以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
図1は、実施形態に係る光学素子を示す概略構成図である。図9は、実施形態に係る周期構造体を示す平面図である。
本実施形態に係る光学素子は、図1に示すように、スペーサー22により所定の間隙をもって対向配置された一対の透明基板10及び背面基板12を備え、当該透明基板10及び背面基板12の間隙内に、一対の第1電極14及び第2電極16と、多色表示用光学組成物として周期構造体18及び分散媒20が配置されている。そして、分散媒20には、移動性粒子として電荷移動性粒子20Aが分散されている。
周期構造体18は、図9に示すように、複数の周期構造体片18Aが不規則に配列された群から構成されており、第1電極14に当接して、当該第1電極14と共に背面基板12表面に配設されている。
一方、分散媒20は基板の間隙に封入されて周期構造体18と接触すると共に、一方の透明基板10表面に配設された第2電極16と接触されている。
まず、周期構造体18について説明する。周期構造体18としては、光の波長程度の大きさで屈折率の異なる2つ以上の領域がサブマイクロスケール程度で周期的に並べられた周期構造を持つものであり、ある条件下において、当該周期構造によって可視光が干渉され、周期構造色特有の構造色を呈するものが利用できる。無論、周期構造体18はその構造体に由来する構造色が無色、即ち構造色が可視領域に存在せず、周期構造体18単独では素材色を呈しており、後述する移動性粒子によって平均屈折率が変化し、構造色が可視領域に達し所定の構造色を呈するようにしてもよい。なお、光学素子用に最適化された周期構造体18は、フォトニック結晶構造体とも呼ばれている。
周期構造体18の素材の色は、有色であってもよし、無色であってもよい。周期構造体18の構造色が無色、又は後述する移動性粒子によって平均屈折率が変化し、構造色が無色である(即ち可視領域外れた)場合には、周期構造体18の素材色を表示することができる。例えば、周期構造体18の素材色が黒色(有色)であると、構造色が可視領域外れたときには光学素子が黒色を表示できるようになる。また、周期構造体18の素材色が透明(無色)であると、構造色が可視領域外れたときには光学素子が光を透過させることができるようになる。
そして、周期構造体18は、複数の周期構造体片18Aが不規則に配列された群から構成されている。ここで、周期構造体片18Aは、不規則配列されているが、この不規則配列とは、隣合う周期構造体片18A同士の最短距離が各々異なるように配列することを意味する。また、隣合う周期構造体片18A同士の大きさが異なるように配列してもよい。加えて、所定の領域で不規則配列し、当該不規則配列領域を規則配列することも、「不規則配列」に含む。
なお、周期構造体片18Aは、規則的に配列しもよいが、視野角依存性の防止、即ち呈する構造色が隣合う周期構造体片18A同士で干渉して、観測者の見る角度によって見える色が変化を防止する観点から不規則に配列することがよい。
周期構造体片18Aは、隣合う周期構造体片18A同士の最短距離が例えば3mm〜10nm(好ましくは2mm〜100nm、より好ましくは1mm〜500nm)の範囲となるように不規則に配列されている。この最短距離を上記範囲内とすることで、隣合う周期構造体片18A同士の光の干渉を生じさせず、且つ周期構造体が呈する構造色の濃度低下やムラ(即ち、周期構造体片同士の間隔が大きく、周期構造体片非形成領域が目視されてしまうこと)が防止される。
周期構造体片18Aの大きさは、例えば、最大径(素子を垂直方向から見たときの大きさ)で2000〜50nmであることが好ましく、より好ましくは1000〜100nm、さらに好ましくは800〜200nmである。周期構造体片18Aの大きさを上記範囲とすることで、周期構造に由来する構造色が消えず、即ち、周期構造が壊れず、周期構造体片18A自体の視野角依存性も防止される。
周期構造体片18Aは、電荷移動性粒子20A(移動性粒子)が入り込めるように、その内部に外部と連通する空隙構造を有する必要があり、このような空隙構造としては例えば多孔質構造体が挙げられる。
周期構造体片18Aとして具体的には、コロイド結晶構造体、ミクロドメイン構造体、ラメラ構造体などのポジ型構造体、これらポジ型構造体を鋳型として用いたネガ型構造体が挙げられる。ポジ型構造体の場合、単位構造体(例えば粒子等)間の間隙により空隙構造(多孔質構造)を持たせる。一方、ネガ型構造体は、ポジ型構造体の単位構造体(例えば粒子等)間の間隙に被鋳型物質を充填し当該構造体を除去することで、空隙構造(多孔質構造)を持たせる。これらの構造体の間隙に電荷移動性粒子20A(移動性粒子)が入り込んだり、出たりすることで、その構造体に由来する構造色を変化させることができる。
周期構造体片18Aは、絶縁性であっても、導電性であってもよいが、例えば電極を兼ねる場合には少なくとも表面が導電性を有する必要がある。なお、上記ネガ型構造体は自体は一般的に導電性を有していないため、これらの構造体の表面を導電性物質で被覆したポジ型構造体、これらの単位構造体(例えば粒子等)の間隙に導電性物質を充填し当該構造体を除去したネガ型構造体(所謂、中空構造体)が適用される。
ここで、移動性粒子20A(移動性粒子)が周期構造体片18Aの空隙構造の内部又は外部に選択的に配置されるためには、移動性粒子20A(移動性粒子)は空隙構造に容易に出入り可能である必要がある。このため、空隙構造(これが外部と連通する連通路も含む)は所定の大きさ以上である必要である。また、周期構造体片18Aの構造色を呈示するためには、周期構造体片18Aによる反射光の波長が可視光範囲内であることが必須である。
このため、空隙構造を構成する孔の長径は、10nm以上1000nm以下の範囲内であることが望ましい。空隙構造を構成する孔の長径が、10nm未満又は1000nmより高くなると、周期構造体片18Aによる反射光の波長が可視光範囲から大きく外れるため、移動性粒子の作用によって得られる色変化に制限が生じることがある。また、空隙構造を構成する孔間あるいは外部との間には連通路(穴)が存在する必要があり、その連通路(穴)の径はその長径で1nm以上1000nm以下であることが望ましい。この連通路(穴)が1nm以下であると粒子の移動を抑制してしまい、また1000nmよりも大きいと多孔質構造体の強度が低下する恐れが生じることがある。
ここで、空隙構造を構成する孔、空隙構造を構成する孔間あるいは外部との間に存在する連通路(穴)の大きさは、走査電子顕微鏡(SEM、VE−9800、キーエンス)で測定した。
コロイド結晶構造体は、コロイド粒子同士の斥力を利用して充填した非最密充填型構造体、コロイド粒子を密に充填した最密充填型構造体である。コロイド粒子としては、例えば体積平均粒子径10nm〜1000nmの粒子で、シリカ粒子、ポリマー粒子(ポリスチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)、その他、酸化チタンなどの無機物粒子)がある。
このようなコロイド粒子は、例えば、乳化重合、懸濁重合、二段階鋳型重合、化学的気相反応法、電気炉加熱法、熱プラズマ法、レーザ加熱法、ガス中蒸発法、共沈法、均一沈殿法、化合物沈殿法、金属アルコキシド法、水熱合成法、ゾルゲル法、噴霧法、冷凍凍結法、硝酸塩分解法で作製することができる。また、コロイド結晶構造体は、コロイド粒子分散液を用いて基板上にコロイド粒子を重力沈降法や塗布乾燥法によって自己組織的に堆積させる方法、あるいは電場や磁場の作用によって基板上に堆積させる方法、さらにはコロイド粒子の分散液に基板を浸漬、引き上げて、基板上に形成させる方法によって作製することができる。
コロイド結晶構造体は厚さが100nm〜5mm、好ましくは500nm〜1mmであることがよい。
また、ミクロドメイン構造体は、例えば、異種高分子を化学結合で繋げたブロック共重合体を利用し、当該異種高分子間の反発により、数ナノメートル〜サブマイクロメートルの周期構造を持つものである。ブロック共重合体としては、例えば、ポリ(スチレン−co−イソプレン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)ブロック共重合体ポリ(スチレン−co−ビニルピリジン)ブロック共重合体、ポリ(スチレン−co−エチレンプロピレン)ブロック共重合体などがあり、繰り返し単位が複数になってもかまわない。
このようなミクロドメイン構造体は、例えば流動温度以上に上昇させたのちに冷却して固化させたり、溶媒に溶解させた後に溶媒を蒸散させて固化させることで作製することができる。
ミクロドメイン構造体は、それぞれのドメインの屈折率差が0.1〜10であって、ドメインの特長距離が10nm〜1000nmであることがよい。
また、ラメラ構造体は、液晶構造の一つであり、分子膜が層状にスタックし、分子膜間相互の斥力により安定化されているものである。分子膜を構成する材料としては、界面活性剤等がある。
このようなラメラ構造体は、例えば、界面活性剤を用いた多層二分子膜によるラメラ層間を反応場としてアルコキシシランのゾル−ゲル合成より作製することができる。さらにこの手法は界面活性剤が形成するヘキサゴナル相、逆ヘキサゴナル相を反応場に用いても周期構造体片18Aを得ることができる。
ラメラ構造体は、それぞれの層の屈折率差が0.1〜10であって、層間距離が10nm〜1000nmであることがよい。
また、蒸着法、スパッタ法、塗布法、引き上げ法など薄膜作製法により異なる屈折率を有する素材を積層することでも周期構造体片18Aを得ることができる。
また、周期構造体片18Aとしてネガ型構造体を作製するための被鋳型物質としては、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリスチレン及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール系樹脂などが挙げられる。また、導電性の周期構造体片18Aを得るための導電性物質としては、炭素材料、金属(銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなど等)、金属酸化物(酸化スズ、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)等)、導電性高分子(ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類等)、などが挙げられる。これらの中でも、炭素材料はその素材色が本来黒色であるため得られた構造色のコントラストが上がる点でよい。
また、周期構造体片18Aとしてのネガ型構造体(中空構造体)を構成する被鋳型物質(導電性物質を含む)として高分子を適用すること、光学素子にフレキシブル性(可とう性、屈曲性)を付与できる。
周期構造体片18Aのうちポジ型構造体に導電性を付与する場合には、上記コロイド結晶構造体、ミクロドメイン構造体、ラメラ構造体などの表面に、例えば、めっき、電解重合などにより導電性物質を被覆して作製することができる。なお、導電性物質前駆体を被覆した後、焼成などの処理を施し、導電性物質としてもよい。
一方、周期構造体片18Aのうちネガ型構造体(中空構造体)は、上記コロイド結晶構造体、ミクロドメイン構造体、ラメラ構造体などの間隙に、例えば、めっき、電解重合などにより被鋳型物質(導電性物質を含む)を充填し、その後、当該構造体を除去することで作製することができる。なお、被鋳型物質(導電性物質を含む)前駆体を被覆・充填した後、焼成などの処理を施し、被鋳型物質(導電性物質を含む)としてもよい。
具体的には、例えば、図2に示すように、例えばシリカ粒子からなるコロイド結晶構造体30を作製し(図2(A))、その後、コロイド結晶構造体30の表面及び間隙(粒子間隙)に、フルフリルアルコール樹脂などの導電性物資前駆体を被覆・充填し、焼成することで、結果、導電性物資32として難黒鉛化炭素を充填する(図2(B))。そして、コロイド結晶構造体30を、フッ酸などによりエッチングして除去すると、コロイド結晶構造体30と同じ形状の空隙34が形成される(図2(C))。このようにして、導電性物質32からなるネガ型の周期構造体片18Aを作製することができる。
また、周期構造体片18Aは、上記ネガ型構造体(中空構造体)を粉砕した紛体群も適用することができる。ネガ型構造体を粉砕することで、周期構造自体が持つ可視光の干渉がランダム化され、結果、周期構造に由来する構造色の視野角依存性が改善される。ネガ型構造体の粉砕程度は、周期構造に由来する構造色が消えない程度、即ち、周期構造が壊れない程度、且つ粉体間で所定の間隙(多孔質体構造)を持つような程度で行われる。具体的(粉体の大きさの程度を表す特性値)には、例えば、数平均粒径が100nm〜5mm程度となるように粉砕する。
次に、周期構造体片18Aを不規則に配列して周期構造体18を得る方法について、コロイド結晶構造体を利用したネガ型構造体(所謂、逆オパールフォトニクス結晶体)を例にして説明する。
まず、図10(A)に示すように、基板40を準備する。
次に、図10(B)に示すように、基板40上にレジストを形成した後、フォトリソグラフィー法によりエッチングを施し、パターニングされたレジストマスク42(被覆層)を形成する。ここで、エッチングによりレジストを除去するレジストマスク非形成領域42A(即ち開口)を不規則配列となるように形成する。
また、マイクロコンタクトプリンティング法を用いてパターンを転写する手法を用いても良い。
次に、図10(C)に示すように、基板40上のレジストマスク非形成領域42Aに対し、親水処理を行い、親水処理領域44を形成する。ここで、後述するコロイド粒子分散液の溶媒が水性溶媒(例えば、水、低分子アルコール、DMSO、グリセリン誘導体、低分子ポリエチレンオキシドやそれらの混合物など)を使用するため、親水処理を行うが、親油性溶媒(例えば、デカン、オクタン、シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン・トルエン・キシレン・スチレン、長鎖アルキルアルコール、シリコンオイルなど)を使用した場合、疎水処理を行うことになる。
ここで、親水処理は、例えば、ガラス基板であればシラノール基、金基板であればチオール剤を末端とした極性基や親水性基を持つ物質を電極上にコートしたり、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーを修飾してもよい。また、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)などの感温性ポリマーを修飾すると、温度によって親水性/新油性を任意にかつ可逆に制御することができる。
一方、疎水処理は、例えば、ガラス基板であればシラノール基、金基板であればチオール剤を末端とした疎水性基(アルキル基など)を持つ物質やフッ素樹脂など表面エネルギーが小さい物質などを電極上にコートする。また、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)などの感温性ポリマーを修飾すると、温度によって親水性/新油性を任意にかつ可逆に制御することができる。
次に、図10(C)に示すように、レジストマスク44を除去する。そして、図11に示すように、この親水処理領域44が形成された基板40をコロイド粒子50Aを含むコロイド粒子分散液50(周期構造体前駆体溶液)に対して重力方向に沿って浸漬し、引き上げる浸漬塗布を行う。なお、図11中、52は、コロイド粒子分散液50を貯留する容器を示す。
すると、図10(D)に示すように、コロイド粒子分散液50が親水処理領域44にのみ付着し、これを乾燥させることで、親水処理領域44上にコロイド結晶構造体が形成される。
その後、コロイド結晶構造体の表面及び間隙(粒子間隙)に、例えば、めっき、電解重合などにより被鋳型物質(導電性物質を含む)を充填し、当該構造体を除去することで、コロイド結晶構造体と同じ形状の空隙が形成されたネガ型の周期構造体片18Aを得ることができる(図2参照)。
このようにすることで、不規則配列された周期構造体片18Aの群からなる周期構造体18を得ることができる(図9参照)。
得られた周期構造体18は、電極が設けられた基板に接着剤(例えばペースト剤)などを介して転写することにより、電極上に配設され、光学素子に利用することができる。
なお、上記周期構造体片の配列する方法は、コロイド粒子分散液を用いた浸漬塗布法により行った例を説明したが、これに限られず、パターニングされたレジストマスク(被覆層)を基板上に形成した状態(又はレジストマスク非形成領域に親水処理若しくは疎水処理を施した状態)で、上記各種周期構造体種に応じた各種方法により周期構造体形成することで、同様に配列された周期構造体片の群からなる周期構造体を得ることが可能である。
ここで、周期構造体片18Aと分散媒20との相互間の屈折率差が大きくなるように材料を選択したり、周期構造体18を細分したり、周期構造体18の厚さを薄くしたりすることで視野角依存性を改善することができる。
具体的には、周期構造体18と分散媒20との相互間の屈折率差は、例えば、0.1〜10程度とすることがよい。各屈折率はアッベ屈折率計で求めることができる。
また、周期構造体18の細分は、例えば、一辺10μm〜5mm角四方の1画素ごとで行うことができる。また、周期構造体18の厚さは500nm〜5mmとすることがよい。
次に、移動性粒子としての電荷移動性粒子20Aについて説明する。電荷移動性粒子20Aは、電界(電圧)の作用により移動可能な粒子である。そして、電荷移動性粒子20A(移動性粒子も含む)は、周期構造体18の空隙構造に入り込むことで平均屈折率を変化させ、構造色を変化させることができるものである。
電荷移動性粒子20A(移動性粒子も含む)は、分散媒に分散状態では光散乱することなく(言いかえれば移動性粒子が分散した状態分散媒が着色せず光透過性を有する大きさ)、周期構造体18の空隙構造へ入り込める大きさであることが好ましく、具体的には、その体積平均粒子径が1nm〜1μmであることが好ましく、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは10nm〜100nmである。なお、図中ではわかり易いように、電荷移動性粒子20A(移動性粒子)を表現している
ここで、体積平均粒子径の測定方法としては、粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折、散乱光の強度分布パターンから平均粒径を測定する、レーザ回折散乱法を採用する。なお、測定は動的光散乱式粒径分布測定装置(LB−550、(株)堀場製作所)を用い、25℃で測定を行った。また、金属ナノ粒子の場合は透過型電子顕微鏡(HD−2300、(株)日立ハイテクノロジーズ)により測定した。
電荷移動性粒子20A(移動性粒子も含む)は(その他特性をご教示願います)、表面あるは内部に電荷を有しているものが好ましく、金属粒子(金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、プラチナ等)、無機物粒子(シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛等)、ポリマー粒子(ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等)、天然粒子(たんぱく質等)があり、好ましい特性を得るために表面に官能基を修飾してもかまわない。また、界面活性剤を添加し電荷移動性粒子20A(移動性粒子も含む)表面への界面活性剤の吸着によるものでもかまわない。このとき電荷移動性粒子20A(移動性粒子も含む)表面に修飾させる官能基としてはアミノ基、アンモニウム基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、チオール基などが挙げられる。また、上記の素材の組み合わせでコア−シェル構造を形成させてもかまわない。
電荷移動性粒子20A(移動性粒子も含む)の濃度(重量比)は、周期構造体18の空隙構造の体積によって変わるが、分散媒20に対して0.01重量%〜70重量%が好ましく、より好ましくは0.05重量%〜50重量%であり、より好ましくは、0.1重量%〜20重量%である。電荷移動性粒子20A(移動性粒子も含む)の濃度が小さすぎると、周期構造体18の構造色変化に寄与しにくくなることがあり、多すぎると周期構造体18の空隙構造に入り込めなくなる粒子が出てくる。
電荷移動性粒子20Aとして具体的には、金属ナノ粒子(好適には金、銀、酸化チタン、シリカ、及び酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の粒子)が好適に挙げられる。
なお、本実施形態では、移動性粒子として電荷移動性粒子20Aを用いた形態を説明しているが、移動性粒子としてはその他、磁気移動性粒子が挙げられる。磁気移動性粒子は、磁気の作用(磁気泳動法)により移動する粒子であり、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;:Fe、Co、Niのような金属あるいはこれらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金;及びこれらの混合物等が挙げられる。具体的には、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミニウム(CdFe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。本発明では磁性材料として、少なくとも磁性鉄を含有し、他に必要に応じて上述した磁性材料を一種又は二種以上任意に選択して使用することが可能である。
磁気移動性粒子は好ましい特性を得るために表面に官能基を修飾してもかまわない。また、界面活性剤を添加し表面への界面活性剤の吸着によるものでもかまわない。このとき表面に修飾させる官能基としてはアミノ基、アンモニウム基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、チオール基などが挙げられる。また、他の素材でコア−シェル構造を形成させてもかまわない。
また、移動性粒子として磁気移動性粒子を適用する場合、選択配置手段としては磁気発生手段(例えば電磁石、フェライト磁石、ネオジウム磁石、サマコバ磁石、アルニコ磁石、ラバー磁石、キャップ磁石等)が適用される。
次に、分散媒20について説明する。分散媒20は、電荷移動性粒子20A(移動性粒子)を分散させるための媒体である。分散媒20としては、水、有機溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類;エーテル類;エステル類;等の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ピロリドン誘導体、)、油類(例えば、脂肪族、は芳香族系有機溶媒、シリコンオイル)、イオン液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、ヘキサフルオロリン酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、ヘキサフルオロリン酸−1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、−1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、−1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムラクテート、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−デシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ドデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−ドデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ドデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸−1−ドデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ドデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイドテトラフルオロボレート、1−ドデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチルピリジニウムブロマイド、1-エチルピリジニウムクロライド、1-エチルピリジニウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸-1-エチルピリジニウム、1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-エチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチルピリジニウムブロマイド、1-ブチルピリジニウムクロライド、1-ブチルピリジニウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸-1-ブチルピリジニウム、1-ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ヘキシルピリジニウムブロマイド、1-ヘキシルピリジニウムクロライド、1-ヘキシルピリジニウムラクテート、ヘキサフルオロリン酸-1-ヘキシルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ヘキシルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート)が挙げられる。特に、分散媒20の溶媒としてイオン液体を適用することがよい。イオン液体は他の溶媒に比べ特に揮発性が低いので、素子の長期安定化が図れる。
次に電極について説明する。選択配置手段(電界付与手段)としての第1電極14及び第2電極16の構成材料としては、炭素材料、金属(銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなど等)、金属酸化物(酸化スズ、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)等)、導電性高分子(ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類等)、導電性高分子と前述の金属や金属酸化物の粒子との複合材料からなる電極などが好ましく用いられる。
なお、選択配置手段(電界付与手段)としては、電極に限られず、導電性材料で構成されていればよく、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、銀、カドニウム、インジウムなどの金属、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリメチルチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレンなどの導電性高分子、高分子マトリックスに金属粒子あるいは炭素粒子などを混練して導電性を持たせた樹脂、炭素材料などが挙げられる。
透明基板10及び背面基板12の構成材料としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフイルムや板状基板、ガラス基板、金属、金属フイルム、セラミックス等が使用可能である。特に、透明基板10及び背面基板12として屈曲性のあるフイルム基板を用いた場合はフレキシブル性(可とう性、屈曲性)を有する素子となる。
また、背面基板12は、有色であってもよし、有色体を有していてもよい(例えば、着色フィルムを基板面に貼り付ける)。例えば、周期構造体18の素材色が透明(無色)であると、構造色が可視領域外れたときには周期構造体18が光を透過させるため、背面基板12の色又は有色体の色を表示することができる。これにより、例えば、背面基板12を黒色、又は有色体を黒色とすると、周期構造体18の構造色の変化のみでは表現しにくい、黒色を表示することができるようになる。なお、本実施形態の場合、有色体は電極14を兼ねることもできる。
スペーサー22としては、例えば、樹脂、金属酸化物、ガラスなどで構成することができる。また、スペーサー22は、特に制限はないが、基板間の間隙が、電気絶縁性液体と、周期構造体18及び分散媒20の配置領域が確保するために十分に均一な間隙が確保されるように配置する。
スペーサー22の形状は安定して間隙を維持できるものであれば特に限定されないが、例えば、球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。
その他、本実施形態に係る光学素子には、上記した構成要素の他にも、表面保護層、カラーフィルター層、UV吸収層、反射防止層、配線、電気回路、IC、LSI、電源等の要素を備えていてもかまわない。
なお、各構成要素は、電界を付与する電圧においても、分解しない材料や不活性な材料で構成することがよい。
このような構成の本実施形態に係る光学素子では、周期構造体18を、配列した周期構造体片の群から構成することで、各片からの可視光の干渉が抑えられ、各片独自で光の反射を担うため、結果、周期構造体18としての視野角依存性が抑制される。特に、周期構造体片18Aを不規則に配列することで、当該各片からの可視光の干渉がより効果的に抑えられ、より高いレベルでの視野角依存性が抑制される。
加えて、本実施形態に係る光学素子では、電界付与手段としての一対の第1電極14及び第2電極16に電圧を印加することで、周期構造体18へ電界を付与する。この電界により、周期構造体18の空隙構造18Aに電荷移動性粒子20Aが入り込む(図3(A)参照)。そして、この入り込んだ電荷移動性粒子20Aにより平均屈折率が変化し、周期構造体18に由来する構造色から色が変化する。
一方、上記電圧とは逆の電圧を一対の第1電極14及び第2電極16に印加すると、上記電界とは逆の電界が周期構造体18に付与される。この逆の電界により、周期構造体18の空隙構造18Aから電荷移動性粒子20Aが出て行く(図3(B)参照)。周期構造体18の空隙構造18Aから電荷移動性粒子20Aが無くなることで、平均屈折率が変化し、周期構造体に由来する構造色へ色が変化する。
以上により、本実施形態に係る光学素子では、視野角依存性が抑制されつつ、多色表示を行うことができる。
また、上述のように、電荷移動性粒子20Aにより平均屈折率を変化させることで、色を変化させることができるが、この電荷移動性粒子20Aの存在率によっても平均屈折率変化量が異なるため、当該存在率によって調色することができる。この存在率の調整は、付与する電界強度(印加電圧、電流量)や時間により適宜行うことができる。
なお、電荷移動性粒子20A(移動性粒子)の存在率とは、周期構造体18の空隙構造の単位体積当りに、当該空隙構造に電荷移動性粒子20Aが存在する割合(空隙構造単位体積当りに存在する粒子体積)である。
また、電荷移動性粒子20A(移動性粒子)を周期構造体18の空隙構造の内部で偏在さるように入り込ませることで、多色表示を行うこともできる。例えば、図4に示すように、層状の周期構造体18の下部(背面基板側の部分)の空隙構造にのみ電荷移動性粒子20A(移動性粒子)を入り込ませるようにして、周期構造体18の厚み方向で偏在させることで、電荷移動性粒子20Aが入り込んだ領域Aのみ構造色を変化させ、電荷移動性粒子20Aが入り込まない領域Bは周期構造体18に由来する構造色を呈するようにして、当該領域Aでの変化した構造色と当該領域Bでの周期構造体18に由来する構造色との混色が表示され、表示色の幅が広がる。このように、層状の周期構造体18の下部(背面基板側の部分)の空隙構造にのみ電荷移動性粒子20A(移動性粒子)を入り込ませるようにするには、例えば、周期構造体18の厚みを大きくしたり、周期構造体18の空隙構造の総体積よりも、分散媒20に分散させる電荷移動性粒子20Aの総量を少なくする(例えば、約半分)ことで実施することができる。
ここで、周期構造体18が構造色を呈するメカニズム、及び周期構造体の空隙構造に電荷移動性粒子20A(移動性粒子)が入り込むことによる調色のメカニズムを、コロイド結晶構造体を例にして説明する。
まず、図5に示すように、コロイド結晶構造体による可視光の干渉のメカニズムはX線回折による結晶構造解析に用いられるブラッグの法則(下記式(1))を適用することができる。
式(1)中、mは定数、λは光の波長、lは格子定数、θは入射角である。ここではしかしX線回折による手法コロイド結晶構造体の干渉は波長と対象物のスケールの比率が大きく異なるためそのままは用いることはできない。つまり、コロイド結晶構造体は可視光の波長と同程度であるので屈折率の影響を考慮しなければならない。
そこで、図6に示すように、αの角度で進入した光の波長(λair)とコロイド結晶構造体によりθの角度に屈折した光の波長(λcry)との関係は、nair、ncryをそれぞれ空気及びコロイド結晶構造体の屈折率としたとき、式(2)で表される(スネルの法則)。
さらに、図7に示すように、コロイド結晶構造体はエネルギー的に最も安定な面心立方結晶の(111)面を表層にしていることから(図7中ACF面、hfda面)、コロイド粒子の粒径(体積平均粒径)をDで表すと格子定数は式(2’)となり、式(1)、式(2)をまとめることで式(3)を得る。
ここで、式(3)nair、ncryはそれぞれ空気、コロイド粒子の屈折率、φair、φcolloidはそれぞれ空気、コロイド粒子の体積分率である。このλが可視光領域(400nm〜800nm)に収まったとき構造色として認識できることになる。
このようなコロイド結晶構造体にナノオーダーの構造を制御し、光の波長程度の周期構造を創り込むことで構造色を操ることができる。そして、最密充填型コロイド結晶構造体から得られる反射波長は式(3)に移動性粒子の屈折率を加え、式(4)で表される。
式(4)中、nsolution、nPC、nparticleはそれぞれ分散媒、コロイド結晶構造体及び移動性粒子の屈折率、φparticleは移動性粒子の体積分率である。また、φcry=φcolloidである。ここで、コロイド結晶構造体の視野角を無視した場合(例えば、上記手法で視野角依存性を改善すると視野角を無視することができる)、式(4)は式(5)と書き直すことができる。
つまり、式(5)から、移動性粒子によりコロイド結晶構造体の構造色が変化することが示される。また、移動性粒子の量(存在率)によって調色されることも示される。
このように、本実施形態に係る光学素子は、多色表示が可能となると共に、メモリ性を有する表示が可能となる。また、多色表示の際、多色表示用光学組成物の大きさの変化は伴わないので、1画素ごとの表示が簡易に行える。また、カラーフィルターのような第3手段を必要とすることもない。
なお、本実施形態に係る光学素子では、電界付与手段としての第1電極14及び第2電極16を多色表示用光学組成物としての周期構造体18及び分散媒20に接触配置させた形態を説明したが、第1電極14及び第2電極16は周期構造体18に電界を付与できれば、非接触配置してもよく、例えば、図8に示すように、第1電極14及び第2電極16を透明基板10及び背面基板12の外面(非対向面)に配置した形態であってもよい。
また、本実施形態に係る光学素子では、周期構造体の屈折率を変化させる媒体として、移動性粒子を適用した形態を説明したが、これに限られず、媒体として、例えば金属イオンを含む電解液を適用し、周期構造体の外部に位置する金属イオンから金属を周期構造体の表面若しくは内部に析出させることで周期構造体の屈折率を変化させる形態であってよい。また、媒体として流体を適用し、周期構造体に外部に位置する流体を表面若しくは内部に位置させることで周期構造体の屈折率を変化させる形態であってよい。
また、本実施形態に係る光学素子は、最小単位(1画素単位)の構成について説明したが、当該最小単位をマットリック状に配列させることで、容易にカラー表示が行えるようになる。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、本実施例は、図1に示す光学素子と同様な構成のものを作製し、評価した。
(実施例1)
ITOガラス基板を準備し、基板上にレジストマスク(材料名:KAYARAD:日本化薬(株)製)を形成し、フォトリソグラフィー法によりレジストマスクの一部に開口を設けるように除去して、マスク非形成領域を配列した。ここで、マスク非形成領域は、隣合う領域同士の最短距離が100μm、最大径1mmで不規則に配列するように形成した(図9参照)。
次に、レジストマスクを設けたガラス基板にフルオロアルキルシラン(東芝シリコーン(株)製)を塗布し基板上に自己組織化により修飾させることでマスク非形成領域を疎水化させた。そして、レジストマスクを除去した。
次に、シランカップリング処理を施したガラス基板を、体積平均粒径300nmの単分散シリカ粒子(商品名:シーホスターKE−W30、(株)日本触媒)の水懸濁液に重力方向に沿って浸漬した後、引き上げる浸漬塗布(ディップコート法)を行った。
すると、ガラス基板のマスク領域のみに、シリカ粒子が付着し、ガラス基板上に不規則配列された最密充填型コロイド結晶体片を作製した。
なお、ここでは基板の引き上げ速度を0.8μm/sとし、コロイド結晶を厚さ10μmで作製した。得られた最密充填型コロイド結晶は構造色(青)を呈しており、走査電子顕微鏡(SEM)により表層を(1,1,1)面とした面心立方格子を形成していることが確認できた。
次に、このコロイド結晶構造体片を鋳型として、当該構造体片の粒子間隙にフルフリルアルコールを浸漬して充填した後、無酸素下で温度1000℃で焼成し、フッ酸によりシリカコロイド結晶構造体片をエッチングして、厚さ5μmの炭素からなる炭素構造体片(周期構造体片:ネガ型構造体)を得た。得られた炭素構造体片は構造色(青)を発色していた。また、SEMにより観察したところ、シリカコロイド結晶構造体片と同形状の空隙構造が形成された多孔質体で、全ての穴が繋がっていることが観察された。この空隙構造を構成する孔大きさは長径が300nm、空隙構造を構成する孔間あるいは外部との間には連通路(穴)の大きさは長径が90nmであった。
このようにして、ガラス基板上に、不規則配列された周期構造体片の群からなる周期構造体を得た(図9参照)。
一方、金ナノ粒子(体積平均粒径15nm)を分散媒として水に分散した金ナノ粒子含有溶液を調整した。当該溶液の金ナノ粒子の濃度は0.1重量%とした。
得られた炭素構造体(周期構造体)を向かい合うITO電極が形成された基板の一方に銀ペースト接着剤を介して転写することで接着し、金ナノ粒子含有溶液を充填したのちに周りを封止し光学素子を作製した(図1参照)。
この光学素子における炭素構造体(周期構造体)を接着した側のITO電極を陰極、他方を陽極として電圧を印加したところ、炭素構造体(周期構造体)の構造色は連続的に青→緑→黄→赤に変化した。また、この引き続き電圧を印加し続けたところ、構造色変化が可視領域外となり、炭素構造体(周期構造体)の素材色(黒)に変化した。これにより、炭素構造体(周期構造体)中の空隙への金ナノ粒子の泳動により入り込み、屈折率変化により連続的な調色が可能であることがわかった。
加えて、光学素子の表示面の法線方向から当該法線方向に対して傾けつつ目視したところ、法線方向から目視した構造色に対し、当該法線方向に対して70°まで傾けたところで構造色が変化するようになった。
(参考例)
ガラス基板になにも処理せず、厚さ5μmからなるべたの層状周期構造体を形成した以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製した。
そして、加えて、光学素子の表示面の法線方向から当該法線方向に対して傾けつつ目視したところ、法線方向から目視した構造色に対し、当該法線方向に対して10°まで傾けたところで構造色が変化するようになった。
(実施例2)
光リソグラフィーによって作製した微細構造の形状パターン(マスター)をポリジメチルシロキサンによって型を取り、スタンプを作製した。このスタンプにγ−APS(γ−aminopropyl triethoxysilane)を塗布し、これを基板に圧着した。軽く水洗いし乾燥させ、任意パターン領域にγ−APSが修飾された基板を得た。
この基板を体積平均粒径300nmの単分散ポリスチレン粒子(商品名:エスタポールES−K030、メルク)のエタノール懸濁液に浸漬しディップコート法を用いて基板上に最密充填型コロイド結晶を作製した。得られた基板ではγ−APSが修飾された領域のみにコロイド結晶が形成された。なお、ここでは基板の引き上げ速度を0.5μm/sとし、コロイド結晶を厚さ10μmで作製した。得られた最密充填型コロイド結晶は構造色(緑)を呈しており、SEMにより表層を(1,1,1)面とした面心立方格子を形成していることが確認できた。
このコロイド結晶構造体を鋳型として、SiO2粒子懸濁水溶液(SiO2粒子の体積平均粒径6nm、濃度10重量%、商品名:カタロイド、触媒化成工業(株))をディップコート法により当該構造体の粒子間隙に充填し、さらに500℃で1時間加熱することでコロイド結晶構造体を消失させると共に、厚さ5μmのシリカ構造体(周期構造体:ネガ型構造体)を得た。得られたシリカ構造体は構造色(青)を発色していた。また、SEMにより観察したところ、ポリスチレンコロイド結晶構造体と同形状の空隙構造が形成された多孔質体で、全ての穴が繋がっていることが観察された。この空隙構造の大きさは、約90nmであった。
このようにして、ガラス基板上に、不規則配列された周期構造体片の群からなる周期構造体を得た(図9参照)。
一方、金ナノ粒子(体積平均粒径15nm)を分散媒として水に分散した金ナノ粒子含有溶液を調整した。当該溶液の金ナノ粒子の濃度は0.1重量%とした。
得られた炭素構造体(周期構造体)を向かい合うITO電極が形成された基板の一方に銀ペースト接着剤を介して転写することで接着し、金ナノ粒子含有溶液を充填したのちに周りを封止し光学素子を作製した(図1参照)。
この光学素子における炭素構造体(周期構造体)を接着した側のITO電極を陰極、他方を陽極として電圧を印加したところ、炭素構造体(周期構造体)の構造色は連続的に青→緑→黄→赤に変化した。また、この引き続き電圧を印加し続けたところ、構造色変化が可視領域外となり、炭素構造体(周期構造体)の素材色(黒)に変化した。これにより、炭素構造体(周期構造体)中の空隙への金ナノ粒子の泳動により入り込み、屈折率変化により連続的な調色が可能であることがわかった。
加えて、光学素子の表示面の法線方向から当該法線方向に対して傾けつつ目視したところ、法線方向から目視した構造色に対し、当該法線方向に対して70°まで傾けたところで構造色が変化するようになった。