JP5009032B2 - 高強度溶接鋼管の製造装置 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、高強度溶接鋼管の製造に際し、簡易な設備により、Oキャンの回転・捩れの発生を防止しつつ、シームギャップの狭隘化を図り、さらに、Oキャン端部の突合せ位置、突合せ間隔の精度を高めシーム位置の適正化を図った状態でシーム溶接を行うことにより、健全な溶接部を有する高強度溶接鋼管を製造する装置を提供することを目的とする。
(1)筒状に成形した鋼板(以下、「Oキャン」という)の対向する鋼板端部の突合せ部を溶接して鋼管を製造する溶接鋼管の製造装置において、
前記Oキャンを搬送する搬送装置、
前記搬送されるOキャンの前記突合せ部の間隔を狭めるためのケージロール、
前記突合せ部の間隙にその一部が嵌入する円板状フィン部と前記突合せ部近傍のOキャン外表面を押圧し、且つ、シームギャップを狭隘化する鼓部とを有する1個あるいは複数個のフィンロール、
前記フィンロールの下流側に配置され前記Oキャンの形状および突合せ部の形状を整えるためOキャンの突合せ部を所定の力で押圧するトップロール、
前記トップロールの下流側に配置され前記突合せ部を溶接する溶接トーチ、
を備えたことを特徴とする高強度溶接鋼管の製造装置。
(2)前記フィンロールの鼓部は、円板状フィン部を挟んで外側に行くほど径が大きくなる鼓形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
(3)前記フィンロールの円板状フィン部が含まれる平面と、前記フィンロールの鼓部の曲面とのなす角度θが、下記数式を満足するフィンロール形状を有することを特徴とする請求項2記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
tanθ=(d2−d1)/2/w=0.1〜0.4
但し、d1;フィンロールの鼓部の内側(フィン部寄り)の直径(mm)
d2;フィンロールの鼓部の外側(フィン部と反対側)の直径(mm)
w;フィンロールの鼓部の内側〜外側までの長さ(mm)
(4)前記フィンロールが駆動ロールであることを特徴とする請求項1乃至3項のいずれか1項に記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
(5)前記搬送装置が搬送ロールであることを特徴とする請求項1乃至4項のいずれか1項に記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
図1(a)に、本発明の高強度溶接鋼管製造装置の概略正面図を示し、また、図1(b)に、同概略平面図を示す。
例えば、UOE方式による溶接鋼管の製造装置では、C成形装置、U成形装置、O成形装置でそれぞれ鋼板を成形し、O成形装置で鋼板をほぼ筒状に成形し、この筒状に成形した鋼板(Oキャン)をさらに溶接装置へと搬送して、Oキャン端部の突合せ部を溶接して溶接鋼管を製造する。
図1(a)、(b)は、O成形後のOキャンが、搬送装置である摩擦チェーンによって溶接装置(溶接トーチ)へ搬送される様子を示している。
Oキャンが搬送され、溶接トーチに接近する(第1図(b)において、図面左方から右方へOキャンが移動する)にしたがって、Oキャンの突合せ部の間隔が順次狭まるようにOキャンを案内搬送するケージロールが配置され、また、溶接トーチの上流側には、Oキャンの突合せ部にほぼ対応する位置に、フィンロールおよびトップロールを配置する。
Oキャンは、その突合せ部の間隔が順次狭まるようにケージロールで案内搬送され、また、Oキャンの前記突合せ部は、フィンロールの円板状フィン部を挟み込んだ状態(円板状フィン部の一部が突合せ部の間隙に嵌入する状態)で搬送され、さらに、Oキャンの突合せ部近傍の外周面の少なくとも一部が、回転する該フィンロールの鼓部と接触しながら、かつ、押圧されつつ搬送されることにより、該接触部位には、Oキャンの突合せ部間隔をさらに狭める方向の分力が発生し、この分力の作用によって、Oキャンの突合せ部は、その間隔をさらに狭めながら案内搬送され、精度の高い鋼板端部の突合せが行われる。そして、フィンロールと溶接トーチとの間に配置されたトップロールは、ケージロールとフィンロールの協働作用によって、適正間隔が保持された状態で搬送されてくるOキャンの突合せ部を所定の力で上方から押圧しつつ案内搬送することによって、Oキャンの鋼板端部の高さ位置を調整し、溶接されるOキャンの外形形状および突合せ部の形状を最終的に整える。
なお、従来の溶接鋼管製造装置においても、(本発明のフィンロールに類似する)フィン部を有するフィンパスロールを設けることは知られているが、従来のフィンパスロールは、Oキャン突合せ部のオフセット修正及び間隔修正のために、溶接前に突合せ部を一度拡開する塑性変形を施し、その後、トップロールを用いずにケージロールで案内して突合せ部を突合せ、溶接を行うものである(特許文献1参照)のに対して、本発明のフィンロールは、Oキャン突合せ部に塑性変形を施して突合せ部間隙を拡大するものではなく、Oキャンの突合せ部近傍の外周面を押圧し、フィンロール鼓部とOキャン接触部位に突合せ部の間隔をさらに狭める分力を生じさせることによって精度のよい突合せを行うものであり、また、円板状フィン部をOキャンの突合せ部間隙に一部嵌入させることによって、Oキャン搬送時のOキャンの回転を防止し、さらには、このようなフィンロールを複数個配設することによってOキャンの捩れ発生(Oキャンの搬送につれ、Oキャンの突合せ部箇所が、本来のシーム位置からあたかも蛇行したかのようにズレていく現象)をも防止し、その結果として、溶接トーチに対するシーム位置を適正に案内・維持するものであるから、本発明のフィンロールと従来フィンロールとは、Oキャン突合せ部に対する作用・機能の面から明確に区別される別異なものであり、本発明の装置は、このような作用・機能を有する複数個のフィンロールを備えたことを、その技術的特徴とするものである。
図2(a)、(b)にみられるように、フィンロールおよびトップロールは所定の押圧力を加えながらOキャンを案内搬送する。フィンロールの鼓部は、Oキャン突合せ部の近傍でOキャン外周面の一部分と接触した状態でOキャンを押圧しつつ回転駆動し、フィンロールの鼓部分に形成された曲面とOキャンとの接触部位には、Oキャン突合せ部間隙を狭める方向の分力が発生し、この作用によってOキャン突合せ部の間隔の狭隘化、即ち、シームギャップの狭隘化、が果たされる。また、フィンロールは、その円板状フィン部の一部が、Oキャン突合せ部(の鋼板端部の間)に挟まれていることによって、ケージロール、搬送チェーン等による案内の不具合によって生じるOキャンの回転発生を防止することができるばかりか、さらに、円板状フィン部を備えたフィンロールを搬送方向に複数配設することによって、Oキャンの捩れ発生をも防止することができ、その結果、シーム溶接を行う際の目標位置に、正確に、Oキャン突合せ部を案内搬送することができ、シーム位置の適正化を図ることができる。
また、トップロールは、ケージロールとフィンロールの協働作用によって、適正間隔が保持された状態で搬送されてくるOキャンの突合せ部を、所定の力で押圧しつつ案内搬送することによって、Oキャンの鋼板端部の高さ位置を調整するとともに、例えば、楕円状であったOキャンの外形断面形状を、最終的に所望の外形形状へと整える。
Oキャンは、フィンロール(の鼓部)で押圧され、Oキャンの鋼板端部の高さ位置もある程度修正された状態で搬送されてくるため、トップロールで必要とされる高さ位置修正のための押圧力はそれほど大きくなく、また、フィンロールを駆動ロールで構成した場合には、Oキャンを搬送するケージロール、搬送装置(ロール)等への負荷が大きく軽減される。
本発明の装置で用いるフィンロールは、例えば、材質がSKD11(JIS)からなり、図示されるように、その中央に円板状のフィン部を備え、その両側には、外側へ行くほど径が大きくなる鼓形状の曲面(以下、単に「テーパ曲面」という)で形成された鼓部を備えており、そして、トップロール方向あるいは溶接トーチ方向へ案内搬送されるOキャンは、フィンロールのフィン部の一部がOキャン突合せ部(の鋼板端部の間)に挟まれた状態で存在することによって、Oキャンの回転発生が防止され、また、円板上フィン部を有するこのようなフィンロールを複数個Oキャン搬送方向に沿って配設することによって、Oキャンの捩れ発生も防止され、その結果として、シーム位置の適正化が図られることになる。
また、本発明では、フィンロール(特に、鼓部)の具体的な形状を、さらに、次のように規定している。
図3において、
フィンロールの鼓部の内側(フィン部寄り)の直径をd1(mm)、
フィンロールの鼓部の外側(フィン部と反対側)の直径をd2(mm)、
フィンロールの鼓部の内側〜外側までの長さをw(mm)、
フィンロールの鼓部の曲面と、前記フィンロールのフィン部が含まれる
面のなす角度をθ、
とした場合に、
tanθ=(d2−d1)/2/w=0.1〜0.4
という数式を満足するd1,d2,w(あるいは、θ)の値によって定まる形状のフィンロール。
即ち、本発明の装置のフィンロールは、回転駆動し、テーパ曲面からなるフィンロールの鼓部の少なくとも一部をOキャンに接触させた状態でOキャンの外表面を所定の力で押圧することによって、フィンロールのテーパ曲面の鼓部と接触するOキャンの接触箇所に、突合せ部の間隙を狭める方向の分力を生じさせ、その結果として、シームギャップの狭隘化を図るものであるから、Oキャンに対してこのような作用を生じさせることができるようにフィンロール(の鼓部)の形状を規定した。
つまり、上記数式tanθの値を大にしテーパーをきつくするほうが、押圧力低減を図るという意味では有利に作用するが、tanθ>0.4となると、ロールエッジが鋼管にあたるようになり、これを避けるためにtanθの上限値を0.4と定めた。一方、上記数式tanθの値を小さくしテーパーを緩くすると、水平方向の分力が小さくなり、必然的に押圧力を大きくせざるを得ず、また、tanθ<0.1になると、本溶接開先潰れが発生し、著しく溶接品質を損なうため、tanθの下限値を0.1と定めた。
したがって、フィンロールの鼓部の形状については、
tanθ=(d2−d1)/2/w
という数式で表されるtanθの値が、0.1〜0.4を満足するようにd1,d2,wの値を定めた.
また、本発明の装置では、フィンロールとOキャンの接触によるOキャン表面への表面疵の発生防止、Oキャン搬送時の搬送装置の不具合等によるノッキング発生防止、また、Oキャンを搬送する装置の負荷軽減のためにも、フィンロールを駆動ロールとすることが望ましい。
その具体的な製造条件等を表1に示す。
なお、本実施例では1個のフィンロールを採用した。
ここで、複数個のフィンロールを配設することにより、仮付溶接装置に対するシーム部のセンタリングは、より精緻に行うことも可能である。
本発明の装置により製造した高強度溶接鋼管(本発明1〜42)の諸特性を表2に示す。
比較例43〜84として製造した溶接鋼管の諸特性を表4に示す。
これに対し、表3、4に示されるように、比較例43〜84のうちのフィンロールを使用しなかった比較例43については、シームギャップが100mmと大きな値であったために、仮付溶接において品質不良を発生した。
また、tanθの値を0.1未満としたフィンロールを使用して製造した比較例44〜84においては、フィンロールの押圧力が、例えば、139MPa(比較例68)、80MPa(比較例80)のように小さい場合には本溶接で開先変形は生じなかったものの、仮付溶接においては品質不良の発生がみられた。
また、例えば、比較例44、59のように、フィンロールの押圧力を大きな値にした場合であっても、tanθの値が小さくギャップの狭隘化に寄与するフィンロール押圧力の水平方向の分力が小さい場合には、フィンロールによるシームギャップの狭隘化作用が不十分となり、仮付溶接において品質不良がみられ、さらに、本溶接においても開先変形が生じた。
また、フィンロールのtanθの値を大きくした比較例51、69のような場合、あるいは、フィンロールの押圧力を大きくした比較例48、55のような場合には、ギャップの狭隘化が図られ仮付溶接における品質不良の発生は防止できるようになったが、本溶接においては、依然として開先変形(開先潰れ)が発生し、著しく溶接品質を損なうものであった。
Claims (5)
- 筒状に成形した鋼板(以下、「Oキャン」という)の対向する鋼板端部の突合せ部を溶接して鋼管を製造する溶接鋼管の製造装置において、
前記Oキャンを搬送する搬送装置、
前記搬送されるOキャンの前記突合せ部の間隔を狭めるためのケージロール、
前記突合せ部の間隙にその一部が嵌入する円板状フィン部と前記突合せ部近傍のOキャン外表面を押圧し、且つ、シームギャップを狭隘化する鼓部とを有する1個あるいは複数個のフィンロール、
前記フィンロールの下流側に配置され前記Oキャンの形状および突合せ部の形状を整えるためOキャンの突合せ部を所定の力で押圧するトップロール、
前記トップロールの下流側に配置され前記突合せ部を溶接する溶接トーチ、
を備えたことを特徴とする高強度溶接鋼管の製造装置。 - 前記フィンロールの鼓部は、円板状フィン部を挟んで外側に行くほど径が大きくなる鼓形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
- 前記フィンロールの円板状フィン部が含まれる平面と、前記フィンロールの鼓部の曲面とのなす角度θが、下記数式を満足するフィンロール形状を有することを特徴とする請求項2記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
tanθ=(d2−d1)/2/w=0.1〜0.4
但し、d1;フィンロールの鼓部の内側(フィン部寄り)の直径(mm)
d2;フィンロールの鼓部の外側(フィン部と反対側)の直径(mm)
w;フィンロールの鼓部の内側〜外側までの長さ(mm) - 前記フィンロールが駆動ロールであることを特徴とする請求項1乃至3項のいずれか1項に記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
- 前記搬送装置が搬送ロールであることを特徴とする請求項1乃至4項のいずれか1項に記載の高強度溶接鋼管の製造装置。
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