JP4987691B2 - 構造的に規定される有機分子の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は有機分子の形成方法、更に特に有機反応物とヒドロラーゼ酵素とを接触させる工程を含む有機分子を形成する方法に関する。
大多数の有機分子の生体分子作用機構は本質的には規定されていない。特に、ケイ素を含有する有機分子は各種の植物、動物、及び微生物系における増殖及び生物学的機能に必須であるが、これらの相互作用の分子機構は事実上未知である。シリカ生合成の領域の天然のシステムのin vitroにおける研究は困難である。生体模倣法を含む初期の機構の試験では、通常、ケイ酸及びそのアナログの化学的性質を解することができなかった。例えば、シリカテインは粒子状シリカの形成中のテトラエトキシシランの重縮合を触媒することが決定された。しかしながら、生成物と最終的な分析の制限を考慮すると、その試験は、生ケイ化中の加水分解と縮合反応との間におけるシリカテインの役割を区別することが不可能であった。
かくして、構造的に規定される有機分子及び物質、特に有機ケイ素分子を形成する改善された方法の必要が依然として存在する。
従って、本発明は有機分子の形成方法に関する。前記方法は、有機反応物とヒドロラーゼ酵素とを接触させる工程を含む。前記有機反応物は以下の化学式を含む:
式中、Xはケイ素とゲルマニウムからなる群より選択され;R1は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OXR4 2)Y-OXR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R2は、アルキル、水素、エーテル、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R3は、アルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R4は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OXR4 2)Y-OXR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;nは0から4の整数値であり;yは0以上の整数値であり;及びzは3以上の整数値である。前記ヒドロラーゼ酵素はリパーゼ、プロテアーゼ、ホスホエステラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、またはそれらの組み合わせを含む。前記ヒドロラーゼ酵素は有機反応物の加水分解と縮合を触媒して、有機分子を形成する。
本発明の他の実施態様では、有機ケイ素分子を形成する方法が提供される。前記方法は有機ケイ素反応物とヒドロラーゼ酵素とを接触させる工程を含む。前記有機ケイ素反応物は以下の化学式を含む:
式中、R1は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OSiR4 2)Y-OSiR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R2は、アルキル、水素、エーテル、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R3は、アルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R4は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OSiR4 2)y-OSiR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;nは0から4の整数値であり;yは0以上の整数値であり;及びzは3以上の整数値である。前記ヒドロラーゼ酵素はリパーゼ、プロテアーゼ、ホスホエステラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、またはそれらの組み合わせを含む。前記ヒドロラーゼ酵素は有機ケイ素反応物の加水分解と縮合を触媒して、有機ケイ素分子を形成する。
本発明の更なる他の実施態様では、有機ケイ素中間体分子を形成する方法が提供される。前記方法は有機ケイ素反応物とヒドロラーゼ酵素とを接触させる工程を含む。前記有機ケイ素反応物は以下の化学式を含む:
式中、R1は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OSiR4 2)y-OSiR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R2は、アルキル、水素、エーテル、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R3は、アルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R4は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OSiR4 2)y-OSiR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;nは0から4の整数値であり;yは0以上の整数値であり;及びzは3以上の整数値である。前記ヒドロラーゼ酵素はリパーゼ、プロテアーゼ、ホスホエステラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、またはそれらの組み合わせを含む。前記ヒドロラーゼ酵素は有機ケイ素反応物の加水分解を触媒して、有機ケイ素中間体分子を形成する。
本発明の更なる他の実施態様では、有機ケイ素分子を形成する方法が提供される。前記方法は有機ケイ素中間体反応物とヒドロラーゼ酵素とを接触させる工程を含む。前記有機ケイ素中間体反応物は以下の化学式を含む:
式中、R1は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OSiR4 2)y-OSiR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;R2は水素であり; R4は、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OSiR4 2)y-OSiR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され;nは0から4の整数値であり;yは0以上の整数値であり;a+bはzであり;及びzは3以上の整数値である。前記ヒドロラーゼ酵素はリパーゼ、プロテアーゼ、ホスホエステラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、またはそれらの組み合わせを含む。前記ヒドロラーゼ酵素は有機ケイ素中間体反応物の縮合を触媒して、有機ケイ素分子を形成する。
本発明で規定される反応条件は有機反応物の加水分解及び縮合を助けて有機分子を形成するため、前記反応条件で有機分子を合成できることは有利である。本発明の他の利点は、本発明の代替的で典型的な実施態様が提示及び記載される、以下の本発明の詳細な説明から当業者には明らかであろう。当業者に解されるように、本発明から逸脱することなく、本発明は他の異なる自明な態様及び実施態様であって良い。従って、図及び説明は事実上の説明として解されるべきであり、制限するものとして解されるべきでない。
有機分子の形成における加水分解及び縮合反応の試験は複雑である。具体的には、生ケイ化におけるその様な反応は、pH、濃度、及び温度に対するシリカ、シリケート、及びケイ酸の促進された感応性のために複雑である。従って、本発明は、ヒドロラーゼ酵素を利用して構造的に規定される有機、及びより具体的には有機ケイ素分子を形成することによってその様な複雑性を克服する。具体的には、以下の反応順序に示されるように、ヒドロラーゼ酵素が非特異的に有機反応物の加水分解を促進して(A)、有機中間体反応物を形成し(B)、続いて前記有機中間体反応物の縮合を選択的に触媒して(B)、有機分子を形成する(C)。
反応(I)、(II)、及び(III)の有機反応物(A)は、ヒドロラーゼ酵素が前記有機反応物の加水分解と縮合を選択的に触媒するため、許容可能な基質である。前記有機反応物(A)の反応部位は、前記有機反応物(A)の加水分解及び縮合を容易にして最終的に有機分子(C)を形成する正に帯電した原子(例えば、ケイ素またはゲルマニウム)を含む。かくして、反応(I)、(II)、及び(III)の有機反応物(A)を使用して、構造的に規定される有機分子が形成されて良い。
当業者は、前記反応物中に利用されて良い各種の無機成分Xを理解するであろう。それらの任意のものが本発明に使用されて良い。1つの実施態様では、Xはケイ素とゲルマニウムからなる群より選択される。更に、当業者は上記の反応でR1、R2、R3、及びR4として利用されて良い各種の置換基を理解するであろう。それらの任意のものが本発明において使用されて良い。従って、有機構造のR基は同一の繰り返し単位であるべきでないことが当業者に理解されるであろう。更に、前記R基は前記繰り返し単位の各々から独立に選択されて良い。
1つの実施態様では、R1はアルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OXR4 2)y-OXR4 3[式中、R4はアルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、アリール、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコール、エポキシ、エーテル、アミン、-(OXR4 2)y-OXR4 3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される]、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。他の実施態様では、R2はアルキル、水素、エーテル、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。更なる他の実施態様では、R3はアルキル、不飽和アルキル、アリール、及び水素からなる群より選択される。上述の各実施態様では、アルキル、ハロアルキル、不飽和アルキル、及びアルコキシが1つ以上の炭素を有する置換基であって良いことが更に理解されるであろう。更に、上記の反応では、nは0から4の整数値であると規定され;yは0以上の整数値であると規定され;及びzは3以上の整数値である。更に、本願を通じて使用される*は環状の構造を示すものであり、すなわち規定される末端基が存在しない。
有機反応物(A)は単官能性または多官能性であって良い。例えば、前記有機反応物(A)の式は(R1)4X、(R1)3X(OR2)1、(R1)2X(OR2)2、(R1)1X(OR2)3、及びX(OR2)4からなる群より選択されて良い。2官能性の有機反応物の具体例としては、(CH3)2Si(OCH3)2、(CH3)(CF3CH2CH2)Si(OCH3)2、(C6H5)(CH3)Si(OCH3)2、及び(CH3CH2)2Ge(OCH2CH3)2が含まれるが、それらに限らない。3及び4官能性の有機反応物の具体例としては、各々(CH3)Si(OCH2CH3)3及びSi(OCH2CH3)4が含まれるが、それらに限らない。前記有機反応物は直鎖状、分枝状、樹脂状、または環状であっても良い。1つの実施態様では、直鎖状、環状、及び分枝状の有機分子の分散物がヒドロラーゼ酵素と最初に反応させた後に完全に加水分解されて良い。環状、直鎖状、及び分枝状の有機反応物の具体例としては、各々1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラメトキシシクロテトラシロキサン、1,3-ビス(ヒドロキシ)テトラメチルジシロキサン、及び[(HO)2(CH3)SiO]3SiCH3が含まれるが、それらに限らない。
適切な有機反応物が特定されると、有機分子の形成を触媒するために前記有機反応物はヒドロラーゼ酵素と接触される。前記ヒドロラーゼ酵素は細菌、真菌、または哺乳動物の起源由来であって良く、または前記ヒドロラーゼ酵素は任意の他の適切な起源由来であって良い。前記酵素は一般的に可溶性の溶液または外生の懸濁物のいずれかであって良く、前記酵素は凍結乾燥または固定化されて良い。特定の実施態様では、前記ヒドロラーゼ酵素はリパーゼ、プロテアーゼ、ホスホエステラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されて良い。他の実施態様では、前記ヒドロラーゼ酵素はCandida antarcticaリパーゼ、Candida antarcticaリパーゼB、Rhizomucor mieheiリパーゼ、麦芽リパーゼ、またはそれらの組み合わせのようなリパーゼ酵素を含む。他の実施態様では、前記ヒドロラーゼ酵素はトリプシン、パパイン、ペプシン、またはそれらの組み合わせのようなプロテアーゼ酵素を含む。
他の実施態様では、前記ヒドロラーゼ酵素はトリプシンまたはトリプシンと少なくとも70%の相同性を有する酵素である。トリプシノーゲン(図1から2)はLys6-Ile7ペプチド結合の加水分解及びβ-トリプシンの形成(すなわち、ジスルフィド結合で架橋された単ポリペプチド鎖)に従って活性化される。新しいN末端のイソロイシン残基との疎水結合が、基質認識に関与することが知られている、結合ドメインとオキシアニオンホールのような領域の形成を誘導する。これらの領域で規定されるように、トリプシンは塩基性残基付近でペプチド結合を選択的に加水分解する(すなわち、アルギニン>リジン>>中性アミノ酸)。活性化に続いて、Lys131-Ser132及びLys176-Asp177結合の自己分解が各々α-トリプシン(すなわち、架橋された2鎖構造)及びシュードトリプシン(pseudotrypsin)(すなわち、架橋された3鎖構造)を誘導する。
特に、活性化反応と構造変化は触媒作用を有する三連構造の領域(すなわち、Ser183-His46-Asp177、図1及び配列番号1)への無視し得る変化を誘導する。これらの領域に基づいて、そのポケットの下部におけるアスパラギン酸残基との静電気引力によって、トリプシンはアルギニン及びリジンのような基質における塩基性基への親和力を有する。これらの領域内で、非共有結合性の相互作用が酵素反応を通じて基質の安定化に関与する。トリプシンの市販の調製品は主にα-及びβ-トリプシン、並びに他の分解性の酵素混入物質の混合物を含有する。本来の構造に基づくと、トリプシンの分子量は23,305である。更に、カルシウムが前記反応に添加されて、反応活性においてヒドロラーゼ酵素を助けて、特に酵素の安定性を促進して良い。
指示されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される、成分の量を表わす数の全て、分子量のような特性、及び反応条件などは、全ての場合において用語「約」によって修飾されるものとして解されるべきである。従って、指示されていない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲において記載される多数の特性は、本発明の実施態様で得られることが意図される望まれる特性に基づいて変化して良い近似値である。本発明の幅広い範囲を示す多くの範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において示される多数の値は可能な限り明確に記録されている。しかしながら、任意の多数の値は各々の測定において認められる誤差に必ず由来する特定の誤差を本質的に含有する。
前記反応の濃度、温度、及びpHは以下に詳細に示されるように変化して良い。具体的には、前記ヒドロラーゼ酵素の濃度は一般的に1mg/mLよりも大きい。他の実施態様では、前記ヒドロラーゼ酵素の濃度は約10mg/mLから約80mg/mLである。更なる他の実施態様では、前記ヒドロラーゼ酵素の濃度は約20mg/mLから約60mg/mLである。更なる他の実施態様では、前記ヒドロラーゼ酵素の濃度は約40mg/mLである。1つの実施態様では、前記有機反応物:酵素のモル比は約40000:1以下である。他の実施態様では前記有機反応物:酵素のモル比は約1000:1以下である。
前記反応の温度は一般的に約5℃と90℃の間である。他の実施態様では、前記反応は約20℃と約50℃の間の温度で実施される。更なる他の実施態様では、前記反応は約25℃の温度で実施される。前記反応のpHは一般的に約5.0から約8.0である。1つの実施態様では前記反応のpHは約7.0である。
更に、前記反応は無溶媒(ニート)条件で実施されて良く、または前記反応は水溶液または溶媒を利用して実施されて良い。適切な溶媒は、THF及びアセトニトリルのような水混和性有機溶媒、並びにトルエン及びヘキサンのような比較的乾燥した有機溶媒を含むが、それらに限らない。
本発明がより容易に理解される可能性があるために、以下の実施例に参照を作成しているが、本発明の説明を意図しており、本発明の範囲を制限するべきでないことが意図される。
原料
タンパク質とペプチド
Aspergillus nigerリパーゼ(アミノリパーゼA,#53,478-1)、N-α-ベンゾイル-L-アルギニンエチルエステル(BAEE,#B4500)、N-ベンゾイル-L-チロシンエチルエステル(BTEE,#B6125)、ウシ膵臓α-キモトリプシン(#C-4129)、TLCK処理ウシ膵臓α-キモトリプシン(#C3142)、ウシ膵臓ホスホリパーゼA2(P-8913)、ウシ膵臓トリプシン(#T4655)、TPCK処理ウシ膵臓トリプシン(#T1426)、ウシ血清アルブミン(BSA,#B4287)、Candida antarcticaリパーゼ(#62299)、Candida lipolyticaリパーゼ(#62303)、Gadus morhuaトリプシン(#T9906)、ブタ胃ペプシン(#P7012)、Mucor javanicusリパーゼ(#62304)、Novozyme 435(登録商標)(固定化Candida antarcticaリパーゼB, 〜1%タンパク質, #53,732-2)、パパイアラテックスパパイン(#P4726)、Penicillium roquefortiリパーゼ(#62308)、ブタβ-グロブリン(#G2512)、ブタ膵臓カルボキシペプチダーゼB(#C9584)、ブタ膵臓エラスターゼ(#E0258)、ブタ膵臓リパーゼ(#L-3162)、ブタ膵臓トリプシン(#T0303)、プロテアーゼ(スブチリシンCarlsberg, #P8038)、Pseudomonas cepaciaリパーゼ(アミノリパーゼPS, #53,464-1)、Pseudomonas fluorescensリパーゼ(#62321)、Rhizomucor mieheiリパーゼ(#62291)、ダイズ由来のトリプシンインヒビター(ダイズ由来のPopcornインヒビター, #T9128)、ダイズ由来のトリプシン-キモトリプシンインヒビター(Bowman-Birkインヒビター, #T9777)、塩酸N-α-p-トシル-L-リジンクロロメチルケトン (TLCK, #T7254), N-トシル-L-フェニルアラニンクロロメチルケトン(TPCK, #T4376)、麦芽リパーゼ(#62306)をSigma-Aldrich社(St. Louis, MO)より購入した。ウシ胎児カテプシンL(#219418)、ヒト肝臓カテプシンL(#219402)、及びParamecium tetraureliaカテプシンL(#219412)をEMD Biosciences社(San Diego, CA)、Calbiochem(登録商標)より購入した。トウモロコシで発現した組換えウシトリプシン(#TRY, CAS#9002-07-7)をProdiGene社(College Station, TX)より購入した。クチナーゼバリアントはGenencor International, Inc.社(Palo Alto, CA)より購入した。

Dow Corning Corporation社(Midland, MI)のMilli-Qシステムより超純水を得た。Trizma(登録商標)pre-set crystals pH7.0(Tris-HCl, #T3503)、pH7.5(Tris-HCl, #T4128)、pH7.8(Tris-HCl, #T4503)、pH8.0(Tris-HCl, #T4753)、及びpH9.0(Tris-HCl, #T6003)をSigma-Aldrich社より得た。バッファー溶液pH4.00(フタル酸水素カリウム, #SB101)、pH5.00(水酸化ナトリウム-クエン酸, #A015860101)、pH6.00(一塩基型リン酸カリウム-水酸化ナトリウム, #SB104)、及びpH10.00(炭酸カリウム-ホウ酸カリウム-水酸化カリウム, #SB115)をFisher Scientific社(Pittsburgh, PA)より購入した。
有機及び無機分子
アセトニトリル(#A996-4)、アセトン(#A929-4)、五酸化リン(#A244)、2-プロパノール(#A451-4)、テトラヒドロフラン(#T427-1)、及びトルエン(#T291-4)をFisher Scientific社より購入した。酢酸(#A6283)、塩化カルシウム(#C3881)、ドデカン(#44010)、エタノール(#45,984-4)、ヘキサノール(#H13303)、塩酸(#33,925-3)、水素化リチウムアルミニウム(#19,987-7)、塩化ナトリウム(#20,443-9)、及び炭酸水素ナトリウム(#34,094-4)をSigma-Aldrich社より購入した。テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(#T1372)をTCI America社(Portland, OR)より購入した。ジエチルジエトキシゲルマニウム(#GED 3404.2)をGelest, Inc.社(Tullytown, PA)より購入した。HPLC等級の有機溶媒を実施例を通じて使用した。
ケイ素に基づく分子
トリメチルシラノール(CAS #1066-40-6, #12848-72)、ヘプタメチルヒドロキシテトラシクロシロキサン(#11050-134B)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(#E-459-80, cut #3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(#E-1927-93-2, lot #2)、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン(LSトリマー)、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロテトラシロキサン(#H-1387-145)、及び2,4,6,8-トリメチル-2,4,6,8-テトラフェニル-シクロテトラシロキサン(#1923-44A)をDow Corning Corporation社より得た。3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン(#SIA0603.0)、ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(#SIB1846.0)、ジメチルジメトキシシラン(#SID4123.0)、1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキサシクロヘキサン(#SID4234.0)、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン(#SIG5825)、ヘキサメチルジシロキサン(#SIH6115.0)、トリメチルエトキシシラン(#SIT8515.0)、及びトリフェニルエトキシシラン(#SIT8652.0)をGelest, Inc.社(Tullytown, PA)より購入した。ヘキサメチルジシラザン(#37921-2)及びテトラエトキシシラン(#23620-9)をSigma-Aldrich社より購入した。フェニルジメチルエトキシシラン(#P0161)をUnited Chemical Technologies, Inc.社(Bristol, PA)より購入した。メチルトリエトキシシラン(#M9050)をHuls America, Inc.社(Bristol, PA)より購入した。
トリメチルアルコキシシランの合成
極性及び非極性の脱離基を有する2つのトリメチルアルコキシシランを合成した。テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)とヘキサノールをビス(トリメチルシリル)アセトアミドでシリル化して、標的の極性(Me3SiO(CH2CH2O)4CH3)及び非極性(Me3SiOC6H13)のシランを各々得た。
(実施例1)
生触媒試験
この試験は、in vitroにおけるアルコキシシランの加水分解と縮合の間のシロキサン結合の形成を触媒する酵素の能力の定量試験を目的とした。単一のシロキサン結合を有する分子の形成の間の反応物として単官能性のシランを選択したため、ガラス器具を調製するための厳密な手順が確立され、ガスクロマトグラフィー(GC)によって反応生成物を単離し、定量分析した。
抽出効率の測定は反応物と生成物の収率で規定した。物質収支は抽出の値の総和に等しかった。クロマトグラフィーの結果に基づいて、25℃でのTHFの抽出効率はジエチルエーテル、塩化メチレン、及びトルエンと比較して完璧であった。2回の抽出に基づいて、98%より大きい物質収支がTHFによって決まって得られた。
三回の反復測定に基づいて、分析のレスポンスファクターを計算して、三桁にわたる(すなわち、0.1から10%(w/w))濃度に応じて直線的であることを決定した。図3に示したように、アルコキシシラン、シラノール、及びジシロキサンの検体をクロマトグラフィーによって分離した。これらの検体の分離能は生ケイ化の間の加水分解と縮合反応における酵素の役割を区別するために必要であった。それに比べ、生成物と最終的な分析の制限を考慮すると、シリカテイン-模倣法を含むTethya aurantia海綿(すなわち、シリカテイン)とEquisetum telmateia植物(すなわち、生体高分子)の試験(すなわち、ジブロックポリペプチド)は生ケイ化の間の加水分解と縮合反応におけるタンパク質またはポリペプチドの役割を区別できなかった。
(実施例2)
酵素に触媒される縮合の試験
この試験は、シロキサン結合の形成を触媒する各種の酵素の能力を評価するための、トリメチルシラノールを使用する酵素の評価に関する。Tethya aurantia海綿(シリカテイン)、Cylindrotheca fusiformisケイ藻(シラフィン)、及びEquisetum telmateia植物(生体高分子抽出物)より単離されるタンパク質の類似性に基づいて、一連のリパーゼとセリンプロテアーゼを相同タンパク質分解酵素として選択した。類似の反応(すなわち、アミド及び/またはエステル結合の加水分解)の触媒に加え、前記加水分解酵素における活性部位は類似のセリン-ヒスチジン-アスパラギン酸触媒三連構造からなる。コントロール反応と比較して、哺乳動物、真菌、及び細菌の表1に詳述されるリパーゼ及びプロテアーゼを、トリメチルシラノールを使用して評価した。この試験では、コントロール反応は非酵素的反応として規定した。具体的には、タンパク質の非存在下で実施される実験はネガティブコントロール反応として規定した。ウシ血清アルブミン及びブタγ-グロブリンのようなタンパク質分子は非特異的なタンパク質の触媒を試験するために使用した。
反応前に、ガラスのバイアルをアセトン(2回)及びエタノール(2回)を使用してすすいで、乾燥させ、25℃で30分間、酢酸(0.2mmol)の存在下でヘキサメチルジシラザン(1mmol)を使用してシリル化した。続いて、前記バイアルをエタノール(2回)ですすいで、110℃でオーブンにおいて乾燥させた。シリル化ガラスバイアルは、トリメチルシラノールまたはヘキサメチルジシロキサンとの反応が混入していないことを確認した。
前記反応を、1.3mLのトルエン若しくは1.1mLの水中で、5:1のトリメチルシラノール(225mg):タンパク質(45mgのリパーゼ、プロテアーゼ、若しくはBSA)の重量比を使用して配合した。トルエンを水素化リチウムアルミニウムで乾燥し(「ドライトルエン」、11ppmの水)、Milli-Q水で水和させた(「ウェットトルエン」、467ppmの水)。Aquatest IV滴定器(Photovolt Corporation, New York, NY)でKarl Fischer滴定を実施して、トルエンの水分量を測定した。Milli-Q水(「水」)を50mMのトリス-HCl緩衝液、pH7.0で緩衝化した(pH7.0に緩衝化)。推定される水中のトリメチルシラノールの溶解度は4.2%である(すなわち、42.56mg/ml)。前記配合に基づいて、トリメチルシラノールで飽和させた(~200mg/mL)水中で2相反応を実施した。6日間攪拌しながら25℃で不活性なガラスバイアルにおいて、閉じた(ねじ蓋された)反応を実施した。反応生成物をGCによって単離し、定量分析した。分析前に、水性の反応物をNaClの存在下でTHFを使用して2回抽出して、Whatman Autovial(登録商標) 5 0.45μm Teflon(登録商標)フィルター(#AV115NPUORG)を使用して濾過した。
結果を表2にまとめる。ネガティブコントロールと非特異的なタンパク質(すなわち、BSA)反応と比較して、トリプシンとα-キモトリプシン、並びに選ばれたリパーゼは、温和な条件下でヘキサメチルジシロキサンの形成の間にトリメチルシラノールの縮合を触媒することが認められた。表2でチェックされている酵素については、ネガティブコントロール反応よりも10倍より多くトリメチルシラノールの縮合を触媒すること;並びに有機及び水性の媒体において、それぞれBSAの反応よりも3または10倍より多くのトリメチルシラノールの縮合を触媒することを決定した。一方、典型的な縮合反応を触媒するための表2でチェックされていない酵素の能力はコントロール反応と実質的に違いが無かった。検討すると、縮合の相対速度は水中で増大した。リパーゼとは逆に、プロテアーゼは水溶性の基質とのみ相互作用するであろう。トリメチルシラノールの推定される水への溶解度は4.2%(すなわち、42.56mg/mL)である。
(実施例3)
プロテアーゼに触媒されるシラノール反応
ウシの膵臓由来のトリプシンとα-キモトリプシンの非常に優れた活性に基づいて(表2)、プロテアーゼ酵素を標的触媒として同定した。従って、中性媒体(pH7.0)中でシロキサン結合を有する分子の形成(スキーム1)を触媒するそれらの能力を評価するために、一連のセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、及びメタロプロテアーゼを選択した。
コントロール反応と比較して、シロキサン縮合を触媒するための表3に詳述されているプロテアーゼの能力を、トリメチルシラノールを使用して評価した。比較すると、酵素に触媒される縮合試験において実施された最初の反応は6日間実施されたのに対して、この試験では3時間であった。
反応前に、ガラスバイアルをシリル化した。0.5mLの50mM Tris-HClで緩衝化されたMilli-Q水,pH7.0において、4:1のトリメチルシラノール(80mg):タンパク質(20mgのプロテアーゼ、BSA、若しくはγ-グロブリン)の重量比(~1000:1のシラノール:プロテアーゼのモル比)で前記反応を配合した。
水中のトリメチルシラノールの推定される溶解度に基づいて(42.56mg/mL)、トリメチルシラノール濃度(~160mg/mL)で水性媒体を飽和して、2相反応混合物を作製した。図4に記載されているように、反応生成物をGCによって単離及び定量分析した。分析前に、水性の反応物をNaClの存在下でTHFで2回抽出して、Whatman Autovial(登録商標)5 0.45μm Teflon(登録商標)フィルターを使用して濾過した。
トリプシンとα-キモトリプシンは、温和な条件下でトリメチルシラノールの縮合を好適に触媒した。中性媒体(pH7.0)を酵素的な触媒と化学的な触媒を区別するために使用した。触媒領域の特異性を考慮すると、前記プロテアーゼは基質選択性である。トリメチルシラノールを、単一のシロキサン結合を有する分子の形成における酵素の役割を試験するための典型的なシラノールとして選択した。特に、3つの起源のカテプシンLは前記縮合反応を触媒しなかった。対照的に、シリカテインはカテプシンLと相同性が高いことが実証されているが、シリカテインは粒子状シリカとシルセスキオキサンの形成を触媒した。酵素の活性は非天然の有機ケイ素基質の官能性に依存する。
前記原料と比較して、トリメチルシラノールの実質的な縮合はネガティブコントロール、非特異的なタンパク質(すなわち、BSA、γ-グロブリン)、小分子(すなわち、CaCl2、イミダゾール、N-メチルイミダゾール)、及びポリペプチド(すなわち、ポリ-L-リジン)の反応では認められなかった(図5)。前記タンパク質に加え、触媒的に活性なトリプシンの機能性に基づく非特異的な触媒を独立に評価するために小分子を選択した。カルシウムが最大のトリプシンの活性及び安定性に必要とされるために、トリプシンを塩化カルシウムで処理して良い。トリプシンの表面のアミノ機能性残基と類似の、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、及びポリ-L-リジンを中性媒体における塩基触媒作用の評価のために含んだ。同様に、BSAとポリ-L-リジンでは、水性媒体(pH6.8)におけるテトラエトキシシランの重縮合を触媒することが認められなかった。
(実施例4)
混入試験
アルギニン及びリジンのような塩基性残基の促進された選択性を考慮すると、塩酸N-α-p-トシル-L-リジンクロロメチルケトンは、α-キモトリプシンの活性に作用すること無くトリプシンの活性を選択的且つ不可逆的に阻害する。TLCKは触媒三連構造のヒスチジン残基をアルキル化することによってトリプシンを阻害する。TLCKを使用するα-キモトリプシンの処理後では、生成物の量が反復縮合実験において有意に減少した(図6)。
TLCKコントロール反応の生成物の量に基づくと(図6)、α-キモトリプシンはトリメチルシラノールの縮合反応を触媒しなかった。代替的に、不可逆的なキモトリプシンインヒビターであるN-トシル-L-フェニルアラニンクロロメチルケトンで処理したトリプシンはTLCK処理α-キモトリプシン実験を補完して使用された。フェニルアラニンのような疎水性残基に対するキモトリプシンの特異性に鑑みて、TPCKは触媒の三連構造におけるヒスチジン残基をアルキル化することによってキモトリプシンを阻害した。クロマトグラフィーの結果(図6)及びエラスターゼの不活性(図4)に基づいて、α-キモトリプシンと対照的にトリプシンがトリメチルシラノールの縮合を触媒することを決定した。更に、最初の酵素に触媒される縮合試験(表2)で認められたトリプシンとα-キモトリプシンの非常に優れた活性はトリプシンの混入によるものであった。
(実施例5)
トリプシンに触媒されるシラノールの縮合
反応前に、ガラスバイアルをシリル化した。反応生成物をGCによって単離及び定量分析した。分析の前に、水性反応物をNaClの存在下でTHFを使用して2回抽出して、Whatman Autovial(登録商標) 5 0.45μm Teflon(登録商標)フィルターを使用して濾過した。これらの試験において、コントロール反応は非酵素反応として規定する。具体的には、タンパク質の非存在下で実施される実験をネガティブコントロール反応として規定する。
タンパク質の阻害試験
典型的なシラノール縮合反応における酵素活性部位の役割を調べるためにタンパク質の阻害試験を実施した。具体的には、2つの明らかに異なる天然のダイズ由来のポリペプチドインヒビター:トリプシン-キモトリプシンインヒビター(すなわち、Bowman-Birkインヒビター、BBI)、及びダイズ由来のトリプシンインヒビター(すなわち、Kunitzダイズトリプシンインヒビター若しくはPopcornインヒビター、PCI)を使用して、トリプシンとα-キモトリプシンを阻害した。
ダイズインヒビターは、明確な阻害部位を有する非常に安定なタンパク質である。前記タンパク質のインヒビターは同一の起源に由来するが、アミノ酸配列、三次構造、及びポリペプチドの特性は異なる。BBI及びPCIのタンパク質は、71(Mw = 7,975)及び181(Mw = 21,700)アミノ酸をそれぞれ含有する。BBIは、トリプシンとキモトリプシンを選択的に阻害する2つの独立した領域を含有する。これらの領域の反応部位はLys16-Ser17-(トリプシン)及びLeu43-Ser44(キモトリプシン)と規定されている。前記阻害反応の動力学及び平衡は独立している。PCIはArg63-Ile64反応部位を使用する相互作用を介してトリプシンを選択的に阻害する。
反応の前に、トリメチルシラノールの添加前2時間、攪拌されている中性媒体(pH7.0)で前記酵素は過剰なインヒビター(すなわち、>1:1(w/w)、またはそれぞれ4:1のBBI:プロテアーゼ、及び2:1のPCI:プロテアーゼのモル比)で阻害した。前記反応は、4:1のモノマー:酵素の重量比(~1000:1のシラノール:プロテアーゼのモル比)で配合して、3時間、25℃で実施した。反応生成物はGCによって単離及び定量分析した(図7)。
標準的な酵素活性アッセイに基づいて、トリプシンはBBI(98%)及びPCI(91%)を使用して完全に阻害し、一方キモトリプシンはBBI(63%)を使用して部分的に阻害した。コントロール反応と比較して、タンパク質インヒビターはプロテアーゼに触媒される縮合反応を完全に阻害した。α-キモトリプシンがPCIによって阻害されたために、αキモトリプシン内のトリプシンの存在が確認された。更に、BBIを使用するα-キモトリプシンの部分的な阻害にもかかわらず、縮合反応が認められなかった。理論によってつなげることを望むわけではないが、トリプシンの三次構造、活性部位の官能性、及び触媒三連構造はin vitroにおけるトリメチルシラノールの縮合に直接的に関与するようである。
温度試験
トリプシンと前記酵素に触媒される縮合反応に対する温度の効果を試験した。反応の前に、サーモスタット水浴(+/- 0.1℃)中で設定の温度で20分間トリプシンの緩衝水溶液(pH7.0)を攪拌して平衡させた。前記反応は、4:1のモノマー:酵素の重量比(~1000:1のシラノール:トリプシンのモル比)で配合し、3時間、設定の温度で実施した。熱変性実験において、25℃の縮合反応の実施前に50mM Tris-HClで緩衝化したMilli-Q水(pH7.0)中で、トリプシンを3時間及び20分間煮沸した。反応生成物をGCによって単離及び定量分析した(図8)。
コントロール反応と比較して、トリプシンは広範な温度範囲に亘って触媒的に活性的のようである。前記反応の最適温度は約25℃であった。異なる時間(すなわち、20分、3時間)トリプシン溶液(40mg/mL)を煮沸した後に、トリプシンに触媒される縮合反応の速度は熱変性の度合いによって減少した。酵素反応の速度は温度によって上昇する可能性があるが、高温は変質のために水中でトリプシンを含む酵素を可逆的に変性し、不可逆的に不活性化することが報告されている。
反応速度は熱変性の度合いに依存したので、中性媒体(pH7.0)において濃度に応じて煮沸されたトリプシン溶液の活性を試験するために、天然の基質であるN-α-ベンゾイル-L-アルギニンエチルエステル(BAEE)を使用した。0.5mLの50mM Tris-HClで緩衝化されたMilli-Q水(pH7.0)において、異なる濃度のトリプシン(すなわち、2から40mg/mL)を調製した。N-α-ベンゾイル-L-アルギニンの形成による253nmの吸収の変化の記録による煮沸されたトリプシンの活性の測定前の20分間、前記溶液を煮沸した。分光光度法による活性のデータを図9に示す。
BAEEの加水分解の速度を測定したところ、煮沸されたトリプシン溶液の活性は増大された変性のためにより低い濃度で減少した。それと比較して、シラノール縮合の速度における相対的な減少(図8)はより高いタンパク質濃度のトリプシンの促進された安定性(図9)と相関する。熱重量分析に基づくと、トリプシンは室温から100℃で少量の損失(5%)、及び225℃で決定的な損失であった。熱プロフィールは物理的な変質の前の水の潜在的な損失に対応した。視覚的に、回収されたサンプルは有意に炭化していた。示差温度記録において、不可逆的な吸熱融解(Tm)が酵素の結晶または規則相のために40℃で認められた。理論によってつなげることを望むわけではないが、第2の熱サイクルの間に重複する吸熱融解の欠如によってトリプシンは不可逆的に変性したようである。
時間試験
トリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合を24時間に亘って25℃で試験した。個別に独立した反応は、中性媒体(pH7.0)に4:1のモノマー:酵素の重量比(~1000:1のシラノール:トリプシンのモル比)で配合して、24時間に亘る既定の時間で実施した。トリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合は25℃、3時間でほぼ完了した。前記縮合反応の化学量論に基づいて、トリメチルシラノールの2分子は、生成されるヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の各モルのために消費される(物質収支、図10)。一方、トリプシンに触媒される縮合反応の可逆性を、中性媒体(pH7.0)、並びに有機溶媒(トルエン)においてヘキサメチルジシロキサンを使用して試験した。クロマトグラフィーの結果でトリメチルシラノールが認められなかったため、トリプシンがいずれの媒体においてもシロキサン結合の加水分解を触媒することは認められなかった。微視的な可逆性の法則によって、トリプシンは理論的にシロキサン結合の加水分解を理論的には触媒するのであろうが、逆反応はこれらの条件下では誘導されない。
水中のトリメチルシラノールの推定される溶解度(42.56mg/mL)に基づいて、トリメチルシラノールの濃度(~160mg/mL)で水性媒体を飽和して、2相反応混合物を作製した。プロテアーゼは水溶性の基質とのみ相互作用するであろうために、トリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合は水相で実施することを必要とした。前記縮合反応は水中で実施したが、前記酵素に触媒される反応は生成物の相分離によって促進された。生成物であるヘキサメチルジシロキサンの非混和性は平衡を変化して、水の存在下における縮合反応を促進した。前記水性媒体はトリメチルシラノールによって飽和されていたため、前記反応物は、前記縮合反応の動的平衡のために水相に進入し続けるであろう。更に前記加水分解または逆反応は、水相における前記ジシロキサン生成物の非混和性のために厳しく阻害されるであろう。
時間例の間の縮合反応の速度
25℃でトリプシンによって触媒される反応の動力学を試験し始めたために、時間試験の間の縮合の速度を分析した。提案した反応の時間に依存しない化学量論に基づいて、縮合速度(V)(式1)及び理論速度(式2)の式を規定した。
V = -0.5*(δ[Me3SiOH]/δt) = 1*(δ[HMDS]/δt)(式1)
V = kR[Me3SiOH]α[トリプシン]β(式2)
式1において、縮合速度は、時間に伴う反応物または生成物の濃度(すわなち、[モル濃度]=モル/L)の変化として規定した(例えば、δ[HMDS]/δt)。式2において、実験的な速度定数(kR)と各反応物に関する部分的な反応次数(すなわち、α及びβ)を規定した。全体の反応次数は部分的な次数の合計(すなわち、α+β)である。トリプシンは縮合反応の間に消費されないために(すなわち、触媒)、その項は速度定数(kR')に含め、前記理論速度式(式2)を式3に規定されるように単純化した。一般的な速度式は式4として表される。
V = kR'[Me3SiOH]α, kR' = kR [トリプシン]β(式3)
V = -0.5*(δ[Me3SiOH]/δt) = kR'[Me3SiOH]α, α=1または2 (式4)
縮合反応の大部分の間に、前記溶液はトリメチルシラノールに飽和されているので、トリメチルシラノールの絶対量は事実上一定である可能性がある。トリメチルシラノールとトリプシン(触媒)の一定の濃度を考慮すると、これらの反応条件は0次の理論速度式を導くであろう(式2)。つまり、縮合速度はほぼ一定であろう。縮合またはHMDSの形成の最初(<3時間)と最後(>3時間)の速度は一定若しくは直線状であるため、データセットはこの評価を支持しているようである。トリプシンの濃度(すなわち、[Et] = [トリプシン] = 1.7mM)及び縮合速度(すなわち、V = -δ[Me3SiOH]/δt = 0.0064 M/m ~ 2δ[HMDS]/δt = 0.0072 M/m)に基づいて、酵素が基質に完全に飽和されている際の単位時間における代謝回転数(kcat) または酵素分子によって生成物に変化される基質分子の数の相対値は、25℃で1分当たり(m-1)に4.0反応若しくは一秒当たり(s-1)に0.066反応であると計算された。
水中のトリメチルシラノールの限られた溶解度のため、トリプシンが飽和されない可能性があるために、代謝回転数は相対値として取り扱った。相対的な代謝回転数が0.066s-1であることを考慮して、トリプシンに触媒される各縮合反応の時間は15sであると計算された。生理学的な基質に対する他の酵素の最大の代謝回転数と比較して、25℃におけるトリメチルシラノールのトリプシンに触媒される縮合の代謝回転数は比較の値とは桁違い(~10から10,000,000)に遅かった。例えば、トリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合の代謝回転数は、天然のキモトリプシンに触媒される加水分解反応の約1500倍遅かった。
(実施例6)
モノマー:酵素のモル比の評価
トリメチルシラノールの縮合速度をモノマー:酵素のモル比に応じて試験した。前記モル比は、緩衝化した水(pH7.0)において一定量のトリメチルシラノール(160mg/mL)とトリプシンの変化する量(2から198mg/mL)で配合した。閉じた(ねじ蓋した)反応を3時間、攪拌しながら25℃で実施した。反応生成物をGCによって単離及び定量分析した(図11)。
クロマトグラフィーの結果に基づいて、反応速度がトリプシンの量に依存することを決定した。更に、トリプシンの希釈濃度(すなわち、<20mg/ml)における自己分解の可能性があるため、これらの実験的な変数の間の相互作用が複雑になった。希釈トリプシン溶液の減少される安定性を考慮して(図12)、1000:1のモノマー:酵素のモル比を、縮合試験の間を通じて40mg/mLのトリプシン溶液で配合した。
前記反応を一定濃度のトリメチルシラノールで実施したため、単純化した理論速度式(式5)を使用して、トリプシンに関する部分的な反応次数の事前の評価を実施した。トリプシンに関する部分的な反応次数が一次(β=1)であれば、縮合速度(V):トリプシンの濃度の比は一定値であろう(式6)。
V = kR'[トリプシン]β, kR' = kR[Me3SiOH]α (式5)
kR' = V/[トリプシン]1 (式6)
前記縮合反応は一定の時間実施したため(すなわち、3時間)、形成されるヘキサメチルジシロキサンの量(μモル)は縮合速度に関連するであろう(すなわちV = [HMDS]3時間)。クロマトグラフィーの結果を再考すると、計算されたヘキサメチルジシロキサン:トリプシンのモル比は実際にほぼ一定であった。つまり、縮合速度はトリプシンの濃度に対して正比例するのであろう(理論的な黒線、図11)。
認められたように、10倍トリプシンの量を減少すると、生成物の量が10倍減少した。この実験結果は、中性媒体でのトリメチルシラノールの縮合における触媒としてのトリプシンの役割、及び反応が単純な酵素-基質中間体を介して進行することを支持する。
(実施例7)
トリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの非飽和溶液の縮合の動力学試験
プロテアーゼは水溶性の基質にのみ相互作用するため、トリメチルシラノールの濃度を減少して(<42.56mg/mL)、非飽和媒体中のモノマー濃度に応じて縮合速度を試験した。トリメチルシラノールの量(~10から40mg/mL、~60から222μモル)を調節して、40mg/mLのトリプシンの中性(pH7.0)溶液に均質な溶液を作製した。前記反応は攪拌しながら25℃及び15℃で実施した。独立した反応の停止後、反応生成物を1時間半に亘って15分毎にGCによって単離及び定量分析した。
差動法を使用して、トリメチルシラノールに関する部分的な反応次数を決定した。理論速度式(式3)の対数を計算して、その傾き(α)がトリメチルシラノールに関する部分的な反応次数と等しい直線的な式(式7)を導いた。
Log(V) = αLog[Me3SiOH] + Log(kR')(式7)
25℃(α=0.9)と15℃(α=1.0)におけるLog(V)に対するLog[Me3SiOH]のプロット後に、トリメチルシラノールに関する部分的な反応次数は一次であると推定された。トリメチルシラノールの反応速度の差の式のプロットは直線状であった。相関係数(R2)の値は各々94%と98%であった。反応速度は、40mg/mLのトリプシンの中性(pH7.0)溶液におけるトリメチルシラノールの可溶性の量に依存して直線状であることを決定したため、反応はトリメチルシラノールに関して一次であろう。加水分解されるので、縮合速度がトリメチルシラノールとトリプシンの双方の濃度に比例するようである。
更に、Lineweaver-Burk式を使用してトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合の能力を試験し、Michaelis-Menten動力学モデルに適合した。25℃と15℃の時間試験で得られたクロマトグラフィーのデータセットは直線状のLineweaver-Burkプロットを生じさせた。実験的なLineweaver-Burkプロットの直線状の式に基づいて、相対的なMichaelis定数(Km)及び最大速度(Vmax)の値を計算した(表4)。
Michaelis-Menten動力学値は相対的であるが、大きなKm値は酵素-基質中間体の結合力が弱いことを示す。それと比較して、これらのKm値は、他の酵素のKm値よりも桁違いに(すなわち、~1,000から25,000,000)大きかった。例えば、25℃でのトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合の相対Km値は、キモトリプシンに触媒されるアセチル-L-トリプトファンアミドの加水分解に比べて約1200倍大きかった。
相対Km値は大きく、Vmax値は遅いため、トリプシン-シラノール中間体の形成が前記縮合反応の律速段階であろう。これは、トリプシンが水性媒体においてトリメチルシラノールで飽和されていなかったことと一致する。そのため、トリプシン-シラノール中間体の縮合または加水分解の速度は酵素中間体の形成よりも速いに違いない。
シラノール縮合反応の化学量論と縮合の速度に基づいて、トリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合は、アミド及びエステル結合のタンパク質分解性の加水分解と類似の反応機構(図13)を有すると仮定した。触媒三連構造の電荷リレーシステムによって活性化及び安定化されて、セリンの親核性酸素原子はトリメチルシラノールの電気陽性のケイ素原子を攻撃すると推定した。アシル-酵素複合体に相当するシリル化トリプシン中間体は、水の損失にしたがって形成されるであろう。更に、ヒスチジンの窒素原子は中間体のケイ素原子と安定な五配位の種を形成するであろう。速度平衡、並びに大きな相対Km及び遅いVmax値に基づくと、トリプシン-シラノール中間体の形成が律速段階であろう。これは、有機ケイ素分子が類似の炭化水素トリプシン基質よりも大きいことと一致する。続いて、シリル化トリプシン中間体は、各々ヘキサメチルジシロキサン(生成物)またはトリメチルシラノール(反応物)の形成を誘導するトリメチルシラノールまたは水との縮合反応または加水分解反応のいずれかに関与する可能性がある。トリプシンが水性媒体においてトリメチルシラノールに飽和されていなかったため、トリプシン-シラノール中間体の縮合または加水分解の速度は酵素中間体の形成よりも速いに違いない。ともかく、トリプシンはいずれかの反応の完了時に回収されるであろう。
(実施例8)
トリプシンpH試験
天然では、トリプシンに触媒される加水分解に最適なpHは約8である。しかしながら、これは種に依存する。天然の基質(BAEE)を使用して測定して、異なる起源のトリプシンの活性をpHに応じて試験した(図14)。
分光学的なデータに基づくと、pHに応じた組換え酵素を含む哺乳動物のトリプシンの活性のプロフィールは同様であった。哺乳動物起源のウシトリプシンはpH7.0で最も高い活性を有することが認められた。それと比較して、Gadus morhua(すなわち、大西洋タラ)トリプシンの最適pHは、より酸性のようであった。カルシウムはトリプシンの最大の活性及び安定性を達成するために必要とされたため、相対的な活性における違いはカルシウムの変量のためである可能性がある。誘導結合プラズマ原子発光分析に基づいて、市販のトリプシンに存在するカルシウムの量が非常に異なることが示された。
トリプシンのカルシウムによる活性化は酵素の三次構造の変化を誘導する。具体的には、カルシウムは、増大されたへリックスの量若しくは変化されたβ構造による緊密な構造を作製する。立体構造の変化は、実証されている増大された酵素活性及び熱安定性に関与すると推定されている。トリプシンの活性は>10mM(理想的には20mMまたは400mM)のカルシウム存在下で最適であるため、ウシ膵臓トリプシンと比較して、ブタ膵臓及び組換えウシトリプシンにおける減少されたカルシウム量はそれらの活性に相関する。
続いて、トリメチルシラノール縮合反応を触媒するウシ膵臓トリプシンの能力をpHに応じて試験した。前記反応は、pH4.0からpH10.0に緩衝化した水性媒体において4:1のモノマー:トリプシンの重量比(~1000:1のシラノール:トリプシンのモル比)で配合し、3時間、25℃で実施した。反応生成物はGCによって単離及び定量分析した(図15)。クロマトフラフィーのデータに基づくと、前記酵素に触媒される縮合反応はpHに依存した。前記シラノール縮合反応はpH7.0で最適であった。それと比較して、酸性及び塩基性触媒されるシラノール縮合反応はネガティブコントロール反応において認められた;主に、pHが4未満及び10より大きい値(図15)。
pH7より上で活性を示す、BAEEを使用して測定された天然の加水分解活性プロフィールを考慮して(図14)、pH>7.0で減少される生成量が更に調べられた。BAEEの加水分解速度で測定して、pH7.0からpH9.0に緩衝化されている水性媒体中のトリメチルシラノールを使用して実施される縮合反応の開始時(t = 5分)と終了時(t = 3時間)にウシ膵臓トリプシンの活性を分析した。分光分析の活性データを図16に示す。
天然のpH活性プロフィール(ウシトリプシン、図16)と比較して、トリメチルシラノールは塩基性に緩衝化した水(pH7.5からpH9.0)において、ほぼ急速にトリプシンを部分的に阻害する(>50%)。トリメチルシラノールは中性媒体(pH7.0)でトリプシンを阻害しなかったが、反応物の阻害は水溶液の塩基性で50から65%まで増大した。トリプシンはトリメチルシラノールの存在下で変性されなかったため、塩基性媒体における加水分解(BAEE、図16)及び縮合(トリメチルシラノール、図15)の反応の阻害は、触媒領域の他のヒドロキシ官能基のシリル化のためであると推定した。これは、トリプシンの活性部位への接近及び活性を直接的または間接的に減少するであろう。pHが減少するにつれて、これらの種は加水分解する傾向のようであり(酸加水分解)、前記活性部位がトリプシンの触媒作用に関与することを可能にするであろう。逆に、高いpHの値では、シリル化酵素の長い寿命がBAEEの加水分解とトリメチルシラノールの縮合の双方を阻害するであろう。これらの結果は、in vitroでのトリメチルシラノールの縮合における触媒としてのトリプシンの活性部位の役割を更に支持する。
(実施例9)
トリプシンに触媒されるトリメチルエトキシシランの加水分解及び縮合
単一のシロキサン結合を有する分子の形成におけるトリプシンの役割を、典型的なアルコキシランであるトリメチルエトキシシランのin vitroでの加水分解及び縮合の間で試験した。
反応前に、残存するクロロ官能性シランの潜在的な存在のため、アルコキシシランを炭酸水素ナトリウムで事前処理した。前記反応は、中性媒体(pH7.0)において4:1のトリメチルエトキシシラン:タンパク質の重量比(~1000:1のアルコキシシラン:トリプシンのモル比)で配合し、3時間、25℃で実施した。水中のトリメチルエトキシシランの推定される溶解度に基づいて、トリメチルエトキシシランの濃度(~160mg/mL)で水性媒体を飽和して2相反応混合物を作製した。反応生成物はGCで単離及び定量分析した(図17)。
様々な加水分解速度が認められたが、前記原料と比較して、ネガティブコントロール、非特異的タンパク質(すなわち、BSA、γ-グロブリン)、小分子(すなわち、CaCl2、イミダゾール、N-メチルイミダゾール)、及びポリペプチド(すなわち、ポリ-L-リジン)反応では、トリメチルエトキシシランの実質的な縮合は認められなかった。BSA及びポリ-L-リジンではテトラエトキシシランまたはトリメチルエトキシシランの縮合の触媒が認められなかったが(図17)、BSA及びポリ-L-リジンは中性媒体(pH7.0)において異なる速度でトリメチルエトキシシランの加水分解及びトリメチルシラノールの形成を促進した。
トリプシンの存在下では、3時間に亘る25℃での中性媒体(pH7.0)におけるヘキサメチルジシロキサンの形成の間に、トリメチルエトキシシランは加水分解され(100%)、縮合された(84%)(図17)。相対的な縮合速度は<25℃の温度で減少するため (図8)、3時間に亘る既定の時間において10℃でトリメチルエトキシシラン反応の時間試験を実施した。反応生成物はGCで単離及び定量分析した(図18)。
加水分解反応と縮合反応の化学量論に基づいて、1モルのヘキサメチルジシロキサンを生成する2モルのトリメチルシラノールの形成において、2モルのトリメチルエトキシシランが消費された(物質収支、図18)。10℃でトリプシンに触媒される加水分解反応及び縮合反応の動力学を試験するため、時間試験の間で得られたクロマトグラフィーのデータを分析した。比較すると、トリメチルエトキシシランは最初の30分以内に容易に加水分解され、続いてヘキサメチルジシロキサンの形成の間に縮合された。
加水分解反応及び縮合反応における、反応物に関する部分的な反応次数、並びに代謝回転数(kcat)を計算した。水中のトリメチルエトキシシランの限られた溶解度のためにトリプシンは飽和されていない可能性があるので、前記代謝回転数は相対値として取り扱った。相対的な代謝回転数が0.53s-1であったことを考慮すると、10℃でトリプシンに触媒される各加水分解反応の間の時間は約2秒であり、または1分間あたり30反応であると計算された。これはリソザイムの最大の代謝回転数と同程度であるが、10℃でのトリプシンに触媒されるトリメチルエトキシシランの加水分解は、キモトリプシンに触媒される加水分解反応よりも約200倍遅かった。相対的な代謝回転数が0.048s-1に相当することを考慮すると、10℃でのトリプシンに触媒される縮合反応の間の時間は約20秒であり、または1分あたり3反応であると計算された。
相対的な代謝回転数に基づくと、10℃でのトリプシンに触媒されるトリメチルエトキシシランの加水分解の速度(0.53s-1)は、トリメチルシラノールの縮合(0.048s-1)より一桁(10倍)速かった(図19)。それと比較して、25℃でのトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合速度(kcat = 0.066s-1)は10℃で実施される反応より約38%速かった。
(実施例10)
アルコキシシラン試験
トリプシンはシロキサン結合の形成を触媒したため、代替的な単官能性アルコキシシランを基質として選択して、温和な条件でin vitroでの有機官能性アルコキシシランの加水分解及び縮合を選択的に触媒するトリプシンの能力を調べた。まず、比較的極性(すなわち、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル)及び非極性(すなわち、ヘキサノール)の脱離基を有する2つの更なるトリメチルアルコキシシランを選択して、中性媒体(pH7.0)における反応物の溶解度に応じたトリプシンの活性を試験した。
2相反応は、4:1のモノマー:酵素の重量比(> 400:1のアルコキシシラン:トリプシンのモル比)で配合し、3時間、25℃で実施した。反応生成物はGCで単離及び定量分析した(図20)。比較すると、グリコール官能性シランは、水中でトリメチルヘクソキシシランよりも混和性のようである。クロマトグラフィーの結果に基づくと、トリプシンは縮合せずにトリメチルヘクソキシシランの部分的な加水分解を触媒した。グリコール官能性シランの加水分解におけるトリプシンの役割は決定的ではないが、トリプシンは生成物であるトリメチルシラノールの縮合を触媒した。3時間の反応の間の異なる加水分解反応及び縮合反応の相対的な速度はわからなかった。
続いて、4つの有機官能性アルコキシランを選択して、基質との異なる立体的及び電気的な相互作用に由来してどのようにトリプシンの活性が変化するか試験した。前記4つの有機官能性アルコキシシランはフェニルジメチルエトキシシラン(PhMe2SiOEt)、トリフェニルエトキシシラン(Ph3SiOEt)、3-グリシドオキシプロピルジメチルエトキシシラン((エポキシ)Me2SiOEt)、及びアミノプロピルジメチルエトキシシラン((H2N(CH2)3)Me2SiOEt)である。
2相反応は、4:1のモノマー:酵素の重量比(>300:1のアルコキシシラン:トリプシンのモル比)で配合し、3時間、25℃で実施した。反応生成物はGCで単離及び定量分析した(図21)。クロマトグラフィーの結果に基づくと、トリプシンは、トリメチルシロキサン及び3-グリシドオキシプロピルジメチルエトキシシランの加水分解及び縮合を好適に触媒することが認められた。それと比較して、トリプシンの存在下で、フェニルジメチルエトキシシランは縮合されないが加水分解され、一方トリフェニルエトキシシランは加水分解も縮合もされなかった。トリプシンの触媒領域内の結合ドメインの実証されている特徴を考慮すると、酵素活性における減少はフェニル官能性基質の増大された疎水性と立体的なかさ高さのためのようである。塩基性残基に関するトリプシンの親和性にもかかわらず、アミノプロピルジメチルエトキシシランはトリプシンの存在下及び非存在下で完全に加水分解及び縮合された。塩基性アミノ官能性アルコキシシランはジシロキサン生成物の形成を触媒し、第一級アミンとの配位外(extra-coordinate)中間体によって安定化された。
代替的に、環状構造を有する2つのケイ素官能性分子を選択して、Si-O結合の開裂及び形成を触媒するトリプシンの能力を更に調べた。2相反応を4:1のモノマー:酵素の重量比で配合し、3時間、25℃で実施した(スキーム2から3)。反応生成物はGCで単離及び定量分析した(図22)。
クロマトグラフィーの結果に基づくと、トリプシンは、カルビノール-官能性ジシロキサンの形成(スキーム2)の間に1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキサシクロヘキサンの開環加水分解、及びヒドロキシブチルジメチルシラノールの縮合を触媒した。トリプシンはヘプタメチルヒドロキシテトラシクロシロキサンの縮合を触媒しなかった。それらの環状構造にもかかわらず、これらの有機ケイ素分子、及び結果として生じる中間体、及び生成物は異なった。比較すると、前記環状シロキサンは環状アルコキシシランより立体的に大きい。塩基性残基が類似しており(スキーム4)、トリプシンの触媒領域の結合ドメイン内のアスパラギン酸残基と水素結合できるため、カルビノール官能性シラノール中間体は許容可能な基質であると推定した。
コントロール反応と比較すると、報告されているように、トリプシンはpH6.8で水性媒体においてケイ酸前駆体であるテトラエトキシシランの重縮合を触媒しなかった。この試験では、4:1のモノマー:酵素の重量比で配合して3時間、25℃で実施して繰り返した反応において反応生成物が認められなかった。具体的には、トリプシンは3時間の反応の間にテトラエトキシシランを加水分解または縮合しなかった。それと比較して、7日間の反応後には、シリカとトリプシンを含有する固形の構造物の形成の間にテトラエトキシシランの重縮合をトリプシンが触媒することが認められた。この試験では、テトラエトキシシランの重縮合におけるトリプシンの活性部位の役割は決定的でなかった。検討すると、トリプシンが温和な条件下で有機官能性アルコキシシランの加水分解と縮合とを選択的に触媒することが認められた。
(実施例11)
タンパク質阻害試験
トリエチルエトキシシランの加水分解及び縮合における酵素の活性部位の役割を調べるために、タンパク質阻害試験を実施した。反応前に、2時間、攪拌された中性媒体(pH7.0)中で、過剰量のBowman-Birkインヒビター(4:1のBBI:トリプシンのモル比)及びPopcornインヒビター(2:1のPCI:トリプシンのモル比)を使用して、トリプシンを独立に阻害した。標準の酵素活性アッセイに基づいて、トリプシンをBBI(98%)及びPCI(91%)によって完全に阻害した。前記反応は、4:1のモノマー:酵素の重量比(~1000:1のトリメチルエトキシシラン:トリプシンのモル比)で配合し、3時間、25℃で実施した。反応生成物はGCで単離及び定量分析した(図23)。
処理された酵素がトリメチルエトキシシランの加水分解を触媒することは認められたが、コントロール反応と比較して、トリメチルシラノールの縮合は完全に阻害された。特に、BBI阻害トリプシン(24%)及びPCI阻害トリプシン(6%)の存在下では、加水分解の割合が減少した。熱変性後では、トリプシンの活性はタンパク質の阻害実験及び前述の変性実験と同等であった。従って、活性部位を含む、トリプシンとの非特異的な相互作用がトリメチルエトキシシランの加水分解を促進するようであった。しかしながら、トリプシンの活性部位は、in vitroにおける温和な条件下でのトリメチルシラノールの縮合を選択的に触媒することを決定した。
(実施例12)
異なる起源のトリプシンを使用するトリメチルエトキシシランの加水分解及び縮合
各種の起源(例えば、哺乳動物、魚)のトリプシンは類似(例えば、三次構造)しているが、それらの選択性及び活性は異なる可能性がある。従って、トリメチルエトキシシランの加水分解とトリメチルシラノールの縮合を触媒する、ブタ膵臓、Gadus morhua(すなわち、大西洋タラ)、及び組換えウシトリプシンの能力を25℃、中性媒体(pH7.0)中で評価した。pHがこれらの異なる起源のトリプシンに最適でない可能性があったが、中性のpHは酸及び塩基に触媒される加水分解及び縮合を最小にするため使用した。反応生成物はGCによって単離及び定量分析した(図24)。
クロマトグラフィーの結果に基づいて、大西洋タラ(すなわち、魚)とは対照的に、ブタ膵臓由来のトリプシン(すなわち、哺乳動物)は加水分解及び縮合反応を触媒することが認められた。天然の基質を使用して測定されたpHプロフィール(図14)と同様に、中性媒体(pH7.0)において、ウシ膵臓由来のトリプシンの活性は組換え酵素を含む代替的な起源のトリプシンよりも大きかった。大西洋タラ由来のトリプシンの不活性はpHのためであるようであった(図14)。トリプシンの最大の活性及び安定性を達成するために、カルシウムが必要であるため、これらの測定結果は異なる最適pH範囲及び/またはカルシウムレベルのためである可能性があった。
トリプシンのカルシウムによる活性化は、酵素の三次構造における変化を誘導する。トリプシンの活性は>10mMのカルシウムの存在下において最適であるため、トリメチルシラノールの縮合を触媒するトリプシンの能力を20mM CaCl2を含有する中性媒体(pH7.0)において試験した。前記反応を、4:1のモノマー:酵素の重量比(~1000:1のシラノール:トリプシンのモル比)で配合し、3時間、25℃で実施した。反応生成物はGCで単離及び定量分析した(図25)。
本来の起源のトリプシンと比較して、組換えウシ及びブタ膵臓トリプシンに触媒された反応量によって測定された活性は、各々65%及び125%増大していた。それと比較して、ウシ膵臓及び大西洋タラトリプシンに触媒された反応は変化しなかった。塩化カルシウムの非存在下で(図24)、ブタ膵臓及び組換えウシトリプシンはトリメチルシラノールの形成の間にトリメチルエトキシシランの加水分解を完全に触媒した。塩化カルシウムの存在下でブタ膵臓及び組換えウシトリプシンの増大された活性が、触媒領域の三次構造がin vitroのトリメチルシラノールの縮合に直接関与するという間接的な証拠を提供した。前記加水分解及び縮合反応量に基づくと、市販のウシ膵臓トリプシン(すなわち、886ppm Ca)は中性媒体(pH7.0)で最適であるようであった。それと比較して、20mM 塩化カルシウムの潜在的な効果は、市販の大西洋タラトリプシンにおける2.1%カルシウムの存在下では無視できた。同様な三次構造にもかかわらず、トリプシンの起源の基質選択性及び活性は異なるようであった。
(実施例13)
ケイ素に基づくモノマーの酵素に触媒される重縮合及び開環重合
ケイ素に基づくモノマーのin vitroにおける重縮合及び開環重合の間のシロキサン結合の形成を触媒するトリプシンの能力を温和な条件下で探索した。
トリプシンに触媒されるメチルトリエトキシシランの重縮合
典型的なシロキサン重合反応におけるトリプシンの触媒の役割を考慮して、温和な条件下の3官能性アルコキシシランであるメチルトリエトキシシランの重縮合における触媒としてトリプシンを使用した。前記反応を、中性媒体(pH7.0)において4:1のメチルトリエトキシシラン(0.091g、511μmol、3.25mmolのSi):トリプシン(0.022g、0.9μmol)の重量比(~550モノマー:酵素のモル比)で、7日間、25℃で実施した(スキーム5)。
個体及び液体反応生成物を単離し、赤外分光法、顕微鏡、及び質量分析技術をによって選択的に特性決定した。
トリプシン及び固体の反応生成物の拡散反射赤外フーリエ変換スペクトルに基づいて、単離した固体がメチルシルセスキオキサン樹脂とトリプシンの混合物を含む複合物質であることを決定した。比較すると、メチルシルセスキオキサン樹脂のスペクトルピークがトリプシンで得られるコントロールスペクトルの存在下で認められた。具体的には、対称的なメチルの変形(MeSiO3/2、1270cm-1付近)、シロキサン非対称伸縮(SiOSi、1000-1130cm-1付近)、並びに非対称メチル振動とケイ素-炭素伸縮(MeSiO3/2、778cm-1付近)を、トリプシンに関連するスペクトルピークの存在下で認めた。前記固体は約200μmから1.5mmのサイズの範囲の粘性の塊を含有することが認められた。前記塊の粒子の粗い表面はサブミクロンの円形粒子から構成された。エネルギー分散分光(SEM-EDS)分析に基づいて、前記粒子の表面がケイ素、酸素、炭素、及び硫黄を含有することを決定した。これらの成分はメチルシルセスキオキサンとトリプシンの官能性と一致する。前記表面は抽出方法における塩(NaCl)の使用のためにナトリウムと塩素も含有した。重縮合反応のケイ素(Si)化学量論に基づいて、トリプシンに触媒される重縮合反応は12%の固体(0.011g、0.39mmol Si)を生じた。それと比較して、ネガティブコントロール反応において個体の沈殿物は認められなかった。
液体反応生成物を単離して、エレクトロスプレーイオン化質量分析器(ESI MS)によって特性決定した。メチルトリエトキシシランはスペクトル結果において認められなかったが、メチルトリエトキシシランの実質的な加水分解と縮合はトリプシンの非存在下では認められなかった。主に、エトキシ官能性低分子量オリゴマー(例えば、二量体、三量体、四量体)、及び環状シロキサンがESI MSスペクトルにおいて観察された。ネガティブコントロール反応と比較して、トリプシンは完全な加水分解を促進し、続いてメチルトリエトキシシランの縮合を促進した。直鎖状、環状、及び分枝状のシロキサン分子の分散物が完全にヒドロキシル化された。トリプシンはアルコキシ官能性ケイ素の加水分解を促進したが、これらの分子の重縮合におけるトリプシンの活性部位の役割は、この試験では決定的ではなかった。
ESI MSの結果は定性的であるが、固体相と液体相における反応生成物は重縮合反応を完全に詳述している。トリプシンの存在下で凝集したシルセスキオキサンの沈殿前の、メチルトリエトキシシランの重縮合の間の直鎖状、環状、及び分枝状のオリゴマーの形成はシリカの重合の挙動に類似していた。
トリプシンに触媒される環状シロキサンの開環重合
環状シロキサンの開環重合の間のSi-O結合の開裂及び形成を触媒するトリプシンの能力を温和な条件下で探索した。具体的には、5つの環状シロキサン;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルトリ(トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、テトラメチルテトラ(トリフルオロプロピル)シクロテトラシロキサン、及びテトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサンを選択して、基質との異なる立体的及び電気的な相互作用の結果として、どのようにトリプシンの活性が変化するかを試験した。
2相反応を、4:1のモノマー:酵素の重量比で配合し、8日間、中性媒体(pH7.0)において25℃で実施した。反応生成物をGCで単離及び定量分析した(表5)。
クロマトグラフィーのデータに基づいて、トリプシンは環状シロキサンの結合の加水分解を触媒することが認められなかった。過去に報告されているように、トリプシンは25℃、中性媒体(pH7.0)においてヘキサメチルジシロキサンを加水分解できなかった。プロテアーゼは水溶性の基質とのみ相互作用するであろうために、水相中のシクロシロキサンの非混和性によって前記加水分解反応は厳しく妨害される。トリプシンは微視的可逆性の法則のためにシロキサン結合の加水分解を理論的には触媒するであろうが、逆反応は促進されなかった。
(実施例14)
クチナーゼに触媒されるトリメチルシラノールの縮合
in vitroにおけるトリメチルシラノールの縮合の間の単一のシロキサン結合を有する分子の形成に焦点を当てるために、単官能性のシランを選択して、典型的な試験を実施した(スキーム6)。生触媒反応を、~10:1の溶媒:モノマーの重量比で50mM Tris-HClで緩衝化したMilli-Q水(pH7.0)において、5:1のトリメチルシラノール:タンパク質の重量比(すなわち、~1,300:1のトリメチルシラノール:クチナーゼのモル比、0.3μmolのクチナーゼ)で配合した。14時間、攪拌しながら25℃で不活性なガラスバイアルにおいて、閉じた(ねじ蓋した)2相反応を実施した。具体的には、前記反応はシリル化ガラス器具において実施した。シラノール官能性ガラス表面はトリメチルシラノールと反応するであろうため、不活性ガラス表面を作製するためにシリル化ガラス器具が必要であった。分析前に、水性反応物をNaClの存在下でTHFを使用して抽出し、Whatman Autovial(登録商標)5 0.45μm Teflon(登録商標)フィルターを使用して濾過した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー炎イオン化検出(GC-FID)によって定量分析した(図26)。
この試験では、コントロール反応を非酵素反応として規定した。タンパク質の非存在下で実施される実験をネガティブコントロール反応として規定した。ウシ血清アルブミン(BSA)及びブタγ-グロブリン(グロブリン)のようなタンパク質分子を使用して、非特異的なタンパク質の触媒を試験した。原料と比較すると(トリメチルシラノール、Me3SiOH)、ネガティブコントロール及び非特異的なタンパク質の反応において、トリメチルシラノールの実質的な縮合が認められなかった。検討すると、温和な条件下で、クチナーゼがヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の形成の間にトリメチルシラノールの縮合を触媒した。縮合反応は水中で実施したが、生成物の相分離によって前記酵素反応は促進された。生成物であるヘキサメチルジシロキサンの非混和性が平衡を変化させ、水中の縮合反応を促進した。水性媒体はトリメチルシラノールで飽和されていたため(すなわち、2相反応混合物)、前記縮合反応の動的平衡によって前記反応物は水相に進入し続けるであろう。
(実施例15)
クチナーゼに触媒されるジメチルジメトキシシランの加水分解及び縮合
ジメチルジメトキシシラン(DMDM)を典型的な基質として選択して、温和な条件下での多官能性のアルコキシシランのin vitroにおける加水分解及び縮合を触媒するクチナーゼの能力を調べた(スキーム7)。温和な反応条件(すなわち、低い温度、中性のpH)は、反応混合物におけるシラノールの増大された濃度による化学的に触媒される縮合を最小にする。生触媒反応は、~60%の体積効率で50mM Tris-HClで緩衝化したMilli-Q水(pH7.0)において、~10:1のアルコキシシラン:クチナーゼの重量比(すなわち、~1,800:1のDMDM:クチナーゼのモル比、~5μmolのクチナーゼ)で最初に配合した。体積効率は、前記反応における液体の総重量(すなわち、DMDM+水)の割合として測定される重量%モノマーとして規定した。24時間、攪拌しながら25℃で不活性のガラスバイアルにおいて閉じた(ねじ蓋した)2相反応を実施した。具体的には、前記反応をシリル化ガラス器具において実施した。シラノール官能性ガラス表面は本試験においてアルコキシシランと反応するであろうため、不活性ガラス表面を作製するために前記シリル化ガラス器具が必要であった。分析前に、水性反応物をNaClの存在下でTHFを使用して抽出し、Whatman Autovial(登録商標)5 0.45μmTeflon(登録商標)フィルターを使用して濾過した。反応物をGC-FIDによって定量分析した(すなわち、面積割合、表6)。
検討すると(表6)、~5μmolのクチナーゼに触媒された重縮合度は、24時間に亘ってクチナーゼの非存在下で実施されたネガティブコントロール反応よりも有意に大きくは無かった。したがって、クチナーゼに触媒される重縮合反応を増大した酵素の量で(すなわち、~500:1のDMDM:クチナーゼのモル比、~20μmolクチナーゼ)、より長い時間(5日)に亘って繰り返した。2つの酵素濃度(20μmol、5μmol)で長期間(5日、24時間)に亘って得られた重縮合度に基づいて、クチナーゼがDMDMの加水分解及び縮合を触媒することを認めた(表7)。縮合反応は水中で実施したが、前記酵素に触媒される反応は生成物の相分離によって促進された。水中のDMDMの推定される溶解度(~32mg/mL)に基づいて、DMDM(~1500mg/mL)の濃度で水性媒体を飽和して、2相反応混合物を作製した。直鎖状のシロキサン分子の鎖長が増大、または環状シロキサンが形成されると、これらの分子の相は有機相に分離される。
(実施例16)
トリプシンに触媒されるジエチルジエトキシゲルマニウムの加水分解及び縮合
ジエチルジエトキシゲルマニウムを代替的な基質として選択して、温和な条件下におけるアルコキシ官能性ゲルマニウム分子のin vitroでの加水分解及び縮合を触媒するウシ膵臓トリプシンの能力を調べた。温和な反応条件(すなわち、低温度、中性のpH)は反応混合物におけるヒドロキシ基の増大した濃度による化学的に触媒される縮合を最小にする。反応を、~5:1の溶媒:モノマーの重量比で50mM Tris-HClに緩衝化されたMilli-Q水(pH7.0)において、~5:1のモノマー:酵素の重量比(すなわち、~500:1のジエチルジエトキシゲルマニウム:トリプシンのモル比、~1μmolのトリプシン)で配合し、24時間、攪拌しながら25℃で不活性なガラスバイアルにおいて閉じた(ねじ蓋した)反応を実施した。具体的には、前記反応をシリル化ガラス器具において実施した。シラノール官能性ガラス表面は前記モノマーと反応するであろうため、不活性なガラス表面を作製するためにシリル化ガラス器具を必要とした。分析前に、水性反応物をNaClの存在下でTHFを使用して抽出し、Whatman Autovial(登録商標)5 0.45μm Teflon(登録商標)フィルターを使用して濾過した。反応生成物をガスクロマトグラフィー質量分析器(GC-MS)及びエレクトロスプレーイオン化質量分析器(ESI MS)によって分析した。酵素の非存在下で実施したネガティブコントロール反応と比較して、トリプシンはヘキサエチルシクロトリゲロキサン(hexaethylcyclotrigeroxane),[Et2GeO]3(Et = CH2CH3)の形成の間にジエチルジエトキシゲルマニウムの加水分解及び縮合を触媒することを認めた。
図1はトリプシノーゲンの一次構造を示す。 図2はトリプシノーゲンの活性化を示す。 図3はトリメチルエトキシシランのネガティブコントロール反応のGC-FIDクロマトグラムを示す。 図4は3時間後のプロテアーゼに触媒される縮合試験を示す。 図5は3時間後の縮合コントロール反応を示す。 図6はα-キモトリプシン及びトリプシンの混入試験を示す。 図7はトリメチルシラノールの縮合のタンパク質阻害を示す。 図8はトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合に対する温度の効果を示す。 図9はトリプシンの濃度に応じた中性媒体におけるトリプシンの熱変性試験を示す。 図10は25℃でトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合を示す。 図11は飽和トリメチルシラノール:トリプシンのモル比の試験を示す。 図12は25℃でのトリプシンの自己分解を示す。 図13はトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合の提案した反応機構を示す。 図14は異なるトリプシンの種の活性のpH試験を示す。 図15はトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの縮合に対するpHの効果を示す。 図16はトリプシンの活性に対するトリメチルシラノール及びpHの効果を示す。 図17は3時間後の加水分解及び縮合のコントロール反応を示す。 図18は10℃におけるトリプシンに触媒されるトリメチルエトキシシランの加水分解及び縮合を示す。 図19は10℃におけるトリプシンに触媒されるトリメチルエトキシシランの加水分解及びトリメチルシラノールの縮合の代謝回転数を示す。 図20はトリプシンに触媒されるトリメチルアルコキシシランの加水分解及び縮合を示す。 図21はトリプシンに触媒されるエトキシシランの加水分解及び縮合を示す。 図22はトリプシンに触媒される1,1-ジメチル-1-シラ-2-オキサシクロヘキサンの加水分解及び縮合を示す。 図23はトリメチルエトキシシランの反応のタンパク質阻害を示す。 図24は異なる起源のトリプシンによるトリメチルエトキシシランの加水分解及び縮合を示す。 図25はトリプシンに触媒されるトリメチルシラノールの重合に対するカルシウムの効果を示す。 図26は、14時間後の、25℃でクチナーゼに触媒されるトリメチルシラノールの縮合を示す。

Claims (12)

  1. 有機反応物とヒドロラーゼ酵素とを接触させる工程を含む、有機分子の形成方法であって、前記有機反応物は(CH3CH2)2Ge(OCH2CH3)2 であり、前記ヒドロラーゼ酵素は哺乳動物のトリプシンであり;並びに
    前記ヒドロラーゼ酵素は有機反応物の加水分解及び縮合を触媒して有機分子を形成する、有機分子の形成方法。
  2. 前記哺乳動物のトリプシンが、ウシ由来、ブタ由来、または組換えウシ由来である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ヒドロラーゼ酵素の濃度が1mg/mL以上である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ヒドロラーゼ酵素の濃度が20mg/mLから60mg/mLである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記ヒドロラーゼ酵素の濃度が40mg/mLである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記有機反応物:酵素のモル比が40000:1以下である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記反応が5.0から8.0のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記反応が7.0のpHで実施される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記反応が、水性の溶液、溶媒、または無溶媒条件において実施される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記反応が、5℃から90℃の間の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記反応が、20℃から50℃の間の温度で実施される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記反応が25℃の温度で実施される、請求項11に記載の方法。
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