JP4998654B2 - 鋼部材のガス軟窒化処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟窒化処理を施してなる表面処理鋼部材の製造に向けて好適な鋼部材のガス軟窒化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟窒化処理により形成される、主にイプシロン鉄窒化物(ε−Fe2-3N)よりなる化合物層が、鋼部材の耐摩耗性と耐食性との向上に大きく寄与することが、従来より知られている。しかし、この軟窒化処理を施した鋼部材を実際に使用してみると、長期間にわたって全く錆を生じないものがある一方で、使用初期段階で錆を生じるものやある期間使用した後に錆を生じるものがあり、耐食性の面でかなりのバラツキがあり、その安定使用が困難であるという問題があった。
なお、軟窒化処理により形成された化合物層上に、酸化処理により主に四三酸化鉄(Fe3O4 )よりなる酸化物層を積層形成することが一部で行われているが、この場合でも、最表面の酸化物層が摩耗した場合に、上記した耐食性のバラツキの問題が生じ、根本的な解決には至らない。
【0003】
そこで従来、例えば、特開平11−269630号公報に記載の表面処理鋼部材においては、ガス軟窒化処理により形成される化合物層の厚さ方向の炭素濃度分布を一定範囲に収めることにより、耐食性のバラツキを抑える対策を採っている。そして、化合物層の厚さを18〜20μmとし、その表層を15μm研削しても発錆しない(耐食性を有する)ことを確認している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載の表面処理鋼部材によれば、化合物層を18〜20μmの厚さとなるように形成しているので、化合物層の形成に時間がかかり(化合物層の厚さを20μmとするのに約2時間必要)、単位時間当りの生産数が少ない、という問題があった。
そこで、単位時間あたりの生産数を増加させるために、上記公報の処理条件で化合物層の薄い(5〜15μm)ものを製作することが考えられるが、この場合、単純に化合物層の形成にかかる時間を短縮することができる(30分〜1.5時間)が、図3に示すように、化合物層内の炭素濃度が高くなる一方で窒素濃度が低くなり、耐食性に劣るものとなる。
上記した問題点について、本発明者等は鋭意検討した結果、化合物層の厚さを薄くして単位時間あたりの生産数を増加させるに当たり、化合物層の厚さ方向の炭素濃度分布に加えて、窒素濃度分布が大きく影響し、炭素濃度と窒素濃度とがある範囲を超えている面が露出した場合に発錆が起こることを確認した。
また、ガス軟窒化処理についても鋭意検討した結果、ガス軟窒化は、始めに浸炭によりFe3Cが形成された後、Fe3C→Fe3C(N)→Fe3N(C)へと化合物が変化していくが、被処理材の単位表面積当りの二酸化炭素量が多過ぎると、浸炭量(浸炭速度)が浸窒量(浸窒速度)よりも大きくなって、Fe3N(C)への変化が遅れてしまい、このことが耐食性を低下させる原因になる、との結論に至った。そして、この点に注目して種々の二酸化炭素濃度でガス軟窒化処理を行ったところ、被処理材の単位表面積当りの二酸化炭素の濃度がある範囲を超えている場合に錆が生じ易いことが判明した。
【0005】
本発明は、上記した知見に基づいてなされたもので、その課題とするところは、軟窒化処理により形成される化合物層の厚さ方向の炭素濃度と窒素濃度とを一定範囲に収めることにより、化合物層の厚さを薄くしても耐摩耗性はもとより、耐食性の面でも安定して優れた性能を発揮できる表面処理鋼部材を提供し、併せてこのような表面処理鋼部材を安定的に製造できるガス軟窒化処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る鋼部材のガス軟窒化処理方法は、アンモニア、窒素および二酸化炭素を含む浸炭窒化性ガス雰囲気中で熱処理をして被処理材の表面に、主にイプシロン鉄窒化物よりなる化合物層を形成する鋼部材のガス軟窒化処理方法において、前記二酸化炭素の濃度を被処理材の表面積1.0m2当り20.0〜80.0g/hに制御し、前記化合物層内に炭素濃度が0.2〜1.0重量%範囲でかつ窒素濃度が5.0〜8.0重量%範囲の安定層を設け、前記化合物層の厚さを5.0〜15.0μmの範囲に収めたことを特徴とする。
このように構成した表面処理鋼部材においては、化合物層内に設けた安定層が耐食性の維持に寄与すると共に、化合物層の厚さを薄くすることができる。本表面処理鋼部材において、上記安定層は、化合物層の全層(全厚さ)にわたって設けても、化合物層内に部分的に設けるようにしてもよいものである。本表面処理鋼部材は、上記化合物層上に、さらに酸化処理により主に四三酸化鉄よりなる酸化物層を積層形成しても良いもので、これにより、耐摩耗性および耐食性がより一層向上する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係る鋼部材を製造するには、加熱手段およびガス置換手段を付設した窒化炉内に鋼部材を装入し、先ず、窒化炉内を真空引きしてその内部に窒素ガスを導入しながら、標準の軟窒化温度( 570〜580 ℃)まで昇温する。そして、軟窒化温度まで昇温したら、窒化炉内にアンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の割合で供給し、窒化炉内を浸炭窒化性ガス雰囲気として所定時間保持し、ガス軟窒化処理を行い、この処理後、例えば、窒化炉に隣接して設けた油槽内の油中に鋼部材を浸漬して急冷する。このガス軟窒化処理により、鋼部材の表面には、主にイプシロン鉄窒化物(ε−Fe2-3N)よりなる化合物層が5〜15μmの厚さに形成されると共に、この化合物層下に窒素の拡散層が形成され、耐摩耗性と耐食性とに優れた鋼部材が得られる。
【0009】
上記ガス軟窒化処理に際しては、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素との混合比率を適当に設定することにより、化合物層内に、炭素濃度が0.2〜1.0 重量%でかつ窒素濃度が5.0〜8.0重量%となる安定層を設けるようにする。この時、二酸化炭素は、被処理材の表面積1.0 m2 当り20.0〜80.0g/hとなるように供給する。これにより、化合物層内の安定層が耐食性の安定維持に寄与し、耐食性のバラツキの少ない表面処理鋼部材を提供できるようになる。なお、前記安定層は、化合物層の全厚さにわたって設けることが望ましいが、本実施の形態のように適用する部材の耐摩耗性が高い場合は、化合物層の全厚さのうち、部分的に設けてもよい。
【0010】
ここで、必要により酸化処理を追加する場合は、上記窒化炉と同様に加熱手段およびガス置換手段を付設した酸化炉を別途用意し、この中に上記ガス軟窒化処理を終えた鋼部材を装入して、先ず、酸化炉内を真空引きしてその内部に窒素ガスを導入しながら、標準の水蒸気酸化温度( 400〜500 ℃)まで昇温する。そして、水蒸気酸化温度まで昇温したら、酸化炉内に水蒸気を所定時間だけ吹込み、その後、酸化炉から取出して大気冷却する。この酸化処理により上記化合物層上に、主に四三酸化鉄(Fe3O4 )よりなる酸化物層が1〜3μm程度の厚さに形成され、耐摩耗性と耐食性とに、より優れた鋼部材が得られるようになる。
【0011】
【実施例】
実施例1
JIS S35C製の油圧緩衝器用ピストンロッド素材(長さ約150mm)に必要な切削加工を加え、さらにその表面を研削加工して、所定のロッド寸法(径10mm)と表面粗さ(中心線平均粗さRa0.08μm以下)に仕上げた。次に、前記ロッド(ピストンロッド)を、1000本を一単位として専用の治具にセットし、ロッド表面に付着していた研削油を洗浄除去した後、窒化炉に装入し、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の比率で炉内に供給し、特に二酸化炭素については、予め寸法から計算により求めた全ロッドの表面積に基いて1.0m2当り77.0g/hとなるように供給し、このような比率で混合した浸炭窒化性ガス雰囲気中にて、570℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後急冷した。
【0012】
そして、上記一連の処理を終えた後、各ロッドを治具から取り外し、そのうちの複数本については、表面の化合物層の分析試験を行ってその厚さ方向における炭素濃度分布と窒素濃度分布とを求め、また、他の複数本については、JIS Z2371塩水噴霧試験を行い、腐食面積率からレイティングナンバー(JIS H8502)を求めた。なお、複数本のロッドについて顕微鏡試験を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは10〜15μmであった。
【0013】
実施例2
実施例1と同じ寸法条件のピストンロッド素材に、実施例1と同じガス雰囲気にて、570℃に45分保持するガス軟窒化処理を施し、その後、実施例1と同様の手順で、表面の化合物層の分析試験および塩水噴霧試験を行った。なお、複数本のロッドについて顕微鏡観察を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは5〜8μmであった。
【0014】
実施例3
実施例1と同じ寸法条件のピストンロッド素材に、実施例1と同じガス雰囲気にて、580℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後、実施例1と同様の手順で、表面の化合物層の分析試験および塩水噴霧試験を行った。なお、複数本のロッドについて顕微鏡観察を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは12〜15μmであった。
【0015】
実施例4
実施例1と同じピストンロッド素材およびロッド径のものを用い、長さをそれぞれ異ならせ、これを実施例1と同様の表面粗さに仕上げ、一回目の処理用として前記ロッド(ピストンロッド)2500本を一単位として専用の治具にセットし、さらに二回目の処理用として前記ロッド1250本を一単位として専用の治具にセットした。次に、一回目の処理用の全ロッド(2500本)の重さを測定し、その重さをガス軟窒化処理設備の制御装置に入力して、全ロッドの表面積を演算させた。そして、この一回目の処理用のロッド表面に付着している研削油を洗浄除去した後、窒化炉に装入し、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の割合で炉内に供給し、特に二酸化炭素については、前記重さから求めた全ロッドの表面積に基いて1.0m2当り44.0g/hとなるように供給し、浸炭窒化性ガス雰囲気中にて、570℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後急冷した。
次に、二回目の処理用のロッドを、一回目と同様に重さを測定して全ロッドの表面積を求め、表面に付着している研削油を洗浄除去し、窒化炉に装入し、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の割合で炉内に供給する。この時、二回目の処理用ロッドは、一回目の処理用ロッドに対して測定した重さが半分であることが分かり、その全ロッド(1250本)の表面積は一回目の処理用の全ロッドの表面積の半分(1/2)となる。したがって二酸化炭素の供給量もこの表面積に基いて1.0m2当り44.0g/hとなるように調整し、一回目と同じ条件でガス軟窒化処理を行った。
そして、上記一連の処理を終えた後、一回目および二回目処理済みの各ロッドを治具から取り外し、所定の表面粗さ(中心線表面粗さRa0.08μm以下)に仕上げ、一回目処理済みのロッド80本と二回目処理済みのロッド40本については、JIS Z2371塩水噴霧試験を行って発錆状況を観察した。なお、一回目処理済みのロッド20本と二回目処理済みのロッド10本について、顕微鏡試験を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは10〜13μmであった。
【0016】
なお、全ロッドの表面積を求めるにあたって、上記実施例4のように重さから求めることに限らず、ロッドを液体に浸漬してその体積を測定し、その体積とロッド径とから表面積を求めるようにしてもよい。
【0017】
実施例5
実施例4と同じピストンロッド素材を用いて、これを実施例4と同様のロッド寸法および表面粗さに仕上げ、その2500本を専用の治具にセットし、ロッド表面に付着している研削油を洗浄除去した後、窒化炉に装入し、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の割合で炉内に供給し、特に二酸化炭素については、予め寸法から計算により求めた全ロッドの表面積に基いて1.0m2当り31.0g/hとなるように供給し、浸炭窒化性ガス雰囲気中にて、570℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後急冷した。
そして、上記一連の処理を終えた後、各ロッドを治具から取り外し、所定の表面粗さ(中心線表面粗さRa0.08μm以下)に仕上げ、そのうちの80本について、JIS Z2371塩水噴霧試験を行って発錆状況を観察した。なお、ロッド20本について、顕微鏡試験を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは10〜13μmであった。
【0018】
実施例6
実施例4と同じピストンロッド素材を用いて、これを実施例4と同様のロッド寸法および表面粗さに仕上げ、その2500本を専用の治具にセットし、ロッド表面に付着している研削油を洗浄除去した後、窒化炉に装入し、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の割合で炉内に供給し、特に二酸化炭素については、予め寸法から計算により求めた全ロッドの表面積に基いて1.0m2当り58.8g/hとなるように供給し、浸炭窒化性ガス雰囲気中にて、570℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後急冷した。
そして、上記一連の処理を終えた後、各ロッドを治具から取り外し、所定の表面粗さ(中心線表面粗さRa0.08μm以下)に仕上げ、そのうちの40本について、JIS Z2371塩水噴霧試験を行って発錆状況を観察した。なお、ロッド20本について、顕微鏡試験を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは10〜13μmであった。
【0019】
比較例1
実施例1と同じピストンロッド素材に、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを、実施例1とは異なる比率で混合した浸炭窒化性ガス雰囲気にて、 570℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後、実施例1と同様の手順で、表面の化合物層の分析試験および塩水噴霧試験を行った。なお、複数本のロッドについて顕微鏡試験を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは10〜15μmであった。
【0020】
比較例2
実施例4と同じピストンロッド素材を用いて、これを実施例4と同様のロッド寸法および表面粗さに仕上げ、その1250本を専用の治具にセットし、ロッド表面に付着している研削油を洗浄除去した後、窒化炉に装入し、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の割合で炉内に供給し、特に二酸化炭素については、予め寸法から計算により求めた全ロッドの表面積に基いて1.0m2当り88.0g/hとなるように供給し、浸炭窒化性ガス雰囲気中にて、570℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後急冷した。
そして、上記一連の処理を終えた後、各ロッドを治具から取り外し、所定の表面粗さ(中心線表面粗さRa0.08μm以下)に仕上げ、そのうちの40本について、JIS Z2371塩水噴霧試験を行って発錆状況を観察した。なお、ロッド10本について、顕微鏡試験を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは10〜13μmであった。
【0021】
比較例3
実施例4と同じピストンロッド素材を用いて、これを実施例1と同様のロッド寸法および表面粗さに仕上げ、その1250本を専用の治具にセットし、ロッド表面に付着している研削油を洗浄除去した後、窒化炉に装入し、アンモニアガスと、窒素と二酸化炭素とを所定の割合で炉内に供給し、特に二酸化炭素については、予め寸法から計算により求めた全ロッドの表面積に基いて1.0m2当り11.4g/hとなるように供給し、浸炭窒化性ガス雰囲気中にて、570℃に60分保持するガス軟窒化処理を施し、その後急冷した。
そして、上記一連の処理を終えた後、各ロッドを治具から取り外し、所定の表面粗さ(中心線表面粗さRa0.08μm以下)に仕上げ、そのうちの40本について、JIS Z2371塩水噴霧試験を行って発錆状況を観察した。なお、ロッド10本について、顕微鏡試験を行って化合物層の厚さを測定した結果、化合物層の厚さは3〜5μmであった。
【0022】
試験結果
表1および図1、2は、実施例1〜3および比較例1についての表面の化合物層中の炭素濃度、窒素濃度の分布を示したものである。なお、同図中における各プロットは、複数の分析結果の平均値を示している。これより、化合物層の厚さ方向における炭素濃度は、実施例1、実施例2、実施例3および比較例1の表面処理を施したピストンロッド(処理材)共に、1.0重量%以下(0.2重量%以上)に収まっている。一方、化合物層の厚さ方向における窒素濃度は、実施例1、実施例2および実施例3共に、処理材の表面側に5.0重量%以上となる領域(安定層)が認められるのに対し、比較例1の処理材には、そのような5.0重量%以上となる領域は認められない。
【0023】
【表1】
【0024】
図3は、実施例1〜3および比較例1で表面処理を施したピストンロッド(処理材)各5本の塩水噴霧試験(試験時間168時間)の結果を示したものである。これより、実施例1、実施例2および実施例3で表面処理を施した処理材は、比較例1の処理材に比べて耐食性に優れていることが確認できた。実施例1、実施例2および実施例3の処理材が耐食性に優れている理由は、上記したように軟窒化処理により形成された化合物層内に、炭素濃度が0.2〜1.0重量%でかつ窒素濃度が5.0〜8.0重量%となる安定層が存在するためと推定される。
【0025】
以上述べたように、化合物層の厚さを、従来技術では18〜20μmであったのを本発明では5〜15μmになるように薄くしている一方、その化合物層内に、炭素農濃度が0.2〜1.0重量%の範囲でかつ窒素濃度が5.0〜8.0重量%の範囲の安定層を設けたので、化合物層の形成時間を大幅に短縮(従来、約2時間かかったものが60分で済む)でき、単位時間あたりの生産数の増加を図ることができ、しかも、耐摩耗性および耐食性の面でも安定して優れた性能を発揮できる。
【0026】
表2は、実施例4〜6および比較例2,3についての塩水噴霧試験の結果を示したものである。これより、各実施例4〜6の処理品共に72時間試験後まで発錆は一本も認めれなかった。また、実施例4の一回目処理品、二回目処理品の比較から、一回の処理数による差も現われず、大量処理が可能であることが分った。これに対し、二酸化炭素濃度を、80.0g/h・m2よりも高く設定して処理した比較例2および20.0g/h・m2よりも低く設定して処理した比較例3の処理品は、比較的早期(48時間以内)に発錆するものが認められ、二酸化炭素の濃度を所定範囲に制御することが、耐食性の向上に大きく寄与することが分った。
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る表面処理鋼部材によれば、軟窒化処理により形成される化合物層内に炭素濃度および窒素濃度を所定範囲に収めた安定層を設けると共に、化合物層の厚さを薄くしたので、耐摩耗性はもとより、耐食性の面でも安定して優れた性能を発揮でき、しかも、化合物層を薄くした分、単位時間あたりの生産数の増加を図ることができ、生産性が向上する。
また、本発明に係るガス軟窒化方法によれば、二酸化炭素の濃度を被処理材の表面積との関係で所定の範囲に制御することで、耐摩耗性はもとより、耐食性の面でも安定して優れた性能を発揮する化合物層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の表面炭素濃度分布を比較例と対比して示すグラフである。
【図2】本発明の実施例の表面窒素濃度分布を比較例と対比して示すグラフである。
【図3】従来技術における化合物層の厚さと、炭素(C)濃度、窒素(N)濃度および耐食性との相関を示すグラフである。
Claims (2)
- アンモニア、窒素および二酸化炭素を含む浸炭窒化性ガス雰囲気中で熱処理をして被処理材の表面に、主にイプシロン鉄窒化物よりなる化合物層を形成する鋼部材のガス軟窒化処理方法において、前記二酸化炭素の濃度を被処理材の表面積1.0m2当り20.0〜80.0g/hに制御し、前記化合物層内に炭素濃度が0.2〜1.0重量%範囲でかつ窒素濃度が5.0〜8.0重量%範囲の安定層を設け、前記化合物層の厚さを5.0〜15.0μmの範囲に収めたことを特徴とする鋼部材のガス軟窒化処理方法。
- 化合物層上に、さらに酸化処理により主に四三酸化鉄よりなる酸化物層を積層形成することを特徴とする請求項1に記載の鋼部材のガス軟窒化処理方法。
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