JP5010330B2 - パイプ開先加工機 - Google Patents

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Description

本発明は、設備に接続されるパイプの端部の開先加工をする開先加工機に関する。
2本のパイプの端部同士、例えば、既設されたパイプ(配管)の端部とこれに接続するパイプの端部とを溶接する作業では、溶接棒の融解物が2本のパイプの端部間に充填されて2本のパイプの端部同士が十分に接合されるために、予め一方又は両方のパイプの端部をテーパ状又は山切り構造等に切削する開先加工を行う必要がある。また、溶接後のパイプの接続部分の気密性を良好に保持するために、予めパイプの端部を平滑に切削する開先加工を行う場合もある。
パイプの端部の開先加工を行う方法として、(a)グラインダのような研磨による方法、(b)バイト刃(切削刃)の如き金属刃をパイプの端部に当接しながら回転させて機械的に切削する方法が知られている。
しかしながら、(a)及び(b)いずれの方法を行うにしても、開口されたパイプの一方の端部の開先加工を行うと、パイプの一方の端部から発生した切粉、粉塵等の異物が、パイプ内に残り、さらには、パイプの他方の端部に接続された機器や容器等の設備に入る可能性がある。
このため、開口されたパイプの一方の端部、特に、上向きに開口されたパイプの端部を切削する開先加工を行う場合には、パイプの一方の端部と他方の端部との間を閉塞させる板材のようなもので遮断して、異物が機器や容器等の設備に入り込むことを防止する必要があった。また、開先加工後には、板材を引き上げて、パイプ内に残った切粉、粉塵等の異物を除去していた。このような技術は、以下に示すように様々な方法が検討されてきた。
図5に示すように、例えば、特許文献1には、上記(a)の開先加工する方法の場合に採用される異物混入防止用治具110が開示されている。具体的には、異物混入防止用治具110は、パイプ100の一方の開口106から内部に挿入可能なシャフト112と、パイプ100の内径より直径が大きい弾性プレート116と、弾性プレート116の下位に位置する受皿118と、を備え、弾性プレート116及び受皿118は、シャフト112を挿通させてなる治具である。したがって、異物混入防止用治具110は、弾性プレート116及び受皿118がパイプ100の内周面104に接することによって、切粉、粉塵等の異物が他方の開口107を通過して設備200内に入り込むことを二段階的に防止する。
しかしながら、グラインダ等の研磨による方法では、研磨微粉、砥石微粉等の異物がパイプ100内に付着するため、異物混入防止用治具110を使用しても、異物混入防止用治具110をパイプ100から引き上げた際に研磨微粉、砥石微粉等の異物を完全に除去することができず、最悪の場合には、異物がパイプ100の他方の端部103に接続された設備200に落下する可能性がある。
したがって、パイプの端部を開先加工する方法しては、一般的に、機械的に開先加工が可能な上記(b)の方法が採用されている。この方法には、図6に示すようなパイプ開先加工機210が採用されている。
図6に示すように、例えば、パイプ開先加工機210は、切削刃214が装着された回転体212と、パイプ100の一方の開口106からパイプ100内に装入された複数の圧接板250を有するチャック機構242と、を備える。パイプ開先加工機210は、複数の圧接板250が中心から外側に開くことによってパイプ100の内周面104に圧接されることにより、パイプ開先加工機210自体をパイプ100に固定することができる。したがって、パイプ開先加工機210は、回転体212が回転体212の回転中心Cを中心に回転して切削刃214が回転した場合でも、パイプ開先加工機210自体が回転することを防止することができる。そして、パイプ開先加工機210は、刃先216が傾斜している切削刃214をパイプ100の一方の端部102に当接しながら回転させることによって、パイプ100の一方の端部102をテーパ状に開先加工することができる。
以上に述べたパイプ開先加工機210を使用する場合は、パイプ100の他方の端部103に接続された機器や容器等の設備200に異物が入り込むことを防止するために、フック264を有するスポンジ262がパイプ100内に装入される。スポンジ262は、パイプ100の内径より外径が大きいスポンジである。したがって、パイプ100内に装入されたスポンジ262は、パイプ100が上向きであっても、パイプ100の内周面104に対する弾性力でパイプ100内に保持される。そして、パイプ100の一方の端部102を切削する開先加工を終了した後、作業者は、フック264に何らかの係合手段を係合させ、パイプ100の一方の端部102にフック264とともにスポンジ262を引き寄せることによって、切粉、粉塵等の異物をスポンジ262に絡ませて除去する。
すなわち、パイプ開先加工機210は、パイプ100の内部にスポンジ262を装入してパイプ100を閉塞させることによって、異物が設備200に入り込むことを防止するとともに、開先加工を行った後は、スポンジ262をパイプ100の一方の端部102に引き寄せることによって、一方の端部102からスポンジ262が装入されている位置までの異物をスポンジ262に絡ませて除去することができる。
特開2004−108386号公報
しかしながら、スポンジ262は単にパイプ100内に装入されているだけであるので、作業者が、パイプ開先加工機210を使用して開先加工を行った後にパイプ100内に装入されているスポンジ262を取り忘れてしまう可能性がある。
また、図6に示すように、作業者がパイプ開先加工機210を使用して開先加工を行う場合に、パイプ100の寸法が短くて、パイプ開先加工機210のチャック機構242の端部254の位置がパイプ100の他方の開口107近傍となってしまう場合がある。このような状況において、スポンジ262がパイプ100内に装着された場合は、スポンジ262がパイプ100から押し出されて設備200内に落下する。その結果、そのままスポンジ262が設備200内に放置される可能性がある。
以上のように、パイプ開先加工機210を使用して開先加工を行う場合には、パイプ100の内部に装着されたスポンジ262、又は、設備200内に落下したスポンジ262の有無を確認するため、パイプ100の内部、さらには、設備200内を視認で検査する必要があった。このため、開先加工の作業には、通常の作業工程の他に余分な作業工程が追加されるが、コスト面から余分な工数を削減するため、スポンジ262が確実に回収されるパイプ開先加工機210が求められていた。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明の第1の目的は、設備に接続されたパイプの端部を開先加工するパイプ開先加工機であって、パイプの端部から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプと接続する設備に入り込むことを防止し、さらに、パイプ内に残った異物を確実に除去することができるパイプ開先加工機を提供することである。本発明の第2の目的は、異物の除去に使用されたスポンジが回収されずに放置されることを防止することができるパイプ開先加工機を提供することである。
(1) 設備に接続されるパイプに着脱可能に固定されて前記パイプの端部の開先加工をする開先加工機であって、前記開先加工の時に前記パイプの端部に当接しながら前記パイプの軸心を中心に前記パイプの円周方向に回転して前記パイプの端部を切削することができる切削刃が装着された回転体と、前記回転体を回転させるモータを有する駆動部と、前記パイプの軸心と前記回転体の中心方向とが一致するように前記駆動部に保持されるチャック機構であって、前記開先加工の時に前記パイプの内周面に圧接するチャック機構と、前記パイプの軸心方向と交差する幅方向の前記パイプの開口の断面積よりも大きい前記幅方向の断面積を有するスポンジであって、前記チャック機構に装着され、前記開先加工の時に前記パイプ内に装入されるスポンジと、を備えるパイプ開先加工機。
ここで、設備とは、パイプと接続する機器や容器等の設備をいい、例えば、蒸気ボイラーの蒸気ドラムのようなものをいうが、これに限定されず、パイプと接続する設備であれば、どのような設備でもよい。
(1)の発明によれば、開先加工時にパイプ内に装入されるスポンジの幅方向の断面積が幅方向のパイプの開口の断面積よりも大きいので、パイプの内周面に対してスポンジの弾性力が生じ、スポンジとパイプの内周面とが密接する。このため、開先加工時にパイプの端部から発生する切粉及び粉塵等の異物が、パイプと接続する設備に入り込むことを防止することができる。また、パイプ開先加工機のチャック機構がパイプから引き上げられると同時にスポンジがパイプ内から引き上げられることによって、パイプ内に残っていた異物がスポンジに付着して除去される。
すなわち、本発明によれば、パイプの端部から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプと接続する設備に入り込むことを防止し、さらに、パイプ内に残った異物を確実に除去することができる。
また、本発明によれば、従来のようにスポンジがパイプ内に単に装入されるのではなく、チャック機構に装着されているので、パイプ開先加工機が引き上げられると同時にスポンジが引き上げられる。したがって、スポンジをパイプの内部に放置せずに必ず回収することができる。
(2) 前記スポンジは、前記チャック機構の前記切削刃とは反対側の端部の近傍及び/又は前記パイプの端部の近傍に装着される(1)記載のパイプ開先加工機。
(2)の発明は、スポンジが装着される場所を規定したものである。チャック機構の切削刃とは反対側の端部の近傍にスポンジが装着された場合、また、パイプの端部の近傍にスポンジが装着された場合のいずれの場合にも、パイプの端部から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプと接続する設備に入り込むことを防止することができる。また、パイプ開先加工機が引き上げられると同時にスポンジが引き上げられることによって、パイプ内に残った異物を確実に除去することができる。特に、上記2箇所にそれぞれスポンジが装着されることによって、パイプ内に残った切粉、粉塵等の異物を、二段構えで設備に入り込むことを防止することができるとともに、二段構えで除去することができる。
(3) 前記チャック機構に装着され、前記スポンジを狭持する一対の金属片を有し、前記幅方向の前記金属片の断面積は、前記パイプの開口の断面積の0.1倍以上0.5倍以下の範囲内にある(1)又は(2)記載のパイプ開先加工機。
(3)の発明によれば、一対の金属片はスポンジを狭持しており、幅方向の金属片の断面積は、パイプの開口の断面積の0.1倍以上0.5倍以下の範囲内とするので、スポンジの端部がパイプの内周面に接してスポンジが弾性変形する場合でも、一対の金属片がスポンジを挟持することによって、スポンジが大きく弾性変形することを防止する。したがって、スポンジの端部とパイプの内周面とがより密着するため、パイプの端部から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプと接続する設備に入り込むことをより防止することができるとともに、パイプ内に残った異物をより確実に除去することができる。
(4) 前記スポンジの形状は、前記回転体の軸心方向と平行な軸心を有する円筒形である(1)から(3)いずれか記載のパイプ開先加工機。
(4)の発明によれば、スポンジの形状は回転体の軸心方向と平行な軸心を有する円筒形であるため、スポンジの外周面とパイプの内周面とが均等に接する。したがって、スポンジとパイプの内周面との間に隙間ができないため、パイプの端部から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプと接続する設備に入り込むことを防止することができるとともに、パイプ内に残った異物を確実に除去することができる。
(5) 前記スポンジの直径は、前記パイプの直径に対して1.3倍以上2.3倍以下の範囲内にある(4)記載のパイプ開先加工機。
(5)の発明は、スポンジの好ましい直径を規定したものである。スポンジの直径は、パイプの直径に対して1.3倍以上2.3倍以下の範囲内にあることが好ましい。
本発明によれば、パイプの端部から発生する切粉及び粉塵等の異物がパイプと接続する設備に入り込むことを防止し、さらに、パイプ内に残った異物を確実に除去することができる。また、本発明によれば、スポンジがチャック機構に装着されているため、パイプ開先加工機のチャック機構が引き上げられると同時にスポンジがパイプ内から引き上げられるので、スポンジをパイプの内部に放置せずに必ず回収することができる。
以下、本発明の一例を示す実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における開先加工機の概略断面図である。図2は、パイプに固定された開先加工機がパイプの端部を開先加工する前の状態を示す概略図である。図3は、パイプに固定された開先加工機がパイプの端部を開先加工している時の状態を示す概略図である。図4は、開先加工機に使用されるスポンジの斜視図である。
[パイプ開先加工機]
図1から図3に示すように、パイプ開先加工機10は、パイプ100(図2参照)に着脱可能に固定されてパイプ100の一方の端部102を開先加工する開先加工機である。パイプ100は機器や容器等の設備200(図2参照)に接続されている。なお、図1は、パイプ100及び設備200の記載を省略している。パイプ開先加工機10は、切削刃14が装着された回転体12と、回転体12を回転させるモータ24を有する駆動部22と、駆動部22をパイプ100に固定することができるチャック機構42と、このチャック機構42に装着されたスポンジ62と、を備える。さらに、パイプ開先加工機10は、チャック機構42と接続するリング30と、チャック機構42に装着されスポンジ62を狭持する一対の金属片72と、駆動部22と接続する操作部82と、電源あるいは高圧空気等が供給される駆動源92と、を有する。
回転体12は駆動部22に接続している。回転体12は、回転体12に着脱可能に装着されている切削刃14と、切削刃14の位置を回転体12の径方向に調節可能なビス18と、を有する。回転体12は、モータ24と連結されている後述する回転軸(図示せず)によってモータ24の駆動力が伝達されて回転する。
切削刃14の刃先16は、回転体12の回転中心C方向と一致する方向である長手方向(以下、「X方向」という)に交差(垂直)する幅方向(以下、「Y方向」という)とX方向との間の角度に傾斜している。
駆動部22はモータ24を有する。さらに、駆動部22は、モータ24に連結されている回転軸(図示せず)と、モータ24及び回転軸の周囲を覆うカバー28と、を有する。
モータ24は、電動式又は気体駆動式のモータであって、後述する図示しないスイッチのオン・オフによって始動・停止される。具体的には、モータ24が電動式モータの場合は駆動源92から供給される電気によって、モータ24が気体駆動式モータの場合は駆動源92から供給される気体によって、モータ24は駆動する。
なお、本実施形態において、モータ24は電動式又は気体駆動式のモータであるが、油圧モータであってもよい。
リング30は、複数のハンドル32を有しており、ハンドル32を回転することによって、回転体12及び駆動部22をX方向に摺動させることができる構造となっている。
チャック機構42は、回転体12の回転中心Cとパイプ100の軸心Cとが一致するように駆動部22に保持される。したがって、パイプ100の軸心C方向とは、X方向となり、パイプ100の軸心C方向と交差する方向とはY方向となる。
さらに、チャック機構42は、外周面が螺刻され回転体12の回転中心Cと一致する軸心を有する内軸45と、この内軸45の外周面に螺合し、回転体12及び駆動部22を摺動可能に設けられた回転体12の回転中心Cと一致する軸心を有する外軸44と、を有する。この外軸44は、端部が複数のテーパ溝53が形成され、内軸45が挿通された筒状のチャックボディ52と連結されている。さらに、チャック機構42は、テーパ溝53に進退自在に嵌め込まれた逆テーパ面(図示せず)が形成された複数の圧接板50と、内軸45の一方の端部が螺入されたチャックホルダ48とを有する。複数の圧接板50は、内軸45を回転することにより、外軸44からパイプ100の内周面104に向けて広がる構造を有している。
また、チャック機構42は、内軸45の一方の端部と螺合する螺合部54を有する。螺合部54は、スポンジ62及び一対の金属片72に内軸45を挿通した後、内軸45の一方の端部に螺合部54を螺合させて、スポンジ62及び一対の金属片72を固定する。
なお、本実施形態においては、上述したチャック機構42によってパイプ開先加工機10を固定しているが、これに限らず、パイプの軸心Cと回転体12の回転中心Cとが一致するように駆動部22に保持されるチャック機構で固定されるパイプ開先加工機であればよい。換言すれば、パイプ開先加工機は、回転体12の回転中心Cとパイプ100の軸心Cとが一致するようにパイプ開先加工機10を固定することができる機構を備えるパイプ開先加工機であればよい。
スポンジ62は、チャック機構42に装着され、開先加工時にパイプ100内に装入されるスポンジである。図4に示すように、スポンジ62は、内軸45が貫通する貫通口64が形成されている。
スポンジ62の形状はX方向と平行な軸心を有する円筒形である。しかし、スポンジ62の形状は、これに限らず、例えば、正方形、長方形、及び、円錐形等であってもよい。
スポンジ62のY方向の断面積Sは、Y方向のパイプ100の開口106の断面積よりも大きい。具体的には、スポンジ62のY方向の断面積SとY方向のパイプ100の開口106の断面積との比は、1.7倍以上5.3倍以下の範囲内にあることが好ましく、2.3倍以上4倍以下の範囲内にあることがより好ましい。
すなわち、図4に示すスポンジ62の直径Dsは、パイプ100の内径よりも大きく、スポンジ62の形状が円筒形の場合は、パイプ100の直径に対して1.3倍以上2.3倍以下の範囲内にあることが好ましく、1.5倍以上2倍以下の範囲内にあることがより好ましい。直径比が1.3倍未満の場合は、パイプ100の内周面104に対するスポンジ62の弾性力が弱いため、パイプ100の一方の端部102から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプ100と接続する設備200に入り込むことを絶対的に防止できず、また、パイプ100内に残った異物を除去する能力が低下する。直径比が2.3倍を超える場合は、パイプ100の内周面104とスポンジ62の外周面66との間に生じる摩擦が大きいためスポンジ62の劣化を早める。さらには、スポンジ62が装着されたチャック機構42をパイプ100内に装入すること、又は、パイプ100からスポンジ62が装着されたチャック機構42を取り外すことが困難となる。
スポンジ62の高さHは、スポンジ62の直径Dsに対して0.1倍以上0.5倍以下の範囲内にあることが好ましく、0.2倍以上0.4倍以下の範囲内にあることがより好ましい。0.1倍未満である場合は、パイプ100の一方の端部102から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプ100と接続する設備200に入り込むことを絶対的に防止できず、また、パイプ100内に残った異物を除去する能力が低下する。0.5倍を超える場合は、パイプ100の内周面104とスポンジ62の外周面66との間に生じる摩擦が大きいためスポンジ62の劣化を早める。さらには、スポンジ62が装着されたチャック機構42をパイプ100内に装入すること、又は、パイプ100からスポンジ62が装着されたチャック機構42を取り外すことが困難となる。
スポンジ62の材質は、パイプ100の内周面104とスポンジ62の外周面66が密着し、チャック機構42とともにスポンジ62がパイプ100内から引き上げられたときに、パイプ100内の異物が残らないようなものであれば特に限定されない。例えば、カイメン(海綿)のような天然スポンジ、ポリウレタンのようなプラスチックを発泡成形して作られた合成スポンジを例示として挙げることができる。
一対の金属片72は、スポンジ62を狭持する円盤状の金属の薄片である。金属片72のY方向の断面積は、Y方向のパイプ100の開口の断面積の0.1倍以上0.5倍以下の範囲内にあることが好ましく、0.2倍以上0.4倍以下の範囲内にあることがより好ましい。すなわち、金属片72の直径は、スポンジ62の直径の0.3倍以上0.7倍以下の範囲内にあることが好ましく、0.4倍以上0.6倍以下の範囲内にあることがより好ましい。0.3倍未満の場合は、スポンジ62の外周面66がパイプ100の内周面104に接してスポンジ62が大きく弾性変形するため、スポンジ62の外周面66とパイプ100の内周面104との密着が低下する。このため、パイプ100の一方の端部102から発生する切粉、粉塵等の異物がパイプ100と接続する設備200に入り込むことを絶対的に防止できず、また、パイプ100内に残った異物を除去する能力が低下する。0.7倍を超える場合は、パイプ100の内周面104とスポンジ62の外周面66との間に生じる摩擦が大きいためスポンジ62の劣化を早める。さらには、スポンジ62が装着されたチャック機構42をパイプ100内に装入すること、又は、パイプ100からスポンジ62が装着されたチャック機構42を取り外すことが困難となる。
なお、一対の金属片72は、本実施形態において、円盤状であるが、これに限らず、例えば、楕円状、矩形状、正方形状、三角形状でもよい。
金属片72の材質は、安価で適度に加工しやすいものであれば特に限定されず、例えば、鉄、ステンレス、ブリキ、アルミニウム合金等が例示される。
操作部82は、作業者が作業時に把持する部分である。操作部82は、図示しないスイッチを有しており、このスイッチをオン・オフすることにより、モータ24の駆動を開始、停止することができる。
[パイプ開先加工機の使用方法]
次に、図1から図4を参照して、パイプ開先加工機10を用いて具体的にパイプ100を開先加工する方法について説明する。
図1に示すように、作業者は、チャック機構42の内軸45に螺合している螺合部54を外し、貫通口64が中央部に形成されたスポンジ62を一対の金属片72に挟持させる。スポンジ62を一対の金属片72で挟持させたものに、内軸45を挿通する。螺合部54を内軸45の一方の端部に螺合させることにより、チャック機構42にスポンジ62が装着される。
なお、本実施形態においては、スポンジ62は螺合部54で固定されることによって、チャック機構42に装着されているが、チャック機構42にスポンジ62を装着する手段はこれに限定されず、例えば、スポンジ62を一対のナットで挟持して、スポンジ62をチャック機構42に装着させるようにしてもよい。
図2に示すように、作業者は、パイプ100の一方の開口106からパイプ100内にスポンジ62が装着されたチャック機構42を装入する。作業者は、内軸45の他方の端部46にメガネレンチのような工具を係合させて内軸45を回転させる。この作業によって、チャックホルダ48が回転体12側へ摺動し、それに伴ってテーパ溝53に沿って逆テーパ面40が形成された複数の圧接板50が、外側へ広がる。このため、複数の圧接板50がパイプ100の内周面104に圧接する。圧接板50がパイプ100に接した後も、さらに、作業者が続けて内軸45を回転する操作を行うと、圧接板50はパイプ100の内周面104に強力に圧接するため、回転体12が回転することによって切削刃14が回転しても、パイプ開先加工機10がパイプ100に対して回転することがない。
チャック機構42によってパイプ100にパイプ開先加工機10を固定させた後、作業者は、回転体12にパイプ100に適した切削刃14を装着する。作業者がスイッチを入れてモータ24を駆動することによって、モータ24に連結されている回転軸が回転し、回転軸に連結されている回転体12が回転する。
次に、作業者は、ハンドル32を回転させることによりリング30を回転させることによって、回転体12及び駆動部22をパイプ100側のX方向に徐々に摺動させる。そして、作業者は、回転体12に装着された切削刃14がパイプ100の一方の端部102に当接されてパイプ100の一方の端部102がテーパ状に開先加工されていることを確認する。この工程において、パイプ開先加工機10は、切削刃14を適切な位置に調整することができる調整ノブを備えることが好ましい。
以上のような作業により、切削刃14は、パイプ100の一方の端部102に当接しながらパイプ100の軸心Cを中心にパイプ100の円周方向に回転して一方の端部102をテーパ状に切削することができる。すなわち、パイプ開先加工機10は、パイプ100の一方の端部102に傾斜する切削刃14の刃先16を当接しながら回転させることによって、パイプ100の一方の端部102をテーパ状に開先加工することができる。
開先加工が終了した後、作業者は、スイッチをオフにして回転体12の回転を止めて、ハンドル32を逆に回転してリング30を逆に回転させる。これによって、回転体12及び駆動部22をパイプ100の方向とは反対方向に摺動させる。作業者は、内軸45の他方の端部46を逆回転させ、チャックホルダ48を回転体12の方向とは反対の方向へ摺動させ、パイプ100へのチャック機構42の固定を解除する。作業者は、スポンジ62の形状を大きく変形させない程度の速度でチャック機構42をパイプ100から抜き出し、切粉、粉塵等の異物をスポンジ62によって除去する。
なお、本実施形態において、切削刃14の刃先16は、Y方向とX方向との間の角度に傾斜しているが、X方向とほぼ同じ方向に傾斜させることによって、パイプ100の一方の端部102を平滑に切削することができる。
また、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではない。例えば、スポンジ62は、内軸45の一方の端部に装着されるだけでなく、チャック機構42に装着され、開先加工時にパイプ100内に装入されるものであればよく、例えば、スポンジ62は、外軸44のパイプ100の一方の端部102の近傍部56付近に装着されるようにしてもよい。すなわち、スポンジ62は、チャック機構42の切削刃14とは反対側の端部の近傍及び/又はパイプ100の一方の端部102の近傍に装着されるようにしてもよい。
本発明におけるパイプ開先加工機の概略断面図である。 本発明におけるパイプ開先加工機がパイプの端部を開先加工する前の状態を示す概略図である。 本発明におけるパイプ開先加工機がパイプの端部を開先加工している時の状態を示す概略図である。 本発明におけるパイプ開先加工機に使用されるポンジの斜視図である。 従来使用された異物混入防止用治具を用いてパイプの端部を開先加工する状態を示す図である。 従来使用された開先加工機がパイプの端部を開先加工する状態を示す図である。
符号の説明
10 パイプ開先加工機
12 回転体
14 切削刃
22 駆動部
24 モータ
42 チャック機構
50 圧接板
56 近傍部
62 スポンジ
72 金属片
100 パイプ
102 一方の端部
104 内周面
200 設備
262 スポンジ
回転体の回転中心
パイプの軸心

Claims (5)

  1. 設備に接続されるパイプに着脱可能に固定されて前記パイプの端部の開先加工をする開先加工機であって、
    前記開先加工の時に前記パイプの端部に当接しながら前記パイプの軸心を中心に前記パイプの円周方向に回転して前記パイプの端部を切削することができる切削刃が装着された回転体と、
    前記回転体を回転させるモータを有する駆動部と、
    前記パイプの軸心と前記回転体の中心方向とが一致するように前記駆動部に保持されるチャック機構であって、前記開先加工の時に前記パイプの内周面に圧接するチャック機構と、
    前記パイプの軸心方向と交差する幅方向の前記パイプの開口の断面積よりも大きい前記幅方向の断面積を有するスポンジであって、前記チャック機構に装着され、前記開先加工の時に前記パイプ内に装入されるスポンジと、を備え、
    前記スポンジの形状は、前記回転体の軸心方向と平行な軸心を有する円筒形であり、
    前記スポンジの直径は、前記パイプの直径に対して1.3倍以上2.3倍以下の範囲内にあり、
    前記スポンジの高さは、前記スポンジの直径に対して0.1倍以上0.5倍以下の範囲内にあり、
    前記チャック機構に装着される際、前記スポンジは、直径が前記スポンジの直径の0.3倍以上0.7倍以下の範囲内にある金属片に挟持されるパイプ開先加工機。
  2. 前記スポンジは、前記開先加工の時に前記パイプ内に装入されると前記スポンジの外周面と前記パイプの内周面とが均等に接するように、前記チャック機構の前記切削刃とは反対側の端部の近傍及び/又は前記パイプの端部の近傍に装着される請求項1記載のパイプ開先加工機。
  3. 前記幅方向の前記金属片の断面積は、前記パイプの開口の断面積の0.2倍以上0.4倍以下の範囲内にある請求項1又は2記載のパイプ開先加工機。
  4. 前記スポンジは、前記前記幅方向の断面積と前記幅方向のパイプの開口の断面積との比が1.7倍以上5.3倍以下の範囲内にある請求項1〜3いずれかに記載のパイプ開先加工機。
  5. 前記スポンジの直径は、前記パイプの直径に対して1.5倍以上2倍以下の範囲内にある請求項1〜3いずれかに記載のパイプ開先加工機。
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