JP4983633B2 - 誘電体膜の成膜方法および誘電体デバイスの製造方法 - Google Patents

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本発明は、誘電体膜の成膜方法および誘電体デバイスの製造方法に関するものである。
簡便な誘電体セラミックス薄膜の成膜方法を検討することは、種々の電子部品への適用の観点で有益である。誘電体セラミックス薄膜の簡便な成膜法として、従来から電気泳動堆積法(EPD)が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。この方法は、コストが安い、プロセスが容易である、膜厚が均一になる、といった利点を持っている。また、一般的なゾル−ゲル法のような高温焼結を必要としないので、膜の特性劣化の原因となる膜と基板との反応を抑制することができる。さらに、低温で成膜することで熱による粒子の成長を抑制できるため、成膜後の粒径は小さく、膜中に大きな分極種を持たず、高周波域でも誘電特性を安定して発揮できると期待されている。
特開平5−105500号公報 特開2001−267751号公報
しかしながら、従来の電気泳動堆積法では、帯電した誘電体セラミックスのコロイド粒子を電界で移動させ、膜として堆積するため、例えば15V以上といった高電圧を必要とする手法であった。このため、例えば高電圧が印加できないような電子デバイス上に成膜する場合には、成膜方法や成膜条件が制約される場合があり、所望の膜が得られない虞もあった。また、従来の電気泳動堆積法で得られた誘電体膜は特性面で未だ十分ではなく、電子デバイスの高性能化に伴い、より誘電特性に優れた誘電体膜の提供が望まれている。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、誘電特性に優れた誘電体膜を簡便に成膜する方法、およびこれを用いた誘電体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明者は、鋭意検討の結果、帯電している粒子を低電圧(例えば10V未満程度)で堆積させ、成膜できるように、溶媒の電気伝導度を上げる目的で溶媒中にカチオン(陽イオン)を添加し、電流による粒子の移動モードも併用した新規な成膜手法を創出した。実際に誘電体膜の成膜を試みた結果、誘電特性に優れた誘電体膜が得られる見通しを得た。なお、本発明者は、溶媒中にカチオンを添加しない従来一般の電気泳動堆積法では、成膜時に電流がほとんど流れないことを確認している。
すなわち、本発明の誘電体膜の成膜方法は、溶媒中に誘電体膜を構成する粒子を分散させる工程と、前記粒子を分散させた溶媒中に、前記誘電体膜を構成する元素の金属イオンからなるカチオンを含む溶液を添加する工程と、前記溶液を添加した前記溶媒中にアノード(陽極)およびカソード(陰極)を浸漬させ、直流電圧を印加することにより前記アノード上に前記粒子を析出させ、前記粒子の集合体からなる誘電体膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
従来一般の電気泳動堆積法と異なり、本発明の誘電体膜の成膜方法によれば、粒子を分散させた溶媒中にカチオンを含む溶液を添加することにより溶媒の電気伝導度が上がり、溶媒に例えば10V未満程度の直流電圧を印加した際に10A未満程度の電流が流れる。
本発明者の推測によれば、このとき、溶媒中の粒子には正に帯電する部分と負に帯電する部分が生じ、溶液中のカチオンがカソード側に引き寄せられる一方、負に帯電した部分の影響により粒子がアノード側に引き寄せられ、アノード上に析出すると考えられる。この過程において、粒子が、粒子内に存在する結晶欠陥を中心として電場のエネルギーによって分裂、溶融し、微粒化すると思われる。このように、本発明の成膜方法によって得られた誘電体膜を構成する粒子は元の粒子に対して微粒化するため、誘電特性の向上が達成できる。また、溶媒の電気伝導度を上げ、直流電流を流すことで粒子を析出させる手法を採ることによって、従来の電気泳動堆積法よりも印加電圧を下げることができ、より簡便な成膜法とすることができる。
本発明におけるカチオンとしては、誘電体膜を構成する元素以外から選択しても良いが、誘電体膜を構成する元素の金属イオンから選択することがより望ましい。
この構成によれば、不純物が少なく、純度の高い誘電体膜を得ることができる。
なお、誘電体膜を構成する元素以外の元素をカチオンとすることにより、意図的に不純物をドープした誘電体膜を得ることも可能である。
本発明において、誘電体膜を構成する元素としては種々のものが考えられるが、その一つとしてチタン(Ti)を用いることが望ましい。このとき、カチオンとしては、Ti4+イオンを用いることが望ましい。
この構成によれば、チタンの触媒作用を利用して誘電体膜をより効率良く析出させることができる。本発明の方法で成膜可能な誘電体膜の種類については、[発明を実施するための最良の形態]の項で列挙するが、その一つとしてMgTiOを挙げることができる。
本発明において、溶媒はエタノールであることが望ましい。
この構成によれば、一般的に入手しやすく、安価な溶媒を用いて誘電体膜を効率良く析出させることができる。本発明の方法で使用可能な溶媒の種類については、[発明を実施するための最良の形態]の項で列挙する。
本発明において、前記カチオンを含む溶液の添加量を調整することにより前記誘電体膜を構成する粒子の平均粒径や粒度分布を調整することができる。
また、本発明において、前記誘電体膜は粒径1μm未満(ナノサイズ)の粒子を含むものとして成膜することができる。
これらの点については、本発明者が実験を通じて実証しており、その結果は[発明を実施するための最良の形態]の項で後述する。
本発明の誘電体デバイスの製造方法は、基板上に導電膜を形成する工程と、前記導電膜をアノードとして、上記本発明の誘電体膜の成膜方法を用いて前記アノード上に誘電体膜を成膜する工程と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、簡便な方法で誘電特性に優れた誘電体膜が得られるため、低コストで電気的特性に優れた誘電体デバイスを製造することができる。また、本発明の誘電体膜の成膜方法を用いた場合、導電膜(アノード)上にのみ選択的に誘電体膜を形成できるため、誘電体デバイスの積層構造によっては(例えば、電極上にのみ誘電体膜が存在する形態のデバイスであれば)パターニングを不要とすることができ、その点からも製造コストの低減を図ることができる。
以下、本発明の一実施の形態を図1〜図9を参照して説明する。
本実施形態では、本発明者が実際に試みた誘電体セラミックス、具体的にはチタン酸マグネシウム(MgTiO)の成膜実験の方法を説明する。
図1は、本実施形態のチタン酸マグネシウムの成膜に用いた装置の概略構成図である。図2は、本実施形態のチタン酸マグネシウムの成膜手順を示すフローチャートである。
まず最初に、Ti4+イオン溶液(カチオンを含む溶液)を準備した。Ti4+イオン溶液は、塩化チタン(IV)(和光純薬工業株式会社、特級試薬(99%以上))を以下の手順により加水分解することによって得た。三口フラスコに入れた蒸留水75mLに、滴下ロートに入れた塩化チタン(IV)15mLを滴下して5時間撹拌した。このとき、三口フラスコの周囲を氷で覆い、氷冷した。撹拌後、蒸留水35mLを加え、一晩静置してTi4+イオン溶液を得た。得られたTi4+イオン溶液の濃度は、1.00mol/Lであった。吸光度測定により、Lambert-Beerの法則から、Ti4+イオンの定量を行った。また、塩化チタン(IV)試薬中には不純物である硫酸塩(SO)0.01%以下が存在するが、非常に微量であるため、影響はないものと思われる。
次に、図1に示した高速めっき用ハルセル1(Model I, Yamamoto-MS Co., Ltd, Japan)を5Lのエタノール溶媒2で満たし、市販のMgTiO粉末(粒子)3(和光純薬工業株式会社、一級試薬(85%以上))20.6gをエタノール溶媒2中に投入し分散させた(図2のステップS1)。図1において、符号4はアノード(陽極)、符号5はカソード(陰極)、符号6はスターラーである。アノード4にはTi/Ptめっきした6.5cm×6.5cmの正方形の白金板を用い、カソード5には直径8mmの銅棒を用いた。アノード4とカソード5との間隔は8.5cmであった。
次に、エタノール溶媒2中にTi4+イオン溶液を添加した(図2のステップS2)。Ti4+イオン溶液の添加量は40〜120mLの範囲で変化させた。
次に、DC電源(形式:YPP-15101, Yamamoto-MS Co., Ltd, Japan)を用いて2〜9Vの直流電圧をアノード−カソード間に印加した(図2のステップS3)。電圧印加時、溶媒の温度は20℃に保ち、高速めっき用ハルセル1のスターラー6のモーター回転数は30rpmとした。印加電圧は2〜9V、印加電流は2〜9A、電圧(電流)印加時間は21〜63時間の範囲内で変化させた。実験条件を変えた複数のサンプルを作製した。各サンプルの実験条件は下の[表1]に示す通りである。
Figure 0004983633
以上の操作により、アノード4の表面にMgTiO粒子3が析出(以下、電析ということもある)した(図2のステップS4)。
次に、高速めっき用ハルセル1からアノード4を取り出した後、アノード4の表面に付着したMgTiO粒子3からなる誘電体膜を温度60℃の空気雰囲気のオーブン中で12時間乾燥させた。
本実験で使用した高速めっき用ハルセルは元来めっき用の装置であるため、最大で9Vまでしか電圧が印加できなかった。事前実験時には(何も添加していない)エタノール溶媒に対してMgTiO粉末の分散状態が悪く、その系に電圧を印加してもほとんど析出は起こらなかった。そこで、本発明者は、エタノール溶媒に電気伝導性を持たせ、粒子の析出速度を向上させることを意図し、エタノール溶媒中にTi4+イオン溶液を添加したのである。その結果、粒子の析出速度が劇的に向上し、アノード側に粒子が析出した。一方、カソード側には粒子は析出しなかった。なお、エタノール溶媒の電気伝導度を上げることだけが目的であるならば、Ti4+イオン以外のイオンを添加することも考えられたが、本実験では純度の高いMgTiO膜を得ること、および有機溶剤を用いないことを目的としたので、不純物を避ける意味でTi4+イオンに着目し、本実験に採用した。あるいは、同様の考え方からMg2+イオンを用いることもできる。
アノードに堆積した粒子の同定と結晶性の評価を粉体X線回折による測定で行った。粉体X線回折の結果を図3に示す。この結果から、エタノール溶媒中に分散させたMgTiO粉末(電析前)とアノードに堆積した粒子(電析後)とでは全く同一の回折結果が得られ、分散させたMgTiO粒子そのものがアノードに堆積していることが判明した。なお、粉体X線回折には、粉体X線回折装置(XRD:X-Ray Diffraction、理学電気株式会社製X線回折装置、形式:RINT-2200V型)を用いた。
本発明者は、MgTiO粒子がアノードに析出するメカニズムを次のように推定している。
Ti4+イオン溶液を添加した溶媒中でMgTiO粉末に電場が印加されたときの粒子のイメージ図を図9に示す。エタノールだけが存在する溶媒の中ではMgTiO粒子は帯電しないが、溶媒にTi4+イオン溶液を添加することでTi4+イオンが配位した状態で、MgTiOのチタン酸部分が負、マグネシウム部分が正に分極し、帯電すると考えられる。そして、溶液中に存在するTi4+イオンがカソード側に引き寄せられる結果、帯電したMgTiO粒子はアノード側に引き寄せられ、アノード上に析出したと考えられる。カソード側については、Ti4+イオン溶液の添加量が最も多い120mLの場合でもエタノール溶媒5Lに対しては十分に微量であるため、カソード上にチタンが析出する程でもなく、実際にも粒子は付着しなかった。
ここで、Ti4+イオン溶液添加量が40mL、80mL、120mLのサンプルについて、粒子のゼータ電位(表面電位)の0時間から42時間までの経時変化を、ゼータ電位測定装置を用いて測定した。ゼータ電位測定装置としては、電気音響法による高濃度ゼータ電位測定装置(ZetaProbe,日本ベル株式会社)を用いた。その結果を図10に示す。図10において、縦軸はゼータ電位[mV]、横軸は測定時間[時間]である。
図10に示した通り、粒子のゼータ電位は測定時間の経過とともに飽和する傾向にあり、Ti4+イオン溶液添加量を40mL、80mL、120mLと増加させるのに伴って、飽和したゼータ電位が−15mV、−20mV、−23mVと低くなる、という結果が得られた。この結果から、以下の3点が考えられる。
(1)粒子は負に帯電している、
(2)Ti4+イオン溶液添加量の増加に伴い、Ti4+イオンの配位量が増えるため、それに誘起される粒子の負の帯電量が増加する、
(3)粒子のゼータ電位は測定時間の経過とともに飽和傾向にあるため、Ti4+イオンの配位量もある量で安定すると推定できる。
これらは、上述した粒子の析出メカニズムを支持するものと考えられる。
次に、アノードに堆積した粒子の粒度分布を測定した。粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(形式:LMS-24、株式会社セイシン企業製)を用いた。
図4に、電圧印加(電析)前のMgTiO粒子の粒度分布(図4中で0mLと示した)と、Ti4+イオン溶液を添加して(添加量:40mL、80mL、120mLの3種類)電圧9V、電流3Aを21時間印加し、電析させたMgTiO粒子の粒度分布の測定結果を示した。電圧印加(電析)前、すなわち溶媒中に分散させただけのMgTiO粒子の粒度分布は、平均粒径が10.8μmの分布であった。これに対し、Ti4+イオン溶液を添加して電析させたMgTiO粒子の粒度分布は、Ti4+イオン溶液の添加量が40mLの場合、平均粒径が4.1μmと小さくなり、5μm以下で2つのピークを持つことがわかった。さらに、Ti4+イオン溶液の添加量を80mL、120mLと増加させた場合、平均粒径は5.3μm、8.0μmと徐々に大きくなり、析出前のMgTiO粒子の粒度分布に近づくものの、0.1μm以下を含む微細な粒子が増加することがわかった。これら粒度分布の測定結果は、繰り返し行った実験でも再現性は良かった。
以上の結果は、本発明の方法を用いた場合、MgTiO粒子の粒度分布が小さくなる方向にシフトするとともに、Ti4+イオン濃度によって平均粒径や粒度分布をコントロールできる可能性を示唆しているものと考えられる。このとき、Ti4+イオン溶液添加によるMgTiO粒子の破壊への影響があるとすると、Ti4+イオン溶液の添加量が増えるほど破壊が進行し、粒度分布が小さい側にシフトするはずである。ところが、実際はそうではなく、粒度分布が大きい側にシフトしていることから、Ti4+イオン溶液添加によるMgTiO粒子の破壊への影響は電界の印加が関係しているものと推定される。
次に、透過型電子顕微鏡を用い、電析前の粒子とアノードに堆積した粒子の形状およびサイズの観察を行った。ここでは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy、株式会社日立製作所製、形式:H-800)を用いた。
析出前のMgTiO粒子のTEMによる観察結果の一例を図5に示す。この観察結果に見られるように、析出前のMgTiO粒子は大きさが不定であり、角が多い不定形の形状をしていることがわかった。
これに対し、アノードに堆積したMgTiO粒子のTEMによる観察結果の一例を図6(a)〜(c)に示す。図6(a)〜(c)は全てTi4+イオン溶液の添加量を40mLで固定しており、図6(a)は電圧:2V、電流:6A、印加時間:21時間の例、図6(b)は電圧:6V、電流:2A、印加時間:21時間の例、図6(c)は電圧:9V、電流:3A、印加時間:21時間の例、である。アノードに堆積したMgTiO粒子には全ての場合で、析出前には観察されなかった、サイズが100〜200nm程度の角が取れた丸い粒子が含まれていた。印加電流と印加電圧による比較をすると、同じ印加時間であれば、印加電圧が高い方が丸い粒子が増えた。また、同じ印加電流と印加電圧で印加時間による比較をすると、印加時間が長いほど粒子の凝集が促進された。
次に、電圧:9V、電流:3Aの条件を固定し、Ti4+イオン溶液の添加量を80mLとしたときのアノードに堆積したMgTiO粒子のTEMによる観察結果の一例を図7(a)〜(c)に示す。図7(a)は印加時間:21時間の例、図7(b)は印加時間:42時間の例、図7(c)は印加時間:63時間の例、である。図7(a)では10nm程度のMgTiO粒子が見られ、それらの粒子が、印加時間が42時間(図7(b))、63時間(図7(c))と長くなることで凝集し、成長している様子が見られた。凝集は濾過乾燥工程では生じていないことが実験的にわかっているため、膜になる時点で起こると考えられる。
MgTiO粒子の分散液中にTi4+イオンを添加し電析すると、MgTiO粒子のサイズと形状の変化が生じることに関しては、以下のメカニズムを想定している。
Ti4+イオンの添加によって分散溶液の電気伝導度が増大しているので、この溶液に電界を印加すると、溶液中の電場によって低電圧でも粒子がアノード近傍に容易に移動し、アノード上に析出する。アノードに析出する際、MgTiO粒子が丸く小さくなるのは、粒子内に存在する結晶欠陥を中心として電析時に加わる電場のエネルギーによって粒子が分裂、溶融し、安定な球形に近い形になるものと考えられる。
TEM観察結果から、Ti4+イオンが増加すると、凝集が進み、見かけの粒径が増大していることがわかったが、それは、電析時にTi4+イオン添加量が多い方が電気伝導度が増大し、積算の電荷量が多くなって粒子の析出と凝集が進むため、粒径分布が大きい側にシフトするためと考えられる。
以上、本実施形態の成膜方法によれば、MgTiO粒子がアノード側に引き寄せられ、析出する際、ナノサイズレベルまで微粒化されることにより、得られたMgTiO膜の誘電特性を向上させることができる。また、エタノール溶媒の電気伝導度を上げ、直流電流を流すことで粒子を析出させる手法を採ることによって、例えば10V以下というように、従来の電気泳動堆積法を用いた場合よりも印加電圧を下げることができる。そのため、成膜条件等の制約が少なく、より簡便な成膜法を提供することができる。また、カチオンとしてMgTiO膜を構成する元素の一つであるTi4+イオンを添加しているため、不純物が少なく、純度の高いMgTiO誘電体膜を得ることができる。さらに、Ti4+イオン溶液の添加量を調整することにより、MgTiO誘電体膜を構成する粒子の平均粒径や粒度分布を調整することができる。
以下、上記実施形態のMgTiO誘電体膜の成膜方法を利用して誘電体デバイスを製造する方法について説明する。誘電体デバイスの一例として、図8に示したキャパシタの例を挙げて説明する。
まず最初に、任意の半導体基板10上にスパッタ法などを用いて白金(Pt)膜(導電膜)を成膜する。そして、周知のフォトリソグラフィー、エッチング技術を用いて白金膜を所望の形状にパターニングし、下部電極11とする。
次に、前工程で形成した下部電極11をアノードとして上記実施形態の成膜方法を用い、MgTiO誘電体膜12を形成する。
次に、MgTiO誘電体膜12上を含む基板全面にスパッタ法等を用いて白金(Pt)膜を成膜した後、周知のフォトリソグラフィー、エッチング技術を用いて白金膜を所望の形状にパターニングし、上部電極13とする。
本実施形態の誘電体デバイスの製造方法によれば、上記実施形態のMgTiO誘電体膜の成膜方法を用いているため、簡便な方法で誘電特性に優れた誘電体膜が得られ、低コストで電気的特性に優れた誘電体デバイスを製造することができる。また、アノードとなる下部電極11上にのみ選択的にMgTiO誘電体膜12を形成できるため、MgTiO誘電体膜12のパターニングを不要とすることができ、その点からも製造コストの低減を図ることができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では誘電体膜としてMgTiO膜を成膜する方法の例を示したが、本発明の成膜方法が適用可能な誘電体膜としてはMgTiOの他、BaTiO、SrTiO、(Ba,Sr)TiO、MgTiO−CaTiO、Ba(Mg,Ta)O、BaTi20、Ba(Zn,Ta)O、(Zr,Sn)TiO、CaTiO−NdAlO、PbO−Bi−Nd−TiO、BaO−Al−SiO−B、BaO−SrO−ZrO−SiO、CaZrO+glass、BaO−Nd−TiO+glass、(Sr,Ba)TiO−Bi−nTiO、(Sr,Pb)TiO−Bi−nTiO、(Sr,Mg)TiO−Bi−nTiO、SrTiO−Bi−nTiO、SrTiO−Bi(SnO、MgTiO−CaTiO、MgTiO−SrTiO、MgTiO−CaTiO−La、MgTiO−CaTiO−La・2TiO、BaO・4TiO、BaO・4.5TiO、BaO・2TiO、BaO−TiO−MnO−SnO、(Zr,Sn)O・TiO、Ba(Zn1/3Ta2/3)O、Ba(Zn1/3Nb2/3)O、Ba(Mg1/3Ta2/3)O+Mn、(Ba,Sr)TiO−Sm、(Ba,Pb)TiO−Nd、BaTiO−Sm、BaO−Nd−TiO、BaO−Nd−TiO−Bi、(Pb,Ca)ZrO、等が挙げられる。
また、溶媒としては、エタノールの他、メタノール、プロパノール等のアルコール、水、極性有機溶媒(例えばテトラメチルアンモニウムトシル、過塩素酸リチウム、テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸等)、溶融塩(特に常温溶融塩が望ましい、例えば、式NR1R2R3R4で表される四級アンモニウムのカチオンと[CF(CF)nSO]2N、CFSO 、PF 、およびBF からなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとから構成される常温(15℃以上20℃以下、JISK0211)の溶融塩)を用いることができる。
また、カチオンとしては、上記実施形態ではMgTiOに対してTi4+イオンを用いたが、Mg2+イオンを用いても同様の効果を奏することができる。いずれにしても、誘電体膜を構成する元素の金属イオンから選択すれば、不純物が少なく、純度の高い誘電体膜を得ることができる。しかしながら、この効果を求めないのであれば、誘電体膜を構成する元素以外から選択しても良い。あるいは、誘電体膜を構成する元素以外の元素をカチオンとすることにより、意図的に不純物をドープした誘電体膜を得ることも可能である。
また、本発明の誘電体膜の成膜方法を利用して製造可能な誘電体デバイスとしては、図8に示したキャパシタの他、誘電体共振器、フィルター等を挙げることができる。本発明によれば、誘電特性に優れた誘電体膜が得られるので、特に、高周波用誘電体デバイスに好適である。
本発明の実施形態のMgTiOの成膜に用いた装置の概略構成図である。 同、MgTiOの成膜手順を示すフローチャートである。 電析前後のMgTiO粒子の粉体X線回折の結果である。 Ti4+イオン溶液添加量を変化させたときの粒度分布を示す図である。 電析前のMgTiO粒子のTEMによる観察結果である。 アノードに堆積したMgTiO粒子のTEMによる観察結果である。 アノードに堆積したMgTiO粒子のTEMによる観察結果である。 本発明によって得られる誘電体デバイスの一例を示す断面図である。 Ti4+イオンを含む溶媒中でのMgTiO粒子のイメージ図である。 MgTiO粒子のゼータ電位測定結果を示す図である。
符号の説明
1…高速めっき用ハルセル、2…エタノール溶媒、3…MgTiO粉末(粒子)、4…アノード、5…カソード、6…スターラー、10…半導体基板、11…下部電極、12…MgTiO誘電体膜、13…上部電極。

Claims (8)

  1. 溶媒中に誘電体膜を構成する粒子を分散させる工程と、
    前記粒子を分散させた溶媒中に、前記誘電体膜を構成する元素の金属イオンからなるカチオンを含む溶液を添加する工程と、
    前記溶液を添加した前記溶媒中にアノードおよびカソードを浸漬させ、直流電圧を印加することにより前記アノード上に前記粒子を析出させ、前記粒子の集合体からなる誘電体膜を形成する工程と、
    を備えたことを特徴とする誘電体膜の成膜方法。
  2. 前記誘電体膜を構成する元素がチタンであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体膜の成膜方法。
  3. 前記カチオンが、Ti4+イオンであることを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体膜の成膜方法。
  4. 前記溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の誘電体膜の成膜方法。
  5. 前記カチオンを含む溶液の添加量を調整することにより前記誘電体膜を構成する粒子の粒度分布を調整することを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の誘電体膜の成膜方法。
  6. 前記誘電体膜が、粒径1μm未満の粒子を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の誘電体膜の成膜方法。
  7. 前記誘電体膜がMgTiO膜であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の誘電体膜の成膜方法。
  8. 基板上に導電膜を形成する工程と、
    前記導電膜をアノードとして、請求項1ないしのいずれか一項に記載の誘電体膜の成膜方法を用いて前記アノード上に誘電体膜を成膜する工程と、
    を備えたことを特徴とする誘電体デバイスの製造方法。
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JP4632018B2 (ja) * 2003-10-15 2011-02-16 セイコーエプソン株式会社 強誘電体膜、強誘電体膜の製造方法、および強誘電体キャパシタ、ならびに強誘電体メモリ
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