくつかの共通ドメインもしくは構造を有する天然に存在するタンパク質は、関連する抗原間で異なるかもしくは共通である部位に結合する抗体を得るために順次もしくは競合選択において用いられる。典型的に、これらの研究は、関連するケモカインもしくは突然変異体H−rasタンパク質のような天然に存在するタンパク質を利用している(非特許文献5)。
リガンド捕獲指定パンニグは、無関係のそして非隣接エピトープに対する固定化抗体を用いてファージパニングのための標的リガンドを捕獲しそしてその好ましい結合面を提示する点においてELISAサンドイッチアッセイと同様である(特許文献1)。所望の標的ドメイン以外で抗原を選択的にマスクするために競合抗体を使用している者もいる(非特許文献6)。パスファインダー技術は、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、ならびに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に直接もしくは間接的に結合した天然リガンドを使用する。ビオチンチラミンの存在下で、これらの分子は、標的抗原に近接近して結合するファージのビオチニル化を触媒し、ストレプトアビジンを用いて全集団からの「標識ファージ」の特異的回収を可能にする。このようにして、標的自体にもしくはそのすぐ近くで結合するファージが選択的に回収される(非特許文献7)。代わりの部位に結合を導くためのモノクローナル抗体の使用はまた、「エピトープウォーキング」とも呼ばれている(非特許文献7)。
これらの方法は、望ましくない結合パートナーを得ることおよび特性化することに向けられる全努力が、所望のドメインへの結合パートナーを得るための努力より先行しなければならず、そして特定のエピトープが標的とされないという欠点に苦しむ。本発明は、パニング選択プロセスにハイブリッド競合相手タンパク質を導入することにより選択したエピトープに結合する抗体もしくはリガンド結合パートナーを得る新規な方法を提供する。
US6376170 Mattheakis,L.C.et al.1994.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,9022 Broder,et al.1997.Nature Biotechnology,15:553−7 Chen and Georgiou.2002.Biotechnol Bioeng,79:496−503 Hoogenboom,H.R.et al(2000)上記 Horn,I.R.et al.1999,FEBS Lett.463:115−120 Tsui,P.et al.2002.J.Immunol.Meth.263:123−132 Osborn,J.K.et al.1998.Immunotechnol.3:293−302
[発明の要約]
本発明は、パニングプロセスにおいて設計デコイリガンドを用いてあらかじめ選択したドメインに結合するリガンド結合パートナーを選択する新規な方法を提供する。デコイリガンドは、それが推定結合部位を構成するあらかじめ選択したドメインにおいてのみ標的タンパク質と異なるように設計される。デコイタンパク質の設計は、実際の測定から得られる構造情報、例えばX線結晶学的データに基づくことができ、もしくは設計はインシリコ情報、三次元構造の計算モデリングにより作製されたデータに基づくことができる。構造情報が利用可能である場合、デコイタンパク質の設計は簡略化される。構造情報が利用可能でないかもしくは不完全である場合、配列の慎重な(discreet)領域の改変は、デコイを作製するために、種ホモログ(species homologue)のような天然のバリアントに基づくことができる。
本発明は、さらに、宿主細胞もしくは生物においてデコイタンパク質を発現するために有用な本発明のデコイタンパク質をコードする核酸に関する。
宿主細胞をトランスフェクションするために用いる場合、デコイタンパク質は細胞の表面上にもしくは細胞増殖培地から回収可能である分泌遊離タンパク質として発現することができる。デコイタンパク質は、精製するかもしくは細胞表面上のもののような異種環境において使用することができる。バイオパニング工程中に、標的およびデコイタンパク質のモル比は、非特異的および低親和性結合物が除外されそして標的への結合物のみが回収されるように保たれる。このようにして、それらのコグネイト遺伝物質に融合したタンパク質結合パートナーが、デコイタンパク質において改変されそしてそれ故に所望のドメインと相互作用することが既知である結合部位で標的タンパク質に特異的に結合する能力に関してライブラリーから選択される。
本発明の別の態様において、前もって決定したエピトープに結合する抗体を選択する方法は、動物モデルのようなある種において成功しているある治療標的抗体もしくはリガンド結合物の望ましい特性を別の種における有効な使用のための同様なバイオ治療法に直接転化するために用いることができる。あるいはまた、ヒト生物学的薬剤は、使用が意図される動物の属もしくは種において同様な作用機序を有する他の哺乳類、例えばウシ、ブタ、家禽、イヌ、ネコ、または他の農業的に重要な動物もしくは家畜の処置に有用なアナログに容易に転化することができる。本発明の1つの態様において、該方法は、基準抗体と同じ三次元ドメインにおいてホモログタンパク質と相互作用する抗体を選択するために用いられる。これは、例えば、ヒト抗原の特定の領域もしくはエピトープに対するモノクローナル抗体が既知でありそして同じエピトープに対する結合リガンド、例えばヒト標的に対するヒト抗体を再生することが望ましい場合に特定の用途を有する。別の態様において、該方法は、ヒト抗原のエピトープに結合する抗体が存在しそしてマウスのような別の種の対応するタンパク質における同じエピトープと反応する代理抗体が研究目的のために所望される場合に有用である。このようにして、親抗ヒト抗体と同様の特性を有する抗マウス抗体を得ることができる。
従って、1つの態様において、本発明は、結合すべきリガンドの特定の機能領域があらかじめ決定される、ライブラリーからのブロッキングポリペプチドリガンド結合パートナーの選択方法に関し、該方法は、a)ブロックすべきタンパク質の機能ドメインを決定する段階、b)リガンドとそのリガンドの1つもしくはそれ以上の種(species)もしくは機能ホモログとの間の共通の構造的特徴を分析する段階、c)リガンドと選択したホモログの該共通の構造的特徴を導入するデコイを作製し、ここで、デコイはブロックすべき機能ドメイン以外の領域において共通の構造的特徴を有する段階およびd)ブロックすべき機能ドメインに優先的に結合する結合物(binder)を選択するためにリガンド結合パートナーを上回る該デコイを使用する段階を含んでなる。
別の態様において、本発明は、(a)ファージ粒子の表面上にポリペプチドを発現するファージ粒子のライブラリーを準備すること、(b)標的タンパク質のあらかじめ選択したエピトープに対応するアミノ酸配列における改変を有するデコイタンパク質を製造すること、(c)標的タンパク質に結合するポリペプチドを有するファージ粒子を選択するためにファージ粒子のライブラリーを標的タンパク質と共に、インキュベーションすること、(d)あらかじめ選択したエピトープに特異的なファージ粒子について陰性選択する(negatively select)ためにモル過剰濃度で競合相手としてデコイタンパク質を加えること、(e)標的タンパク質に結合するファージ粒子をデコイタンパク質に結合するファージ粒子から分離すること、および(f)標的タンパク質に結合したファージ粒子を回収することを含んでなる、標的タンパク質のあらかじめ選択したエピトープに結合するポリペプチドの同定方法に関する。
略語
Abs 抗体、ポリクローナルもしくはモノクローナル
bFGF 塩基性線維芽細胞増殖因子
GM−CSF 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
IL インターロイキン
Mab モノクローナル抗体
TF 組織因子
FIIV 第IIV因子(不活性)
FIIVa 第IIVa因子(活性化)
FX 第X因子(不活性)
FX 第Xa因子(活性化)
[発明の詳細な記述]
定義
「抗体」という用語は、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン由来の結合性フラグメントを意味する。全ての免疫グロブリンが抗原に結合するとは限らないが、抗体のフラグメントは抗原、標的ポリペプチドもしくはタンパク質、およびいくつかの他の分子に結合しうることが示されている。従って、本明細書において用いる場合、「抗原結合フラグメント」には:(i)それぞれの定常(C)ドメインと一緒に抗体重(H)鎖および軽(L)鎖の可変(V)ドメインからなるFabフラグメント(VL−CLおよびVH−CH1ドメイン);(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward,E.S.et al.,Nature 341:544−546(1989));(v)単離されたCDR領域;(vi)F(ab’)フラグメント;(vii)VHドメインおよびVLドメインが、これら2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成することを可能にするペプチドリンカーによって連結される、一本鎖Fv分子(scFv);(Viii)二重特異性一本鎖Fvダイマーならびに(ix)二重特異性抗体、多価もしくは多重特異性フラグメントまたは標的ポリペプチドに結合することができそして免疫グロブリン由来のフラグメントを含んでなる他の設計構築物が包含されるがこれらに限定されるものではない、上記のものを含んでなる組み合わせおよび融合タンパク質が包含されるがこれらに限定されるものではない。
「キメラ」もしくは「キメラタンパク質」は、1つもしくはそれ以上の種ホモログタンパク質からの残基もしくはドメインを含有するものである。例えば、キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリンからの定常ドメインに融合した典型的にはマウスmAb由来の可変ドメインを含有する。
「デコイ」もしくは「デコイタンパク質」は、潜在的標的結合物のライブラリーからの標的リガンド結合パートナーの陰性もしくは陽性選択に用いられるあらかじめ選択したもしくは設計したドメインを含む設計ポリペプチドである。
「エピトープ」は、単一抗体が結合する構造の単位を表す標的リガンドの三次元領域と定義される。エピトープは、通常、アミノ酸もしくは糖側鎖のような分子の化学的に活性の表面配置からなり、そして通常は特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体構造および非立体構造エピトープは、前者への結合が変性溶媒の存在下で失われるが、後者はそうでない点において区別される。エピトープは、受容体結合ドメインもしくはフィブロネクチン様ドメインのような、以前に記述された機能単位もしくは構造的に特性化されたタンパク質ドメイン内に位置するかもしくはそれを包含することができる。従って、エピトープがタンパク質の機能ドメインである場合、選択した結合パートナーが結合すると、標的リガンドの機能の所望の調節をもたらし、そしてそれらは標的リガンドの機能に拮抗する(antagonistic)かもしくは作動性(agonistic)である。
「代理」(本発明に関して、「代替」ともいう)は、同様の生物学的機能を有することを意味する。代理抗体は、実施例抗体と異なる動物種との関連で、同様の機能を果たし、標的リガンドの活性を作動するかもしくは拮抗する。
「ヒト」もしくは任意の他の種の抗体、例えばヒト抗体には、ヒトもしくは別の種の生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来するかもしくは厳密にマッチする可変、もしくは可変および定常領域を有する抗体が包含されるものとする。本発明の抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含むことができる(インビトロでランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によりまたはインビボで体細胞突然変異により導入される突然変異のような、しかしこれらに限定されるものではない)。従って、本明細書において用いる場合、「ヒト抗体」という用語は、タンパク質の実質的にあらゆる部分(例えば、CDR、フレームワーク、C、Cドメイン(例えば、C1、C2、C3)、ヒンジ(V、V))がヒト生殖細胞系列抗体と実質的に同様である抗体をさす。ヒト抗体は、それらのアミノ酸配列類似性に基づいてグループ別に分類されている、例えば、http://people.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s/を参照。従って、配列類似性検索を用いて、同様の線状配列を有する抗体を鋳型として選択して「ヒト抗体」を作製することができる。マウス生殖細胞系列配列もまた既知であり、そして同様に用いることができる。他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンに関するデータが集められそして索引を付けられるにつれて、当該技術分野において現在既知である方法によるファージディスプレイライブラリーもしくは抗原結合フラグメントの他の収集物からの本発明の非ヒト抗体での製造にこれらの配列を同様に利用することができる。
1つの態様において、本発明はファージディスプレイおよび組み合わせペプチドライブラリーの使用を伴う。ファージディスプレイおよび組み合わせペプチドライブラリーは、ペプチドおよびタンパク質相互作用を探索するための強力なそして適用可能な技術に発展している。ファージライブラリーは、ランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーもしくは興味のある配列を含有するポリヌクレオチドのライブラリー(免疫した動物もしくはヒトのB細胞からのような)を挿入することにより作製することができる(Smith,G.P.1985.Science 228:1315−1317)。抗体ファージライブラリーは、1つのファージに重(H)鎖および軽(L)鎖可変領域対を含有し、一本鎖FvフラグメントもしくはFabフラグメントの発現を可能にする(Hoogenboom,et al.2000.Immunol.Today 21(8)371−8)。ファージミドライブラリーの多様性は、ライブラリーのモノクローナル抗体の免疫特異性を増加しそして/もしくは改変するように操作して追加の望ましいヒトモノクローナル抗体を製造しそして続いて同定することができる。例えば、重(H)鎖および軽(L)鎖免疫グロブリン分子をコードする遺伝子をランダムに混合して(シャッフルして)集合した免疫グロブリン分子における新しいHL対を生み出すことができる。さらに、H鎖およびL鎖をコードする遺伝子のいずれかもしくは両方を免疫グロブリンポリペプチドの可変領域の相補性決定領域(CDR)において突然変異させ、そしてその後に望ましい親和性および中和能力についてスクリーニングすることができる。抗体ライブラリーはまた、1つもしくはそれ以上のヒトフレームワーク配列を選択しそしてヒト抗体レパートリー由来のCDRカセットの収集物を導入することによりもしくは設計したバリエーションによって合成的に作製することもできる(Kretzschmar and von Ruden 2000,Current Opinion in Biotechnology,13:598−602)。多様性の位置はCDRに限定されず、可変領域のフレームワークセグメントを包含することもできる。
本発明の実施において有用な他のライブラリーには、非ヒト動物由来のファージディスプレイライブラリーもしくは設計抗体ライブラリーが包含される。前者の例には、軽鎖を生来欠いているラクダ種からの免疫グロブリン由来のライブラリーの使用が包含され(Hamers−Casteman et al.,1993,Nature 363:446−448;Gahroudi et al.,1997,FEBS Lett)、そして後者の例には、米国特許第6248516号に教示されるような結合能力を有する重鎖もしくは軽鎖可変ドメインのいずれかに由来する単一ドメイン抗体が包含される。
さらに、様々なタイプのファージもしくは他のディスプレイシステム、リボソーム、酵母、細菌もしくは動物細胞は、生物学を理解するかまたは新しい薬剤もしくは薬剤標的を見出そうとする様々な試みにおいてペプチドもしくは抗体ファージライブラリーと組み合わせることができる。例えば、ペプチドファージディスプレイライブラリーは、抗体ファージライブラリーを調べるために用いることができる。排除プロセスを用いて、基質ファージディスプレイおよび基質サブトラクション法の組み合わせを用いて非常に密接に関連する酵素間の特異性の違いを見出すことができ、そしてこの情報を利用して非常に選択的なインヒビターを生み出すことができる(Ke,S−H,et al.1997.J.Biol.Chem.272(26):16603−16609)。
抗原と抗体のようなリガンドと受容体との間の結合は、水素結合、疎水性結合、静電気力およびファンデルワールス力に依存する。これらは全て弱い非共有結合性質の結合であるが、それにもかかわらず抗原と抗体との間の結合は、天然に存在する最も強いものの1つであることが既知である。抗体のように、抗原は同じエピトープの複数のコピーによって、もしくは複数の抗体により認識される複数のエピトープの存在によって多価であることができる。多価性に関する相互作用はより安定化された複合体をもたらすことができるが、しかしながら、多価性はまた立体問題ももたらし、従って結合の可能性を減らし得る。しかしながら、全ての抗原−抗体結合は可逆的であり、そして任意の可逆的2分子相互作用の基本熱力学的原理に従う:
Figure 0005017097
ここで、Kは親和定数であり、AbおよびAgはそれぞれ抗体もしくは抗原上の非占有結合部位のモル濃度であり、そしてAb−Agは抗体−抗原複合体のモル濃度である。正反応は「オン率(on rate)」として知られ、そして溶解もしくは逆反応は「オフ率(off rate)」として知られている。
効率のよい相互作用が抗原と抗体との間で起こるためには、エピトープは結合に容易に利用可能でなければならない。抗原分子は空間に存在するので、抗体により認識されるエピトープは、特定の三次元抗原性立体構造(例えば、2つの天然タンパク質サブユニットの相互作用により形成される特異部位)の存在に依存することができ、もしくはエピトープは単純な一次配列領域に対応することができる。そのようなエピトープは、それぞれ、「立体構造」および「直線状」と記述される。
本発明の方法
設計した競合タンパク質を用いるファージディスプレイ抗体の指定選択によりあらかじめ選択したエピトープに結合する抗体もしくは他の結合リガンドを単離する方法を考案した(図1)。該方法は、適切なデコイタンパク質の設計に適用される標的タンパク質についての構造情報に依存する。このデコイタンパク質は、所望のエピトープ特異的抗体を単離するために抗体ファージディスプレイにおける競合相手として用いられる(図1)。
動物を免疫する伝統的な方法により作製される抗体の結合特異性は、動物の免疫系およびタンパク質抗原の組み合わせにより導かれる。従って、免疫から得られる抗体は、所望の標的エピトープと異なる「免疫優性」(“immuno dominant”)エピトープと相互作用することが多い。ファージディスプレイ抗体ライブラリーを用いる抗体選択の既存の方法は、興味のあるエピトープに正確に向けることができない。開示される方法は、標的エピトープに特異的な抗体に向かう選択の非常に正確なそして効果的な方向性を可能にするという利点を有する。
あらかじめ決定したエピトープに結合する抗体を選択する方法は、動物モデルのようなある種において成功しているある治療標的抗体もしくはリガンド結合物(バイオ治療法)の望ましい特性を別の種における有効な使用のための同様なバイオ治療法に直接転化するために用いることができる。あるいはまた、ヒト生物学的薬剤は、他の哺乳類、例えばウシ、ブタ、家禽、イヌ、ネコまたは他の農業的に重要な動物、家畜または希少動物もしくは絶滅危惧種の処置に有用なアナログに容易に転化することができる。
コンパニオンアニマル(イヌ、ネコおよびウマ)に発症する15の最も一般的な病状の中で多くはホルモン性である:イヌおよびネコにおける糖尿病、イヌおよびネコにおける甲状腺疾患、イヌにおける甲状腺機能低下症、ネコにおける甲状腺機能亢進症、イヌにおけるアジソン病およびクッシング病。コンパニオンアニマルおよび他の動物に一般的な他の疾患には、変形性関節症および様々な形態の癌が包含される。従って、抗癌および抗炎症抗体治療のような、成功したヒト生物学的療法は、他の種特異的アナログに転化される可能性がある。例えば、ヒトTNFアルファ上の特異エピトープに結合する薬剤REMICADE(インフリキシマブ)は、本発明の方法を用いて、コンパニオンアニマルを動物のその種に一般的なTNFアルファ媒介疾患について処置することに使用する治療的に有効な薬剤に転化することができる。
結合標的部位の選択
各リンパ球細胞は、抗原にではなくエピトープに特異的な抗体を生産する。抗原は、免疫系により認識されそして抗体および/もしくは細胞傷害性T細胞により標的とされている外来細胞、粒子、タンパク質もしくは分子の一部であるが、エピトープはタンパク質上の抗原決定基に対応する結合部位である。ポリペプチド、脂質、核酸および多数の他の物質もまた、抗原として働くことができる。免疫応答はまた、「ハプテン」と称されるより小さい物質に対して、これらがウシ血清アルブミンもしくはヘモシアニンまたは他の合成マトリックスのようなより大きい「キャリアタンパク質」に化学的に連結される場合に生成されることもできる。ハプテンは、薬剤、単糖、アミノ酸、小ペプチド、リン脂質もしくはトリグリセリドのような様々な分子であることができる。強い免疫応答を引き出す抗原は、「強力に免疫原性」(“strongly immunogenic”)であると言われる。抗原決定基、クローン免疫応答を引き出すものは、わずか1〜8個のアミノ酸もしくは1〜6個の単糖であり得ることが実験的に決定されている。実施面上、クローン由来の免疫グロブリン(モノクローナル抗体)により認識されるエピトープは、タンパク質の表面上のより大きいそして非連続配列を包含することができる。
エピトープがタンパク質の機能領域内に位置する場合、そのタンパク質への抗体の結合の効果は、その構造的特徴により与えられるタンパク質の機能を中和することである。この概念は、治療モノクローナル抗体の基礎となることが判明している。従って、特定のエピトープもしくはタンパク質ドメインに対する抗体もしくは他の結合物を再現可能に選択できることは、タンパク質治療法開発の技術分野における前進を表す。
抗体エピトープマッピングは、機能ドメインを同定することができる1つの方法である。エピトープマッピングは、目的により低いもしくは高い解像度で行うことができる。低解像度マッピングは、天然のタンパク質の表面上の配列に1組のモノクローナル抗体をさらすことを含む。標的の全表面を対象とすることおよびどの配列が機能にとって重要であるかを同定することに重きが置かれる。リードmAb候補と異なり、エピトープマッピングに使用する抗体は低親和性であることができ、中和および非中和mAbの両方を含むはずであり、そしてこの方法において、正確なエピトープの決定は通常は必要ない。いったんエピトープが特定の所望の解像度まで同定されると、所望の効果、通常は機能の中和をもたらす抗体での競合アッセイを用いてその領域への他の結合物、例えば、ヒト標的タンパク質についてマウス抗体と競合することができるヒト抗体を同定することができる。
標的タンパク質に結合する抗体の組は、エピトープを同定するために他の方法において用いることができる。例えば、抗原をプロテアーゼで消化し、そして抗体への得られるフラグメントの結合をELISA形態においてもしくは質量分析により決定することができる。抗原−抗体複合体をプロテアーゼで消化し、そしてタンパク質分解フラグメントを質量分析により同定することができる。この場合、抗体でのタンパク質分解部位のマスキングによりエピトープが同定される。
抗体のエピトープを同定するために用いられている他の方法がある。抗原の全配列の重複フラグメントに対応するペプチドを合成することができ、そしてこれらのペプチドへの抗体の結合をELISA形態においてもしくは表面プラズモン共鳴分光法を用いて決定することができる。同位体で標識した抗原を用いるNMR研究を用いて、抗体結合の際にどのアミノ酸がそれらの磁場環境の変化を有するか同定することができる。別の技術は、熱融解転移温度の測定である。抗原−抗体複合体の結晶構造を決定し、そしてエピトープを同定するために用いることができる。これらの方法のうち、結晶学は最も確実であり、その後にNMR研究が続く。
ELISAフォーマットは、検出の前に結合していない物質を除くために洗浄工程を利用する。エピトープが直線状である場合(抗体はアミノ酸の単一の直線状配列のみを認識する)、エピトープを含有するペプチドフラグメントに対する抗体の親和性は、結合を検出するために十分に高い可能性がある。エピトープがタンパク質内の2つもしくはそれ以上の非連続アミノ酸配列からなる立体構造である場合、抗体に対する各個々の配列の親和性は低くそして検出されない可能性がある。表面プラズモン共鳴分光法を用いて、立体構造エピトープを特定するペプチドへの結合は、エピトープの各ペプチドに対する親和性が低い可能性があるので検出されない可能性がある。ペプチドのオフ率が高い場合、結合は検出されない可能性がある。
エピトープはまた、核磁気共鳴(NMR)を用いてタンパク質上で同定することもできる。出願人の同時係属出願(米国第10/393926号)は、特定の原子(一般にH、C13およびN15)、従ってアミノ酸残基をそれらの局所環境に基づいて同定する技術を教示する。大部分のもしくは全部の共鳴の完全な帰属は、十分な時間および十分に高い解像度の機器が与えられれば巨大タンパク質について行うことができる。この方法は、抗体が抗原に結合すると、いくつかのアミノ酸の局所環境が改変されるという結果に基づく。最高の変化を受けることができるアミノ酸は、抗体接触に最も関与するものである。結合および非結合状態における抗原および抗体の両方について全てのNMR帰属を行い、そしてどのアミノ酸がシフトされる原子を有するかを決定することによりエピトープを同定することは、理論的に可能である。抗原−抗体複合体のNMRスペクトルの複雑さは、そのような分析を非常に困難で日常的なエピトープ同定に適用可能でないようにする。しかしながら、出願者等の方法は、C13もしくはN15アミノ酸のいずれかが富化されたタンパク質を用いてタンパク質エピトープを同定し、ここで、NMRシグナルの正確な同定は必ずしも必要とされない。同じタンパク質における2つもしくはそれ以上の異なるアミノ酸の多重標識を用いることができ、ここで、異なるアミノ酸の共鳴は十分に異なった。例えば、アルファ−N15アラニンおよびイプシロン−N15リシンは、イプシロン−N15ヒスチジンおよびアルファ−N15ロイシンのように1つのタンパク質に導入することができる。エピトープは、抗体のもしくはリガンドの結合領域のいずれかであることができる。さらに、タンパク質上の表面露出配列を予測する分子モデリングもしくはアルゴリズムは、エピトープ同定を助けることができる。
エピトープはまた、標的構造の物理的測定がない場合には標的の一次アミノ酸配列に基づいて設計することもできる。例えば、タンパク質においてタンパク質の約5〜15の直線状セグメント内の約5〜10アミノ酸残基を改変してバリアントデコイもしくはキメラ標的タンパク質を作製し、そして結合を測定してエピトープを決定することができる。
タンパク質間の相同性は、共通の進化起源を示す遺伝子の塩基配列もしくはタンパク質のアミノ酸配列における類似性に基づく。一般に、共通の進化起源に起因するタンパク質の構造もしくは機能の類似性がある。これは必ずしも真実とは限らず、そして分岐進化および突然変異は、構造類似性を有するが異なる構造からの分岐機能もしくは収束機能を有するタンパク質;それぞれ、オーソログ(ortholog)およびパラログ(paralog)をもたらし得る。ホモログ走査突然変異誘発は、元のタンパク質の天然の三次元構造を維持するための相同タンパク質からの同様な領域の置換;例えば、ブタ成長ホルモン、ヒトプロラクチンもしくはヒト胎盤ラクトゲンからの領域でのヒト成長ホルモンの領域の置換、続いて構築物の結合定数の決定によるタンパク質の受容体結合領域の同定のための周知の戦略である。これらの天然構造バリアントは、本発明の適切なデコイタンパク質の構築において有用なドメインもしくはドメイン内のエピトープを決定するために用いることができる。
デコイ構築
「デコイタンパク質」は、本明細書において用いる場合、結合する部位もしくは機能領域を含む特定のドメインで標的タンパク質と1つもしくはそれ以上の構造的特徴において異なるタンパク質をさす。従って、デコイはキメラ標的タンパク質であることができ、もしくはデコイは種ホモログのような天然に存在するタンパク質であることができ、そして標的リガンドはあらかじめ選択した結合ドメインを含む設計配列であることができる。本発明の方法において、デコイは低親和性で非特異的な結合物に結合し、そして保持される標的と複合体を形成する結合物はそれにより選択される。1つの態様において、標的エピトープを受け入れるために骨格として働くことができる適当な構造ホモログは、標的タンパク質のオーソルグであることができる。構造ホモログはまた、多重遺伝子族の別のメンバーであることもできる。
X線結晶学、NMRおよび他の技術からの多量の三次元構造情報の発生および保管とともに、タンパク質構造についての情報を容易に取り出すことができ、もしくは仮想構造情報を多数の方法で生成することができる。グラスゴー大学の生物情報学研究センター(Bioinformatics Research Center)は、タンパク質構造のトポロジー(TOPS)ソフトウェア(TP Flores,DS Moss and JM Thornton.1994.Protein Engineering,7:31−37)を用いてタンパク質構造を表しそして比較するためのインターネットサイトへのアクセスを提供する。PDB様ファイルの形態のタンパク質座標をサーバーに提出することができる。該構造は、TOPS表示と称される簡易アニメ表示に転化され、そして次に全ての既知の構造の非重複サブセットに対して比較される。結果は、圧縮値、構造の記録同定、および1対の同一構造に1そして共通の特徴のない2つの構造に0の値を用いる共通パターンを示す;分類一覧表として戻される。
MASS(二次構造による多重アライメント)は、二次構造および原子表示の両方を用いる、2段階アライメントに基づく。この方法の背後にある論理的根拠は、タンパク質が本質的に二次構造要素(SSE)からなることである。これらは、その安定させる骨格を与えるタンパク質内の領域であり、その上に機能部位が移植される。従って、SSEは進化的に高度に保存され、一方、突然変異はフレキシブルループで高い頻度で起こり、それらは整列させるのがより難しい。MASSは、多数のタンパク質分子の構造アライメントおよび共通構造モチーフの検出のための非常に効率のよい方法である。二次構造情報を利用することは、ノイズのある解答を除外することに役立ち、そして効率およびロバスト性をもたらす。MASSの利点は、それが配列順序に依存せず、従って、多重アライメントもしくはサブセットにおける非トポロジー構造モチーフを検出できることである。MASSを用いて、難しい問題で有名な、タンパク質−タンパク質ドッキングを導くことができる。MASSは、http://bioinfo3d.cs.tau.ac.il/MASS/.(Dror,O.et al.Protein Science(2003),12:2492−250)で自由に入手可能である。
本発明は、特異エピトープに対する抗体の選択を可能にするためにタンパク質−核酸コーディング−発現系の巨大ライブラリーと構造情報を組み合わせる方法を用いる。一例として、ヒト組織因子(「TF」)のマウスホモログ上の複雑なそして特異的エピトープを標的とした。当該技術分野における既存の抗体は、mTF機能を阻害しないか、もしくはTFへの第X因子結合の特異的競合インヒビターではない。開示される抗体はこれらの機能を有し、そしてそれ故にFXの活性化を阻害することによりTF活性を中和する抗TF抗体の治療能力を評価するためのこれまで利用できない手段に相当する。さらに、これらの抗体は、正常なおよび病原性の血栓性、炎症性、血管新生、新生物および発生プロセスにおけるTFの役割を分析するための有益な試薬である。
エピトープ指定抗体もしくは他の結合リガンドの単離
本発明のエピトープ指定抗体もしくは他の結合リガンドの単離への3つの一般的方法は:(1)抗体もしくは他の潜在的結合リガンドのディスプレイライブラリーを用いる競合選択;(2)ディスプレイライブラリーを用いる非競合選択、続いて異なる結合活性についてのスクリーニング;および(3)動物の免疫、続いて異なる結合活性についてのスクリーニングである。
デコイタンパク質を用いる競合選択において、ディスプレイライブラリーは、標的タンパク質に対してモル過剰であるデコイタンパク質の存在下で標的タンパク質への結合について選択される。回収された抗体もしくは結合リガンドの選択性は、標的タンパク質に結合しそしてデコイに結合しないことに関する単離された抗体もしくは結合リガンドのスクリーニングにより確かめられる。
従って、この方法の一例として、(a)ファージ粒子の表面上にポリペプチドを発現するファージ粒子のライブラリーを準備すること(b)標的タンパク質のあらかじめ選択したエピトープに対応するアミノ酸配列における改変を有するデコイタンパク質を製造すること(c)標的タンパク質に結合するポリペプチドを有するファージ粒子を選択するためにファージ粒子のライブラリーを標的タンパク質と共にインキュベーションすること(d)あらかじめ選択したエピトープに特異的なファージ粒子について陰性選択するためにモル過剰濃度で競合相手としてデコイタンパク質を加えること(e)標的タンパク質に結合するファージ粒子をデコイタンパク質に結合するファージ粒子から分離すること、およびf)標的タンパク質に結合しそしてデコイに結合しないファージ粒子を回収することを含んでなる、標的タンパク質の前もって選択したエピトープに結合するポリペプチドの同定方法が提供される。
好ましさに劣るのは(less preferred)、キメラもしくは突然変異体タンパク質への結合について選択するための「デコイ」としての天然タンパク質の使用である。この場合、元の骨格タンパク質を含有するタンパク質をキメラもしくは突然変異体タンパク質に対してモル過剰で使用する。回収された抗体もしくは結合リガンドの選択性は、デコイ標的および標的タンパク質に結合しそして骨格タンパク質に結合しないことについての単離された抗体もしくは結合リガンドのスクリーニングにより確かめられる。
デコイタンパク質での2段階選択において、ディスプレイライブラリーは標的タンパク質に対して(against)選択される。次に、回収された抗体もしくは他の結合リガンドは、標的タンパク質に選択的に結合しそしてデコイタンパク質に結合しないことについてスクリーニングされる(通常は個々に)。
デコイタンパク質を用いる免疫方法では、モノクローナル抗体を生産する安定なハイブリドーマの単離に適当な動物種を標的タンパク質で免疫する。ハイブリドーマを作製し、そして標的抗原に結合するがデコイタンパク質に結合しない抗体の発現についてスクリーニングする。免疫方法は、上記のディスプレイ戦略のいずれかと組み合わせることができる、従って、免疫細胞(例えば、脾臓もしくは末梢血リンパ球)からのmRNAを用いて抗体ライブラリーを作製し、次にそれをいずれかのディスプレイ方法について記載のとおり処理する。この方法は、安定なハイブリドーマの単離に適当な動物に限定されない。
ペプチドライブラリーは、本明細書に詳細に記述される方法および当業者に一般に利用可能な方法に従って設計することができる(例えば、Dower et al.に1998年3月3日に交付された米国特許第5,723,286号を参照)。1つの態様において、市販されているファージディスプレイライブラリーを用いることができる(例えば、RAPIDLIB’もしくはGRABLIB’,DGI BioTechnologies,Inc.,Edison,NJ;Ph.D.C7C Disulfide Constrained Peptide Library,New England Biolabs)。
抗体ライブラリーは、例えば、Cambridge Antibody Technology,Morphosys,Affymax Research Institute,Palo Alto,CAから入手可能である。多数の戦略が、さらなる分析および親和性成熟のための結合物の実行可能なサブセットを選択するために考案されている。これらには:競合排除により免疫優勢エピトープをブロックすべきこと、エピトープマスキング戦略を用いる抗体特異性のより広い範囲のレスキュー、捕獲リフト(capture lift)によるスクリーニング、捕獲サンドイッチELISAを用いる抗体に誘導される選択、近位ガイド(proximity−guides)(ProxiMol)抗体選択、マウスモノクローナル抗体での誘導選択を用いるヒトモノクローナル抗体の単離、磁気選別技術を用いて細胞表面抗原に対する抗体を選択すること、ヒト腫瘍関連細胞表面抗原結合scFvの単離、組織フラグメントを用いる一本鎖抗体の減法的単離、抗体反応速度論的結合特性に基づく抗体の選択、原子価に基づく機能性抗体の選択が包含される(Antibody Phage Display.Methods and Protocols.IN:David W.J.Coomber,Ed.Methods in Molecular Biology.Humana Press.Vol.178,December 2001 pps.133−145)。
ファージの親和性濃縮は、標的結合物の遅い解離速度に基づく。遅い解離速度により、通常は高い親和性が予測される。親和性濃縮のこれらの例において、標的ファージおよび標的結合物ファージの継続したインキュベーションは、既知の標的結合物の飽和量の存在下でもしくはインキュベーション溶液の容量を増加することにより行われる。各場合において、解離した標的結合物ファージの再結合は阻止され、そして時間を増すにつれて、より高い親和性の標的結合物ファージが回収される。
プレインキュベーション時間およびプレインキュベーション条件は、興味のある各標的結合物について最適化される。親和性濃縮への様々な条件の効果をモニターするためにパニングのパイロット実験が行われる。標的および標的結合物ファージのインキュベーション並びに宿主細胞の形質転換後に、宿主細胞を選択培地上で平板培養し、そして定量する。生存するコロニーの数の変化を決定することは、親和性濃縮の程度を決定するために容易な評価手段を提供する。生存コロニーの数が減少するにつれて、存続する弱い結合物の数は有意に減少され、より高い親和性を有するより少ない標的結合物を残す。例えば、1%、0.1%もしくは0.001%のみの生存までの、生存コロニーの数の喪失は、より高い親和性を有する標的に結合する標的結合物を濃縮するための最適条件を示す。ある状況において、生存コロニーの数は、シーケンシングによる分析のための約100コロニーに限定されることができる。
使用する標的結合物ライブラリーのタイプの多様性により、より高い親和性を有する標的結合物の数は10未満までであることができる。
上記の親和性濃縮技術の使用は、パニングの追加ラウンドを必ずしも行うことなしに濃縮を可能にする。親和性濃縮技術は、単独でもしくは組み合わせて用いることができる。本発明はまた所望に応じて親和性濃縮を提供するために複数ラウンドのパニングも使用できることが理解されるべきである。
引用:本明細書に引用する全ての公開もしくは特許は、それらが本発明の時点での最新技術を示すように、そして/もしくは本発明の記述および実現可能性を提供するために引用することにより全部が本明細書に組み込まれる。公開は、任意の科学もしくは特許公開、または全ての記録、電子もしくは印刷形態を包含する任意のメディア形態において利用可能な任意の他の情報をさす。以下の参考文献は、引用することにより全部が本明細書に組み込まれる:Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987−2004);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989);Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989);Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994−2004);Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997−2004)。
本発明を一般論として記述したが、本発明の態様は以下の実施例においてさらに開示される。
[実施例1]キメラヒト/マウス組織因子タンパク質の設計および製造
TF8−5G9と称されるMabは、ヒト組織因子を認識して結合し、そしてTFもしくはTF/第VIIa複合体と第X因子との結合を妨げる(Ruf,W.and Edgington,T.S.1991.Thromb.Haemost.66:529−539)。ヒトTFと複合体を形成したTF8−5G9 Fabの結晶構造の分析に基づき、Fabにより認識されるエピトープを形成する残基は全て、ヒトTFの残基149〜204の間に入る。タンパク質のこの領域はまた、GlaドメインFXとTFとの相互作用において重要な役割を果たすことも知られている(Ruf et al 1992)。huTFの149〜204の間の15個の特定の残基は、結合に有意なエネルギー的寄与をするために適切に位置する(Huang,et al.J.Mol.Biol.275,873−894)。以下の配列アライメントにおいて例示されるように、ヒト(GenPept受託番号NP_001984)およびマウスTF(GenPept受託番号NP_034301)の細胞外ドメイン配列をヒトECドメインの残基149〜204とマウスECドメインの152〜207との間で整列させると、15個の重要な残基のうち7個が同一であり(ヒト残基K149、K165、K166、T167、T170、N171、Q190)、一方、15個の残基のうち8個が異なる(ヒト残基は:Y156T、K169I、V192M、P194F、V198T、R200Q、K201NおよびD204Gで置換される)。ボールド体の残基は、TF8−5G9:huTF複合体の安定化に有意に寄与する残基を表す。これらの残基は、1〜4kcal/mol以上の結合のΔ自由エネルギーを有する。
Figure 0005017097
この分析に従って、アライメントによる位置でhuTF上に存在する残基に対応するようにmTF上の特異なTF8−5G9接触残基の突然変異を行うことによりマウス組織因子コーディング配列からキメラタンパク質デコイタンパク質を構築することができる。マウスおよびヒト組織因子間でアミノ酸残基の違いがある他の位置が存在するが、これらは標的エピトープに関してタンパク質の全体的な機能もしくは構造に寄与しないと考えられた。鋳型としてmTF遺伝子を用いて、huTF上に存在する対応する残基へのmTF上の8個の特異なTF8−5G9接触残基の突然変異を有するキメラタンパク質を構築した(配列番号1)。TFの可溶性細胞外ドメインのみが発現されるように膜貫通領域を取り除き、そして精製を簡単にするためにカルボキシ末端のHis標識を付加した。可溶性マウスTFおよびキメラタンパク質を発現させ、そしてHEK 293E細胞から精製した。精製されたタンパク質をSDS−PAGEにより分析してHu/m TF(40kDa)についてそしてmTF(35kDa)について予想されるMWを示した。
HuCALファージディスプレイライブラリー(Morphosys,Martinsreid,Germany)での溶液に基づくパニングをビオチニル化mTFタンパク質を用いて行った。mTF上の標的エピトープを除く全てのエピトープに特異的なファージを除外するためにキメラhu/mTFタンパク質を10倍モル過剰でデコイとして加えた。ビオチニル化mTFに結合したファージをストレプトアジビン被覆電磁ビーズ上での捕獲により回収した。全ての結合物をシーケンスしてこのパニングから23個の特異Fabを生成せしめた:試験した濃度で、9個はmTFのみを認識し、3個はhu/mTFよりmTFを優先的に認識し、そして11個は2つのタンパク質を同様に認識した(表1)。
選択されるFabがエピトープ指定選択の結果であり、そしてmTF上のホットスポットではないことを確かめるためにキメラタンパク質競合相手なしのmTF上でのパニングを行った。パニング条件は、選択方法における競合抗原の削除を除いて2つの実験間で同一であった。全ての結合物をシーケンスして7個の特異Fabを生成せしめた。競合相手なしのパニングにおいて単離されたFabのうち1個のみがmTFに特異的に結合し、競合相手抗原の添加は、mTFを特異的に認識しそしてTF8−5G9エピトープにおける改変を有するhu/mTFタンパク質を認識しないFabの選択を可能にしたことを示唆する(表1)。
Figure 0005017097
ヒト抗マウスTF特異的Fabをアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、そしてELISAによりmTFもしくはhu/mTFへの結合について評価した。これらのFabのCDR配列は図2に記載され;フレームワーク帰属は、Morphosys HuCALマニュアルへの比較により行った。フレームワーク配列は、図2の下部に記載される。9個のmTF特異的Fabは全て、hu/mTFへのわずかな交差反応性を有してmTFへの用量依存的結合を示した(図3)。Fab形態において、PHD127はこの形態におけるmTFに対する最も高い結合親和性を有し、一方、PHD103は最も低い親和性を有した。5個のFab(PHD103、104、126、127および130)をmTFに対するそれらの親和性に基づいて全長免疫グロブリンへの転化のために選択した。5個のFab(PHD103、104、126、127および130)の可変領域は図2に示され、そして配列番号:2〜11をHEK293細胞におけるmIgG2a分子の発現のためにベクターにクローン化した。
凝固の阻害
選択された抗mTF代理FabをmTF源としてマウス脳抽出物を用いてヒト血漿における凝固を阻害するそれらの能力について評価した。以前の実験に基づき、mTF上のTF8−5G9エピトープに結合するFabは、凝固経路を遮断しそして血栓形成を遅らせると予想される。このアッセイでは、フィブリン塊形成の阻害をヒト血漿において測定した。試験した8個のFabのうち4個は、インビトロでヒト血漿における凝固を遅らせるかもしくは阻害した:PHD103、PHD104、PHD126およびPHD127。PHD126およびPHD127は、ヒト血漿における凝固を阻害することにおいて有意により強力であった。Fab濃度に対する凝固時間に適合させた曲線の基づき、測定可能なE50値は0.2μg/ml〜63μg/mlの間であった。
Figure 0005017097
第X因子阻害
凝固を阻害した抗mTF Fab(PHD103、104、126、127)による第X因子阻害をマウス脳抽出物(組織因子源として)の存在下で測定した。抽出物をFVIIaとインキュベーションし、そして抗mTF代理MabをFXの存在下で加え、そしてFXaへのFXの転化の阻害を測定した。PHD103、126および127 Fabは、第Xa因子への第X因子活性化(切断)を阻害した。次に、第X因子活性化の阻害を全長抗mTF IgGを用いて再評価した。十分な阻害がPHD103、126および127について認められ、一方、PHD104では阻害は認められなかった。
FACS分析
最も活性の魅力的な候補抗体として、PHD126およびPHD127を高レベルでmTFを発現するB6F10黒色腫細胞に結合するそれらの能力について評価した。PHD126およびPHD127は、それぞれ37.8nMもしくは4.35nMのEC50で用量依存的に細胞結合型mTFに結合した(図4)。図2における個々のサブドメイン成分により示されるようなPHD126および127重鎖および軽鎖の完全な可変領域配列は、示されるように配列番号:6〜9として含まれる。
要約
本明細書に記述される実験は、設計した競合相手タンパク質を用いるファージディスプレイ抗体のエピトープ指定選択が実行可能な方法であることを示す。該方法は、適切な競合相手の設計を可能にするために標的タンパク質についての構造情報に依存する。さらに、この方法は、興味のあるタンパク質上の特定のエピトープに反応性の抗体の選択を可能にする。ファージディスプレイ抗体ライブラリーを用いる抗体選択の既存の方法は、興味のあるエピトープに正確に向けることができない。開示される方法は、標的エピトープに特異的な抗体に向かう選択の非常に正確なそして効果的な方向性を可能にするという利点を有する。我々は、mTF上の特異エピトープに対する抗体の選択を可能にするためにこの方法を用いている。
TFは、FVIIaおよびFXと特異複合体を形成することができる、受容体としてそしてリガンドとして両方機能する複合体分子である。従って、この相互作用を妨げるMabは、分子の特異領域に向けられなければならない。当該技術分野における既存の抗体は、mTF機能を阻害しないかもしくはTFへの第X因子結合の特異的競合インヒビターではない。開示される抗体はこれらの機能を有し、そしてそれ故にFXの活性化を阻害することによりTF活性を中和する抗TF抗体の治療能力を評価するためのこれまで利用できない手段に相当する。さらに、これらの抗体は、正常なおよび病原性の血栓性、炎症性、血管新生、新生物および発生プロセスにおけるTFの役割を分析するための有益な試薬である。
[実施例2] 異なる受容体サブユニットを活性化することができる共通ドメインへの結合物の選択のためのキメラデコイタンパク質の構築
インターロイキン−13(IL−13)は、喘息の患者の気道に高レベルで存在するサイトカインである。IL−13は活性化CD4T細胞により生産され、そしてB細胞増殖およびIgE生産、杯細胞過形成および粘液過分泌、好酸球性炎症、ならびに喘息患者で認められる気道過敏性において重要な役割を果たす。トランスジェニックマウスにおけるIL−13の過剰発現は、喘息様表現型を与えることが示されており、一方、アンタゴニストを用いるIL−13の中和は、喘息反応を弱めることが示されている。
IL−13は少なくとも2つの受容体、T細胞を除く大部分の細胞タイプ上に見出されることができるものおよびデコイ受容体として機能し得るものに結合する。前炎症反応に関与している受容体はIL4の受容体と共有され、そして2つのサブユニット、IL4Rアルファ1およびIL13Rベータ1を含んでなる。IL−13は、IL−4、IL−2、IL−3およびGM−CSFを含む短鎖サイトカインファミリーのメンバーである。これらのタンパク質は、4個のへリックス束トポロジーを取り、そして2もしくは3個のジスルフィド結合を含む。IL−13の溶液構造は決定されており、このファミリーにおける他のタンパク質に対するその類似性を裏付ける(Eisenmesser,E.Z.,et al.J.Mol.Biol.(2001)310:231−241;Moy,F.J.,et al.,J.Mol.Biol.(2001)310:219−230)。IL−13はIL−4と25%の配列同一性を共有するだけであるが、全体的な構造はかなり類似し、そしてIL−13のその受容体との相互作用は、IL−4とその受容体について最近決定されたものと同様であると予想される。実際に、これら2つのサイトカインはそれらの受容体における1個のサブユニットを共有することを考えると、IL−13およびIL−4はIL4Rα1とのそれらの相互作用において構造類似性を共有すると思われる。突然変異研究と一緒になってIL−13の三次元構造は、その受容体と相互作用することにおいて重用な役割を果たすサイトカインの2つの面があることを示す。該モデルは、へリックスAおよびCを含んでなるタンパク質の面が受容体のIL4Rアルファ1サブユニットと相互作用し、そしてヘリックスA〜へリックスDがIL13Rアルファ1サブユニットと相互作用することを示唆する。
IL−13の構造および受容体相互作用モデルに基づき、IL13Rアルファ1とAおよびDへリックスの相互作用を阻止するかもしくはA−C面とIL4Rアルファ1との間の相互作用を阻止する抗体は、抗IL13治療法の優れた候補であり得ると予想される。IL−13の受容体相互作用部分に対して抗体選択を導くために、キメラサイトカイン分子を製造することを提示した。これらのキメラタンパク質において、CおよびDへリックスを連結するループは、免疫に使用する種からの対応する配列で置換される。モデルにおいて、C−Dループは分子の最も表面露出した部分であり、そしてIL−13受容体と相互作用しない。さらに、このループは溶液構造においてかなり柔軟性があり、そしてそれ故に分子の全体的なトポロジーを破壊することなしに突然変異を許容すると思われる。得られるキメラタンパク質において、分子の一部分は宿主にとって自己によく似ているように見え、そしてそれ故に有意な免疫応答を誘導する可能性が低い。しかしながら完全にヒトの配列を保持する分子の部分は、宿主種にとって異種に見え、そして免疫応答を生じると思われる。キメラ免疫原から選択される抗体は、ヒト受容体に基づくアッセイにおいて中和活性を示すと予想される。
ヒト疾患における、特に喘息について、そしてそれによって治療薬としてその阻害の利益を評価するためにIL−13の強力なアンタゴニストの必要性がある。本明細書に記述される新規のIL−13バリアントは、アンタゴニスト抗体の生成を高めるための免疫原として、中和抗体を同定するためのスクリーニングもしくは選択薬剤として、または天然のIL−13の直接アンタゴニストとして有用である。さらに、強力なそして新規のIL−13アゴニストの開発は、細胞表面上にIL−13受容体を過剰発現するある種の癌を標的とするために有用であり得る(Hussain,S.R.and Puri,R.K.,Blood(2000)95:3506−351)。
IL−13の新規のアナログを構築した。これらの化合物は、複数の種からの部分配列を利用するのでヒトIL−13と他の種からのIL−13のキメラと考えることができる。これらの突然変異体は、ヒトIL−13のIL−13配列にある種の配列的に異なる領域からのアミノ酸を導入することにより合理的に設計された。
2つのサイトカイン間の構造相同性に基づいて、IL−13:IL−13R1複合体のモデルを提示した。IL−13のNMRモデル(座標ファイル:1GA3)およびIL−13の配列を用いて、ヒトIL−13アゴニスト、ヒトIL−13アンタゴニストとしてまたは抗ヒトIL−13抗体の生成のための免疫原もしくはバイオパニング要素として有用性を有することが提示されるIL−13のアナログを構築した。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/で入手可能なファイル1GA3は、IL−13の20のNMR構造のオーバーレイを含む。構造の観察により、多数の立体構造により明らかなように、4個のへリックスは高度に保存されるが、NおよびC末端ならびにCとDへリックス間のループは高度に柔軟性があることが示された。ファイルにおける第一の構造を構造および活性の両方を保持する設計されたIL−13突然変異体の分析に使用した。
大部分は埋もれたBへリックスに隣接するCおよびDへリックス間の大きいループがある。このループは、A、CおよびDへリックスから離れているので突然変異を受け入れることができる場所である。Bループはアミノ酸Met43〜Asn53により定義され、そしてCDループはアミノ酸Cys71〜Thr88により定義される。ループの末端は指定するのが難しいが、Glu91でのヘリックスDの始まりにより明確に終わる。大部分の構造において、BへリックスとCDループとの間の相互作用に関与するアミノ酸は:
Figure 0005017097
である。
さらに、この領域に水素結合はなく;Pro72はターンに関与しないが必須であり、そしてTrp35とArg86〜Lys89間のループ残基との間の有意な相互作用がある。
C/Dループと相互作用するBへリックスにおける残基は、Leu48、Leu51およびVal54である。
Ala47はポケットを満たし、そして置換されることができ得る。CDループとBへリックスとの間に水素結合はない。
A/Bループと相互作用するBへリックスにおける残基は、Met43、Ala47およびSer50である。
他の種のIL−13を同定するためにNCBIのBlast検索を行い以下の結果を有した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=Protein):
Figure 0005017097
Vector NTi Suite(InforMax,Inc.,Bethesda,MA)内のClustalWアルゴリズムを用いてヒト、ウシ、ブタ、イヌ、ラットおよびマウスIL−13の配列を示されるように整列させた(図5)。
ヒトと同一ではないアミノ酸に下線をつけてBへリックス配列を以下に示す。BへリックスとCDループとの間の相互作用が相互作用すると予測される残基を表3において星印で示す。
Figure 0005017097
これらのアライメントは、構造的完全性および受容体結合活性を保持しながら、他の種からヒトIL−13のBへリックスおよびC/Dループにおいてアミノ酸を置換することができるいくつかの部位を示唆する。相互作用すると予測されるBへリックスおよびCDループからの残基を用いて、ヒトタンパク質からのCDループ残基が異なる種からの同様な残基で置換されるキメラタンパク質の製造戦略を考案した。タンパク質安定性を維持するために、同じ種のBヘリックスからの対応する相互作用残基を置換することもまた必要であった。ウシ、ブタもしくはマウスIL−13の場合には、他の相互作用残基は全てヒトタンパク質に見出されるものと同一であるので、好ましい態様は1個のアミノ酸のみを変えること、Val54⇒Ile54を必要とする。
設計の追加の態様には、マウスタンパク質からのへリックスBにおける2つの置換が含まれる:Glu49⇒Asp49およびAla46⇒Val46。Tyr44もまたPheで置換されることができ、そしてLeu51はValで置換されることができる。しかしながら、この最後の置換はCへリックスに近く、そしてその構造を不安定にし得る。6つのタンパク質のC/Dループにおける配列を表4に示し、ここで、Bループと相互作用すると予測される残基位置を最後の列に星印で示す。
Figure 0005017097
C/Dループにおいて相同性に基づいて行うことができる多数の好ましい改変がある。これらの置換の多くは、全体的なループ構造に影響を及ぼすと思われないが、しかしながら、ラットおよびマウスIL−13タンパク質におけるArg86⇒Pro置換は、マウスおよびラットタンパク質の3個のアミノ酸の欠失がそうであるように、C/Dループの構造における有意な違いを示す。同様に、ウシ、ブタおよびイヌにおけるVal75⇒Pro突然変異は、有意な立体構造再構成を示唆する。この領域における設計の追加の態様には、C/DループにおけるVal85⇒Leuと一緒にマウスタンパク質のBへリックスにおいて認められるAla46⇒ValおよびGlu49⇒Asp突然変異が包含される。
様々な種のBへリックスおよびC/Dループにおけるアミノ酸をヒト配列における対応するアミノ酸の代わりに用い、そして高最適化でInsightIIを用いて各々について5つのモデルを構築したが、しかしながら他のモデリングプログラムを代用することができる。
イヌモデル:構築された5つモデルは全て、同様のエネルギーのものである。モデルの検証により、それらは全てCDループにおいてだけでなく構造の残りの部分においても全く同様であることが示される。従って、へリックスBおよびCDループにおけるイヌからヒトIL−13への残基の置換は、適当なキメラタンパク質を与えると予想される。
ウシモデル:5つのモデルは全て、同様のエネルギーのものである。3つのモデル全ての81〜85における側鎖の位置のかなりの違いがあるが、バリエーションは20のNMRモデルについて認められるものより有意ではない。CDループにおける余分のプロリンの付加は、立体構造を有意に改変しない。従って、これらの置換は許容しうるキメラをもたらすと予測される。
ブタモデル:5つモデルは全て、同様のエネルギーのものである。ウシモデルでのように、ループにおけるいくつかのアミノ酸の側鎖位置の違いがあるが、有意な主鎖の違いはない。Bへリックスの始まりでのアミノ酸の付加は、十分に受け入れられる。従って、このバリアントは許容しうるキメラであると予測される。
マウスモデル:ループにおける3個のアミノ酸の欠失を有して、5つのモデルは全てヒトモデルとループにおいて有意に異なる立体構造を有する。全て低いエネルギーのものであり;絶対エネルギー比較から、これらのモデルは全てのキメラのうちで最も低いものである。しかしながら、4個のへリックスの全体的なトポロジーは大きく改変されず、そしてこのバリアントは適当なキメラであると予想される。
これらのキメラは全て適当な立体構造を有し、そしてA、CおよびDへリックスにおいて非常に類似する構造を有するはずである。推奨されるキメラの配列は、次のとおりである:
Figure 0005017097
キメラデコイタンパク質は、配列番号:12(ヒト−ウシ)、配列番号:13(ヒト−ブタ)、配列番号:14(ヒト−イヌ)、配列番号:15(ヒト−マウス)として配列表に提供される。キメラタンパク質の1つの用途は、ヒトIL−13に対する機能的中和抗体の選択のためである。
抗体は、抗体ファージディスプレイのような抗体ライブラリースクリーニング/選択技術により回収することができる。別の態様として、これらのキメラIL−13タンパク質は、中和抗体の選択および/もしくはスクリーニングにおいて有用である。1つの用途として、IL−13または1つもしくはそれ以上のこれらのキメラで免疫した動物から回収されるハイブリドーマは、免疫に使用されない1つもしくはそれ以上のキメラへの結合についてスクリーニングすることができ、従って、C/Dループを認識する抗体を回避する。第二の用途として、これらのキメラタンパク質は、組み合わせ抗体ライブラリー、特にファージディスプレイライブラリーの選択およびスクリーニングのために異なる組み合わせで用いることができる。本明細書に記述される設計考慮事項に基づき、選択もしくはスクリーニングは、C/Dループを認識する抗体の同定を抑制する。従って、両方の用途は、中和抗体、特に種バリアントおよび構築されたキメラタンパク質において完全に保存されるA、CおよびDへリックスを認識するものの単離を容易にすると予想される。
これらの突然変異体の第二の用途は、ヒトIL−13に対するアンタゴニストとしてである。IL−13は、2つの受容体サブユニットに結合することが既知である。分子のこれら2つの領域における非ヒトアミノ酸により導入されるヒトIL−13からの構造のわずかな変化は、いずれかの受容体サブユニットへの結合へのアロステリック効果を有することができる。受容体サブユニット結合の選択的阻害により、競合アンタゴニストが作製される。
[実施例3] NMRデータを用いるデコイタンパク質を設計するための計算
本発明は、核磁気共鳴(NMR)を用いるタンパク質上のエピトープの同定のための新技術を記述する。NMRは、それらの局所環境に基づいて、特定の原子(一般にH1、C13およびN15)、従ってアミノ酸残基を同定する技術である。炭素および窒素NMRスペクトルはプロトンスペクトルより複雑でないが、必要とされる核の天然存在量は感度を限定し得る。巨大タンパク質では、同様の環境における原子間のスペクトルのかなりの量の重複があり得る。大部分のもしくは全ての共鳴の完全な帰属は、十分な時間および十分に高い解像度の機器が与えられれば巨大タンパク質について行うことができる。
抗体が抗原に結合すると、いくつかのアミノ酸の局所環境が改変される。最高の変化を受けることができるアミノ酸は、抗体接触と最も関連するものである。戦略は、結合および非結合状態における抗原および抗体の両方について全てのNMR帰属を行いそしてどのアミノ酸がシフトした原子を有するかを決定することによりエピトープを同定することである。抗原−抗体複合体のNMRスペクトルの複雑さは、そのような分析を現在の装置および方法では不可能でないにしても非常に困難にし、そして日常的なエピトープ同定に適用できない。
タンパク質エピトープは、C13もしくはN15アミノ酸のいずれかを富化したタンパク質を用いて同定することができ、ここで、NMRシグナルの正確な同定は必ずしも必要とされない。これらのエピトープは、抗体のもしくは受容体の結合領域のいずれかであることができる。
組み換え技術を用いて、単一のアミノ酸がそのN15もしくはC13標識対応物で置換されているタンパク質を培地において発現させる。生成されるタンパク質は、その非標識対応物と同一の構造および活性を有する。次に、N15もしくはC13 NMRスペクトルを結合抗体の存在下および不在下の両方でタンパク質に実施する。非標識アミノ酸の共鳴核の低い天然存在量は、アミノ酸が均一にもしくは特異的に標識されたかどうかにより分離スペクトルがN15スペクトルについてシングレットそしてC13についてシングレットもしくは単純パターンを示すようにスペクトルを簡略化する。標識アミノ酸が抗体との結合に関与する場合には、共鳴のシフトが見られる。一例として、200アミノ酸のタンパク質が10個のN15標識アラニンを含有する場合、10個のシングレットがN15スペクトルにおいて見られる。抗体に結合した場合に、これらのうち2個がシフトされたならば、それはそれらの局所環境が改変されたためである。このことから、エピトープにおけるそれらの位置を推測することができる。配列における2個のアラニンの特定の位置は、この単一スペクトルからは分からない。該方法が毎回標識される異なるアミノ酸で20回繰り返されると、エピトープの組成が分かる。タンパク質は組み換えで製造されているので、配列は既知である。エピトープ組成およびタンパク質配列から、エピトープの位置を決定することができる。タンパク質上の表面露出配列を予測する分子モデリングもしくはアルゴリズムは、エピトープ同定を助けることができる。
20種の標識タンパク質を製造することは必須である必要はない。異なるアミノ酸の共鳴が十分に異なる多重ラベリング(2つもしくはそれ以上の異なるアミノ酸を同じタンパク質において標識する)を用いることができる。例えば、a−N15アラニンおよびe−N15リシンは、3−N15ヒスチジンおよびa−N15ロイシンのように1つのタンパク質に導入することができる。
この技術は、エピトープ同定のための現在の方法より優れたいくつかの利点を与える。合成ペプチド(ピン、スポットもしくは溶液およびELISAもしくは競合)もしくはファージを用いる方法は、立体構造エピトープを見逃す可能性がある。このNMR方法は、完全なタンパク質を用いるので、直線状エピトープと同様に容易に立体構造エピトープを検出する。スポット合成のバリエーション(例えば、ペプチドのマトリックス)は、立体構造エピトープを同定することにおいてより優れていると請求されるが、必要とされるペプチドの数は、約2百万個のペプチドが分子量40kDのタンパク質に必要とされる程度までタンパク質におけるアミノ酸の数とともに指数的に増加する。タンパク質分解は、質量分析と組み合わせて、ある立体構造エピトープを同定することができるが、該技術はタンパク質に対して破壊的であり、そして分子量が増加するにつれてますますより多量のタンパク質が質量分析に必要とされる。NMR法は、非破壊的である。標識タンパク質が不足している場合、それを各実験後に回収し、そして別の抗体をマッピングするために再使用することができる。タンパク質の点突然変異もしくは「アラニン走査」は、直線状および立体構造エピトープの両方の同定にうまく機能することができるが、問題は、各タンパク質が発現のためにそれ自体のDNAを必要とし、全ての点突然変異が分泌されるとは限らず、そしてタンパク質が正しくフォールディングされることを各突然変異について決定しなければならないことである。NMR法は、全ての標識タンパク質に同じDNAを使用し、そして標識タンパク質は非標識タンパク質と同じように分泌しそしてフォールディングする。結晶学は、エピトープ同定のための「標準」である。その欠点は、関与する多量の時間、必要とされ得るタンパク質の量、回折グレードの結晶を成長させることの難しさおよび同じ抗原に対する各抗体が新しいタンパク質および新しい結晶を必要とすることである。
[実施例4] 結晶構造を用いるキメラデコイタンパク質の設計
IL−4および近いアナログ、IL−13の結晶構造に基づき、特定の受容体結合ドメインを抗体標的として選択した。両方のタンパク質のこの領域への結合物の選択のためにキメラタンパク質を設計した。
IL−4の結晶構造は解明されている。IL−13の結晶構造は決定されていないが、理論分子モデルは構築されている。IL−4およびIL−13は両方とも、それらの生物学的機能に基づき治療的に重要なタンパク質である。IL−4は自己免疫疾患を抑制できることが示されており、そしてIL−4、IL−13は両方とも抗腫瘍免疫応答を高める能力が示されている。一方、両方のサイトカインはアレルギー性疾患の病因に関与しているので、これらのサイトカインの拮抗作用は、アレルギーおよびアレルギー性喘息に治療利益を与える。
いくつかの突然変異体タンパク質(例えば、IL−4 Y124DアンタゴニストおよびIL−13 R112Dアゴニスト、J.Biol.Chem(2000),275,14375−14380)は、文献に記述されている。分子モデリングを用いて、IL−4およびIL−13の以下の新規アゴニスト突然変異体を設計した。それらは天然のタンパク質より構造的に安定であると予測されるので、それらはサイトカイン受容体への生物学的により強力な結合物でありそして抗腫瘍薬として可能性を有すると予想される。第二に、これらのタンパク質は、溶液相パニング方法の天然のサイトカインの安定なアナログとしてそしてドメイン選択的結合剤、例えば受容体結合ドメインアンタゴニストを見出す目的で使用することができる。
分子モデリング、IL−4の結晶構造およびBrookhaven Crystallographic DatabaseからのIL−13の理論モデルを用いて、IL−4およびIL−13の構造を調べた。構造に悪影響を及ぼすと予想されない置換を行うことができる構造の内部のいくつかのアミノ酸が同定された。実際に、エネルギー計算は、これらの構造が天然配列より実際に安定であり得ることを示唆する。IL−4について行われた置換は、Thr13⇒Ser13、Thr22⇒Ser22、Phe45⇒Tyr45、Phe55⇒Tyr55、そしてIL−13についてはIle48⇒Val48、Gln90⇒Glu90、Leu95⇒Ile95、Leu96⇒Ile96、Leu99⇒Ile99、Phe103⇒Tyr103であった。
露出アミノ酸の計算を含有するIL−4についてのデータベースを作製した(図6Aおよび6B)。第一列は側鎖のみについてのデータを含有し、そして第二列は側鎖および主鎖の両方についてのデータを含有する。ほとんどもしくは全く表面露出領域を有さないアミノ酸をボールド体/青色で示す。
構造を損なうことなしに置換することができないので、埋もれた残基を表から抜き出し、そしてシステインを除いた。可能な置換の結果を以下に計算する:
Figure 0005017097
IL−4の構造は、Tripos力場(force field)およびKollman−Uni電荷(charge)を用いて全ての水素で、100サイクルの共役勾配、誘電性(dielectric)100で極小化した。次に、上記に提示する単一の改変を行い、そしてエネルギーを計算した。これらの計算に基づき、最も良い置換はThr13の代わりのSer、Thr22の代わりのSer、Phe45の代わりのTyrそしてPhe55の代わりのTyrである。
IL−4の結晶構造を再現し、極小化の前にエネルギーを計算し、上記の4つの置換を行い、そしてエネルギーを再計算して以下の結果を有した:
Figure 0005017097
ねじれエネルギー、1−4ファンデルワールスおよびファンデルワールスエネルギーの減少がある。エネルギー計算に基づき、この構造は天然配列より安定であると予測される。改変されるアミノ酸は分子の内部であるが、置換は二次構造を乱さないそれらの能力について評価されたので、表面トポロジーおよびそれ故に機能活性は改変されないはずである。
同様の表をIL−13について構築した(図7Aおよび7B)。結晶構造は公開されていないが、理論モデルは利用可能である。10サイクルの極小化を最初の構造および改変されたものの両方に行った。
改変することができる内部残基。
Figure 0005017097
Phe66の代わりのTyrは高いエネルギーを有するが、それは良い置換のように見える。より高いエネルギーは、ヒドロキシルのより高いファンデルワールス相互作用のためである。
Phe66およびHis69は相互作用する(π−π)。両方とも芳香族のままでなければならない。
Val92の代わりのIle置換は高いエネルギーを与えるが、少量の極小化はそれを大幅に減少する。それはおそらく許容しうる置換である。
Phe103の代わりのTyrは、His69との追加の水素結合を加え、そして良い置換である。
IL−13の構造を再現し、エネルギーを計算し、置換を行い、そしてエネルギーを再計算して以下の結果を与えた:
Figure 0005017097
結合伸縮エネルギー、角度曲げエネルギー、1−4ファンデルワールスおよびファンデルワールスエネルギーの減少がねじれエネルギーおよび結合伸縮エネルギーの増加とともにある。これらの後者の相互作用は、新たに置かれたIle側鎖の再配置により減らすことができる。
Figure 0005017097
Figure 0005017097
Figure 0005017097
分子モデリング、IL−4の結晶構造およびBrookhaven Crystallographic DatabaseからのIL−13の理論モデルを用いて、IL−4およびIL−13の構造を調べた。構造に悪影響を及ぼすと予想されない置換を行うことができる構造の内部のいくつかのアミノ酸を同定した。実際に、エネルギー計算は、これらの構造が天然配列より実際に安定であり得ることを示唆する。IL−4について行われた置換は、Thr13⇒Ser13、Thr22⇒Ser22、Phe45⇒Tyr45、Phe55⇒Tyr55、そしてIL−13については、Ile48⇒Val48、Gln90⇒Glu90、Leu95⇒Ile95、Leu96⇒Ile96、Leu99⇒Ile99、Phe103⇒Tyr103であった。
完全な配列は、下記のとおりである:
Figure 0005017097
ここで、下線を付けたアミノ酸は、置換を示す。
わずかな極小化後の改変された構造のより低いエネルギーは、この構造が親配列より安定であることを示唆する。これらの構築物および同様にして製造される他のものは、本発明の方法において用いることができる。
本発明の方法の図解である。 リード候補mTF結合FabのCDR配列およびフレームワーク帰属を示す。 標的タンパク質への(mTF、実線)そしてあらかじめ選択したエピトープに2個のアミノ酸改変を有する設計したデコイへの(hu/mTF、破線)本発明の方法により選択されるFabの結合の濃度依存性のグラフである。 マウス組織因子に結合する2つの選択されたFabについて濃度対相対蛍光単位を示すグラフである。 様々な種由来のIL−13タンパク質の多重配列アライメントである。 結晶学的データから得られるhIL−4のエネルギーおよび領域ディメンション(area dimensions)である。 IL−4由来の結晶学的データから計算されるhIL−13のエネルギーおよび領域ディメンションである。

Claims (6)

  1. a)ファージ粒子の表面上にポリペプチドを発現するファージ粒子のライブラリーを準備する段階、
    b)標的タンパク質のあらかじめ選択したエピトープに対応する標的タンパク質の5〜15の直線状セグメント内のアミノ酸配列において5〜10改変を有するデコイタンパク質を製造する段階、
    c)標的タンパク質に結合するポリペプチドを有するファージ粒子を選択するためにファージ粒子のライブラリーを標的タンパク質と共にインキュベーションする段階、
    d)あらかじめ選択したエピトープに特異的なファージ粒子について陰性選択するためにモル過剰濃度で競合相手としてデコイタンパク質を加える段階、
    e)標的タンパク質に結合するファージ粒子をデコイタンパク質に結合するファージ粒子から分離する段階、および
    f)標的タンパク質に結合したファージ粒子を回収する段階
    を含んでなる、標的タンパク質のあらかじめ選択したエピトープに結合するポリペプチドの同定方法。
  2. 請求項1記載の方法であって、標的タンパク質に結合する結合物を除外する前に試験用のライブラリーから結合物のサブセットを選択するためにデコイを使用することを特徴とする、方法。
  3. 請求項1記載の方法であって、デコイに結合する結合物を除外する前にライブラリーから結合物のサブセットを選択するために標的タンパク質を使用することを特徴とする、方法。
  4. 請求項1記載の方法であって、あらかじめ選択したエピトープに結合するポリペプチドが抗体または抗体フラグメントであることを特徴とする、方法。
  5. 請求項4記載の方法であって、ポリぺプチドがFab、Fab’もしくはF(ab’)2フラグメントをまたはその誘導体を含む抗体フラグメントであることを特徴とする、方法。
  6. 請求項4記載の方法であって、抗体がTF8−5Gと称されるマウス抗ヒト組織因子と同じように、マウス組織因子上の類似のエピトープに結合する代替抗体であることを特徴とする、方法。
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