本発明のプロセスレス感光性平版印刷版で使用される下記一般式(I)で示されるポリマーについて説明する。
上式に於いて、Xは共重合体組成中に占める繰り返し単位の質量%を表し、20から100までの任意の数値を表す。繰り返し単位Aは反応性基として少なくとも1つのカルボキシル基を有する繰り返し単位である。繰り返し単位Bは共重合体を水溶性にするために必要な親水性基を有する繰り返し単位である。
上記一般式(I)で示されるポリマーは後述するエポキシ基を2つ以上有する化合物とカルボキシル基で反応する。一般式(I)で示されるポリマーを得るには、カルボキシル基を有するモノマーを共重合する形で組み込む事が好ましく行われる。一般式(I)で示す繰り返し単位Aに対応するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン、アクリルアミド−N−グリコール酸等のカルボキシル基含有モノマー及びこれらの塩等が挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
上記一般式において、繰り返し単位Aの共重合体中に於ける割合であるXは20から100までの範囲であり、更に好ましくはこの範囲以下では架橋反応が進行しても耐水性が発揮できないため好ましくない。
更に、一般式(I)における繰り返し単位Bを与えるためのモノマーとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホ基含有モノマー及びこれらの塩、ビニルホスホン酸等のリン酸基含有モノマー及びこれらの塩、塩化ジメチルジアリルアンモニウム、塩化2−トリメチルアンモニウムエチルアクリレート、塩化2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート、塩化2−トリエチルアンモニウムエチルアクリレート、塩化2−トリエチルアンモニウムエチルメタクリレート、塩化3−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、塩化N,N、N−トリメチル−N−(4−ビニルベンジル)アンモニウム等のの4級アンモニウム塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基含有(メタ)アクリレート類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら水溶性モノマーは繰り返し単位Aを構成するために1種で用いても良いし、任意の2種類以上を用いても良い。本発明に於ける好ましい水溶性ポリマーの例を以下に示す。
一般式(I)で示されるポリマーの平均分子量は5000〜500000が好ましく、更に、10000〜200000がより好ましい。これより分子量が低い場合、親水性層が水と接触すると溶解したり、剥がれたりする。又この範囲を超えると、塗液の粘度が高くなり、均一な塗布が困難になる場合がある。
これらポリマーの塗布量は、0.5〜5g/m2が好ましく、更に好ましくは0.5〜3g/m2である。
本発明に用いられるエポキシ基を2つ以上有する化合物は、水又はメタノールやエタノールに可溶なものが好ましい。以下に化合物の好ましい例を挙げる。
これらの化合物はナガセケムテックス(株)より「デナコール」の商品名で販売されており、容易に入手できる。
上記のようなエポキシ基を2つ以上有する化合物は、一般式(I)のポリマーとの比率に関しては好ましい範囲が存在する。該ポリマー100質量部に対して架橋剤は30質量%以上が好ましく更に30〜100質量部の範囲で用いる事が更に好ましく、40〜60質量部がより好ましい。
本発明に用いられるイミダゾール化合物は、イミダゾール及びイミダゾールに置換基を有する化合物を表し、水又はメタノールもしくはエタノールに可溶なものが好ましく用いられる。以下に好ましいイミダゾール化合物を以下に挙げるがこれらに限定されるわけではない。
これらの化合物は、四国化成(株)から「キュアゾール」の商品名で販売されており、容易に入手できる。本発明に用いられるイミダゾール化合物の添加量は、0.1〜100mg/m2が好ましく、1〜20mg/m2の範囲がより好ましい。
本発明に用いる親水性層は、コロイダルシリカを含有する。本発明に用いられるコロイダルシリカは形状は球形でも良いし、鎖状、或いはパールネックレス状のコロイダルシリカも好ましく用いられる。コロイダルシリカの粒径は形状に関わらず、光散乱法による平均粒径の値が70〜250nmの範囲のものが好ましく、より好ましくは100〜250nmである。この範囲より小さい場合、親水性層のフィルム支持体への接着が低下する場合があり、一方この範囲より大きい場合、親水性層が十分な親水性を得る事ができない場合がある。
コロイダルシリカはSiO2単体から構成されるものでも良いが、シリカの分散のpH依存性を変えるためにAl2O3などで表面を若干修飾したものを用いても良い。又、親水性層の、塗液のpHによって、コロイダルシリカのアルカリ液、酸性液を選択して用いる事ができる
平均粒径70〜250nmの球状のシリカとしては、例えば日産化学工業社製の「MP−2040(平均粒径200nm)」、「MP−1040(平均粒径100nm)」、「スノーテックス−ZL(粒子径70〜100nm)」などが挙げられる。これらのコロイダルシリカはpHが9以上であるが、酸性の塗液を作成する場合には、Naイオンを脱塩して酸性にした「スノーテックス−OZL(粒子径70〜100nm)」などを用いる事もできる。
本発明で用いられるコロイダルシリカは、鎖状又はネックレス状のものであっても良く、光散乱法で平均粒径として測定した時に70〜250nmであれば、球状の同様の大きさを持つコロイダルシリカと同様の効果を有する。ここで、ネックレス状のコロイダルシリカは鎖状コロイダルシリカと一次粒子径、長さは同じであるが、一次粒子の形状をより残している形状である。
具体的には鎖状シリカとしては日産化学工業社製「スノーテックスUP(平均粒径70nm)」、ネックレス状シリカとしては「スノーテックスPS−S(平均粒径100nm)」、「スノーテックスPS−M(平均粒径120nm)」が挙げられる。
これらのコロイダルシリカの添加量は、一般式(I)で示されるポリマーとコロイダルシリカの質量比が、1:1〜1:4が好ましく、更に好ましくは1:2〜1:3である。コロイダルシリカは単一の種類を添加しても良いし、2種以上を混合しても良い。混合する場合はコロイダルシリカの全固形分量と一般式(I)のポリマーとの比が上記比に成る事が好ましい。コロイダルシリカの質量比が上記比よりも低い場合は、親水性層の親水性が十分に得られない場合がある。一方、コロイダルシリカの質量比が上記比よりも高い場合は、支持体との十分な接着を得る事ができない場合がある。
また、親水性層は、露光時以外の光を遮ったり、ハレーションを防止するために、染料や顔料を添加しても良い。更に、プラスチック支持体への塗布性を改善するために界面活性剤を添加しても良い。コロイダルシリカの分散安定性を改善するために界面活性剤や水溶性ポリマーなどの分散剤を添加する事もできる。
親水性層は、上述した要素から構成される組成物の塗液を、支持体上に塗布、乾燥して作製される。塗布方法としては、公知の種々の方法を用いる事ができ、例えば、バーコーター塗布、カーテン塗布、ブレード塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、回転塗布、ディップ塗布等を挙げる事ができる。平版印刷版として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.3μmから10μmの範囲の乾燥厚みで形成する事が好ましく、更に0.5μmから5μmの範囲である事が耐刷性を大幅に向上させるために好ましい。
更に、エポキシ基を2つ以上有する化合物と一般式(I)のポリマーを十分に架橋させるために、感光層を塗布する前に40℃〜100℃、好ましくは45℃〜80℃の温度下の条件で12時間〜1週間、好ましくは1日〜5日間保管する事が好ましい。
次に本発明に用いられる感光層について説明する。本発明のプロセスレス感光性平版印刷版の感光層は、側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有するカチオン性水溶性重合体(以降、重合体Aと称す)または側鎖にビニル基が置換したフェニル基及びスルホン酸基を含有する水溶性重合体(以下、重合体Bと称す)を含有する。以下に重合体Aについて詳細に説明する。
重合体Aにおけるカチオン性基とは、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ヨードニウム基、オキソニウム基、等の有機オニウム基から選ばれる基であり、これらのうち四級アンモニウム基が最も好ましい。
上述した有機オニウム基を導入した重合体は、特公昭55−13020、特開昭55−22766号、同平11−153859号、同2000−103179号、米国特許4,693,958号、同5,512,418号に記載されている従来公知の化学反応を用いて合成する事ができる。即ち、所望の有機オニウム基を含有するモノマーを重合反応させたり、重合体を構成するポリマー鎖状に導入された三価のN原子、二価のS原子或いは三価のP原子等を、通常のアルキル化反応によって有機オニウム基を導入する方法が挙げられる。更にアミン類、スルフィド類、ホスフィン類のような求核試薬とポリマー鎖状の脱離基(例えば、スルホン酸エステル類やハロゲン化物)との求核置換反応により、ポリマー主鎖又は側鎖に有機オニウム基を導入する方法も挙げられる。
重合体Aに於けるビニル基が置換したフェニル基とは、光重合開始剤又は光酸発生剤の作用により、光重合反応或いは光り架橋反応に寄与しうる基である。ビニル基が置換したフェニル基は、適当な連結器を介して重合体中に導入されている場合が好ましい。この場合の連結器としては特に限定されず、任意の基、原子又はそれらの複合した基が挙げられる。更に該ビニル基及び該フェニル基は置換基を有していても良い。ビニル基が置換したフェニル基を導入した重合体としては、更に詳細には下記一般式(II)で表される基を側鎖に有するものである。
式中、R1、R2及びR3は、同じであっても異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表し、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。これらの基の中でも、R1が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)であり、R2、R3が水素原子であるものが特に好ましい。
式中、R4は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表す。また、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。
式中、m1は0〜4の整数を表し、pは0又は1の整数を表し、q1は1〜4の整数を表す。
式中、L1は炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子又は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子群から成る多価の連結基を表す。具体的には下記に例示される構造単位より構成される基及び下記に示す複素環基が挙げられる。これらの基は単独でも任意の2つ以上が組み合わされていても良い。
L1を構成する複素環の例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環、等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環は置換基を有していても良い。
上述した多価の連結基が置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
連結基L1を構成する任意の原子団に於いて、この中にカチオン性基を形成する4級アンモニウム基等の有機オニウム基が含まれている場合が特に好ましく利用される。連結基中に、こうした有機オニウム基が含まれない場合においては主鎖を構成する繰り返し単位中に、別途有機オニウム基を有する繰り返し単位を含む事が必要である。
重合体中にビニル基が置換したフェニル基を導入する方法については特に制限は無く、例えば特公昭49−34041号、同平6−105353号公報、特開2000−181062号、同2000−187322号公報等に示されるようないずれの方法を用いても良い。これらの場合には予め前駆体であるポリマーを合成する際に、有機オニウム基を有する繰り返し単位を共重合体の形で導入しておくか、前駆体ポリマーに重合性不飽和結合基を導入した形で、上述した方法等により、有機オニウム基を形成する事が必要である。
重合体Aの前駆体を構成する事ができるモノマーの具体例としては、アリルアミン、ジアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、4−アミノスチレン、N,N−ジメチル−N−(4−ビニルベンジル)アミン、N,N−ジエチル−N−(4−ビニルベンジル)アミン等のアミノ基含有モノマー及びこれらの4級アンモニウム塩、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環含有モノマー及びこれらの4級アンモニウム塩、(4−ビニルベンジル)トリメチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩モノマー、ジメチル−2−メタクリロイルオキシエチルスルホニウムメトスルフェート等の3級スルホニウム塩モノマー、2−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−ブロモメチルスチレン、2−クロロエチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート等のハロゲン化アルキル基含有モノマー等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
又、重合体Aは、任意の他のモノマーとの共重合体を構成していても良く、これら共重合体を構成するモノマーは水溶性であっても非水溶性であっても良い。水溶性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン、アクリルアミド−N−グリコール酸等のカルボキシル基含有モノマー及びこれらの塩、ビニルホスホン酸等のリン酸基含有モノマー及びこれらの塩、アリルアミン、ジアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、4−アミノスチレン、4−アミノメチルスチレン、N,N−ジメチル−N−(4−ビニルベンジル)アミン、N,N−ジエチル−N−(4−ベニルベンジル)アミン等のアミノ基含有モノマー及びこれらの4級アンモニウム塩、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環含有モノマー及びこれらの4級アンモニウム塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、メタクリル酸のアルキレンオキシ基含有(メタ)アクリレート類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら水溶性モノマーは1種で用いても良いし、任意の2種類以上を用いても良い。
又、水現像性を最適化し、画像部の強度を向上させるために、非水溶性の任意のモノマーとの共重合体を形成する事も好ましく行われ、これらの例としては、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−へキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、ドデシルメタクリレート等の、アルキル(メタ)アクリレート類、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のアリール(メタ)アクリレート類又はアリールアルキル(メタ)アクリレート類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを挙げる事ができる。これらの任意の組み合わせで構成される共重合体を重合体Aとして使用する事ができる。
本発明の重合体Aは、ビニル基が置換したフェニル基がカチオン性基を介して主鎖と結合している場合が特に好ましい。ビニル基が置換したフェニル基を主鎖に結合するための連結基を構成する任意の原子団に於いて、この中にカチオン性基を形成する4級アンモニウム基等の有機オニウム基が含まれている場合が最も好ましい。この場合に於いては、重合体中に含まれるビニル基が置換したフェニル基の数と有機オニウム基の数が正比例するため、感度を向上させるために重合体中に含まれるビニル基が置換したフェニル基の両方を同時に満足する事ができる。上述したようなビニル基が置換したフェニル基がカチオン性基を介して主鎖と結合している場合の重合体の単位構造は、具体的には下記一般式(III)で表す事ができる。
式中、A1 +はアンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ヨードニウム基、オキソニウム基等の有機オニウム基から選ばれる有機オニウム基を表し、n1及びn2はそれぞれ0又は1を表す。A1 +がヨードニウム基の場合はn1=n2=0であり、A1 +がスルホニウム基の場合はn1=1かつn2=0であり、がアンモニウム基又はホスホニウム基の場合はn1=n2=1である。
式中、R5及びR6は、同じであっても異なっていても良く、それぞれアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロへキシル基、ベンジル基等)、又はアリール基(例えばフェニル基、1−ナフチル基等)を表しこれらの基は置換されていても良く、この場合の置換基の例としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。更にR5及びR6は、上記一般式(III)で表されるビニル基が置換したフェニル基を含有する基であっても良い。
式中、R7、R8及びR9は、同じであっても異なっていても良く、それぞれ前記一般式(II)におけるR1、R2及びR3と同義である。これらの基の中でもR7が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)であり、R8及びR9が水素原子であるものが特に好ましい。R10は、前記一般式(II)におけるR4と同義である。L2及びL3は、それぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子又は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子群からなる多価の連結基を表し、具体的には前記一般式(II)におけるL1と同義である。m2は0〜4の整数を表し、p2は0又は1の整数を表しq2は1〜4の整数を表す。
また、A1 +で表される有機オニウム基を形成するN原子、S原子及びP原子等と、R5、R6或いはL2、L3から任意に選ばれる基とが組み合わさって環構造(例えば、ピリジニウム環、2−キノリウム環、モルホニウム環、ピペリジニウム環、ピロリジニウム環、テトラヒドロチオフェニウム環等)を形成していても良い。これら環構造は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。
又、本発明の重合体Aの中には、上記したようなビニル基が置換したフェニル基がカチオン性基を介して主鎖と結合した繰り返し単位を有する重合体の他に、ビニル基が置換したフェニル基が直接もしくはカチオン性基を含まない連結基を介して主鎖に結合した繰り返し単位とカチオン性基を有する繰り返し単位とを有する重合体も用いる事ができる。
本発明に於ける重合体Aの例を以下に示すが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例示された構造式の中の数字は共重合体トータル組成100質量%中における各繰り返し単位の質量%を表す。
本発明の重合体Aを構成する各繰り返し単位が、全重合体中に占める割合については好ましい範囲が存在する。上述したようにビニル基が置換したフェニル基がカチオン性基を介して主鎖と結合している場合には、その繰り返し単位が重合体トータル組成10質量%から80質量%の範囲にある事が特に好ましい。
また、ビニル基が置換したフェニル基が直接もしくはカチオン性基を含まない連結基を介して主鎖に結合した繰り返し単位とカチオン性基を有する繰り返し単位とからなる重合体の場合には、ビニル基が置換したフェニル基を有する繰り返し単位の場合は、5質量%から50質量%の範囲にある事が特に好ましい。そして、カチオン性基を有する繰り返し単位が占める割合は、30質量%から95質量%の範囲にある事が好ましく、50質量%から90質量%の範囲にある事が特に好ましい。カチオン性基を有する繰り返し単位が30質量%以上でなければ十分な水溶性が得られず、90質量%以下でなければ十分な画像形成ができない。
本発明の重合体Aの分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量で1000から100万の範囲である事が好ましく、更に1万から30万の範囲にある事が特に好ましい。本発明に於ける重合体Aは、1種のみの単独で用いても良いし、任意の2種以上を混合して用いても良い。
次に、側鎖にビニル基が置換したフェニル基及びスルホン酸基を有する重合体(重合体B)について詳細に説明する。
本発明の重合体Bは、ビニル基が置換したフェニル基及びスルホン酸基がそれぞれ直接もしくは任意の連結基を介して主鎖と結合した重合体である。これらの連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。ビニル基が置換したフェニル基及びスルホン酸基は、それぞれ独立して主鎖に結合していても良いし、或いはビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基が連結基の一部又は全部を共有する形で結合していても良い。
上記ビニル基が置換したフェニル基に於いて、該フェニル基は置換されていても良く、また、該ビニル基はハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。
本発明の重合体Bは、更に詳細には、下記一般式(IV)及び(V)で表される基を側鎖に有するものである。
式中、R11、R12、及びR13は、同じであっても異なっていても良く、それぞれ前記一般式(II)に於けるR1、R2、及びR3と同義であり、R14は前記一般式(II)のR4と同義である。L4は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子又は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子原子群から成る多価の連結基を表し、具体的には前記一般式(II)におけるL1と同義である。m3は0〜4の整数を表し、p3は0または1の整数を表し、q3は1〜4の整数を表す。
上記一般式で表される基の中でも、R11が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であり、かつR12及びR13が水素原子であるものが好ましい。又、連結基L4としては複素環を含むものが好ましく、q3は1または2であるものが好ましい。
式中、L5は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子又は、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子原子群からなる多価の連結基を表し、具体的には前記一般式(II)におけるL1と同義である。更にL5は前記一般式(IV)のL4の一部又は全部を共有しても良い。
式中、X+はスルホアニオンを中和するのに必要な電荷をもつカチオンを表す。このようなカチオンの具体例としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等の無機イオン(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛等)、有機アンモニウムイオン(例えばアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム等)、ヨードニウムイオン(例えばフェニルヨードニウム等)、スルホニウムイオン(例えばトリフェニルスルホニウム等)ジアゾニウムイオン等が挙げられ、これらの中でもアルカリ金属イオン又は有機アンモニウムイオンが特に好ましい。
重合体中にビニル基が置換したフェニル基を導入する方法については特に制限はないが、該ビニル基が置換したフェニル基を有するモノマーを重合させた場合には、該ビニル基も反応し、ゲル化を起こしてしまう事が予想され好ましくない。このため、ビニル基が置換したフェニル基を有さない前駆体ポリマーを合成しておき、しかる後、従来公知の高分子反応により該ビニル基が置換したフェニル基を導入する方法が特に好ましい。
重合体中にスルホン酸基を導入する方法については特に制限はなく、該スルホン酸基を有するモノマーを共重合させても良いし、スルホン酸基を有さない前駆体ポリマーを合成しておき、しかる後、従来公知の高分子反応により該スルホン酸基を導入しても良い。
本発明の重合体Bは、上述した側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する繰り返し単位、及びスルホン酸基を有する繰り返し単位からのみなる重合体であってもよいし、或いは本発明の効果を妨げない限り、更に他の繰り返し単位を導入した重合体であっても良い。又更に、他のモノマーとの共重合体であっても良く、このようなモノマーの具体例としては、重合体Aで例示した全ての水溶性モノマー及び非水溶性モノマーが挙げられ、これらモノマーは1種で用いても良いし、任意の2種類以上を用いても良い。
本発明の重合体Bの例を以下に示すが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例示された構造式の中の数字は共重合体トータル組成100%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
本発明の重合体Bの質量平均分子量は、1000から100万の範囲である事が好ましく、更に1万から30万の範囲にある事が特に好ましい。本発明における重合体Bは1種のみの単独で用いても良いし、任意の2種以上を混合して用いても良い。
前述した本発明の重合体A及びBの水に対する溶解性については好ましい範囲が存在する。即ち、25℃のイオン交換水100mlに対して前記重合体は0.5g以上溶解する事が好ましく、更に2.0g以上溶解する事が特に好ましい。
本発明の感光性組成物は、上述した重合体AもしくはBの他に、任意の公知の各種バインダー樹脂を混合して用いる事もできる。この場合のバインダー樹脂は特に制限されず、具体的には、上記で例示したモノマーから任意に構成される重合体や、ポリビニルフェノール、フェノール樹脂、ポリヒドロキシベンザール、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げる事ができる。これらバインダー樹脂としては水溶性である事が好ましく、上記で例示したような水溶性モノマーを少なくとも1種以上用いた水溶性バインダー樹脂やゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性バインダー樹脂である事が好ましい。
本発明の重合体A或いはBを用いた感光性組成物は、露光部において重合体中のビニル基が置換したフェニル基が光重合開始剤又は光酸発生剤の作用により架橋を行う事で水不溶性となり、一方、未露光部においてはカチオン性基或いはスルホン酸基の導入により水溶性がきわめて高くなる。従って、水現像によって未露光部は除去され、一方露光部は画像強度及び疎水性が向上するために安定した水現像適性を有し、かつ高い解像度が得られる。本発明のプロセスレス感光性平版印刷版は、従来の水現像タイプの平版印刷版では困難であった画像部へのインク受容性が顕著に向上し、また耐刷力に優れるという効果が現れる。
本発明の親水性層に用いられるポリマーのイオン性と、感光層に用いられる重合体A(カチオン性)及び重合体B(アニオン性)との間には、好ましい組み合わせがある。即ち、アニオン性ポリマーを用いた親水性層に対してアニオン性の重合体Bを用いた感光層及び、カチオン性ポリマーを用いた親水性層に対して感光層にカチオン性の重合体Aを用いると、非画像部の溶出性が良好となる。
従来技術に於いては、ラジカル発生剤による(メタ)アクリレート系モノマーの光重合に対して、スチレン系モノマーの同様な重合活性はきわめて低い事が知られていた。例えば、角田隆弘著「感光性樹脂」印刷学会出版部1975年発効の第46頁が参照される。しかしながら、本発明は、スチレン系であるビニル基が置換したフェニル基を導入した重合体を用いる事によって、高感度で、かつ水現像が可能なプロセスレス感光性平版印刷版が得られる事を見だしたものである。この事により本発明の感光層は、空気中の酸素の影響を受ける事なく架橋を行う事が可能になった。更に、光酸発生剤の使用によっても同様に高感度で水現像が可能な感光層が得られる事を見出した。
本発明のプロセスレス感光性平版印刷版は、前記した重合体AもしくはBと併せて、光重合開始剤又は光酸発生剤を含有する。本発明に用いられる光重合開始剤としては、光または電子線の照射によりラジカルを発生しうる化合物であれば任意の化合物を用いる事ができる。
本発明に用いる事の出来る光重合開始剤の例としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)アジニウム化合物(g)活性エステル化合物(h)メタロセン化合物(i)トリハロアルキル置換化合物(j)有機ホウ素化合物等が挙げられる。
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、”RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY”J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、P.77〜P.177に記載のベンゾフェノン骨格、或いはチオキサントン骨格を有する化合物、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号に記載公報のジアルコキシベンゾフェノン類、特公昭60−26403号、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン類、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類を挙げる事ができる。
(b)芳香族オニウム塩の例としては、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、TeまたはIの芳香族オニウム塩が含まれる。このような芳香族オニウム塩は、特公昭52−14277号、同昭52−14278号、同昭52−14279号公報等に例示されている化合物を挙げる事ができる。
(c)有機過酸化物の例としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3′,4,4′−テトラ−(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ−(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレート等の過酸化エステル系が好ましい。
(d)ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、特公昭45−37377号、同昭44−86516号公報に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
(e)ケトオキシムエステルの例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
(f)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、同昭63−142345号、同昭63−142346号、同昭63−143537号、特公昭46−42363号公報等に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げる事ができる。
(g)活性エステル化合物の例としては特公昭62−6223号公報等に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号公報等に記載の活性スルホネート類を挙げる事ができる。
(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、同昭61−151197号、同昭63−41484号、同平2−249号、同平2−4705号公報等に記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、同平1−152109号公報等に記載の鉄−アレーン錯体等を挙げる事ができる。
(i)トリハロアルキル置換化合物の例としては、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、米国特許第3,954,475号、同第3,987,037号、同第4,189,323号、特開昭61−151644号、同昭63−298339号、同平4−69661号、同平11−153859号公報等に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭54−74728号、同昭55−77742号、同昭60−138539号、同昭61−143748号、同平4−362644号、同平11−84649号公報等に記載の2−トリハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合した、特開2001−290271号公報等に記載のトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
(j)有機ホウ素塩化合物の例としては、特開平8−217813号、同平9−106242号、同平9−188685号、同平9−188686号、同平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素アンモニウム化合物、特開平6−175561号、同平6−175564号、同平6−157623号公報等に記載の有機ホウ素スルホニウム化合物及び有機ホウ素オキソスルホニウム化合物、特開平6−175553号、同平6−175554号公報等に記載の有機ホウ素ヨードニウム化合物、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素ホスホニウム化合物、特開平6−348011号、同平7−128785号、同平7−140589号、同平7−292014号、同平7−306527号公報等に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体化合物等が挙げられる。また、特開昭62−143044号、同平5−194619号公報等に記載の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有するカチオン性色素が挙げられる。
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式(VI)で表される。
式中、R15、R16、R17及びR18は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R15、R16、R17及びR18の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウム及びホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加する事で色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与する事が行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した一般式(VI)で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオン及びオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
本発明に用いられる光酸発生剤としては、光または電子線の照射により分解し、塩酸、スルホン酸等の強酸やルイス酸の如き酸を発生し得る化合物であれば任意の化合物を用いる事ができる。本発明に用いる事のできる光酸発生剤の例としては、(k)芳香族ジアゾニウム塩化合物、(l)ピバリン酸−o−ニトロベンジルエステル、ベンゼンスルホン酸−o−ニトロベンジルエステル等のo−ニトロベンジルエステル類、(m)9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸−4−ニトロベンジルエステル、ピロガロールトリスメタンスルホネート、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル類等のスルホン酸エステル誘導体、(n)ジベンジルスルホン、4−クロロフェニル−4’−メトキシフェニルジスルホン等のスルホン類、(o)リン酸エステル誘導体、及び(p)米国特許第3,332,936号、特開平2−83638号、同平11−322707号、同2000−1469号公報等に記載のスルホニルジアゾメタン化合物等を挙げる事ができる。
本発明において、有機ホウ素塩とともに用いる事で更に高感度化、硬調化が具現される光重合開始剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を下記に示す。
上記光重合開始剤及び光酸発生剤は単独で用いても良いし、任意の2種以上の組み合わせで用いても良い。また、任意の光重合開始剤と任意の光酸発生剤を組み合わせて用いる事もできる。光重合開始剤及び光酸発生剤の含有量は、重合体AまたはBのいずれかの量に対して、1〜100質量%の範囲が好ましく、更に1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
本発明に於けるプロセスレス感光性平版印刷版を構成する他の好ましい要素として、分子内に重合性不飽和結合基を有する重合性モノマーを挙げる事ができる。重合性不飽和結合基とは、光重合開始剤または光酸発生剤の作用により、光重合反応或いは光架橋反応に寄与しうるエチレン性不飽和二重結合基を表す。特に、分子内に重合性不飽和結合基を2つ以上有する多官能重合性モノマーを使用する事が好ましい。このような重合性モノマーの例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレート系モノマー、これら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えた多官能メタクリレート系モノマー、同様にイタコン酸エステル系モノマー、クロトン酸エステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー等が挙げられる。
他の重合性モノマーの例としては、スチレン誘導体が挙げられる。このスチレン誘導体としては、分子内に2つ以上のビニルフェニル基を有する化合物が好ましい。例えば、1,4−ジビニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ビス(4−ビニルベンジルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(4−ビニルベンジルオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ビニルベンジルオキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−ビニルベンジルオキシ)フェニル]プロパン、1,1,2,2−テトラキス[4−(4−ビニルベンジルオキシ)フェニル]エタン、α,α,α’,α’−テトラキス[4−(4−ビニルベンジルオキシ)]p−キシレン、1,2−ビス(4−ビニルベンジルチオ)エタン、1,4−ビス(4−ビニルベンジルチオ)ブタン、ビス[2−(4−ビニルベンジルチオ)エチル]エーテル、2,5−ビス(4−ビニルベンジルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,4,6−トリス(4−ビニルベンジルチオ)−1,3,5−トリアジン、N,N−ビス(4−ビニルベンジル)−N−メチルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−ビニルベンジル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−ビニルベンジル)p−フェニレンジアミン、マレイン酸ビス(4−ビニルベンジル)エステル等が挙げられる。
或いは、上記の重合性モノマーに代えてラジカル重合性を有する重合性オリゴマーも好ましく用いる事ができる。例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を重合性モノマーと同様に用いる事ができる。
上述した本発明のプロセスレス感光性印刷版の感光層組成物の中でも、特に、重合体Bを用いたプロセスレス感光性平版印刷版が、画像部の強度が特に優れている点で好ましい。重合体Bからなるプロセスレス感光性平版印刷版を平版印刷版として使用した場合には、現像処理を行わずに印刷機に装着して印刷するのに特に好適であり、かつ耐刷性に優れた平版印刷版原版を得る事ができる。
次に本発明に好ましく用いられる750〜1100nmの光を吸収する近赤外吸収色素について説明する。750〜1100nmの光を吸収する近赤外吸収色素として、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、クマリン、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物が挙げられ、更に、欧州特許第0,568,993号、米国特許第4,508,811号、同5,227,227号に記載の化合物も用いる事ができる。
好ましく用いる事の出来る750〜1100nmの光を吸収する近赤外吸収色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。750〜1100nmの光を吸収する近赤外吸収色素を下記に示す。
上記のような750〜1100nmの光を吸収する近赤外吸収色素の含有量には好ましい範囲が存在し、プロセスレス感光性平版印刷版の感光層1平方メートル当たり1〜300mgの範囲で添加する事が好ましく、更に、感光層1平方メートル当たり5〜200mgの範囲で添加する事が特に好ましい。
本発明のプロセスレス感光性平版印刷版の感光層は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加する事も好ましく行われる。特に、重合性不飽和結合基の熱重合或いは熱架橋を防止し、長期にわたる保存性を向上させる目的で、種々の重合禁止剤を添加する事が好ましく行われる。この場合の重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物等が好ましく使用され、特にハイドロキノンが好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、前述の重合体Aもしくは重合体B100質量部に対して0.1質量部から10質量部の範囲で使用する事が好ましい。
プロセスレス感光性平版印刷版の感光層を構成する他の要素として、着色剤の添加も好ましく行う事ができる。着色剤としては、露光及び現像処理後に於いて、画像部の視認性を高める目的で使用されるものであり、カーボンブラック、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、アントラキノン系色素、アゾ系色素等の各種の色素及び顔料を使用する事ができ、前述の重合体Aもしくは重合体B1質量部に対して0.005質量部から0.5質量部の範囲で使用する事が好ましい。
プロセスレス感光性平版印刷版の感光層を構成する要素については、上述の要素以外にも種々の目的で他の要素を追加して添加する事もできる。例えば、プロセスレス感光性平版印刷版のブロッキングを防止する目的もしくは現像後の画像のシャープネス性を向上させる等の目的で無機物微粒子或いは有機物微粒子を添加する事も好ましく行われる。
プロセスレス感光性平版印刷版の感光層は上述した要素から構成される塗液を、支持体上に塗布、乾燥して作製される。塗布方法としては、公知の種々の方法を用いる事ができ、例えば、バーコーター塗布、カーテン塗布、ブレード塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、回転塗布、ディップ塗布等を挙げる事ができる。平版印刷版として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.5μmから10μmの範囲の乾燥厚みで形成する事が好ましく、更に1μmから5μmの範囲である事が耐刷性を大幅に向上させるために好ましい。
本発明の平版印刷版の支持体として用いられる好適なプラスチックフィルム支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース等が挙げられる。これらプラスチックフィルムの表面は、感光層との接着性を良好にし、非画像部に保水性を与える目的で、各種親水化処理が施される。このような親水化処理としては、化学的処理、放電処理、グロー放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面処理、及び表面に親水性層を塗設する方法等が挙げられ、これらの処理は組み合わせて実施しても良い。平版印刷用途として用いる場合には、耐刷が要求されるため、親水性表面が強固にプラスチックフィルムと結合する必要がある。このためプラスチックフィルムに化学的、物理的な表面処理を施した後、水に対して溶解や膨潤のする事のない親水性層を塗設し、その結合力を高める方法が特に好ましく行われる。
上記のようにして支持体上に形成された感光層を有するプロセスレス感光性平版印刷版材料は、密着露光或いはレーザー走査露光を行った後、現像液により未露光部を除去する事でパターン形成が行われる。露光された部分は架橋する事で現像液に対する溶解性が低下し、画像部が形成される。
本発明のプロセスレス感光性平版印刷版材料は、水現像できる事が大きな特徴である。本発明における水現像とは、厳密な意味で水のみで現像を行うもののみに限定されるものではないが、水現像に用いられる現像液は、従来から一般に用いられているアルカリ剤を多量に含有する強アルカリの現像液(通常pH10を越える)とは異なり、実質的にアルカリ剤は含まないので、水現像とはこの現像液もこれに含む。ここで実質的に含まないとは、アルカリ剤を水1リットル当たり5g以下の添加量である事を意味する。従って、本発明の水現像に用いられる現像液のpHは10以下であり、好ましくはpH9.5以下であり、より好ましくはpH9以下である。pHの下限は3程度である。本発明の水現像に用いられる現像液は、水が現像液全体の70質量%以上、更に80質量%以上を占めるものであり、他に添加剤として、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルセルソルブ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種有機溶剤、或いは、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤等を添加する事もできる。更に、市販の印刷版用版面保護液や、印刷版用湿し水を使用する事もできる。
次に、本発明の親水性層に用いられる水溶性ポリマーの代表的な合成例を挙げるが、他の例示化合物も同様の方法、或いは上述したような従来公知の方法を参考にして容易に合成する事ができる。感光層の重合体の合成方法は特開2003−215301号公報に記載の合成例に従って合成する事ができる。
合成例1
親水性ポリマー(A−3)の合成例
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リッター4つ口フラスコ内に、アクリルアミド80g及びアクリル酸20gを秤量し、エタノール100g及び純水450gを添加して溶解した。60℃に調節した水浴上で、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を0.4g添加して重合を開始した。重合開始後、系の温度が上昇するため、冷水を添加して内温を70℃に保ち、この温度で4時間攪拌を続けた。得られた共重合体溶液は精製せず、そのまま評価に用いた。ここで得られた親水性ポリマーの平均分子量は約10万であった。他の関連する水溶性ポリマーも同様の合成方法にて合成した。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。