先ず、本発明の実施の形態の説明に先立って、本発明に係る入力装置において適用するクリック触感呈示方法の原理について説明する。
以下に説明するクリック触感呈示方法の原理は、本発明者を含む共同研究によって見出したものである。そして、本出願人は、この原理に基づく入力装置を既に提案している(例えば、特願2008−326281参照)。
ヒトが触感として感じる要素には、対象物に触れたときに骨や筋に伝わる荷重により硬さや柔らかさ等の触感を感じる圧覚神経と、対象物に触れた際の皮膚表面に伝わる振動を検知して物の手触り等を感じる触覚神経とがある。つまり、圧覚は荷重を検知し、触覚は振動を検出する。そして、一般に触感とは、圧覚と触覚とが複合した感覚である。したがって、押しボタンスイッチを操作した際の「圧覚」および「触覚」への刺激を、タッチセンサのタッチ面上で同じように再現すれば、操作者にクリック触感を呈示することが可能となる。
一方、情報機器や家電製品に使用されている押しボタンスイッチには、例えば、メタルドームスイッチ、エンボススイッチ、ラバースイッチ、タクタイルスイッチ等が広く知られている。これらの一般的な押しボタンスイッチにおける荷重特性は、スイッチの種類によって、押しボタンのストロークや、加える荷重(押下力)に差はあるものの、概ね、図1に示すような特性を有する。
図1の押下時の荷重特性において、A点からB点までの期間は、押しボタンの押し込み開始から押し込みにほぼ比例して荷重が増加する期間である。B点からC点までの期間は、押しボタンの押し込みによりメタルドーム等の凸型形状の弾性部材が座屈して荷重が急激に減少する期間である。C点からD点までの期間は、スイッチの接点が閉成して、押し込みにほぼ比例して荷重が増加する期間である。
また、押しボタンのリリース時における荷重特性は、多少のヒステリシスを有するが、押下時とは逆の変化を辿る。すなわち、D点からE点までの期間は、リリースの開始からほぼ比例して荷重が減少する期間で、スイッチの接点が閉状態を維持する期間である。E点からF点までの期間は、押しボタンのリリースにより弾性部材が座屈状態から凸型形状に復帰して荷重が急激に増加する期間で、この期間の開始によりスイッチの接点が開成する。F点からG点までの期間は、弾性部材の復帰後、押しボタンから指を離すまでの期間で、ほぼ比例して荷重が減少する期間である。
なお、図1に示した荷重特性において、押しボタンの最大ストロークは、例えば、メタルドームスイッチ、エンボススイッチ、タクタイルスイッチの場合で、1mm以下であり、ラバースイッチの場合でも、3mm以下と微少である。また、B点における荷重は、メタルドームスイッチ、エンボススイッチ、タクタイルスイッチの場合で、例えば、1N前後から6N前後であり、ラバースイッチの場合で、例えば、0.5N前後である。そして、何れの押しボタンスイッチを操作した場合でも、操作者は、クリック触感が得られる。
そこで、上記研究者らは、押しボタンスイッチがどのような動きをした時に、「圧覚」および「触覚」が生むクリック触感が得られるのかを検討した。先ず、クリック触感は、ストローク変化によるものなのか、押下荷重変化によるものなのかを検討した。
図2は、押下荷重が異なる種々の押しボタンスイッチを操作した際に、操作者がどのように感じるかを示した官能評価結果を示す図である。横軸は、実際の押下荷重を示し、縦軸は押しボタンスイッチに関して重いと感じたか軽いと感じたかを7点満点で示す。被験者は、携帯端末の使用に慣れている5人である。図2から明らかなように、押下荷重については、押下荷重の高い押しボタンスイッチに関しては、重いと認識でき、押下荷重の低い押しボタンスイッチに関しては、軽いと認識できていることが解る。
図3は、ストロークが異なる種々の押しボタンスイッチを操作した際に、操作者がどのように感じるかを示した官能評価結果を示す図である。横軸は、実際のストロークを示し、縦軸は、押しボタンスイッチに関して長いと感じたか、短いと感じたかを7点満点で示す。被験者は、図2の場合と同じ、携帯端末の使用に慣れている5人である。図3から明らかなように、微小なストロークに関しては、長い短いを明確に認識できていないことが解る。
以上の官能評価結果から、人は、荷重の違いは認識できるが、微小なストロークの違いは認識できないことが解る。
そこで、上記研究者らは、押下荷重の変化に着目した。すなわち、ヒトがストロークの違いを認識できないならば、タッチセンサのような平面上での押圧荷重変化、つまり圧覚への刺激を、図1に示したABC点のように変化させれば、クリック触感が感じられるかを検討した。そのため、垂直方向に変位可能なプレートを有する実験装置を作成して、プレートを図1に示したA点からB点にかけて押下し、B点の荷重に達した時点で瞬時にプレートを下方に微少量変位させてBC点間の荷重変化を再現した。
その結果、押しボタンスイッチを「押した」と言う「押下感」は得られたものの、例えばメタルドームスイッチを操作した場合に得られる「カッチッ」というような、リアルなクリック触感は得られなかった。つまり、リアルなクリック触感を得るには、ストロークと荷重との関係では判明できない他の要素があることが判明した。
そこで、上記研究者らは、次に「圧覚」だけでなく、もう一つの感覚神経である「触覚」に着目して検討した。そのため、上記研究者らは、メタルドームスイッチの押しボタンスイッチを有する入力装置が搭載された種々の携帯端末について、押しボタンを操作した際に押しボタンに生じる振動を測定した。その結果、押しボタンは、押下荷重が図1のB点に達した時点おいて、すなわちメタルドームが座屈を開始した時点において、おおよそ100Hz〜200Hzの周波数で振動することが判明した。
図4は、その場合の測定結果の一例を示す図である。横軸は押下経過時間を示し、縦軸は振動振幅を示す。この押しボタンスイッチは、図1のB点において、図4に実線で示すように振動する。これにより、この押しボタンスイッチの場合、ヒトは、押下時に、周期約6ms(周波数で約170Hz)の振動刺激を、約1周期分受けていることが判明した。また、この押しボタンスイッチは、リリース時に押下荷重が図1のF点に達した時点、すなわちメタルドームが座屈状態から復帰した時点で、押しボタンが、図4に一点鎖線で示すように振動する。これにより、この押しボタンスイッチの場合、ヒトは、リリース時に、周期約8ms(周波数で約125Hz)の振動刺激を、約1周期分受けていることが判明した。
以上のことから、タッチセンサのようなプレート状のタッチ面を押圧する際、図1に示すA点からB点までの荷重では、タッチ面を振動させずに、操作者に自発的に押下させて圧覚を刺激し、その状態で、B点において、例えば、周波数170Hzでタッチ面を約1周期分振動させて触覚を刺激すれば、また、例えば実際に押しボタンスイッチから測定された振動波形を操作者に呈示して触感を刺激すれば、操作者に対して図4の測定結果に係る押しボタンスイッチを操作した場合と同様のクリック触感を呈示することが可能となる。
以上の原理に基づく本出願人の先の提案に係る入力装置は、タッチ面を押圧する場合に、押圧荷重が入力を受け付ける所定の基準を満たすまでは圧覚を刺激し、所定の基準を満たした際に、振動部により所定の駆動信号、すなわち一定周波数、駆動時間である周期(波長)、波形、振幅、でタッチ面を振動させて触覚を刺激する。これにより、操作者に対して、押しボタンスイッチを押下した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示するものである。
以下、上述した原理に基づく本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
本発明は、タッチセンサが入力を受け付ける動作とは独立して押圧荷重を検出して、タッチセンサを振動させて、タッチセンサの操作者に対して押しボタンスイッチを押下した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示するものである。すなわち、タッチセンサが操作された場合に、その操作によりタッチセンサが入力を受け付ける動作とは分離して、押圧荷重を検出して、タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、操作者に違和感のないリアルなクリック触感を呈示するように、タッチ面を振動させるものである。
(第1実施の形態)
図5は、本発明の第1実施の形態に係る入力装置の概略構成を示すブロック図である。この入力装置は、タッチセンサ11、荷重検出部12、触感呈示部13、表示部14、および、全体の動作を制御する制御部15を有する。タッチセンサ11は、表示部14に対する指などによる入力を受け付けるもので、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の公知の方式のもので構成する。荷重検出部12は、タッチセンサ11のタッチ面に対する押圧荷重を検出するもので、例えば、歪みゲージセンサや圧電素子等の荷重に対してリニアに反応する素子を用いて構成する。触感呈示部13は、タッチセンサ11を振動させるもので、例えば、圧電振動子を用いて構成する。表示部14は、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のような入力ボタン等の入力用オブジェクトを表示するもので、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成する。
図6は、図5に示した入力装置の実装構造の一例を示すもので、図6(a)は要部断面図、図6(b)は要部平面図である。表示部14は、筐体21内に収納保持する。表示部14上には、弾性部材からなるインシュレータ22を介して、タッチセンサ11を保持する。なお、本実施の形態に係る入力装置は、表示部14およびタッチセンサ11を、平面視で矩形状として、タッチセンサ11を、図6(b)に仮想線で示す表示部14の表示領域Aから外れた4隅に配設したインシュレータ22を介して表示部14上に保持する。
また、筐体21には、表示部14の表示領域から外れたタッチセンサ11の表面領域を覆うようにアッパカバー23を設け、このアッパカバー23とタッチセンサ11との間に、弾性部材からなるインシュレータ24を配設する。
なお、図6に示すタッチセンサ11は、タッチ面11aを有する表面部材が、例えば透明フィルムやガラスで構成され、裏面部材がガラスやアクリルで構成されて、タッチ面11aが押圧されると、押圧部分が押圧力に応じて微少量撓む(歪む)、または構造体そのものが微少量撓む構造のものを用いる。
タッチセンサ11の表面上には、アッパカバー23で覆われる各辺の近傍に、タッチセンサ11に加わる荷重(押圧力)を検出するための歪みゲージセンサ31をそれぞれ接着等により設ける。また、タッチセンサ11の裏面上には、対向する2つの辺の近傍に、タッチセンサ11を振動させるための圧電振動子32をそれぞれ接着等により設ける。すなわち、図6に示す入力装置は、図5に示した荷重検出部12を4つの歪みゲージセンサ31を用いて構成し、触感呈示部13を2つの圧電振動子32を用いて構成している。そして、触感呈示部13によりタッチセンサ11を振動させることにより、タッチ面11aを振動させるようにしている。なお、図6(b)は、図6(a)に示した筐体21、アッパカバー23およびインシュレータ24の図示を省略している。
図7は、本実施の形態に係る入力装置の動作を示すフローチャートである。制御部15は、タッチセンサ11への入力を監視するとともに、荷重検出部12で検出される荷重を監視する。そして、タッチセンサ11への指やスタイラスペン等の押圧対象(押圧物)による入力が表示部14に表示された入力用オブジェクトに対する入力であるのを検出した場合(ステップS701)、表示部14内の押圧対象(押圧物)が接触した箇所(入力箇所)の表示態様を、色を変えるなど変更する(ステップS702)。
さらに、制御部15は、荷重検出部12により検出される押圧荷重が、タッチセンサ11の押圧によって増加しながら触感を呈示する基準を満たしたのを検出すると(ステップS703)、触感呈示部13を所定の駆動信号で駆動して、タッチセンサ11を予め設定した所定の振動パターンで振動させてクリック触感を呈示する(ステップS704)。なお、荷重検出部12は、例えば、4つの歪みゲージセンサ31の出力の平均値から荷重を検出する。また、触感呈示部13は、例えば、2つの圧電振動子32を同相で駆動する。
ここで、ステップS703で検出する触感を呈示する押圧荷重の基準は、例えば、図1に示したB点の荷重である。したがって、この押圧荷重の基準は、表現したい押しボタンスイッチの押下時の荷重特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、この押圧荷重の基準は、タッチセンサ11が反応する荷重と同じに設定(タッチセンサ11の反応と触感を呈示するタイミングを同じに設定)してもよいし、タッチセンサ11が反応する荷重よりも高い荷重に設定(タッチセンサ11の反応よりも触感を呈示するタイミングを遅くする設定)してもよい。特に、携帯端末に適用する場合においては、タッチセンサ11が反応する荷重以上(タッチセンサ11の反応よりも触感を呈示するタイミングを遅くする設定)で、年配のユーザは重めに(より遅く)、頻繁にメールをするユーザは軽めに(より早く)設定できるように、ユーザが自由に設定できるようにする。これにより、タッチセンサ11のタッチ面11aを押圧している押圧対象(押圧物)を介して、操作者にクリック触感を呈示して、入力操作が完了したことを認識させる。
また、ステップS704で触感呈示部13を駆動する所定の駆動信号、すなわち触覚を刺激する一定周波数、周期(波長)、波形、振幅は、呈示するクリック触感に応じて適宜設定すればよい。例えば、携帯端末に使用されているメタルドームスイッチに代表されるクリック触感を呈示する場合は、上記の基準の荷重が加わった時点で、例えば、170Hzの一定周波数のSin波からなる1周期分の駆動信号により触感呈示部13を駆動して、タッチ面11aを、基準の押圧荷重が加わった状態で、約15μm振動させる。これにより、操作者にリアルなクリック触感を呈示することができる。
このように、本実施の形態に係る入力装置は、荷重検出部12で検出されるタッチセンサ11に加わる荷重が、触感を呈示する基準を満たすまでは圧覚を刺激するようにし、基準を満たすと、触感呈示部13を所定の駆動信号で駆動してタッチ面11aを所定の振動パターンで振動させて触覚を刺激する。これにより、操作者に対してクリック触感を呈示して、当該入力操作が完了したことを認識させる。したがって、操作者は、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のようなボタンスイッチがタッチセンサ上部に描画されていても、タッチセンサ11を、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を得ながら、入力操作を行うことができるので、違和感を覚えることがない。また、タッチセンサ11を「押した」と言う意識との連動で入力操作を行うことができるので、単なる押圧による入力ミスも防止することができる。
また、触感を呈示する基準の押圧荷重を、タッチセンサ11が反応する荷重よりも高く(タッチセンサ11の反応よりも触感を呈示するタイミングを遅く)設定した場合は、タッチ面11aへのタッチ操作に応じて入力位置を決定して、表示部14の対応する箇所の入力用オブジェクトの表示態様を変更し、その後、荷重検出部12で検出されるタッチ面11aへの押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、触感呈示部13を駆動してクリック触感を呈示するとともに、その入力位置を確定して所定の処理を実行させることが可能となる。この場合、操作者は、表示部14に表示された入力用オブジェクトの表示態様の変更により入力用オブジェクトの選択を確認でき、さらにタッチ面11aを押圧してクリック触感が呈示されることにより、選択した入力用オブジェクトが決定されたことを認識することができる。これにより、いわゆる迷い指による誤入力を防止することができる。
(第2実施の形態)
図8および図9は、本発明の第2実施の形態に係る入力装置を示すもので、図8は概略構成を示すブロック図、図9は正面図である。この入力装置は、例えば、携帯端末に実装されるもので、図8に示すように、入力を受け付けるタッチセンサ41と、タッチセンサ41により受け付けられた入力位置に基づく情報を表示する表示部43と、タッチセンサ41に対する押圧荷重を検出する荷重検出部44と、タッチセンサ41を振動させる触感呈示部45と、全体の動作を制御する制御部46とを有する。
タッチセンサ41には、図9に示すように、予め印刷や貼り付け等により、テンキー等の複数の入力用オブジェクト41aを形成する。したがって、本実施の形態に係る入力装置においては、各入力用オブジェクト41aがタッチ面を構成している。各入力用オブジェクト41aは、入力を受け付ける有効押圧領域を、隣接する複数の入力用オブジェクト41aに跨る押圧による誤入力を防止するため、当該入力用オブジェクト41aの形成領域よりも狭く設定する。なお、図8において、荷重検出部44および触感呈示部45は、図6に示した入力装置の場合と同様に、それぞれ歪みゲージセンサおよび圧電振動子を用いて構成する。
制御部46は、タッチセンサ41への入力、および、荷重検出部44で検出される荷重を、それぞれ監視する。そして、荷重検出部44により検出される押圧荷重が、タッチセンサ41の押圧により増加しながら触感を呈示する基準を満たした際に、触感呈示部45を所定の駆動信号で駆動してタッチセンサ41を予め設定した所定の振動パターンで振動させることにより、タッチ面11aを振動させる。
すなわち、制御部46は、タッチセンサ41による入力用オブジェクトの有効押圧領域への入力検出とは独立して押圧荷重を検出して、第1実施の形態に係る入力装置の場合と同様に、タッチセンサ41への荷重が増加しながら触感を呈示する基準を満たした時点で、例えば、170Hzの一定周波数のSin波からなる1周期分の駆動信号により触感呈示部45を駆動して、タッチセンサ41を、所定の荷重が加わった状態で、約15μm振動させる。これにより、操作者に対しクリック触感を呈示する。また、制御部46は、タッチセンサ41で検出された入力を受け付けることにより、表示部43に対して入力に応じた表示を行う。
したがって、触感を呈示する押圧荷重の基準をタッチセンサ41が反応する荷重以上とすれば、第1実施の形態の場合と同様に、操作者は、タッチセンサ41を、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を得ながら、入力操作を行うことができるので、違和感を覚えることがない。また、タッチセンサ41を「押した」と言う意識との連動で入力操作が行われるので、単なる押圧による入力ミスも防止することができる。
ここで、上記のクリック触感呈示方法の原理探究とともに、上記研究者らが行ったクリック触感の官能評価結果について説明する。なお、以下に説明する官能評価結果は、上述した本出願人の先の提案に係る入力装置により行ったものである。
市販の携帯端末に広く使用されているメタルドームスイッチは、端末の機種によるバラツキはあるものの、概ね6N以下、一般には3N以下の所定の荷重が加わると、急激に荷重が減少する荷重特性を有している。そこで、上記研究者らは、振動部(本発明の触感呈示部に相当)の駆動を開始するタッチセンサの荷重(図1のB点の荷重)を1.5Nとし、駆動信号の周波数、周期(波長)、波形をパラメータとしてクリック触感の官能評価を行った。
これらの評価結果例を、図10〜図13に示す。図10〜図13において、被験者は、図2および図3の官能評価を行った者と同じ5人である。評価項目は、「クリック触感と感じる」、「触感として良い」、および、触感が「携帯端末と似ている」の3項目である。評価点は、「クリック触感と感じる」の評価項目では、「感じない」が1点、「強く感じる」が7点である。「触感として良い」の評価項目では、「悪い」が1点、「良い」が7点である。「携帯端末と似ている」の評価項目では、「似ていない」が1点、「非常に似ている」が7点である。各項目の評価得点は、それぞれ5人の平均点を示した。
図10は、周波数を変化させた場合の評価結果を示す。この官能評価においては、振動部を駆動する駆動信号の周期(波長)すなわち駆動時間を1周期、波形をSin波として、周波数を50Hz〜250Hzの範囲で変化させた。なお、駆動信号の振幅は、タッチセンサにおいて、所定の基準の荷重が加わった状態で、15μmの振動振幅が得られる信号振幅とした。その結果、図10から明らかなように、周波数は、170Hzの場合が最も評価が高いが、140Hz以上であれば、ヒトは携帯端末と似たクリック触感が得られることが確認できた。
図11は、駆動信号の振幅を変化させた場合の評価結果を示す。この官能評価においては、振動部を駆動する駆動信号の周波数を170Hz、周期を1周期、波形をSin波とした。また、信号振幅は、タッチセンサが押圧されていない無負荷状態で、タッチセンサが1μm〜35μm内の所定の振幅で振動するように変化させた。そして、各無負荷時の振動振幅条件で、タッチセンサに1.5Nの荷重が加わった際に振動部を駆動して、各評価項目を評価した。なお、図11の横軸には、タッチセンサの無負荷時の振動振幅に対応して、1.5Nの荷重が加わった状態での振動振幅を示す。その結果、図11から明らかなように、1.5Nの荷重が加わった状態では、振動振幅が15μm以上であれば、ヒトはクリック触感を十分に感じることが確認できた。つまり、タッチセンサに1.5Nの押圧荷重が加わった状態で、170Hzの一定周波数で、タッチセンサを15μm以上の振動振幅で、わずかに1周期分振動させることで、ヒトはクリック触感を感じるということが確認できた。
図12は、駆動時間である周期(波長)を変化させた場合の評価結果を示す。この官能評価においては、振動部を駆動する駆動信号の波形をSin波、信号振幅をタッチセンサにおける所定の基準の荷重が加わった状態での振動振幅が約15μmとなる振幅、周波数を170Hzとして、周期を1/4周期〜3周期の範囲で変化させた。なお、1/4周期および1/2周期では、他の周期とタッチセンサにおける振動変位がほぼ等しくなる、すなわち約15μmの振動振幅が得られる信号振幅とした。その結果、図12から明らかなように、周期(波長)が1周期の場合に最も高い評価が得られた。また、5/4周期や、1周期未満でも、概ね良好な結果が得られたが、3/2周期以上になると、携帯端末のクリック触感からはずれることが確認できた。
図13は、駆動信号の波形を変化させた場合の評価結果を示す。この官能評価においては、振動部を駆動する駆動信号の波形をSin波、矩形波、三角波とした場合のそれぞれについて評価した。なお、各信号の周波数は170Hz、信号振幅はタッチセンサにおける所定の基準の荷重が加わった状態での振動振幅が約15μmとなる振幅、周期は1周期とした。その結果、図13から明らかなように、Sin波の場合に最も高い評価が得られた。
ここで、Sin波の駆動信号(振動部の入力電圧)は、図14に一点鎖線で示すように、位相0度から電圧が増加して減少する1周期に限らず、位相180度から電圧が減少して増加する等、任意の位相からの1周期の電圧とすることができる。なお、図14には、一点鎖線で示した入力電圧で振動部を駆動した際の、無負荷時におけるタッチセンサの振動振幅波形(破線)と、1.5Nでの押圧時におけるタッチセンサの振動振幅波形(実線)とを合わせて示す。
以上の評価結果例から、タッチセンサに所定の基準を満たす荷重が加わった時点で、例えば、周波数140Hz以上、好適には170Hzの一定周波数で、5/4周期以下、好適には1周期のSin波の駆動信号により、タッチセンサを約15μm以上振動させれば、操作者にリアルなクリック触感を呈示可能であることが確認できた。
本発明の上記各実施の形態に係る入力装置においても、上記の官能評価結果を踏まえて、荷重検出部12(44)が触感を呈示する基準として1.5Nの押圧荷重を検出した際に、触感呈示部13(45)に、例えば、周波数140Hz以上、好適には170Hzの一定周波数で、5/4周期以下、好適には1周期のSin波の駆動信号を供給して、タッチセンサ11(41)を約15μm以上振動させる。これにより、操作者にリアルなクリック触感を呈示することができる。
(第3実施の形態)
ヒトが押しボタンスイッチを操作すると、押下時のみならず、リリース時においても、図4に示したように、指に押しボタンスイッチからの触感刺激が与えられる。そこで、本発明の第3実施の形態に係る入力装置においては、第1実施の形態または第2実施の形態に係る入力装置において、リリース時にも操作者にクリック触感(以下、リリース時のクリック触感を、適宜、リリース触感とも言う)を呈示する。これにより、操作者に、よりリアルなクリック触感を呈示する。以下、図5および図6の構成を例にとって、本実施の形態に係る入力装置の動作を説明する。
図15は、本実施の形態に係る入力装置の動作を示すフローチャートである。図15において、ステップS1501〜S1504は、図7に示したステップS701〜S704と同じ処理である。すなわち、図7において説明したように、制御部15は、タッチセンサ11への入力が表示部14に表示された入力用オブジェクトに対する入力であるのを検出した場合(ステップS1501)、表示部14内の押圧対象(押圧物)が接触した箇所(入力箇所)の表示態様を、色を変えるなど変更する(ステップS1502)。
さらに、制御部15は、荷重検出部12により検出される押圧荷重が、タッチセンサ11の押圧によって増加しながら触感を呈示する基準を満たしたのを検出すると(ステップS1503)、触感呈示部13を所定の駆動信号で駆動して、タッチセンサ11を予め設定した所定の振動パターンで振動させて(ステップS1504)、タッチセンサ11を押圧している押圧対象(押圧物)を介して、操作者にクリック触感を呈示する。ここで、クリック触感を呈示する基準の押圧荷重は、上記実施の形態と同様に、タッチセンサ11が反応すなわち入力を検出する押圧荷重以上に設定する。
その後すなわちリリース時に、制御部15は、荷重検出部12で検出される荷重が、触感を呈示する基準を満たしたのを検出すると(ステップS1505)、押圧時と同様に、触感呈示部13を、所定の駆動信号で駆動して、タッチセンサ11を予め設定した所定の振動パターンで振動させて(ステップS1506)、タッチセンサ11を押圧している押圧対象(押圧物)を介して、操作者にリリース触感を呈示する。さらに、制御部15は、この触感呈示部13の駆動とほぼ同時に、表示部14内の押圧対象(押圧物)が接触した箇所(入力箇所)の表示態様を、元に戻すなど変更する(ステップS1507)。これにより、操作者に入力操作が完了したことを認識させる。
ここで、ステップS1505のリリース時、すなわち押圧時のクリック触感の呈示後に検出する触感を呈示する基準の荷重(第2の基準)は、ステップS1503で検出する押圧時にクリック触感を呈示する基準の荷重(第1の基準)よりも低い任意の荷重に設定することができる。また、ステップS1506のリリース時において、触感呈示部13を駆動する駆動信号は、ステップS1504の押圧時における駆動信号と同じとすることもできるし、異ならせることもできる。例えば、タッチセンサ11が入力を検出する押圧時における駆動信号の周波数は170Hzとし、リリース時における駆動信号の周波数は、例えば図4に示したように125Hzとすることができる。
このように、押圧によるクリック触感呈示後のリリース時に、荷重検出部12で検出される荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、押圧時と同様に、触感呈示部13を所定の駆動信号で駆動して、タッチセンサ11を予め設定した所定の振動パターンで振動させることにより、クリック触感に対するリリース触感を呈示することができる。したがって、押圧時のクリック触感と相俟って、より押しボタンスイッチに近いクリック触感を操作者に呈示することができる。
例えば、押圧時とリリース時とで、触感呈示部13を駆動する基準の荷重を同じに設定した場合は、押圧時の最大荷重が基準の荷重を超えていれば、図16に示すように、押圧時とリリース時とでそれぞれクリック触感およびリリース触感を呈示することができる。したがって、押しボタンスイッチにより近いクリック触感を操作者に呈示することができる。なお、図16および他の図において、「カッ」および「チッ」は、ヒトが受けるクリック触感を表現したものである。
また、触感呈示部13を駆動する基準の荷重を、リリース時は押圧時よりも低い任意の荷重に設定した場合は、押圧時の最大荷重が押圧時の基準の荷重であった場合でも、すなわち押圧時の基準の荷重で押圧対象(押圧物)を引き返した場合でも、図17に示すように、押圧時とリリース時とでそれぞれクリック触感およびクリック触感に対するリリース触感を呈示することができる。なお、図16に示したように、触感呈示部13を駆動する基準の荷重を、押圧時とリリース時とで同じ荷重に設定した場合において、押圧時の最大荷重が基準の荷重と一致する場合は、リリース時に触感呈示部13が駆動されなかったり、操作者が押圧荷重を基準の荷重で保持しようとした場合、予期せぬリリース触感が呈示されたりして、操作者に違和感を与える場合が想定される。これに対し、図17に示したように、リリース時に触感呈示部13を駆動する基準の荷重(第2の基準)を、押圧時の基準(第1の基準)よりも低い任意の荷重に設定すれば、リリース時に確実にリリース触感を呈示できるので、より押しボタンスイッチに近いクリック触感を、より確実に、操作者に呈示することができる。
図18は、押圧時のみクリック触感を呈示した場合と、押圧時はクリック触感を呈示し、リリース時はリリース触感を呈示した場合の官能評価結果を示すものである。なお、この官能評価は、上述した官能評価の場合と同様に、本出願人の先の提案に係る入力装置により行ったものである。
図18において、左側は、押圧時のみクリック触感を呈示した場合、すなわち「リリース触感なし」の場合の評価結果を示し、右側は、押圧時はクリック触感を呈示し、リリース時はリリース触感を呈示した場合、すなわち「リリース触感あり」の場合の官能評価結果を示す。被験者は、図2および図3の官能評価を行った者と同じ5人である。評価項目は、図10〜図13における3項目に、「フィードバックとしてよい(認識し易い)」の項目を加えた4項目である。各項目の評価点は、7点を満点として、5人の平均点を示した。なお、「フィードバックとしてよい」の評価項目では、「悪い」が1点、「良い」が7点である。また、押圧時およびリリース時とも、触感を呈示する基準の荷重を同じにするとともに、駆動信号も同じとしている。ここでは、触感を呈示する基準の荷重は、1.5Nとしている。また、駆動信号は、周波数170HzのSin波を1周期分として、タッチセンサを1.5Nの押圧状態で約15μm振動させるものとしている。
図18の評価結果から、リリース時にもタッチセンサを振動させてリリース触感を呈示した方が、携帯端末のクリック触感により類似し、かつ、フィードバック(認識)も良好であることがわかる。
(第4実施の形態)
ところで、例えば、携帯端末に使用される入力装置は、電話番号やメール等の入力の際に、同一の入力用オブジェクトを連続して入力する、いわゆる連打が頻繁に行なわれる。このような場合、図18に示したように、タッチセンサ11を、押圧時のみならず、リリース時にも所定の振動パターンで振動させる場合は、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を適切に設定する必要がある。
すなわち、ヒトが連続入力を素早く行う際には、一般に、押圧荷重は「0」まで下がりきらずに次の入力が開始され、押圧時の最大荷重にはバラツキが生じる。この際、第3実施の形態で説明したように、触感を呈示する基準の荷重が、押圧時とリリース時とで同じに設定されている場合は、図19に示すように、連続入力の途中で、押圧荷重が基準の荷重で引き返されると、当該入力においては、リリース時に触感呈示部13が駆動されなかったり、操作者がリリースした意識よりも先に次の入力のクリック触感が呈示されたりして、入力動作と触感が合わず、操作者に違和感を与える場合があることが想定される。なお、図19は、4回の連続入力において、3回目の入力の押圧荷重が基準の荷重で引き返された場合を示す。
一方、リリース時に触感を呈示する基準の荷重が、押圧時に触感を呈示する基準の荷重と比較して低すぎる値に設定されている場合は、図20に示すように、連続入力の途中で、荷重がリリース時の基準まで戻らずに、次の入力動作が行われると、触感呈示にずれが生じて、操作者に違和感を与える場合があることが想定される。なお、図20は、4回の連打入力において、2回目の入力におけるリリース時の荷重が、リリース時の基準まで達しないうちに、3回目の入力が行われた場合を示す。また、このように、リリース時に触感を呈示する基準の荷重が低すぎると、当該基準に戻るまでに時間がかかる。その結果、操作者は呈示される触感に違和感を覚えることなく、連続入力を行いたいにも拘らず、次の入力までの時間がかかり、素早い連続入力が行えなくなって、連続入力(連打)時の操作性が低下することが懸念される。
これに対し、リリース時に触感を呈示する基準の荷重が、押圧時に触感を呈示する基準の荷重に近い値に設定されている場合は、より素早く連続入力が可能になる反面、連続入力の途中で押圧状態を保持(ホールド)しようとした場合は、予期せぬリリース触感が呈示されて操作者に違和感を与える場合があることが想定される。すなわち、連続入力の途中で押圧状態をホールドする場合、操作者は、押圧荷重を一定に保持しているつもりでも、微小な荷重変動がある。このため、例えば、図21に示すように、押圧時における基準とリリース時における基準との荷重幅が、上記のホールド状態での荷重変動の幅よりも狭いと、操作者は、ホールドしているつもりでも、リリース時の触感が呈示されて違和感を覚えることになる。
そこで、本発明の第4実施の形態においては、上述した連続入力時の操作性およびホールド状態での微小な荷重変化にも対応でき、操作者がリアルなクリック触感を得ながらスムーズな連続入力を行い得るようにするため、第3実施の形態で説明した入力装置において、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重に対して、およそ50%〜80%の範囲の値に設定する。
図22〜24は、連続入力(連打)時のクリック触感の官能評価結果を示すものである。なお、この官能評価は、上述した官能評価の場合と同様に、本出願人の先の提案に係る入力装置により行ったものである。
図22〜図24において、被験者は、図18の官能評価を行った者と同じ5人である。評価項目は、図18における4項目に「連打しやすい」の項目を加えた5項目である。各項目の評価点は、7点を満点として、5人の平均点を示した。なお、「連打しやすい」の評価項目では、「やりずらい」が1点、「連続入力しやすい」が7点である。また、押圧時およびリリース時とも、振動部(本発明の触感呈示部に相当)を駆動する駆動信号は、周波数170HzのSin波を1周期分として、それぞれ触感を呈示する基準を満たした際に、タッチセンサを約15μm振動させた。
図22は、押圧時に触感を呈示する基準が1Nで、リリース時に触感を呈示する基準が0N、0.5N、1Nの場合の評価結果を示す。図22から明らかなように、押圧時に触感を呈示する基準の荷重が1Nの場合は、リリース時に触感を呈示する基準の荷重が0.5Nの場合に、全ての評価項目で最も高い評価が得られた。
図23は、押圧時に触感を呈示する基準が2Nで、リリース時に触感を呈示する基準が0N、0.5N、1N、1.5N、2Nの場合の評価結果を示す。図23から明らかなように、押圧時に触感を呈示する基準の荷重が2Nの場合は、リリース時に触感を呈示する基準の荷重が1Nおよび1.5Nの場合に高い評価が得られ、特に1.5Nの場合に、全ての評価項目で最も高い評価が得られた。
図24は、押圧時に触感を呈示する基準が3Nで、リリース時に触感を呈示する基準が0N、0.5N、1N、1.5N、2N、2.5N、3Nの場合の評価結果を示す。図24から明らかなように、押圧時に触感を呈示する基準の荷重が3Nの場合は、リリース時に触感を呈示する基準の荷重が1.5N、2Nおよび2.5Nの場合に高い評価が得られ、特に2Nの場合に、全ての評価項目で最も高い評価が得られた。
以上の評価結果例から、リリース時に触感を呈示する基準の荷重は、押圧時に触感を呈示する基準の荷重に対して、およそ50%〜80%の範囲の値に設定すれば、連続入力(連打)において、順次の入力と触感呈示タイミングとが合致し、違和感のないリアルなクリック触感を呈示できることがわかる。すなわち、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重よりも小さくすることにより、違和感を与えないようにし、かつ、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重のおよそ50%以上とすることにより、連続入力時の操作性を格段に向上できる。また、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重のおよそ80%以下とすることにより、連続入力時のホールド状態での微小な荷重変化にも対応できる。
したがって、本発明の第4実施の形態においても、上記の官能評価結果を考慮して、例えば、押圧時に触感を呈示する基準を1Nに設定した場合は、リリース時に触感を呈示する基準は0.5N〜0.8Nの任意の値に設定する。また、押圧時に触感を呈示する基準が高い荷重の場合は、当該基準が低い荷重の場合よりも、ホールド状態での荷重変動の幅も広くなる。このような場合でも、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重のおよそ50%〜80%の範囲、例えば、押圧時に触感を呈示する基準を6Nと高く設定した場合は、リリース時に触感を呈示する基準を3N〜4.8Nに設定する。これにより、予期せぬリリース触感を呈示することなく、連続入力に応じた違和感のないリアルなクリック触感を呈示することができる。これら、押圧時に触感を呈示する基準の荷重、および、リリース時に触感を呈示する基準の荷重は、固定的に設定してもよく、ユーザにおいて適宜選択して設定できるようにしてもよい。
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、荷重検出部は、任意の個数の歪みゲージセンサを用いて構成することができる。また、荷重検出部は、タッチセンサにおける入力検出方式に応じて、例えば、抵抗膜方式の場合には、接触面積による抵抗変化に基づく出力信号の変化から、あるいは静電容量方式の場合には、静電容量の変化に基づく出力信号の変化から、荷重が検出できれば、歪みゲージセンサを用いることなく構成することができる。また、触感呈示部は、任意の個数の圧電振動子を用いて構成したり、タッチセンサの全面に透明圧電素子を設けて構成したり、偏心モータを駆動信号の1周期で1回転させるようにして構成したり、することもできる。さらに、荷重検出部および触感呈示部は、圧電素子を用いて構成する場合は、圧電素子を共用して荷重検出部および触感呈示部を構成することもできる。
また、制御部は、タッチセンサで検出される入力位置に応じて、触感呈示部を駆動する駆動信号を変更して呈示するクリック触感を変更するように構成することもできる。
また、本発明は、タッチセンサがオン・オフ動作を行うタッチスイッチとして機能する入力装置にも有効に適用することができる。さらに、本発明に係る入力装置は、タッチセンサに対する押圧の途中で、異なる基準(荷重)で順次にクリック触感を呈示して、2段階スイッチ(押し込んだ後、さらに押し込む)などの多段階スイッチの触感を呈示することもできる。これにより、例えば、カメラのレリーズボタンに適用した場合は、フォーカスロック(1段押し)とレリーズ(2段押し)との触感を呈示することが可能となる。また、表示部と組み合わせた場合は、押し込みの段数に応じてメニュー画面等の表示を種々変更することが可能となる。さらに、このように、多段階スイッチの触感を呈示する場合は、各段階で触感呈示部によりタッチ面を振動させる駆動信号を変更して、各段階において異なるクリック触感を呈示することも可能である。
また、本発明に係る入力装置は、荷重検出部により検出される押圧荷重が、触感を呈示する基準を満たした際に、触感呈示部を駆動させるが、上記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際とは、荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準値に達した際であってもよいし、荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準値を超えた際でもよいし、荷重検出部により触感を呈示する基準値が検出された際でもよい。
また、制御部は、荷重検出部により検出される押圧荷重が、触感を呈示する基準を満たした際に、触感呈示部を駆動して、タッチセンサを予め設定した所定の振動パターンで振動させるが、前記所定の振動パターンは、押圧時の場合、図4の実線が示す振動パターンであってもよい。また、前記所定の振動パターンは、リリース時の場合、図4の一点鎖線が示す振動パターンであってもよい。このようにタッチセンサを振動させることによって、操作者に対して、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のクリック触感(振動刺激)を呈示することが可能となる。