しかしながらスペクトラム拡散やOFDMなどの変復調方式はシステム構成が複雑になりコストが増大してしまうという課題があり、また誤り訂正符号は使用可能な周波数帯域が限られている無線伝送において伝送速度の上限を高くできないという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡素でかつ安価な構成でありながらも、カメラ装置とモニタ装置との間で高感度かつ高速な通信を行うことができる無線監視システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像のデータを無線により送信する送信手段とを有し、特定の場所に設置される複数のカメラ装置と、前記カメラ装置の送信手段から送信された無線信号を受信するための複数のアンテナ及び該アンテナの指向性を変更するための位相変更手段を有するフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号を復調する信号復調手段と、この信号復調手段によって復調された信号にフィルタをかけるフィルタ手段と、このフィルタ手段を通過した信号に基づいて画像を表示する表示手段と、前記位相変更手段、信号復調手段、フィルタ手段及び表示手段を制御する制御手段とを有するモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、前記フィルタ手段は、第1帯域の信号を通過させる第1帯域フィルタと、前記第1帯域よりも広い第2帯域の信号を通過させる第2帯域フィルタとを有し、いずれかのフィルタを択一的に選択可能であり、前記制御手段は、前記複数のカメラ装置が設置されている方向を記憶し、通常の通信待受モードにおいて、前記フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように前記位相変更手段を制御すると共に、前記第1帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、該通信許可要求信号を送信したカメラ装置の方向に前記フェーズドアレイアンテナの指向性を合わせるように前記位相変更手段を制御すると共に、前記第2帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、高速通信モードで画像データを受信することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、前記複数のカメラ装置が設置されている方向を、各カメラ装置に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置の方向が関連づけられたテーブルによって記憶していることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の無線監視システムにおいて、新たなカメラ装置が設置されたとき、前記制御手段は、カメラ装置が設置されている方向を記憶することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、前記いずれかのカメラ装置と高速通信モードでの画像データの受信を終了した後、カメラ装置が設置されている方向を再度記憶し直すことなく、通常の通信待受モードに移行することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の無線監視システムにおいて、前記カメラ装置は、加速度センサを有し、この加速度センサによって該カメラ装置の移動が検知されたとき、該カメラ装置は該カメラ装置の移動後の方向を記憶させるための信号を前記モニタ装置に送信することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、いずれかのカメラ装置から送信され前記フェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を測定し、該受信強度が所定の閾値よりも低くなったとき、該カメラ装置の方向を再度記憶することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、いずれかのカメラ装置から送信され前記フェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を測定してその累計加算平均値を算出し、該累計加算平均値に基づいてカメラ装置毎に前記所定の閾値を算出することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6または請求項7に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、いずれかのカメラ装置から送信され前記フェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を測定し、直近の所定複数回の累計加算平均値を算出し、該累計加算平均値が所定の閾値よりも低くなったとき、該カメラ装置の方向を再度記憶することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、前記位相変更手段を制御して前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、前記カメラ装置から送信され前記フェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を測定し、該受信強度が最大となる方向を該カメラ装置が設置されている方向として記憶することを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、前記位相変更手段を制御して前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、前記カメラ装置から送信され前記フェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を測定し、該受信強度が所定の閾値よりも大きくなる方向を該カメラ装置が設置されている方向として記憶し、受信強度の測定を終了することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように位相変更手段を制御する。これにより、通信エリア内の全方位において複数のカメラ装置からの通信を待ち受けることができる。このとき、制御手段が第1帯域フィルタを選択するようにフィルタ手段を制御するので、信号復調手段によって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができ、受信感度を高めてカメラ装置との通信距離を長距離化することができる。
一方、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御手段は、フェーズドアレイアンテナの指向性を該カメラ装置の方向に合わせるように位相変更手段を制御するので、該カメラ装置から送信されフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を高めることができる。これにより、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、カメラ装置との通信距離を長距離化することができる。このとき、制御手段が第2帯域フィルタを選択するようにフィルタ手段を制御するので、カメラ装置との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。これにより、例えばカメラ装置で撮像した分解能の高い(高解像度かつ高フレームレート)動画を高いビットレートで送受信することができ、従来は曖昧であった画像の細部をより正確に把握することが可能となる。つまりモニタ装置は、アンテナの指向性とフィルタ手段を制御することにより、モニタ装置の全方位のいずれかにある複数のカメラ装置に対して受信感度を劣化させることなく通信することを可能にすることができる。
また、請求項2の発明によれば、制御手段が、複数のカメラ装置が設置されている方向を、各カメラ装置に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置の方向が関連づけられたテーブルによって記憶しているので、システムの管理が容易なものとなり、運営コストの低減を図ることが可能となる。
請求項3の発明によれば、いずれかのカメラ装置が設置されたとき、制御手段は、カメラ装置が設置されている方向を記憶するので、カメラ装置の方向を設定するシーケンスを単純化することができ、システムの管理がさらに容易なものとなり、運営コストの低減を図ることが可能となる。
請求項4の発明によれば、制御手段が、いずれかのカメラ装置と高速通信モードでの画像データの受信を終了した後、カメラ装置が設置されている方向を再度記憶し直すことなく、通常の通信待受モードに移行するので、請求項3の発明と同様に、カメラ装置の方向を設定するシーケンスを単純化することができ、運営コストの低減を図ることが可能となる。
請求項5の発明によれば、カメラ装置に設けられている加速度センサによってカメラ装置の移動が検知されたとき、制御手段が該カメラ装置の移動後の方向を再度記憶するので、カメラ装置を移動させた場合に、その方向を迅速かつ自動的に制御手段に記憶させることが可能となる。これにより、フェーズドアレイアンテナの指向性を最適な状態で維持でき、カメラ装置との通信エリアを確保することができるようになる。
請求項6の発明によれば、制御手段が、いずれかのカメラ装置から送信されフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を測定し、該受信強度が所定の閾値よりも低くなったとき、該カメラ装置が移動されたと判断し、その方向を再度記憶する。これにより、フェーズドアレイアンテナの指向性を最適な状態で維持でき、低コストでカメラ装置との通信エリアを確保することができようになる。
請求項7の発明によれば、フェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の累計加算平均値に基づいて制御手段がカメラ装置毎に所定の閾値を算出するので、上記閾値を各カメラ装置及びモニタ装置の設置環境に適切に対応したものとすることができる。これにより、固定された閾値を用いる場合と比較して、カメラ装置の移動の判断をより正確に行えるようになる。
請求項8の発明によれば、制御手段が直近の所定複数回の累計加算平均値と所定の閾値とを比較してカメラ装置の移動を判断するので、例えばカメラ装置の前を人が横切ったとき等、一時的に無線信号の受信強度が低下した場合にはカメラ装置が移動されたとはみなさない。これにより、カメラ装置の移動の判断をより一層正確に行えるようになる。
請求項9の発明によれば、制御手段がフェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら受信した無線信号の受信強度を検知し、該受信強度が最大となる方向を該カメラ装置が設置されている方向として制御手段が記憶するので、カメラ装置の方向が自動的に制御手段に記憶される。これにより、システムの管理がより一層容易なものとなり、低コスト化を図ることが可能となる。
請求項10の発明によれば、制御手段が受信強度が所定の閾値よりも大きくなる方向をカメラ装置が設置されている方向として記憶し、受信強度の測定を終了するので、短時間で効率よくカメラ装置の方向を設定できるようになる。
(実施形態1)
本発明の一実施形態による無線監視システムについて図面を参照して説明する。図1は住居等の設備として備え付けられる無線監視システムを示している。無線監視システム1は、複数のカメラ装置2と、各カメラ装置2によって撮像された画像を表示するモニタ装置3等によって構成されている。各カメラ装置2とモニタ装置3とは、同一の周波数チャンネルを用いて無線によって相互に通信可能である。
カメラ装置2は、画像を撮像して電子データとして出力するCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子(撮像手段)21と、撮像素子21が撮像した画像の電子データ等を無線により送受信する送受信部(送信手段)22等を有している。カメラ装置2は、例えば住居等の要所に設置される。
モニタ装置3は、フェーズドアレイアンテナ(位相配列アンテナ)30、送受信切替スイッチ33、受信部34、フィルタ部35、送信部36、ベースバンド処理部37、表示部38、制御部(制御手段)39等によって構成されている。フェーズドアレイアンテナ30は、例えば、平面上に配列された複数のアンテナ31a、31b、31c、31d...及びそれらに対応する位相変換器32a、32b、32c、32d...等を有し、各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相を変換(移相)することによってその指向性を変更し、各カメラ装置2の送受信部22との間で無線信号を送受信する。各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相は、位相変換部32によって変換される。送受信切替スイッチ33は、制御部39から出力された制御信号に応じてモニタ装置3の送受信動作を切り替える。受信部34は、フェーズドアレイアンテナ30を介して電波を受信するチューナ34aと、チューナ34aによって受信された信号を復調する受信復調部(信号復調手段)34b等を有している。なお、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31d...及び位相変換器32a、32b、32c、32d...は、適宜増減可能である。基本原理として、アンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やすことによりフェーズドアレイアンテナ30の指向性が高まる傾向にあるため、高い指向性が必要な場合はアンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やせばよい。
フィルタ部35は、受信復調部34bによって復調された受信ベースバンド信号の不要成分にフィルタをかけ、受信感度を高める。フィルタ部35は、比較的狭い第1帯域の受信ベースバンド信号を通過させる狭帯域フィルタ(第1帯域フィルタ)35aと、第1帯域よりも広い第2帯域の受信ベースバンド信号を通過させる広帯域フィルタ(第2帯域フィルタ)35bとを有し、制御部39から出力された制御信号に応じていずれかのフィルタを択一的に選択可能に構成されている。すなわち、狭帯域フィルタ35a及び広帯域フィルタ35bは、フィルタ部35に設けられているフィルタ切り替えスイッチ(図示せず)にて選択される。送信部36は、送受信切替スイッチ33、位相変換部32及びフェーズドアレイアンテナ30を介してカメラ装置2に信号を送信する。ベースバンド処理部37は、送受信するベースバンド信号を処理する。表示部38は、ベースバンド処理部37によって処理された信号に基づいて画像を表示する。より具体的には、いずれかのカメラ装置2によって撮像された画像が表示部38に表示される。制御部39は、モニタ装置3の上記各部の制御を司る。制御部39は、各カメラ装置2が設置されている方向を記憶しており、その方向に合わせてフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御する。
図2はフェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31dの配置を、図3は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をそれぞれ示している。本実施形態においては、アンテナ31a、31b、31c、31dとして4本の半波長ダイポールアンテナを適用している。アンテナ31a、31b、31c、31dは、通信に用いる電波の波長をλとすると、図2(b)に示すように平面視で一辺がλ/4の正方形の頂点に、正方形の平面に垂直に配置されている。上述のごとくアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X−Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
図2(b)中、A方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(a)に、D方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(b)にそれぞれ示している。フェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせた方向の利得が最も高くなり、その周辺領域の利得も高められている。
図4は、各カメラ装置2とモニタ装置3との通信状態とフェーズドアレイアンテナ30の指向性を示している。モニタ装置3は、通常の通信待受モードと高速通信モードで動作する。通常の通信待受モードとは、いずれかのカメラ装置2からの通信開始を待ち受けているモードである。高速通信モードとは、通信を開始したカメラ装置2との間で画像データ等を高速に通信するモードである。
通常の通信待受モードにおいては、図4(a)に示すように、制御部39は、いずれのカメラ装置2とも通信可能なように、フェーズドアレイアンテナ30を無指向状態となるように制御する。また、このとき、制御部39は、狭帯域フィルタ35aを選択するように制御し、受信ベースバンドフィルタを狭帯域としている(通常待受状態)。これは、カメラ装置2からの通信許可要求信号が低速であり、モニタ装置3のベースバンドフィルタの帯域が狭くなるほどノイズが除去されてSN比が大きくなり、感度が高まって通信エリアを拡大することができるからである。例えば、高速通信モードにおける伝送速度は16Mbpsであるのに対して、カメラ装置2からの通信許可要求信号の伝送速度を1.6Mbps程度とすると、狭帯域フィルタ35aを用いて通信することができる。この場合、10log10=10dBの感度向上が期待できる。このように、アンテナを無指向性とし、狭帯域フィルタ35aを用いる場合、広帯域フィルタ35bを用いる場合に比べて雑音量(ノイズ)が少なくなり、全方向に対して信号のSN比を向上させ通信距離を長距離化することができる。
一方、高速通信モードにおいては、受信ベースバンドフィルタを広帯域化しなければならず、それにより受信感度が劣化するという問題が生ずる。そこで、図4(b)に示すように、本実施形態においては、モニタ装置3が例えばカメラ装置2Aから送信された通信許可要求信号を受信すると、制御部39は、広帯域フィルタ35bを選択して受信ベースバンドフィルタを広帯域化することに加え、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2Aの方向に合わせて、結果として感度を劣化させることなく高速通信を実現することができる(高速通信状態)。ここでいう「カメラ装置2Aの方向」とは、例えば、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をその方向に向けたとき、受信強度(受信信号の電界強度)又はSN比が最大となる方向のことであり、カメラ装置2Aと通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナ30の指向方向をいう(周辺の電波伝搬環境により、カメラ装置2Aが存在する方向と一致するとは限らない)。
図5は、無線監視システム1において、モニタ装置3の動作モードを通常の通信待受モードから高速通信モードに切り替えて通信を開始する手順を示している。モニタ装置3は、通常の通信待受モードでカメラ装置2からの通信を待ち受けている状態では、どこに設置されたカメラ装置2とも通信が可能な状態となっている(#1)。いずれかのカメラ装置2に何らかのトリガ入力がなされ、それに応じてそのカメラ装置2から通信許可要求信号が送信されると(#2においてYES)、モニタ装置3がその通信許可要求信号を受信する(#3)。モニタ装置3の制御部39は、その受信した信号に含まれるカメラIDから通信を開始するカメラ装置2の方向を特定し(#4)、モニタ装置3の通信モードを高速通信モードに切り替えて、カメラ装置2に通信許可信号を送信する(#5)。このとき、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2の方向に合わせると共に、広帯域フィルタ35bを選択して受信ベースバンドフィルタを広帯域化する。カメラ装置2が、上記通信許可信号を受信すると(#6においてYES)、カメラ装置2からモニタ装置3に画像データの高速伝送を開始する(#7)。これにより、いずれかのカメラ装置2とモニタ装置3との間で1対1の通信がなされる。
実施形態1の無線監視システム1によれば、制御部39は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナ30が無指向状態となるように位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御する。これにより、通信エリア内の全方位においてカメラ装置2からの通信を待ち受けることができる。このとき、制御部39が狭帯域フィルタ35aを選択するようにフィルタ部35を制御するので、受信復調部34bによって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができ、高感度化を図りカメラ装置2との通信距離を長距離化することができる。
一方、いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を該カメラ装置2の方向に向けるように位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御するので、該カメラ装置2から送信されフェーズドアレイアンテナ30によって受信された無線信号の受信強度を高めることができる。これにより、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、カメラ装置2との通信距離を長距離化することができる。このとき、制御部39が広帯域フィルタ35bを選択するようにフィルタ部35を制御するので、カメラ装置2との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。これにより、例えばカメラ装置2で撮像した分解能の高い(高解像度かつ高フレームレート)動画を高いビットレートで送受信することができ、従来は曖昧であった画像の細部をより正確に把握することが可能となる。つまりモニタ装置3は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性とフィルタ部35を制御することにより、モニタ装置3の全方位のいずれかにある複数のカメラ装置2に対して受信感度を劣化させることなく通信することを可能にすることができる。
(実施形態2)
次に別の実施形態における無線監視システム1について説明する。本実施形態においては、モニタ装置3の制御部39は、図6に示すテーブルにて各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置2の方向を記憶し、通信を開始するカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせる。
図6(a)は、モニタ装置3からみた各カメラ装置2の方向を、図6(b)は、モニタ装置3の制御部39が各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置2の方向を記憶するためのテーブルをそれぞれ示している。カメラ装置2A乃至2Dには、それぞれカメラID001〜100が割り当てられ、A方向〜H方向には、図6(a)に示すように、方向コードとして000〜111が割り当てられている。制御部39は、カメラ装置毎にカメラIDと方向コードとを対応づけて記憶し、その方向コードを読み込むことにより各カメラ装置2A乃至2Dが設置されている方向を特定し、通信を開始するカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせる。
図7は、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2との通信を開始する手順を示している。テーブルの作成は、例えば、いずれかのカメラ装置2が設置され、モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされたとき行うものとする。モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされると(#11)、カメラ装置2から自己のカメラIDを含む信号が送信され、それを受信したモニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラIDを登録する(#12)。例えば、図6(b)においては、4個のカメラ装置2のカメラID001〜100を登録しているが、8個のカメラ装置2のカメラID000〜111まで登録可能である。すべてのカメラ装置2のカメラIDの登録が完了すると(#13においてYES)、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラ方向の設定を開始する(#14)。まず、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2の方向を認識し(#15)、その方向コードを記憶することによりテーブルを作成する(#16)。本実施形態においては、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA〜Hの8方向に設定可能であり、カメラ装置2がA〜Hの8方向のうちどの方向に相当するかを認識し、カメラ装置2の方向を設定する。カメラ装置2の方向の設定は、システム管理者が手動にてテーブルを完成させることにより行うものとしてもよいが、制御部39が、自動的に行うようにしてもよい。すべてのカメラ装置2の方向を設定を完了するまで#15、#16の処理を繰り返し(#17においてNO)、完了すると(#17においてYES)、#18に移行する。#18乃至#24の処理は、図5に示す#1乃至#7と同様である。なお、#15において、モニタ装置3の制御部39が、自動的にカメラ装置2の方向を認識する手順に関しては後述する。
以上の手順により、図6(b)に示したテーブルが作成され、制御部39は、このテーブルを参照することにより、#24において通信を開始するカメラ装置2の方向を特定することができる。例えば、モニタ装置3が#20において受信した通信許可要求信号に含まれるカメラIDが001である場合、制御部39は、それに対応する方向コード001からカメラ装置2がB方向に設置されていると判断し、位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御してフェーズドアレイアンテナ30の指向性をB方向に設定する。図6(b)に示したテーブルを用いることにより、制御部39として1つのマイクロコンピュータでフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御できるようになるため、同等の機能をハードウェアで実現する場合と比べて、システムの管理が容易となり、低コスト化が図れる。ここでは、接続可能なカメラ台数と設置方向をそれぞれ8台、8方向としているが、ターゲットとなるシステムに応じて適宜増減が可能である。
実施形態2の無線監視システム1によれば、制御部39が、複数のカメラ装置2が設置されている方向を、各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置の方向が関連づけられたテーブルによって記憶しているので、システムの管理が容易なものとなり、運営コストの低減を図ることが可能となる。
(実施形態3)
本発明のさらに別の実施形態における無線監視システム1について説明する。無線監視システム1において、カメラ装置2は、一旦設置されると、通常であればその場所に固定され、移動されることが少ない。そこで、本実施形態においては、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2を設置した後、モニタ装置3及びカメラ装置2の電源をオンした直後のみに、カメラ装置2の方向を記憶するものとする。
図8は、本実施形態の無線監視システム1において、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2と通信する手順を示している。図8において、#11〜#24の処理は、図7に示す実施形態2の無線監視システム1と同等である。その後、カメラ装置2からモニタ装置3への画像データの伝送が終了すると(#25)、#18に戻る。これにより、カメラ装置2からモニタ装置3への画像データの伝送が終了した後、モニタ装置3の制御部39がカメラ装置2の方向を再度設定する処理(#11〜#17)に移行することがなくなり、カメラ装置2の方向の設定は、カメラ装置2を設置した後、モニタ装置3及びカメラ装置2の電源をオンした直後のみになされるものとすることができる。
実施形態3の無線監視システム1によれば、いずれかのカメラ装置2が設置されたとき、制御部39は、カメラ装置2が設置されている方向を記憶するので、カメラ装置2の方向を設定するシーケンスを単純化することができ、システムの管理がさらに容易なものとなり、運営コストの低減を図ることが可能となる。
(実施形態4)
本発明のさらに別の実施形態における無線監視システム1について説明する。図9は、本実施形態に用いられるカメラ装置20の構成を示している。上述したように無線監視システム1において、カメラ装置2は、一旦設置されると移動されることが少ないが、防犯上の理由等により移動が必要な場合が生ずる。そこで、本実施形態においては、カメラ装置20の移動を加速度センサ25によって検知して、方向を再設定するように構成されている。すなわち、カメラ装置20は、撮像素子21と、送信部22a及び受信部22bと、送受信切替スイッチ23と、ベースバンド処理部24と、加速度センサ25と、制御部26等によって構成されている。変調部などの信号の送信機能を持つ送信部22a及び復調部などの信号の受信機能を持つ受信部22b等によって図1に示した送受信部22と同等の構成となる。加速度センサ25は、カメラ装置20の移動や姿勢変化を検知して、それに応じた信号を制御部26に出力する。制御部26は、加速度センサ25から出力される信号に基づいて、カメラ装置20の移動等を認識して、ベースバンド処理部24、送信部22a及び送受信切替スイッチ23等を介してモニタ装置3に移動後の位置の再設定を促す旨の信号を出力する。
図10は、本実施形態における無線監視システム1において、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2と通信する手順を示している。#11〜#18の処理は、図7に示す実施形態2の無線監視システム1と同等である。その後、いずれかのカメラ装置2が移動されて加速度センサ25が反応すると(#30においてYES)、制御部26は、カメラ装置2が移動されたと判断して(#31)、モニタ装置3に対して方向再設定要求信号を送信する(#32)。そして、モニタ装置3が方向再設定要求信号を受信すると(#33においてYES)、#14に戻り、カメラ装置2の方向を再設定する。なお、#30において加速度センサ25が反応しなかった場合には(#30においてNO)、通常の動作を行う(#34)。ここでいう通常の動作とは、図7における#19〜#24の処理を行うことをいう(以下、図12、図14、図16において、同様)。
実施形態4の無線監視システム1によれば、カメラ装置2に設けられている加速度センサ25によってカメラ装置2の移動が検知されたとき、制御部39が該カメラ装置2の移動後の方向を再度記憶するので、カメラ装置2を移動させた場合に、その方向を迅速かつ自動的に制御部39に記憶させることが可能となる。これにより、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を最適な状態で維持でき、カメラ装置2との通信エリアを確保することができるようになる。
(実施形態5)
本発明のさらに別の実施形態における無線監視システム1について説明する。図11は、本実施形態に用いられるモニタ装置5の構成を示している。モニタ装置5は、フェーズドアレイアンテナ30によって受信された無線信号の受信強度を測定する電界強度測定部(制御手段)51を有する点で図1に示したモニタ装置3と相違する。電界強度測定部51は、フェーズドアレイアンテナ30によって受信された無線信号の受信強度を常時測定し、その結果を制御部39に出力する。制御部39は、電界強度測定部51によって測定された受信強度が所定の閾値よりも低くなったとき、カメラ装置2の方向を再設定する。
図12は、本実施形態における無線監視システム1において、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2と通信する手順を示している。#11〜#18の処理は、図7に示す実施形態2の無線監視システム1と同等である。その後、モニタ装置5の電界強度測定部51は、各カメラ装置2との間で定期的に通信を行い、いずれかのカメラ装置2から送信された無線信号の受信強度を測定する(#41)。ここでいう通信とは、カメラ装置2とモニタ装置5とが、故障等がなく通信可能状態であることを確認するための定期的におこなう通信のことであり、モニタ装置5はカメラ装置2からの信号においてカメラ装置2に付与されているカメラIDを確認すると、そのときの受信強度を測定し、自身が予め記憶している所定の閾値と比較する(#42)。受信強度が所定の閾値よりも低くなったとき(#42においてYES)、カメラ装置2が移動されたと判断して#14に戻り、受信強度が閾値未満であったカメラ装置2の方向を再設定する。なお、#42において受信強度が所定の閾値以上である場合には(#42においてNO)、カメラ装置2は、当初の方向設定時と同じ場所にあると判断して、通常の動作を行う(#43)。
実施形態5の無線監視システム1によれば、いずれかのカメラ装置2から送信されフェーズドアレイアンテナ30によって受信された無線信号の受信強度を測定し、該受信強度が所定の閾値よりも低くなったとき、該カメラ装置2が移動されたと判断し、その方向を再度記憶する。これにより、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を最適な状態で維持でき、低コストでカメラ装置2との通信エリアを確保することができるようになる。
(実施形態6)
本発明のさらに別の実施形態における無線監視システム1について説明する。図13は、本実施形態に用いられるモニタ装置6の構成を示している。モニタ装置6は、電界強度測定部51によって測定された受信強度に基づいて上記所定の閾値を設定する電界強度閾値設定部(制御手段)61を有する点で図11に示したモニタ装置5と相違する。電界強度閾値設定部61は、電界強度測定部51によって測定された受信強度の累計加算平均値を算出し、該累計加算平均値に基づいてカメラ装置毎に所定の閾値を算出する。すなわち、電界強度測定部51によって測定された受信強度が比較される閾値は一定ではなく、受信強度の累計加算平均値により随時決定される。例えば、閾値は、受信強度の累計加算平均値に対してN/10を乗じて得た値とする(Nは任意の値で、累積加算平均値のN割を示す)。より具体的には、1回目に測定された受信強度がr[mW]、2回目に測定された受信強度がs[mW]、3回目に測定された受信強度がt[mW]であったとき、閾値はN/10×(r+s+t)/3[mW]と算出される。制御部39は、電界強度測定部51によって測定された受信強度が電界強度閾値設定部61によって設定された閾値よりも低くなったとき、カメラ装置2の方向を再設定する。ここでは3回の累積加算平均としたが、回数は適宜増減することができる。
図14は、本実施形態における無線監視システム1において、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2と通信する手順を示している。#11〜#18の処理は、図7に示す実施形態2の無線監視システム1と同等である。その後、モニタ装置6の電界強度測定部51は、各カメラ装置2との間で定期的に通信を行い、いずれかのカメラ装置2から送信された無線信号の受信強度を測定する(#51)。そして、モニタ装置5の電界強度閾値設定部61は、電界強度測定部51によって測定された受信強度の累計加算平均値を算出し、それに基づいてカメラ装置毎に所定の閾値を算出する(#52)。その後、電界強度測定部51によって測定された受信強度が電界強度閾値設定部61によって算出された閾値よりも低くなったとき(#53においてYES)、カメラ装置2が移動されたと判断して#14に戻り、受信強度が閾値未満であったカメラ装置2の方向を再設定する。なお、#53において受信強度が閾値以上である場合には(#53においてNO)、カメラ装置2は、当初の方向設定時と同じ場所にあると判断して、通常の動作を行う(#54)。
実施形態6の無線監視システム1によれば、フェーズドアレイアンテナ30によって受信された無線信号の累計加算平均値に基づいてカメラ装置2毎に所定の閾値を算出するので、上記閾値を各カメラ装置2及びモニタ装置6の設置環境に適切に対応したものとすることができる。これにより、固定された閾値を用いる場合と比較して、カメラ装置2の移動の判断をより正確に行えるようになる。
(実施形態7)
本発明のさらに別の実施形態における無線監視システム1について説明する。図15は、本実施形態に用いられるモニタ装置7の構成を示している。モニタ装置7は、電界強度測定部51によって測定された受信強度のうち直近の所定複数回の累計加算平均値を計算する電界強度計算部(制御手段)71を有する点で図13に示したモニタ装置6と相違する。すなわち、制御部39は、カメラ装置2の方向再設定のきっかけとなる受信強度を閾値と比較する際に、直近一回の測定結果と閾値とを比較するのではなく、直近の所定回数の測定値から累計加算平均値を算出し、その平均値と閾値とを比較する。制御部39は、電界強度計算部71によって計算された直近の所定複数回の累計加算平均値が電界強度閾値設定部61によって設定された閾値よりも低くなったとき、カメラ装置2の方向を再設定する。
図16は、本実施形態における無線監視システム1において、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2と通信する手順を示している。#11〜#18の処理は、図7に示す実施形態2の無線監視システム1と同等である。その後、モニタ装置7の電界強度測定部51は、各カメラ装置2との間で定期的に通信を行い、いずれかのカメラ装置2から送信された無線信号の受信強度を測定する(#61)。そして、モニタ装置7の電界強度閾値設定部61は、電界強度測定部51によって測定された受信強度の累計加算平均値を算出し、それに基づいてカメラ装置毎に所定の閾値を算出する(#62)。さらに、モニタ装置7の電界強度計算部71は、電界強度測定部51によって測定された直近数回分の受信強度の累計加算平均値を計算する(#63)。そして、制御部39は、電界強度計算部71によって計算された直近の所定複数回の累計加算平均値と電界強度閾値設定部61によって設定された閾値とを比較する(#64)。電界強度計算部71によって計算された累計加算平均値が電界強度閾値設定部61によって算出された閾値よりも低くなったとき(#64においてYES)、カメラ装置2が移動されたと判断して#14に戻り、累計加算平均値が閾値未満であったカメラ装置2の方向を再設定する。なお、#64において受信強度が閾値以上である場合には(#64においてNO)、カメラ装置2は、当初の方向設定時と同じ場所にあると判断して、通常の動作を行う(#65)。
実施形態7の無線監視システム1によれば、制御部39が直近の所定複数回の累計加算平均値と所定の閾値とを比較してカメラ装置2の移動を判断するので、例えばカメラ装置2の前を人が横切ったとき等、一時的に無線信号の受信強度が低下した場合にはカメラ装置2が移動されたとはみなさない。これにより、カメラ装置2の移動の判断をより一層正確に行えるようになる。
以下、図7、図8、図10、図12、図14及び図16に示す#15において、モニタ装置3、5、6、7(以下、モニタ装置3にて代表する)の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順について説明する。既に述べたように、図2に示すようにアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X-Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
図17は、アンテナ指向性と移相量の関係を示している。ここでは無指向性を得る場合と、Z軸の周りに45゜刻みで8方向の指向性を得る場合の合計9通りについて対応する移相量を示したが、移相量を適宜調整することにより、さらに細かく指向性を制御することも可能である。無線監視システム1は、大別して学習モードと通信モードの2つの動作モードをもつ。学習モードは、モニタ装置3が各カメラ装置2に対して最適なアンテナ指向性を割り当てるためのモードであり、主として無線監視システム1の設置後、通信モードに入る前に実施する。通信モードは、モニタ装置3と各カメラ装置2との間で通信を行うためのモードであり、上記高速通信モードと通信待受モードを含む。
学習モードにおいて、モニタ装置3は、位相変換器32a(移相器PS1)、32b(移相器PS2)、32c(移相器PS3)、32d(移相器PS4)の移相量をすべて0に設定し、アンテナ指向性を無指向にする。ここでカメラ装置2Aから、カメラ装置2AのID情報を含むテスト信号を連続的に送信させる。モニタ装置3はカメラ装置2Aからのテスト信号を受信すると、まず移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ90°、90°、0°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性は図17に示したようにA方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。次に移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ64°、0°、−64°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性はB方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。以下同様に、8通りのアンテナ指向性に対して、それぞれの場合における受信信号強度を求める。その結果、最も受信信号の強度が強くなったアンテナの指向性の方向にカメラ装置2Aが存在すると判断し、図6におけるテーブルに記憶する。カメラ装置2B〜2Dに関しても同様に、方向を認識してテーブルに記憶する。移相器PS1〜PS4の移相量を適宜設定することにより、アンテナ指向性を1゜ずつ変更し、その受信強度に基づいてカメラ装置2Aの方向を認識するものとしてもよい。
図18は、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。このフローチャートでは、A方向から時計回りにH方向まで順次アンテナの指向性を45゜ずずつ変更して、受信強度を測定する例を示している。モニタ装置3の制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#71)、カメラ装置2から送信された信号を受信し、その受信強度を測定し(#72)、その値を記憶する(#73)。そして、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#74においてNO、#77)、#72に戻る。こうして#72、#73、#74及び#77の処理を繰り返して、すべての方向の受信強度を記憶すると(#74においてYES)、A〜H方向の受信強度を比較し(#75)、最も受信強度が大きい方向をカメラ装置2の方向として設定し(#76)、処理を終了する。
上記手順によれば、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を変更しながら受信した無線信号の受信強度を検知し、該受信強度が最大となる方向を該カメラ装置2が設置されている方向として制御部39が記憶するので、カメラ装置2の方向が自動的に制御部39に記憶される。これにより、システムの管理がより一層容易なものとなり、低コスト化を図ることが可能となる。
図19は、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順の変形例を示している。#71〜#73の処理は、図18と同等である。制御部39は、記憶した受信強度が所定の閾値以上であるとき(#81においてYES)、当該方向をカメラ装置2の方向として設定し(#82)、処理を終了する。記憶した受信強度が所定の閾値未満であるとき(#81においてNO)、#83に移行する。#83〜#86の処理は、図18における#74〜#77と同等である。すなわち、すべての方向の受信強度が所定の閾値未満であるとき、最も受信強度が大きい方向をカメラ装置2の方向として設定する。なお、上記受信強度と比較する所定の閾値とは、例えば、高速通信モードにおいて広帯域フィルタ35bを用いても十分な感度が得られる程度の受信強度の値とする。この手順によれば、受信強度が所定の閾値よりも大きくなる方向をカメラ装置2が設置されている方向として記憶し、受信強度の測定を終了するので、短時間で効率よくカメラ装置2の方向を設定できるようになる。
図20は、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順のさらに別の変形例を示している。#71〜#73の処理は、図18と同等である。モニタ装置3の制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに90゜変更しながら受信強度を測定・記憶し(#72、#73、#91においてNO、#92)、A、C、E、G方向の受信強度を記憶すると(#91においてYES)、A、C、E、G方向の受信強度を比較する(#93)。比較の結果、A方向が最大のとき(#94においてYES)、A方向の両側に隣接するH、B方向の受信強度を測定し記憶する(#95)。C方向が最大のとき(#94においてNO、#96においてYES)、C方向の両側に隣接するB、D方向の受信強度を測定し記憶する(#97)。E方向が最大のとき(#96においてNO、#98においてYES)、E方向の両側に隣接するD、F方向の受信強度を測定し記憶する(#99)。#96においてE方向が最大でなければ(#98においてNO)、G方向が最大と判断し(#100)、G方向の両側に隣接するF、H方向の受信強度を測定し記憶する(#101)。そして、A方向が最大のとき(#94においてYES)、A、H、B方向の受信強度、C方向が最大のとき(#96においてYES)、C、B、D方向の受信強度、E方向が最大のとき(#98においてYES)、E、D、F方向の受信強度、G方向が最大のとき(#98においてNO)、G、F、H方向の受信強度を比較する(#102)。そして、#102において比較した3方向のうち最も受信強度が大きい方向をカメラ装置2の方向として設定する(#103)。
図20に示した変形例では、すべての方向について受信強度を測定することなく最も受信強度が大きい方向を知ることができるので、受信強度を測定する回数を削減することが可能となり、短時間で効率よくカメラ装置2の方向を設定できるようになる。これにより、カメラ装置2の方向設定時における消費電力の低減を図ることも可能となる。なお、この変形例において、先にA、D、F方向の受信強度を測定し、このうち受信強度が最大となる方向の両側に隣接する方向の受信強度を測定し比較することによりカメラ装置2の方向として設定することも可能である。この場合、さらに受信強度を測定する回数を削減することが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも無指向時のフェーズドアレイアンテナ30によって受信した信号を狭帯域フィルタ35aを通過させ、カメラ装置2に指向性を合わせたフェーズドアレイアンテナ30によって受信した信号を広帯域フィルタ35bを通過させるように構成されていればよい。また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナは、4本に限られることなく、何本であってもよい。また、カメラ装置2の個数及び配置は、図4に示した例に限られることなく、監視領域に応じて適宜設定することができる。また、上記各実施形態におけるカメラ装置とモニタ装置を適宜組み合わせて無線通信システムを構成してもよい。