JP7326422B2 - 波動に基づいた信号を用いて少なくとも1つの物体の位置特定を行うための位置特定方法及び位置特定システム - Google Patents

波動に基づいた信号を用いて少なくとも1つの物体の位置特定を行うための位置特定方法及び位置特定システム Download PDF

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Description

本発明は、波動に基づいた(wellenbasierter)信号を用いて少なくとも1つの物体の位置特定を行うための位置特定方法であって、波動場(Wellenfeld)が位置特定されるべき物体から生じ、その物体から生じた波動場がN個の受信機によって受信される、位置特定方法に関する。波動場は、物体自身から放射されるもの及び外部ソースによって照射されてその波を反射するものの両方であり得る。
波動に基づいた位置特定のための典型的な方法は、伝搬時間測定(例えばマルチラテレーション(Multilateration))、伝搬時間差測定(TDOA(TimeDifference of Arrival:到達時間差)法)、位相情報からの角度測定(例えばマルチアンギュレーション(Multiangulation))、又は複数の技術の組み合わせからの距離情報に基づいている。位置特定にさまざまに使用されるこれらの周知の方法の概要は、例えば、Vossiek, M., Wiebking, L., Gulden, P., Wieghardt J.及びHoffmann C.による「無線局所的測位-概念、解決策、応用(WirelessLocal Positioning - Concepts, Solutions, Applications)」や、Dobrev Y.及びShmakov D.による「人及び移動ロボットの3Dリアルタイム位置特定のための双方向24GHz無線測位システム(A Bilateral 24 GHz WirelessPositioning System for 3D Real-Time Localization of People and Mobile Robots)」に見い出される。
既知の方法では、関連情報(例えば、より遠方の局からの距離及び/又は角度)が個々の測定器(局)によってそれぞれ計算され、これから位置が計算される。ここでは、例として、伝搬時間決定手段(例えば、Brooker G.M.による「ミリ波FMCWレーダーの理解(UnderstandingMillimetre Wave FMCW Radar)」に記載されているようなFMCWレーダーの手段)によって距離を測定するマルチラテレーションが言及されている。位置が既知の空間的に分離された少なくとも2つ(2次元位置)又は3つ(3次元位置)の局のための円セグメントの交点を形成することにより、物体やトランスポンダ等の位置特定が可能になった。
以下では、波動を利用した測定器をレーダーと呼ぶ。提示された方法が、すべての波形(例えば、電磁、光学または音響波形)で実行され得ることは、当技術分野で一般的に知られている。以下では、信号を受信するための装置をアンテナという。しかしながら、当技術分野で一般的に知られているように、波動に基づいた測定器は、波動の受信を可能にする任意の装置(例えば、電磁波の場合にはアンテナ、光波の場合には光検出器又は電気光学混合器、音響波の場合には変換器又はマイクロフォン)を備えていてもよい。
しかし、先行技術からこれまでに知られている方法には、いくつかの不利な点がある。ここでは一例として、マルチアンギュレーション法の不利な点が抜粋される。
・測定可能な角度範囲は、装置の一意性範囲(Eindeutigkeitsbereich)に制限される。
・マルチパス伝搬は、マルチパスの位相がアンテナで測定され、その結果、角度が誤って推定されるということがあり得、これは位置を大幅に偽ることになる。
・あるレーダーの角度測定が明らかに間違っていて(例えば、冗長システム内の他のレーダーの測定結果から大きく異なるので)、このレーダーの測定結果が位置決定に使用されない場合、このレーダーの位相値は、もはや位置特定に寄与しない。これは、位相値が個別に評価されず、したがって、レーダーの位相値のうちのほんの一部だけがこの誤った角度推定の原因であっても、レーダーのすべての位相値が全体として失われることを意味する。
・測定空間をスキャンして仮説や測定を点ごとに計算しなければならないので、高い計算力が求められる。
・アンテナ間は小さな距離(一般に1波長未満から数波長までの範囲)でなければならないため、アンテナ間にクロストークが発生し、これが干渉の原因となる。
したがって、上記の不利な点の少なくともいくつかを克服することができる位置特定方法の改良された解決策が求められている。
この目的は、請求項1の特徴による方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
物体の少なくとも1つの過去の位置と、少なくとも1つの受信機によって測定された少なくとも2つの位相値とから、物体の現在の位置を直接決定または推定する、すなわち、位置決定が過去からの物体の位置に基づいて再帰的に行われる、本発明による位置特定方法が、提案されている。
そのための基本的な要件は、位置特定されるべき物体が、少なくとも1つの受信機の方向に伝播する対応する波動場を生成することである。そのような受信機は、次に、少なくとも1つの受信アンテナの助けを借りて、波動場の測定信号を検出することができ、測定信号の信号位相曲線から少なくとも1つの信号位相値を得ることができる。少なくとも1つの受信機によって測定された測定信号の信号位相は、本請求項による位相値として理解されるべきである一方、他方では、複数の信号位相から導出される少なくとも1つの値も、位相値として理解され得る。このような導出された値は、例えば、少なくとも2つの信号位相値の差又は和であり得る。
位置特定のために使用される少なくとも2つの測定された位相値については、信号位相と、送信機/物体と受信機との間の信号伝搬時間又は信号伝搬時間差との間の両方の値について明確な関係が確立され得ることが極めて重要である。逆に、信号位相が信号伝搬時間に依存するということは、信号位相が物体と受信機との距離にも等しく依存していることを意味する。よって、仮説的な送信機/対物受信機距離から仮説的な位相値を決定することができる。これらの数学的関係に基づいて、物体と受信機との間の現在の距離、その結果、受信機に対する物体の現在位置は、測定された位相値と仮定の位相値を比較することによって決定することができ、再帰的な手順の意味で、ここでは物体の少なくとも一つ前の位置が出発点として使用され、測定された位相値と仮定の位相値との間の誤差は、この位置を調整することによって可能な限り最小化される。
多次元位置決定のためには、少なくとも2つの測定された位相値と対応する個数の仮想位相値との比較が有用である。既に示されているように、位相値は、互いに直接比較する必要はなく、代わりに、測定された位相値間の和又は差を、対応する仮想位相値の和又は差と比較することもできる。これらのオプションは、対応する一次結合を使用してマッピングすることができる。すなわち、利用可能な測定された位相値の一次結合が、仮想的な位相値の線形の組み合わせと比較される。一次結合の事前因子を適切に選択することにより、任意に重み付けされた位相値の和及び/又は差を、位相値と同様に、互いに直接比較することができる。
この点で、位置を特定する対象物の伝送位相を再帰的に推定することもできる。このように、距離と位相との関係を利用して、位置検出対象物の伝送位相がゆっくりしか変化しない(あるいは既知の関係が存在する)場合には、位置検出対象物の位置に関する情報を得ることができ、位置検出対象物の伝送位相がゆっくりしか変化しない場合には、位置検出対象物の位置に関する情報を得ることができる。
1つ以上又は全ての前因子が値ゼロを採用する場合は、本発明の枠組みにおける線形組み合わせとしても理解されたい。
互いに安定した位相関係を有する少なくとも2つの測定信号が位置推定のために利用可能であるという事実だけが重要である。波動場のための少なくとも2つの測定信号、よって2つの位相値は、少なくとも2つの空間的に分離された受信機又はアンテナによって典型的には取得される。これは、例えば、少なくとも2つのアンテナからなるアンテナ構成を有するレーダー局であり得る。しかし、完全に別の2つの受信機であってもよい。理想的には、それぞれが最大N本のアンテナを持っているNR受信局が利用可能である。各受信局のアンテナの個数は異なっていてもよく、ここでは任意である。この場合、各受信機には、最大N個の位相値が利用可能であり、互いに安定した位相関係にある。したがって、合計では、最大N個の位相値のNRセットが利用可能である。また、コヒーレント送信機の場合、局の間には安定した位相関係が存在する。それにより、仮想的な位相値の対応する一次結合と比較することによって、利用可能な位相値の間に適切な一次結合を形成することにより、正確な位置推定を行うことができる。
しかし、位相値は必ずしも空間的に別々の受信機に由来するものである必要はない。少なくとも2つの位相値は、異なる時間に測定信号から取得したものであってもよい。この場合、1つの受信機のみでも位置推定は想定される。少なくとも2つの測定された位相値はまた、異なる周波数を有する測定信号から生じてもよい。すなわち、異なる周波数を有する波動場が物体から発せられ、これにより、受信機側で異なる周波数を有する測定信号に対して少なくとも2つの位相値を測定することが可能となる。さらにこれらの方法を組み合わせて使用することもできる。
対象物から少なくとも1つの受信機に向かう波動場の伝播は、検出されるべき位置Pで他の場所に放出された波を散乱させるか、又は反射させるように位置する対象物によって引き起こされ得る。代替として、位置特定がされるべき対象物は、対応する送信信号を発する無線装置又は送信装置を位置Pで直接、有していてもよい。また、対象物自体が、例えば、熱放射又は電波放射を波の形態で放出しても同様によい。
もし異なる周波数を有する波動場が対象物から発生するなら、これは、反射における対象物の対応する非線形性によって、又は対象物の一体化された無線装置又は送信装置の非線形特性によって生じる。
例えば、1つの送信機は、周波数f0を有する波動場を放射する。これに応答して、位置特定されるべき対象物は、対象物の非線形性に起因して周波数f0の倍数を含む波動場を生成する。そして、異なる周波数の位相値は、1つ以上の受信機によって測定され、前述の評価方法が施される。
送信機から最初に発せられる波動場は、少なくとも1つの周波数、好ましくは少なくとも2つの周波数(f1; f2; f3; …; fn)を有する。位置特定されるべき対象物の非線形性によって、これら周波数の倍数(n1*f1; n2*f2; n3*f3; …; nn*fn)及び相互変調積(n1*f1+n2*f2+…+nn*fn)が生成され、それらの位相値は、少なくとも1つの受信機によって測定される。送信機から発せられる波動場は、少なくとも1つの周波数、好ましくは少なくとも2つの周波数(f1; f2; f3; …; fm)を含むが、位置特定されるべき対象物は、周波数/周波数群(fm+1, ... , fn)自体を発生し、位相値が測定されるその非線形性に起因して、倍数及び相互変調積を発生することも想定され得る。
一次結合を使用し、そこで使用される前置因子を適宜、選択することで、送信位相に関する任意の情報を消すことが可能である。したがって、本発明に従って提示された方法では、少なくとも2つの空間的に離れた信号から位相を導出することができるなら、受信信号から送信信号へのコヒーレンスに関する情報は存在していなくてもよい。
以下、信号を受信するための装置をアンテナという。ただし、使用する波の種類によっては、波動ベースの測定装置は、その波の受信を可能にする適切な装置(例えば、電磁波の場合はアンテナ、光波の場合は光検出器又は電気光学混合器、音響波の場合は音響変換器又はマイクロフォン)を備えていてもよい。
位相値について理想的な測定値を仮定すると、測定された位相値と仮定された位相値との比較は、正確な物体位置を仮定した場合には100パーセントの一致をもたらすはずである。しかし、測定値にはノイズ信号が重畳しているため、ここで測定値の偏差が発生することがある。この問題を回避するために、本発明の好ましい実施形態では、結果として生じる偏差の総和を最小化するために、特に一次結合の個々の比較について、適切なペナルティ関数を線形の組み合わせの比較に使用することが提案されている。これは、再帰的な推定器/フィルタによって行われる。ここで、再帰的な手順に従って、検出されるべき物体の最後の既知の点が仮定され、再帰的な統計的またはフィルタリング手順によって、比較された位相値の助けを借りて、現在の位置が決定される。
物体及び/又はセンサ値のための1つ以上の動きモデルを再帰的な推定器/フィルタ、特に慣性センサシステム及び/又は物体のドップラー評価に組み込むことも想定可能である。
再帰的な位置推定に適したペナルティ関数としては、例えば、2次関数(最小2乗)を用いることができる。最小二乗最小化のためのよく知られたシステムは、いわゆる拡張カルマンフィルタである。カルマンフィルタは、例えば、最後に知られている状態、すなわち、オブジェクトの最後に知られている位置から開始する。最後に知られた状態に基づいて、新しい状態が推定され、測定された位相値またはその線形の組み合わせとの数学的関係を使用して比較され、最適化される。また、事前推定を最適化するために、物体の速度成分とそれに対応する共分散を考慮に入れることも考えられる。
好ましい実施形態によれば、仮説及び/又は測定された位相値の各一次結合について、いわゆるカルマンゲインを計算することができ、これは、事前推定及び測定がそれぞれの場合にどれだけ強く信頼されているかを示す尺度である。次のステップでは、事前推定の測定値と状態値が比較され、この目的のために、事前推定位置は、例えば、対応する仮想的な位相値に変換され、測定ベクトルに類似して、例えば、差は、受信機ごとに可能なすべての一次結合、すなわち、各アンテナの組み合わせについて形成される。その後、測定された位相値を用いて、必要に応じてカルマンゲインを考慮に入れて、位置推定値と共分散行列が補正され、これに基づいてオブジェクトの新しい位置が得られる。
全方向に対称的な補正を可能にするために、対応する位相は、モジュロ演算を使用して特定の値空間にマッピングされる。
最初の測定点については、すなわち、既知の位置値がない場合には、初期の開始値を想定することができる。また、別の位置法に基づいて初期開始値を選択したり、多数の開始点から同時に開始して最適解を選択したりすることも考えられる。
再帰的な位置推定のために拡張カルマンフィルタを使用する代わりに、擬似線形フィルタを使用することもできる。また、傾斜探索(gradientenbasierte Suche)やブルートフォース探索に基づいて再帰的な位置推定を行うことも可能である。
また、1つの測定点に対して、推定する位置の最適推定値にどんどん近づくように、複数回連続して手順を実行することで、推定する位置に対して反復的に手順を実行することも考えられる。
本発明に従った方法は、特に、位相だけでなく、送信機と受信機の間の距離の関係があるすべての波動センサに使用することができる。信号がコヒーレント(二次レーダーの場合は純反射による)であるか、インコヒーレント(一次レーダーの場合はLPRの原理による)であるか、無線ブイの場合は無線ブイによる)であるかは問題ではない。
本発明に従った方法は、特に、アンテナアレイ(互いに安定した位相基準を有し、したがって、その位相が互いに相対的に評価され得るアンテナのアレイ)の近距離分野で使用することができる。ここで、ニアフィールドとは、アンテナアレイの幾何学的伝搬全体にわたって、物体が発する球面波が平面波として近似できないアンテナアレイ近傍の領域と定義されている。ニアフィールドは、フラウンホーファー近似ではなく、フレネル近似が適用されるフレネル領域と呼ばれることが多い。遠方のフィールドは、フラウンホーファー領域と呼ばれることが多い。ここではフラウンホーファー近似が適用される。
この方法は、好ましくは、受信ユニット内の基準信号に対する決定論的な周波数及び位相関係を有しない信号を有する発光体を位置付けるためにも使用することができ、すなわち、送信機の搬送波信号は一般に受信機の搬送波信号とコヒーレントではないため、受信信号の位相は、最初は、このコヒーレンスのために送信機と受信機の間の距離についてのいかなる結論も導き出すことができない。
しかしながら、好ましくは、一定の位相オフセット及び/又は周波数オフセット、すなわち線形に変化する位相オフセット及び/又は送信キャリア信号と受信キャリア信号との間の別の決定論的な時間依存性位相関係のみが存在すると仮定される場合、本発明に従った方法の拡張でこの決定論を推定することもまた有利に可能であり、したがって、定位を改善することができる。送信信号と受信信号がインコヒーレントであるが、異なる時間での測定のための送信機と受信機の間の位相差
が相関しているシステムでは、それを共推定することが有利である。複数の、相互にインコヒーレントな無線受信機が使用されている場合、各局について別個の未知の位相項
が発生する。
本発明による方法に加えて、本発明は、少なくとも1つの物体の位置を特定するための少なくとも1つの受信機を含む位置特定システムであって、該受信機は、本発明による方法を実行するための手段を有する、位置特定システムに更に関する。位置特定システムは、本発明による方法を参照して既に上に示されたものと同じ利点および特徴を、したがって明らかに有する。したがって、繰り返して説明する必要はない。
ここで注意すべきは、「a」及び「1つの」という用語は、必ずしも要素のうちの1つを厳密に指すものではなく、これは可能性のある実施形態を表すのではあるが、複数の要素も示し得る。同様に、複数形の使用は、問題にしている要素の単数での存在を含み、逆に単数形でも問題にしている要素を複数含む。
好ましくは、1つ以上の波動に基づいた信号の波長は、位置特定されるべき物体が位置特定される空間内の2つの点の最大距離より小さい。位置特定されるべき物体が位置特定される空間内の2つの点の最大距離が、再帰的フィルタ/推定器によって評価される一次結合から生じる最大の一意性範囲より大きい場合は、更に有利である。
本発明の更なる有利な点及び特性が、個々の実施形態を参照して更に詳細に説明される。
図1は、位置P(k)に移動体1があり、N個の受信機または測定点がある測定状況である。 図2は、位相値の比較に基づいて物体の位置を再帰的に決定するための本発明の方法を示すブロック図である。 図3は、受信機の異なる周波数の測定信号の表現である。 図4は、カルマンフィルタを用いた再帰的位置推定のためのブロック図である。
以下では、とりわけ古典的なマルチアンギュレーションに関連する、位置認識のいくつかの原理にまず注目する。これらの原理もまた、本発明によるアイデアの提示のための基礎を部分的に形成する。
測定データの記録状況の一例を図1に示す。移動体1の位置P(k)が時刻kにおいて検出される。そのために、N個のセンサや測定点が使用される。
時刻kにおいて、アンテナAnの方向の点P(k)から信号が放出されるようにデータ記録が行われる。信号の放出は、物体が点P(k)において、他の場所で放出された波動を散乱又は反射することによって引き起こされ得る(例えば、波は、元々アンテナAnの1つによって放出されたものであり得る)、又は無線送信装置が点P(k)に位置するという事実によって引き起こされ得る、または物体がそれ自身で波動-例えば、熱放射または電波放出-を放出するという事実によって引き起こされ得る。
放出された信号は、n=1,2...,NのN個の測定位置
で受信される。決定される物体の位置を
とする。
よりコンパクトな表現のために、以下のような単純化が前提とされる。
・物体からの信号がすべての位置
から検出できるように選択された空間領域内に、物体が存在する。
・アンテナの挙動が一様で方向に依存しないことが前提とされる、又は、適切な方法によって、不均一で方向に依存する挙動を補正することができるように校正が行われていることが前提とされる。
・送信チャネルは、まず、理想的なAWGNチャネルであると仮定され、すなわち、受信信号は、物体から放出された信号の振幅で重み付けされ時間遅延したバージョンであるとされる。チャネルに重畳された干渉n(t)は、加法的白色ガウス雑音としてモデル化される。
前述した簡略化は、本発明の方法の動作に決定的な影響を与えるものではなく、表示を明瞭にするために役立つ。アンテナnでの受信信号は、これらの仮定の下で、
のように表すことができる。
ここで、
は、
からP(k)までの測定経路の減衰定数特性であり、
は、P(k)からアンテナ位置
までの直接経路の信号伝搬時間特性(すなわち、最短経路の信号伝搬時間、LOS(Line of Sight)とも呼ばれる)であり、
は、物体から生じ、物体と受信機との間の経路により
だけ遅延した信号である。
式を周波数領域に変換すると、
のようになる。
点P(k)からアンテナ位置
までの伝搬時間は、以下のように計算される。
ここで、cは波の伝搬速度である。
受信信号の位相は、オブジェクトとアンテナnとの距離に依存する項
と、物体
から発せられる信号に起因する部分とで構成される。信号を、
で表現すると、アンテナnでの受信位相は次のようになる。
ここで、
は振幅、
は物体から発せられる信号の位相であり、
は位相

にマッピングする。すなわち、
である。
は、例えば、レーダーが送信し物体が反射するだけか、物体がコヒーレント応答を送信するときに、知ることができる。しかし、この位相項が不明である可能性もある。例えば、物体がそれ自身の局部発振器(その位相は不明である)を持つアクティブトランスポンダである場合、又は非同期的に送信するビーコンが送信機として機能する場合である。
図2に見られるように、例えばマルチアンギュレーションのように、入射角の事前の計算/推定を必要とせずに、最後の位置と測定された位相値から現在の位置P(k)が直接推定され得る、本発明による方法が提案される。
この方法は現在、N個のアンテナを持つ無線受信機を用いて説明しているが、複数のレーダーを持つシステムに簡単に拡張することができ、それによって各無線受信機は任意の数のアンテナを持つことができる。物体は今、以前と同様に信号を送信し、それはN個のアンテナの助けを借りて受信されるので、レーダー測定システムには現在N個の相互にコヒーレントな受信信号が存在する。この場合、受信信号は、それらが互いに安定した位相関係を維持しているとき、互いにコヒーレントであると考えられる。
個のレーダーが使用される場合、相互にコヒーレントな応答の
個のセットが存在し、コヒーレントに応答する物体の場合、全てのレーダーの全ての受信信号は、相互にコヒーレントである。
先行技術で既に述べたように、電磁波の位相
は、伝搬時間
に依存し、したがって、物体からアンテナまでの距離
と、物体から発せられる信号(例えば、物体での送信信号または反射)による位相寄与
に依存する。しかし、ここでは、位相は1波長内でのみ一意である。曖昧さの問題を避けるために、物体の最後の位置
、又は新たな位置の推定値も考慮される。
新たな位置
を推定するために、
個の無線受信機において、N個の位相値
のセットのそれぞれが記録される。このことから、位相の任意の一次結合を、送信機受信機間距離から得られる仮想的な位相と比較することができるようになった。この目的のために、測定された位相値からの
個の一次結合
が形成され、送信機受信機間距離と送信物体の位相項
によって、



として決定される、対応する仮想的な位相の一次結合と比較される。
ここで、
は、
番目の一次結合におけるn番目の位相値の任意に選択可能な前因子に相当する。その結果、これらはゼロを含む任意の値を採用することができる。相の一次結合の前因子と仮想的な位相の一次結合の前因子とが同一でなければならないことは容易に理解できる。位相値が曖昧なので、測定された位相値との比較がモジュロ演算
によって可能になる。この操作は、測定値と仮想値とが比較可能になるように、測定値と関連する仮想的な位相値を同じ範囲の数値にマッピングする任意の操作に置き換えられ得る。位相値を互いに比較する代わりに、関連する距離、時間遅れなども、もちろん互いに比較され得る。
一般的には、誤差なく測定された位相と、一次結合
の仮想的な位置との関係は、次のように与えられる。

左側の部分は、測定された位相値の一次結合を含み、右側の部分は、送信機受信機間距離から得られる位相の対応する仮想的な一次結合を表している。また、送信位相Φsも含まれており、これは、波動場が発生する物体の種類(例えば、トランスポンダ、受動反射等)によっては不明であり得る。
もし位相値
の測定に誤差がなければ、式(1)の2辺の差がゼロになる点を見つけることができるようになる。位相
の測定値は一般的にノイズが多いので、選択された一次結合は適切なペナルティ関数
を用いて評価されなければならない。「Convex Optimization」、294-300ページ、Boyd S.及びVandenbergheL著を参照。位置
を推定するためには、全ての一次結合に対してペナルティ関数の和が最小になるように選択される。すなわち、
(2)。
最適化関数では、一次結合の減算の前にモジュロ演算
を行うことで、位置特定されるべき物体が最後の位置
を中心に全方向に一様に移動され得ることを確実にする。ここでは、未知の位相項
も、前因子
の巧妙な選択によって推定されるか、削除されなければならない。未知の位相項
を推定することは、役立つことでもあり得る。例えば、
は、位置特定されるべき物体の伝送位相に起因し得る。これがゆっくりとしか変化しない場合や、別の既知の関係が存在する場合には、これを使用して位置特定の精度を高めるために使用され得る。最小化される関数は、それによって、任意の数の一次結合のペナルティの合計から発生し得る。効率的な評価を可能にするために、最小化関数を所望のように変更することができることは、当業者には知られている。このように、因子
に応じて、異なる点でモジュロ演算が行われ得る。さらに、和の評価は線形であるので、任意の順序で行われ得る。
位相値の和及び差も、複素数の乗算又は除算によって形成され得ることは、当業者には一般に知られている。特に、受信信号
が互いに乗算又は共役複素乗算される、又は、受信された信号が
に従って振幅成分と位相成分とに分解されて、複素信号の位相成分のみ、すなわち
が、互いに乗算され若しくは共役複素乗算若しくは除算される、という点で、位相値
の和及び差を計算することは特に有利である。前述した演算によれば、各時間tごとに、位相値、又は位相値の和及び/又は差を決定することができる。波源の現在位置P(k)を決定するために、過去の測定から決定された位置の周囲、好ましくは最後の位置の周囲で、関係(2)に従ったペナルティが最小となる点が見つかるように、現在位置の探索が行われる。測定は外乱変数によって重畳されるので、ペナルティ関数の総和は、例えば,最小二乗探索、勾配法(Gradientenverfahren)、ブルートフォース法等の助けを借りて最小化され得る。
ここで提示された方法は、特に、更なる任意の所望の基準によって容易に拡張され得るという点、例えば、基準を含むペナルティ関数によって式(2)が拡張されるという点において、特徴付けられる。このように、動きモデルとの組み合わせ、他のセンサとの融合、ドップラー評価等がペナルティ関数に含まれ得る。代替として、位置推定に続くフィルタリングも可能である。更に、ペナルティ関数は複数の周波数でも評価され得る。
一次結合のそれぞれの前因子は、すでに述べたように任意に選択され得るが、発生する2つのケース(物体が受信機に対して、インコヒーレントに送信する場合と、コヒーレントに送信する場合)について、ここで適切な選択に注目する。
コヒーレント系の場合、位相項
は既知であり、したがって(1)からの関係は、1つの前因子
だけが非ゼロ値を取るように設定され得る。すなわち、合計は完全に省略されている。

これにより、誤差関数とともにN個の独立した一次結合が正確に得られる。
好適なアプリケーションは、例えば、物体が、信号を反射、又はコヒーレンス信号を遅延なく送信して、コヒーレンスが達成されるシステムであろう。これらのいわゆる「往復伝搬時間」測定では、信号は、送信機から物体までの距離を移動し、その後受信機に戻り、その結果、位相項
は、送信アンテナから物体への伝搬時間から得られる。また、送信アンテナは、別体である(バイスタティック)必要はなく、受信アンテナに該当してもよい(モノスタティック)。
送受信信号がインコヒーレントであるシステムでは、未知の位相項
が省略されるように、それぞれのケースで2つのコヒーレント受信チャネルに差分を形成することが有意義である。これは、各一次結合に対して2つの非ゼロの前因子
が選択されるように一次結合を形成することによって達成される。

すると、エラー関数の結果は、
この巧妙な合計によって、未知の位相の明示的な計算/推定が節約され、よって計算能力が節約される。代替として、各測定点の位相項
を推定することも可能である。また、コヒーレント系の場合には、アンテナ対の位相差を評価して、例えば、位相に対する一意性範囲を広げることができる。
これらの2つの推奨事項とは別に、和を求める際に全ての可能な組み合わせが可能であるということは、当業者に容易に理解され、結果として得られる方程式系が完全に決定されるように、少なくとも2つ(2D位置推定)又は3つ(3D位置推定)のペナルティ関数が形成される。
本発明による方法の利点は、
・位相上のノイズはガウス分布であると仮定することができるので、効率的なフィルタ(例えばカルマンフィルタ)の典型的なメトリクス(例えば最小二乗)が最適な推定器(Schaetzers)に対応する。
・位相は距離の変化に非常に敏感に反応するので、高い精度が得られる。
・アンテナの間隔を調整することで、感度及び一意性範囲が測定シナリオに合わせられ得る(同じ測定レートで)。
・システムは平面波を想定していないので、アンテナアレイの近距離場で動作し得る。
・物体からのコヒーレント信号とインコヒーレント信号の両方に対して評価可能である。
・位相から直接位置を推定し、ビームフォーマーの計算を経由した計算負荷の高い回り道は不要である。
・位相値は、個々のチャンネルの誤った測定やSNRの悪さを考慮して個別に重み付けされ得る。
・システムがアンテナアレイの近距離場で動作し、平面波を期待しない場合、マルチパス伝搬に対するロバスト性が大幅に向上する。マルチパス伝搬は、構造的にではなくランダムに、誤った測定値を引き起こすからである。
ここでは、1つのレーダー局で複数の受信チャンネル(アンテナ)を使用して、上記の方法が説明された。異なるレーダー局及び/又は異なる時間において1つ以上の受信チャンネルを使用することも可能であることは、当業者には容易に理解される。この場合、それぞれの受信位置への伝搬時間が異なるため、位相-距離関係は提示された方法に類似した結果となる。
また、異なる時点について位相関係が成り立つ場合、例えば、物体から連続的に波動場が生ずる場合には、異なる2つの時点間の位相差も使用され得る。この受信位相の変化から、例えばドップラーシフトや速度が導出され得る。
ここで提示された発明は、異なる受信機で測定された位相を用いて提示された。同様に、全く同じ原理が、同じ受信機の異なる周波数で、又は任意の周波数/受信機の組み合わせで測定された位相に適用され得る。
これを示すために、角周波数
におけるアンテナnでの受信位相の式が再び用いられる。
一定の距離、したがって一定の遅延
では、測定された位相は角周波数
に依存して変化することがわかる。これを図3に示す。その結果、異なる周波数で測定された位相は、式(2)でも使用され得る。更に、異なるアンテナにおける異なる周波数の位相も使用され得る。
異なる周波数での位相の測定は、既存のシステムに幅広く適用され得る。これらには、直交周波数分割多重(OFDM)、離散マルチトーン(DMT)、マルチ連続波(マルチCW)、周波数シフトキーイング(FSK)、又は最小シフトキーイング(MSK)システム等の全てのマルチキャリア方式が含まれ、個々のCW信号が異なる周波数で伝送される。通信システム等の既存のインフラストラクチャでは、既にチャネル推定情報が位置特定のために使用され得る。例えば、大規模MIMOシステムでは、既に実行されたチャネル推定の異なる周波数および異なるアンテナでの位相は、移動無線加入者の位置特定のために使用され得る。また、異なる周波数(例えば、2.4GHz帯のWLANと5GHz帯のWLAN)での複数の通信プロセスの位相は、互いに関連して評価され得る。更に、フィルタバンクの出力信号の位相は、位置特定のために使用され得る。
もう一つ可能性のある応用として、いわゆる「ハーモニックレーダー」システムがある。ここで、信号は、送信機によって1つ以上の周波数で放出される。これは、位置特定されるべき物体によって反射され、又は非線形挙動を示す位置特定されるべき物体としてのトランスポンダによって受信される。この非線形性により、送信周波数以外の周波数の信号成分が発生する混合又は乗算処理が行われる。
・例えば、周波数(f0)を発する送信機を仮定すると、非線形特性により、送信周波数(n*f0)の倍数の信号成分が発生する。
・代わりに複数の周波数(f1,f2,f3...fn)を発する送信機があると仮定すると、これらの周波数の倍数(n1*f1; n2*f2; n3*f3;….; nn*fn)及び相互変調積(n1*f1+n2*f2+…+nn*fn、ここでn1,...,nnは整数(-∞,...-1,0,1,...face=游明朝>∞)であり,同一である必要はない)が発生する。周波数(f1,f2,f3...fm)が送信され、物体自体のトランスポンダで(fm+1,…,fn)が生成され、それに応じて混合及び相互変調積が生成されるハイブリッドシステムも可能である。
生成された周波数での信号成分を持つ波動場が、位置特定されるべき物体又はそのトランスポンダから生じる。これは受信機で測定され、これらの周波数での位相値が決定される。
これらの異なる周波数の位相は、互いに、コヒーレントな場合には送信機に対しても、固定された距離依存の位相関係を有する。したがって、本発明による方法は、位相の評価に使用され得る。また、異なるアンテナ及び/又は時点における異なる周波数の位相を使用することも可能である。
以下では、その方法が開発され、試験され、検証された事例が示される。測定構造は、それぞれN個(n={1,2,...,N})のアンテナとレーダー装置の信号にインコヒーレントに応答するトランスポンダを有するU個(u = {1, 2, …, U})のFMCW2次レーダーを含む。局のN個の受信信号の復調は局部発振器で行われ、すなわち、互いにコヒーレントに行われ、ケーブル等に起因する全ての不要な位相オフセットは、校正によって決定され、計算される。FMCWレーダーの受信チャンネルのベースバンド信号に、以下が適用される。
ここで、
は、(番号uのレーダーの番号nのアンテナによって受信された)ベースバンド信号の振幅、
は、掃引速度(当業者に知られているように、FMCWレーダーにおいて掃引帯域幅/掃引時間として定義される)、
は、トランスポンダから番号uのレーダーにおける番号nのアンテナまでの直接経路の伝搬時間(見通し線)、
は、レーダーのキャリア周波数(ここでは24GHz)、
は、未知の位相項(例えば、トランスポンダにおける未知の発振器位相、トランスポンダにおける伝搬時間等に起因する)であって、レーダーの全てのチャネルについて同一である。
したがって、レーダーuのアンテナnにおける位相に対して、
が適用される。
この場合、位相項
は既知ではないので、比較のための対は、2つのアンテナ(インデックス

)のそれぞれの位相値が互いに減算されることで形成される。すなわち、
好ましくは、すべての可能な組み合わせが形成され、それによって、ガウス総和式(Gaussschen Summenformel)に従って、レーダーがN個の受信アンテナを有する場合には、レーダーごとに(N・(N-1)/2)個の位相差
が結果として得られ、これらの位相差は全てのU個のレーダーのために集約されて、1つの測定ベクトル、すなわち、

を形成する。
新たな位置の計算のために、図4の拡張カルマンフィルタが使用される。拡張カルマンフィルタの一般的な説明は、Reid I.及びTerm Hによる「講義ノート 推定II(Lecture Notes Estimation II)」の1-7ページにあり、ここではそれが明示的に参照される。位置
及び速度成分
を含む最終状態
、並びにそれに対する共分散
が十分な精度で知られている。
以下のステップが拡張カルマンフィルタで実行される。
まず、最終状態と単純な運動方程式を用いて、新たな状態と共分散の事前推定が計算される。これは「予測」とも呼ばれる。すなわち、

である。
ここで、
ΔT: 2つの測定点間の時間間隔
Q: 事前推定の計算のための共分散行列
x'(k): 状態の事前推定のための状態ベクトル
x(k-1): 最終状態の状態ベクトル.
F: 運動方程式の行列形式
P(k-1): 最終状態の共分散行列
P'(k): 新たな共分散行列の事前推定値
である。
位相差の関係を使用して、いわゆるヤコビ行列(H(k))が形成される。


が、状態ベクトルの項目(Eintraegen)に従って導出され得る。したがって、ヤコビ行列の行の項目については、

が結果として生じる。
各位相差について、ヤコビ行列の行が存在する。したがって、全てのU個のレーダーについて合わせて、H(k)は、

である。
次に、いわゆるカルマンゲインKが計算され、これは、推定値と測定値がそれぞれどの程度の信頼性を持っているかを示す尺度である。
ここで、
R(k): 測定値に加えられたノイズの共分散行列
である。
次のステップでは、予測ステップ後の測定値と状態との比較が行われる。事前推定された位置は
によって位相値に変換され、測定ベクトルと同様に、局ごとに可能な全ての(N・(N-1)/2)個のアンテナ組合せについての差が形成され、3つの全てのレーダーについて、測定された位相差と同様にベクトルに結合される。
状態と共分散行列の事前推定は、測定値の助けを借りて補正(「更新」)され、カルマンゲインに応じて新たな位置x(k)を得る。
Figure 0007326422000107
ここで、
z(k): 測定ベクトル
h(x'(k)): 事前推定された位置の位相値が計算されているベクトル
: この場合のモジュロ演算は、位相を空間
にマップし、全方向に対称的に補正することを可能にする。すなわち、
である。
このプロセスは何度も何度も繰り返され、最後の実行からの結果(x(k),P(k))が再び次の点の計算の出発点となる。
先行するものがない最初の測定点については、開始値を仮定しなければならない。この開始値は、例えば、任意に選択され得る。仮定された開始値がフィルタの安定した過渡応答につながらない場合は、1つ以上の他の開始値で処理を繰り返すことができる。別の可能性としては、他の測位方法に基づいて、例えば、先行技術における上述された無線測位方法を用いて、開始値を決定することが考えられる。
この方法が、距離と位相の関係が存在する全ての波動に基づいたセンサに使用され得るということは、当業者には容易に理解できる。信号がコヒーレント(例えば、一次レーダーの純粋な反射によるもの)であるか、インコヒーレント(例えば、LPRの原理に従った二次レーダーや無線ブイによるもの)であるかは重要ではない。
更なるセンサからのデータとの融合により、この方法は拡張され得る。例えば、慣性センサシステムやロボット、自動車、自律走行車等の制御データが位置を推定するために使用され得る。
また、位置決定は、最適な推定位置に近づくように、1つの測定点に対して連続して数回実行することで、反復して行われ得る。
発生する可能性のある曖昧さは、(例えば、差分/合計やセンサ位置のうまくない選択の場合)、複数の仮定に、例えば、最も高い確率の位置に、複数仮説カルマンフィルタのように、並列に手順を適用することによって解決され得る。
同様に、個々のアンテナで発生するマルチパスも並行して推定され得る。アンテナが十分な距離を離れて選択されている場合、異なるアンテナには異なるマルチパスも存在する。
また、この方法は、複数のターゲットを同時に位置特定及び追跡するために使用又は拡張され得る。また、これらは、和/差の形成により、帯域内で解決することもできる。
その後、この方法に使用される位相は、例えば、時間周波数変換(例えば、FFT又はゲルツェル(Goertzel)フィルタ)によって決定することができるが、以前に決定された位置を使用して再帰的に決定することもできる。位相決定のために周波数範囲が使用される場合、位相評価のためのサンプリング点は、以前に決定された位置を使用して再帰的に決定され得る。
位相指向性特性は、仮想的な位置でのアンテナの向きに対する角度を計算し、計算した位相の伝搬時間に加算される位相オフセットを計算することで、位相と信号伝搬時間を比較する際に直接組み込まれ得る。
この方法による位置特定は、位相への不要な寄与(例えば、ハードウェア内の未知の伝搬時間に起因する)の校正にも同時に使用され得る。
この方法を拡張することで、位置だけでなく、物体の現在の速度、加速度なども推定することができる。
この方法は、例えば、信号を復調した後、キャリアの周波数及び位相を決定することにより、変調された信号に容易に適用され得る。
適用分野は、
・大規模MIMO
・ロボット位置特定
・資産追跡(RFID)
・車両、航空機、船舶の追跡
・人の追跡
・輸送路、生産建物の監視
・工具と工場の位置特定
・インダストリー4.0
・車から車への位置特定
・屋内での位置特定
・モノのインターネット
・医療用アプリケーション
である。
可能なインフラストラクチャは、
・WLAN、移動無線、通信システム等の既存インフラ
・レーダー技術:CW,FMCW,UWB,OFDM、相関受信機全般
・音響:超音波
・一次レーダー(純粋反射)
・二次レーダー(トランスポンダが応答する、同期又は非同期)
・ビーコン(完全に非同期)
この方法は、受信機ユニット内の基準信号に対する周波数及び位相の関係が決定論的でない信号を有する発光体の位置特定のために使用され得る。
典型的な通信システムは、ホモダイン又はヘテロダイン受信機アーキテクチャを使用し、この場合、送信機の信号は、1つ以上の段階で受信機の1つ以上の搬送波信号と混合され、すなわち周波数がオフセットされる。送信機の搬送波信号が、通常、受信機の搬送波信号とコヒーレントではなく、したがって、受信信号の位相が、このコヒーレンスではないことのため、送信機と受信機との間の距離についてのいかなる結論も最初には導き出せないということが、位置特定の目的にとっての不利な点である。
しかしながら、一定の位相オフセット及び/又は周波数オフセットのみ、すなわち線形に変化する位相オフセット及び/又は送信搬送波信号と受信搬送波信号との間の別の決定論的な時間依存の位相関係のみが存在すると仮定すると、本発明によれば、この決定論もまた、本発明による方法の拡張で推定することが可能であり、したがって位置特定を改善することが可能である。
送受信信号がインコヒーレントであるが、異なる時間での測定については送信機と受信機の位相差
が相関するようなシステムでは、同様に推定することが有利である。相互にインコヒーレントな複数の無線受信機が使用されている場合、各局について別個の未知の位相項
が発生する。これらは通常、互いに異なるものであり、時間的に変化する未知の関係を有する。時刻kにおける無線受信機の位相項
は、関数
を介して位相項
と関連しているので、期待される位相項
は、
によって推定され得る。
この情報は、インコヒーレントシステムに使用することができ、再帰的に、

が最小化される。ここで、対応する位相
は、各線形組み合わせ
において減算される。
は、推定位相
と補正位相
の位相比較の誤差関数に相当する。
は、任意の重み付け係数に対応する。

Claims (20)

  1. 波動に基づいた信号を用いて少なくとも1つの物体の位置特定を行うための位置特定方法を実行するための手段を有する、少なくとも1つの物体の位置特定のための少なくとも1つの受信機を備える位置特定システムであって、
    前記位置特定方法では、
    置特定されるべき前記物体から生じた波動場が複数の受信機によって受信され、
    前記波動場の空間的及び時間的分布に依存し、位相の推移が前記物体から各受信機までの信号の伝搬時間によって特質上影響される、少なくとも1つの測定信号が前記各受信機において形成され、
    少なくとも2つの測定信号のそれぞれについての位相値が位置特定のための測定位相値として求められ、
    位置特定されるべき前記物体の現在の位置が、前記測定位相値の少なくとも1つの一次結合と、送信機・受信機間の距離に起因する関連する仮想的な位相値の少なくとも1つの一次結合との比較によって、時刻kにおいて、再帰的フィルタ/推定器を用いて求められ
    前記測定位相値の和及び/又は差が、少なくとも1つのアンテナ対によって、物体の再帰的位置推定のために前記アンテナ対の関連する信号の伝搬時間差と比較して評価される
    ことを特徴とする位置特定システム
  2. 前記物体から生じた波動場は、1つ以上の受信機によって受信され、コヒーレントな測定信号になり、前記受信機は異なる受信機位置で前記測定信号を受信する
    請求項1に記載のシステム
  3. 異なる周波数の複数の信号が前記物体から生じ、位置特定のために、異なる周波数の位相値を測定して前記測定位相値の一次結合に導入する1つ以上の受信機が、使用される
    請求項1又は2に記載のシステム
  4. 放射する前記物体の未知の送信位相も、再帰的に推定される
    請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム
  5. 前記物体から放出される波動場は、1つ以上の受信機によって異なる時間に受信され、少なくとも1つの受信機は、位置特定のために、異なる時刻において位相値を求めて前記測定位相値の一次結合に導入する
    請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム
  6. 前記物体から生じる異なる周波数の信号は、非線形の挙動をする物体又はトランスポンダによって生成される
    請求項3に記載のシステム
  7. 少なくとも1つの送信機が、周波数f0を有する外向きの波動場を生成し、位置特定されるべき前記物体が、波動場であって、前記物体の非線形性に起因して、周波数f0の倍数を含み前記1つ以上の受信機によって位相値が測定される波動場を放出する
    請求項6に記載のシステム
  8. 前記送信機から生ずる波動場は、少なくとも2つの周波数(f1; f2; f3; …; fn)及び倍数(n1*f1; n2*f2; n3*f3;…; nn*fn)を有し、相互変調積(n1*f1+n2*f2+…+nn*fn; …)が、前記少なくとも1つの受信機によって位相値が測定される物体の非線形性によって発生する
    請求項7に記載のシステム
  9. 前記送信機から生ずる波動場は少なくとも2つの周波数(f1; f2; f3; …; fm)を有し、前記物体は周波数(fm+1, …, fn)自身及びその倍数を発生させ、位相値が測定される相互変調積が前記非線形性によって発生する
    請求項7又は8に記載のシステム
  10. 前記物体から生ずる波動場は、送信信号の前記物体での反射によって発生する、前記物体が波動の独立した放出、例えば熱放射によって発生させる、又は、前記物体の内部信号源によって発生する、
    ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム
  11. 少なくとも1つのアンテナの前記位相値は、物体の再帰的位置推定のために前記アンテナの関連する信号の伝搬時間差と比較して評価される
    請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム
  12. 形成された一次結合の比較は、再帰的推定器/フィルタを利用して評価されて、選択された一次結合の全てについての比較差の誤差関数の和をできるだけ小さくする
    請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム
  13. 前記一次結合又は再帰的推定器/フィルタは、動きモデル、及び/又は更なるセンサ値、特に慣性センサシステム、及び/又はドップラー評価、及び/又は磁場に基づく位置決定、及び/又は位置決定のための光学系及び/又は超音波を考慮する
    請求項9に記載のシステム
  14. 拡張形カルマンフィルタ、擬似線形フィルタ、傾斜探索、又はブルートフォース探索が前記再帰的推定器/フィルタとして使用される
    請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム
  15. 前記測定位相値の一次結合及び前記仮想的な位相値の一次結合の誤差が、適切な数学的演算によって、特にモジュロ演算を用いて、規定された値の空間にマッピングされる
    請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム
  16. 前記位置特定は、前記位置特定に使用されるアンテナ装置の近接場において行われる
    請求項1~15のいずれか1項に記載のシステム
  17. 前記方法は、推定されるべき位置のために繰り返して行われる
    請求項1~16のいずれか1項に記載のシステム
  18. 放出する前記物体と前記少なくとも1つの受信機との間の未知の位相差
    も、繰り返し推定される
    請求項1~17のいずれか1項に記載のシステム
  19. 波長が、位置特定されるべき前記物体が位置特定されるべき空間内の2点間の最大距離より小さい
    請求項1~18のいずれか1項に記載のシステム
  20. 位置特定されるべき前記物体が位置特定されるべき空間内の2点間の最大距離は、前記再帰的フィルタ/推定器によって評価される前記一次結合に起因する最大一意性範囲より大きい
    請求項1~19のいずれか1項に記載のシステム
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ハーモニックレーダーによる地表性昆虫の行動解析,植物防疫[online],第42巻 第8号,日本,一般社団法人 日本植物防疫協会,1988年08月,Pages: 380-381,インターネット: <URL: http://www.jppn.ne.jp/jpp/s_mokuji/19880803.pdf>

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