JP5000890B2 - pH感受性ポリマー及びそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の分野
本発明は、胃の中に見られるような、酸性のpH≦3において膨潤し及び/又は溶解し、及び、通常は医薬液状経口薬のpHであり及び唾液のpHでもあるpH>3.5において、膨潤せず又は不溶性のままであるpH感受性ポリマー、及びそれらの製造方法に関する。
本発明の背景
20年超の間、ポリマー材料からなる生物活性剤のデリバリーは、ドラック・デリバリー・システムの分野において、研究者の相当な注意を挽きつけている。新たな技術の進歩は、多くの革新的なドラッグ・デリバリー・システムを市場にもたらし、他は、商品化間近である。ポリマーは、製剤の形成に重要な役割を示す。ポリマーベースの賦形剤は、当該薬剤の風味マスキング、保護及び安定化などを含む、様々な理由のため形成に使用されている。合成及び天然素材のポリマーは、ドラッグ・デリバリー・システムのマトリックス、ヒドロゲル、微少粒子、ナノ粒子、フィルム及びスポンジの形成に使用されている。合成又は天然のどちらのポリマーの利用も、薬剤形成の分野において、継続し増大している。多くのポリマーが、当該薬剤の経口デリバリーに、タブレットのフィルム・コーティングとして、又は当該デリバリーシステムから当該薬剤の改良放出としてのいずれも使用される。進歩的なドラッグ・デリバリー・システムの分野における研究者の研究結果としてのポリマーの選択は、販売される多くの薬剤と比較して市販されているかなり少量のポリマー材料によって証明されるように、候補ポリマー材料により厳しく限定される。
市販される合成ポリマーのいくつかは、セルロース誘導体を含み、例えば、エチルセルロース、セルロース・アセテート、セルロース・アセテート・フタレート、及びCarbopol及びEudragitのようなアクリル酸及びメタクリル酸ポリマーである。苦い薬剤の様々なポリマーでのバリアコーティングは、広範囲にわたり薬剤の風味マスキングに使用され、特に当該剤形が、懸濁シロップ又はドライシロップのような液状経口用を形成し投与される際に使用される。風味マスキングは、薬剤が極めて苦いときに、非常に重要である。苦味の知覚は、受け入れられない又は口に合わないという心構えを作り出す。経口投与される薬剤の苦味は、幾人かの患者において不都合である。風味は、承諾を支配する重要な要素である。薬剤の不快な風味は、嚥下における困難の原因となり又は患者がそれらの薬物療法を避ける原因となり、それ故、患者の低い遵守という結果となる。甘味料、アミノ酸、香料添加剤の使用の如き慣習的な風味マスキング技術は、非常に苦い薬剤の風味マスキングにおいてしばしば不十分であり、ここで当該非常に苦い薬剤とは、例えば、キニーネ、バルベリン(barberin)、セレコキシブ、エトリコキシブ、レボフロキサシンのような抗生物質、オフロキサシン、スパルフロキサシン、シプロフロキサシン、セフロキシム・アキセチル、エリスロマイシン、及びクラリスロマイシンのようなものである。このように、風味マスキング技術は、重要とみなされ、そして多くの研究者により開発されてきた。
日本国特許出願公開第2003231647 A2号は、医薬成分又は食物成分の嫌な味又は匂いを隠すための、フルーツ型風味の及びアセサルフェームのような甘味料を含む経口液体製剤を開示する。日本国特許出願公開第2001106641号は、活性成分の苦味が、キシリトールのような糖アルコール、メンソールのような冷却剤、及び固い脂肪の添加により隠される、チュアブル錠を開示する。
甘味料及び香味料は風味マスキングに使用されるけれども、これだけでは、非常に苦い薬剤の風味マスキングとして十分ではなく、そしてポリマー材料の使用が大抵は好まれ、そして、多くの努力により、ポリマー材料を使用する風味マスク薬剤がつくられる。
米国特許第6,514,492号は、キノロンの極度の苦味を除去するための、ジビニルベンゼンと架橋するメタクリル酸ポリマーの如きイオン交換樹脂を含むキノロンの液体経口製剤を開示する。国際特許公開第WO03/06066 A1号は、おいしい味である三元イオン結合型錯体を開示する。錯体は、子供用の液体懸濁製剤形成のために使用される。錯体は、イオン化陽性基を有する活性成分、陰性基を有する荷電したポリマー、及び陽性に荷電したポリマーを使用して形成される。
フィルム形成ポリマーを含む速溶性の経口用消費フィルム及びイオン交換樹脂は、国際特許公開第WO01/70194号内に開示される。当該風味マスキングは、Amberlite(登録商標)のごとき、ジビニルベンゼンと架橋されるポリスチレンを含むスルホニル化ポリマー交換樹脂の使用により達成される。Ambeliteを使用するデキストロメトルファンの風味マスクされる鎮咳用フィルム、及びキサンタン・ガム、ローカストビーン・ガム、カラギーナン及びプルランのようなフィルム形成ポリマーが、開示される。
国際特許公開WO02/72111号は、風味マスクされる医薬懸濁製剤であって、グリセリル・モノステアレートの如き、ろう材料により、及び場合により、結合剤又はEudragit E.Granules及び国際特許公開WO02/72072号において開示されるマスクされる風味でコーティングされる顆粒のようなポリマーにより、コーティングされる抗生物質のテリスロマイシンを含むものを開示する。クラリスロマイシンの如き苦い活性成分であって、gelucireの如きろう化合物及びeudragie Eの如きポリマーによりコーティングされるものが開示される。日本国特許出願公開第JP2001−172201号は、風味マスキング・コーティング組成物であって、ポリビニル・アセテート、親水性添加剤及びコリドン(kollidion)及びプロピレングリコールのような他の慣習的コーティング剤を開示する。コーティングされたイブプロフェンは、チュアブル錠に圧縮される。
国際特許公開第WO00/18372号は、薬物、クラリスロマイシン、グリセリン脂肪酸エステル及び腸溶性の又は胃溶性のポリマーのスプレー固形化処理により得られる粒状物を開示する。当該風味マスキングのために使用される当該胃溶性ポリマーは、国際特許公開第WO0269939号に開示されるアクリル系ポリマー・コーティングを含むEudragit E.A風味マスク医薬組成物である。薬物レポフロキサシンのマイクロカプセルであって、不溶性腸溶性コーティングによりコーティングされ、メタクリル酸−Etアクリレート・コポリマーを含むものが、開示される。
国際特許公開第WO01/80829号は、ポリビニル・アセテートからなるポリマー、及びジメチル・アミノエチル・メタクリレート及び中性メタクリル酸エステルを含む風味マスキング・コーティング組成物を開示する。当該ポリマーに加えて、アルカリ重合調整剤は、当該活性物質の放出を促進するためコーティング組成物に添加され得る。当該コーティングされた顆粒をタブレットに圧縮する。国際特許公開第WO01/80826号は、メタクリレート・ポリマー及びセルロース・エステル・ベースのコーティング組成物を開示し、そして当該組成物は、アセトアミノフェンのような医薬活性剤の好ましくない風味を隠す。当該コーティング組成物は、ジメチル・アミノエチル・メタクリレート及び中性メタクリル酸エステル・ポリマー(Eudragit E 100)、及びセルロース・エステル・ポリマー(セルロース・アセテート)を含む。
チュアブル錠型の中にヒスタミンH2アンタゴニストを含む当該風味マスクされる医薬組成物が、米国特許第6,270,807号に開示される。当該ヒスタミンH2アンタゴニスト、ファモチジンは、不水溶性成分グリセリル・モノステアレート及び水浸透性メタクリレート・エステル・コポリマー Eudragit NE30Dを含む組成物により、当該化合物を患者が咀嚼する時の比較的短い間、風味マスキング効果を提供するために皮膜された。
国際特許公開第WO01/35930号は、ポリアクリレートベースの、風味マスキングされた経口組成物を開示する。シプロフロキサシンのような活性医薬の、中性メタクリル酸エステルの水溶液での造粒による効果的な風味マスキングが、開示される。国際特許公開第WO01/03698号は、医薬液剤の風味マスキングのためのポリマー混合を開示する。医薬活性剤であって、例えば、抗生物質、鎮痛薬、抗炎症薬、胃腸薬、抗ヒスタミン薬、充血除去剤、抗うつ剤、抗精神薬剤、抗ウイルス剤、腫瘍崩壊剤、ワクチン、抗てんかん薬、抗喘息薬、及び鎮痙薬は、水性媒体内の(a)Eudragit Eのようなジメチル・アミノエチル・メタクリレート及び中性メタクリル酸エステル(MM/MAE)と(b)セルロース・アセテートのようなセルロース・エステルとのポリマー混合の有効量でコーティングされる。当該ポリマー・コーティングは、レポフロキサシンを含む当該組成物の風味を隠す。
風味マスキング、急速放出コーティングシステムは、国際特許公開第WO00/30617号内に開示される。デキストロメトルファンの薬物中心は、エチルセルロース及びポリビニル・ピロリドンを含む空き層、及びEudragit Eを含む風味マスキング層に包まれる。結果物としてのビーズは、約30秒間、風味がない。欧州特許第EP1279402 A1号は、アリルアミン又はベンジルアミン又は塩であって、例えば、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコールのようなセルロース誘導体により、及びさらに、エチルセルロース及びアクリル系ポリマーにより、顆粒がコーティングされる際にコーティングされる顆粒形式のテルビナフェン・ヒドロクロライドを含む口分散性タブレットを開示する。米国特許出願公開第2002−132006 A1号は、ヒドロキシアルキル・セルロース、抗粘着剤及びメタクリレート・コポリマーからなる、匂い及び風味マスキング・コーティングを開示する。
国際特許公開第WO03/00225 A2号は、アルカリ化剤及び吸着剤に加えてセルロース・ポリマー及びメタクリル・ポリマーを含む活性成分の風味マスク粉末からなる、懸濁製剤を開示する。米国特許出願公開2002−197317 A1号は、ジメチル・アミノエチル・メタクリレート及び中性メタクリル酸のエステル、セルロース・エステル・ポリマー、及びアルカリ性の重合調整剤であって、当該活性成分の風味をマスキングするものからなるポリマーを含むコーティング組成物を開示する。
ポリマー・コーティングを含む風味マスクされる製剤粒子は、欧州特許公開EP第1166777号中に開示される。風味マスクされる粒子は、チュアブル錠の中にさらに配合される。活性剤、イブプロフェンを含む中心は、腸溶性ポリマー及びフィルム形成ポリマーによりコーティングされ、ここで当該フィルム形成ポリマーは、例えば、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース・フタレート、及びセルロース・アセテートである。コーティングされた粒子は、他の剤であって、例えば、アセサルフェーム、アスパルテーム、クエン酸、マンニトールのような甘味料、及び香味料と混合され、そして次いで、チャアブル錠の中に圧縮する。国際特許公開第WO02/87622 A1号は、薬物含有層及び2つの水膨張ゲル形成層からなる、経口フィルム製造を開示する。ポリアクリル酸及びヒドロキシプロピル・セルロースの如きポリマーは、当該製剤内に使用される。フィルム形成ポリマー及び抗砂粒剤(anti grit agent)によりコーティングされた粒子をマスキングする構造は、欧州特許出願公開第EP1219291号中に開示される。粒子をマスキングする構造は、チュアブル錠の中に配合される。当該構造のマスキング効果は、アセトアミノフェン及びヒドロキシプロピル・メチルセルロースと共にエチルセルロースを含む当該中心をコーティングすることにより達成される。日本国特許出願公開第JP2002−292344号は、フィルム・コーティング剤を開示し、ここで当該フィルム・コーティング剤は、より高い風味マスキング効果を有し、及び所望の薬剤放出を示す。当該フィルム・コーティング剤は、Eudragit NE 30 D(エチル・アクリレート−メチル・メタクリレート・コポリマー)及びメチルセルロースの分散を含む。
日本国特許出願公開第JP2000128776号は、医薬顆粒をコーティングするフィルムを開示し、ここで当該フィルム・コーティングは、エチルセルロース、Aquacoat ECD30及びEudragit NE 30D(エチルアセテート−メチル・メタクリレート・コポリマー・エマルジョン)の水分散液を含む。当該薬剤は、当該組成物から5、10、20分以内に放出される。
当該ポリマーのコーティングを含む風味マスク医薬粒子は、欧州特許出願公開第EP1166777号中に開示される。当該薬剤粒子は、腸溶性ポリマー・ヒドロキシプロピル・メチルセルロース・フタレート及び不溶性フィルム形成ポリマー、セルロース・アセテートの混合物を含むポリマーのコーティングを使用し、風味マスクされる。日本国特許出願公開第JP2000−053563号は、苦味をマスキングするためのエチルセルロースのコーティング層を含む風味マスクされた粒子状組成物を開示する。嫌な味のマスキングのための胃溶性ポリマーの使用は、日本国特許第11228393号中に開示される。コーティングのために使用されるポリマーは、ポリビニル・アセタール・ジエチルアミノアセテートを含む。
Eudragit Eとして販売されるジメチル・アミノエチル・メタクリレート及び中性メタクリル酸エステルを含むカチオン性ポリマーの使用は、国際特許公開第WO99/17742号中に開示される。米国特許第5,837,277号は、アクリルポリマーを含む味の良い医薬組成物を開示する。アクリルポリマーは、抗炎症薬を風味マスクするために使用される。使用されるアクリルポリマーは、第四アンモニウム基が、Eudragit RL 30D及びEudragit RS 30Dの名の下に販売されるエステルの浸透性を改良するために導入される際のポリ(エチル・アクリレート、メチル・メタクリレート)のコポリマーを含む。
以下の特許及び特許出願公開:
国際特許公開第00/06122 A1号;日本国特許第2000−007557 A2号;日本国特許第2000−007556 A2号;欧州特許第943341号;国際特許公開第98/47493号;国際特許公開第98/30209号;国際特許公開第98/14179号;国際特許公開第97/41839号;国際特許公開第97/09967号;国際特許公開第96/34628号;欧州特許第724880号;国際特許公開第96/10993号;欧州特許第706821号;国際特許公開第95/15155号;日本国特許第07076517号;国際特許公開第95/05166号;国際特許公開第94/27596号;国際特許公開第94/12157号;国際特許公開第94/05260号;国際特許公開第93/24109号;日本国特許第05255075号;国際特許公開第93/17667号;日本国特許第91−298966号;日本国特許第05201855号;欧州特許第523847号は、当該薬剤の風味マスキング使用のためのポリマーの使用を開示する。
国際特許公開第WO00/56266号は、苦味の風味マスキングのための、フィルム形成ポリメタクリレート及びチャンネル化剤と、高密度膨潤性ポリマー・カルボマーとの併用を開示する。水膨潤性ポリマーの添加は、胃の中膜内における当該活性成分の素早い放出に役立つ。国際特許公開第WO00/76479号は、メタクリル酸コポリマー及びフタレート・ポリマーを含む2つの腸溶性ポリマーの混合物を使用する、風味マスキング組成物を開示する。当該出願は、活性成分の放出を補助するための水溶性材料又は水膨潤性材料を含むチャンネル化剤の使用を開示する。当該特許中に開示されるような腸溶性ポリマーは、当該ポリマーが溶解できるアルカリ性pHで、活性成分を放出するものとして知られる。当該活性成分の放出は、腸溶性ポリマーの使用により及び上部消化管に限られる狭い吸収領域を有する薬剤の場合に、遅らせられるであろう;そのようなシステムは、限られた使用となるであろう。
風味マスキングのために、大いに苦い薬物セフロキシム・アキセチルをマイクロカプセルに入れることは、M.Cuna et al(M.Cuna,M.L.Lorenzo,J.L.Vila Jato,D.Toress,M.J.Alonso,Acta Technologiae et Legis Medicamenti.volume VII,N.3,1996)により開示され、風味をマスクする最終目標と共に、異なるポリマー材料、例えば、セルロース・アセテート・トリメリテート(trimellitate)、HPMCP−50、HPMCP−55を使用し、及び腸内空洞中にその放出を保証する。Alonso et al(M.J.Alonso,M.L.Lorenzo−Lamosa,M.Cuna,J.L.Vila−Jato 及び D.Torres,Journal of Microencapsulation,1997,Volume 14,NO.5,607−616)は、pH感受性アクリル・マイクロスフィア内に、懸濁剤形を調剤するため、大いに苦い薬物であるセフロキシム・アキセチルをカプセルに入れることを記載する。使用されるアクリルポリマーは、eudragit E、eudragit RL 100、eudragit L100−55であった。当該カチオン性ポリマー eudragit Eは、セフロキシム・アキセチルとのネガティブ相互作用を示す。当該腸溶性ポリマー eudragitL100−55は、アルカリ性のpH中の有益な放出を示す。
上記開示において、セフロキシム・アキセチルの放出は、塩基性媒体において研究されていたが一方、Danzig et al(Anne H. Dantzig, Dale C.Duckworth,Linda B.Tabas,Biochimica et Biophysica Acta 1191,1994,7−13)は、セフロキシム・アキセチルは、エステラーゼにより腸管腔内において加水分解され、セフロキシムとなり、当該腸管腔内のセフロキシム・アキセチルを低減し、そして結果として低減吸収をもたらし、ヒトにおけるセフロキシム・アキセチルの低い生体内利用をもたらすことを示した。セフロキシム・アキセチルは、既に、32〜50%の低い生体内利用であって、それ故、当該剤形態様に起因する生体内利用のさらなる低減は、最小化されるべきである。ワックス:グリセリル・モノステアレート及びポリマー:アミノアルキル・メタクリレート・コポリマー E(AMCE)の混合物を使用する、苦味のある薬物クラリスロマイシンのスプレー凝結の最適条件が、議論される(Yajima,Toshio;Umeki,Nobuo;Itai,Shigeru.Chemical&Pharmaceutical Bulletin(1999),47(2),220−225)。
風味マスキングが様々な方法により達成されることは、上記開示から明らかである。多くの天然及び合成ポリマー、樹脂、及びワックスであって、その単独又は組み合わせは、風味マスキングのために使用される。Eudragit Lのような腸溶性ポリマーは、風味マスキングのために使用されるが、唾液のpHは、5.8付近であり、そしてこれらのポリマーはpH5.5超で可溶化する、よって、薬剤の一部の浸出可能性がある。それ故、風味マスキングポリマー開発の必要性があり、苦味が、口内の、及び液状経口薬の場合のように再構成媒体の唾液のpHで当該ポリマーにより完全にマスクされるようにし、さらに、当該剤形における湿気及びその吸収及び生体内利用に影響を与えることなしに胃の中で素早く当該薬物を放出することから、生物学的活性型の当該薬物を保護できるようにする。
上記記載の参考文献の大部分は、組成物を記載し、ここで当該組成物は、満足に当該医薬組成物の薬剤の苦味をマスクするが、当該生体内利用に影響を与えることなしに、摂取後すぐに胃腔中において、当該薬物を放出できない。さらに、エチルセルロース、eudragit RS及びRLのようなポリマーは、当該薬物の放出にいくらか時間がかかり、そして、セルロース・アセテート・フタレート、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース・フタレート、L100の如きeudragitのような腸溶性ポリマーは、小腸に到達するまで当該薬物の放出を遅らせるであろう。それ故、そのようなポリマーは、当該薬物がいずれの遅れもなしにすぐに血中に吸収される必要のあるとき又は当該薬物が上方胃部に制限される吸収領域を有するとき、使用し得ない。このように、当該薬物の風味マスキングにおいて効果的であるが、当該薬物の放出において遅れを生じないポリマーを開発する必要性がある。
上述のポリマー・コーティングの使用は、嚥下過程の間、唾液と接触する間、当該薬物の溶解を遅延させるために効果的かもしれないが、液体媒体と接触しながらの長期保存を意図する、風味マスクされる液剤の製造において不利点が有る。
pH依存性溶解作用を示す多くのポリマーは、文献内に報告されている。カルボン酸官能基を含むポリマー並びにセルロース誘導体は、pH5.5超で溶解することが知られる。しかしながら、これらのポリマーは風味マスキングに実用的ではなく、というのは、唾液のpH及び再構成媒体のpHで溶解するであろうからである。さらにこれらのポリマーは、カプセルに入れた薬物を放出しないであろう、というのは、これらのポリマーは、胃の中の一般的なpHで、溶解せず又は十分に増大しないからである。
アミノ基の如き塩基性官能基を含むポリマーは、胃の中の一般的なpHで溶解することが知られている。そのようなポリマーは、逆腸溶性コーティングとして言及される。Rohm及びHaasにより販売されるポリマー eudragit Eは、このカテゴリーに属する(Eudragit E,Technical literature Rohm 及び Haas)。これらのポリマーは、pH5で膨潤をも示し、それ故、唾液のpH並びに再構成媒体で当該薬物を放出するであろうし、そして風味マスキングに役立たないであろう。その結果非常に特異的なpH依存性溶解反応を示す、pH感受性ポリマー組成物の開発の必要性があるだろう。本発明において開示するポリマー組成物は、特異的pH依存性溶解反応を示し、そして過去の文献において報告されていない。
苦味のある薬物の風味をマスクするための、本分野において知られる、多くの技術及び医薬添加物にかかわらず、効果的な技術、特異的な物質のための添加物又はそれらの混合物の発見の必要性が残る。
本発明の目的
胃部内の当該薬物のデリバリーの如き医薬応用の使用のためのpH感受性ポリマーを提供することが、本発明の目的である。
胃の酸性pHで膨潤又は可溶化し、そして、いずれの遅れも生じずにほぼすぐに胃部内で当該薬物を放出する、pH感受性ポリマーを提供することが、本発明の他の目的である。
ほぼすぐに胃部内で当該薬物を放出し、上方胃部に制限される狭い吸収領域を有する薬物の生体内利用に結果として変化を与えない、pH感受性ポリマーを提供することが、本発明の他の目的である。
タブレットのフィルム・コーティング、ドライシロップ、懸濁、及びチュアブルとして製剤される当該薬物の苦い粒子のコーティング、又は風味マスキングが要求されるところでタブレットを素早い崩壊のような様々な剤形において使用される、pH感受性ポリマーを提供することが、本発明の他の目的である。
水中において不溶性であり天然において疎水性の感受性成分に対する防湿層を提供する、pH感受性ポリマーを提供することが、本発明の他の目的である。
それ故、本発明は、pH依存性の膨潤/溶解挙動を示す新たなポリマーであって、一般式P[A(x)(y)(z)]を有し、ここで、Pが、(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むpH感受性ポリマーであり、そして(x)=35〜49%、(y)=13〜33%、(z)=27〜38%、かつ、全パーセンテージがw/wで表され、pH≦3.5において可溶である、当該ポリマーを提供する。
本発明のある態様において、当該疎水性モノマー(A)は、シクロヘキシル・アクリレート、ドデシル・アクリレート、2エチル・ヘキシル・アクリレート、オクチル・アクリレート、第三ブチル・アクリレート、フェニル・アクリレート、ブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、ベンジル・メタクリレート、シクロヘキシル・メタクリレート、フェニル・メタクリレート、第三ブチル・メタクリレート、ブチル・メタクリレート、2エチルヘキシル・メタクリレート、プロピル・メタクリレート、好ましくはブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、及びブチル・メタクリレートからなる群より選択されるアクリル酸及びメタクリル酸エステルを含む。
本発明の他の態様において、当該塩基性モノマー(B)は、アミノ・アルキル・アクリル酸及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される。
本発明の他の態様において、当該塩基性モノマー(B)は、ジメチル・アミノ・エチル・メタクリレート、ジメチル・アミノ・エチル・アクリレート、ジエチル・アミノ・エチル・メタクリレート、ジエチル・アミノ・エチル・アクリレート、ピペリジン・エチル・メタクリレート、2tert−ブチル・アミノ・エチル・メタクリレート、好ましくはジメチル・アミノ・エチル・メタクリレート及びジエチル・アミノ・エチル・アクリレートからなる群より選択される。
本発明の他の態様において、当該塩基性モノマー(B)は、2ビニル・ピリジン、3−ビニル・ピリジン、4ビニル・ピリジン及び5ビニル2ピコリン、2−ビニル4ピコリン、2イソプロぺニル・ピリジン及び3イソプロペニル・ピリジン、好ましくは4ビニル・ピリジンからなる群より選択される、アルケニル・ピリジンである。
本発明の他の態様において、当該塩基性モノマー(B)は、ビニル・キノリン、アミノ・アルキル・ビニル・エーテル、アミノ・エチル・スチレン、及びアリル・アミン、好ましくはアリル・アミンからなる群より選択される。
本発明の他の態様において、当該親水性モノマー(C)は、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・プロピル・メタクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・アクリレート、ヒドロキシ・プロピル・アクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・アクリレート、好ましくはヒドロキシ・エチル・メタクリレート及びヒドロキシエチル・エチル・メタクリレートからなる群より選択されるアクリル酸又はメタクリル酸エステルである。
本発明の他の態様において、pH感受性ポリマーは、1,000〜700,000の範囲の分子量を有する。
本発明の他の態様において、pH感受性ポリマーは、胃の中にみられるような酸性のpH≦3において溶解し又は膨潤し、pH>3.5の範囲内においては、不溶性又は非膨潤のままである。
本発明は、pH依存性の膨潤挙動/溶解挙動を示すポリマーの製造方法であって、当該ポリマーが一般式P[A(x)(y)(z)]を有し、ここで、Pは(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むpH感受性ポリマーであり、そして(x)=30〜95%、(y)=5〜70%、(z)=0〜60%、かつ、全パーセンテージがw/wで表され、疎水性及び塩基性モノマーの混合物又は疎水性、親水性、及び塩基性モノマーの混合物を重合することを含む、当該方法にも関する。
本発明の他の態様において、pH感受性ポリマーは、バルク、溶液、乳化又は分散重合、好ましくはバルク又は溶液重合から選択される、本分野において知られる慣習的技術により合成される。
本発明の他の態様において、当該重合は、疎水性及び塩基性モノマー又は疎水性、親水性及び塩基性モノマーが遊離基開始剤の存在下で重合される状態のバルク重合により、実施される。
本発明の他の態様において、当該重合は、溶媒中で、当該疎水性及び塩基性モノマー又は疎水性、親水性及び塩基性モノマーを溶解し、そして当該溶液を重合に供することを含む、溶液重合により実施される。
本発明の好ましい態様において、当該重合のために使用される溶媒は、当該モノマーが溶解するいずれかの溶媒であり、及び芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、ホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びジメチル・スルホキシド、好ましくはジメチル・ホルムアミドの如きホルムアミドから選択される。
本発明の他の好ましい態様において、当該pH感受性ポリマーの合成間の当該モノマーに対する溶媒の重量%は、20〜100、好ましくは30〜80である。
本発明の他の好ましい態様において、当該pH感受性ポリマーを産生するための疎水性及び塩基性モノマー又は疎水性、親水性及び塩基性モノマーの当該バルク又は溶液重合は、遊離基開始剤の存在下で実施され、ここで重合のために使用される当該遊離基開始剤は、アゾ化合物、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸及び過エステル、好ましくはアゾ化合物の如き化合物を含む。
本発明の他の好ましい態様において、アゾ−ビス−シアノ吉草酸、アゾ−ビス−ジフェニル・メタン、アゾ−ビス−メチル・イソブチレート及びアゾ−ビス−イソブチロニトリル、好ましくはアゾ−ビス−イソブチロニトリルからなる当該アゾ開始剤は、重合のために使用される。
本発明の他の好ましい態様において、当該重合中のモノマーに対する開始剤の重量%は、0.1〜5、好ましくは0.2〜3である。
本発明の他の好ましい態様において、当該重合は、50〜80℃で、15〜18時間、実施される。
本発明の詳細な説明
本発明は、医薬応用のために使用され得る、pH感受性ポリマーの合成に関する。ポリマー化学が進むにつれて、新たな応用が、当該ポリマーのために開発される。ポリマーは、剤形及びドラッグ・デリバリー・システムのような様々な応用として試験される。ポリマーは、製剤の剤形に重要な役割を果たす。ポリマーベースの賦形剤は、風味マスキング、保護及び当該薬物の安定化を含む様々な理由に対する剤形で、しばしば使用される。セルロース誘導体及びEudragitシリーズのような腸溶性ポリマーは、風味マスキング応用のために使用される。当該ポリマー Eudragit Eは、最も一般的に使用される、薬物の風味マスキング用ポリマーであるが、しかしながら、セフロキシム・アキセチルのような、ある苦い薬物は、カチオン性ポリマーeudragit Eとのネガティブ相互作用を示す(M.J.Alonso,M.L.Lorenzo−Lamosa,M.Cuna,J.L.Vila−Jato 及びD.Torres,Jounal of Microencapsulation,1997,Volume 14,No.5,607−616)。さらにEudragit E(ジメチル・アミノ・エチル・メタクリレート・コポリマー)であって、Rohm GmbH,Darmstadt,Germanyから入手されるものは、塩基性pHにおいて不溶性であるが、しかしながら、当該ポリマーは、もし液体経口薬がそのpHで配合されるならば問題が生ずるであろう中性から僅かに酸性のpHにおいて、いくらか膨潤を示すことが判明している。
本発明に開示されるような、pH感受性ポリマーは、酸性pH≦3において膨潤又は可溶性を示す。当該pH感受性ポリマーは、さらに、pH>3.5において膨潤せず又は不溶性のままである。さらに、当該pH感受性ポリマーは、当該薬物と当該ポリマーとのネガティブな相互作用を示さない。本発明に開示されるpH感受性ポリマーは、当該ポリマーが、当該薬物の放出においていずれの遅れも生ずることなく、胃の中において可溶化するように要求される、様々な医薬剤形に適用され得る。当該ポリマーは、フィルム・コーティングにより、即時放出タブレットの風味マスキングの役に立ち得、そして、チュアブル及び素早い分散タブレットの場合も同様であり、当該ポリマーが唾液のpHで可溶化しないことを理由とする。さらに特別に、本発明に開示されるようなpH感受性ポリマーは、ドライシロップ及び懸濁型での投与を必要とする苦い薬物の風味マスキングに使用され得、当該ポリマーは、全ての保存期間中、当該再構築媒体内の当該薬物の浸出を妨げ及びいずれの遅れも生ずることなく胃の中においてすぐに当該薬物を放出もすると期待される。胃の溶解度に関して本発明に開示されるpH感受性ポリマーの使用は、それ故、上方胃部に部分的に限られる狭い吸収領域を有する、当該薬物の生体内利用に関して、いずれの変更も生じないであろう。
本発明の範囲にわたる当該ポリマーは、バルク重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合のような、いずれかの重合技術により合成され得る。所望のpH感受性特徴を有する本発明のpH感受性ポリマーは、特に疎水性モノマー及び塩基性モノマー及び場合により親水性モノマーを含む、モノマー組成を変化することにより入手され得、当該pH感受性ポリマーは、酸性及び中性及び中性付近のpHで、要求される膨潤及び非膨潤特徴を示すことができる。本発明の刺激感受性ポリマーは、モノマー組成物であり、pH≦3.0の酸性において膨潤又は溶解のどちらかを有し、及びpH>3.5において溶解せず又は膨潤せず又は僅かに膨潤し、当該ポリマーを風味マスキングのような医薬応用に最も好適なものとする。
疎水性モノマーは、シクロヘキシル・アクリレート、ドデシル・アクリレート、2エチル・ヘキシル・アクリレート、オクチル・アクリレート、第三ブチル・アクリレート、フェニル・アクリレート、ブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、ベンジル・メタクリレート、シクロヘキシル・メタクリレート、フェニル・メタクリレート、第三ブチル・メタクリレート、ブチル・メタクリレート、2エチル・ヘキシル・メタクリレート、プロピル・メタクリレート、好ましくはブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、及びブチル・メタクリレートのようなアクリル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される。本発明の他の好ましい態様において、塩基性モノマーは、ジメチル・アミノ・エチル・メタクリレート、ジメチル・アミノ・エチル・アクリレート、ジエチル・アミノ・エチル・メタクリレート、ジエチル・アミノ・エチル・アクリレート、ピペリジン・エチル・メタクリレート、2tert−ブチル・アミノ・エチル・メタクリレート、好ましくはジメチル・アミノ・エチル・メタクリレート及びジエチル・アミノ・エチル・アクリレートのようなアミノ・アルキル・アクリル酸及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される。
当該塩基性モノマーは、2ビニル・ピリジン、3−ビニル・ピリジン、4ビニル・ピリジン及び5ビニル2ピコリン、2−ビニル4ピコリン、2イソプロぺニル・ピリジン、3イソプロペニル・ピリジン、好ましくは4ビニルピリジンのようなアルケニル・ピリジンの群より選択される。本発明の他の態様において、当該塩基性モノマーは、ビニル・キノリン、アミノ・アルキル・ビニル・エーテル、アミノ・エチル・スチレン、及びアリル・アミン、好ましくはアリル・アミンからなる群より選択される。
当該親水性モノマーは、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・プロピル・メタクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・アクリレート、ヒドロキシ・プロピル・アクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・アクリレート、好ましくはヒドロキシ・エチル・メタクリレート及びヒドロキシエチル・エチル・メタクリレートのようなアクリル酸又はメタクリル酸エステルからなる。
当該pH感受性ポリマーは、バルク重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合、好ましくはバルク又は溶液重合により合成され得る。バルク重合において、当該疎水性、塩基性、及び場合により親水性モノマーは、液体状態に取り込まれ、そして開始剤が、当該モノマー内に溶解させられる。当該全システムは、均一相であり、そして重合を開始するために加熱される。
当該pH感受性ポリマーの合成のために使用される遊離基開始剤は、アゾ化合物、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸及び過エステルを含む化合物のファミリーから選択される。当該pH感受性ポリマーの合成は、アゾ−ビス−シアノ吉草酸、アゾ−ビス−ジフェニル・メタン、アゾ−ビス−メチル・イソブチレート及びアゾ−ビス−イソブチロニトリルからなる当該アゾ開始剤存在下で実施される。本発明の重合反応のための好ましいアゾ開始剤は、アゾ・ビス・イソブチロニトリルである。
pH感受性ポリマーは、溶解重合により合成され得る。溶解重合は、当該ポリマーが溶液型において使用され得る際に利点となる。溶解重合において、モノマーは、場合により連鎖移動剤を加えた、好適な不活性溶媒中に溶解させられる。遊離基開始剤は、当該溶剤中にも溶解させられる。本発明の重合反応のための好まれるアゾ開始剤は、アゾ・ビス・イソブチロニトリルである。モノマーが溶解する溶媒は、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、ホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びジメチル・スルホキシドからなる。全てのモノマーが支障なく溶解する溶媒が、好ましい。溶解重合のために使用される好ましい溶媒は、ジメチル・ホルムアミドである。本発明の溶解重合は、ジメチル・ホルムアミド中で、遊離基開始剤、アゾ・ビス・イソブチロニトリルを加えて、当該疎水性、塩基性、及び場合により親水性モノマーを溶解して、実施された。バルク又は溶解重合のいずれかにより合成されたポリマーは、1:1の比でジクロロメタン及びメタノールを含む溶媒中に溶解することにより回収される。当該ポリマーは、水、石油エーテル又はジエチルエーテルのような非溶剤中に沈殿させることにより溶液から沈殿させられ、次いで真空下乾燥される。
合成されたポリマーのpH感受性作用を、異なるpH範囲のバッファー溶液にさらす当該ポリマー・フィルムの膨潤試験を実施することにより試験した。合成されたポリマーのフィルムを入れ、そして当該ポリマーのpH依存性反応を試験し、酸性溶媒中の当該ポリマーの可溶性又は膨潤、及び中性付近のpHにおける非膨潤を発見した。さらに、合成されたpH感受性ポリマーは、苦い薬物の風味マスキングにおいて、及び微粒子、懸濁及びタブレットのような医薬剤形から薬物の胃のデリバリーとして、有用であり、それは当該ポリマーが、唾液のpHで不溶性であるが、胃の中に見られるような酸性のpH≦3において溶解することによる。本明細書中に開示されるpH感受性ポリマーは、ドラッグ・デリバリー・システムの形成として有用であり、例えば微粒子である。開示されるような新たなpH感受性ポリマーは、フィルムを形成し、そして、フィルムコート・タブレットのようなフィルムコート薬のデリバリーシステムの形成に使用され得る。
本発明の機能的特徴に関して、胃の中に見られるような酸性のpH≦3において可溶化し又は膨潤するpH感受性ポリマーは、当該ポリマーが胃の酸性条件において特に可溶化し又は膨潤する際の苦い薬の風味マスキングに適しており、そして、ほぼすぐに当該薬物を放出することが可能である。さらに、当該pH感受性ポリマーは、pH範囲>3.5において不溶性又は非膨潤のままであり、そのことが風味マスキングの使用に、より適する状態にする、というのは、当該苦い薬は、再構築又は懸濁する場合の懸濁された媒体内の当該ポリマーにより放出されず/浸出させないであろうし、及び当該薬物は、風味の知覚を与えるほどには唾液のpHで当該ポリマーから放出もされないであろうからである。さらに当該ポリマーは、優れたフィルム形成特徴を示し、そしてそのような胃の可溶性ポリマーは、保存期間に防湿層を必要とし及び胃の中でほぼすぐに当該薬物を放出する慣習的な医薬剤形のフィルムコーティングにおいて応用を見出し得る。本発明に開示されるような当該ポリマーは医薬品をより味の良いものにできる、というのは、それらはpH>3.5の状態においては非膨潤のままであり、そしてpH≦3の状態においては膨潤又は溶解するからである。
ポリマーのフィルム・キャスティング
それぞれのポリマー溶液(12% w/v)を、クロロホルム中に製造し、結果物としての溶液を、水平に維持されたガラスの平面上に均一に広げた。当該溶媒を室温で蒸発させておいた。当該溶媒が蒸発した後、当該フィルムを、表面から注意深く引き剥がした。さらに当該フィルムを、室温で乾燥させておいた。当該pH感受性ポリマーの膨潤研究を、各ポリマーの試験チューブ中、別々に、上記バッファーのそれぞれ15ml中、サイズ25〜36sq.mm及び重さ10〜15mgのフィルムを置くことにより実施した。酸性のpH1.2及びpH4.5及び5.8における当該フィルム中の変化を、ある期間にわたって記録した。
膨潤試験
当該ポリマーのpH感受性反応を証明するために、上記ポリマーのフィルムについての膨潤試験を、異なるpHのバッファー媒体中で実施した。実施例1及び2において合成されるポリマーの膨潤反応を、表2及び3に示す。実施例3において合成されるポリマーの膨潤反応を、表4,5及び6に示す。ポリマーの膨潤を、当該異なる媒体にさらした状態のフィルムの重さの変化に基づいて計算した。本試験に使用されるバッファーを以下に挙げる。
塩酸バッファー pH1.2
蒸留水中0.2MのHCL溶液の425mlを、1000ml容量フラスコ中の塩化カリウム溶液(0.2M)の250mlに加え、そして蒸留水で体積を合わせて、0.1NのHCLを製造した。
アセテート・バッファー pH2.8
無水酢酸ナトリウム4.0gを蒸留水840ml中に溶解し、そして氷酢酸を加え、pHを2.8に調整し、そして蒸留水でさらに希釈し、体積を1000mlとした。
クエン酸バッファー pH4.5
クエン酸バッファーとして、0.3M(100ml蒸留水中6.34g)のクエン酸及び0.03M(100ml蒸留水中9.5g)のトリ・クエン酸ナトリウム溶液を作成した。当該トリ・クエン酸ナトリウム溶液のpHを、pH計を使用し、クエン酸を滴下することにより4.5に調整した。
ホスフェイト・バッファー pH5.8
ホスフェイト・バッファーとして、蒸留水中、0.2MのNaOH及び0.2Mのポタシウム・ジヒドロゲン・ホスフェイト、KHPOの溶液を作成した。ポタシウム・ジヒドロゲン・ホスフェイトの250mlを用意し、これに蒸留水中0.2MのNaOH溶液の18mlを添加し、pH5.8とした。次いで、当該溶液の体積を蒸留水により200ml増やした。
実施例1
当該pH感受性ポリマーをバルク重合により合成した。メチル・メタクリレート 35% w/w、ビニル・ピリジン 30% w/w、及びヒドロキシエチル・メタクリレート 35% w/wのモノマーを混合し、そしてアゾ開始剤、アゾ・ビス・イソブチロニトリルを全モノマーの1% w/w添加した。反応混合物を、窒素パージし、不活性雰囲気を提供した。重合反応を、18時間の間、65℃まで反応混合物を加熱することにより実施した。そのように合成されたポリマーを、ジクロロメタン及びメタノール(1:1)を含む溶媒中に溶解することにより回収し、そして非溶剤中に沈殿させた。使用した非溶剤は、ジエチルエーテルであった。当該ポリマーを、真空下27℃で乾燥した。
実施例2
当該pH感受性ポリマーを、バルク重合により合成した。メチル・メタクリレート 35% w/w、ビニル・ピリジン 30% w/w、及びブチル・アクリレート 35% w/wのモノマーを混合し、そしてアゾ開始剤、アゾ・ビス・イソブチロニトリルを全モノマーの1% w/w添加した。反応混合物を、窒素パージし、不活性雰囲気を提供した。重合反応を、18時間の間、65℃まで反応混合物を加熱することにより実施した。そのように合成されたポリマーを、ジクロロメタン及びメタノール(1:1)を含む溶媒中に溶解することにより回収し、そして非溶剤中に沈殿させた。使用した非溶剤は、ジエチルエーテルであった。当該ポリマーを、真空下27℃で乾燥した。
Figure 0005000890
Figure 0005000890
実施例3
当該pH感受性ポリマーを、溶解重合により合成した。疎水性モノマー、塩基性モノマー、及び場合により親水性モノマーを、ジメチル・ホルムアミド溶媒中に溶解した。アゾ開始剤、アゾ・ビス・イソブチロニトリルをジメチル・ホルムアミド溶媒中の当該モノマー溶液に添加した。反応混合物を、窒素パージし、不活性雰囲気を提供した。重合反応を、18時間の間、65℃まで反応混合物を加熱することにより実施した。そのように合成されたポリマーを、ジクロロメタン及びメタノール(1:1)を含む溶媒中に溶解し、非溶剤、ジエチルエーテル中の沈殿により回収した。ポリマーを、真空下27℃で乾燥した。ポリマーは分子量に特徴を有する。合成されたポリマーの分子量を、スタイラジェル(Styragel)カラムを使用することを参考として、ウォーターズ(Waters)ゲル透過クロマトグラフィー及びポリスチレン基準(Polysciences Inc.USA)を使用し決定した。当該ポリマーのモノマー組成及び分子量を表3に集約する。なお、表中、整理番号1〜6は本願発明の実施例ではなく、参考例である。
Figure 0005000890
ここで、a:MMA=メチル・メタクリレート、BuMA=ブチル・メタクリレート、DMAEMA=ジメチル・アミノエチル・メタクリレート、HEMA=ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、VP=ビニル・ピリジン、HEEMA=ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、PEMA=ピペリジン・エチル・メタクリレートのモノマーの重量による%である。
Figure 0005000890
ここで、MMA=メチル・メタクリレート、BuMA=ブチル・メタクリレート、DMAEMA=ジメチル・アミノエチル・メタクリレート、HEMA=ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、VP=ビニル・ピリジン、HEEMA=ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、PEMA=ピペリジン・エチル・メタクリレートである。
Figure 0005000890
ここで、MMA=メチル・メタクリレート、BuMA=ブチル・メタクリレート、DMAEMA=ジメチル・アミノエチル・メタクリレート、HEMA=ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、VP=ビニル・ピリジン、HEEMA=ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、PEMA=ピペリジン・エチル・メタクリレートである。
Figure 0005000890
ここで、MMA=メチル・メタクリレート、BuMA=ブチル・メタクリレート、DMAEMA=ジメチル・アミノエチル・メタクリレート、HEMA=ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、VP=ビニル・ピリジン、HEEMA=ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、PEMA=ピペリジン・エチル・メタクリレートである。
酸性のpH1.2において膨潤又は溶解し、及びpH5.8で非膨潤のままである当該pH感受性ポリマーは、風味マスキング応用に役立つと考えられた。さらに、pH4.5及び5.8において不溶性のまま及び非常に低い膨潤である当該ポリマーは、液状経口製剤の風味マスキング応用に使用され得る。酸性pHにおいて溶解するポリマー及びpH4.5及びpH5.8において不溶性のままであるか又はゆっくりとした膨潤を示すポリマーは、フィルムコーティングされたタブレット及び素早く崩壊し及び噛むことができるタブレットのようなドラッグ・デリバリー・システムに使用され得、ここで、当該ポリマーは、口腔から胃への当該薬物の通過まで短時間の風味マスキングを提供する必要がある。
本発明の利点を、以下に挙げる。
1)本明細書中に記載されるpH感受性ポリマーは、薬物応用、特に胃部内の薬物のデリバリーに使用され得る。
2)当該pH感受性ポリマーは、胃の酸性pHで膨潤し又は溶解する。いずれの遅れを生ずることなく、それは、胃部内においてほぼすぐに当該薬物を放出できる。
3)当該pH感受性ポリマーは、ほぼすぐに胃部内において当該薬物を放出するので、上方胃部に制限される狭い吸収領域を有する薬物の生体内利用において、変化しないであろう。
4)当該pH感受性ポリマーは、風味マスキング応用に使用され得る、というのは、当該ポリマーは、唾液のpHにおいて及び液状経口医薬製剤の場合のような再構成媒体内においても非膨潤のままだからである。
5)当該pH感受性ポリマーは、タブレットのフィルム・コーティング、ドライシロップ、懸濁、及び噛むことができ又は素早く崩壊するタブレットであって、風味マスキングが要求されるものとして調剤される薬物の苦味粒子のコーティングのような様々な剤形において使用され得る。
6)風味マスキングは別として、当該pH感受性ポリマーは、感受性部分に対する防湿層を提供し得る、というのは、感受性部分は、水に不溶性であり、天然において疎水性だからである。

Claims (28)

  1. pH依存性の膨潤/溶解挙動を示すポリマーであって、一般式P[A(x)(y)(z)]を有し、ここで、Pが、(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むpH感受性ポリマーであり、そして(x)=35〜49%、(y)=13〜33%、(z)=27〜38%、かつ、全パーセンテージがw/wで表され、pH≦3.5において可溶である、前記ポリマー。
  2. 前記疎水性モノマー(A)が、シクロヘキシル・アクリレート、ドデシル・アクリレート、2エチル・ヘキシル・アクリレート、オクチル・アクリレート、第三ブチル・アクリレート、フェニル・アクリレート、ブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、ベンジル・メタクリレート、シクロヘキシル・メタクリレート、フェニル・メタクリレート、第三ブチル・メタクリレート、ブチル・メタクリレート、2エチルヘキシル・メタクリレート、プロピル・メタクリレート、好ましくはブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、及びブチル・メタクリレートからなる群より選択されるアクリル又はメタクリル酸エステルを含む、請求項1に記載のポリマー。
  3. 前記疎水性モノマー(A)が、ブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、及びブチル・メタクリレートからなる群より選択される、請求項1に記載のポリマー。
  4. 前記塩基性モノマー(B)が4−ビニル・ピリジンである、請求項1に記載のポリマー。
  5. 前記親水性モノマー(C)が、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・プロピル・メタクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・アクリレート、ヒドロキシ・プロピル・アクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・アクリレートからなる群より選択されるアクリル又はメタクリル酸エステルを含む、請求項1に記載のポリマー。
  6. 前記親水性モノマー(C)が、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート及びヒドロキシエチル・エチル・メタクリレートから選択される、請求項5に記載のポリマー。
  7. 前記pH感受性ポリマーが、1,000〜700,000の範囲の分子量を有する、請求項1に記載のポリマー。
  8. 前記pH感受性ポリマーが、胃の中にみられる酸性のpH≦3において可溶化し又は膨潤し、そしてpH>3.5の範囲内においては、不溶性又は非膨潤のままである、請求項1に記載のポリマー。
  9. pH依存性の膨潤/溶解挙動を示すポリマーの製造方法であって、当該ポリマーは、一般式P[A(x)(y)(z)]を有し、ここで、Pが(A)疎水性モノマー、(B)塩基性モノマー、及び(C)親水性モノマーを含むpH感受性ポリマーであり、そして(x)=35〜49%、(y)=13〜33%、(z)=27〜38%、かつ、全パーセンテージがw/wで表され、pH≦3.5において可溶である、前記ポリマーであり、疎水性及び塩基性モノマーの混合物又は疎水性、親水性、及び塩基性モノマーの混合物を重合することを含む、前記方法。
  10. 前記疎水性モノマー(A)が、シクロヘキシル・アクリレート、ドデシル・アクリレート、2エチル・ヘキシル・アクリレート、オクチル・アクリレート、第三ブチル・アクリレート、フェニル・アクリレート、ブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、ベンジル・メタクリレート、シクロヘキシル・メタクリレート、フェニル・メタクリレート、第三ブチル・メタクリレート、ブチル・メタクリレート、2エチル・ヘキシル・メタクリレート、プロピル・メタクリレート、好ましくはブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、及びブチル・メタクリレートからなる群より選択されるアクリル又はメタクリル酸エステルを含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記疎水性モノマー(A)が、ブチル・アクリレート、メチル・メタクリレート、及びブチル・メタクリレートからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
  12. 前記塩基性モノマー(B)が、4−ビニル・ピリジンである、請求項9に記載の方法。
  13. 前記親水性モノマー(C)が、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・プロピル・メタクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・メタクリレート、ヒドロキシ・エチル・アクリレート、ヒドロキシ・プロピル・アクリレート、ヒドロキシエチル・エチル・アクリレートからなる群より選択される、アクリル又はメタクリル酸エステルを含む、請求項9に記載の方法。
  14. 前記親水性モノマー(C)が、ヒドロキシ・エチル・メタクリレート及びヒドロキシエチル・エチル・メタクリレートから選択される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記pH感受性ポリマーが、バルク、溶液、乳化、及び分散重合から選択される、重合技術により合成される、請求項9に記載の方法。
  16. 前記重合が、バルク重合により実施される、請求項9に記載の方法。
  17. 前記重合が、溶媒中で、前記疎水性及び塩基性モノマー又は疎水性、親水性及び塩基性モノマーを溶解し、そして当該溶液を重合に供することを含む、溶液重合により実施される、請求項9に記載の方法。
  18. 前記重合のために使用される溶媒が、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、ホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びジメチル・スルホキシドからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記溶媒が、ジメチル・ホルムアミドである、請求項17に記載の方法。
  20. 前記pH感受性ポリマーの合成間の前記モノマーに対する溶媒の重量%が、20〜100である、請求項17に記載の方法。
  21. 前記pH感受性ポリマーの合成間の前記モノマーに対する溶媒の重量%が、30〜80である、請求項17に記載の方法。
  22. 前記pH感受性ポリマーを産生するための、疎水性及び塩基性モノマー又は疎水性、親水性及び塩基性モノマーの前記バルク又は溶液重合が、アゾ化合物、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸及び過エステルからなる群より選択される遊離基開始剤の存在下で実施される、請求項9に記載の方法。
  23. 前記遊離基開始剤が、アゾ化合物を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記アゾ化合物が、アゾ−ビス−シアノ吉草酸、アゾ−ビス−ジフェニル・メタン、アゾ−ビス−メチル・イソブチレート及びアゾ−ビス−イソブチロニトリルからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
  25. 前記アゾ化合物が、アゾ・ビス・イソブチロニトリルである、請求項23に記載の方法。
  26. モノマーに対する開始剤の重量%が、0.1〜5の範囲である、請求項22に記載の方法。
  27. モノマーに対する開始剤の重量%が、0.2〜3の範囲である、請求項22に記載の方法。
  28. 前記重合が、50〜80℃の範囲で、及び15〜18時間の間、実施される、請求項9に記載の方法。
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