JP4998885B2 - 風力発電装置の最大電力追従制御装置 - Google Patents
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Description
これまで、最適回転速度を決定するために、山登り法を用いる方法、風車の特性パラメータを用いる方法などが提案されている。
そこで、各風速毎に風力エネルギー量に見合った最適な負荷量と回転数を得るために、予め設計計算上で求めたデータテーブルを用意し、さらに風速の違いによる各種係数の誤差などを考慮した補正を行って、風速対回転数、風速対軸出力を決定するフィードフォワード制御を組み合わせた制御を行っている。
しかし、この補正は実績に基づいて蓄積されるもので、風力発電装置毎に修正を行う必要があることが問題である。
開示方法は、強制的に負荷量を変化させても回転数に変化が生じないときに負荷量と風車の軸出力が合致することを利用するものである。
しかし、開示方法では、特性曲線の極値を求めるために不要な負荷量変動を与えて効率のよいエネルギー利用を妨げ、円滑な運転を乱す必要が生じる。
本発明の制御方法によって、パラメータ変動が発生した場合でも正確なパラメータを同定して最適な回転速度を設定して風力発電を行うことができ、風力発電装置の最大電力点追従制御を達成してより効率のよい発電出力を得ることができる。
最適回転速度設定器は、風速情報と風車パラメータから最大電力点に当たる風車回転速度を算定して速度制御器の目標値として供給する。
速度制御器は、発電機回転子の回転速度を入力し制御演算によりd−q軸電流指令値を算出して電流制御器に電流指令値として供給する。
電流制御器は、座標変換器を介して入力されるd−q軸電流測定値について制御演算してd−q軸電圧指令値を算出して、座標変換器を介してPWMコンバータ装置に電圧指令値として供給する。
PWMコンバータ装置は、発電機の回転を制御する。
なお、パラメータ同定器は、風車パラメータを逐次形最小二乗推定により逐次に求めることができる。
図1は本実施例に係る最大電力点追従制御装置を備えた風力発電装置の主機構成図である。
誘導発電機3の固定子にはPWMコンバータ4が接続されており、誘導発電機3の発生する可変周波数の交流電力Poutは直流電力に変換される。PWM(パルス幅調整)コンバータ4はコンデンサを介してPWMインバータ5に接続されており、PWMコンバータ4の直流電力を固定周波数の交流電力に変換して電力系統6に供給する。
本実施例の風力発電装置では、最大電力点追従制御装置7を附属して、風車のパラメータをオンラインで同定しながら最適回転速度を決定し、常時最大出力が得られるように発電機をベクトル制御する。
Pwind=ρπR0 2Vw 3/2 (1)
また、このときの風車入力トルクTwindは次式(2)で表される。
Twind=ρπR0 3Vw 2/2 (2)
Ct=αλ2+βλ+γ (3)
Cp=λCt=Pw/Pwind (4)
ここで、α,β,γはブレードの大きさや形状、枚数、ピッチ角により定める係数、λ=R0ωw/Vwはブレードの周速比、ωwは風車の回転角速度、Pwは風車の出力エネルギーである。
Tw=CtρπR0 3Vw 2/2 (5)
となる。
この風車トルクを受けたときの風車の運動方程式は次式(6)で表される。
Tw=Twind−Tf
=Jwdωw/dt+Tlw (6)
ただし、Tfは風車の損失トルク、Jwは風車の慣性モーメント、Tlwは風車の負荷トルクである。
Tf=K0Vw 2+K1Vwωw+K2ωw 2 (7)
ここで、K0,K1,K2は風車損失係数で、次式(8),(9),(10)で表される。
K0=ρSR0(1−γ)/2 (8)
K1=ρSR0 2ζ/2 (9)
K2=ρSR0 3ξ/2 (10)
ここで、γ,ζ,ξは風車ブレードの大きさ、形、枚数、ピッチ角によって決まる係数である。
すなわち、風車損失係数は風車の形状によって決まる係数であり、風車損失トルクが下に凸になることを表現する近似パラメータである。
Tf=Twind−Tw
=(1−Ct)Twind (11)
また、増速比Rnを用いると,風車の回転速度ωwと発電機の回転速度ωm、および風車のトルクTlwと発電機のトルクTlmの関係は次式(12)で表される。
ωm=Rnωw (12)
Tlm=−Tlw/Rn (13)
式(6)より、風車の運動方程式は次式(14)で表すことができる。
Twind=Jwdωw/dt+Tf+Tlw (14)
最終的に、発電機への機械的入力Pwは次式(15)で表される。
Pw=Twωw=−Tmωm (15)
風車は、風速によって、最大出力が得られる最適回転速度が存在する。したがって、より多くの電力を得るためには風速毎に最大出力を得られる回転速度を選択して風力発電機を運転することが好ましい。
そこで、風車の基本方程式から風車の出力が最大となる最適回転速度を求める。定常状態における風車出力Pwすなわち発電機への入力は、式(6),(15)の関係より、次式(16)に示すように風車回転速度ωwの3次関数となる。
Pw=(Twind−Tf)ωw
=(ρSR0/2−K0)Vw 2ωw−K1Vwωw 2−K2ωw 3 (16)
dPw/dωw
=(ρSR0/2−K0)Vw 2−2K1Vwωw−3K2ωw 2=0 (17) ωw opt
=(−K1Vw+((K1Vw)2−3K2 (ρSR0 3/2−K0)Vw 2)1/2)/3K2
(18)
ωm opt=Rnωw opt (19)
したがって、式(18)(19)に基づいて風速と風車損失係数から求めることができる最適な発電機回転速度ωm optになるように発電機を制御して風車を最適回転速度ωw optに追従させることにより、最大電力点追従制御を達成することができる。
入出力信号列を観測し記録しておいて、システムから離れてパラメータ同定するオフライン同定には、最小二乗法がよく使用される。最小二乗法を用いるオフライン同定では、N個のデータが集まった時点で計算を行うが、新しいデータが追加観測されると、改めて全体の計算を行わなければならない。
逐次形最小二乗推定を用いた同定法は、時々刻々のパラメータ推定値を与えるという意味で、オンライン同定法である。
逐次形最小二乗推定は、最小二乗推定を繰り返し計算式に変形して得られるものである。
y(k)+a1y(k-1)+・・・+any(k-n)
=b0u(k)+b1u(k-1)+・・・+bnu(k-n)+e(k) (20)
ここで、a1,a2,・・・an,b0,b1,・・・bnが本実施例における風車損失係数などのパラメータに当たり、パラメータ同定は、{y(k)}{u(k)}を観測して、これらパラメータを決定することを目的とする。
y=Ωα+e (21)
ここで、
y=[y(n),y(n+1),・・・y(N)]T
α=[−a1,−a2,・・・,−an,b0,b1,・・・bn]T
e=[e(n),e(n+1),・・・,e(N)]T
[ΩTΩ]-1≡PN
ΩTyN≡bN (23)
また、行列Ωの最下列をzNとおく。
zN≡[y(N-1),y(N-2),・・・,y(N-n),u(N),u(N-1),・・・,u(N-n)]T
すると、次式(24)のような推定式が得られる。
^αN=^αN-1−kN(zN T^αN-1−y(N)) (24)
ここで、
kN=PN-1zN(1+zN TPN-1zN)-1 (25)
また、
PN=PN-1−PN-1zN(1+zN TPN-1zN)-1zN TPN-1 (26)
図3に図示しない風車より得られる風力エネルギーは同じく図示しない増速機(増速比Rn)を介してかご形誘導発電機3に伝達される。
風速計8は風速情報Vwを取得して、パラメータ同定器11と最適速度設定器12に供給する。
速度制御器13は、ゲインKPwの比例係数器15と協働して比例積分式(PI)制御演算を実行して、操作信号id *,iq *を生成し、電流制御器17に供給する。
電流制御器17は、d−q軸電流偏差に対してPI演算を施して、d−q軸指令電圧Vd *、Vq *を求めて、座標変換回路16に供給し、ここで固定子座標上の指令電圧Vabc *に変成しPWMコンバータ4に供給して、誘導発電機3をベクトル制御する。
Jmdωw/dt+Dmωm+Tl’=Te=KTiqs * (27)
ここで、Dmは誘導発電機の制動係数、Jmは誘導発電機の慣性係数である。また、Tl’は次式で表される等価外乱トルク、
Tl’=PTL−KTiiq
KTは次式で表される起電力係数である。
KT=3PLm/4Lr(Lridr *+Lmids *)
Tm *=KPwew+KIw∫ewdt (28)
ここで、KIwは積分ゲインである。
また、トルク指令電流iqs *は、指令トルクTm *を用いて次式(29)で決定する。
iqs *=(Jmdωr */dt+Dmωm *+Tlm−αew)/KT (29)
ここで、KTはトルク出力係数、αはフィードバックゲインである。
vd *=KPieid+KIi∫eiddt (30)
vq *=KPieiq+KIi∫eiqdt (31)
ここで、KPiは電流偏差に対する比例ゲイン、KIiは電流偏差に対する積分ゲイン、eid=id *−idはd軸電流偏差、eiq=iq *−iqはq軸電流偏差である。
なお、回転子の位置θmと回転速度ωmは、ロータリーエンコーダにより正確に測定することができる。
感度分析には、1個の変量だけを変化させて出力の変動を見る方法と、全ての変量を同時に変化させて出力への影響を評価するモンテカルロシミュレーションとがある。
風速は8m/s一定とし、起動直後の過渡状態を除いた5秒間について、風車パラメータの変動が出力に与える影響を評価した。風車の回転速度は指令値に追従している。
また、図6(a),(b),(c)は、風車パラメータK0,K1,K2のそれぞれについて正確な値から±20%の範囲で変化させたとき、出力電力に与える影響を最適回転速度における出力電力を100%とする%表示で表したグラフである。
しかし、図6(a),(b),(c)を観察すると、風車パラメータのうちK1,K2については、±10%程度の誤差があっても出力電力は95%以上の水準を保ち、パラメータの同定誤差が出力に与える影響は比較的軽いことが分かる。さらに、K0を含めても同定誤差を±5%程度に抑えることができれば、出力電力への影響は軽微であることが分かった。
指令回転速度誤差が±10%以内の範囲に収まれば出力電力は10%以内の減少で運転でき、さらに指令回転速度誤差が±5%以内であれば出力電力減少分は1%以下であることが分かる。
図8はシミュレーション結果を示す図面である。シミュレーションでは、風力発電装置を起動した直後は初期誤差を含む風力パラメータを用いて算出した指令速度により速度制御し、5秒経過してからは本発明方法に基づき、同定したパラメータを適用して決定した指令速度を用いて発電機の速度制御を行っている。
図8(b)は、風車パラメータK0,K1,K2の誤差を表す。また、図8(c)と(d)はそれぞれ回転速度の変化と出力電力の変化を示す。
図8(b)にあるように、初期状態では風車パラメータK0,K1,K2の誤差が大きいが、5秒経過して本発明における同定方法を適用するようになった後はパラメータ誤差が減少している。K1,K2の誤差は数%存在するが、特にK0の誤差は小さく管理されている。
なお、本明細書では風力発電装置の発電機を誘導発電機としたが、本発明の最大電力点追従制御方法は、ベクトル制御が適用できる永久磁石同期発電機などを使用する場合にも適用できる。また、増速機の有無に左右されないことはいうまでもない。
2 増速機
3 誘導発電機
4 PWMコンバータ
5 PWMインバータ
6 電力系統
7 最大電力点追従制御装置
8 風速計
11 パラメータ同定器
12 最適速度設定器
13 速度制御器
14 減算器
15 比例係数器
16 座標変換器
17 電流制御器
Claims (3)
- 風力発電装置の入力出力測定値と風速情報を用いて逐次形最小二乗推定により運転中の風車の損失係数を同定し、同定した損失係数を用いて最大電力点に当たる最適回転速度を決定し、指定された最適回転速度を目標値として風力発電装置の制御を行うことを特徴とする風力発電装置の最大電力点追従制御方法。
- 風車の回転軸に発電機の回転軸を連結し、発電機の固定子にパルス幅調整(PWM)コンバータ装置を接続した風力発電装置において、前記発電機の回転子の回転位置と回転速度を測定する回転位置速度測定器と、該発電機の回転トルクを検出するトルク計と、風速を測定する風速計と、パラメータ同定器と、最適回転速度設定器と、速度制御器と電流制御器と座標変換器とを備えて、前記パラメータ同定器が入力した前記回転子の回転速度と回転トルクと前記風速に基づいて風車パラメータを算定して前記最適回転速度設定器に供給し、該最適回転速度設定器が前記風速と風車パラメータから最大電力点に当たる風車回転速度を算定して前記速度制御器の目標値として供給し、該速度制御器が前記発電機回転子の回転速度を入力し制御演算によりd−q軸電流指令値を算出して前記電流制御器に電流指令値として供給し、該電流制御器が前記座標変換器を介して入力されるd−q軸電流測定値について制御演算してd−q軸電圧指令値を算出して前記座標変換器を介して前記PWMコンバータ装置に電圧指令値として供給し、該PWMコンバータ装置が前記発電機の回転を制御することにより、風車の最大電力点を追従して風力発電を行うことを特徴とする風力発電装置の最大電力点追従制御装置。
- 前記パラメータ同定器が前記風車パラメータを逐次形最小二乗推定により逐次に求めることを特徴とする請求項2記載の風力発電装置の最大電力点追従制御装置。
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