JP4975911B2 - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
光ファイバ母材用石英ガラスに開口部を形成して光ファイバ母材用コアガラスロッドあるいは光ファイバ母材用応力付与材を挿入し、加熱して溶着一体化する光ファイバ母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のインターネットの普及により伝送される情報量が飛躍的に増大しており、この増大する情報量に対応するするために、光ファイバの伝送容量を増大することができるWDM(波長分割多重)伝送が行われるようになっている。
上記のWDM伝送においては、複雑な屈折率プロファイルを持った光ファイバや、PANDAファイバなどの偏波保持ファイバが必要となっている。
【0003】
上記の光ファイバの一般的な製造方法としては、例えば、VAD(vapor-phase axial deposition)法やOVD(outside vapor deposition)法でスート(ガラス微粒子)を堆積させて多孔質のスート母材を合成し、脱水、焼結および延伸などを経てガラスロッドとし、あるいはMCVD(modified chemical vapor deposition)法によって直接ガラスロッドを形成し、得られたガラスロッドの外周部にOVD法などによりクラッドとなるスートを堆積させ、脱水および焼結などを経て光ファイバ母材(プリフォーム)とし、その先端から線引して光ファイバとする。
【0004】
上記の一般的な製造方法に対して、工程の簡略化と製造コスト削減のために、光ファイバ母材用石英ガラスロッドの中心に開口部を形成して、光ファイバ母材用コアガラスロッドを挿入し、あるいは光ファイバ母材のコアの両側に開口部を形成して光ファイバ母材用応力付与材を挿入し、加熱して溶着一体化する光ファイバ母材の製造方法が開発されている。
【0005】
上記の光ファイバ母材用石英ガラスロッドあるいは光ファイバ母材に開口部を形成する方法としては、ダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いた超音波加工により研削加工して開口し、次いでダイヤモンド、SiCあるいはアルミナなどの砥粒を用いて上記開口部内壁面を研削加工し、さらに酸化セリウム砥粒を用いて上記開口部内壁面を機械的研磨する方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の光ファイバ母材用石英ガラスロッドあるいは光ファイバ母材に開口部を形成する方法による光ファイバ母材の製造方法では、上記のコアドリルを用いた超音波加工での破砕層を除去するために、形成した開口部の開口径を研削加工により0.5〜1mm広げる必要があり、特に、この開口径拡大のための研削をダイヤモンド、SiCあるいはアルミナなどの砥粒とブラシを用いて行う場合には、開口径の正確な管理が難しく、開口部の長手(延伸)方向での開口径の変動が大きいという問題があった。
【0007】
上記のように開口部の長手(延伸)方向での開口径の変動が大きい場合、得られた開口部に光ファイバ母材用コアガラスロッドなどを挿入し、加熱して溶着一体化して形成した光ファイバ母材から線引したときに、コア偏芯量が大きくなったり、気泡の発生回数が多いなどの不都合を生じさせてしまう。
【0008】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、従って本発明の目的は、光ファイバ母材用石英ガラスロッドなどの第1石英ガラスに開口部を形成し、光ファイバ母材用コアガラスロッドなどの第2石英ガラスを挿入し、加熱して溶着一体化する方法による光ファイバ母材の製造方法において、開口部の長手(延伸)方向での開口径の変動を抑制することができる光ファイバ母材の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の光ファイバ母材の製造方法は、光ファイバ母材用第1石英ガラスに開口部を形成する工程と、上記開口部に光ファイバ母材用第2石英ガラスを挿入する工程と、加熱して上記第1石英ガラスおよび上記第2石英ガラスを溶着一体化する工程とを有し、上記第1石英ガラスに開口部を形成する工程が、少なくとも、第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工により所定の開口径となるように研削する第1研削工程と、上記第1の粗さよりも微細な第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工により上記所定の開口径を広げる第2研削工程とを含む。
【0010】
上記の本発明の光ファイバ母材の製造方法は、好適には、上記第2石英ガラスが、光ファイバ母材用コアガラスロッドまたは光ファイバ母材用応力付与母材である。
【0011】
上記の本発明の光ファイバ母材の製造方法は、好適には、上記第1の粗さのダイヤモンド砥粒が#100〜160のダイヤモンド砥粒であり、上記第2の粗さのダイヤモンド砥粒が#600〜2000のダイヤモンド砥粒である。
【0012】
上記の本発明の光ファイバ母材の製造方法は、好適には、上記第2研削工程において、上記所定の開口径を0.1〜1mm広げる。
【0013】
上記の本発明の光ファイバ母材の製造方法は、好適には、上記第1石英ガラスに開口部を形成する工程が、上記第2研削工程の後に、酸化セリウム砥粒またはコロイダルシリカを用いて上記開口部内壁面を機械的研磨する工程をさらに有する。
さらに好適には、上記機械的研磨する工程において、ナイロンブラシを上記開口部内壁面にあて、回転させながら上記開口部の延伸方向に往復駆動させる。
【0014】
上記の本発明の光ファイバ母材の製造方法は、光ファイバ母材用第1石英ガラスに、少なくとも、#100〜160程度の第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工により所定の開口径となるように研削し、次に上記第1の粗さよりも微細な#600〜2000程度の第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工により上記所定の開口径を0.1〜1mm程度広げ、さらには、酸化セリウム砥粒またはコロイダルシリカを用いて、ナイロンブラシを開口部内壁面にあて、回転させながら開口部の延伸方向に往復駆動させて開口部内壁面を機械的研磨して、開口部を形成する。
次に、開口部に光ファイバ母材用コアガラスロッドまたは光ファイバ母材用応力付与母材などの光ファイバ母材用第2石英ガラスを挿入し、加熱して第1石英ガラスおよび第2石英ガラスを溶着一体化する。
【0015】
上記の本発明の光ファイバ母材の製造方法によれば、第1石英ガラスに開口部を形成して第2石英ガラスを挿入し、加熱して溶着一体化する方法による光ファイバ母材の製造方法において、第1石英ガラスに開口部を形成するときに、第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工と第1の粗さよりも微細な第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工とを行うことで、開口部の長手(延伸)方向での開口径の変動を抑制することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0017】
第1実施形態
本実施形態に係る光ファイバは、偏波保持ファイバの一種であるPANDAファイバであり、その断面図を図1に示す。
PANDAファイバは、例えばゲルマニウムを含有するシリカガラスなどの高屈折率材料よりなるコア1aと、コア1aより屈折率が低いシリカガラスなどの材料よりなり、コア1aの外周を被覆しているクラッド2aとを有し、さらにクラッド2a中におけるコア1aの両側に、例えばB23 を含有するシリカガラスなどのクラッド2aよりも熱膨張係数が数倍大きい材料からなる応力付与部3aが設けられている。
上記のクラッド2aと応力付与部3aとの熱膨張係数の差により、コア1aに非対象な応力が与えられており、これによって複屈折性が増大し、光の偏波状態を安定に保って伝送するものであり、伝送特性やクロストークなどの特性において優れた特性を有する偏波保持ファイバである。
【0018】
次に、本実施形態に係る光ファイバ母材(プリフォーム)の製造方法について説明する。
例えば、VAD(vapor-phase axial deposition)法やOVD(outside vapor deposition)法でスート(ガラス微粒子)を堆積させて多孔質のスート母材を合成し、脱水、焼結および延伸などを経てコアガラスロッド1とし、あるいはMCVD(modified chemical vapor deposition)法によって直接コアガラスロッド1を形成し、得られたコアガラスロッド1の外周部にOVD法などによりクラッドとなるスートを堆積させ、脱水および焼結などを経て、図2(A)の模式断面図に示すように、コアガラスロッド1の外周部にクラッド2が形成された光ファイバ母材Pを形成する。
【0019】
以降の工程においては、上記の光ファイバ母材Pから所定の長さで切り出し、図2(B)および(C)に示す円柱状の母材とする。ここで、図2(B)は上面図であり、図2(C)は図2(B)中のX−X’における断面図である。
【0020】
次の工程においては、上記の円柱状の母材の所定の位置に所定の開口径の開口部を形成するが、ここでは図3の断面図に示す構成のコアドリル10を用いる。
コアドリル10は、例えばステンレスなどの金属製のパイプ11の一方の先端に、ダイヤモンド砥粒を混ぜた焼結金属12が取り付けられ、他方の先端に保持部13を取り付けられている構成の研削具である。
【0021】
次に、図4の断面図に示すように、コアドリル10を用いて円柱状の母材の所定の位置に、コアドリル10の長手方向を回転軸として回転させながら焼結金属12側から押圧し、超音波振動させることにより、クラッド2中におけるコアガラスロッド1の両側に開口部H3 を形成する。
この研削においては、まず第1研削工程として、例えば#100〜160程度の第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて、所定の開口径となるように研削する。
次に、第2研削工程として、第1の粗さよりも微細である、例えば#600〜2000程度の第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて、上記所定の開口径を広げるように研削する。
ここで、開口径を広げる量は0.1〜1mm程度が好ましい。
【0022】
上記の研削工程により、図5に示す構成の母材とする。ここで、図5(A)は上面図であり、図5(B)は図5(A)中のX−X’における断面図である。
即ち、コアガラスロッド1の外周部にクラッド2が形成された円柱状の母材において、クラッド2中におけるコアガラスロッド1の両側に開口部H3 が形成された構成である。
上記の開口部H3 は、粗さの異なるダイヤモンド砥粒を用いた2回の研削工程により開口されたものであり、開口部内壁面の表面粗さと開口径の長手方向の変動を従来の開口方法よりも抑制された開口部となっている。
【0023】
次に、図6の断面図に示すように、開口部H3 内に、例えば酸化セリウム砥粒またはコロイダルシリカなどの砥粒30を供給しながら、ナイロンブラシ20を開口部H3 の内壁面にあて、回転させながら開口部H3 の延伸方向に往復駆動させて、開口部H3 の内壁面を機械的研磨する。
【0024】
次に、図7の断面図に示すように、別途形成しておいた応力付与材3を開口部H3 に挿入する。
応力付与材3は、例えばVAD法またはMCVD法あるいはその他の方法により、B23 を含有するシリカガラスのロッドとして形成する。
【0025】
次に、コアガラスロッド1の外周部にクラッド2が形成された円柱状の母材と応力付与材3とを加熱して、溶着一体化し、図8に示す構成の光ファイバ母材とする。ここで、図8(A)は母材本体部分の上面図であり、図8(B)は本体下部に線引用おもり40が備えられ、本体上部に応力付与材3を押える押え材41、おもり42と石英パイプ43が備えられた形態の断面図であり、図8(A)中のX−X’が図8(B)中のX−X’に相当する。
上記の光ファイバ母材から線引することで、図1に示すPANDAファイバを製造することができる。
【0026】
上記の本実施形態の光ファイバ母材の製造方法によれば、コアガラスロッド1の外周部にクラッド2が形成された円柱状の母材(第1石英ガラス)に開口部を形成して応力付与材3(第2石英ガラス)を挿入し、加熱して溶着一体化する方法による光ファイバ母材の製造方法において、第1石英ガラスに開口部を形成するときに、第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工と第1の粗さよりも微細な第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工とを行うことで、開口部の長手(延伸)方向での開口径の変動を抑制することができる。
これにより、線引後の光ファイバにおける気泡の発生回数を抑制することができる。
【0027】
第2実施形態
図9は、本実施形態に係る光ファイバの断面図である。
例えばゲルマニウムを含有するシリカガラスなどの高屈折率材料よりなるコア1aと、コア1aより屈折率が低いシリカガラスなどの材料よりなり、コア1aの外周を被覆しているクラッド2aとを有する。
【0028】
次に、本実施形態に係る光ファイバ母材(プリフォーム)の製造方法について説明する。
まず、図10の断面図に示すように、例えば、VAD法やOVD法でスート(ガラス微粒子)を堆積させて多孔質のスート母材を合成し、脱水、焼結および延伸などを経て、クラッドとなるコアガラスロッド2を形成し、その中心に、上記第1実施形態と同様に開口部を形成する。
即ち、まず第1研削工程として、例えば#100〜160程度の第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて、所定の開口径となるように研削する。
次に、第2研削工程として、第1の粗さよりも微細である、例えば#600〜2000程度の第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて、上記所定の開口径を広げるように研削する。
【0029】
上記の研削工程により、図11に示す構成の母材とする。ここで、図11(A)は上面図であり、図11(B)は図11(A)中のX−X’における断面図である。
即ち、クラッドとなるガラスロッド2の中心部に開口部H1 が形成された構成である。
上記の開口部H1 は、粗さの異なるダイヤモンド砥粒を用いた2回の研削工程により開口されたものであり、開口部内壁面の表面粗さと開口系の長手方向の変動を従来の開口方法よりも抑制された開口部となっている。
【0030】
次に、図12に示すように、開口部H1 内に、例えば酸化セリウム砥粒またはコロイダルシリカなどの砥粒30を供給しながら、ナイロンブラシ20を開口部H1 の内壁面にあて、回転させながら開口部H3 の延伸方向に往復駆動させて、開口部H1 の内壁面を機械的研磨する。
【0031】
次に、図13に示すように、別途形成しておいたコアガラスロッド1を開口部H1 に挿入する。
コアガラスロッド1は、例えばVAD法、OVD法あるいはMCVD法などにより形成する。
【0032】
次に、クラッドとなるガラスロッド2とコアガラスロッド1とを加熱して、溶着一体化し、図14に示す構成の光ファイバ母材とする。ここで、図14(A)は上面図であり、図14(B)は図14(A)中のX−X’における断面図である。
上記の光ファイバ母材から線引することで、図9に示す光ファイバを製造することができる。
【0033】
上記の本実施形態の光ファイバ母材の製造方法によれば、クラッドとなるガラスロッド2(第1石英ガラス)に開口部を形成してコアガラスロッド1(第2石英ガラス)を挿入し、加熱して溶着一体化する方法による光ファイバ母材の製造方法において、第1石英ガラスに開口部を形成するときに、第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工と第1の粗さよりも微細な第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工とを行うことで、開口部の長手(延伸)方向での開口径の変動を抑制することができる。
これにより、線引後の光ファイバにおけるコア偏芯量や気泡の発生回数を抑制することができる。
【0034】
(実施例1)
コアの外周部にクラッドが形成された構成の光ファイバ母材(直径40mm、長さ300mm)のコアの両側に、#140のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて超音波加工機により直径10.8mmの開口部を2本開口した。
次に、コアドリルを#600のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルに交換し、超音波加工をして開口径を11.0mmまで広げた。
上記加工後の2本の開口部の開口径は等しく、また、接触式粗さ計で測定した開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.1μmであった。
次に、開口部に酸化セリウム砥粒を流し込みながらナイロンブラシを3000rpmで回転させ、光ファイバ母材の軸方向に往復運動させて、30分間研磨加工した。研磨後の開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.03μmであった。
上記の開口部に、B23 をドープしたシリカガラスからなる直径10.9mmの応力付与材を挿入し、線引炉で加熱して溶着一体化しながら線引を行った。20kmの距離分の線引を行ったところ、気泡の発生は見られなかった。
【0035】
(実施例2)
コアの外周部にクラッドが形成された構成の光ファイバ母材(直径40mm、長さ300mm)のコアの両側に、#100のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて超音波加工機により直径10.5mmの開口部を2本開口した。#100のダイヤモンド砥粒を埋め込んだドリルでは、#140のダイヤモンド砥粒を埋め込んだドリルよりも加工速度を速くすることができる。
次に、コアドリルを#600のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルに交換し、超音波加工をして開口径を10.8mmまで広げた。
さらに、コアドリルを#2000のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルに交換し、超音波加工をして開口径を11.0mmまで広げた。
上記加工後の2本の開口部の開口径は等しく、また、接触式粗さ計で測定した開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.07μmであった。
次に、開口部にコロイダルシリカを流し込みながらナイロンブラシを5000rpmで回転させ、光ファイバ母材の軸方向に100mm/分の速さで往復運動させて、30分間研磨加工した。研磨後の開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.03μmであった。コロイダルシリカは、酸化セリウムに比べて沈殿が生じにくいので研磨液の管理を行いやすく、洗浄後の砥粒の残存が少ないという利点がある。
上記の開口部に、B23 をドープしたシリカガラスからなる直径10.9mmの応力付与材を挿入し、線引炉で加熱して溶着一体化しながら線引を行った。20kmの距離分の線引を行ったところ、気泡の発生は見られなかった。
【0036】
(比較例1)
コアの外周部にクラッドが形成された構成の光ファイバ母材(直径40mm、長さ300mm)のコアの両側に、#140のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて超音波加工機により直径10.5mmの開口部を2本開口した。
次に、開口部にSiC砥粒を流し込みながらブラシを2000rpmで回転させ、光ファイバ母材の軸方向に往復運動させて、上記の研削工程で付いた傷や凹凸を慣らして平坦化するラップ処理を2時間行った。
加工後、開口径を測定したところ、2本の内の一方の開口部の開口径が11.1mmであるのに対し、他方の開口部の開口径は11.0mmであった。また、開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.15μmであった。
次に、開口部に酸化セリウム砥粒を流し込みながらナイロンブラシを3000rpmで回転させ、光ファイバ母材の軸方向に往復運動させて、30分間研磨加工した。研磨後の開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.05μmであった。
上記の開口部に、B23 をドープしたシリカガラスからなる直径10.9mmの応力付与材を挿入し、線引炉で加熱して溶着一体化しながら線引を行った。20kmの距離分の線引を行ったところ、5回の気泡の発生が見られた。
【0037】
(実施例3)
VAD法で作製した光ファイバ石英母材(直径125mm、長さ300mm)のコアの中心に、#140のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて超音波加工機により直径9.8mmの開口部を1本開口した。
次に、コアドリルを#1200のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルに交換し、超音波加工をして開口径を10.1mmまで広げた。
上記加工後の開口部の開口径の長手方向の変動は10μmであり、また、接触式粗さ計で測定した開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.07μmであった。
次に、開口部にコロイダルシリカを流し込みながらナイロンブラシを5000rpmで回転させ、光ファイバ母材の軸方向に100mm/分の速さで往復運動させて、30分間研磨加工した。研磨後の開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.03μmであった。
上記の開口部に、MCVD法で作製した直径10.0mmのコアガラスロッドを挿入し、2000℃の電気炉の上方から挿入して下端部を溶着させた後、真空ポンプで減圧しながら下方から順に加熱して溶着一体化した。
得られた母材を直径60mmに延伸した後、線引を行い、300kmの光ファイバを製造した。線引中の気泡の発生は2回で、線引した光ファイバのコア偏芯量は0.2μmであった。
【0038】
(比較例2)
VAD法で作製した光ファイバ石英母材(直径125mm、長さ300mm)のコアの中心に、#140のダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだコアドリルを用いて超音波加工機により直径9.5mmの開口部を1本開口した。
次に、開口部にSiC砥粒を流し込みながらブラシを2000rpmで回転させ、光ファイバ母材の軸方向に往復運動させるラップ処理を2時間行った。
上記加工後の開口部の開口径は10.1mmであったが、長手方向の変動は50μmであり、また、接触式粗さ計で測定した開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.15μmであった。
次に、開口部に酸化セリウム砥粒を流し込みながらナイロンブラシを5000rpmで回転させ、光ファイバ母材の軸方向に往復運動させて、30分間研磨加工した。研磨後の開口部内壁面の平均の表面粗さRaは0.05μmであった。
上記の開口部に、MCVD法で作製した直径10.0mmのコアガラスロッドを挿入し、2000℃の電気炉の上方から挿入して下端部を溶着させた後、真空ポンプで減圧しながら下方から順に加熱して溶着一体化した。
得られた母材を直径60mmに延伸した後、線引を行い、300kmの光ファイバを製造した。線引中の気泡の発生は10回で、線引した光ファイバのコア偏芯量は0.5μmであった。
【0039】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。
例えば、光ファイバ母材用石英ガラスロッドなどの第1石英ガラスに形成する開口部には、応力付与材やコアガラスロッド以外の石英ガラスを挿入してもよい。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、第1石英ガラスに開口部を形成して第2石英ガラスを挿入し、加熱して溶着一体化する方法による光ファイバ母材の製造方法において、第1石英ガラスに開口部を形成するときに、第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工と第1の粗さよりも微細な第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工とを行うことで、開口部の長手(延伸)方向での開口径の変動を抑制することができる光ファイバ母材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1実施形態に係る光ファイバ(PANDAファイバ)の断面図である。
【図2】図2(A)は第1実施形態に係る光ファイバの製造方法において製造する光ファイバ母材の模式断面図であり、図2(B)は図2(A)の光ファイバ母材から所定の長さで切り出した母材の上面図であり、図2(C)は図2(B)中のX−X’における断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態において用いるコアドリルの断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る光ファイバの製造方法においてクラッド中におけるコアガラスロッドの両側に開口部を形成する工程を示す断面図である。
【図5】図5(A)は、第1実施形態に係る光ファイバの製造方法において開口部が形成された母材の上面図であり、図5(B)は図5(A)中のX−X’における断面図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る光ファイバの製造方法において開口部の内壁面を機械的研磨する工程を示す断面図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係る光ファイバの製造方法において応力付与材を開口部に挿入する工程を示す断面図である。
【図8】図8(A)は、第1実施形態に係る光ファイバの製造方法において製造された光ファイバ母材の本体部分の上面図であり、図8(B)は断面図であり、図8(A)中のX−X’が図8(B)中のX−X’に相当する。
【図9】図9は、第2実施形態に係る光ファイバの断面図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係る光ファイバの製造方法においてクラッドとなるガラスロッドの中心に開口部を形成する工程を示す断面図である。
【図11】図11(A)は、第2実施形態に係る光ファイバの製造方法において開口部が形成された母材の上面図であり、図11(B)は図11(A)中のX−X’における断面図である。
【図12】図12は、第2実施形態に係る光ファイバの製造方法において開口部の内壁面を機械的研磨する工程を示す断面図である。
【図13】図13は、第2実施形態に係る光ファイバの製造方法においてコアガラスロッドを開口部に挿入する工程を示す断面図である。
【図14】図14(A)は、第2実施形態に係る光ファイバの製造方法において製造された光ファイバ母材の上面図であり、図14(B)は図14(A)中のX−X’における断面図である。
【符号の説明】
1a…コア
2a…クラッド
3a…応力付与材
1…コアガラスロッド
2…クラッド
3…応力付与材
10…コアドリル
11…パイプ
12…焼結金属
13…支持部
20…ナイロンブラシ
30…砥粒
1 ,H3 …開口部
P…光ファイバ母材

Claims (3)

  1. 光ファイバ母材用第1石英ガラスに開口部を形成する工程と、
    上記開口部に光ファイバ母材用第2石英ガラスを挿入する工程と、
    加熱して上記第1石英ガラスおよび上記第2石英ガラスを溶着一体化する工程と
    を有し、
    上記第1石英ガラスに開口部を形成する工程が、#100〜160のダイヤモンド砥粒である第1の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工により所定の開口径となるように研削する第1研削工程と、上記第1の粗さよりも微細な#600〜2000のダイヤモンド砥粒である第2の粗さのダイヤモンド砥粒を先端に埋め込んだ研削具を用いた超音波加工により上記所定の開口径を0.1〜1mm広げる第2研削工程と、上記第2研削工程の後に酸化セリウム砥粒またはコロイダルシリカを用いて上記開口部内壁面を機械的研磨する工程とを含む
    光ファイバ母材の製造方法。
  2. 上記第2石英ガラスが、光ファイバ母材用コアガラスロッドまたは光ファイバ母材用応力付与母材である
    請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
  3. 上記機械的研磨する工程において、ナイロンブラシを上記開口部内壁面にあて、回転させながら上記開口部の延伸方向に往復駆動させる
    請求項1または2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
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