JP5000339B2 - 廃棄物の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一般廃棄物及び/または産業廃棄物の処理方法に関する。詳しくは、廃棄物を高温ガス化処理して、水素、一酸化炭素等を含むガスを燃料ガスあるいは化学原料ガスとして回収する廃棄物の処理方法に関する。
尚、本発明における一般廃棄物及び産業廃棄物としては、例えば、生ごみに代表される都市ごみ、建設廃材、プラスチック屑、廃棄された自動車や家電製品のシュレッダーダスト、廃木材、汚泥、廃油、廃炭素材、廃棄物由来のRDF、RPFおよびこれらの混合物を挙げることができる。
現在、産業廃棄物及び一般廃棄物(以下、単に「廃棄物」という)の多くは、発生したままの姿で、あるいは何らかの事前処理した後、焼却によって減容化した後、埋立等の最終処分が行われることが多い。上記焼却は、様々な方法で行われているが、近年、焼却場における発生ガス中のダイオキシン等有害物質の管理問題や資源リサイクルの観点から、廃棄物をただ単に焼却するだけでなく、燃料ガスあるいは化学原料ガス(水素、一酸化炭素を主成分とするガス)として回収する高温ガス化技術が望まれている。
このような処理方法としては、例えば、特許文献1〜4によって開示されている方法がある。この処理方法は、まず、高温ガス化炉に廃棄物を投入し、これを酸素の添加によりガス化、溶融し、再生資源として、燃料ガスあるいは化学原料ガス、スラグ(無機溶融物)、メタル(金属溶融物)を得ている。具体的には再生資源としての燃料ガスあるいは化学原料ガスを得るために、高温ガス化炉において廃棄物から発生したガスを約1200℃で2秒以上滞留させ、そのガス中のタール分、ダイオキシン類を分解して、H、CO、CO、HOを主成分とするガスに改質する。改質されたガスは、高温ガス化炉の頂部に設けられた接続管を介して、次の工程である急冷工程へと排出され、精製工程をへて精製され燃料ガスあるいは化学原料ガスとされる。
また、非特許文献1には図1に示すガス化改質方式による廃棄物処理装置が開示されており、この装置では、廃棄物をプッシャーで高温ガス化炉に供給し、酸素を用いてガス化溶融し、得られた改質ガスを冷却装置、ガス精製装置を経由して精製した後、ボイラータービン発電機で燃料ガスとして利用するようにしている。
ところで、前記したような処理装置においては、高温ガス化炉に廃棄物を投入するためにスクリューフィーダ、またはプッシャー等の廃棄物供給装置が用いられており、スクリューフィーダにおいては回転数を、プッシャーにおいては詰め込み量と投入頻度を調整して、所定の処理量が達成できるようにしている。
しかしながら、一般に廃棄物は使用済み製品の混合物であるから、ピットアンドクレーン方式により廃棄物供給装置に投入される廃棄物は、可燃分元素組成割合(炭素、水素、酸素)、3成分割合(可燃分、水分、灰分)、単位体積重量等が千差万別に変化する。従って、変動の大きい廃棄物の炉への供給量の測定値は、時間的な変動を伴うものである。
また、たとえ回転数や投入頻度を調整して投入量を一定にしたとしても、廃棄物の炉への供給量、廃棄物の3成分割合(可燃分、水分、灰分)、可燃分の元素組成(炭素、水素、酸素等)、及び発熱量は絶えず変動するのが常である。(以下、「3成分割合(可燃分、水分、灰分)、および可燃分の元素組成割合(炭素、水素、酸素)」を「成分・組成」と記述する。)
このために、特に、成分・組成の変動の大きい混合廃棄物の処理においては、廃棄物供給装置を介して高温ガス化炉に現に供給されている廃棄物の供給量とガス化剤である酸素の供給量の適正化が難しく、ガス化温度が大きく変動して、制御性を損ねることがしばしばである。酸素の供給量が必要以上に多い場合は、急激な温度上昇が起こり、回収ガス中の水素濃度が急激に低下し、ガスの発熱量が低下するなどの操業上の不都合がおこり、ガス化炉本体の耐火物の損耗が激しくなる。また、酸素の供給量が少ない場合は、高温ガス化反応に必要なガス化温度が確保できなくなり、ガス化の継続が困難になるなど、操業の安全性、引いては安定操業を損ねる操業上の問題があった。
また、回収ガスの熱エネルギーの有効利用に際しても、例えば、回収ガスを燃料ガスとするボイラーを設置し、ここで得られる蒸気を各種用途に利用する場合、廃棄物の熱量が絶えず変動するために、高温ガス化炉から発生するガス量、ガス質に伴う熱エネルギーが不安定となり、その結果、ボイラーから発生する蒸気量も不安定となり、回収エネルギーの過不足がおこる等の操業上の問題があった。
また、ボイラータービン発電の用途に回収ガスを利用する場合は、回収ガスの熱量仕様を達成できず、発電量の低下に繋がる操業上の問題があった。
また、回収ガスを発電用燃料ガスとして直接使用し発電する場合には、回収ガスの質、量に制約があり、例えばガスエンジンにおいては最低ガス発熱量が求められるが、これを維持できず、安定した発電が困難になる問題があった。
これら操業上の問題点を解消するには、廃棄物の質と量に適応して、炉へ供給する廃棄物量、酸素の供給量、必要に応じて補助燃料の供給量を適正化し、安定操業を確保すると同時に、回収ガスの操業条件(ガス質および量)を確保することが必要になる。
このためにはまず、操業中の高温ガス化炉において、どのような質の廃棄物が、どれだけの量処理されているかを精度良く時間遅れなく遂次把握する必要がある。
高温ガス化炉の操業中において、どのような質の廃棄物が、どれだけの量処理されているかを時間遅れなく遂次把握することができれば、その上で、遂次把握された廃棄物の質と量を活用し(フィードバック)、廃棄物の処理量、酸素量、必要ならば補助燃料を適正化することが可能となり、目標とする操業条件を達成できる。
ここで、一般に、高温ガス化反応の適正化には、廃棄物の処理量、および廃棄物の質としての成分・組成と発熱量が必要な項目として上げられる。以下では、廃棄物の供給量、廃棄物の成分・組成、及び廃棄物の発熱量のそれぞれについて述べる。
(廃棄物の供給量)
先に述べたように、廃棄物が使用済み製品の混合物であり、ピットアンドクレーン方式により廃棄物供給装置に投入される廃棄物は、成分・組成、単位体積重量等が千差万別に変化するため、変動の大きい廃棄物の炉への供給量の測定は精度が悪いという課題を抱えている。
(廃棄物の成分・組成)
廃棄物の成分・組成については次の(1),(2)のことが言える。
(1)事前に廃棄物をサンプリングして、工業分析値として可燃分、水分、灰分の3成分割合を、元素分析値として可燃分中の炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、塩素の元素組成割合を知ることができる。
(2)可燃分中の元素組成の簡易推算法は、ごみ処理施設整備の計画・設計要領、2006改訂版、P145、社団法人全国都市清掃会議に提示されている。この方法では事前にプラスチック類とプラスチック以外の可燃分の量を測定しておくことにより、おおよそのごみ元素組成の推算が可能である。
(廃棄物の発熱量)
廃棄物の発熱量については次の(3)〜(6)のことが言える。
(3)事前に採取して熱量計で高位発熱量(総発熱量)を求めることができる。
(4)事前に廃棄物をサンプリングして工業分析、元素分析を実施し、その分析結果よリ高位発熱量、低位発熱量を推算することができる。
例えば、都市ごみの場合に比較的真値に合致すると言われているSteuerの式に代入すれば、廃棄物可燃分の高位発熱量が求まる。
Steuerの式は下記に示されるものである〔「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(社)全国清掃会議'(1999)p145より〕
Hh=339.4{c-3×(o/8)}+238.8×3×(o/8)+1445.6{h-(o/16 )+104.8s[kJ/kg]
ここで、c,h,osは、炭素、水素、酸素及び硫黄の質量%である.
この可燃分の高位発熱量を、下記の低位発熱量を求める式を用いることで、容易に廃棄物の低位発熱量を知ることができる。
HL=Hh−25(9H+M)
ここで、
HL:廃棄物の低位発熱量(kJ/kg−湿り廃棄物)
Hh:廃棄物の高位発熱量(kJ/kg−湿り廃棄物)
H:湿り廃棄物中水素含有率(%)
M:湿り廃棄物中水分(%)
(5)操業中の廃棄物処理装置の全体で熱収支を算出し、出熱と入熱の差を廃棄物の発熱量として低位発熱量を求める方法も、ごみの焼却炉では知られている。
しかしながら、上記(1)〜(4)の工業分析、元素分析、熱量計、プラスチックスの混合率などの事前採取する方法では、結果が出るまでに多大の時間がかかり、また、サンプリングで廃棄物の代表値が得られているかにも疑問が残る。
上記(5)の熱収支を用いる方法は、ごみの焼却では有力な方法ではあるが、ある程度の長い時間で平均化したデータを用いるので、現に炉内にある廃棄物というよりもすでに反応を終えてしまった過去の低位発熱量を示しているという問題がある。
(6)物質収支に基礎をおいた提案として、特許文献5に開示されている方法がある。
特許文献5には、廃棄物を熱分解、ガス化及び溶融してメタルとスラグに加えてガスをも回収する廃棄物の溶融ガス化処理において、回収されるガスの成分元素の濃度を測定し、回収凝縮水量を測定し、それら測定値、該ガスの回収量、廃棄物の処理量、並びにその他装入物質の成分及び装入量を用いて、処理した廃棄物の組成を定め、該組成から廃棄物の低位発熱量を求める方法が開示されている。この場合、前記測定値、該ガスの回収量、廃棄物の処理量に、それぞれの3〜24時間移動平均値を用いるのが良いとされている。ガス化炉での入口および出口での物質収支に基礎を置いたこの提案は、ガス化結果を後に振り返る(解析する)ために長期間の平均値を算定するには有力な方法である。
しかしながら該高温ガス化反応においては、高温ガス化炉の安定操業のためには分単位での対応(フィードバック)が求められている。現に、高温ガス化炉で、どのような質の廃棄物がどれだけの量処理されているかを、時間遅れなく遂次把握するには、不十分である。
また、前記の方法は、測定誤差の発生しやすい廃棄物の投入量を用いるために、精度に疑問がのこり、さらに長期間の平均化が必要になる欠点を有している。
さらに、廃棄物の低位発熱量を求める方法において、可燃分中の炭素率を仮定する(一般廃棄物の場合、約50%を仮定する)必要があることから、炭素率の変動の大きいごみ質においては適用されがたい欠点を有している。すなわち、炭素は、いつも一定(仮定した値)になる。可燃分中の炭素率の変化に対応できない。従って、発熱量の推定は大きな誤差を含む。実質的に推算方式になっていない。
従って、廃棄物の処理量を測定する必要があり、長期間の移動平均値、および炭素率の仮定を必要とする特許文献5の提案は、時間的に余裕があり、ごみ質の変動の少ないデータ解析には有用であるが、現に稼動している高温ガス化炉にどのような質の廃棄物が、どれだけの量処理されているかを時間遅れなく遂次把握し、ガス化の制御、操業の安定化に活用するには、特に、時間遅れと発熱量の精度に欠点を有している。
特開平6−26626号公報 特開平6−79252号公報 特開平8−259962号公報 特許第3558033公報 特開2002−333120号公報 「産業機械」(2006年5月号、P22〜P24、社団法人 日本産業機械工業会発行)
本発明は、組成等変動の大きい混合廃棄物の処理においては、現に高温ガス化炉において、どのような質の廃棄物が、どれだけの量処理されているかを、時間遅れなく遂次把握することが処理の安定化と制御に必要であることに鑑み、現に、高温ガス化炉で処理されている廃棄物の処理量および成分・組成、発熱量の算定の遅れを解消するために、廃棄物のガス化で遂次測定される改質ガス量(回収ガス量)とガス組成を用いて、実用上支障のない精度で、廃棄物の処理量、廃棄物の成分・組成、高位発熱量及び低位発熱量の遂次算定方法を提供することを目的としている。
また、本発明は、更に、上記のようにして遂次把握された成分・組成と量の算定値を用いることで、目標となる操業条件(例えば、回収ガス熱量を定量安定して得る)が達成できるように、廃棄物の供給量を適正化(制御)し、成分・組成の変動の大きい混合廃棄物の処理においても、円滑な処理を可能とする廃棄物処理方法を提供することを目的としている。
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、廃棄物可燃分中の炭素、水素、酸素の質量割合が、可燃分中の有効水素と炭素のモル比(以下、「有効水素炭素モル比H*/C」と記す)と強い相関関係にあること及び稼動下の高温ガス化炉において、該廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cは、回収ガス、供給酸素、補助燃料(炭化水素)の炭素、水素、酸素の物質収支から迅速に、精度良く定められることを見出し、本発明に至った。
すなわち、廃棄物可燃分中の炭素、水素、酸素の質量割合は、有効水素炭素モル比H*/Cを用いることで、回収ガス、供給酸素、補助燃料(炭化水素)の炭素、水素、酸素の物質収支から、定められることを見出した。
なお、本願明細書でいう「モル」とは原子又は分子についてのものであり、前記H*/Cは原子基準である。
なお、本願明細書でいう「モル」は原子又は分子についてのものであり、以下、単に「H」、「C」のモルとして示すものは原子についてのモルを示す。
回収ガス、供給酸素、補助燃料(炭化水素)は、高温ガス化炉内では、ガスとして挙動するため、炉内平均滞留時間が短く、測定の遅れ時間も短時間であることから、時間遅れを伴わず逐次算定することができる。
また、ガス化炉出口の水分量は、回収されたガス成分の濃度とガス化炉出口温度におけるCOシフト反応の平衡関係を用いて求めることができるから、処理されている廃棄物量(無灰分基準)は、回収ガス成分濃度と回収量、酸素供給量、並びに補助燃料の組成及び装入量を実測することにより、物質収支から、時間遅れを伴わず逐次算定することができる。これにより、測定時に対応した廃棄物の処理量、廃棄物成分・組成および発熱量を遂次算定することができる。
前記目的を達成するためのこの発明は、次に記載する通りのものである。
(1)廃棄物を、高温ガス化炉において、酸素及び水をガス化剤として用いて、熱分解、ガス化し、生成したガスを急冷して回収ガスとして回収すると共に灰分を回収する工程を含む廃棄物の処理において、回収ガス成分の濃度、回収ガス量、酸素供給量、補助燃料の組成及び補助燃料の装入量を用いて廃棄物可燃分の有効水素炭素モル比H*/Cを逐次算定し、算定された有効水素炭素モル比H*/Cに基づいて、処理する前に別に求めた廃棄物の可燃分元素組成割合と有効水素炭素モル比H*/Cとの相関を用いて、廃棄物の可燃分元素組成割合(炭素、水素、酸素)の値を遂次算定する方法。
(2)前記可燃分元素組成割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、廃棄物がプラスチック類とバイオマス(紙類、厨芥、草木類等)との混合物であるとして求められた相関関係を用いることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3)前記可燃分元素組成と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、基準物質としてのセルロース、および/またはポリオレフィンの元素分析値と、且つガス化において処理が行われているか、または処理が予定されている廃棄物の元素分析値に基づいて作成された有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(4)前記可燃分元素組成割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、ガス化において処理が行われているか、または処理が予定される廃棄物の元素分析値に基づいて作成された有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法を用いて算定した可燃分元素組成割合(炭素、水素、酸素)及び回収されたメタル及びスラグの回収量の実測値に基づいて、廃棄物の処理量、廃棄物の3成分割合(可燃分、水分、灰分)、廃棄物可燃分の高位発熱量及び廃棄物の低位発熱量を遂次算定する方法。
(6)回収ガス成分(水素、一酸化炭素、二酸化炭素)の濃度とガス化炉出口温度の測定値からCOシフト反応の平衡関係を用いてガス化炉出口の水分量の値を求め、この値を廃棄物の水分の算定に用いることを特徴とする上記(5)に記載の方法。
(7)前記ガス化炉出口の水分量の値の算定において、急冷後の凝縮水量および回収ガスに同伴する水蒸気を実測して用いることを特徴とする上記(5)に記載の方法。
(8)前記廃棄物可燃分の高位発熱量の算定において、処理する前に別に求めた高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関を用いることを特徴とする上記(5)に記載の方法。
(9)前記高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、基準物質としてのセルロース、および/またはポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)の高位発熱量と、且つガス化において処理が行われているか、または処理が予定されている廃棄物の高位発熱量に基づいて作成された有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることを特徴とする上記(8)に記載の方法。
(10)可燃分元素組成割合(炭素、水素、酸素)の値を用いて、Dulongの式、Scheurer−Kestnerの式又はSteuerの式により高位発熱量を推算することを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(11)目標とする回収ガス熱量と測定値(回収ガスの低位発熱量と回収ガス量の積)との偏差をなくすように、上記(5)〜(10)のいずれかに記載の方法を用いて廃棄物の低位発熱量、および処理量を求め、該廃棄物の低位発熱量と処理量の積である廃棄物熱量を算定し、該廃棄物の低位発熱量に適合した廃棄物量を、廃棄物供給装置を調節して投入することで高温ガス化炉入熱量を調整することを特徴とする廃棄物処理方法。以下では、上記(1)〜(11)を発明の態様(1)〜(11)という。
以上のように、本発明によれば、有効水素炭素モル比H*/Cを用いることで、一般廃棄物から産業廃棄物におよぶ様々なごみ質の廃棄物(廃棄物可燃分の炭素、水素、酸素の元素質量割合、および高位発熱量)を特性付けることができる。成分・組成等の変動の大きい様々な廃棄物の混ざった廃棄物の処理においても、測定精度の悪い廃棄物の投入量、水分量を測定する必要がなく、回収ガス成分濃度と回収量、酸素供給量、および補助燃料の組成及び装入量を実測することで、精度良く時間遅れを伴わずに廃棄物の特性値である有効水素炭素モル比H*/Cを定めることができる。
さらに、処理する前に別に求めた廃棄物の可燃分元素組成割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関関係をもちいて可燃分の元素質量割合(炭素、水素、酸素)および高位発熱量を遂次算定できるように工夫したため、現に高温ガス化炉において処理されている廃棄物の処理量、成分・組成、高位発熱量、および低位発熱量の逐次算定が、炭素率を仮定する必要もなく、時間遅れを伴わず、従来法よりタイムリーに、精度良く、できる効果がある。
時間遅れがなく、実用上支障のない精度で遂次把握されたこれら算定値を用いることで、廃棄物の供給量の適正化が図られ、成分・組成の変動の大きい混合廃棄物の処理においても、従来法より高い操業効率で高温ガス化炉から発生する回収ガス熱量の安定供給を達成でき、円滑な廃棄物の処理ができる効果がある。
以下では、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、酸素、ならびに必要に応じて水をガス化剤に用いて、廃棄物を熱分解、ガス化し、得られたガスを急冷して回収する廃棄物高温ガス化処理において有効に実施、適用される。
廃棄物の灰分は、例えば、高温ガス化炉の下部に溶融炉を備える場合は、溶融して、メタル、スラグとして回収され、また、高温ガス化炉の下部に低温ガス化炉(流動炉)を備える場合は、燃え残りの灰と金属として回収される廃棄物高温ガス化処理において有効に実施、適用される。
例えば前記図1に示したガス化改質方式による廃棄物処理装置においては、廃棄物をプッシャーで高温ガス化炉に供給し、酸素を用いてガス化溶融し、生成する改質ガスは冷却装置、ガス精製装置を経由して回収され、燃料ガスとしてボイラータービン発電機で利用される廃棄物高温ガス化処理に対して有効に適用されるものである。
本発明の方法は上記のガス化改質方式による廃棄物処理装置において好ましく適用することができるが、本発明は上記の方式の処理装置ばかりではなく、廃棄物を高温でガス化する処理操作を含むものであればいずれの廃棄物処理装置にも適用することが可能である。
<〔1〕有効水素炭素モル比の定義>
まず、廃棄物可燃分(有機物)の有効水素:H*、および有効水素炭素モル比:H*/Cについて定義して説明する。
本発明において、有効水素炭素モル比H*/Cは、様々の物質の混合物である廃棄物中の可燃分の質(元素組成、高位発熱量)を特徴付ける、特性値である。
一般に、廃棄物処理においては、廃棄物の成分は、工業分析値として水分、灰分および可燃分の3成分で分析されている。
また、可燃分の元素組成は、元素分析値として炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、および塩素の元素で分析されている。
本発明においては、可燃分中の全ての酸素は水素と水の形で結合していると仮定して、可燃分中の水素から水として結合している水素を差し引いた水素を有効水素と定義する。本発明では可燃分100g中(単位可燃分中)のモル数を、有効水素H*(g−mol/100g−可燃分)と定義する。
また、本発明では、有効水素H*(g−mol/100g−可燃分)と可燃分中の炭素C(g−mol/100g−可燃分)のモル比を有効水素炭素モル比、H*/Cと定義する。
可燃分100g中の炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、塩素の質量割合をそれぞれc,h,o,n,s,clと記述する。ただし、窒素、硫黄、塩素等の元素は、一般に廃棄物では少量であり、収支計算、熱量計算等に実質的に影響が少ないと考えられる場合は、定数(ゼロ)とみなすことにして、以下の本説明では、これらを無視小とする。
例えば、可燃分中の炭素、水素、酸素の質量割合をそれぞれc,h,oとし、酸素、水素、および炭素の原子量をそれぞれ16,1,12としたとき、有効水素H*(g−mol/100g可燃分)は、下記(1)式で与えられる。また、有効水素炭素モル比H*/Cは、下記(2)式で与えられる。
H*=h−o/8 ・・・・・・(1)
H*/C=(12×h−1.5×o)/c・・・・・(2)
<〔2〕物質収支について>
本発明においては、測定時期に対応した物質収支を基礎に、該時期の廃棄物の処理量、組成および発熱量を遂次算定する。廃棄物高温ガス化処理において、高温ガス化炉に出入りする物質は、図2の物質収支の整理図にまとめることできる。図2では、ガス化炉への物質の出入り方向を矢印で示し、それによって廃棄物高温ガス化処理の装入及び排出物質を明らかにすると共に、物質の下側に下線を施して、それらが操業中に測定され、測定時期に対応して既知のものであることを示している。
図2中の、ガス化炉出口温度(改質ガス温度:t)は、市販の高純度クロム製の熱電対保護管を使用した温度計をガス化炉出口に設置することで測定することができる。改質ガス温度から急冷して回収された改質ガス成分の組成(H,CO,CO,N,CHの体積分率)、ガスの回収量(Nm/h)はガス流路内に市販の赤外線ガス分析計、熱伝導度式ガス分析計、あるいは高速ガスクロマトグラフィー等のガス分析器、およびガス流量計を設置することにより迅速に測定することができる。また、ガス化剤として炉に投入される酸素、窒素、および水(水蒸気)の装入量は供給流路に市販の流量測定装置を設置することにより測定することができる。補助燃料(炭化水素)の組成及び装入量は事前に組成分析を実施すること、および市販の流量計を設置することにより測定することができる。したがって、各々のガスのモル流量を迅速に把握できる。
また、スラグ及びメタルは、市販の流量測定装置を排出流路に設置し、容易に質量流量を測定することができる。
<〔3〕廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cの算定>
ここで、高温ガス化炉に出入りする炭素収支、水素収支、および酸素収支より、廃棄物可燃分の炭素モル流量、および廃棄物可燃分の有効水素モル流量は、物質収支式である下記(3)式、(4)式で与えられ、操業中に実測された測定値、既知値を代入して、該炭素モル流量、該有効水素モル流量が求められる。
さらに、廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cは、下記(5)式で与えられ、該炭素モル流量、該有効水素モル流量を代入することで定めることができる。
炭素収支より炭素モル流量は、
RC=GCO+GCO+GCH−FuC・・・・・・(3)
水素収支、酸素収支より有効水素モル流量は
RH*=2×(GH)+4×GCH−FuH−2×(GCO+2×GCO−2×OxO)・・・・・(4)
廃棄物の有効水素炭素モル比 H*/Cは、
H*/C=RH*/RC=(2×(GH)+4×GCH−FuH−2×(GCO+2×GCO−2×OxO))/(GCO+GCO+GCH−FuC)・・・・・・(5)
ここで
RC:廃棄物可燃分の炭素モル流量(kg−mol/h)
RH*:廃棄物可燃分の有効水素モル流量(kg−mol/h)
GCO:改質ガス中の一酸化炭素モル流量(kg−mol/h)
GCO:改質ガス中の二酸化炭素モル流量(kg−mol/h)
GH:改質ガス中の水素モル流量(kg−mol/h)
GCH:改質ガス中のメタンモル流量(kg−mol/h)
FuC:補助燃料の炭素モル流量(kg−mol/h)
FuH:補助燃料の水素モル流量(kg−mol/h)
OxO:高濃度酸素中の酸素モル流量(kg−mol/h)
H*/C:有効水素炭素モル比(モル比)
である。
従って、改質ガス中のCO,CO,H,およびCHのモル流量、ガス剤である酸素のモル流量、および補助燃料を使用した場合は補助燃料の炭素,および水素のモル流量を実測すれば、処理廃棄物の有効水素炭素モル比:H*/Cを、時間遅れなく、知ることができる。
すなわち、測定が困難な投入廃棄物量、および出口の水分量を測定することなく、処理廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cの値を求めることができる。
<〔4〕可燃分元素組成と有効水素炭素モル比H*/Cの相関式>
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、廃棄物可燃分中の炭素、水素、酸素の質量割合が、有効水素炭素モル比H*/Cと強い相関関係にあることを見出した。
まず、本発明者は、わが国の産業構造を調査し、可燃性廃棄物(ごみ)はバイオマス(紙類、厨芥、草木類)系の廃棄物とプラスチック(プラスチック等の石油化学製品)系の廃棄物の混合物であることに着目した。バイオマス系を代表する物質としてセルロース(分子式:(C10)n、H*/C値は0)、プラスチックス系を代表する物質としてポリオレフィン(ポリエチレンおよびポリプロピレン、分子式(CH)n、H*/C値は2)をそれぞれ基準物質として選定し、可燃分元素組成と有効水素炭素モル比H*/Cの相関式を検討した。
一般廃棄物(都市ごみ)の廃プラスチックス、紙屑、木屑、繊維屑、および厨芥類の可燃分中の炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、塩素の質量割合を文献調査し、横浜市環境事業局のデータを得た。
(横浜市環境事業局のデータ、出典:「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(社)全国清掃会議'(1999)p141、及び〔「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(社)全国清掃会議'(2006)p143〕)
また、産業廃棄物としては、産業廃棄物処理施設で入手した建築廃材破砕ごみ、事業系廃プラスチックス、カーシュレッダーダスト(ASR)の工業分析、元素分析を実施しデータを得た。
得られた廃棄物データから有効水素炭素モル比H*/Cを求め、可燃分の炭素、水素、酸素の質量割合との相関をもとめた。結果を図3,3−1,3−2,3−3に図示した。
一般廃棄物から産業廃棄物におよぶ様々なごみ質の廃棄物において、各々の廃棄物可燃分の炭素、水素、酸素の元素質量割合は有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数に整理できることを見出した。
さらに、本調査検討で選定した、基準物質としてのセルロースとポリオレフィンをデータとして含む相関式である下記の(6)式、(7)式、(8)式は、相関係数R値が0.97以上であり、H*/C値が0から2の広い範囲をカバーして、有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数に、可燃分元素組成を実用上問題のない精度で算定できることを見出した。
c=2.547×(H*/C)+15.236×(H*/C)+44.642・・・(6)
=0.9719
h=1.5454×(H*/C)+0.8948×(H*/C)+6.1665・・・(7)
=0.9899
o=-2.734×(H*/C)−18.961×(H*/C)+48.266・・・(8)
=0.9739
ここで
c:可燃分中の炭素の質量割合(質量%)
h:可燃分中の水素の質量割合(質量%)
o:可燃分中の酸素の質量割合(質量%)
:重相関係数
である。
このような検討結果から、一般に廃棄物がプラスチック類とバイオマス(紙類、厨芥、草木類等)との混合物であることを前提として求められる相関関係は、可燃分中の炭素、水素、酸素の質量割合を算定する上で有効に用いることができる。
また、相関式としては、基準物質としてのセルロース、および/またはポリオレフィンの元素組成と、且つガス化において処理が行われているか、または処理が予定される廃棄物の元素分析値(炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、塩素)を一組以上用いて公知の手法で作成される有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることが好ましい。
また、相関式としては、ガス化において処理が行われているか、または処理が予定される廃棄物の元素分析値(炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、塩素)のデータを複数用いて公知の手法で作成される有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることができる。
すなわち、以下に、詳細に述べるが、前記する方法で、処理することが予定されている廃棄物を予めサンプリングして、時間的余裕を持って工業分析、元素分析を実施し、処理する前に予め廃棄物の可燃分元素組成と有効水素炭素モル比H*/Cの相関を作成しておき、これを用いて、操業時に算定される処理廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cの値を与えることで、「可燃分元素組成」、さらには「廃棄物の処理量」、「廃棄物の3成分値」、「可燃分の高位発熱量」、および「廃棄物の低位発熱量」の値を時間遅れなく、測定時期に知ることができる。
<〔5〕可燃分元素組成(炭素、水素、酸素)の算定>
該相関式は可燃分の炭素、水素、酸素の質量割合を算定する上で有効に用いることができる。操業中に前記(5)式で与えられ、定めることができる廃棄物の有効水素炭素モル比H*/C(モル比)を未知変数として、事前に定めた廃棄物可燃分の炭素、水素、酸素の元素質量割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関式に代入することで炭素、水素、酸素の質量割合を算定することができる。
例えば、n、s、clは無視小として、下記(6)、(7)式、(9)〜(12)式に代入することで、廃棄物可燃分の元素質量割合、c、h、o、s、cl、nを求めることができる。
c=2.547×(H*/C)+15.236×(H*/C)+44.642・・・(6)
h=1.5454×(H*/C)+0.8948×(H*/C)+6.1665・・・(7)
o=100−c−h−n−s−cl・・・・・(9)
n=0 ・・・・・・(10)
s=0 ・・・・・・(11)
cl=0 ・・・・・・(12)
<〔6〕改質ガス中の水蒸気モル流量の算定>
ガス化温度が1000℃以上の高温ガス化炉においては、一般的に下記(13)式に示すCOシフト反応の平衡関係が支配的である。本反応の化学平衡定数kは下記(14)式で定義され、ガス化温度の関数(15)式として公知の方法で求めることができる。
従って、改質ガスを急冷することでクエンチしてガスを回収する廃棄物高温ガス化処理においては、ガス化炉出口の水分量、すなわち改質ガス中の水蒸気モル流量は、(16)式で与えられ、回収ガス(改質ガス)のモル流量を代入することで定めることができる。
COシフト反応式:CO+H ⇔ CO+HO ・・・・・・(13)
k=(GCO×GH)/(GCO×GHO) ・・・・(14)
k=f(t) ・・・・・(15)
GHO=(GCO×GH)/(GCO×k) ・・・・・(16)
ここで
GHO:改質ガス中の水蒸気モル流量(kg−mol/h)
t:改質ガス温度(℃)
k:COシフト反応の平衡定数(−)
である。
従って、改質ガス中のCO,CO,H,およびCHのモル流量を実測することにより、測定が困難な入口、および出口の水分を測定することなく、改質ガス中の水蒸気モル流量の値を時間遅れなく知ることができる。
ここで、クエンチの効果を充分に発揮させるためには、急冷速度は、500℃/秒以上であることが好ましい。急冷速度が緩慢な場合は上記(13)式の反応をクエンチすることができず、冷却後のガス組成が、反応炉出口組成とは異なる結果になり改質ガス中の水蒸気モル流量の算定を難しくする。
また、ガス化炉出口の水分量の算定には、急冷後の凝縮水量および回収ガスに同伴する水蒸気を測定し、用いることができる。しかし、クエンチが水による直接冷却(ダイレクトクエンチ)では、一般に凝縮水量の測定誤差が大きく、また、回収ガスに同伴する水蒸気量の測定も容易ではない。
<〔7〕廃棄物の処理量(無灰ベース)の算定>
可燃分の質量流量Frは、物質収支から(17)式で与えられる。
Fr=RC×炭素の原子量×(1+(h/c)+(o/c))・・・・・(17)
水分の質量流量Fwは、物質収支から(18)式で与えられる。
Fw=(GCO+2×GCO+GH0−2×OxO−StHO)×酸素の原子量+(2×(GH0−StHO)+2×(GH)+4×GCH−FuH)×水素の原子量−((h/c)+(o/c))×RC×炭素の原子量・・・・・・・(18)
ここで、
StHO:補給水蒸気モル流量(kg−mol/h)
である。
無灰分基準の廃棄物の処理量Fiafは、下記(19)式で与えられ、定めることができる。
Fiaf=Fr+Fw・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(19)
ここで
Fiaf:無灰分基準の廃棄物の処理量(kg/h)
Fr:可燃分の質量流量(kg/h)
Fw:水分の質量流量(kg/h)
である。
<〔8〕灰分の算定>
本発明においては、灰分(スラグ及びメタル)は実測によって求める必要がある。
ガス化溶融で得られるスラグ及びメタルは、市販の流量測定装置を排出流路に設置し、容易に質量流量を測定することができる。灰分を溶融しない高温ガス化炉の場合は、スラグは燃え残りの灰として、メタルは金属として排出され質量流量が、測定される。
灰分の質量流量Winは、下記の物質収支式(20)で与えられ、操業中に実測された溶融スラグ及びメタルの測定値を代入することで求められる。
Win=Wslug+Wmetal ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(20)
ここで、
Win:灰分の質量流量(kg/h)
Wslug:スラグ(灰)質量流量(kg/h)
Wmetal:メタル(金属)質量流量(kg/h)
である。
<〔9〕廃棄物の処理量の算定>
廃棄物の処理量Fiは、物質収支から(21)式で与えられ、定めることができる。
Fi=Fr+Fw+Win・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(21)
ここで
Fi:廃棄物の処理量(kg/h)
Fr:可燃分の質量流量(kg/h)
Fw:水分の質量流量(kg/h)
Win:灰分の質量流量(kg/h)
である。
従って、本方法では、実測に測定誤差が発生しやすい廃棄物の処理量、およびガス化炉出口の水分量を測定することなく、測定時期に無灰分基準の廃棄物の処理量を逐次算定することができる。さらに、スラグ(灰)、メタル(金属)を実測することで、廃棄物の処理量を逐次算定することができる。
<〔10〕廃棄物の3成分(可燃分、水分、灰分)値の算定>
廃棄物の可燃分、水分、および灰分(不燃分)の質量割合、3成分値if、iw、inは下記の(22)式、(23)式、(24)式で与えられ、定められる。
if=Fr/Fi ・・・・・・・(22)
iw=Fw/Fi ・・・・・・・(23)
in=Win/Fi ・・・・・・・(24)
ここで
if:廃棄物の可燃分の質量割合(−)
iw:廃棄物の水分の質量割合(−)
in:廃棄物の不燃分の質量割合(−)
である。
従って、廃棄物の工業分析値(3成分)である、可燃分、水分、灰分(不燃分)の値を、操業時の測定時期に逐次算定することができる。
<〔11〕可燃分の高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関式>
また、本発明者は、先に記述した可燃分の元素組成と同様に、可燃分の高位発熱量においても、廃棄物はバイオマス(紙類、厨芥、草木類)系の廃棄物とプラスチック(プラスチック等の石油化学製品)系の廃棄物の混合物であることに着目し、廃棄物可燃分の高位発熱量が、有効水素炭素モル比H*/Cと強い相関関係にあることを見出した。
相関関係の検討に供した廃棄物は先に記述した可燃分元素組成の検討と同様である。また、バイオマス系を代表する物質としてセルロースを、プラスチックス系を代表する物質としてポリオレフィンを選択し、高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関式を検討した。可燃分の高位発熱量の実測値と有効水素炭素モル比H*/Cの相関関係を図4に示した。
<〔12〕高位発熱量の算定(1)>
本発明者は、一般廃棄物から産業廃棄物におよぶ様々な廃棄物において、各々の高位発熱量は有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式で整理できることを見出した。そして、廃棄物の処理前に別に求めた高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関を用いることにより、廃棄物可燃分の高位発熱量が算定できることを見出した。
さらに、本発明者は、高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、基準物質としてのセルロース、および/またはポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)の高位発熱量と、且つガス化において処理が行われているか、または処理が予定されている廃棄物の高位発熱量に基づいて作成された有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることによって、操業時に、事前に測定した廃棄物の実測値を反映させた逐次算定値を、測定時期に応じて求めることができることを見出した。
なお、図4で示したデータから公知の方法で求めた、下記相関式(25)式は、相関係数R値が0.94以上であり、H*/C値が0から2の広い範囲で、有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数に、高位発熱量を実用上問題のない精度で算定できる。
Hh=14.631×(H*/C)+15.823・・・・・・・・・・(25)
=0.9466
(2)式から、(25)式は、以下に書き換えられる。
Hh=14.631×(12×h−1.5×o)/c+15.823
ここで、
Hh:廃棄物の可燃分の高位発熱量(MJ/kg)
である。
<〔13〕高位発熱量の算定(2)>
また、〔5〕可燃分元素組成(炭素、水素、酸素)の算定で述べた方法に基づいて求められた処理中の廃棄物可燃分の元素質量割合を用いて、公知の方法(Dulongの式、Scheurer−Kestnerの式、Steuerの式)で可燃分の高位発熱量を推算することができる。例えば、下記Steuerの式(26)式に処理ごみ可燃分中の質量%を代入すれば、可燃分の高位発熱量が求まる。
Hh=339.4×{c−3×(o/8)}+238.8×3×(o/8)+1445.6×{h−(o/16)}+104.8×s [kJ/kg]・・・(26)
ここで、c,h,o,sは、炭素、水素、酸素及び硫黄の可燃分中の質量%である。
*)Steuerの式〔「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(社)全国清掃会議'(1999)p145より〕
<〔14〕廃棄物の低位発熱量の算定>
この可燃分の高位発熱量を、下記の廃棄物の低位発熱量を求める(27)式に用いることで、容易に廃棄物の低位発熱量を知ることができる。ただし、廃棄物の高位発熱量は湿り廃棄物基準であることに注意すべきである。
Hu=Hhw−25×(9×H+M)・・・・・・・・・・・・・・・(27)
ここで、
Hu:廃棄物の低位発熱量(kJ/kg−湿り廃棄物)
Hhw:廃棄物の高位発熱量(kJ/kg−湿り廃棄物)
H:湿り廃棄物中の水素含有率(質量%)
M:湿り廃棄物中の水分(質量%)
従って、以上の〔3〕〜〔14〕の項で述べた各値を計算することで、測定時に対応した「可燃分元素組成」、さらには「廃棄物の処理量」、「廃棄物の3成分値」、「可燃分の高位発熱量」、および「廃棄物の低位発熱量」の値を遂次算定できる。
<データの算出と情報の利用>
本発明は、定常状態の仮定を前提とする物質収支を基礎におくことから、測定時期に対応した各測定値には実操業炉内に存在する物質の滞留時間に適合する時間平均値を適切に設定する必要がある。廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cは、酸素、補助燃料と回収ガスのガス状物質の物質収支から求められる。ガス状物質の炉内平均滞留時間は10秒以下と短く、回収ガス測定値の遅れは全体でも1分程度であり、1分程度の遅れをもって、迅速に、稼動下の高温ガス化炉において処理されている廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cが定められる。従って、本発明では、時間平均値は20分平均値以下として逐次利用するのが好ましい。20分を超えると操業へのフィードバックができないため、操業状態の制御にとっては不都合が生じる。
また、本発明では、時間平均値に対応した、5分から100分の単純移動平均値を実測値、算定値に採用して、マクロな操業状態を、トレンドデータとして廃棄物の処理量、成分・組成及び発熱量把握し、操業の改善に寄与させることができる。
<ガス化炉損失熱量の推定>
また、高温ガス化炉の入熱量、および出熱量は、各々下記の(28)式、(29)式で記述することができる。
高温ガス化炉入熱量=廃棄物熱量(廃棄物の低位発熱量×処理量)+補助燃料ガス装入熱量(補助燃料ガスの低位発熱量×装入量)+その他の装入物熱量 ・・・・・(28)
高温ガス化炉出熱量=回収ガス熱量(ガスの低位発熱量×ガス量)+ガス化炉出口ガス顕熱量(各ガスの平均比熱×ガス量)+ガス化炉熱損失量(灰分熱損失を含む) ・・(29)
従って、熱収支から、ガス化炉損失熱量は、(30)式で記述される。
ガス化炉損失熱量=廃棄物熱量+補助燃料ガス装入熱量+その他装入物熱量−回収ガス熱量−ガス化炉出口ガス顕熱量 ・・・・・・・・・(30)
測定時期に即して求められた廃棄物の低位発熱量と処理量の積である廃棄物熱量を、前記の(30)式に代入することで、ガス化炉熱損失量を逐次推定することができる。(30)式で、補助燃料ガス装入熱量は補助燃料ガスの低位発熱量と装入量の積として、回収ガス熱量は各ガスの低位発熱量とガス量の積として、ガス化炉出口ガス顕熱量は各ガスの平均比熱とガス量の積として、また、その他装入物熱量(水等)は測定値を用い、公知の方法で容易に求めることができる。
また、ガス化炉熱損失量のトレンドデータは炉体に内張りした耐火物の損傷程度の推定を可能にし、炉体補時期の管理が従来以上に円滑に行えるようにする。
<廃棄物処理方法>
また、本発明では、回収ガス熱量を定量安定して得る廃棄物処理方法を提供する。
回収ガス熱量を定量安定して得るためには、廃棄物の質変動に大きく起因する高温ガス化炉入熱量を適正に制御する必要がある。
高温ガス化炉から発生する回収ガス熱量の安定供給を達成するために、発明の態様(5)〜(10)のいずれかの方法を用いて廃棄物の低位発熱量、および処理量を求め、該廃棄物の低位発熱量と処理量の積である廃棄物熱量を算定し、目標とする回収ガス熱量と逐次測定値(回収ガスの低位発熱量と回収ガス量の積)との偏差をなくすように、該廃棄物の低位発熱量に適合した廃棄物量を、廃棄物供給装置(例えばプッシャーの投入ピッチ)を調節して投入することで高温ガス化炉入熱量を調整することができる。ここで、測定時期に即した回収ガスの低位発熱量はガス成分の組成より公知の方法で求めることができる。
また、前記高温ガス化炉入熱量の調整は、前記の廃棄物熱量、および/または補助燃料ガスの供給量を制御することでも実施できる。
また、前記高温ガス化炉入熱量の調整は、廃棄物の混合割合を予め調整して発熱量を制御して、炉に供給することでも実施できる。
さらに、また、回収ガスを発電用の燃料ガスに直接利用する場合は、ボイラーから発生する蒸気量も安定となり、燃料ガス不足等の操業上の問題が解消され目標とする発電量の確保を可能にする。
図1に示す廃棄物処理装置の操業に本発明の廃棄物の処理量、成分・組成および発熱量の遂次算定方法を適用した。廃棄物はオペレータがピットに受入れた事業系廃プラスチックスおよび建築廃材破砕ごみを供給装置に投入し処理された。オペレータは、廃棄物の質と量の変化を、逐次求められる低位発熱量、および処理量等で監視、把握し、廃棄物投入量を調節し操業した。ガス化出口温度を1200℃に保持した。また、事前に定めた廃棄物可燃分の炭素、水素、酸素の元素質量割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関式は、(6)、(7)および(9)〜(12)式を使用した。尚、本式には、処理した事業系廃プラスチックスの元素分析値および建築廃材破砕ごみの元素分析値が相関式作成データとして含まれている。
本実施例では、各操業測定データを1分毎に測定すると同時にコンピュータで処理し、廃棄物の有効水素炭素モル比H*/Cの値を求めた。求められた有効水素炭素モル比H*/Cの値に基づいて可燃分の元素組成割合、廃棄物の3成分割合、処理量、可燃分高位発熱量、及び廃棄物の低位発熱量を遂次算定し、その結果を図5−1、図5−2、図5−3、に示す。
可燃分中の炭素割合が59%から78%に大きく変動しても、高温ガス化炉において、どのような質の廃棄物が、どれだけの量処理されているかを時間遅れなく遂次把握されている事がわかる。処理において、廃棄物の発熱量と量が把握できたため、ガス化剤である酸素供給の適正化が図られ、組成変動の大きい混合廃棄物の処理においても、円滑な処理を可能としている。
図1に示す廃棄物処理装置の操業に本発明を適用した。廃棄物としては建築廃材破砕ごみ、事業系廃プラスチックス、カーシュレッダーダスト(ASR)、および一般廃棄物をピットに受入れ、供給装置に投入処理した。酸素の供給量は、約2350Nm/時間で操業した。発電機の定格発電量は1500KWである。主な操業条件は表1の通りである。
また、元素質量割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関式は実施例1と同様である。
本実施例2においては、定格の90%の自己発電を得るために、目標とする回収ガス熱量を9.5Gcal/時間に設定している。回収ガス熱量の逐次測定値との偏差をなくすように、廃棄物の低位発熱量、および処理量を逐次求め、該廃棄物の低位発熱量と処理量の積である廃棄物熱量を算定し、該廃棄物の低位発熱量に適合した廃棄物量を、廃棄物供給装置(プッシャーの投入ピッチ)を調節して投入し、高温ガス化炉入熱量を調整した。
本発明の適用前と、適用後の結果を図6に示す。高温ガス化炉入熱量を調整することで、回収ガス熱量の安定を得ている。
さらに、回収ガス熱量の安定に伴い、ボイラーから発生する蒸気量も安定となり、燃料ガスの不足による発電量不足が解消され目標とする発電量の確保が可能になった。
Figure 0005000339
本発明は、廃棄物のガス化で遂次測定される改質ガス量(回収ガス量)とガス組成を用いて、実用上支障のない精度で、廃棄物の成分・組成、廃棄物の処理量、可燃分の高位発熱量及び廃棄物の低位発熱量の遂次算定方法を提供し、遂次把握された算定値を用いることで、目標となる操業条件(例えば、回収ガス熱量を定量安定して得る)が達成できるように、廃棄物の供給量を適正化(制御)し、組成変動の大きい混合廃棄物の処理においても、円滑な処理を可能とする廃棄物処理方法を提供することができるので、一般廃棄物及び/または産業廃棄物の処理方法として好適である。
ガス化改質方式による廃棄物処理装置の概要を示す図である。 高温ガス化炉に出入りする物質の物質収支を整理した図である。 有効水素炭素モル比H*/Cと可燃分中の炭素、水素、酸素の質量割合との相関を示す図である。 有効水素炭素モル比H*/Cと可燃分中の炭素の質量割合との相関を示す図である。 有効水素炭素モル比H*/Cと可燃分中の水素の質量割合との相関を示す図である。 有効水素炭素モル比H*/Cと可燃分中の酸素の質量割合との相関を示す図である。 有効水素炭素モル比H*/Cと高位発熱量との相関を示す図である。 実施例1における逐次算定結果を示す図である。 実施例1における逐次算定結果を示す図である。 実施例1における逐次算定結果を示す図である。 本発明の廃棄物処理方法における実施前の状態と実施後の状態とを対比した図である。

Claims (11)

  1. 廃棄物を、高温ガス化炉において、酸素及び水をガス化剤として用いて、熱分解、ガス化し、生成したガスを急冷して回収ガスとして回収すると共に灰分を回収する工程を含む廃棄物の処理において、回収ガス成分の濃度、回収ガス量、酸素供給量、補助燃料の組成及び補助燃料の装入量を用いて廃棄物可燃分の有効水素炭素モル比H*/Cを逐次算定し、算定された有効水素炭素モル比H*/Cに基づいて、処理する前に別に求めた廃棄物の可燃分元素組成割合と有効水素炭素モル比H*/Cとの相関を用いて、廃棄物の可燃分元素組成割合(炭素、水素、酸素)の値を遂次算定する方法。
  2. 前記可燃分元素組成割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、廃棄物がプラスチック類とバイオマスとの混合物であるとして求められた相関関係を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記可燃分元素組成と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、基準物質としてのセルロース、および/またはポリオレフィンの元素分析値と、且つガス化において処理が行われているか、または処理が予定されている廃棄物の元素分析値に基づいて作成された有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記可燃分元素組成割合と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、ガス化において処理が行われているか、または処理が予定される廃棄物の元素分析値に基づいて作成された有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法を用いて算定した可燃分元素組成割合(炭素、水素、酸素)及び回収されたメタル及びスラグの回収量の実測値に基づいて、廃棄物の処理量、廃棄物の3成分割合(可燃分、水分、灰分)、廃棄物可燃分の高位発熱量、及び廃棄物の低位発熱量を遂次算定する方法。
  6. 回収ガス成分(水素、一酸化炭素、二酸化炭素)の濃度とガス化炉出口温度の測定値からCOシフト反応の平衡関係を用いてガス化炉出口の水分量の値を求め、この値を廃棄物の水分の算定に用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記ガス化炉出口の水分量の値の算定において、急冷後の凝縮水量および回収ガスに同伴する水蒸気を実測して用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  8. 前記廃棄物可燃分の高位発熱量の算定において、処理する前に別に求めた高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関を用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  9. 前記高位発熱量と有効水素炭素モル比H*/Cの相関として、基準物質としてのセルロース、および/またはポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)の高位発熱量と、且つガス化において処理が行われているか、または処理が予定されている廃棄物の高位発熱量に基づいて作成された有効水素炭素モル比H*/Cを未知変数とする相関式を用いることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 可燃分元素組成割合(炭素、水素、酸素)の値を用いて、Dulongの式、Scheurer−Kestnerの式又はSteuerの式により高位発熱量を推算することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
  11. 目標とする回収ガス熱量と測定値(回収ガスの低位発熱量と回収ガス量の積)との偏差をなくすように、請求項5〜10のいずれかに記載の方法を用いて廃棄物の低位発熱量、および処理量を求め、該廃棄物の低位発熱量と処理量の積である廃棄物熱量を算定し、該廃棄物の低位発熱量に適合した廃棄物量を、廃棄物供給装置を調節して投入することで高温ガス化炉入熱量を調整することを特徴とする廃棄物処理方法。
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