JP5009812B2 - 合成開口を用いた無線ベースの位置決定システム - Google Patents

合成開口を用いた無線ベースの位置決定システム Download PDF

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Description

本発明は、移動局と、少なくとも1つの位置固定局とを有する無線ベースの位置決定システムに関しており、殊に移動局の空間位置を決定することに関する。本発明はまたこのような無線ベースの位置決定システムの測定精度を向上させる方法に関する。
無線ベースの位置決定システムは、多様な実施例で公知であり、その概要は、例えば、IEEEの雑誌Microwave Magazine (Volume 4, Issue : 4. Dec. 2003, p.77-86)に発表された著者M. Vossiek,L. Wiebking,P. Gulden,J. Wieghardt,C. Hoffmann およびP. Heideによる論文[1] "Wireless Local Positioning"に示されている。
無線ベースの位置決定システムは、移動局と、大抵の場合には複数の位置固定局との間で無線信号が交換されることによって動作する。受信される無線信号に基づいて、移動局と、1つまたは複数の位置固定局との間の相対距離、または移動局と、1つまたは複数の位置固定局との間の相対角度、または移動局と、2つずつの位置固定局との間の距離差分が決定される。これらの測定値に基づき、三辺測量または三角測量を用いて移動局の空間位置を決定することが可能である。
無線ベースの位置決定システムの大きな問題は、空間において無線信号を十分に全方向に伝搬しなければならないことである。これが必要であるのは、例えば指向性無線区間とは異なり、移動局と位置固定のユニットとの間の相対位置が前もってわからないからである。しかしながら無線信号波を全方向に送出すると、移動ユニットと位置固定ユニットとの間で信号が、直接の最短経路を介して伝送されるだけではなく、例えば壁または対象体で反射して、したがって迂回して伝送され得ることにもなるのである。このような迂回により、場合によっては位置決定結果が大きく悪化することになる。このようないわゆる多経路問題ないしはマルチパス問題は、殊に室内での適用においては重大であり、また無線ベースの位置決定システムの達成可能な精度の限界を定める決定的なファクタなのである。しかしながら、例えば上記の論文[1]にも説明されているように、まさに室内において多様な適用が存在し、また例えば仮想現実およびオートメーション技術の分野において高い測定精度を要する適用が存在するのである。このような適用は、今日公知ないしは利用可能な無線位置決定システムにより、極めて限定的にしか実施されていないか、または全く実施されていないのである。
さらに、無線位置決定システムの精度を改善するために補助的なセンサ(例えば、加速度センサ、ジャイロスコープ、オドメータ、コンパスセンサ、傾きセンサ、ヨーセンサ、リニアエンコーダまたは角度エンコーダなど)を極めて有利に使用できることが公知である。これらの補助的なセンサは、大抵が相対センサである。すなわち、絶対位置ではなく、基準空間において出発位置に対する変化を決定するセンサなのである。これらのマルチセンサシステムないしはハイブリッドシステムは大抵の場合、運動モデルに基づき、種々異なるセンサの測定情報と、無線位置決定システムの測定データとを(例えばカルマンフィルタにおいて)組み合わせて動作する。
情報技術的な観点から見た場合、このようなシステムにおいて不利であるのは、複数のセンサの生データの代わりに個々の最終結果を互いに結合するため、センサにおける処理により、場合によっては情報が失われてしまう可能性があることである。例えば、無線センサにより、危機的なマルチパス状況のために誤った距離値が求められることになれば、大きなエラーを有するこの値が評価/組み合わせに使用されてしまうことになる。ハイブリッド式の付加部(Hybridansatz)により、場合によっては上記のエラーが識別されおよび/または低減され得るが、評価の出発となるベースは、エラーを有する測定値により、劣化されて後に影響を残すのである。
本発明の課題は、主請求項の上位概念に記載された位置決定システムを発展させて、高い測定精度が得られ、また例えば付加的な複数の反射による測定値の劣化が低減されるようにすることである。ここでこれらの反射は、移動局と位置固定局との間で、直接の信号伝送経路に加えて形成されるものである。
この課題は、請求項1に記載された方法によって、また請求項16に記載された装置によって解決される。別の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
本発明によって請求される方法により、絶対センサシステムおよび相対センサシステムの測定データを用いて、合成開口を張るのに使用されかつスタート位置から出発した移動局の運動を検出することによって、開口ないしは例えばアンテナの空間的な広がりが、相対センサシステムによって数学的に拡大され、ひいては合成開口が形成される。本発明によって示されるのは、新たなハイブリッド式位置決定システムおよび位置決定方法であり、ここでは無線位置決定システムの測定データは、続いて行われる処理に供給される前に、殊に有利に補助的な相対センサシステムの測定データによって組み合わされる。上記の方法により、マルチパス作用によるノイズを極めて有効に低減し、ひいては相対センサシステムと、無線ベースの絶対センサシステムとのほぼ最適な組み合わせを得ることができる。
本発明は、例えば、いわゆるTOA(time of arrival)ないしはRTOF(round trip time of flight)式の無線位置決定システムに関連している。TOAシステム(例えばGPS)では2つの局の間で一方向に伝搬時間を測定することによって、またRTOFでは局間の二方向に伝搬時間を測定することによってこれらの局間の距離が決定される。このようなシステムの殊に有利な実施形態は、GPSに関する関連文献またはUS 5216429,US 5748 891,US6054950,GB 1605409,DE 3324693,WO200167625および殊にSiemensの明細書PCT/DE00/03356,DE 19946168.6,DE 10155251.3,DE 10208479.3,DE 10 2004 017 267.6 または10 0584 180.1に記載されており、これらの内容は参照によってここに含まれるものとする[2]。
殊に絶対センサシステムないしは無線測定技術を実施して、つぎのような測定信号が得られるようにする。すなわち、この測定信号により、伝送信号の振幅および位相が、信号伝搬時間に依存して、ないしは伝送経路の長さに依存して表されるようにする。これは、ほとんどすべてのレーダシステムにおいてふつう行われることである。時間についての表し方が、連続であるか、離散的であるか、または数の制限された値の対(複素数の振幅値、時間)だけで表されるかは重要ではない。簡単のため、例えば上記のような信号を供給する、考えられ得るすべてのTOAまたはRTOF無線位置決定測定コンポーネントをここでは2次レーダという用語でまとめる。当然のことながらTOAシステムは、典型的な意味では2次レーダではないが、TOAシステム受信局における信号はふつう様子および情報内容が2次レーダにおける信号と同様であるため、情報技術的およびシステム技術的な観点からは共通に考察することが有効である。
このような2次レーダの測定信号(すなわちTOAまたはRTOFシステムの測定信号)を、以下では詳細な信号の種類とはかかわりなく、測定信号またはエコープロフィールと称する。エコープロフィールにおける種々異なる値または絶対値の最大値は、信号伝搬時間の異なる別の伝送経路に対応付けることができる。相対センサシステムにより、移動局の元の位置に対する位置変化の方向および大きさを数量化することができる。
本発明の方法は、合成開口の方法に基づいている。SAR(synthetic aperture radar)の一般的な原理は、例えばKlausingおよびW. Holppによる専門書"H. Radar mit realer und synthetischer Apertur"[3] (Oldenbourg, 2000)の第8章,第213頁以下に詳しく示されている。ほぼ同じ方法が医療または超音波測定技術の分野においてホログラフィないしはトモグラフィという用語で公知である。最後の方法の説明については、例えば、IEEE International Ultrasonic Symposium, Cannes, France, 1994に提出されたM. Vossiek, V. MagoriおよびH. Ermertの"An Ultrasonic Multielement Sensor System for Position Invariant Object Identification"を参照されたい[4]。本発明では、無線ベースで位置決定をすることを目的として、合成開口による上記の公知の方法を拡張して、任意の対象体において反射されノイズを伴う複数の信号を受動的に画像に処理するのではなく、種々異なる測定位置において記録された複数の反射信号だけを能動的に重ね合わせて、無線位置決定の目的として使用するのである。
有利な実施形態では、上記の絶対センサシステムの測定データの振幅重み付けおよび/または位相重み付けおよび/または開口の大きさを適切に選択して、合成開口の指向特性を形成して、その指向性パターンが上記の絶対センサシステムの誤差楕円の領域にてほぼ均一になるようにすることによって、上記の合成開口が使用される。指向性パターンは、任意の手段によって実施された事前の位置測定の誤差楕円の領域においてほぼ均一である。
別の有利な実施形態では、上記の合成開口を択一的に使用し、合成開口法を用いたマッピング、例えば広帯域ホログラフマッピング法を用いて、前記の位置固定局の既知の位置から移動局の未知の位置を逆算するないしはマッピングする。このような方法により、距離測定値に加えて角度測定値が形成される。
別の有利な実施形態では、上記の合成開口が択一的に使用し、移動局の既知の位置を位置固定局の未知の位置にマッピングないしは逆算する。
有利な方法ないしは有利な装置では、移動局、例えば2次レーダと、位置固定局、例えばトランスポンダとの間の距離および角度情報が計算される。これらの方法ステップは、相応に設けられた装置によって実施される。
有利な方法ないしは有利な装置では、1つまたは複数の位置に対し、カルマンフィルタを用いて、1つまたは複数の移動局、例えば2次レーダの1つまたは複数のトランスポンダの距離データおよび角度データを融合する。これらの方法ステップは、相応に設けられた装置によって実施される。
有利な方法ないしは有利な装置では、位置固定局、例えばトランスポンダを受動的な後方散乱タグ(Backscattertag)として実施し、また上記の2次レーダを基準として距離および角度にしたがって絶対位置を決定する。これらの方法ステップは、相応に設けられた装置によって実施される。有利な実施形態では、上記のステップの並びが繰り返されて、移動局の位置決定が改善される。
有利な実施形態では、最初の大まかな焦点合わせは、絶対センサシステムおよび/または相対センサシステムの測定値を用いて行われる。
有利な実施形態では、最初の大まかな焦点合わせは、前に行われた測定データの情報を用いて行われる。
有利な実施形態では、第1の局、例えば位置固定局の点b(x,y,z)を逆算ないしはマッピングするため、測定した受信信号En(ω)と、理論的な関数Fn(an,r,ω)とを相関させる。ここでこの関数は、理想的には点状の反射器と見なされる第1の局により、位置r=(x,y,z)Tおいて、例えば位置固定局によって形成される第2の局、例えば移動局の測定点an=(xn,yn,zn)Tから見て形成される。
移動局と少なくとも1つの位置固定局とを有する無線ベースの位置決定システムの測定精度を高める有利な装置により、相異なる複数の伝送経路によって発生する少なくとも1つの2次レーダのエコープロフィールが重ね合わされ、ここでは相対センサシステムの対応する相異なる複数の位置データが用いられて、仮想アンテナの形態で合成開口が形成される。
有利な実施形態では、少なくとも2つの位置固定局が提供されるため、定位データ(Lateralisationsdaten)を形成することができる。
有利な実施形態では、上記の移動局は2次レーダによって、また少なくとも1つの位置固定局はトランスポンダによって構成されて、「セルフポジションニング」システムが形成される。
有利な実施形態では、上記の移動局はトランスポンダによって、また少なくとも1つの位置固定局は2次レーダによって構成されて、「セルフポジションニング」システムが形成される。
有利な実施形態では、少なくとも1つの2次レーダのデータを信号処理装置に伝送するデータ伝送装置が設けられている。
図面を参照し、実施例に基づいて本発明を例示的に説明する。ここで、
図1は、位置決定の第1実施例(セルフポジショニング)を示しており、
図2は、位置決定の第2実施例(セルフポジショニング)を示しており、
図3は、広帯域ホログラフィックマッピング法を用いて位置をマッピングする図を示しており、
図4は、位置決定の第4実施例(リモートポジショニング)を示しており、
図5は、広帯域ホログラフィック法の解像度を推定する図を示している。
ここに示されているのは、センサシステムを用いてロボットアームをポジショニングする本発明の方法である。図1には典型的なこのようなロボットが示されている。図1には「セルフポジショニング」システムを用いて位置を決定する第1実施例が示されており、この第1実施例に基づいて、無線位置決定システムの測定精度を高める方法を簡単に説明することができる。「セルフポジショニング」システムにおいては実際の測定ユニットである2次レーザSRが移動式装置ないしは移動局に設けられているため、この移動式装置により、それ自体の位置が求められる。位置固定局は、トランスポンダTPによって構成されている。無線通信によって、測定を行っていない別の側の位置情報を得ることができる。AEは評価ユニットである。距離はdで示されている。Aはアンテナである。
図1にはこのような設計が示されており、ここでは2次レーダSRが、移動式の対象体(すなわちこの実施例ではロボットアームのグリッパである)に設けられている。ここでは3つのトランスポンダTPが位置固定局として設けられている。これに加えてこのロボットは、相対センサシステムRSを備えているため、例えば各関節に複数の角度エンコーダRS1,RS2,RS3を備えているため、元の位置を基準にした位置の変化の大きさおよび方向を数量化することができる。
上記の方法は、いわゆる「セルフポジショニング」システムに基づいて説明することができる。絶対的なポジショニングのためには、手頃なコストの範囲内で今日入手可能なロータリエンコーダの精度は十分でない。それはその誤差が比較的長い走行路にわたって累積されるからである。さらに機械的な変形に起因して不正確さが存在することも多い。したがって相対センサを有する典型的な装置/システムにより、
1) 良好な繰り返し精度と、
2) 小さな位置変化についての極めて良好な精度とが得られ、
3) しかしながら比較的大きな領域にわたって自由に運動する場合に、良好でない絶対位置値も得られるのである。殊に最後の問題3)は、本発明により、上で説明した無線位置決定システムに関連して、上記の特性2)を利用することによって解決される。
本発明では特性2)を利用し、移動システムの運動によって合成開口が張られるようにする。ここで重要であるのは、このために2次レーダSRのアンテナAの絶対位置を識別する必要がないことであり、任意の基準点(例えば測定のスタート点)に対する開口グリッド点の相対座標から合成開口を計算するので十分であり、まさにこの情報は有利にもさまざまな相対センサによって得られるのである。
運動に関連して2次レーダによって合成開口を張る場合、後から計算により、(ふつうの無線位置決定の個別測定におけるほぼ全方向性の波の伝搬に比べて)格段に精確な方向(richtcscharf)で、空間内のほぼ任意の点に無線信号を焦点合わせすることができる。すなわち、あたかもトランスポンダに向いた方向の精確な物理的なアンテナによって測定したかのような状況が計算によって形成されるのである。方向の精確なアンテナを使用することによって、マルチパス問題が格段に低減されることは公知である。
トランスポンダの位置ははじめのうち既知でないため、一般的には計算によって焦点をトランスポンダに直接向けることはできない。本発明では2つの択一的な実施形態による合成開口を使用する。
第1の択一的な実施形態
使用するセンサシステムによって、すなわち、従来技術による基本的な実施例における絶対センサシステムないしは無線位置決定センサシステムおよび/または相対センサシステムによって、ふつうトランスポンダの位置を少なくとも大まかに決定することができる。第1の択一的な実施形態では、位置決定測定の予想される誤差領域を特徴付ける典型的な誤差楕円(Fehlerellipse)を推定可能である。したがって所定の確実さで前提とすることができるのは、上記のトランスポンダが、上記の測定値および誤差楕円によって表される空間区分内のどこかにあることである。つぎに計算により、あらかじめ大まかに測定したトランスポンダのある個所に上記の合成開口の送信/受信装置が配向される。開口の大きさを適切に選択することによって、また場合によっては測定信号の振幅を適切に重み付けすることによってさらに、合成開口の指向性パターンが誤差楕円の領域においてほぼ均一になり、ひいては有利にも誤差楕円の横の角度範囲において大きく減衰し、またそこにわずかなサブマキシマムしか有しないようにする。合成開口において受信信号の振幅重み付けおよび位相重み付けをすることにより、また開口の大きさにより、どのようにして所定の指向特性を得られるについては、(例えば上で挙げた刊行物により)専門家には公知である。すなわちここでは仮想アンテナが形成されるのであり、この仮想アンテナは、可能な限りに精確な方向でトランスポンダに配向されるが、誤差を有する精確でない事前情報に起因して必要な程度に全方向性にトランスポンダに配向される。無線伝送の方向の精確さを高めることによって、マルチパス誤差が格段に低減される。合成開口を用いて形成され「改善された」測定信号は、公知の従来技術による上位のふつうの位置決定アルゴズムに極めてふつうに供給することができる。ここで説明した方法は、空間的な位置決定のために少なくとも2つのトランスポンダに適用して、必要な定位データを得なければならない。上記の事前情報を改善するため、すなわち方向が一層精確になるように焦点合わせできるようにするため、過去の複数の測定から得られた情報を使用することも考えられる。予想される新たな存在個所の予測は、例えば、カルマンフィルタによって行うことができる。また上記の誤差楕円の大きさの推定も同様である。
第2の択一的な実施形態
トランスポンダの位置を決定する第2のバージョンでは、画像形成が行われる。すなわち、運動する2次レーダを用いて、空間に存在するすべてのトランスポンダを画像領域b(x,y,z)にマッピングするのである。この画像領域は、2次レーダの位置に対して既知の関係を有するため、トランスポンダをマッピングすることによって、(一定の位置にある)これらのトランスポンダに対する2次レーダの相対位置が直接決定されて、ひいてはこの空間におけるその絶対位置が推定される。ここで有利であるのは、2次レーダを適切に2次元で運動させる場合、2次レーダの3D位置を決定するために理論的には1つだけのトランスポンダをマッピングするだけで十分なことである。これは、コスト上のまたはカバー上の理由から、良好な三辺測量のベースを張ることができない応用に対しては極めて有利になり得る。上記の画像形成によって2次レーダに対する複数のトランスポンダの距離および方向が決定される場合、任意の従来技術による上位のふつうの位置決定アルゴリズムに、まったくふつうにこれらの値を供給することができる。これらのトランスポンダのマッピングを行うために、画像を形成する公知のすべての合成開口法および合成開口アルゴリズムを使用することができる。
図2には説明のために、類似に配置された別の位置決定アプリケーションが示されている。しかしながら本発明の装置および方法はこれに加えて、全く異なるアプリケーション、例えば車両、フォークリフト、クレーン、携帯電話、ラップトップなどの移動端末装置の人間などの位置決定などに直接転用可能である。トランスポンダTPのマッピングのために、公知のすべての画像を形成する合成開口法および合成開口アルゴリズムを適用することができ、またこの適用に転用することができる。以下では実施例として、いわゆる広帯域ホログラフィックマッピング法による1変形実施形態を説明する。記録状況を説明するために図3を使用する。
すでに示したように、1つずつの2次レーダによって位置an=(xn,yn,zn)Tから信号が放射されることによってデータ記録が行われる。わかりやすくするため、まず2次レーダにより、トランスポンダから返送される信号が同じ位置anにおいて受信されるとする。別個の送信アンテナおよび受信アンテナを有する装置への転用は、例えば上で挙げた刊行物によって容易に可能である。このような測定過程は、M個の相異なる測定位置(anただしn=1…M)によって実行するとよい。したがってこの測定により、M個の相異なる測定信号(エコープロフィール)からなるグループが得られ、これらの測定信号を以下ではen(t)ないしは対応するスペクトルEn(ω)で表す。
上記のトランスポンダの真の位置でありかつ理想的には上記の測定によって決定される位置をPTP1 = (xTP1,yTP1,zTP1)Tとする。
コンパクトな表示のために、別の簡略化を前提とする。すなわち、
− トランスポンダが止まることのできる測定領域は、このトランスポンダがすべての位置anから2次レーダによって検出できることが保証される空間領域に制限される。
− 以下では、すべてのアンテナが、方向に依存しない均一で一定の指向特性を有するとする。
− 伝送チャネルのモデリングのためのベースは、理想的なAWGNチャネルである。すなわち、レーダによって受信されるエコープロフィールen(t)は、1つのモデルによって表すことができ、ここでは受信信号は、P個の振幅重み付けされかつ時間遅延された送信信号を線形に重ね合わせることによって得られ、ここでインデックスpは、2次レーダからトランスポンダへまたここから戻る相異なる伝送経路(直接の経路およびマルチパスの迂回路)を表す。
Figure 0005009812
αnは測定経路n毎に特徴的な減衰定数とする。
またαpにより、p個の伝送経路の各伝送経路に対してふつうの基本減衰を越える減衰が考慮される。
τnは、測定経路nに特徴的な信号伝搬時間とする(すなわち、2次レーダからトランスポンダまでまたこの逆の直接で最短経路の信号伝搬時間である)。
またτpにより、多重反射に起因して発生し得る、p個の伝送経路の各伝送経路に対する伝搬時間変化を考慮する。
n(t)は、加法的に重畳されるノイズ(加法的白色ガウスノイズ AWGN additive white Gaussian noise)を表す。
伝送モデルに対する式を周波数領域に変換すると、
Figure 0005009812
が得られる。
任意の空間点r=(x,y,z)Tに至るおよびここから戻るための基本伝搬時間τn
Figure 0005009812
にしたがって計算され、ここでcはこの波の伝搬速度である。
上記の広帯域ホログラフィック再構成アルゴリズムは、最適フィルタリングに基づいている。画素b(x,y,z)を計算するため、測定した受信信号En(ω)と、理論的な関数Fn(an,r,ω)とを相関させる。ここでこの関数は、理想的には点状の反射器と見なされるトランスポンダにより、位置r=(x,y,z)Tにおいて測定点an=(xn,yn,zn)Tから見て形成される。この相関/比較関数は、受信信号が理論的な信号に似ている場合にだけに大きな値を出力する。これは、位置rに実際にトランスポンダがある場合である。すなわち、前提とした画素点rが実際にトランスポンダPTP1=(XTP1,YTP1,ZTP1)Tに相応する場合である。
すべてのM個の測定経路に対して相関結果を合計することによって、位置rにトランスポンダがあるか否かを示す確率値が得られる。したがって再構成の式は、
Figure 0005009812
となる。
ここで(一種の相関による)信号比較のために選択される逆フィルタは、指数形の伝搬項が、ふつうに使用されるマッチドフィルタの式に相応する(すなわち共役複素数信号、つまりFn *(an,r,ω)との乗算)。上で説明した伝送モデルに基づいてまた加法的なノイズを無視すると、rにおける仮想的なトランスポンダの信号Fn(an,r,ω)は
Figure 0005009812
になる。
以下でさらに、送信信号がS(ω=1)であると仮定する。これは一般妥当性を制限することなく可能である。それは、送信信号の場合によっては生じ得る理想的でない特性は、少なくとも関心のある伝送領域において、上記の逆フィルタの式によって補償できるからである。
このような信号の仮説を使用すると、上述の再構成の式は
Figure 0005009812
となる。
τn+τpをtで置き換えて、pについての和を積分の前に出すと、角周波数ωについてこの積分は逆フーリエ変換に相当し、ひいては時点t=τn+τpにおける受信信号を与えることがわかる。信号迂回路τpは、τp=0である直接の経路を除いて未知であるため、この信号モデルをこの経路にまで縮小する。したがって最終的な再構成の式は、
Figure 0005009812
となる。
注意すべきであるのは、和をとる前に場合によっては生じ得る実の受信信号を複素数の信号に拡張して、画像関数の包絡線、すなわち一種の「輝度関数」を求められるようにしなければならないことである。上記の複素数信号の計算は、ヒルベルト変換によって行うことができる。
得られた表現は極めて直観的に解釈することができる。実際にトランスポンダが位置rにある場合、エコープロフィールen(t)におけるその応答信号はそれぞれ時点t=τnに発生する。M個の測定経路について正しい伝搬時間で和をとることによって、その信号の寄与成分は上記の再構成の式によってコヒーレントに重ね合わされるため、b(x,y,z)に対して大きな値が得られる。これに対して、rに位置しない別のトランスポンダの場合によって生じ得る信号成分、マルチパス反射の信号成分またはノイズは、伝搬時間が変化するために、インコヒーレントに重なり合い、ひいて格段に小さい画像信号になるのである。複数のエコー信号がインコヒーレントに重なり合って振幅が小さくなることを保証できるようにするために必要であるのは、測定点の数Mを小さく選択し過ぎないことである。
ここで容易に示すことができるのは、上記の導出の途中で行ったほぼすべての簡略化は不要であり、ひいては必要な場合に実際の理想的でないシステム特性を比較的簡単に考慮し得ることである。したがって、例えば、レーダアンテナの位置に依存する指向特性および測定システムの周波数に依存する伝達関数を逆フィルタによって考慮することも可能である。
変形実施形態2)の方法の興味深い副次的な作用は、上記のトランスポンダを時間多重化、周波数多重化または符号多重化で作動させる必要がないことである。ふつうの無線位置決定システムにおいてこれは、トランスポンダ信号が互いに妨害し合わないようにする、ないしは測定局において複数のトランスポンダ信号が重なり合って、誤った結果に結びついてしまわないようにするために必要である。本発明による方法によって内在的に得られるのは、いわゆる空間分割多元接続である。したがってトランスポンダの位置が互いに離れている場合、これらのトランスポンダは、上記の合成開口によって、マッピングにおいて位置が別個に分解されて、これらが別の符号化がなくても区別できるということになるのである。
ここまでは実施例において、「セルフポジショニング」装置を前提としていた。本発明の方法は、レーダおよびトランスポンダの座標の相対的な対応付けであるため、直ちに明らかであるのは、上記の装置がリモートポジショニングシステムにも転用できることである。
位置固定の2次レーダの位置を決定する方法は、少なくとも1つの2次レーダの絶対位置を前もって大まかに決定することによって特徴付けられる。ここでこれは、トランスポンダの運動を用いてすべての2次レーダを画像領域においてマッピングした後、停止したただ1つのこのトランスポンダの絶対位置に対してその相対位置を決定することによって、一定の既知の位置にある2次レーダに対して、停止したトランスポンダの相対位置を決定することによって、またこれに基づいて、停止したトランスポンダの絶対位置を推定することによって行われる。
図4には、無線位置決定システムの考えられ得る別の実施例が示されており、その測定精度は本発明の方法によって高められる。図4には、図1と異なり、「リモートポジショニング」システムが示されている。「リモートポジショニング」システムにおいて、位置固定局は測定ユニット(SR)を有しており、またこれによって外部から移動装置ないしは移動局(TP)の位置を決定する。このシステムにおいても同様に無線通信により、測定を行っていない別の側の位置情報を得ることができる。
この場合、相対センサシステムの情報を位置固定の2次レーダに伝送しなければならない。ないしはこの2次レーダは、そのエコープロフィールを中央の評価ユニットに伝送しなければならない。ここでこの評価ユニットにより、上記の相対センサシステムの情報が用いられて上述の方法のうちの1つが実行される。以下ではシステムを設計するためのいくつかの基本式を示す。ここでパラメタは図5によって示されている。
合成開口法は測定信号のコヒーレントな重ね合わせに基づいているため、この方法を適用するための必要な条件は、すべての測定位置an=(xn,yn,zn)Tが互いに対して、波長λの大きさをはるかに下回る偏差δPosで既知でなければならないことである。この条件が満たされない場合、もはや信号を所期のようにコヒーレントに重ね合わせることはできない。ふつうの要求は例えば、
δPos < λ/8 < c/(fm・8)
であり、fmは、測定信号の中央周波数を示す。
広帯域ホログラフィック法の予想される解像度を推定するため、上記の刊行物にはつぎの式が示されている。
横方向の解像度(説明については図5を参照されたい)は約
δlat 〜 z0・c/(D・fm)
であり、軸方向の解像度(説明については図5を参照されたい)は約
δax 〜 c/(Δf)
であり、ここで使用した変数はつぎのように定められる。すなわち、
0:開口面と記録領域との平均距離、
D:開口の長さ、
c:波の伝搬速度、
m:測定信号の中央周波数、
Δf:測定信号の帯域幅
である。
以下では、中間周波数5.8GHzおよび100MHzの帯域幅で動作しかつ例えば図1に示したようなロボット応用に使用されるシステムに対する特性量を考察する。このロボットの作業領域は、Z0が最大で4mになる空間領域に制限されるものとする。ロボットアームが運動することによって、例えば、20cmの合成開口が張られるものとする。
この場合、得られる約1mの横方向解像度は、軸方向の解像度よりも格段に良好である。伝搬時間によるふつうの無線位置決定システムにおいて後者は、決定的な特性量のうちの1つである。位置決定の精度が、補間法により、ふつう1〜2の大きさのオーダで解像度値を下回ることを考慮すると、少なくとも、十分なレベルで最短の直接の伝送経路が存在する場合には、本発明による方法によるただ1つのトランスポンダだけに対する測定が、わずか数cmの測定の不確かさにしかならないと推定することができる。1つの2次レーダから複数のトランスポンダに至る測定および/または複数の2次レーダから少なくとも1つのトランスポンダに至る測定を組み合わせることによって、上記の精度をさらに高めることができるため、ミリメートルまたサブミリメートルの範囲の測定の不確かさを達成することができる。
相対センサシステムの測定精度に対する要求は、上で示した式によれば、絶対値でδPos < 6.5 mmであり、すなわち、開口サイズを基準にした相対値では3%であり、これはふつうのロータリエンコーダに対して適切な要求である。つぎの例として車両の位置を測定する433MHzのシステムを考察する。この車両の作業領域は、Z0が最大で100mになる空間領域に制限されるものとする。車両が運動することによって、例えば、1mの合成開口が張られるものとする。相対センサシステムの測定精度に対する要求は、この場合、約<10cmであり、開口サイズを基準にした相対値では<10%であり、これはふつうのオドメータおよび操舵センサによって達成できるものである。
最後の例は、例えば、人間が携帯する移動式端末装置(ラップトップ、WLAN,Bluetooth(登録商標),移動無線装置など)にも転用される。この場合に相対センサとして、例えば加速度センサまたはジャイロを使用することができる。
位置決定の第1実施例(セルフポジショニング)を示す図である。 位置決定の第2実施例(セルフポジショニング)を示す図である。 広帯域ホログラフィックマッピング法を用いて位置をマッピングする図である。 位置決定の第4実施例(リモートポジショニング)を示す図である。 広帯域ホログラフィック法の解像度を推定する図である。

Claims (19)

  1. 移動局および少なくとも1つの位置固定局を有する無線ベースの位置決定システムの測定精度を高める方法において、
    該方法は、
    − スタート位置から出発した前記移動局の運動を絶対センサシステムおよび相対センサシステムの測定データによって検出し、
    − 当該の絶対センサシステムおよび相対センサシステムの測定データを用いて、絶対センサシステムに関する、合成開口の形態仮想アンテナを形成し、
    − 当該の合成開口を使用することによって、前記の移動局を位置固定局におよび/またはこの逆に互いに焦点合わせする、
    ただし前記の絶対センサシステムの測定データは、少なくとも1つの2次レーダのトランスポンダから返送される信号として受信されることを特徴とする、
    移動局および少なくとも1つの位置固定局を有する無線ベースの位置決定システムの測定精度を高める方法。
  2. 前記の合成開口を使用し、前記の絶対センサシステムの測定データの振幅重み付けおよび/または位相重み付けおよび/または開口の大きさを適切に選択することにより、前記の合成開口の指向特性を形成して、先行して行った任意の位置測定の誤差楕円の領域にて指向性パターンがほぼ均一になるようにした、
    請求項1に記載の方法。
  3. 合成開口によるマッピング法を用いて前記の位置固定局の既知の位置から移動局の未知の位置を逆算するため、前記の合成開口を使用する、
    請求項1に記載の方法。
  4. 前記の合成開口によるマッピング法は、広帯域ホログラフマッピング法である、
    請求項3に記載の方法。
  5. 前記の移動局の既知の位置を逆算して位置固定局の未知の位置を求めるため、前記の合成開口を使用する、
    請求項1に記載の方法。
  6. 移動局と、位置固定局との間の距離および角度情報を計算する、
    請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記の移動局は2次レーダによって構成され、前記の少なくとも1つの位置固定局はトランスポンダによって構成される、
    請求項6に記載の方法。
  8. 前記の移動局はトランスポンダによって構成され、前記の少なくとも1つの位置固定局は2次レーダによって構成される、
    請求項6に記載の方法。
  9. 前記の位置固定局を受動的な後方散乱タグとして実施し、
    前記の移動局を基準にした距離および角度にしたがって絶対位置を決定する、
    請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記のステップの並びを繰り返して、前記の移動局の位置決定を改善する、
    請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記の絶対センサシステムおよび/または相対センサシステムの測定値を用いて最初の大まかな焦点合わせを行う、
    請求項2に記載の方法。
  12. 先行して行った測定の情報を用いて最初の大まかな焦点合わせを行う、
    請求項2または11に記載の方法。
  13. 第1の局の点b(x,y,z)を逆算するため、測定した受信信号En(ω)と、理論上の関数Fn(an,r,ω)とを相関させ、
    該関数は、理想的には点状の波源と見なされる第1の局により、位置r=(x,y,z)Tにて第2の局の測定点an=(xn,yn,zn)Tから見て形成される、
    請求項3から12までのいずれか1項に記載の方法。
  14. 再構成規則の式は、
    Figure 0005009812
    であり、ただし、
    nは、位置an(n=1,…,M)にて得た測定した測定信号に対応するスペクトルであり、
    αnは、測定経路n毎の特徴的な減衰定数であり、
    αpは、p個の伝送経路の各伝送経路に対してふつうの基本減衰を上回る減衰であり、
    τnは、測定経路nに特徴的な信号伝搬時間であり、
    τpは、多重反射によって発生し得る、p個の伝送経路の各伝送経路に対する伝搬時間変化であり、
    n(t)は、加法的に重畳されるノイズである、
    請求項13に記載の方法。
  15. 最終的な再構成規則の式は、
    Figure 0005009812
    であり、ただし、
    nは、位置an(n=1,…,M)で得た測定信号である、
    請求項14に記載の方法。
  16. 移動局および少なくとも1つの位置固定局を有する無線ベースの位置決定システムの測定精度を高める装置において、
    a) 少なくとも1つの2次レーダと少なくとも1つのトランスポンダから構成される絶対センサシステムと、
    b) 元の位置を基準にした移動局の位置変化の大きさおよび方向を数量化するために設けられた少なくとも1つの相対センサシステムと、
    c) 前記の絶対センサシステムおよび相対センサシステムを用いて検出した測定データを共通に処理して、絶対センサシステムに関する、合成開口の形態の仮想アンテナを形成する信号処理装置と、
    d) 該合成開口に基づいて、移動局を位置固定局におよび/またはこの逆に互いに焦点合わせする焦点合わせ装置とを有しており、
    ただし前記の絶対センサシステムの測定データは、少なくとも1つの2次レーダのトランスポンダから返送される信号として受信されることを特徴とする、
    無線ベースの位置決定システムの測定精度を高める装置。
  17. 前記の移動局は2次レーダによって構成され、前記の少なくとも1つの位置固定局はトランスポンダによって構成される、
    請求項16に記載の装置。
  18. 前記の移動局はトランスポンダによって構成され、前記の少なくとも1つの位置固定局は2次レーダによって構成される、
    請求項16に記載の装置。
  19. 前記の位置決定システムはRTOF(round trip time of flight)またはTOA(time of arrival)式の無線位置決定システムである、
    請求項16から18までのいずれか1項に記載の装置。
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