発明の詳細な説明
技術分野
本発明は、一般に、インビトロでの組織サンプルの解析的試験、およびより特に薬剤誘発肝細胞毒性の発生を予測するためのバイオマーカーとしての遺伝子多型の解析に関する。
関連技術
糖尿病性患者の微小血管系の機能障害から発生する障害の中に網膜症があり、それはそれ自体臨床的に視覚障害として出現し、盲目に至り得ます。糖尿病性網膜症は毛細血管瘤、過剰な血管透過性、網膜の非灌流(nonperfusion)領域および網膜の血管新生により特徴付けられる。多くの証拠が、高い血糖グルコースレベルと、臓器機能の欠損の原因である根底の病巣の発生の間の因果関係を示唆する。レビューのためにWay KJ et al., Diabetic Medicine 18: 945 59(2001)参照。
高血糖の影響にはジアシルグリセロール(DAG)−タンパク質キナーゼC(PKC)シグナル伝達経路の過剰な活性化がある。細胞培養実験および糖尿病の動物モデルの両方で、血管内皮細胞におけるDAGおよびPKCの過剰なレベルおよび活性が証明されている。Koya D & King GL, Diabetes 47: 859 866(1998); Ishii H et al., J Mol Med 76: 21 31(1998)およびWay KJ et al., Trends Pharmacol Sci 21: 181 7(2000)。PKCセリンスレオニンキナーゼのイソ型の多くの活性化が、膜リン脂質の開裂産物であるDAGに依存する。PKCセリンスレオニンキナーゼの活性化イソ型の中で、優勢なイソ型PKCβがあり、これは糖尿病性網膜症と関連する。DAGは、通常膜リン脂質のアゴニスト刺激加水分解により産生されるが、またグルコースの直接代謝により新規合成もされ得る。Dunlop ME & Larkins RG, Biochem Biophys Res Commun 132: 467 73(1985); Ishii H et al., J Mol Med 76: 21 31(1998)。高血糖に応答して、DAGの新規合成は実質的に増加し、PKCβの活性化をもたらす。Ishii H et al., J Mol Med 76: 21 31(1998)。
DAG PKC経路の継続的活性化の結果として、血管機能の多くの態様が影響を受ける。サイトカイン活性化および白血球接着が刺激され;血流および微小血管収縮性が変化し;そして細胞外マトリックス合成が増加し、基底膜の肥厚に至る。網膜の微小環境は、上記の変化の結果、虚血性となる。血管新生の強力な刺激因子である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現が虚血に応答して、および、他のPKCβ依存性機構により上方制御される。Aiello LP et al., Diabetes 46: 1473 80(1997)。
N−ベンゾイル−スタウロスポリン(PKC412)は、PKCおよび必須のVEGF受容体であるKDR(キナーゼ挿入ドメイン含有受容体、VEGF R2としても既知)の両方の阻害剤である。N−ベンゾイル−スタウロスポリンは、糖尿病性黄斑浮腫の処置を含むいくつかの適応症に関して開発されている。米国特許6,214,819参照。米国特許出願20030119812、20030125343および20030153551もまた参照。将来有望な医薬であるが、N−ベンゾイル−スタウロスポリンでの処置は、肝臓毒性を含む既知の副作用を引き起こし得る。故に、N−ベンゾイル−スタウロスポリンの副作用を軽減するための技術の必要性がある。
発明の概要
本発明は、薬剤誘発肝細胞毒性を発症する危険性がある対象を決定するための方法を提供する。一つの態様において、本発明は、スタウロスポリン治療中に肝細胞毒性を経験する危険性のある患者を同定するためのゲノム解析の使用を提供する。特定の態様において、スタウロスポリン治療は、糖尿病性黄斑浮腫の処置のためのN−ベンゾイル−スタウロスポリンの投与を含む。肝細胞毒性予測は、血清アスパルテートトランスアミナーゼ(AST)レベルの測定を含む。他の態様において、本発明は、これらの患者のための最適処置方針の決定法を提供する。
本発明はまた、薬剤摂取前に肝細胞毒性を予測するための臨床アッセイ、キットおよび試薬も提供する。一つの態様において、キットは、IL1A遺伝子における遺伝子多型の決定のための試薬を含む。特定の態様において、遺伝子多型は、IL1A遺伝子のPG座位ID279である。PG座位ID279の遺伝子多型のアッセイにおいて、CC遺伝子型(配列番号1)が肝細胞毒性の高い危険性の予測のためのバイオマーカーであり、一方CT遺伝子型(配列番号1および2)およびTT遺伝子型(配列番号2)が、肝細胞毒性の低い危険性のバイオマーカーである。他の態様において、キットは、IL1A遺伝子の遺伝子多型の決定のための試薬を含む。特定の態様において、遺伝子多型は、IL1A遺伝子のPG座位ID302である。PG座位ID302の遺伝子多型のアッセイにおいて、GG遺伝子型(配列番号3)が肝細胞毒性の高い危険性の予測のためのバイオマーカーであり、一方GT遺伝子型(配列番号3および4)およびTT遺伝子型(配列番号4)が、肝細胞毒性の低い危険性のバイオマーカーである。
図面の簡単な記載
図1はAST/ALT(アスパルテートアミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ)最大レベル対IL1A(インターロイキン1アルファ;PG座位ID279)を示す。散布図は、臨床試験におけるIL1A PG座位ID279についてCCまたはT(CTまたはTT)の遺伝子型を有する対象についての(A)最大アスパルテートアミノトランスフェラーゼレベル、(B)AST MAXと正常上限(ULN)の比率、(C)最大アラニンアミノトランスフェラーゼレベルおよび(D)ALT MAXとULNの比率を示す。アスパルテートアミノトランスフェラーゼの上限は3−64歳で42U/Lおよび65歳以上で55U/Lであり、アラニンアミノトランスフェラーゼはすべての年齢で48U/Lである。ULNを線で示す。
図2は、AST/ALT(アスパルテートアミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ)最大レベル対IL1A(インターロイキン1アルファ;PG座位ID302)を示す。散布図は、臨床試験におけるIL1A PG座位ID302についてGまたはT(GTまたはTT)の遺伝子型を有する対象についての(A)最大アラニンアミノトランスフェラーゼレベル、(B)AST MAXとULNの比率、(C)最大ALTレベルおよび(D)ALT MAXとULNの比率のプロットを示す。アスパルテートアミノトランスフェラーゼの上限は3−64歳で42U/Lおよび65歳以上で55U/Lであり、アラニンアミノトランスフェラーゼはすべての年齢で48U/Lである。ULNを線で示す。
発明の詳細な記載
本発明は、患者が薬剤処置中に肝細胞毒性を経験するか否かを、実際の薬剤摂取前に決定するための方法を有利に提供する。本発明は、故に、医師が(1)薬剤の用量を変える、(2)付加的なまたは別の併用投薬を提供する、または(3)その患者にその薬剤を処方しないように選択することのいずれかを行うことを助けることにより、患者に対してより安全な処置レジメンを提供する。
関連した遺伝子多型は、糖尿病性黄斑浮腫の対照で行われたN−ベンゾイル−スタウロスポリンの多施設、無作為、二重盲プラセボ対照用量決定第II相試験で同定された。N−ベンゾイル−スタウロスポリンの安全性を対象において評価し、付加的な薬物動態情報を回収した。N−ベンゾイル−スタウロスポリンは良好な安全性を示したが、臨床試験に参加した140名の対象のうち9名が、正常上限(ULN)を超える肝臓トランスアミナーゼの数倍の上昇で定義される肝細胞毒性を経験した。対象を、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のいずれかが来院3、4または5回目において上限を超える数倍の上昇をしたとき、肝細胞毒性を経験したとして区別した(flagged)。
遺伝子型が同定された7種の遺伝子からの18種の一ヌクレオチド多型(SNP)のうち、インターロイキン1アルファ(IL1A)遺伝子中の2種が来院3、4または5で記録された最大血清アスパルテートトランスアミナーゼレベルと関連した。IL1Aは、急性相応答において中枢的役割を有する炎症性サイトカインをコードする。1個のIL1A多型はIL1Aのプロモーター領域に位置し、他方はアミノ酸位置114のセリンからアラニンへの置換をもたらす。これらの結果は、IL1Aまたは2q14上のその近くに位置する遺伝子の多型が、N−ベンゾイル−スタウロスポリンの投与後の肝臓毒性の発症と直接関係し得ることを示唆する。
本明細書で使用するIL1A遺伝子座位における多型は、遺伝子多型が薬剤誘発肝細胞毒性または血清アスパルテートトランスアミナーゼの上昇と有意に相関するとき、肝細胞毒性の“高い”危険性を“予測”するものである。例えば、PG座位ID279のCC遺伝子型およびPG座位ID302のGG遺伝子型が肝細胞毒性の高い危険性を予測するものであるとの下記参照。本明細書で使用するIL1A遺伝子座位における多型は、遺伝子多型が肝細胞毒性の発症なしと有意に相関するとき、肝細胞毒性の“低い”危険性を“予測”するものである。例えば、PG座位ID279のCTまたはTT遺伝子型およびPG座位ID302のGTまたはTT遺伝子型が肝細胞毒性の低い危険性を予測するものであるとの下記参照。有意差(p値)は、分散分析(ANOVA)またはフィッシャーの直接確率により決定できる。ある種のIL1A遺伝子位置での一SNP多型の、肝細胞毒性の発症の高い危険性があるとの決定およびそのIL1A遺伝子位置での他のSNP多型の、肝細胞毒性の発症の低い危険性があるとの決定は、決定のより高い精度のために組み合わせ得る。PG座位ID279および302について、IL1A多型と血清アスパルテートトランスアミナーゼレベルの関連は、0.0089および0.0097のp値を有した。
これらの結果は、スタウロスポリン誘導体の構造的類似性および肝臓での作用機構に基づいて、何らかのスタウロスポリン誘導体の投与後の患者の肝細胞毒性の予測に合理的に延長できる。スタウロスポリン誘導体の中で、米国特許5,093,330に記載されているものがある。好ましい化合物は、N−(2−アミノアセチル)スタウロスポリン;N−(3,5−ジニトロベンゾイル)スタウロスポリン;N−(3−カルボキシプロピオニル)スタウロスポリン;N−(3−フルオロベンゾイル)スタウロスポリン;N−(3−ニトロベンゾイル)スタウロスポリン;N−(4−カルボキシベンゾイル)スタウロスポリン;N−[(tert−ブトキシカルボニルアミノ)アセチル]−スタウロスポリン;N−アラニルスタウロスポリン;N−ベンゾイル−スタウロスポリン;N−カルボキシメチル−スタウロスポリン;N−エチル−スタウロスポリン;N−メチルアミノチオカルボニルスタウロスポリン;N−フェニルカルバモイルスタウロスポリン;N−tert−ブトキシカルボニルスタウロスポリン;そして−N−トリフルオロアセチルスタウロスポリンを含む、N−アシルスタウロスポリンおよびそれらの薬学的に許容される塩である。
さらに、この結果は、糖尿病性黄斑浮腫以外の疾患を処置している患者の肝細胞毒性のも延長できる。本発明の方法は、脊椎動物対象、特に哺乳類対象、より特にヒト対象に適用できる。本発明は、特に糖尿病対象に適用できる。
肝細胞毒性の診断は、血清酵素レベルのアッセイにより達成できる。肝臓機能障害の指標である血清酵素アッセイは医学分野の当業者には既知であり、病院の検査室で日常的である。アスパルテートトランスアミナーゼ(AST)の血清レベルをベースにした肝細胞毒性および実施例での使用について:この解析で使用する肝細胞毒性は、来院3、4または5における血清アスパルテートトランスアミナーゼまたはアラニンアミノトランスフェラーゼの正常上限(ULN)を超える、数倍の上昇に基づいた。血清アスパルテートトランスアミナーゼの正常上限は3−64歳で42U/Lであり、65歳以上で55U/Lである;血清アラニンアミノトランスフェラーゼについて、正常上限は48U/Lである(Smithkline Beecham Clinical Laboratories Reference Alert Ranges)。来院3、4または5でのいずれかの酵素の上昇が肝細胞毒性の性質であるが、薬剤を投与していないときのその後の来院の間のトランスアミナーゼ上昇は無視した。さらに、基線(来院2)で上昇した肝臓機能試験結果であった対象は、薬剤の投与後に酵素レベルが上昇したにもかかわらず、肝細胞毒性の経験を有するとして退けなかった。9名の対象が肝細胞毒性を有するとして退けた。この中で、6名が臨床薬理遺伝学解析に同意した。
多型対立遺伝子を担持する個体はDNA、RNA、またはタンパク質レベルで、当業者に既知の様々な方法を使用して検出できる。同定および検出の戦略は、例えばEP730,663、EP717,113、およびPCT US97/02102に記載されている。本発明の方法は、予め特徴付けられた多型の検出を含み得る。すなわち、ジェノタイピング位置およびその部位に存在する多型の形態の性質が既に決定されている(上記の調べられた遺伝子に関する記載参照)。この情報の利用可能性は、既知の多型の形態の特異的同定のために設計すべきプローブの組を可能にする。一ヌクレオチド多型を含む対立遺伝子の同定は、標的サンプルからのDNAの増幅を含み得る。これは例えば、PCRにより達成できる。一般のPCR法は:Principles and Applications for DNA Amplification, (ed. Erlich, Freeman Press, New York, New York, 1992);PCRプロトコールは:A Guide to Methods and Applications(eds. Innis, et al., Academic Press, San Diego, Calif., 1990)を参照。特異的DNA配列における多型の検出は、対立遺伝子特異的制限酵素開裂を利用した制限フラグメント長多型検出(Kan & Dozy, Lancet II: 910 912(1978))、固定化オリゴヌクレオチド(Saiki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 6230 6234(1969))またはオリゴヌクレオチドアレイ(Maskos & Southern, Nucl. Acids Res. 21: 2269 2270(1993))を含む、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーション(Wallace et al, Nucl. Acids Res. 6: 3543 3557(1978))、対立遺伝子特異的PCR(Newton et al., Nucl. Acids Res. 17: 2503 2516(1989))、ミスマッチ修復検出(MRD)(Faham & Cox, Genome Res. 5: 474 482(1995))、MutSタンパク質の結合(Wagner et al., Nucl. Acids Res. 23: 3944 3948(1995)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Fisher & Lerman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80: 1579 1583(1983))、一本鎖高次構造多型検出(Orita et al., Genomics 5: 874 879(1983))、不適正塩基対でのRNAse開裂(Myers et al., Science 230: 1242(1985))、ヘテロ二本鎖DNAの化学的(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 8Z: 4397 4401(1988))もしくは酵素的(Youil et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92: 87 91(1995))開裂、対立遺伝子特異的プライマー伸長法に基づく方法(Syvanen et al., Genomics 8: 684 692(1990))、遺伝学的ビット解析(GBA)(Nikiforov et al., Nucl. Acids Res. 22: 4167 4175(1994))、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landegren et al., Science 241: 1077(1988))、対立遺伝子特異的ライゲーション連鎖反応(LCR)(Barrany, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 189 193(1991))、ギャップLCR(Abravaya et al., Nucl. Acids Res. 23: 675 682(1995))、当分野で既知の標準法を使用した放射活性および/または蛍光DNAシークエンシング、およびペプチド核酸(PNA)アッセイ(Orum et al., Nucl. Acids Res. 21: 5332 5356(1993); Thiede et al., Nucl. Acids Res. 24: 983 984(1996))を含むが、これらに限定されない様々な方法により達成できる。さらなる手引きは、Sambrook J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York, 2000)により提供される。
N−ベンゾイル−スタウロスポリンおよび関連スタウロスポリン(staurospaurine)誘導体の使用の手引きは、米国特許5,744,460;5,827,846;6,018,042;6,153,599および6,214,819に提供され、これらのいずれも引用して本明細書に包含する。眼血管新生疾患の処置のためのおよび網膜における毛細管透過性の減少におけるN−ベンゾイル−スタウロスポリンおよび関連スタウロスポリン(staurospaurine)誘導体の使用の手引きは米国特許出願20030119812、20030125343および20030153551に提供され、これらのいずれも引用して本明細書に包含する。
一ヌクレオチド多型。ヒトゲノムにおける配列の変異は、主に一ヌクレオチド多型(“SNP”)であり、残りの配列変異は短タンデム反復(マイクロサテライトを含む)、長タンデム反復(ミニサテライト)ならびに他の挿入および欠失から成る。SNPは、ヒト集団において2個の別の塩基が相当な頻度(すなわち>1%)で発生する位置である。SNPは、多型の存在のために、その種のあるメンバーは突然変異していない配列(すなわち、基本の“対立遺伝子”)を有し得て、他のメンバーが突然変異した配列(すなわち、変異または突然変異対立遺伝子)を有し得る点で、“対立遺伝子”である。最も単純な例の場合、1個だけの突然変異した配列が存在し得、そしてその多型が二対立遺伝子(diallelic)であると言える。別の突然変異の発生が、三対立遺伝子(triallelic)多型などを発生し得る。SNPはゲノム中に広がっており、遺伝子の機能を変えるSNPは、表現型変異に直接関与し得る。それらの普遍性および広汎性の特性から、SNPはヒト疾患状態に関与する遺伝子の位置決定のための重要なツールの可能性を有し、例えば、2,227個のSNPをDNAの2.3メガベース領域にわたり位置づけしたパイロット試験を記載する、Wang et al., Science 280: 1077-1082(1998)を参照のこと。
一ヌクレオチド多型と特定の表現型の間の関連は、SNPが表現型の原因であることを示唆せず、または必須条件としない。その代わり、このような関連は、SNPが、表現型の決定因子が存在するゲノム上の位置の近くに位置しているときのみ示され得、従って、これらの決定因子との、故に目的の表現型との関連がより発見されそうである。故に、SNPは‘真の'機能的変異と連鎖不平衡(LD)である。LDは、ゲノムの異なる2箇所に位置する対立遺伝子が予測されるよりも高く関連しているときに対立遺伝子関係が存在するとしても既知である。
故に、SNPは、特定の表現型の原因となる突然変異へのその近接性の観点から価値を有するマーカーとして働き得る。
疾患と関連するSNPは、そららが位置する遺伝子の機能に直接影響し得る。配列変異体は、アミノ酸変化をもたらし得るか、またはエクソン−イントロン・スプライシングを変え得て、それにより関連したタンパク質を直接修飾するか、または制御領域に位置し得、mRNAの発現のサイクルもしくは安定性を変える、Nowotny P Current Opinions in Neurobiology 11: 637-641(2001)を参照のこと。
多くの一般的疾患を発症する危険性およびこれらの状態の処置に使用する医薬の代謝が、根底のゲノム変異に実質的に影響されるが、何らかの1個の変異体の影響は少ないはずであることが徐々に明らかになってきている。
従って、SNPと臨床表現型の関連は、(1)SNPは、表現型に機能的に関与する、または、(2)表現型の原因であるゲノム上のSNPの近くに他の突然変異が存在することを示唆する。2番目の可能性は、遺伝の生物学に基づく。DNAの大部分(large piece)は遺伝し、互いに近接した多くの世代で関係のないマーカーは、個体において組み換えられていない可能性があり、すなわち、マーカーは連鎖不平衡(LD)である。
SNPの同定および特徴付け。多くの異なる方法を使用し、SNPを同定および特徴付けでき、一本鎖高次構造多型解析、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)によるヘテロ二本鎖解析、直接DNAシークエンシングおよび計算的(computational)方法を含む、Shi MM, Clin Chem 47: 164-172(2001)。公的データベースにおける配列情報の財産のおかげで、計算的ツールを使用して、ある配列について個々に提供された配列(cDNAまたはゲノム配列のいずれか)を整列させることにより、コンピュータ内でSNPを同定できる。実験的に得たおよびコンピュータ法により得たSNPの比較が、SNPFinder(http: //Ipgws.nci.nih.gov: 82/perl/snp/snp_cgi.pl)により発見された55%の候補SNPがまた実験的に発見されていることを示す、Cox et al. Hum Mutat 17: 141-150(2001)参照。しかしながら、これらのコンピュータ法は、真のSNPの27%しか発見できなかった。
最も一般的なSNP分類法は、現在ハイブリダイゼーション、プライマー伸長法および開裂法を含む。これらの方法の各々、適当な検出系に接続しなければならない。検出法は、蛍光分極(Chan X et al. Genome Res 9: 492-499(1999))、ピロホスフェート放出の発光検出(ピロシーケンス)(Ahmadiian A et al., Anal Biochem 280: 103-10(2000)参照)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースの開裂アッセイ、DHPLC、および質量分析(Shi MM, Clin Chem 47: 164-172(2001)および米国特許6,300,076B1参照)を含む。SNPを同定し、特徴付ける他の方法は、米国特許6,297,018B1および6,300,063B1に記載されている。上記引用文献の開示を引用してその全体を本明細書に包含する。
特に好ましい態様において、多型の検出は、いわゆるInvaderTM法(Third Wave Technologies Inc. Madison, Wisconsin, USAから入手可能)の手段により達成できる。このアッセイにおいて、相補的DNA鋳型と結合したとき、特異的上流“Invader”オリゴヌクレオチドおよび一部重複した下流プローブが一体となって特異的構造を形成する。この構造を、開裂酵素により認識し、特異的部位で切断し、これがプローブオリゴヌクレオチドの5'フラップをもたらす。次いで、このフラグメントは、反応混合物中に含まれる合成二次標的および二次蛍光標識シグナルプローブの“Invader”オリゴヌクレオチドとして働く。これは、開裂酵素による二次シグナルプローブの特異的開裂をもたらす。蛍光シグナルは、蛍光共鳴エネルギー移動できる色素分子で標識されたこの二次プローブが開裂したときに産生される。開裂は、重複DNA配列またはフラップにより形成される構造に関して高度な要求を有し、従って、下流DNA鎖の開裂部位の直ぐ上流の1塩基対ミスマッチの特異的検出に使用できる。Ryan D et al. Molecular Diagnosis 4(2): 135-144(1999)およびLyamichev V et al. Nature Biotechnology 17: 292-296(1999)、またUS特許5,846,717および6,001,567を参照のこと(これらの開示を引用してその全体を本明細書に包含する)。
ある態様において、組成物は、2箇所またはそれ以上の多型部位でのヌクレオチドの同一性を同時に調査するための2個またはそれ以上の異なって標識されたジェノタイピングオリゴヌクレオチドを含む。プライマー組成物が、多型部位を含む2個またはそれ移住オノ領域の同時のターゲッティングおよび増幅を可能にするために、対立遺伝子特異的プライマー対を2組またはそれ以上含むことも考慮される。
本発明のジェノタイピングオリゴヌクレオチドはまたマイクロチップ、ビーズまたはガラススライドのような固体表面上に固定化され、またはそこに合成される(例えば、WO98/20020およびWO98/20019参照)。このような固定化ジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、プローブハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長アッセイを含むが、これらに限定されない多型検出アッセイにおいて使用し得る。本発明の固定化ジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、同時に複数遺伝子の多型についてDNAサンプルを急速にスクリーニングするための設計されたオリゴヌクレオチドの正しいアレイ(ordered array)を含み得る。
本発明の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、3'末端ヌクレオチド、または好ましくは3'の最後から2番目のヌクレオチドを有し、すなわち、特定のSNPの1ヌクレオチドにのみ相補的、それによりそのヌクレオチドを含む対立遺伝子が存在するときにのみポリメラーゼ−介在伸長のためのプライマーとして働く。コーディングまたは非コーディング鎖のいずれかにハイブリダイズする対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーは本発明により意図される。遺伝子多型を検出するためのASOプライマーは、当業者に既知の方法を使用して開発されよう。
本発明の他のジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、ここで同定した新規多型部位の1〜数ヌクレオチド下流に位置する標的領域とハイブリダイズする。このようなオリゴヌクレオチドは、ここに記載の新規多型を検出するためのポリメラーゼ−介在プライマー伸長法において有用であり、従って、このようなジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、本明細書で“プライマー伸長オリゴヌクレオチド”と呼ぶ。好ましい態様において、プライマー伸長オリゴヌクレオチドの3'末端は、多型部位に直ぐに隣接して位置するヌクレオチドに相補的なデオキシヌクレオチドである。
他の態様において、本発明は、別々の容器に包装された、少なくとも2個のジェノタイピングオリゴヌクレオチドを含む、キットを提供する。本キットは、別々の容器に包装されたハイブリダイゼーション緩衝液(オリゴヌクレオチドをプローブとして使用すべきであるとき)のような他の成分も含み得る。あるいは、オリゴヌクレオチドを標的領域の増幅のために使用すべきであるとき、本キットは、別々の容器に包装されて、ポリメラーゼおよびPCRのようなポリメラーゼが介在するプライマー伸長法に最適な反応緩衝液を含み得る。
上記オリゴヌクレオチド組成物およびキットは、個体の遺伝子のジェノタイピングおよび/またはハプロタイピングのための方法に有用である。本明細書で使用する“遺伝子型”および“ハプロタイプ”は、各々遺伝子型またはハプロタイプが、本明細書に記載の新規多型部位の1箇所またはそれ以上に存在するヌクレオチド対またはヌクレオチドを各々含み、所望によりまた遺伝子中の1箇所またはそれ以上の多型部位に存在する付加的ヌクレオチド対またはヌクレオチドを含み得る。付加的多型部位は現在知られている多型部位または、今後発見される部位であり得る。
ジェノタイピング法の一つの態様は、個体から、該個体に存在する2コピーの遺伝子またはそのフラグメントを含む核酸混合物を単離し、個体に遺伝子型を割り当てるために、該2コピーにおける1箇所またはそれ以上の多型部位のヌクレオチド対の同一性を決定することを含む。当業者には容易に理解される通り、個体の遺伝子の“コピー”は同じ対立遺伝子であり得、または異なる対立遺伝子であり得る。特に好ましい態様において、ジェノタイピング法は、各多型部位でヌクレオチド対の同一性を決定することを含む。
典型的に、核酸混合物を、血液サンプルまたは組織サンプルのような個体から採取した生物学的サンプルから単離する。適当な組織サンプルは全血、精液、唾液、涙、尿、糞便、汗、口内スメア、皮膚および毛を含む。核酸混合物はゲノムDNA、mRNAまたはcDNAから成り、後者の2個の場合、生物学的サンプルは遺伝子が発現されている器官から得なければならない。さらにmRNAまたはcDNA調製物を、イントロンまたは5'および3'非転写領域に位置する多型の検出に使用すべきでないことは当業者に理解されよう。遺伝子フラグメントを単離するならば、それは遺伝子型を同定すべき多型部位を含まなければならない。
ハプロタイピング法の一つの態様は、個体から、該個体に存在する2コピーの遺伝子またはそのフラグメントの一方のみを含む核酸混合物を単離し、個体にハプロタイプを割り当てるために、該コピーにおける1箇所またはそれ以上の多型部位のヌクレオチドの同一性を決定することを含む。核酸は遺伝子またはフラグメントの2コピーを分離できるすべての方法を使用して単離でき、上記でイソイ電子の製造について記載の方法の一つを含むがこれらに限定されず、標的インビボクローニングが好ましい方法である。当業者には容易に認識される通り、すべての個々のクローンが、個体に存在する2遺伝子コピーの一方におけるハプロタイプ情報のみを提供する。個体の他方のコピーに関するハプロタイプ情報が望まれるとき、さらなるクローンを試験する必要がある。典型的に、個体における遺伝子の両方のコピーのハプロタイピングで90%以上の確率を得るために、少なくとも5クローンを試験すべきである。特に好ましい態様において、各多型部位のヌクレオチドを同定する。
好ましい態様において、ハプロタイプ対を、個体に存在する遺伝子の各コピーにおける1箇所またはそれ以上の多型部位のヌクレオチドの位相配列(phased sequence)について同定することにより決定する。特に好ましい態様において、ハプロタイピング法は、遺伝子の各コピーにおける各多型部位のヌクレオチドの位相配列の同定を含む。遺伝子の両方のコピーをハプロタイピングするとき、同定工程は、好ましくは別々の容器に入れられた遺伝子の各コピーで行う。しかしながら、2コピーを異なる標識で標識したとき、または他の方法で別々に区別できるかまたは同定できるとき、数例では同じ容器中で本方法を行うことが可能であることも想定する。例えば、遺伝子の第一および第二コピーを、異なる第一および第二蛍光色素で各々標識し、第三のさらに異なる蛍光色素で標識した対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを多型部位のアッセイに使用するならば、第一および第三の色素の組み合わせの検出が第一遺伝子コピーにおける多型を同定し、一方、第二および第三の色素の組み合わせの検出が、第二遺伝子コピーにおける多型を同定するであろう。
ジェノタイピングおよびハプロタイピング法の両方において、多型部位でのヌクレオチド(またはヌクレオチド対)の同一性を、遺伝子またはそのフラグメントの一方または両方のコピーから直接多型部位を含む標的領域を増幅し、そして増幅領域の配列を慣用法により決定することにより決定し得る。多型部位において、該個体がその部位でホモ接合体であるならば1個のヌクレオチドのみが検出されるが、その部位でヘテロ接合体であるならば、その個体において2種の異なるヌクレオチドが検出されるであろうことは当業者に容易に認識されよう。多型は直接(ポジティブタイプ同定として既知)または推論により(ネガティブタイプ同定と呼ばれる)同定し得る。例えば、基準集団においてSNPがグアニンおよびシトシンであることが既知であるとき、該部位はその部位でホモ接合体である病気(ail)の個体についてグアニンまたはシトシンのいずれかであるか、または該個体がその部位でヘテロ接合体であるとき、グアニンおよびシトシンの両方であるかを正に決定できる。あるいは、該部位がグアニンではない(故にシトシン/シトシンである)またはシトシンではない(故にグアニン/グアニン)であると負に決定できる。
加えて、本明細書に記載の新規多型部位のいずれかの場所に存在する対立遺伝子の同一性を、目的である多型部位と連鎖不平衡にある本明細書に記載していない多型部位のジェノタイピングから間接的に決定し得る。第一の部位の特定の変異の存在が、第二の部位の他の変異の予測性を増加させるとき、2箇所の部位は連鎖不平衡にあると言うべきである(Stevens JC, Mol Diag 4: 309-317(1999)参照)。本明細書に記載の多型部位と連鎖不平衡にある多型部位は、本明細書で試験していない遺伝子の領域または他のゲノム領域に位置し得る。本明細書に記載の新規多型部位と連鎖不平衡にある多型部位のジェノタイピングは、多型部位の対立遺伝子の同定の検出について記載の方法のいずれかを含むが、これらに限定されない方法により行い得る。
標的領域は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許4,965,188)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 189-193(1991);PCT特許出願WO90/01069)、およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landegren et al., Science 241: 1077-1080(1988))を含むが、これらに限定されないオリゴヌクレオチド定方向(directed)増幅法のいずれかを使用して増幅し得る。このような方法においてプライマーまたはプローブとして有用なオリゴヌクレオチドは、多型部位を含むかそれに隣接した核酸の領域と特異的にハイブリダイズすべきである。典型的に、オリゴヌクレオチドは10から35ヌクレオチドの間の長さおよび好ましくは15から30ヌクレオチドの間の長さである。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、20から25ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドの正確な長さは、当業者が通常考慮し、実施している多くの因子に依存するであろう。
他の既知の核酸増幅法を標的領域の増幅に使用でき、転写ベースの増幅系(米国特許5,130,238;EP329,822;米国特許5,169,766、WO89/06700)および等温法(Walker et al., Proc Natl Acad Sci USA 89: 392-396(1992))を含む。
標的領域中の多型は、当分野で既知の数種のハイブリダイゼーションをベースにした方法の一つを使用して、増幅前または後にまたアッセイし得る。典型的に、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを、このような方法の実施に際して使用する。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、異なって標識されたプローブ対として使用し、対の一方は標的配列の1個の変異体と完全な適合を示し、他方は異なる変異体と完全な適合を示す。ある態様において、1箇所以上の多型部位を一度に一組の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド対を使用して検出し得る。好ましくは、その組のメンバーは、検出する多型部位の各々とハイブリダイズしたときに、互いに5℃以内およびより好ましくは2℃以内の融点を有する。
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの標的ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、両方の物が溶液中で行うことができ、またはこのようなハイブリダイゼーションはオリゴヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチドのいずれかが固体支持体に共有結合的または非共有結合的に固定されているときに行い得る。結合は、例えば、抗体−抗原相互作用、ポリ−L−Lys、ストレプトアビジンまたはアビジン−ビオチン、塩ブリッジ、疎水性相互作用、化学結合、UV架橋支持などにより仲介されていてよい。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、直接固体支持体上に合成し得るか、または合成後に固体支持体に結合し得る。本発明の検出法での使用に適した固体支持体はシリコン、ガラス、プラスチック、紙などから成る支持体を含み、これらは、例えば、ウェル(96ウェルプレートのような)、スライド、シート、膜、繊維、チップ、皿およびビーズに形作り得る。固体支持体を、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたは標的核酸の固定化を促進するために、処理、被覆または誘導体化し得る。
個体の遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプはまた遺伝子の一方または両方のコピーを含む核酸サンプルの、WO95/11995に記載されているような核酸アレイおよbサブアレイへのハイブリダイゼーションにより決定できる。本アレイは遺伝子型またはハプロタイプに含まれるべき多型部位の各々を示す一連の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを含むであろう。
多型の同一性は、リボプローブ(Winter et al., Proc Natl Acad Sci USA 82: 7575(1985);Meyers et al., Science 230: 1242(1985))および大腸菌mutSタンパク質のようなヌクレオチドミスマッチを認識するタンパク質(Modrich P. Ann Rev Genet 25: 229-253(1991))を使用したRNase保護法を含むが、これらに限定されないミスマッチ検出法を使用して決定し得る。あるいは、変異体対立遺伝子は、一本鎖高次構造多型(SSCP)解析(Orita et al., Genomics 5: 874-879(1989); Humphries et al., in Molecular Diagnosis of Genetic Diseases, R. Elles, ed., pp. 321-340(1996))または変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Wartell et al., Nucl Acids Res 18: 2699-2706(1990); Sheffield et al., Proc Natl Acad Sci USA 86: 232-236(1989))により同定できる。
ポリメラーゼ−介在プライマー伸長法もまた多型の同定に使用できる。数種のこのような方法が特許および科学文献に記載されており、“遺伝学的ビット解析”法(WO92/15712)およびリガーゼ/ポリメラーゼ介在遺伝学的ビット解析(米国特許5,679,524)を含む。関連法はWO91/02087、WO90/09455、WO95/17676、米国特許5,302,509および5,945,283に記載されている。多型を含む伸長プライマーは、米国特許5,605,798に記載の通り質量分析により検出できる。他のプライマー伸長法は対立遺伝子特異的PCRである(Ruafio et al., Nucl Acids Res 17: 8392(1989); Ruafio et al., Nucl Acids Res 19: 6877-6882(1991); WO93/22456; Turki et al., J Clin Invest 95: 1635-1641(1995))。加えて、複数の多型部位を、WO89/10414に記載の通り、一組の対立遺伝子特異的プライマーを使用して核酸の複数の領域を同時に増幅することにより調査し得る。
好ましい態様において、各民族地理学的(ethnogeographic)グループについてのハプロタイプ頻度データを試験して、ハーディ・ワインベルグ平衡と一致するか否かを決定する。ハーディ・ワインベルグ平衡(D.L. Hartl et al., Principles of Population Genomics, 3rd Ed. (Sinauer Associates, Sunderland, MA, 1997)は、ハプロタイプ対の発見の頻度がH1≠H2であるときはH1/H2がPH−W(H1/H2)=2p(H1)p(H2)に等しいとし、そしてH1=H2であるときはPH−W(H1/H2)=p(H1)p(H2)であると仮定する。観察されたおよび予測されたハプロタイプ頻度の間の統計的有意差が集団群の著しい近親交配、遺伝子に対する強い選択圧、サンプリングの偏り、および/またはジェノタイピング工程での誤りを含む1個またはそれ以上の因子によるものであろう。ハーディ・ワインベルグ平衡からの大きな逸脱が民族地理学的群で観察されたとき、その群における個体数を増やし、その逸脱がサンプリングの偏りによるものであるかどうか見ることができる。より大きなサンプルサイズが観察されたおよび予測されたハプロタイプ対頻度の間の差異を減少させないならば、例えば、CLASPER SystemTM法(米国特許5,866,404)、SMD、または対立遺伝子特異的長距離PCR(Michalotos-Beloin et al., Nucl Acids Res 24: 4841-4843(1996))のような直接ハプロタイピング法を使用した、個体のハプロタイピングを検討しようとするであろう。
ハプロタイプ対を予測するためのこの方法の一つの態様において、割り当て工程は下記の解析を行うことを含む。第一に、可能性のあるハプロタイプ対の各々を基準集団のハプロタイプ対と比較する。一般に、基準集団におけるハプロタイプ対の1個のみが可能性のあるハプロタイプ対と適合し、その対をその個体に割り当てる。時々、基準ハプロタイプ対において示されるハプロタイプの1個のみが個体に対して可能性のあるハプロタイプ対と一致し、このような場合、本個体を、この既知のハプロタイプと、可能性のあるハプロタイプ対から既知のハプロタイプを減算することに由来する新規ハプロタイプを含むハプロタイプ対と割り当てる。稀なケースで、基準集団におけるいずれのハプロタイプも可能性のあるハプロタイプ対と一致しないか、または別に、複数の基準ハプロタイプ対が可能性のあるハプロタイプ対と一致する。このような場合、該個体は好ましくは、例えば、CLASPER SystemTM法(米国特許5,866,404)、SMD、または対立遺伝子特異的長距離PCR(Michalotos-Beloin et al., Nucl Acids Res 24: 4841-4843(1996))のような直接ハプロタイピング法を使用して、ハプロタイプ同定する。
本発明はまた集団における遺伝子型またはハプロタイプの頻度を決定する方法を提供する。本方法は、集団の各メンバーに存在する遺伝子について遺伝子型またはハプロタイプ対を決定し(ここで、遺伝子型またはハプロタイプは、遺伝子における1箇所またはそれ以上の多型部位で検出されたヌクレオチド対またはヌクレオチドを含む)、そして、いずれかの特定の遺伝子型またはハプロタイプが集団で見られる頻度を計算することを含む。該集団は基準集団、家族集団、同じ性別の集団、人口群(population group)、特色のある集団(例えば、医学的状態または治療的処置に対する応答のような目的の特色を示す個体の群)であり得る。
本発明の他の局面において、基準集団で見られる遺伝子型および/またはハプロタイプの頻度データを、特色と遺伝子型またはハプロタイプの間の関係を同定するための方法に使用する。特色は、疾患の感受性または処置への応答を含むが、これらに限定されない何らかの検出可能な表現型であり得る。本方法は、目的の基準集団ならびに該特色を示す集団における遺伝子型またはハプロタイプの頻度のデータを得ることを含む。基準および特色集団の一方または両方の頻度データは、集団における各個体の、上記の方法の一つを使用したジェノタイピングまたはハプロタイピングにより得られ得る。特色集団のハプロタイプを、直接または、別法として、上記の通りのハプロタイプアプローチのための予測遺伝子型により決定し得る。
他の態様において、基準および/または特色集団の頻度データを、書面または電子形であってよい予め決定された頻度データにアクセスことにより得る。例えば、該頻度データはコンピュータでアクセス可能なデータベースに存在し得る。頻度データを得たら、基準および特色集団における遺伝子型またはハプロタイプの頻度を比較する。好ましい態様において、集団で観察されたすべての遺伝子型および/またはハプロタイプの頻度を比較する。遺伝子の特定の遺伝子型またはハプロタイプが、基準集団よりも特色集団で統計学的に有意な量でより頻繁であるとき、その特色をその遺伝子型またはハプロタイプに割り当てるべきであると予測される。
好ましい態様において、統計学的解析を、ボンフェローニ補正標準を伴うANOVA検定および/または遺伝子型表現型相関を多数回シミュレートし、有意値を計算するブートストラッピング法の使用により行う。多くの多型を解析するとき、因子の補正は偶然発見されるであろう重要な関与を補正するためになされてよい。本発明の方法において使用する統計法については下記を参照のこと:Statistical Methods in Biology, 3rd edition, Bailey NTJ, (Cambridge Univ. Press, 1997); Introduction to Computational Biology, Waterman MS(CRCPress, 2000)およびBioinformatics, Baxevanis AD & Ouellette BFF editors(John Wiley & Sons, Inc., 2001)。
本発明の好ましい態様において、目的の特色は、ある治療処置に対する患者により示される臨床応答、例えば、薬剤ターゲッティングに対する応答または医学的状態の治療的処置に対する応答である。
本発明の他の態様において、目的の遺伝子型またはハプロタイプと連鎖不平衡にある検出可能な遺伝子型またはハプロタイプを、代用マーカーとして使用し得る。遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型は、遺伝子についての特定の遺伝子型またはハプロタイプが、また可能性のある代用マーカー遺伝子型を証明する集団において、基準集団よりも統計学的に有意な量で多い頻度であるか否かの決定により発見し得、次いで、該マーカー遺伝子型をその遺伝子型またはハプロタイプと関連していると予測し、次いでその遺伝子型の代わりに代用マーカーとして使用できる。
定義。本明細書で使用する“医学的状態”は、処置が望まれる1個またはそれ以上の肉体的および/または心理的症状として顕在するすべての状態または疾患を含むが、これらに限定されず、かつ以前にそして新規に同定された疾患および他の障害を含む。
本明細書で使用する“臨床応答”は下記のいずれかまたはすべてを意味する:応答、応答なし、および有害な応答(すなわち、副作用)の量的測定。
処置に対する臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプの間の相関を導き出すために、処置を受けている個体の集団(以後“臨床集団”と呼ぶ)により示される臨床応答に対するデータを得る。この臨床データは、既に行われている臨床試験の結果の解析により得てよくおよび/または臨床データは1種またはそれ以上の新規臨床試験の設計および実施により得てよい。
本明細書で使用する“臨床試験”なる用語は、特定の処置に対する応答の臨床データを集めるために設計されたすべての研究試験を意味し、第I相、第II相および第III相臨床試験を含むが、これらに限定されない。標準法を使用して患者集団を定義し、対象を登録する。
臨床集団に含まれる個体が、目的の医学的状態の存在について等級付けされていることが好ましい。この可能性のある患者の等級分けは、標準的身体検査または1種もしくはそれ以上の臨床検査を用いてよい。あるいは、患者の等級分けは、ハプロタイプ対と疾患感受性または重症度の間に強い相関があるときの状態についてハプロタイピングを使用してよい。
目的の治療的処置を、治験集団の各個体に投与し、各個体のその処置に対する応答を、1個またはそれ以上の予め決めた基準を使用して測定する。多くの場合に、治験集団が一定範囲の応答を示し、治験医が種々の応答により構成される応答者のグループ(例えば、低い、中程度、高い)の数を選択するであろうことが意図される。加えて、治験集団の各個体の遺伝子を遺伝子型分類および/またはハプロタイプ分類し、これを処置の投与前または後に行い得る。
臨床および多型データの両方を得た後、応答と遺伝子型またはハプロタイプ内容の間の相関を作る。相関は、数種の方法で作成できる。一つの方法では、個体をそれらの遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)についてグループ分けし(多型群とも呼ぶ)、次いで、各多型群のメンバーにより示される臨床応答を計算する。
これらの結果を、次いで解析して、多型群間の臨床応答における観察される何らかの変動が統計学的有意であるかを決定する。使用し得る統計学的解析法は、L.D. Fisher & G. vanBelle, Biostatistics: A Methodology for the Health Sciences(Wiley-lnterscience, New York, 1993)に記載されている。この解析はまた、遺伝子におけるどの多型部位が表現型の差異に最も著しく関与するかの回帰計算も含み得る。
ハプロタイプ内容と臨床応答の間の相関を発見する第二の方法は、誤差最小化最適化アルゴリズム(error-minimizing optimization algorithm)に基づく予測的モデルを使用する。多くの可能性のある最適化アルゴリズムの一つは、遺伝的アルゴリズム(R. Judson, “Genetic Algorithms and Their Uses in Chemistry” in Reviews in Computational Chemistry, Vol. 10, pp. 1-73, K.B. Lipkowitz & D.B. Boyd, eds. (VCH Publishers, New York, 1997)である。疑似アニーリング(Press et al., “Numerical Recipes in C: The Art of Scientific Computing”, Cambridge University Press(Cambridge)1992, Ch. 10)、神経回路網(E. Rich and K. Knight, “Artificial Intelligence”, 2nd Edition(McGraw-Hill, New York, 1991, Ch. 18)、標準勾配下降法(Press et al., supra Ch. 10)、または他の全体的もしくは局所的最適化アプローチ(Judson, supraにおける考察も参照)も使用してよい。
相関はまた、臨床データにおける変動のどの程度が、遺伝子における多型部位の異なるサブセットにより説明できるかを決定するために、分散分析(ANOVA)法を使用して解析し得る。ANOVAは、応答の変動が1種またはそれ以上の測定できる特色または変数が原因であるかもしくは相関しているかに関する仮説を試験する(Fisher & vanBelle, supra, Ch. 10)。
上記の解析から、遺伝子型またはハプロタイプ内容の関数として臨床応答を予測する数学的モデルを当業者は容易に構築し得るであろう。
臨床応答と遺伝子の遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)の間の相関の同定は、処置に応答するか応答しない個体、または別法として、低レベルで応答し、故により処置が必要である、すなわち、より高投与量の薬剤を必要とする個体を決定するための診断的方法の設計の基礎となり得る。診断法は下記の数種の形態の一つを取り得る:例えば、直接DNA試験(すなわち、遺伝子における1箇所またはそれ以上の多型部位ジェノタイピングまたはハプロタイピング)、血清学的試験、または身体測定。唯一の要件は、診断試験結果と、臨床応答に続いて相関する根底の遺伝子型またはハプロタイプの間の良好な相関があることである。好ましい態様において、この診断法は、上記の予測的ハプロタイピング法を使用する。
コンピュータは、本発明の方法の実施に関与する統計学的および数学的操作のいずれかまたはすべての道具であり得る。加えて、コンピュータは、ディスプレイ装置上に表示される画像(またはスクリーン)を作るプログラムを実施でき、それにより使用者が、染色体位置、遺伝子構造、および遺伝子ファミリー、遺伝子発現データ、多型データ、遺伝的配列データ、および臨床データ集団データ(例えば、1個またはそれ以上の集団の民族地理学起源、臨床応答、遺伝子型、およびハプロタイプのデータ)を含む、遺伝子およびそのゲノム変異に関連する大量の情報を見て、解析できる。本明細書に記載の多型データは、関連データベース(例えば、Oracleデータベースの事例または一連のASCIIフラットファイル)の一部として貯蔵し得る。これらの多型データを、コンピュータのハードディスクにまたは、例えばCD−ROMまたはコンピュータにより利用可能な他の1種またはそれ以上の貯蔵デバイスに貯蔵できる。例えば、データをネットワークを介してコンピュータと接続する1種またはそれ以上のデータベース上に貯蔵できる。
他の態様において、本発明は、個体における遺伝子のハプロタイピングおよび/またはジェノタイピングのための方法、組成物およびキットを提供する。本組成物は、多型部位を含む、またはそれに隣接する1箇所またはそれ以上の標的領域と特異的にハイブリダイズするように設計されたオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーを含む。本明細書に記載の新規多型部位で個体の遺伝子型またはハプロタイプを確立するための方法および組成物は、タンパク質の発現および機能により影響される病因論における多型の研究、薬剤ターゲッティングの効果の研究、タンパク質の発現および機能により影響される疾患に対する個体の感受性の予測、および遺伝子産物をターゲッティングする薬剤に対する個体の応答の予測に有用である。
さらに別の態様において、本発明は、遺伝子型またはハプロタイプと特色の間の関係を同定する方法を提供する。好ましい態様において、該特色は疾患への感受性、疾患の重症度、疾患の状態または薬剤に対する応答である。このような方法は、遺伝子型と、効果測定、PK測定および副作用測定を含む処置結果の間の関連の可能性が存在する、すべての薬理遺伝学適応のための、診断試験および治療的処置の開発に適用性を有する。
本発明はまた、遺伝子について決定した多型データを貯蔵し、表示するためのコンピューターシステムも提供する。該コンピューターシステムは、コンピュータープロセッシング・ユニット;ディスプレイ;および多型データを含むデータベースを含む。該多型データは、基準集団における遺伝子について同定した多型、遺伝子型およびハプロタイプを含む。好ましい態様において、コンピューターシステムは、その進化論的関係に従って組織化したハプロタイプを示す画面を作ることができる。
他の局面において、本発明は、遺伝子変異のタイプに従ったヒトの分類に有用なSNPプローブを提供する。本発明のSNPプローブは、通常の対立遺伝子識別アッセイにおいて、SNP核酸の対立遺伝子の間を識別できるオリゴヌクレオチドである。
本明細書で使用する“SNP核酸”は、個体または個体群の間の他の部分は同じヌクレオチド配列内で異なり、故に、対立遺伝子として存在するヌクレオチドを含む核酸配列である。このようなSNP核酸は、好ましくは約15から約500ヌクレオチド長である。本SNP核酸は染色体の一部であってよく、またはそれらは染色体の一部の、例えば、染色体のこのような部分のPCRによるまたはクローニングを介することによる、増幅正確なコピーであってよい。本SNP核酸は、以後、単に“SNP”と呼ぶ。本発明のSNPプローブは、SNP核酸に相補的なオリゴヌクレオチドである。
本明細書で使用する“相補的”なる用語は、ワトソン・クリックの用語の観点から、オリゴヌクレオチドの全長にわたる完全な相補性を意味する。
ある好ましい態様において、本発明のこの局面のオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の一つの対立遺伝子に相補的であるが、SNP核酸の他のいずれの対立遺伝子にも相補的ではない。本発明のこの態様のオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の対立遺伝子を、様々な方法で識別できる。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、適当な長さのオリゴヌクレオチドはSNP核酸の対立遺伝子の一つとハイブリダイズするであろうが、SNP核酸の他のいずれの対立遺伝子ともしない。オリゴヌクレオチドは、放射標識または蛍光標識により標識し得る。あるいは、適当な長さのオリゴヌクレオチド(ここで、3'末端ヌクレオチドがSNP核酸の一つの対立遺伝子と相補的であるが、他のいずれの対立遺伝子とも相補的ではない)を、PCRのプライマーとして使用できる。この態様において、PCRによる増幅の存在または非存在が、SNP核酸のハプロタイプを決定する。
本発明のゲノムおよびcDNAフラグメントは、本明細書で同定した少なくとも1個の新規多型部位を含み、少なくとも10ヌクレオチドの長さを有し、遺伝子の完全長まで長くなり得る。好ましくは、本発明のフラグメントは、100から3000ヌクレオチド長さ、より好ましくは200から2000ヌクレオチド長、最も好ましくは500から1000ヌクレオチド長である。
本明細書で同定した多型部位の記載において、便宜上、遺伝子のセンス鎖について言及している。しかしながら、当業者には認識される通り、遺伝子を含む核酸分子は相補的二本鎖分子であり得、故にセンス鎖上の特定の部位の言及は、同様に相補的アンチセンス鎖の対応する部位も言及する。故に、言及をいずれかの鎖上の同じ多型部位について行い得、そしてオリゴヌクレオチドは多型部位を含む標的領域のいずれかの鎖に特異的にハイブリダイズするように設計し得る。故に、本発明はまた本明細書に記載のゲノム変異体のセンス鎖に相補的な一本鎖ポリヌクレオチドも含む。
好ましい態様において、このようなキットはさらにDNAサンプル回収手段を含み得る。
特に、ジェノタイピングプライマー組成物は、少なくとも2組の対立遺伝子特異的プライマー対を含み得る。好ましくは、該2個のジェノタイピングオリゴヌクレオチドは別々の容器に包装されている。
本明細書に記載の本発明の方法は、一般に、さらに本発明のキットの使用を含み得ることは理解されよう。一般に、本発明の方法は、エキソビボで行うことができ、このようなエキソビボ法は、本発明により特に考慮される。また、本発明がヒトまたは動物身体上で行ってよい工程を含み得るとき、ヒトまたは動物身体上で実施するものではない工程も含む方法のみが特に本発明で意図される。
発現における、本明細書で同定した多型の影響は、該遺伝子の多型変異体を含む組み換え細胞および/または生物、好ましくは組み換え動物の製造により調査し得る。本明細書で使用する、“発現”は下記の1種以上を含むが、これらに限定されない:遺伝子の前駆体mRNAへの転写;成熟mRNAを産生するための前駆体mRNAのスプライシングおよび他の処理;mRNA安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用およびtRNA利用能を含む);および適当な発現および機能に必要であるとき、翻訳産物のグリコシル化および/または他の修飾。
本発明の組み換え細胞を調製するために、イソ遺伝子を、イソ遺伝子が染色体外のままであるようにベクター中で細胞内に挿入できる。このような状況で、該遺伝子は細胞により、染色体外位置から発現されるであろう。好ましい態様において、該イソ遺伝子を細胞に、該細胞に存在する内因性遺伝子と再結合するような方法で挿入する。このような再結合は、2重再結合事象を必要とし、それにより所望の遺伝子多型に至る。再結合および染色体外維持の両方のための遺伝子を挿入するためのベクターは当分野で既知であり、そして任意の適当なベクターまたはベクター構築物を本発明で使用し得る。DNAを細胞内に挿入するためのエレクトロポレーション、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈殿およびウイルス形質導入のような方法は当分野で既知である;故に、方法の選択は、実施技術者の能力および好みに依るであろう。
変異体遺伝子を発現する組み換え生物、すなわち、トランスジェニック動物は、当分野で既知の標準法を使用して製造する。好ましくは、変異体遺伝子を含む構築物を、非ヒト動物に、または、胚状態の、すなわち、1細胞段階、または一般に8細胞より遅くない段階での動物の原型に挿入する。本発明の構築物を担持するトランスジェニック動物を、当業者に既知の数種の方法により製造できる。一つの方法は、1種またはそれ以上のインスレーター要素、目的の遺伝子(複数もある)、およびトランスジーンとして遮蔽された遺伝子(複数もある)を保持する完全なシャトルベクターを提供するための当業者に既知の他の成分を含むように構築されたレトロウイルスを胚にトランスフェクトすることを含み、例えば、米国特許5,610,053を参照のこと。他の方法は、トランスジーンを胚に直接注入することを含む。第3の方法は、胚幹細胞の使用を含む。
イソ遺伝子を挿入し得る動物の例は、マウス、ラット、他の齧歯類、および非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されない(“The Introduction of Foreign Genes into Mice”およびその引用文献、In: Recombinant DNA, Eds. J .D. Watson, M. Gilman, J. Witkowski, & M. Zoller; W.H. Freeman and Company, New York, pages 254-272参照)。トイソ遺伝子を安定に発現し、ヒトタンパク質を産生するトランスジェニック動物は、異常な発現および/または活性が関連する疾患の研究用の、および、これらの疾患の症状または影響を減少するための様々な候補薬剤、化合物、処置レジメンのスクリーニングおよびアッセイのための生物学的モデルとして使用できる。
本発明の実施に際して、分子生物学、微生物学および組み換えDNAの多くの慣用法を使用する。これらの方法は既知であり、例えば、“Current Protocols in Molecular Biology”, Vols. I-III, Ausubel, Ed. (1997); Sambrook et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1989); “DNA Cloning: A Practical Approach”, Vols. I and II, Glover, Ed. (1985); “Oligonucleotide Synthesis”, Gait, Ed. (1984); “Nucleic Acid Hybridization”, Hames & Higgins, Eds. (1985); “Transcription and Translation”, Hames & Higgins, Eds. (1984); “Animal Cell Culture”, Freshney, Ed. (1986); “Immobilized Cells and Enzymes”, IRL Press(1986); Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”; the series, Methods in Enzymol., Academic Press, Inc. (1984); “Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”, Miller and Calos, Eds., Cold Spring Harbor Laboratory, NY(1987); およびMethods in Enzymology, Vols. 154 and 155, Wu & Grossman, and Wu, Eds.に各々説明されている。
このような異なる対照群で決定した遺伝子発現産物の標準対照レベルを、次いで、ある患者における遺伝子発現産物の測定したレベルと比較する。この遺伝子発現産物は、特定の遺伝子型群またはその遺伝子型群のポリペプチド遺伝子発現産物と関連する特徴的mRNAであろう。該患者を次いで、測定したレベルがどの程度ある群の対照レベルと比較して似ているかに基づいて、特定の遺伝子型群に分類してよい。
当業者には理解される通り、この決定をなす際に一定の不確実さが存在するであろう。従って、対照群レベルの標準偏差を使用して、確率的な決定をなし、本発明の方法は遺伝子型群決定に基づく広範囲の確率にわたり適応される。故に、例示であって限定するものではないが、一つの態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが対照群レベルのいずれかの2.5標準偏差に入るとき、それらの個体をその遺伝子型群に割り振り得る。他の態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが対照群レベルのいずれかの2.0標準偏差以内に入るとき、その個体をその遺伝子型群に割り振り得る。さらにまた別の態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが対照群レベルのいずれかの1.5標準偏差以内に入るとき、その個体をその遺伝子型群に割り振り得る。さらに別の態様において、遺伝子発現産物の測定したレベルが対照群レベルのいずれかの1.0またはそれ未満の標準偏差に入るとき、その個体をその遺伝子型群に割り振り得る。
故に本方法は、種々の程度の確率で、特定の患者がどの群に入るべきかの決定を可能にし、そしてこのような遺伝子型群への割り振りが次いで個体が置かれるべき危険性範疇の決定をするであろう。
mRNAレベルおよびポリペプチド遺伝子発現産物のレベルを測定する方法は当分野で既知であり、質量分析計および/または抗体検出および定量法を含む、ヌクレオチドマイクロアレイおよびポリペプチド検出法の使用を含む。またHuman Molecular Genetics, 2nd Edition. Tom Strachan & Andrew, Read(John Wiley and Sons, Inc. Publication, NY, 1999)を参照のこと。
さらに、体液または組織中の遺伝子のポリペプチド(タンパク質)発現産物の濃度の検出は、多型の存在または非存在の決定に使用でき、ポリペプチド発現産物の相対的レベルは、多型がホモ接合体またはヘテロ接合体状態で存在するか、故に個体の危険性範疇の決定に使用できる。
本明細書で使用する、“医学的状態”は、処置が望まれる1個またはそれ以上の肉体的および/または心理的症状として顕在するすべての状態または疾患を含むが、これらに限定されず、かつ以前にそして新規に同定された疾患および他の障害を含む。
本明細書で使用する“多型”なる用語は、集団中で>1%の頻度で存在するすべての配列変異体を意味するべきである。該配列変異体は、1%より著しく高い頻度、例えば5%または10%またはそれ以上で存在し得る。また、本用語は、多型部位において個体で観察された配列変異を言及するときに使用し得る。多型はヌクレオチド置換、挿入、欠失およびマイクロサテライトを含み、遺伝子発現またはタンパク質機能に検出可能な差異をもたらし得るが、これは必須ではない。
本明細書で使用する“臨床応答”は下記のいずれかまたはすべてを意味する:応答、応答なし、および有害な応答(すなわち、副作用)の量的測定。
本明細書で使用する“対立遺伝子”なる用語は、特異的染色体位置(座位)での遺伝子またはDNA配列の特定の形態である。
本明細書で使用する、“遺伝子型”なる用語は、個体における相同染色体の対上の座位における1箇所またはそれ以上の多型部位で見られる位相化されていない(unphased)ヌクレオチド対の5'から3'配列であるべきである。本明細書で使用する、遺伝子型は完全遺伝子型(full-genotype)および/またはサブ遺伝子型(sub-genotype)を含む。
本明細書で使用する“ポリヌクレオチド”なる用語は、非修飾または修飾RNAまたはDNAであり得る、すべてのRNAまたはDNAを意味すべきである。ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、および一本鎖と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖または、より典型的に、二本鎖または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を含むが、これらに限定されない。加えて、ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を言及する。ポリヌクレオチドはまた1個またはそれ以上の修飾塩基を含むDNAまたはRNAならびに安定性もしくは他の理由のために修飾された主鎖を有するDNAまたはRNAも含む。
本明細書で使用する“遺伝子”なる用語は、プロモーター、エクソン、イントロン、および発現を制御する他の制御領域を含む、RNA産物の生合成の制御のための情報をすべて含むDNAのセグメントを意味するべきである。
本明細書で使用する“ポリペプチド”なる用語は、互いにペプチド結合または修飾ペプチド結合ポリペプチド、すなわち、ペプチドアイソスターで連結された2個またはそれ以上のアミノ酸を含むすべてのペプチドを意味すべきである。ポリペプチドは、一般にペプチド、グリコペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短鎖および一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を言及する。ポリペプチドは、20種の遺伝子がコードするアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドは、翻訳後処理のような自然の工程により、または当分野で既知の化学修飾法により修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は基本的テキスト、より詳細なモノグラフならびに多数の研究文献に十分記載されている。
本明細書で使用する“多型部位”なる用語は、少なくとも2種の別の配列が集団内で発見される座位中の位置を有し、その最も頻繁なものは99%を超えない頻度を有する。
本明細書で使用する“ヌクレオチド対”なる用語は、個体由来の染色体の2コピー上の多型部位に見られるヌクレオチドを意味すべきである。
本明細書で使用する“位相”なる用語は、座位中の2個またはそれ以上の多型部位についてヌクレオチド対の配列を適用したとき、該座位の1コピー上のこのような多型部位に存在するヌクレオチドの組み合わせが既知であることを意味する。
処置に対する臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプの間の相関を導き出すために、処置を受けている個体の集団(以後“臨床集団”と呼ぶ)により示される臨床応答に対するデータを得る必要がある。この臨床データは、既に行われている臨床試験の結果の解析により得てよくおよび/または臨床データは1種またはそれ以上の新規臨床試験の設計および実施により得てよい。
本明細書で使用する“臨床試験”なる用語は、特定の処置に対する応答の臨床データを集めるために設計されたすべての研究試験を意味し、第I相、第II相および第III相臨床試験を含むが、これらに限定されない。標準法を使用して患者集団を定義し、対象を登録する。
本明細書で使用する“座位”なる用語は、遺伝子または身体的もしくは表現型特性に対応する染色体またはDNA分子の位置を意味する。
目的の治療的処置を、治験集団の各個体に投与し、各個体のその処置に対する応答を、1個またはそれ以上の予め決めた基準を使用して測定する。多くの場合に、治験集団が一定範囲の応答を示し、治験医が種々の応答により構成される応答者のグループ(例えば、低い、中程度、高い)の数を選択するであろうことが意図される。加えて、治験集団の各個体の遺伝子を遺伝子型分類および/またはハプロタイプ分類し、これを処置の投与前または後に行い得る。
マーカーとしての核酸およびタンパク質の検出。特定の態様において、マーカーに対応するmRNAのレベルを、インサイチュおよびインビトロ形式の両方で、当分野で既知の方法を使用して生物学的サンプルで決定できる。“生物学的サンプル”は、対象から単離された組織、細胞、生物学的体液およびその単離物、ならびに対象内の組織、細胞および体液を含むことを意図する。多くの発現検出法が単離RNAを使用する。インビトロ法に関して、mRNAの単離を選択しない任意のRNA単離法を、細胞からのRNAの精製に使用できる。例えば、Ausubel et al., Ed., Curr. Prot. Mol. Biol., John Wiley & Sons, NY(1987-1999)参照。さらに、多数の組織サンプルを、例えば、米国特許4,843,155のような一段階RNA単離法のような当業者に既知の方法を使用して容易に処理し得る。
単離したmRNAを、サザンまたはノーザン解析、PCR解析およびプローブアレイを含むが、これらに限定されない、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイに使用できる。mRNAレベルを検出するための一つの好ましい診断法は、単離したmRNAと、検出する遺伝子によりコードされるmRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)を接触させることを含む。該核酸プローブは、例えば、完全長cDNA、または、少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長であり、かつストリンジェントな条件下で本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAとハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドのような、それらの一部である。本発明の診断アッセイで使用するための他の適当なプローブは、本明細書に記載する。mRNAとプローブのハイブリダイゼーションは当該マーカーが発現されていることの指標である。
一つの形態において、mRNAを固体表面に固定化し、プローブと、例えば、単離したmRNAをアガロースゲル上を流し、mRNAをゲルから、ニトロセルロースのような膜に移すことにより、接触させる。別の形態において、プローブを固体表面上に固定化し、mRNAをプローブと、例えば、Affymetrix遺伝子チップアレイにおいて接触させる。当業者は、既知のmRNA検出法を、本発明のマーカーによりコードされるmRNAのレベルの検出に使用するために容易に適合できる。
サンプル中の本発明のマーカーに対応するmRNAのレベルを決定するための別法は、例えば、RT−PCR(実験態様はMullis、米国特許4,683,202(1987)に明示;リガーゼ連鎖反応、Barany(1991), supra;自立した配列複製, Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 87, pp. 1874-1878(1990);転写的増幅システム、Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 86, pp. 1173-1177(1989);Q-Beta Replicase、Lizardi et al., Biol. Technology, Vol. 6, p. 1197(1988);ローリング・サークル複製、米国特許5,854,033(1988);またはすべての他の核酸増幅法による核酸増幅、続く、増幅分子の当業者に既知の方法を使用した検出の工程を含む。これらの検出スキームは、とりわけ核酸分子の検出に、このような分子が非常に低い数で存在するとき、有用である。本明細書で使用する、増幅プライマーは、遺伝子の5'または3'領域(各々プラスおよびマイナス鎖またはその逆)とアニールできる核酸分子の対として定義され、その間に短領域を含む。一般に、増幅プライマーは約10−30ヌクレオチド長であり、約50−200ヌクレオチド長の領域と隣接する。適当な条件下かつ適当な試薬と共に、このようなプライマーは、該プライマーに隣接した該ヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
インサイチュ法について、mRNAは検出前に細胞から単離される必要はない。このような方法において、細胞または組織サンプルを、既知の組織学的方法を使用して調製/加工する。次いで、サンプルを支持体、典型的にガラススライド上に固定し、次いで、マーカーをコードするmRNAとハイブリダイズできるプローブと接触させる。
マーカーの絶対的発現レベルに基づいた決定とは別に、マーカーの標準化発現レベルに基づいた決定をなし得る。発現レベルを、マーカーの絶対的発現レベルを、その発現とマーカーではない遺伝子、例えば、構成的に発現されているハウスキーピング遺伝子の発現を比較することにより補正して標準化する。標準化のための適当な遺伝子は、アクチン遺伝子または上皮細胞特異的遺伝子のようなハウスキーピング遺伝子を含む。この標準化は、一つのサンプル、例えば患者サンプル中の発現レベルと他のサンプルのまたは異なる供給源からのサンプルの比較を可能にする。
あるいは、発現レベルを相対的発現レベルとして提供できる。マーカーの相対的発現レベルを決定するための、マーカーの発現レベルを、10個またはそれ以上の正常サンプル対疾患生物学的サンプル、好ましくは50個またはそれ以上のサンプルについて決定し、その後当該サンプルの発現レベルを決定する。多数のサンプルにおいてアッセイした遺伝子の各々の平均発現レベルを決定し、これをマーカーの基線発現レベルとして使用する。試験サンプルに関して決定したマーカーの発現レベル(発現の絶対的レベル)を、次いでこのマーカーに関して得た平均発現値で割る。これにより相対的発現レベルが提供される。
好ましくは、基線決定に使用するサンプルは、多型を有しない患者由来である。細胞源の選択は、相対的発現レベルの使用に依存する。正常組織で見られた発現を平均発現の源として使用することは、アッセイしたマーカーが特異的(正常細胞と比較して)であるか否かの確認を助ける。加えて、より多くのデータの蓄積につれて平均発現値を改訂でき、蓄積データに基づいた改善された相対的発現値を提供する。
ポリペプチドの検出。本発明の他の態様において、マーカーに対応するポリペプチドを検出する。本発明のポリペプチドの検出のための好ましい試薬は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合できる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルであり得る。完全な抗体、またはそのフラグメント、例えば、FabまたはF(ab')2を使用できる。プローブまたは抗体に関する“標識”なる用語は、プローブまたは抗体への検出可能な物質のカップリング、すなわち、物理的架橋によるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに、直接標識された他の試薬との反応性によりプローブまたは抗体の間接的標識を包含することを意図する。間接標識の例は、蛍光標識二次抗体を使用した一次抗体の検出、蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるようなDNAプローブのビオチンでの末端標識を含む。
個体からのタンパク質を、当業者に既知の方法を使用して単離できる。タンパク質単離法は、例えば、Harlow & Lane(1988), supraに記載の物のようなものであり得る。
様々な形態を、サンプルが、ある抗体と結合できるタンパク質を含むか否かを決定するために用いることができる。このような形態はEIA;ラジオイムノアッセ(RIA)、ウェスタンブロット解析およびELISAを含むが、これらに限定されない。当業者は、既知のタンパク質/抗体検出法を、細胞が本発明のマーカーを発現するか否か、および、血中または他の体組織におけるその特異的ポリペプチド発現産物の相対的濃度の決定に使用するために容易に適合できる。
一つの形態において、抗体または抗体フラグメントを、発現されたタンパク質を検出するためのウェスタンブロットまたは免疫蛍光法のような方法に使用できる。このような使用において、抗体またはタンパク質のいずれかを固体支持体に固定することが一般に好ましい。適当な固体相支持体または担体は、抗原または抗体を結合できるすべての支持体を含む。既知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱を含む。
当業者は、抗体または抗原を結合するための多くの他の担体を知っており、このような支持体を本発明での使用に適合できるであろう。例えば、患者細胞から単離されたタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動で流し、ニトロセルロースのような固体相支持体上に固定化する。次いで、該支持体を適当な緩衝液で洗浄し、続いて検出可能に標識された抗体で処理する。次いで、該固体相支持体を緩衝液で2回洗浄し、非結合抗体を除去する。固体支持体上の結合標識の量を次いで慣用の手段で測定し、この測定値を血中または他の体組織中のタンパク質の濃度に翻訳する。
本発明はまた生物学的サンプル、例えば、血清、血漿、リンパ、膀胱中の液、尿、糞便、髄液、腹水(acitic fluid)または血液を含む何かの体液、および体組織の生検サンプルにおける本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットも包含する。例えば、該キットは生物学的サンプルにおける、ポリペプチドまたは本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードするmRNAを検出可能な標識された化合物または試薬、ならびに、サンプル中のポリペプチドまたはmRNAの量を検出するための手段、例えば、該ポリペプチドと結合する抗体または該ポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAと結合するオリゴヌクレオチドプローブを含み得る。キットはまた該キットを使用して得た結果を解釈するための指示書を含み得る。
抗体ベースのキットについて、該キットは、例えば、1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドと結合する、例えば、固体支持体に結合した、第一抗体;および所望により2)ポリペプチドまたは第一抗体のいずれかと結合し、検出可能な標識と接合した、第二の異なる抗体を含み得る。
オリゴヌクレオチドベースのキットについて、該キットは、例えば、1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列とハイブリダイズする、オリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド;または2)本発明のマーカーに対応する核酸分子の増幅に有用なプライマーの対を含み得る。
キットはまた、例えば、緩衝剤、防腐剤またはタンパク質安定化剤を含み得る。キットはさらに検出可能な標識の検出に必要な成分、例えば、酵素または基質を含み得る。キットはまた、アッセイし、試験サンプルと比較できる対照サンプルまたは一連の対照サンプルを含み得る。キットの各成分はまた個々の容器内に封入され、様々な容器のすべてが、該キットを使用して行うアッセイの結果の解釈のための指示書と共に、一つの包装内に存在できる。
キット。本発明のキットは、キット容器上または容器中に書面を含み得る。この書面は、患者が処置中に肝細胞毒性を経験するであるか否かを決定するために、キットに含まれる試薬をどのように使用するかを記載する。数種の態様において、試薬の試薬は本発明の方法に従い得る。一つの態様において、該試薬は、IL1A遺伝子多型のPCR解析を行うためのプライマー対である。
実施例
臨床治験における肝細胞毒性の臨床遺伝薬理学解析
臨床薬理遺伝学解析参加者の個体群統計学。臨床試験に参加した139名の対象のうち、83名が臨床試験の臨床遺伝薬理学部分への参加に同意した。これは臨床試験に参加した全集団の、約60%を占める。臨床薬理遺伝学解析集団は、年齢、人種および性別の点で、臨床試験群の代表であった。さらに、同意率は、臨床薬理遺伝学解析が一つの投与群で偏らないように、治験の各アーム(プラセボ、50、100および150mg/日)について同等であった。全体的治験集団と比較して、臨床遺伝薬理学集団の個体群統計学に有意な差は観察されなかった。
ap<0.7748(ANOVA)
bp<0.9112(フィッシャーの直接確率)
cp<0.6698(フィッシャーの直接確率)
dp<0.9342(フィッシャーの直接確率)
ep<1.000(フィッシャーの直接確率)
各患者からの血液サンプルを、個々の治験場所で採取し、Covance(Geneva, Switzerland)に輸送して、そこでゲノムDNAをPUREGENETM DNA Isolation Kit(D 50K)(Gentra, Minneapolis, MN)を使用して抽出した。
ジェノタイピング。7個の遺伝子中の合計18個の座位を遺伝子型分類した。SNPアッセイを、OMIM、SNP Consortium、Locus LinkおよびdbSNPおよびThird Wave Technologies, Inc. (TWT, Madison, WI)のような公共データベースからの情報を使用して設計した。この治験集団では多型ではない座位はさらなる解析はしなかった。Third Wave Technologiesにより開発されたInvader(登録商標)アッセイを、製造者の指示に従って使用して、ジェノタイピングを40−60ngのゲノムDNAで行った。Lyamichev V et al.,Nat Biotechnol 17: 292 6(1999); Ryan D et al.. Mol Diagn 4: 135 44 9(1999)。
この治験で調べられた各SNPに、臨床遺伝薬理学(CPG)識別名を割り当て、PG座位IDと呼んだ。この治験でアッセイした全SNPのリストについて、PG座位IDおよび目的の遺伝子内の多型についての場所に関する詳細も含む表2を参照。
*このSNPは、この患者集団においてハーディ・ワインベルグ平衡ではない。
+この座位は、これらの患者集団で多型ではなく、さらなる解析に使用しなかった。
ABCB1、CD14、IL1A、およびORM1における座位を、Third Wave Technologies法を使用してゲノムDNAの直接アッセイにより調べた。遺伝子のCYP450のファミリー内の高い配列相同性のために、CYP2D6を、3フラグメントにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅し、その後特異性を確認するためにInvader(登録商標)アッセイジェノタイピングをした。各セグメントのプライマー配列を、表3に、各プライマーセットにより伸長される遺伝子の領域と共に列記する。各アンプリコンを20−60ngのゲノムDNA、0.5μlの10mM dNTPs、2.5μlの10×PCR緩衝液Iと15mM MgCl
2(Applied Biosystems, Foster City, CA)、2.5μl DMSO、0.5μlの20μM CYP2D6フォワードプライマー、0.5μlの20μM CYP2D6リバースプライマー、および1.25U Taq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を含む、25μl反応物中に産生した。35サイクルの増幅を、下記の条件を使用して行った:94℃、30秒;65℃、1分;72℃、2分。適切な産物の増幅を、5個の無作為サンプルで、臭化エチジウム含有1%アガロースゲルで分画することにより確認した。アンプリコンをTE(pH8.0)で1:10に希釈し、その後ジェノタイピングした。
CYP3A4遺伝子のPCRを、15−30ng ゲノムDNA、0.4μlの10mM dNTPs、2.5μlの10×PCR緩衝液Iと15mM MgCl2(Applied Biosystems)、0.75μlの20μM CYP3A4フォワードプライマー、0.75μlの20μM CYP3A4リバースプライマー、および0.75U Taq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を含む25μl反応物で行った。30サイクルの増幅を、下記の条件を使用して行った:94℃、30秒;58℃、30秒;72℃、30秒。適切な産物が産生されたことを確認するために、5個のサンプルを臭化エチジウム含有1%アガロースゲルで分画し、フラグメントサイズを可視化した。プライマー配列は下記の通りである:
CYP3A4Exon10F−(5'−TGGATGGCCCACATTCTCG−3';配列番号11)、および
CYP3A4Exon10R−(5'CTTCCTACATAGAGTCAGTG−3';配列番号12)。TE(pH8.0)中のPCR産物の1:20希釈をPG座位ID2325に対して、増幅したDNAのための384ウェルbiplexプレートを使用して流した。
制限フラグメント長多型(RFLP)解析をNR1I2における3箇所の多型座位の遺伝子型分類に使用した。NR1I2配列を、最初に、15−30ng ゲノムDNA、0.4μlの10mM dNTPs、2.5μlの10X PCRIと15mM MgCl
2(Applied Biosystems)、0.50μlの20μM NR1I2フォワードプライマー、0.50μlの20μM NR1I2リバースプライマー、および0.75U Taq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を含む25μl反応物中でPCR増幅した。各アッセイに使用するためのプライマーセットを表4に列記する。35サイクルの増幅を、下記の条件を使用して行った:94℃、30秒;60℃、30秒;72℃、30秒。アンプリコンを、臭化エチジウム含有3%アガロースゲルで上で分画した。
PCR産物のRFLP解析に使用した制限酵素を、表4に、それらが産生するフラグメントサイズおよび得られる対立遺伝子コールと共に列記する。すべての制限酵素をNew England Biolabs, Beverly, MAから購入した。反応条件は下記の通りであった:(1)BMSB1消化を、20μl反応物中、2μlの10×緩衝液3(New England Biolabs)、8μl増幅DNA、および2U BSMB1酵素を使用して行った。反応混合物を4.5時間、55℃でインキュベートした;(2)DdeI消化を、20μl反応物中、2μlの10×緩衝液3(New England Biolabs)、8μl増幅DNA、および4UのDdeI酵素を使用して行った。反応物を17時間、37℃でインキュベートした;(3)HphI消化は、10×緩衝液3の代わりに10×緩衝液4(New England Biolabs)を使用した以外DdeIと同じであった。消化したDNAを、臭化エチジウム含有3%アガロースゲル上で分画し(10μl)、バンドサイズを可視化した。
統計学的解析。分散分析(ANOVA)およびフィッシャーの直接確率検定を、遺伝子型および肝細胞毒性の影響の解析に使用した。全統計学的解析を、SAS 8.02ソフトウェアを使用して行った。複数の試験について補正するために、ボンフェローニ補正法を行った(下記参照)。
肝細胞毒性およびN−ベンゾイル−スタウロスポリン代謝。臨床試験における肝細胞毒性の発生と、N−ベンゾイル−スタウロスポリン投与量の間の関係を試験した。肝細胞毒性を経験した投与量群あたりの患者の割合は、下記の通りである:50mg/日で3%、100mg/日で8%および150mg/日を摂取した者で14%。肝臓毒性を経験したほとんどの患者がN−ベンゾイル−スタウロスポリンの最高投与量を摂取していたが、N−ベンゾイル−スタウロスポリン投与量と肝細胞毒性の間の関係は、有意ではない(p=0.09;フィッシャーの直接確率)。
臨床試験で薬物動力学的評価を行ったが、N−ベンゾイル−スタウロスポリンの2種の主要な代謝物は、それらが血清タンパク質α1−酸グリコプロテイン(AGP)と強力に結合するため、ほとんどの対象の血液で検出できなかった。AGPは、主に肝臓で合成される非常にグリコシル化されたタンパク質であり、急性相応答タンパク質として機能する。Hochepied T et al., Cytokine Growth Factor Rev 14: 25 34(2003); Israili ZH & Dayton PG, Drug Met Rev 33: 161 235(2001)。解析は、肝細胞毒性の発生と相関するAGPレベルがあるかを見るために行った。来院3−5からの最大AGPレベルをこの解析に使用し、遺伝薬理学解析に同意したものだけでなく、すべての臨床試験参加者を包含した。肝細胞毒性を経験した者の中のAGPの平均最大濃度は109.7mg/dlであり、これは、肝細胞毒性を経験していない者の平均最大濃度である87.8mg/dlより有意に高かった(p=0.046、ANOVA)。
AGPは2個の遺伝子、ORM1およびORM2によりコードされ、これらは染色体9q31−34.1上で密接に関連する。Webb GC et al., Cytogenet Cell Genet 47: 18 21(1998)。ORM1は非常に多型であり(Yuasa I et al., Humgenet 99: 393 8(1997))、ORM1中の3個のSNPをこの治験で調べた(PG座位ID1831、1832および1833)。試験したこの3箇所のORM1座位の遺伝子型と、血清で検出されたAGPレベルの間に関連は見られなかった。表5参照。
さらに、この解析で調べたORM1 SNPは肝細胞毒性と関連しなかった。下記表6参照。肝細胞毒性の発生と、CYP2D6、CYP3A4、ABCB1およびNR1I2におけるSNPの間の関連の可能性をより徹底的に試験するために、各肝臓酵素を個々に試験した。来院3−5に記録された最大血清アラニンアミノトランスフェラーゼおよびアスパルテートトランスアミナーゼ値を、ANOVAを使用して解析した。N−ベンゾイル−スタウロスポリンの代謝および分布に関与する遺伝子におけるSNPと、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパルテートトランスアミナーゼのいずれかの最大上昇の間に関連は見られなかった。最大アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパルテートトランスアミナーゼレベルとORM1多型の間に有意な関係は見られなかった。
要約すると、表5および6におけるデータは、臨床試験で見られた肝細胞毒性が、N−ベンゾイル−スタウロスポリンに対する様々な暴露の結果であるとの証拠を提供しなかった。
しかしながら、N−ベンゾイル−スタウロスポリンはCYP3A4およびCYP2D6により代謝され、ABCB1によりコードされるp−グリコプロテインポンプの基質である。CYP3A4は非常に多型ではなく、および遺伝子変異体は、該タンパク質の機能に見られる差異にほとんど関係しない。Spurdle AB et al., Pharmacogenetics 12: 355 66(July 2002)および社内解析。また、CYP3A4の転写は、NR1I2と呼ばれる多型遺伝子によりコードされるプレグナンX受容体、PXR(Goodwin B et al., Annu Rev Pharmacol Toxicol 42: 1 23(2002))により制御される。従って、N−ベンゾイル−スタウロスポリン代謝に関与する下記遺伝子における多型を試験した:CYP2D6(PG座位ID31、211、212、213);CYP3A4(PG座位ID2325);NR1I2(PG座位ID2641、2642、2643);およびABCB1(PG座位ID181、1006、1045)。臨床試験における肝細胞毒性の発生は、これらの4個の遺伝子で試験したいずれの多型とも関連しないことが判明した。
肝臓傷害の特異体質的機構と関連する肝細胞毒性および遺伝子。薬剤開発の臨床段階中に観察される肝細胞毒性は、しばしば薬剤への暴露レベルと関連する。しかしながら、ある対象は、肝臓内環境に関する何か(例えばフリーラジカルを中和するサイトカインまたは酵素のレベル)が化合物の毒性を促進するため、肝臓酵素の上昇を経験し得る。肝臓毒性のこれらの機構を“特異体質”と呼ぶ。遺伝子多型と、特異体質的機構に由来する肝細胞毒性の間の関係の発見は、肝細胞毒性が複数のシグナル伝達経路により影響を受け得る相対的に稀な事象であるため、起こる可能性が非常に低い。
炎症性応答に関連する肝細胞毒性および遺伝子。肝臓における急性相応答に関与するであろう2個の遺伝子、CD14およびIL1Aにおける多型をこの治験で試験した。CD14は炎症性サイトカインのクッパー細胞からの放出を制御し(Jarvelainen HA et al., Hepatology 33: 1148 53(2001))、IL1Aは組織損傷因子に対する応答の重要なメディエーターである。Ramadori G & Christ B, Semin Liver Dis 19: 141 55(1999)。IL1Aの2箇所の多型座位(PG座位ID279および302)をこの治験で調べ、CD14の3箇所の座位(PG座位ID2641、2642および2643)を調べた。本臨床試験において、我々が試験した座位と、全体的肝細胞毒性コールの間に関係は見られなかった。表5参照。
次に、IL1AおよびCD14におけるSNPを、各肝臓酵素個々の上昇との関係の可能性について解析した。来院3および5の間に記録された最大血清アスパルテートトランスアミナーゼまたはアラニンアミノトランスフェラーゼ値は、ANOVAを使用して、1L1AおよびCD14における目的の座位の遺伝子型と関連した。アラニンアミノトランスフェラーゼと、IL1AまたはCD14におけるSNPの間に関係は見られなかった。
しかしながら、IL1A SNPの両方、PG座位ID279および302は、来院3、4、または5で記録された最大血清アスパルテートトランスアミナーゼ値と関連した(各々p=0.031および0.029)。PG座位ID279、IL1AのプロモーターにおけるC→T転移(GenBank accession number X03833の549位)がPG座位ID302と連鎖不平衡であることが報告されている。Jouvenne Pet al., Eur Cytokine Netw 10: 33 6(1999)。我々の発見は、これらの2箇所の座位の強い関係を支持する(99.99%)。PG座位ID302は、アラニンからセリンへのアミノ酸置換をもたらすエクソン5におけるG→T塩基変化(GenBank accession number X03833の6282位)である。これらSNPの各々について、TT遺伝子型は稀である;PG座位ID279および302について、2個体のみがTTである。この理由のため、我々は、TTホモ接合体個体と、GT(PG座位ID302)またはCT(PG座位ID279)ヘテロ接合体を一緒に解析した。故に、PG座位ID279について、CC遺伝子型の対象をその座位でT(CTまたはTTのいずれか)の対象と比較した。PG座位ID279について、CC個体の平均最大血清アスパルテートトランスアミナーゼ値は37.1U/L、であり、一方T(CTおよびTT)個体は、23.1U/Lの有意に低い平均最大血清アスパルテートトランスアミナーゼ値であった(p=0.0089、ANOVA)。同様に、PG座位ID302について、GGである対象をT(GTまたはTTのいずれかである対象)と比較した。データをこの方法を使用して分類したとき、各座位における遺伝子型と、肝細胞毒性の発生の間のかなり強い関係が見られた。PG座位ID302について、GG個体は36.6U/Lの平均最大血清アスパルテートトランスアミナーゼレベルを有し、これはT(CTおよびTT)個体の平均最大血清アスパルテートトランスアミナーゼレベルである22.9U/Lより有意に高かった(p=0.0097、ANOVA)。図1および図2における散布図は、N−ベンゾイル−スタウロスポリン摂取中に最高最大血清アスパルテートトランスアミナーゼ値であった対象が、PG座位ID279でCCおよびPG座位ID302でGGであったことを示す。
臨床試験にお
いて、複数のSNPを肝細胞毒性との関係について試験し
たため、補正因子を結果に適用した。ボンフェローニ補正法は、p値を17倍(この治験で調べた多型SNPの数)に調節することを必要とする。
(式中、η=PCL412
試験の数。)この補正因子を使用すると、p
>0.0029で関連するSNPは有意ではない。IL1A多型と、血清アスパルテートトランスアミナーゼレベルの関係は、0.0089および0.0097のp値を有した。
要約すると、IL1A遺伝子中のPG座位279でCCであるおよびPG座位302でGGである対象は、N−ベンゾイル−スタウロスポリン摂取後に血清アスパルテートトランスアミナーゼレベルの上昇をより経験しそうである。CC対象で最大の平均アスパルテートトランスアミナーゼは正常上限を超えていないが、データの散布図は、正常上限を超えた血清アスパルテートトランスアミナーゼレベルの1名以外の全員がPG座位ID279でCC(図1)およびPG座位ID302でGG(図2)であることを示す。
薬剤誘発肝臓毒性はしばしば炎症により特徴付けられる。Jaeschke H et al., Toxicol Sci 65: 166 76(2002)。タンパク質のインターロイキン1ファミリーは、多数の生物学的活性を有し、感染および傷害に対する応答の重要なレギュレーターとして知られている。他の前炎症性サイトカインと同様、IL1AはNF−κB活性を誘発し、それによりサイトカイン誘導性遺伝子の転写を増加させる。IL1Aの効果は、顆粒球コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子アルファ(TNF)、インターロイキン6、インターロイキン8、および血小板由来増殖因子を含む他のサイトカインの誘導により介在される。Paul WE, Fundamental Immunology, Fourth Edition(Lippingcott Raven Publishers, Philadelphia, PA, 1999)。マウスモデルにおいて、IL1Aが肝臓傷害の誘発に関してTNFと相乗的に作用することが示されたことは注目に価する。Nagakawa J et al., Immunopharmacol Immunotoxicol 13: 485 98(1991)。
肝細胞毒性との関係に加えて、タンパク質のインターロイキン1ファミリーは、膵臓β細胞のインスリン分泌の誘導およびアポトーシスの刺激に関与している。Paul WE, Fundamental Immunology, Fourth Edition(Lippingcott Raven Publishers, Philadelphia, PA, 1999)。これは、本臨床試験参加者が、I型またはII型糖尿病のいずれかを有しているため、この治験と関係する。インスリン依存性真性糖尿病(I型糖尿病)における自己免疫仮定中の局所炎症性細胞によるIL1の産生は、膵臓β細胞の破壊に関与する。Mandrup Poulsen T et al., Cytokine 5: 185 81(1993)。インターロイキン1ファミリーメンバーは、膵臓島細胞による一酸化窒素(NO)の産生を誘発することが示されており、文献における報告は、糖尿病発症におけるNOの役割を支持する。さらに、膵臓β細胞様系RIN−5AHのIL1Aでの処置は、処置後4時間以内のアポトーシスおよび壊死に至る。Vassiliadis S et al., Mediators Inflamm 8: 85 91(1999)。興味深いことに、IL1AはRIN−5AH細胞で30%までPKCの発現を誘発することが示された。従って、肝細胞毒性への影響に加えて、IL1Aは糖尿病患者のN−ベンゾイル−スタウロスポリンの効果にも影響し得る。
本明細書に引用したすべての文献は、それらの全体をおよびすべての目的で、各々の刊行物または特許もしくは特許出願が具体的にかつ個々にその全体をすべての目的のために引用して包含すると示されたのと同じ程度に、本明細書に引用して包含する。加えて、本明細書に引用したGenBank accession number、Unigene Gluster numberおよびタンパク質受託番号は、それらの全体を、そしてすべての目的で、個々のこのような番号が具体的にかつ個々にその全体をすべての目的のために引用して包含すると示したのと同程度に、本明細書に引用してその全体を包含する。
本発明は本発明の個々の局面の一つの説明のみとして意図される、本明細書に記載の特定の態様の範囲に限定すべきではない。当業者には明らかな通り、本発明の多くの修飾および変形が、その精神および範囲から逸脱することなく成し得る。本発明の範囲内の機能的に同等な方法および装置は、ここに名を挙げたものに加えて、前記の記載および添付の図面から、当業者には明らかであろう。このような修飾および変形は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。本発明は、このような特許請求の範囲により与えられるものと同等な完全な範囲と共に、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1はAST/ALT(アスパルテートアミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ)最大レベル対IL1A(インターロイキン1アルファ;PG座位ID279)を示す。散布図は、臨床試験におけるIL1A PG座位ID279についてCCまたはT(CTまたはTT)の遺伝子型を有する対象についての(A)最大アスパルテートアミノトランスフェラーゼレベル、(B)AST MAXと正常上限(ULN)の比率、(C)最大アラニンアミノトランスフェラーゼレベルおよび(D)ALT MAXとULNの比率を示す。アスパルテートアミノトランスフェラーゼの上限は3−64歳で42U/Lおよび65歳以上で55U/Lであり、アラニンアミノトランスフェラーゼはすべての年齢で48U/Lである。ULNを線で示す。
図2は、AST/ALT(アスパルテートアミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ)最大レベル対IL1A(インターロイキン1アルファ;PG座位ID302)を示す。散布図は、臨床試験におけるIL1A PG座位ID302についてGまたはT(GTまたはTT)の遺伝子型を有する対象についての(A)最大アラニンアミノトランスフェラーゼレベル、(B)AST MAXとULNの比率、(C)最大ALTレベルおよび(D)ALT MAXとULNの比率のプロットを示す。アスパルテートアミノトランスフェラーゼの上限は3−64歳で42U/Lおよび65歳以上で55U/Lであり、アラニンアミノトランスフェラーゼはすべての年齢で48U/Lである。ULNを線で示す。