JP5012318B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は基板などの処理対象物をプラズマ処理するプラズマ処理装置に関するものである。
電子部品が実装される基板などの処理対象物のクリーニングやエッチングなどの表面処理方法として、プラズマ処理が知られている。プラズマ処理においては、処理対象の基板を処理室を形成する真空チャンバ内に載置し、処理室内でプラズマ放電を発生させ、この結果発生したイオンや電子を基板の表面に作用させることにより、所望の表面処理が行われる。このプラズマ処理を良好な処理品質で安定して行うためには、予め処理目的に則して設定された放電条件に応じてプラズマ放電が正しく発生していることが前提となるため、従来よりプラズマ放電の発生状態を監視することを目的として各種の手段・方法が用いられている。
例えば、何らかの要因によるプラズマ放電の変化が高周波電源部の電圧や電流に及ぼす影響を検出する方法や、プラズマ放電によって電極間に生じるセルフバイアス電圧を検出することにより放電状態を推測する方法などが知られている。ところがこれらの方法には、低出力条件でプラズマ放電を発生させる必要がある場合には検出精度が低く、放電状態を正確に検出することが難しいという欠点があるため、プラズマ放電の状態変化を直接的に検出可能な方法が用いられるようになっている(例えば特許文献1参照)。この方法は、処理室が設けられた真空チャンバに電位検出用のプローブ電極を備えた放電検出センサを装着し、プローブ電極にプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を検出することにより、処理室内における異常放電の有無を検出するようにしている。
特開2003−318115号公報
この方法は処理室内において発生するプラズマ放電の状態変化を感度良く検出することができるため、高周波電源部の出力が低出力である場合においても、プラズマ放電の有無や放電異常を正しく監視することが原理的に可能である。しかしながら、上述の特許文献例にはプラズマ放電の有無や放電異常の監視や真空チャンバのメンテナンスの要否の判定などを含めた運転状態の監視を高精度で行うために必要な具体的適用例が明確に開示されておらず、実際のプラズマ装置を対象とした新たな応用技術の開発が望まれていた。
そこで本発明は、プラズマ放電の有無や放電異常の監視や真空チャンバのメンテナンスの要否の判定などを含めた運転状態の監視を高精度で行うことができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
本発明のプラズマ処理装置は、処理対象物を処理室内に収容してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記処理室を形成する真空チャンバと、前記処理室内に配置された電極部と、前記処理室内を真空排気する真空排気部と、前記処理室内にプラズマ発生用ガスを供給するガス供給部と、前記電極部に高周波電圧を印加することにより前記処理室内でプラズマ放電を発生させる高周波電源部と、前記処理室内におけるプラズマ放電状態を監視するプラズマ放電状態監視手段とを備え、前記プラズマ放電状態監視手段は、一方の面を前記処理室内に発生したプラズマ放電に対向するように前記真空チャンバに装着された板状の誘電体部材およびこの誘電体部材の他方の面に配置されたプローブ電極を少なくとも有する放電検出センサと、前記プローブ電極に前記プラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信し、所定の条件に合致した電位変化の出現毎に検出信号を出力する複数の波形検出部と、前記複数の波形検出部のそれぞれに対応し、対応する波形検出部から出力された前記検出信号をカウントしてカウント値を保持する複数のカウンタと、前記カウント値に基づいて運転状態を判定する判定部とを備え、前記複数の波形検出部は、異常放電ならびに前記処理室内に付着堆積する異物による絶縁性の低下に起因して高周波電圧が印加される部分と接地電位の部分との間に生じる放電であるリーク放電を検出するために予め正負両側に設定されたしきい値レベルを有し、検出された電位変化が異常放電によって前記しきい値レベルの何れにも到達し且つ電位が正負両側に振れた後に定常値に戻るN字状の波形パターンを呈するN型の電位変化波形を検出して検出信号を出力するN型波形検出部と、検出された電位変化が前記リーク放電によって前記しきい値レベルに負側においてのみ到達し且つ電位が負側にのみ振れた後に定常値に戻るV字状の波形パターンを呈するV型の電位変化波形を検出して検出信号を出力するV型波形検出部とを含む。
本発明によれば、処理室内におけるプラズマ放電状態を監視するプラズマ放電状態監視手段として、真空チャンバに装着された板状の誘電体部材およびこの誘電体部材の他方の面に配置されたプローブ電極を少なくとも有する放電検出センサと、プローブ電極にプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信し、それぞれ異なる所定の条件に合致した電位変化の出現毎に検出信号を出力する複数の波形検出部と、複数の波形検出部のそれぞれに対応し、対応する波形検出部から出力された検出信号をカウントしてカウント値を保持する複数のカウンタを備え、これらのカウント値に基づいて運転状態を判定することにより、プラズマ放電の有無や放電異常の監視や真空チャンバのメンテナンスの要否の判定などを含めた運転状態の監視を高精度で行うことができる。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1のプラズマ処理装置の断面図、図2は本発明の実施の形態1のプラズマ処理装置に用いられる放電検出センサの構成説明図、図3は本発明の実施の形態1のプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態監視装置の構成を示すブロック図、図4は本発明の実施の形態1のプラズマ放電状態監視方法における電位変化波形および波形監視時間帯の説明図、図5は本発明の実施の形態1のプラズマ放電状態監視方法における放電状態判定処理の処理フロー図、図6は本発明の実施の形態1のプラズマ放電状態監視方法におけるメンテナンス判定処理の処理フロー図である。
まず図1を参照してプラズマ処理装置の構造を説明する。図1において、真空チャンバ3は、水平なベース部1上に、蓋部2を昇降手段(図示省略)によって昇降自在に配設して構成されている。蓋部2が下降してベース部1の上面にシール部材4を介して当接した状態では真空チャンバ3は閉状態となり、ベース部1と蓋部2で囲まれる密閉空間は、処理対象物を収容しプラズマ処理を行う処理室3aを形成する。処理室3aには電極部5が配置されており、電極部5はベース部1に設けられた開口部1aに下方から絶縁部材6を介して装着されている。電極部5の上面には絶縁体7が装着されており、処理対象物である基板9は絶縁体7の上面にガイド部材8によって両側端部をガイドされて基板搬送方向(紙面垂直方向)に搬入される。
ベース部1に設けられた開孔1bには、管路11を介してベントバルブ12,真空計15,ガス供給バルブ13および真空バルブ14が接続されている。さらにガス供給バルブ13、真空バルブ14はそれぞれガス供給部16、真空ポンプ17と接続されている。真空ポンプ17を駆動した状態で真空バルブ14を開にすることにより、処理室3a内が真空排気される。このときの真空度は、真空計15によって検出される。真空バルブ14および真空ポンプ17は、処理室3a内を真空排気する真空排気部を構成する。またガス供給バルブ13を開状態にすることにより、ガス供給部16からプラズマ発生用ガスが処理室3a内に供給される。ガス供給部16は流量調整機能を内蔵しており、任意の供給量のプラズマ発生用ガスを処理室3a内に供給することができる。そしてベントバルブ12を開にすることにより、真空破壊時に処理室3a内に大気が導入される。
電極部5には整合器18を介して高周波電源部19が電気的に接続されている。処理室3a内の真空排気してガスを供給した状態で高周波電源部19を駆動することにより、電極部5には接地部10に接地された蓋部2との間に高周波電圧が印加され、これにより処理室3a内にはプラズマ放電が発生する。
蓋部2の側面には、真空チャンバ3の外部から処理室3aの内部を視認するためののぞき窓として機能する円形の開口部2aが設けられている。開口部2aには、誘電体部材21、プローブ電極ユニット22よりなる放電検出センサ23が、支持部材24によって蓋部2の外側から固定されている。ここで図2を参照して、放電検出センサ23の構成を説明する。蓋部2に設けられた開口部2aには、光学的に透明なガラスで製作された誘電体部材21が装着されている。処理室3aの内部では、電極部5と蓋部2との間にプラズマ放電が発生しており、誘電体部材21は一方の面が処理室3a内に発生したプラズマ放電に対向する姿勢で真空チャンバ3に設けられた開口部2aに装着されている。
誘電体部材21の他方の面、すなわち真空チャンバ3の外側向の面には、プローブ電極ユニット22が装着されている。プローブ電極ユニット22は、ガラス板22aの一方の面にプローブ電極22bを形成し、他方の面にシールド電極22cを形成した一体部品であり、プローブ電極ユニット22を誘電体部材21に装着して放電検出センサ23を形成する際には、プローブ電極22bを誘電体部材21の外面(他方の面)に密着させた状態で、導電性金属よりなる支持部材24によって蓋部2に支持されている。すなわち放電検出センサ23は、一方の面を処理室3a内に発生したプラズマ放電に対向するように真空チャンバ3に装着された板状の誘電体部材21およびこの誘電体部材21の他方の面に配置されたプローブ電極22bを少なくとも有する構成となっている。プローブ電極22bは、検出導線22dを介してプラズマ監視装置20に接続されている。
処理室3aの内部においてプラズマ放電が発生した状態では、プローブ電極22bは、誘電体部材21および処理室3a内で発生したプラズマPと誘電体部材21との界面に形成される空間電荷層であるシースSを介して、プラズマPと電気的に接続された状態となる。すなわち、図2に示すように、誘電体部材21によって形成されるコンデンサC1およびシースSに相当する容量のコンデンサC2およびプラズマPの有する抵抗Rを直列に接続した電気的な回路が形成され、プローブ電極22bにはプラズマPの状態に応じた電位が誘起される。本実施の形態においては、プローブ電極22bの電位を検出導線22dによってプラズマ監視装置20に導き、プラズマPの状態に応じた電位変化をプラズマ監視装置20によって監視することにより、処理室3a内におけるプラズマ放電状態の監視を行うようにしている。
すなわち処理室3aの内部において、電極部5上に載置された基板9の周辺で異常放電などが発生すると、処理室3a内部のプラズマPの状態が変動する。この変動は上述の回路のインピーダンスを変化させることから、プローブ電極22bの電位変化として検出される。この電位変化の検出は極めて高感度であり、従来方法ではほとんど検知し得なかったような微弱な変動でも正確に検出することができるという特徴を有している。シールド電極22cはプローブ電極22bの外面側を電気的にシールドする機能を有しており、シールド電極22cに生じた電荷は接地された蓋部2に導電性の支持部材24を介して逃がされる。これにより、プローブ電極22bに誘発される電位変化に対するノイズが低減される。
本実施の形態においては、プローブ電極22b、シールド電極22cは、いずれもガラス板22aの表面にITOなどの透明な導電性物質を膜状にコーティングすることにより
形成される。これにより、放電検出センサ23を開口部2aに装着した状態において、蓋部2の外側から開口部2aを介して処理室3a内部を視認できるようになっている。すなわち、本実施の形態に示す放電検出センサ23においては、誘電体部材21が真空チャンバ3の外部から処理室3a内を視認するための開口部2a(のぞき窓)に装着された光学的に透明なガラスから成り、プローブ電極22bが光学的に透明な導電性物質から成る構成を用いている。
このような構成により、処理室3aの内部を視認するのぞき窓と、プラズマ放電状態を監視するためのプローブ電極22bとを兼用させることができる。また誘電体部材21は処理室3a内のプラズマPに露呈されていることから表面の損耗が生じ、所定のインターバルで交換する必要がある。この場合においても、プローブ電極ユニット22と誘電体部材21とは別部品となっているため、消耗部品としての誘電体部材21のみを交換すればよく、プローブ電極ユニット22は交換する必要がない。
プラズマ処理装置は全体の動作制御を行う制御部25を備えている。制御部25が、ベントバルブ12、ガス供給バルブ13,真空バルブ14,真空計15,ガス供給部16、真空ポンプ17、高周波電源部19を制御することにより、プラズマ処理に必要な各動作が実行される。また制御部25はプラズマ監視装置20を制御するとともに、プラズマ監視装置20による検出結果を受信して必要な制御処理を行う機能を有する。制御部25は操作・入力部26および表示部27を備えており、操作・入力部26はプラズマ処理動作実行時の各種操作入力やデータ入力を行う。表示部27は操作・入力部26による入力時の操作画面の表示の他、制御部25がプラズマ監視装置20の検出結果に基づいて判定した判定結果の表示を行う。
次に図3を参照して、プラズマ監視装置20、制御部25の構成および機能を説明する。図3において、プラズマ監視装置20は、AMP(増幅装置)31、A/D変換器32、波形データ一時記憶部33、N型波形検出部34、V型波形検出部35、放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38およびリーク放電波形カウンタ39を備えている。AMP31は、検出導線22dを介して伝達されるプローブ電極22bの電位変化を増幅する。A/D変換器32は、AMP31により増幅された電位変化信号をAD変換する。A/D変換器32によってAD変換された電圧変位信号、すなわち電圧変化を示すデジタル信号は、波形データ一時記憶部33,N型波形検出部34、V型波形検出部35に送られる。
波形データ一時記憶部33は受信した電位変化の状態を示すデジタル信号を、波形データとして一時的に記憶する。N型波形検出部34は、受信したデジタル信号を波形として認識し、認識された波形を予め設定された所定の条件と比較して波形の中からN字状の波形パターンを有するN型波形を検出し、N型波形を検出したならば検出の度に検出信号を出力する。V型波形検出部35は、同様に受信したデジタル信号を波形として認識し、認識された波形を予め設定された所定の条件と比較して波形の中からV字状の波形パターンを有するV型波形を検出し、V型波形を検出したならば検出の度に検出信号を出力する。すなわちN型波形検出部34、V型波形検出部35は、プローブ電極22bにプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信して、所定の波形を検出する複数の波形検出部であり、いずれも所定の条件に合致した電位変化の出現毎に検出信号を出力する機能を有している。そしてN型波形検出部34、V型波形検出部35においては、波形検出のために設定される所定の条件が、以下に説明するように、検出対象とする波形パターンに応じて異なっている。
ここで、このプラズマ処理装置の運転時に放電検出センサ23によって電位変化を受信することにより検出される波形の波形パターンと、プラズマ処理装置の運転に伴って処理
室3a内で生じる不正常放電の種類について、図4を参照して説明する。図4(a)は、プラズマ処理装置の運転開始から運転終了に至るまでの過程において検出される波形パターンおよびこれらの波形パターンを検出するために予め設定された所定時間(第1の所定時間Ta、第2の所定時間Tb、第3の所定時間Tc)を示すものである。
図4(b)に示すタイムチャートは、これらの所定時間が割り当てられた複数の波形監視時間帯の設定タイミングを、高周波電源部19による高周波電源印加開始、終了のタイミングと関連付けて示すものである。ここで波形監視時間帯とは、検出される波形を監視してカウントする時間帯を波形種別毎に特定するために設定するものであり、本実施の形態においては、以下に説明する最初の波形監視時間帯[A]、中間の波形監視時間帯[B]および最後の波形監視時間帯[C]の3つの時間帯が、上述の所定時間と関連付けて設定される。
まず、図4(a)に示す第1の所定時間Ta、第3の所定時間Tcは、高周波電源の印加開始および印加終了に伴って出現する波形を検出するための最初の波形監視時間帯[A]および最後の波形監視時間帯[C]にそれぞれ割り当てられた所定時間である。最初の波形監視時間帯[A]は、高周波電源部19による高周波電圧の印加開始タイミング(図4(b)のタイムチャートにおいてRFonを示すタイミングt1参照)を含んで、すなわちタイミングt1から余裕時間tΔ1だけ遡及したタイミングを起点として、確実にこれらの波形が検出可能と考えられる長さに設定された第1の所定時間Taが経過するまでの時間帯である。また最後の波形監視時間帯[C]は、高周波電源部19による高周波電圧の印加終了タイミング(図4(b)のタイムチャートにおいてRFoffを示すタイミングt2参照)を含んで、すなわちタイミングt2から余裕時間tΔ2だけ遅延したタイミングを起点として、確実にこれらの波形が検出可能と考えられる長さに設定された第3の所定時間Tcだけ遡及した時間帯である。
最初の波形監視時間帯[A]および最後の波形監視時間帯[C]においては、高周波電源の印加開始および印加終了によるプラズマ放電状態の変化に特有の波形パターン、すなわち図4(a)に示すように、電位が正負両側に振れた後に定常値に戻るN字状の波形パターンを呈するN型の電位変化波形パターン(N1型波形WN1)が検出される。この波形の検出は、所定の条件、すなわち検出された電位変化が、予め正負両側に設定されたしきい値レベル±Vthのいずれにも到達しているという条件に合致していることを確認することによって行われる。
最初の波形監視時間帯[A]および最後の波形監視時間帯[C]に挟まれた時間帯、すなわち第2の所定時間tbを含んで設定された中間の波形監視時間帯[B]は、通常の運転継続中に相当する時間帯である。ここでは上述の高周波電源の印加開始および印加終了におけるいわば正常な状態変化に伴う電位変化波形以外の、不正常な現象に起因する電位変化波形の出現が監視される。すなわち図4(a)に示すように、中間の波形監視時間帯[B]においては、異常放電およびリーク放電に起因して出現する波形が監視の対象となる。
異常放電とは、電極部5上に載置された基板9と電極部5との間に生じる不正常な放電であり、基板9に反り変形があって電極部5上に載置した状態において基板9と絶縁体7との間に隙間が生じている場合などに生じる。この場合には、プローブ電極22bの電位変化を経時的に示す電位変化波形は、図4(a)に示すように、電位が正負両側に大きく振れた後に定常値に戻るN字状の波形パターンを呈するN型の電位変化波形パターン(N2型波形WN2)のとなる。この波形の検出も同様に、前述の所定の条件に合致していることを確認することにより行われる。
このようなN1型波形WN1,N2型波形WN2のようなN型の電位変化波形は、専らN型波形検出部34によって検出される。すなわち、N型波形検出部34は、プローブ電極22bにプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信して、上述の異常放電に起因して生じる特定パターンの電位変化を検出する第1の波形検出部であり、前述の所定の条件に合致するN型の電位変化波形を検出し、検出信号を以下に説明する放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38に対して出力する。
なお前述の最初の波形監視時間帯[A]および最後の波形監視時間帯[C]で検出されるN1型波形WN1と異常放電に起因するN2型波形WN2とは、同様にN型の電位変化波形パターンに属するが、発生原因が異なるため振れ幅に大きな差異がある。本実施の形態1においては、このように振れ幅の異なるN型波形を同一のN型波形検出部34によって検出するようにしている。
次にリーク放電について説明する。リーク放電とは、処理室3a内において電極部5やガイド部材8など高周波電圧が印加される部分と、周囲の接地電位の部分との間に生じる微細な放電である。このようなリーク放電は、基板9の搬送をガイドするガイド部材8や開口部1aなどに、プラズマ処理の実行によって発生した異物が付着堆積することによる絶縁性の低下に起因して生じる。特にガイド部材8の側面や開口部1aの内側面など、上方からのプラズマの直射による付着異物の再除去効果が及びにくい部分には、プラズマ処理のスパッタリング作用によってワークから除去された樹脂や金属の微細粒子が付着堆積しやすい。この結果これらの部位において絶縁性が低下して、接地されたベース部材1との間でリーク放電が発生する。
この場合には、リーク放電が処理室3a内のプラズマ放電状態に及ぼす乱れが小さいため、プローブ電極22bの電位変化を経時的に示す電位変化波形は、図4(a)に示すV型波形WVのように、電位が負側にのみ振れた後に定常値に戻るV字状の波形パターンを呈するV型の電位変化波形パターンとなる。このV型波形の検出は、検出された電位変化が予め正負両側に設定されたしきい値レベル±Vthに、負側においてのみ到達していることを確認することにより行われる。
このV型の電位変化波形は、専らV型波形検出部35によって検出される。すなわち、V型波形検出部35は、同様にプローブ電極22bにプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信して、上述のリーク放電に起因して生じる特定パターンの電位変化波形を検出する第2の波形検出部であり、所定の条件に合致する上述のV型の電位変化波形を検出し、検出信号をリーク放電波形カウンタ39に対して出力する。
すなわちN型波形検出部34、V型波形検出部35がそれぞれの検出対象となる特定パターンの波形を検出したならば、N型波形検出部34、V型波形検出部35は、それぞれ以下に説明するカウンタ放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38およびリーク放電波形カウンタ39に特定パターンの波形を検出した旨の検出信号を出力する。放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38およびリーク放電波形カウンタ39は、複数の波形検出部(N型波形検出部34、V型波形検出部35)のそれぞれに対応し、対応する波形検出部から出力された検出信号をカウントして、カウント値を保持する複数のカウンタとなっている。
まずN型波形検出部34からの検出信号をカウントの対象とする放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38について説明する。放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38は、N
型波形検出部34から出力された検出信号をカウントしてカウント値を保持する複数のカウンタ(第1のカウンタ)となっており、これらの複数のカウンタは、N型波形検出部34がN型波形を検出した回数を記録する。
前述のようにN型波形検出部34からの検出信号を上述の複数(ここでは3つ)のカウンタでカウントすべき波形監視時間帯はそれぞれのカウンタについて予め定められており、それぞれの波形監視時間帯に対応する3つのカウンタを有する形態となっている。これらの波形監視時間帯は、図4(b)に示すように、プラズマ処理装置における電極部5への高周波電圧の印加開始タイミング、すなわち高周波電源部19の駆動on/offのタイミングと関連付けられて予め設定されている。
すなわち、放電ON波形カウンタ36は、高周波電圧の印加開始タイミングを含んで設定された最初の波形監視時間帯[A]において、図4(a)に示すN1型波形WN1の検出信号をカウントしてカウント値を保持する。また放電OFF波形カウンタ37は、高周波電圧の印加終了タイミングを含んで設定された最後の波形監視時間帯[C]において、図4(a)に示すN1型波形WN1の検出信号をカウントしてカウント値を保持する。さらに異常放電波形カウンタ38は、最初の波形監視時間帯[A]と最後の波形監視時間帯[C]とに挟まれた時間帯(第2の所定時間Tb)を含んで設定された中間の波形監視時間帯[B]において、図4(a)に示すN2型波形WN2の検出信号をカウントしてカウント値を保持する。そしてリーク放電波形カウンタ39は、第2の波形検出部であるV型波形検出部35による電位変化波形の検出回数をカウントしてカウント値を保持する処理を行うカウント部であり、V型波形検出部35がV型波形WVを検出した回数を記憶する第2のカウンタとなっている。
制御部25は、カウンタ制御部41、波形データ記憶部42、放電状態判定部43、メンテナンス判定部44を備えている。カウンタ制御部41は、予め設定された波形監視時間帯に対応したタイミングだけ検出信号のカウントを行うように、複数のカウンタ(放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38)を制御する。すなわち、カウンタ制御部41は3つのカウンタ制御チャンネルA,B,Cによって、接続ポート40を介して放電ON波形カウンタ36、異常放電波形カウンタ38、放電OFF波形カウンタ37と接続されている。
カウンタ制御部41がこれらのカウンタを制御することにより、図4(b)に示すように、それぞれのカウンタは当該カウンタに割り当てられた波形検出時間帯のみを検出タイミングとして、N型波形検出部34、V型波形検出部35からの検出信号をカウントする。これにより、N型波形検出部34、V型波形検出部35によって検出された多くの波形データのうち、判定に有意なタイミングに出現した波形のみをカウントすることができる。なおカウンタ制御チャンネルA,B,Cは、それぞれ最初の波形監視時間帯[A]、中間の波形監視時間帯[B]および最後の波形監視時間帯[C]と対応している。
波形データ記憶部42は、波形データ、すなわちプローブ電極22bの電位変化を示す波形が、N型波形検出部34、V型波形検出部35によって検出されるべき所定の条件に合致しているか否かを判定するためのデータを記憶する。この波形データには、電位変化を示す波形における電位の振れ幅を判定するために設定されるしきい値(図4(a)に示すしきい値Δvth参照)や、1つの振れが収束するまでに要する振れ時間など、波形パターンを特徴づける項目であって定量化可能なものが選定される。
放電状態判定部43は、複数のカウンタ、すなわち放電ON波形カウンタ36、放電OFFカウンタ37、異常放電波形カウンタ38が保持しているカウント値に基づいて、処理室3a内におけるプラズマ放電の状態を判定する処理を行う。すなわち放電状態判定部
43はこれらのカウンタ値を確認し、各カウント値を予め設定された許容値と比較することにより、プラズマ放電状態を判定する。メンテナンス判定部44は、リーク放電波形カウンタ39が保持しているカウント値に基づいて、すなわちこのカウンタ値を確認して予め設定された許容値と比較することにより、メンテナンスの要否を判定する。したがって放電状態判定部43およびメンテナンス判定部44は、放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37、異常放電波形カウンタ38およびリーク放電波形カウンタ39が保持しているカウント値に基づいて、プラズマ処理装置の運転状態、すなわち上述のプラズマ放電の状態に加えて、真空チャンバ3内のメンテナンスの要否を判定する判定部を構成する。
また上記構成において、放電検出センサ23、プラズマ監視装置20および制御部25は、処理室3a内におけるプラズマ放電状態を監視するプラズマ放電状態監視手段(プラズマ放電状態監視装置)を構成する。そしてプラズマ監視装置20は、プローブ電極22bにプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信して、高周波電圧の印加開始タイミングを含んで設定された最初の波形監視時間帯[A]、高周波電圧の印加終了タイミングを含んで設定された最後の波形監視時間帯[C]および最初の波形監視時間帯[A]と最後の波形監視時間帯[C]とに挟まれた時間帯を含んで設定された中間の波形監視時間帯[B]のそれぞれにおいて特定パターンの電位変化波形を検出し、各波形監視時間帯毎に電位変化波形の検出回数をカウントしてカウント値を保持する処理を行うデータ処理部を構成している。また制御部25は、各波形監視時間帯毎のカウント値に基づいてプラズマ放電の有無およびプラズマ放電状態の正常・異常の判定を含む放電状態判定を行う判定部となっている。
このプラズマ処理装置は上記のように構成されており、次にこのプラズマ処理装置の運転時に実行される放電状態判定処理について、図5のフローに沿って説明する。なお図5のフロー中に示すK1,K2,K3は、それぞれ放電ON波形カウンタ36、異常放電波形カウンタ38および放電OFF波形カウンタ37のそれぞれが保持しているカウント値を意味している。
判定処理が開始されると、まず放電ON波形カウンタ36のカウント値K1を確認し(ST1)、カウント値K1が予め定められた許容値1よりも小さいか否かを判断する(ST2)。ここでカウント値K1が予め定められた許容値1よりも大きい場合には、本来検出されるべきではない異常放電が発生していると判断し、表示部27により異常放電状態を報知して装置停止する(ST14)。また(ST2)にてカウント値K1が予め定められた許容値1よりも小さい場合には、次ステップに進み最初の波形監視時間帯[A]の第1の所定時間Taの経過を判断し(ST3)、時間未経過ならば(ST1)に戻り、(ST1)、(ST2)の処理を順次反復する。
(ST3)にて第1の所定時間Taの経過が確認されたならば、カウント値K1が0(零)であるか否かを判断する(ST4)。ここでカウント値K1が0(零)である場合には、処理室3a内で正常にプラズマ放電が発生していることの確実な証左が得られていないと判断し、表示部27により放電無しを報知して装置停止する(ST13)。次に、(ST4)にてカウント値K1が0(零)でないことが確認されたならば、処理室3a内ではプラズマ放電が発生していると判断して、次ステップに進む。すなわち異常放電波形カウンタ38のカウント値K2を確認し(ST5)、カウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さいか否かを判断する(ST6)。ここでカウント値K2が予め定められた許容値2よりも大きい場合には、処理室3a内で異常放電が許容頻度を超えて発生していると判断し、表示部27により異常放電状態を報知して装置停止する(ST14)。
またカウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さい場合には次ステップに進み
、中間の波形監視時間帯[B]の第2の所定時間Tbの経過を判断し(ST7)、時間未経過ならば(ST5)に戻り、(ST5)、(ST6)の処理を順次反復する。(ST6)にて第2の所定時間Tbの経過が確認されたならば、次ステップに進む。すなわち放電OFF波形カウンタ37のカウント値K3を確認し(ST8)、カウント値K3が予め定められた許容値3よりも小さいか否かを判断する(ST9)。
ここでカウント値K3が予め定められた許容値3よりも大きい場合には、本来検出されるべきではない異常放電が発生していると判断して、表示部27により異常放電状態を報知して装置停止する(ST14)。また(ST9)にてカウント値K3が予め定められた許容値3よりも小さい場合には、次ステップに進み最後の波形監視時間帯[C]の第3の所定時間tcの経過を判断し(ST10)、時間未経過ならば(ST8)に戻り、(ST8)、(ST9)の処理を順次反復する。
(ST10)にて第3の所定時間Tcの経過が確認されたならば、カウント値K3が0(零)であるか否かを判断する(ST11)。ここでカウント値K1が0(零)である場合には、処理室3a内で正常にプラズマ放電が発生していることの確実な証左が得られていないと判断し、表示部27により放電無しを報知して装置停止する(ST13)。そして(ST11)にてカウント値K3が0(零)でないことが確認されたならば、プラズマ放電は正常に行われており(ST12)、これにより放電状態判定処理を終了する。
上記放電状態判定処理フローは、処理対象物である基板9を処理室3a内に収容してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置において、処理室3a内におけるプラズマ放電状態を監視するプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態の監視方法を構成する。そしてこのプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態の監視方法は、プローブ電極22bに処理室3a内のプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化をデータ処理部であるプラズマ監視装置20によって受信する工程と、最初の波形監視時間帯[A]、最後の波形監視時間帯[C]および中間の波形監視時間帯[B]のそれぞれにおいて特定パターンの電位変化波形をN型波形検出部34によって検出する工程と、各波形監視時間帯[A],[B]、[C]毎に、電位変化波形の検出回数を放電ON波形カウンタ36、異常放電波形カウンタ38、放電OFF波形カウンタ37によってカウントして、カウント値K1,K2,K3を保持する処理を行う工程と、各波形監視時間帯[A],[B]、[C]毎のカウント値K1,K2,K3に基づいて、プラズマ放電の有無およびプラズマ放電状態の正常・異常の判定を含むプラズマ放電状態判定を行う工程とを含む形態となっている。
次に図6を参照して、上述の放電状態判定処理に引き続いて実行されるメンテナンス判定処理について説明する。なお、図6のフロー中に示すK4はリーク放電波形カウンタ39が保持しているカウント値を意味している。このメンテナンス判定処理は、プラズマ処理装置の運転を継続する過程において、真空チャンバ3の内部にプラズマ処理によって発生した異物が付着堆積することに起因して生じる不具合を防止することを目的として、メンテナンス判定部44によって実行されるものであり、図5に示すフローにおける(ST10)が終了した後に付加的に実行される。
すなわち図6に示す(ST20)は、図5のフローの説明にて記述した(ST10)と同一の処理であり、(ST20)にて最後の波形監視時間帯[C]の第3の所定時間tcの経過が確認されたならば、リーク放電波形カウンタ39のカウント値K4を確認し(ST21)、カウント値K4が予め定められた許容値4よりも小さいか否かを判断する(ST22)。ここでカウント値K4が予め定められた許容値4よりも小さい場合には、処理室3a内における異物付着に起因するリーク放電の発生頻度が許容限度以下であり、異物除去を目的とするメンテナンスの必要なしと判断して、判定処理を終了する。これに対し、(ST22)においてカウント値K4が予め定められた許容値4よりも大きい場合には
、リーク放電の発生頻度が許容限度を超えて発生しており、異物の付着堆積の可能性が高いと判断して、表示部27によってメンテナンスの必要ある旨を報知する(ST23)。
上記説明したように、実施の形態1に示すプラズマ処理装置は、真空チャンバに装着された放電検出センサのプローブ電極にプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信してリーク放電に起因して生じる特定パターンの電位変化波形を検出する第2の波形検出部としてのV型波形検出部35とを備え、V型波形検出部35による電位変化波形の検出回数をリーク放電波形カウンタ39によってカウントしたカウント値に基づいて、メンテナンスの要否を判定する構成となっている。すなわち異物付着と高い相関度で因果関係を有するリーク放電を高感度で検出し、このリーク放電の累積頻度に基づいて異物の付着堆積の度合いを推定するようにしている。これにより、装置稼働時に所要真空度まで到達するのに必要な真空到達時間を計測してメンテナンス時期を推定する方法などを用いる従来技術と比較して、設備稼動状態を最適に保つために必要とされるメンテナンス時期が到達したか否かを精度良く判定することができる。
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2のプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態監視装置の構成を示すブロック図、図8は本発明の実施の形態2のプラズマ放電状態監視方法における電位変化波形および波形監視時間帯の説明図、図9は本発明の実施の形態2のプラズマ放電状態監視方法における放電状態判定処理の処理フロー図である。
本実施の形態2は、実施の形態1におけるN型波形検出部34の機能を、検出対象の波形パターンに応じて分割し、2つのN型波形検出部、すなわちN1型波形検出部34A、N2型波形検出部34Bとしたものである。N1型波形検出部34A、高周波電源の印加開始および印加終了における通常の状態変化に起因する電位変化の波形パターンを専ら検出し、N2型波形検出部34Bは異常放電に起因する電位変化の波形パターンを専ら検出する。
すなわち、図7に示すプラズマ監視装置20において、N1型波形検出部34Aからの検出信号を放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37によってカウントし、N2型波形検出部34Bからの検出信号を異常放電波形カウンタ38によってカウントするようにしている。これらの点と、カウンタ制御部41が異常放電波形カウンタ38を制御する際の波形監視時間帯の設定が異なる点、すなわち中間の波形監視時間帯[B]の替わりに後述する中間の波形監視時間帯[D]が設定される点を除いて、図7に示すプラズマ監視装置20は、図5に示すプラズマ監視装置20と同様である。
N1型波形検出部34A、N2型波形検出部34Bの機能を図8を参照して説明する。図8(a)は、プラズマ処理装置の運転開始から運転終了に至るまでの過程において検出される波形パターンおよびこれらの波形パターンを検出するために設定された所定時間を示すものである。また図8(b)に示すタイムチャートは、これらの所定時間が割り当てられた複数の波形監視時間帯の設定タイミングを、高周波電源部19による高周波電源印加開始、終了のタイミングと関連付けて示すものである。
図8(a)は、図4(a)と同様に、プラズマ処理装置の運転開始から運転終了に至るまでの過程において検出される波形パターンを示している。ここで第1の所定時間Ta、第3の所定時間Tc、最初の波形監視時間帯[A]および最後の波形監視時間帯[C]については図4に示す例と同様であり、ここでは説明を省略する。
最初の波形監視時間帯[A]および最後の波形監視時間帯[C]においては、図4(a)と同様に、高周波電源の印加開始および印加終了における正常の状態変化に伴う電位変
化波形のN字状の波形パターン(N1型波形WN1)が検出される。このとき波形パターン検出用に設定されるしきい値レベルは、N1型波形WN1の振れ幅に応じたレベル、すなわち図4(a)におけるしきい値レベルVthと同等の第1のしきい値レベル±Vth1に設定される。そしてN1型波形検出部34Aによって最初の波形監視時間帯[A]および最後の波形監視時間帯[C]において検出された高周波電源の印加開始および印加終了に伴う波形は、放電ON波形カウンタ36、放電OFF波形カウンタ37によってそれぞれカウントされる。
中間の波形監視時間帯[D]は、実施の形態1における中間の波形監視時間帯[B]と異なり、第1の所定時間Ta、第2の所定時間Tbおよび第3の所定時間Tcを全て含む時間設定となっている。すなわち、ここでは、中間の波形監視時間帯[D]は、最初の波形監視時間帯[A]と最後の波形監視時間帯[C]とに挟まれた時間帯(第2の所定時間Tb)を含み、さらに第1の所定時間Ta、および第3の所定時間Tcをも含んだ設定となっている。異常放電に起因する波形の監視を目的とする中間の波形監視時間帯[D]をこのような設定とすることにより、プラズマ処理装置の起動から停止までを含んだすべての運転時間において異常放電の発生を監視することができ、異常放電の監視精度をより向上させることができる。
中間の波形監視時間帯[D]においては、図4(a)に示す例と同様に、処理室3a内での異常放電に伴うN2型波形WN2がN2型波形検出部34Bによって検出され、リーク放電に起因して出現するV型波形WVがV型波形検出部35によって検出される。このとき波形パターン検出用に設定されるしきい値レベルは、N2型波形WN2の振れ幅に応じたレベル、すなわち図4(a)におけるしきい値レベルVthよりも高い第2のしきい値レベル±Vth2に設定される。そして中間の波形監視時間帯[D]において検出された異常放電に伴うN2型波形WN2およびリーク放電に起因して出現するV型波形WVは、異常放電波形カウンタ38,リーク放電波形カウンタ39によってそれぞれカウントされる。
このように実施の形態2においては、N型波形を検出する波形検出部が、電位変化の振れ幅の異なる波形を検出する複数の波形検出部(N1型波形検出部34A、N2型波形検出部34B)を備えた構成となっている。この構成により、同一のN型の電位変化波形パターンであって電位変化の振れ幅の異なる複数種類の波形パターンを複数の波形検出部によって異なるしきい値レベルを用いて検出することにより、類似の波形パターンであって出現原因の異なる複数種類の波形パターンを正しく識別しながら検出することができ、放電状態の監視をより精細に行うことが可能となっている。
図9は、実施の形態2においてプラズマ処理装置の運転時に実行される放電状態判定処理を示している。なお図9のフロー中に示すK1,K2,K3は、図5と同様に、それぞれ放電ON波形カウンタ36、異常放電波形カウンタ38および放電OFF波形カウンタ37のそれぞれが保持しているカウント値を意味している。判定処理が開始されると、まずプラズマ処理装置の運転時間の全範囲を含む中間の波形監視時間帯[D]をカウントの対象とする異常放電波形カウンタ38のカウント値K2を確認し(ST31)、カウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さいか否かを判断する(ST32)。
ここでカウント値K2が予め定められた許容値2よりも大きい場合には、本来検出されるべきではない異常放電が発生していると判断して、表示部27により異常放電状態を報知して装置停止する(ST46)。また(ST32)にてカウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さい場合には、次ステップに進み最初の波形監視時間帯[A]の第1の所定時間Taの経過を判断し(ST33)、時間未経過ならば(ST31)に戻り、(ST31)、(ST32)の処理を順次反復する。
(ST33)にて第1の所定時間Taの経過が確認されたならば、放電OFF波形カウンタ37のカウント値K1を確認し(ST34)、カウント値K1が0(零)であるか否かを判断する(ST35)。ここでカウント値K1が0(零)である場合には、処理室3a内で正常にプラズマ放電が発生していることの確実な証左が得られていないと判断し、表示部27により放電無しを報知して装置停止する(ST44)。
次に、(ST35)にてカウント値K1が0(零)でないことが確認されたならば、処理室3a内ではプラズマ放電が発生していると判断して、次ステップに進む。すなわち異常放電波形カウンタ38のカウント値K2を確認し(ST36)、カウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さいか否かを判断する(ST37)。ここでカウント値K2が予め定められた許容値2よりも大きい場合には、本来発生すべきでない異常放電が処理室3a内で発生していると判断し、表示部27により異常放電状態を報知して装置停止する(ST46)。
またカウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さい場合には次ステップに進む。すなわち第2の所定時間Tbの経過を判断し(ST38)、時間未経過ならば(ST37)に戻り、(ST37)、(ST38)の処理を順次反復する。そして(ST38)にて第2の所定時間Tbの経過が確認されたならば、次ステップに進む。すなわち異常放電波形カウンタ38のカウント値K2を再度確認し(ST39)、カウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さいか否かを判断する(ST40)。
ここでカウント値K2が予め定められた許容値2よりも大きい場合には、本来検出されるべきではない異常放電が許容頻度を超えて発生していると判断して、表示部27により異常放電状態を報知して装置停止する(ST46)。また(ST40)にてカウント値K2が予め定められた許容値2よりも小さい場合には、次ステップに進み、最後の波形監視時間帯[C]の第3の所定時間tcの経過を判断し(ST41)、時間未経過ならば(ST40)に戻り、(ST40)、(ST41)の処理を順次反復する。
そして(ST41)にて第3の所定時間Tcの経過が確認されたならば、放電OFF波形カウンタ37のカウント値K3を確認し(ST42)、カウント値K3が0(零)であるか否かを判断する(ST43)。ここでカウント値K3が0(零)である場合には、処理室3a内で正常にプラズマ放電が発生していることの確実な証左が得られていないと判断し、表示部27により放電無しを報知して装置停止する(ST44)。そして(ST43)にてカウント値K3が0(零)でないことが確認されたならば、プラズマ放電は正常に行われており、これにより放電状態判定処理を終了する。
上記放電状態判定処理フローは、処理対象物である基板9を処理室3a内に収容してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置において、処理室3a内におけるプラズマ放電状態を監視するプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態の監視方法を構成する。そしてこのプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態の監視方法は、プローブ電極22bに処理室3a内のプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化をデータ処理部であるプラズマ監視装置20によって受信する工程と、最初の波形監視時間帯[A]、最後の波形監視時間帯[C]および中間の波形監視時間帯[D]のそれぞれにおいて特定パターンの電位変化波形をN型波形検出部34によって検出する工程と、各波形監視時間帯[A],[D]、[C]毎に、電位変化波形の検出回数を放電ON波形カウンタ36、異常放電波形カウンタ38、放電OFF波形カウンタ37によってカウントして、カウント値K1,K2,K3を保持する処理を行う工程と、各波形監視時間帯[A],[D]、[C]毎のカウント値K1,K2,K3に基づいて、プラズマ放電の有無およびプラズマ放電状態の正常・異常の判定を含むプラズマ放電状態判定を行う工程とを含む形態となっている。
上記説明したように、実施の形態1または実施の形態2に示すプラズマ処理装置においては、処理室3a内におけるプラズマ放電状態を監視して判定するプラズマ放電状態監視手段として、一方の面を処理室内に発生したプラズマ放電に対向するように真空チャンバ3に装着された板状の誘電体部材21およびこの誘電体部材21の他方の面に配置されたプローブ電極22bを有する放電検出センサ23と、プローブ電極22bにプラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信して複数の波形監視時間帯において特定パターンの電位変化波形を検出し、波形種別ごとにこれらの電位変化波形の出現回数をカウントする処理を行うデータ処理部としてのプラズマ監視装置20を備えたものである。
この構成により、波形種別ごとのカウント値に基づいて放電の有無および放電状態の正常・異常の判定を含む放電状態判定を行うことができる。この放電状態判定においては、処理室3a内のプラズマ放電の変化を放電検出センサ23によって極めて高感度で検出可能であることから、従来方法、すなわちプラズマ放電の変化が高周波電源部の電圧や電流に及ぼす影響を検出する方法や、プラズマ放電によって電極間に生じるセルフバイアス電圧を検出することにより放電状態を推測する方法などにを用いた従来構成と比較して、プラズマ放電状態の監視をより高精度で行うことが可能となっている。したがって低出力条件でプラズマ放電を発生させる必要がある場合などにおいても、プラズマ放電状態の変化を高精度で検出することが可能となり、これにより、プラズマ放電の有無や異常を正しく監視することができる。
本発明のプラズマ処理装置は、プラズマ放電の有無や放電異常の監視や真空チャンバのメンテナンスの要否の判定などを含めた運転状態の監視を高精度で行うことができるという効果を有し、基板などを処理対象物としてプラズマクリーニングなどのプラズマ処理を行う分野に有用である。
本発明の実施の形態1のプラズマ処理装置の断面図 本発明の実施の形態1のプラズマ処理装置に用いられる放電検出センサの構成説明図 本発明の実施の形態1のプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態監視装置の構成を示すブロック図 本発明の実施の形態1のプラズマ放電状態監視方法における電位変化波形および波形監視時間帯の説明図 本発明の実施の形態1のプラズマ放電状態監視方法における放電状態判定処理の処理フロー図 本発明の実施の形態1のプラズマ放電状態監視方法におけるメンテナンス判定処理の処理フロー図 本発明の実施の形態2のプラズマ処理装置におけるプラズマ放電状態監視装置の構成を示すブロック図 本発明の実施の形態2のプラズマ放電状態監視方法における電位変化波形および波形監視時間帯の説明図 本発明の実施の形態2のプラズマ放電状態監視方法における放電状態判定処理の処理フロー図
符号の説明
2 蓋部
2a 開口部(のぞき窓)
3 真空チャンバ
3a 処理室
5 電極部
8 ガイド部材
9 基板
15 真空計
16 ガス供給部
17 真空ポンプ
18 整合器
19 高周波電源部
21 誘電体部材
22 プローブ電極ユニット
22b プローブ電極
23 放電検出センサ
P プラズマ
WN1 N1型波形
WN2 N2型波形
WV V型波形
[A] 最初の波形監視時間帯
[B]、[D] 中間の波形監視時間帯
[C] 最後の波形監視時間帯

Claims (2)

  1. 処理対象物を処理室内に収容してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
    前記処理室を形成する真空チャンバと、前記処理室内に配置された電極部と、前記処理室内を真空排気する真空排気部と、前記処理室内にプラズマ発生用ガスを供給するガス供給部と、前記電極部に高周波電圧を印加することにより前記処理室内でプラズマ放電を発生させる高周波電源部と、前記処理室内におけるプラズマ放電状態を監視するプラズマ放電状態監視手段とを備え、
    前記プラズマ放電状態監視手段は、一方の面を前記処理室内に発生したプラズマ放電に対向するように前記真空チャンバに装着された板状の誘電体部材およびこの誘電体部材の他方の面に配置されたプローブ電極を少なくとも有する放電検出センサと、
    前記プローブ電極に前記プラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を受信し、所定の条件に合致した電位変化の出現毎に検出信号を出力する複数の波形検出部と、
    前記複数の波形検出部のそれぞれに対応し、対応する波形検出部から出力された前記検出信号をカウントしてカウント値を保持する複数のカウンタと、
    前記カウント値に基づいて運転状態を判定する判定部とを備え、
    前記複数の波形検出部は、異常放電ならびに前記処理室内に付着堆積する異物による絶縁性の低下に起因して高周波電圧が印加される部分と接地電位の部分との間に生じる放電であるリーク放電を検出するために予め正負両側に設定されたしきい値レベルを有し、検出された電位変化が異常放電によって前記しきい値レベルの何れにも到達し且つ電位が正負両側に振れた後に定常値に戻るN字状の波形パターンを呈するN型の電位変化波形を検出して検出信号を出力するN型波形検出部と、検出された電位変化が前記リーク放電によって前記しきい値レベルに負側においてのみ到達し且つ電位が負側にのみ振れた後に定常値に戻るV字状の波形パターンを呈するV型の電位変化波形を検出して検出信号を出力するV型波形検出部とを含むことを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. 前記判定部は、前記N型波形検出部の前記検出信号をカウントしたカウンタのカウント値に基づいてプラズマ放電の状態を判定する放電状態判定部と、前記V型波形検出部の前記検出信号をカウントしたカウンタのカウント値に基づいて前記真空チャンバのメンテナンスの要否を判定するメンテナンス判定部からなることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
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