以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの構成を示す図、図3は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの制御システムの構成を示す図、図4は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの構成を示す図である。
図2及び4において、20は燃料電池(FC)としての燃料電池スタックであり、乗用車、バス、トラック、乗用カート、荷物用カート等の車両用の動力源として使用される。ここで、前記車両は、照明装置、ラジオ、パワーウィンドウ等の車両の停車中にも使用される電気を消費する補機類を多数備えており、また、走行パターンが多様であり、動力源に要求される出力範囲が極めて広いので、動力源としての燃料電池スタック20と図示されない蓄電手段としての二次電池とを併用して使用することが望ましい。
そして、燃料電池スタック20は、アルカリ水溶液型(AFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)、直接型メタノール(DMFC)等のものであってもよいが、固体高分子型燃料電池(PEMFC)であることが望ましい。
なお、更に望ましくは、水素ガスを燃料とし、酸素又は空気を酸化剤とするPEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)型燃料電池、又は、PEM(Proton Exchange Membrane)型燃料電池と呼ばれるものである。ここで、該PEM型燃料電池は、一般的に、プロトン等のイオンを透過する固体高分子電解質膜の両側に触媒、電極及びセパレータを結合したセル(Fuel Cell)を複数及び直列に結合したスタック(Stack)から成る。
本実施の形態において、燃料電池スタック20は、図4に示されるように、複数のセルモジュール10を有する。なお、図4における矢印は、燃料電池スタック20を冷却するための複数の冷却系の1つである閉じた冷却系における冷媒の流れを示している。そして、セルモジュール10は、燃料電池としての後述される単位セル(MEA)11と、該単位セル11同士を電気的に接続するとともに、単位セル11に導入される水素ガスの流路と空気の流路とを分離する後述されるセパレータユニット12と、単位セル11及びセパレータユニット12を支持する図示されないフレームとを1セットとして、板厚方向(図4において左下角と右上角を結ぶ対角線方向)に複数セットを重ねて構成されている。
図2には、燃料電池スタック20に燃料ガスとしての水素ガス及び酸化剤としての空気を供給する装置が示される。なお、図示されない改質装置によってメタノール、ガソリン等を改質して取り出した燃料である水素ガスを燃料電池スタック20に直接供給することもできるが、車両の高負荷運転時にも安定して十分な量の水素ガスを供給することができるようにするためには、燃料貯蔵手段73に貯蔵した水素ガスを供給することが望ましい。これにより、該水素ガスがほぼ一定の圧力で、常に、十分に供給されるので、前記燃料電池スタック20は車両の負荷の変動に遅れることなく追随して、必要な電流を供給することができる。この場合、前記燃料電池スタック20の出力インピーダンスは極めて低く、0に近似することが可能である。
水素ガスは、水素吸蔵合金を収納した容器、デカリンのような水素吸蔵液体を収納した容器、水素ガスボンベ等の燃料貯蔵手段73から、燃料供給管路としての第1燃料供給管路21、及び、該第1燃料供給管路21に接続された燃料供給管路としての第2燃料供給管路33を通って、燃料電池スタック20の燃料室に供給される。そして、前記第1燃料供給管路21には、燃料貯蔵手段元開閉弁24、水素ガスの圧力を検出する圧力センサとしての水素圧センサ27及び28、供給される水素ガスの圧力を調整する第1の水素供給調圧弁25a及び第2の水素供給調圧弁25b、並びに、燃料供給電磁弁26が配設される。
ここで、前記燃料貯蔵手段73は、十分に大きな容量を有し、常に、十分に高い圧力の水素ガスを供給することができる能力を有するものである。なお、図2に示される例においては、燃料貯蔵手段73が複数、例えば、3つ配設され、また、第1燃料供給管路21は、各燃料貯蔵手段73に接続される部分で複数本に分岐され、途中で合流して1本になっている。しかし、燃料貯蔵手段73は、単数であってもよいし、また、複数であってもよいし、複数の場合にはいくつであってもよい。
そして、燃料電池スタック20の燃料室から排出される水素ガスは、燃料排出管路31を通って燃料電池スタック20の外部に排出される。前記燃料排出管路31には、回収容器としての水回収ドレインタンク60が配設されている。そして、該水回収ドレインタンク60には水と分離された水素ガスとを排出する燃料排出管路30が接続され、該燃料排出管路30には燃料強制排出装置としての吸引循環ポンプ36が配設されている。また、前記燃料排出管路30における水回収ドレインタンク60と反対側の端部は、第2燃料供給管路33に接続されている。これにより、燃料電池スタック20の外部に導出された水素ガスを回収し、燃料電池スタック20の燃料室に供給して再利用することができる。
また、前記水回収ドレインタンク60には、燃料排出管路56が接続され、該燃料排出管路56には水素排気弁62が配設され、燃料電池スタック20の起動時等に燃料室から排出される水素ガスを大気中に排出することができるようになっている。なお、燃料排出管路56に、必要に応じて水素燃焼器を配設することもできる。該水素燃焼器によって排出される水素ガスを燃焼させ、水にしてから大気中に排出することができる。
ここで、前記第1の水素供給調圧弁25a及び第2の水素供給調圧弁25bは、バタフライバルブ、レギュレータバルブ、ダイヤフラム式バルブ、マスフローコントローラ、シーケンスバルブ等のものであるが、前記第1の水素供給調圧弁25a及び第2の水素供給調圧弁25bの出口から流出する水素ガスの圧力をあらかじめ設定した圧力に調整することができるものであれば、いかなる種類のものであってもよい。なお、前記圧力の調整は、手動によってなされてもよいが、電気モータ、パルスモータ、電磁石等から成るアクチュエータによってなされることが望ましい。また、前記燃料供給電磁弁26及び水素排気弁62は、いわゆる、オン−オフ式のものであり、電気モータ、パルスモータ、電磁石等から成るアクチュエータによって作動させられる。なお、前記燃料貯蔵手段元開閉弁24は手動又は電磁弁を用いて自動的に作動させられる。さらに、前記吸引循環ポンプ36は、水素ガスを強制的に排出し、燃料室内を負圧の状態にすることができるポンプであれば、いかなる種類のものであってもよい。
一方、酸化剤としての空気は、酸化剤供給源としての空気供給ファン75から、酸化剤供給管路76を通って、燃料電池スタック20の酸素室に供給される。なお、酸化剤供給源としては、空気供給ファン75に代えて空気ボンベ、空気タンク等を使用することもできる。また、酸化剤として、空気に代えて酸素を使用することもできる。そして、酸素室から排出される空気は、排気マニホールド77を通って大気中へ排出される。
なお、燃料電池スタック20の酸素極としての空気極側から単位セル11を湿潤な状態に維持するために、酸素室に供給される空気中に水をスプレーして供給することもできる。この場合、例えば、水を貯留するタンクから供給された水を、酸化剤供給管路76の途中や燃料電池スタック20の酸素室の入口に配設された水供給ノズルを通して、空気中にスプレーすることが望ましい。また、排気マニホールド77の途中等に凝縮器を配設して、酸素室から排出される空気に含まれる水を回収して再利用することが望ましい。
ところで、燃料電池スタック20の酸素室に供給される空気は、圧力が大気圧程度の常圧の状態であってもよいし、圧力が大気圧よりも高くなるように加圧された状態であってもよいが、本実施の形態においては、加圧された状態であるものとして説明する。すなわち、本実施の形態における燃料電池システムは、いわゆる常圧システムでなく、加圧システムであるものとする。
また、図2には、燃料電池スタック20を冷却するための複数の冷却系の1つである閉じた冷却系の装置が示されている。前記燃料電池スタック20には、該燃料電池スタック20に供給される冷媒が通過する冷媒供給管路53、及び、燃料電池スタック20から排出された冷媒が通過する冷媒排出管路71が接続されている。そして、前記冷媒供給管路53及び冷媒排出管路71の燃料電池スタック20と反対側の端には冷媒貯留容器52が接続されている。また、前記冷媒供給管路53には、冷媒ポンプとしての冷媒供給ポンプ54及びフィルタ55が配設されている。さらに、前記冷媒排出管路71には、冷媒を冷却する冷却装置としてのラジエータ72及び冷媒ポンプとしての冷媒排出ポンプ51が配設されている。ここで、前記冷媒は、例えば、水であるが、不凍液であってもよいし、いかなる種類の流体であってもよい。そして、前記冷媒排出ポンプ51及び冷媒供給ポンプ54は、水等の冷媒を吸引して吐出することができるポンプであれば、いかなる種類のものであってもよい。また、前記フィルタ55は、水等の冷媒に含まれる塵埃(じんあい)、不純物等を除去するものであれば、いかなる種類のものであってもよい。
そして、燃料電池スタック20に供給された冷媒は、各セルモジュール10において、セパレータユニット12の後述されるセパレータ本体41内に形成された冷媒流路45内を流通して各セルモジュール10を冷却する。この場合、冷媒は、冷媒貯留容器52、冷媒供給管路53、燃料電池スタック20及び冷媒排出管路71を接続することによって形成された実質的に閉じた冷却系内を循環し、単位セル11に接触することがない。そのため、該単位セル11を構成する固体高分子電解質膜、触媒、電極等の部材に冷媒が接触することがないので、不凍液等のように、単位セル11を構成する部材に影響を及ぼす可能性のある成分を含有する冷媒であっても使用することができる。
また、燃料電池スタック20の燃料室に供給される水素ガス及び酸素室に供給される空気も、燃料電池スタック20を冷却する機能を有する。そのため、燃料電池スタック20に燃料ガスとしての水素ガス及び酸化剤としての空気を供給する装置は、燃料電池スタック20を冷却するための冷却系の1つとして機能する。そして、水素ガス及び空気は、消費されたり外部に排出されたりするものであるから、水素ガス及び空気を供給する装置は開いた冷却系と言える。この場合、水素ガス及び空気は、単位セル11を構成する固体高分子電解質膜、触媒、電極等の部材に接触しながらセルモジュール10内を流通して、該セルモジュール10を冷却する。なお、前述のように、酸素室に供給される空気中に水を供給するようにした場合には、冷却能力が向上する。
なお、燃料電池スタック20には、図示されない電気端子の端子電圧を計測する電圧計78、燃料電池スタック20内を流通する空気又は燃料電池スタック20から排出される空気の温度を検出する排出空気温度計74が取り付けられている。また、冷媒貯留容器52及び水回収ドレインタンク60には水位を検出する水位センサ52a及び60aが取り付けられている。
また、前記蓄電手段としての二次電池は、いわゆる、バッテリ(蓄電池)であり、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が一般的である。なお、前記蓄電手段は、必ずしもバッテリでなくてもよく、電気二重層キャパシタのようなキャパシタ(コンデンサ)、フライホイール、超伝導コイル、蓄圧器等のように、エネルギを電気的に蓄積し放出する機能を有するものであれば、いかなる形態のものであってもよい。さらに、これらの中のいずれかを単独で使用してもよいし、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
そして、前記燃料電池スタック20は図示されない負荷に接続され、発生した電流を前記負荷に供給する。ここで、該負荷は、一般的には、駆動制御装置であるインバータ装置であり、前記燃料電池スタック20又は蓄電手段からの直流電流を交流電流に変換して、車両の車輪を回転させる駆動モータに供給する。ここで、該駆動モータは発電機としても機能するものであり、車両の減速運転時には、いわゆる回生電流を発生する。この場合、前記駆動モータは車輪によって回転させられて発電するので、前記車輪にブレーキをかける、すなわち、車両の制動装置(ブレーキ)として機能する。そして、前記回生電流が蓄電手段に供給されて該蓄電手段が充電される。
また、本実施の形態において、燃料電池システムは、図3に示されるような制御システムを有する。図3において、81は、CPU、MPU等の演算手段、入出力インターフェイス等を備える一種のコンピュータであり、燃料電池システムの動作を制御する制御装置である。該制御装置81には、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段としてのメモリ82が接続されている。また、前記制御装置81には、前記電圧計78、水位センサ52a及び60a、水素圧センサ27及び28、排出空気温度計74、並びに、燃料電池スタック20の燃料室から排出される水素ガス濃度を検出する水素濃度センサ83が接続され、これら各種のセンサの出力が前記制御装置81に入力される。さらに、該制御装置81には、前記第1の水素供給調圧弁25a及び第2の水素供給調圧弁25b、水素排気弁62、空気供給ファン75、冷媒ポンプとしての冷媒供給ポンプ54及び冷媒排出ポンプ51、並びに、燃料電池システムに故障、事故等が発生した場合に警報を出力する装置としてのアラーム86が接続され、これらの装置は前記制御装置81によって動作が制御される。
次に、前記セパレータユニット12の構成について詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムのセパレータユニットの構成を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムのセルモジュールの構成を示す断面図、図6は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの発電性能を示す図である。
図1及び5に示されるように、セルモジュール10は、単位セル11と、該単位セル11同士を電気的に接続するとともに、単位セル11に導入される水素ガスの流路としての燃料室と、空気の流路としての酸素室とを分離するセパレータユニット12とを有し、複数個が積層されている。なお、図1は積層されたセルモジュール10の一部のみを拡大して示す斜視図であり、図5は積層されたセルモジュール10の一部のみを拡大して示す断面図であり、説明の都合上、単位セル11及びセパレータユニット12を支持するフレームは省略されている。
そして、単位セル11は、図5に示されるように、イオン交換膜である電解質層としての固体高分子電解質膜11aと、該固体高分子電解質膜11aの一側に設けられた酸素極としての空気極(カソード極)11b及び他側に設けられた燃料極(アノード極)11cとで構成されている。前記空気極11b及び燃料極11cは、反応ガスを拡散しながら透過する導電性材料から成る電極拡散層と、該電極拡散層上に形成され、固体高分子電解質膜11aと接触させて支持される触媒物質を含む触媒層とから成る。なお、図1においては、固体高分子電解質膜11a、空気極11b及び燃料極11cの図示が省略されている。
また、セパレータユニット12は、単位セル11間のガス遮断部材としてのセパレータ本体41と、該セパレータ本体41の一側に設けられ、単位セル11の空気極11b側の電極拡散層に接触して集電するとともに空気と水との混合流を透過する多数の開口が形成された網目状の集電体としての空気極側コレクタ14と、セパレータ本体41の他側に設けられ、単位セル11の燃料極11c側の電極拡散層に接触して同じく電流を外部に導出するための網目状の集電体としての燃料極側コレクタ15とで構成されている。なお、図1においては、説明の都合上、燃料極側コレクタ15の図示が省略されている。
そして、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、導電性の板材、例えば、板厚が0.2〔mm〕程度の金属薄板で形成されている。また、セパレータ本体41は、板厚が更に薄い金属薄板で構成された板状の部材であり、例えば、第1板部材41a及び第2板部材41bから成る二重構造を有し、内部に示されるような冷媒流路45が形成されている。前記空気極側コレクタ14、燃料極側コレクタ15及びセパレータ本体41の構成金属としては、導電性と耐蝕(しょく)性を備えた金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金等に金メッキ等の耐蝕導電処理を施したものが挙げられる。
また、空気極側コレクタ14は、全体形状が概略横長の矩(く)形であり、多孔体から成る。該多孔体は、例えば、開口率59〔%〕以上の網目状の開口を有するエキスパンドメタル、パンチングメタル等のメタル板材であり、プレス加工によって形成された細かい凸条を有する波板とされている。なお、前記凸条は側壁部14b及び頂部14cを備える。そして、前記凸条は、板材の縦辺方向、すなわち、図5における上下方向に延在し、平行に等間隔で、板面を完全に縦断する配置とされている。前記凸条の断面形状は、大まかには矩形波状断面とされ、プレス加工の型抜きの関係から、根元側が若干裾(すそ)広がりの形状とされている。前記凸条の高さは、図示されないフレームの厚さに実質上等しい高さとされ、それにより、積層状態において、単位セル11の空気極11b側の電極拡散層とセパレータ本体41の側面との間を縦方向に貫通する所定の開口面積の空気流路を確保している。なお、図1において、矢印Aは、単位セル11に導入されて酸素室内を流通する空気の流れを示している。ここで、各凸条の頂部14cの平面は、セパレータ本体41の側面に当接するセパレータ当接部となっており、各凸条間の谷部14aの平面は、単位セル11の空気極11b側の電極拡散層に当接する電極当接部となっている。
また、燃料極側コレクタ15は、前記空気極側コレクタ14と同様の寸法の多孔体であり、例えば、網目状の開口を有するエキスパンドメタル、パンチングメタル等のメタル板材から成り、プレス加工によって形成された細かい凸条を有する波板とされている。そして、前記凸条は、空気極側コレクタ14の場合と同様に、側壁部15b及び頂部15cを備え、図5における上下方向に延在し、平行に等間隔で、板面を完全に縦断する配置とされている。前記凸条の断面形状は、大まかには矩形波状断面とされ、プレス加工の型抜きの関係から、根元側が若干裾広がりの形状とされている。前記凸条の高さは、図示されないフレームの厚さに実質上等しい高さとされ、それにより、積層状態において、単位セル11の燃料極11c側の電極拡散層とセパレータ本体41の側面との間を縦方向に貫通する所定の開口面積の燃料ガス流路を確保している。また、各凸条の頂部15cの平面は、セパレータ本体41の側面に当接するセパレータ当接部となっており、各凸条の谷部15aの平面は、単位セル11の燃料極11c側の電極拡散層に当接する電極当接部となっている。
そして、前記空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、それぞれの谷部14a及び15aがともに外側となるように、セパレータ本体41を間に挟んで配置される。このとき、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15のそれぞれの凸条の頂部14c及び15cは、セパレータ本体41と当接した状態となり、相互に通電可能な状態となる。また、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15をセパレータ本体41と重ね合わせることによって、該セパレータ本体41の一方側に空気流路、すなわち、酸素室が構成され、他方側に燃料ガス流路、すなわち、燃料室が構成されることになる。そして、酸素室から単位セル11の空気極11bに空気が供給され、同様に、燃料室から単位セル11の燃料極11cに水素ガスが供給される。
なお、単位セル11においては水が移動する。すなわち、燃料極側コレクタ15が配設されている燃料室内に燃料ガスとして水素ガスを供給すると、水素が水素イオン(プロトン)と電子とに分解され、水素イオンがプロトン同伴水を伴って、固体高分子電解質膜11aを透過する。また、前記空気極11bをカソード極とし、酸素室内に酸化剤としての空気を供給すると、空気中の酸素と、前記水素イオン及び電子とが結合して、水が生成される。さらに、水分が逆拡散水として固体高分子電解質膜11aを透過し、燃料室内に移動する。ここで、逆拡散水とは、酸素室において生成される水が固体高分子電解質膜11a内に拡散し、該固体高分子電解質膜11a内を前記水素イオンと逆方向に透過して燃料室にまで浸透したものである。
また、セパレータ本体41は、図示されない冷媒流入管及び冷媒流出管が接続され、冷媒流入管から流入した冷媒がセパレータ本体41の内部に形成された冷媒流路45を矢印Bで示されるように通って冷却を行い、冷媒流出管から流出する。なお、前記冷媒は閉じた冷却系の装置における冷媒であり、冷媒供給管路53を通って燃料電池スタック20に供給され、該燃料電池スタック20内に形成された図示されない流路を通って冷媒流入管に流入する。また、冷媒流出管から流出された冷媒は、燃料電池スタック20内に形成された図示されない流路を通って冷媒排出管路71に流入し、燃料電池スタック20から排出される。なお、冷媒流路45の形状は、直線状であってもよいし、蛇(だ)行状、渦巻き状等のような冷媒の流路長が長くなるような形状であってもよい。
図1に示される例において、前記セパレータ本体41は第1板部材41a及び第2板部材41bを貼(は)り合わせて形成されている。この場合、一方の板材としての第2板部材41bの内側となる面に、例えば、ケミカルエッチング等のフォトリソグラフィ技術を使用して所望の形状の凹溝を形成する。そして、該凹溝が形成された面に他方の板材としての第1板部材41aを重ね合わせることによって、冷媒流路45を備えるセパレータ本体41を得ることができる。この場合、該セパレータ本体41の両側の面が各所で結合されているので、前記両側の面の間の電気伝導性を良好なものとすることができる。また、前記セパレータ本体41の両外側の面は、凹凸のない平面であることが望ましい。これにより、セパレータ本体41の外側の面と、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15のそれぞれの頂部14c及び15cとの接触が確実になり、セパレータ本体41と空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15との間の熱伝導性及び電気伝導性を良好なものとすることができる。
本実施の形態において、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、開口率が局所的に変化するように形成されている。例えば、単位セル11に当接する電極当接部であるMEA接触部としての谷部14a及び15aの開口率が最も高く、セパレータ本体41に当接するセパレータ当接部であるセパレータ接触部としての頂部14c及び15cの開口率が最も低く、リブを構成するリブ部としての側壁部14b及び15bの開口率が谷部14a及び15aの開口率と頂部14c及び15cの開口率との中間となるように形成されている。なお、側壁部14b及び15bの開口率は、頂部14c及び15cの開口率と等しくてもよい。すなわち、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の各所の開口率は、単位セル11の積層方向(図5における上下方向)に関して傾斜化され、次の式(1)で定義されるように変化する。
MEA接触部の開口率>リブ部の開口率≧セパレータ接触部の開口率 ・・・式(1)
ここで、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、網目状の開口を有するので、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスの流通が空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15によって阻害されることがない。すなわち、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスは、単位セル11に接触している谷部14a及び15aの開口を通して、単位セル11の空気極11b及び燃料極11cの電極拡散層に十分に接触することができる。さらに、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスは、側壁部14b及び15bの開口を通しても移動することができるので、酸素室内の空気の流れ及び燃料室内の水素ガスの流れがスムーズになる。
特に、生成水や空気中に供給された水によって、酸素室内において水滴が発生し、該水滴が隣接する谷部14a間の流路を塞いでしまった場合、空気は側壁部14bの開口を通して隣接する流路に流れ込むことができるので、空気の流れが阻害されることがない。なお、逆拡散水によって燃料室内に水滴が発生した場合も同様である。
そして、単位セル11は、閉じた冷却系の装置の冷却器として機能するセパレータ本体41によって冷却される。すなわち、単位セル11において発生した熱は、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15を通して、セパレータ本体41に伝達され、該セパレータ本体41内を流通する冷媒に伝達される。なお、単位セル11において発生した電気も同様に、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15に良好に伝達される。
前記単位セル11において発生した熱は、空気極11b及び燃料極11cの外側の面から谷部14a及び15aに伝達され、側壁部14b及び15bを通って、頂部14c及び15cからセパレータ本体41に伝達される。そのため、仮に、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の開口率がすべての部位で一定であるとすると、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15内における熱伝導率は、すべての部位で一定となる。この場合、谷部14a及び15aの面積が頂部14c及び15cの面積よりも大きいので、谷部14a及び15aにおいて伝達する単位面積当たりの熱量よりも、頂部14c及び15cにおいて伝達する単位面積当たりの熱量の方が大きくなり、谷部14a及び15aにおける熱抵抗よりも頂部14c及び15cにおける熱抵抗の方が大きくなってしまう。また、側壁部14b及び15bにおいても、開口率が大きいと熱伝導率が低くなり、熱抵抗が大きくなってしまう。特に、空気中に水を供給するようにした場合には側壁部14b及び15bが冷却器の一種としての冷却フィンとして機能するが、この場合、開口率が大きいと冷却フィンとして機能する面積が減少し、熱抵抗が大きくなってしまう。そして、谷部14a及び15a並びに側壁部14b及び15bにおける熱抵抗が大きくなると、「発明が解決しようとする課題」の項において説明したように、単位セル11の積層方向に関して温度分布が発生し、空気極11b及び燃料極11cの温度が上昇してしまう。そのため、空気極11b及び燃料極11cを通して単位セル11の外側に散逸する水分の量が多くなり過ぎ、単位セル11内部の湿度が低下するので、単位セル11における発電効率が低下してしまう。
しかし、本実施の形態においては、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の各所の開口率は、単位セル11の積層方向に関して傾斜化され、前記式(1)で定義されるように変化する。そのため、頂部14c及び15cは、開口率が低く、面密度が高いので、単位面積当たりの伝達可能な熱量が増加し、熱抵抗が減少する。また、側壁部14b及び15bも、開口率が低く、面密度が高いので、単位面積当たりの伝達可能な熱量が増加し、熱抵抗が減少する。これにより、単位セル11の積層方向に関する温度分布が解消され、空気極11b及び燃料極11cの温度が上昇することがないので、図5において矢印Cで示されるような空気極11bを通して単位セル11の外側に散逸する水分、及び、図5において矢印Dで示されるような燃料極11cを通して単位セル11の外側に散逸する水分の量が抑制される。したがって、単位セル11内部の湿度を適正に維持することができ、単位セル11における発電効率を向上させることができる。
図6は、低加湿条件、すなわち、単位セル11が比較的乾燥した状態における空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の開口率による発電性能の比較を示している。図6において、縦軸には単位セル11における電圧を採り、横軸には電流密度を採っている。そして、▲でプロットされた実験結果を結ぶ線47は空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の開口率がすべての部位で一定である場合を示し、◆でプロットされた実験結果を結ぶ線48は空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の開口率が単位セル11の積層方向に関して傾斜化され、前記式(1)で定義されるように変化する場合を示している。図6から、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の開口率が単位セル11の積層方向に関して傾斜化され、前記式(1)で定義されるように変化する場合には、単位セル11における発電効率が向上していることが分かる。
また、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15が網目状の開口を有するので、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスの流通が空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15によって阻害されることがない。すなわち、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスは、単位セル11に接触している谷部14a及び15aの開口を通して、単位セル11の空気極11b及び燃料極11cの電極拡散層に十分に接触することができる。また、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスは、側壁部14b及び15bの開口を通しても移動することができるので、酸素室内の空気の流れ及び燃料室内の水素ガスの流れがスムーズになる。特に、生成水や空気中に供給された水によって、酸素室内において水滴が発生し、該水滴が隣接する谷部14a間の流路を塞いでしまった場合、空気は側壁部14bの開口を通して隣接する流路に流れ込むことができるので、空気の流れが阻害されることがない。なお、逆拡散水によって燃料室内に水滴が発生した場合も同様である。
次に、前記構成の空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15を製造する方法について説明する。なお、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15を製造する方法は実質的に同一であるので、ここでは、空気極側コレクタ14を製造する方法についてのみ説明し、燃料極側コレクタ15を製造する方法については説明を省略する。
図7は本発明の第1の実施の形態における空気極側コレクタを製造する方法の第1段階を示す平面図、図8は本発明の第1の実施の形態における空気極側コレクタを製造する方法の第1段階を示す断面図であり図7のE−E矢視断面図、図9は本発明の第1の実施の形態における空気極側コレクタを製造する方法の第2段階を示す平面図、図10は本発明の第1の実施の形態における空気極側コレクタを製造する方法の第2段階を示す断面図であり図9のF−F矢視断面図である。
まず、図7及び8に示されるようなコレクタ母材141を用意する。該コレクタ母材141は、開口率が比較的小さな網目状の開口を有するエキスパンドメタル、パンチングメタル等のメタル板材であり、細かい凸条を有する波板状多孔板とされている。ここで、前記凸条は、コレクタ母材141の縦辺方向、すなわち、図7における上下方向に延在し、平行に等間隔で、コレクタ母材141の面を完全に縦断する配置とされている。そして、図8に示されるような凸条の谷部141aは前述された空気極側コレクタ14の谷部14aに対応し、凸条の側壁部141bは前述された空気極側コレクタ14の側壁部14bに対応し、凸条の頂部141cは前述された空気極側コレクタ14の頂部14cに対応する。なお、図8においては、図示の都合上、谷部141aが上側に位置し、頂部141cが下側に位置している。
ここで、前記コレクタ母材141は次のようにして得ることができる。
まず、表面に複数の平行な筋状の凹部が形成された載置用治具上に、平らな帯板状のコレクタ母材141、すなわち、網目状の開口を有する帯板から成るベースコレクタ材を載置する。続いて、表面に複数の平行な筋状の凸部が形成された押圧用治具を、載置用治具上のベースコレクタ材に上方から押し付けて、該ベースコレクタ材を押圧する。このとき、載置用治具の凹部に押圧用治具の凸部が嵌(かん)合するようにする。これにより、載置用治具の凹部と押圧用治具の凸部とに挟み込まれた範囲のベースコレクタ材は、凹凸状に成形される。
続いて、押圧用治具を上昇させた後、前記ベースコレクタ材を長手方向に移動させる。このときの移動距離は、載置用治具の凹部と押圧用治具の凸部とに挟み込まれた範囲の長さに相当する距離である。そして、押圧用治具を、載置用治具上のベースコレクタ材に上方から押し付けて、該ベースコレクタ材を押圧する。以降、前述の動作を順次繰り返して行うことによって、帯板から成るベースコレクタ材は全範囲に亘(わた)って凹凸状に成形される。これにより、細かい凸条を有する波板状多孔板としてのコレクタ母材141を得ることができる。
次に、図7に示されるように、所定範囲としての点線で囲まれた削除範囲142の谷部141aを削除する。なお、前記範囲142は任意に設定することができる。この場合、図8に示されるように、削除範囲142には、谷部141aのみが含まれ、側壁部141b及び頂部141cは含まれないようになっている。すなわち、図7に示されるように、平面において削除範囲142に含まれていても、側壁部141b及び頂部141cは削除されない。
ここで、前記谷部141aは、微細放電加工によって削除することができる。
一般に、微細放電加工機は、X−Yテーブル上に取り付けられた加工槽と該加工槽上に配設された電極とを有する。そして、前記加工槽内に絶縁体である加工液を満たした状態で、コレクタ母材141、すなわち、被加工物が前記加工槽内に保持される。加工の際には、X−Yテーブルを作動させて被加工物を移動させることによって、該被加工物の所望部位の加工が行われる。また、前記電極は、所定の電圧が印加された状態で、Z軸周りに回転しながら上下動させられる。そして、加工液中において被加工物と電極との間隔が所定距離となると絶縁破壊が起こり、放電が発生する。該放電によるエネルギーによって被加工物の所望部位が切断される。
次に、前記削除範囲142に対応する形状及び大きさの接合部材143を用意する。該接合部材143は、開口率が比較的大きな網目状の開口を有するエキスパンドメタル、パンチングメタル等のメタル板材であり、平板である。なお、前記接合部材143は、コレクタ母材141と同一の材質のものであってもよいし、相違する材質のものであってもよい。また、前記接合部材143の形状は、例えば、微細放電加工によって形成することができる。そして、図9に示されるように、前記接合部材143は削除範囲142を塞ぐように配設される。すなわち、削除された谷部141aは、接合部材143によって置き換えられる。
次に、拡散接合によって接合部材143をコレクタ母材141に接合させる。この場合、図10に示されるように、接合部材143の頂部141c側の面と側壁部141bとが接合される。そして、接合された接合部材143は、開口率が大きな空気極側コレクタ14の谷部14aとして機能する。これにより、MEA接触部としての谷部14aの開口率が、リブ部としての側壁部14b及びセパレータ接触部としての頂部14cの開口率よりも大きな空気極側コレクタ14を得ることができる。
この場合、接合部材143とコレクタ母材141とが拡散接合によって接合されているので、接合部近傍の開口が塞がれてしまうことがない。そのため、得られた空気極側コレクタ14は所定の開口率を備えたものとなる。また、接合部の肉厚が他の部分より肉厚になることがない。そのため、得られた空気極側コレクタ14は所定の寸法を備えたものとなり、単位セル11とセパレータ本体41との距離を所定の数値に維持することができる。さらに、他の金属成分が混入することがない。そのため、想定外の金属成分によって単位セル11の機能が影響を受けることがない。これに対し、例えば、接合部材143とコレクタ母材141とを溶接によって接合すると、接合部近傍の開口が塞がれてしまい、得られた空気極側コレクタ14は所定の開口率を備えたものとならない。また、接合部の肉厚が他の部分より肉厚になるので、単位セル11とセパレータ本体41との距離を所定の数値に維持することができない。さらに、溶接材等に含まれる他の金属成分が混入するので、単位セル11の機能が影響を受けることがある。
ここで、接合部材143とコレクタ母材141との拡散接合は、次のようにして行うことができる。
拡散接合は、接合材料の金属表面同士を相互に原子レベル程度の距離にまで接近させ、母材を溶解させることなく、加熱、加圧、真空度、時間等の条件をコントロールすることによって、接合材料間の相互拡散を制御し、接合材料同士の金属結合の形成及び接合を可能とする技術である。この場合、真空高温炉を使用し、炉内温度を接合材料の融点の60〜70〔%〕の温度に保持する。例えば、接合材料がステンレス鋼である場合には、炉内温度を約1000〔℃〕に保持する。そして、治具によって固定し、所定の加重を付与した接合部材143及びコレクタ母材141、すなわち、接合材料を前記炉内に所定時間、例えば、12時間載置する。これにより、接合部材143とコレクタ母材141とを拡散接合によって接合することができる。
なお、ここでは、空気極側コレクタ14を製造する方法についてのみ説明したが、燃料極側コレクタ15も同様の方法で製造される。
次に、前記構成の燃料電池システムの動作について説明する。
図11は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの起動動作を示すフローチャート、図12は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの空気供給量制御の動作を示すフローチャートである。
まず、起動時における動作について説明する。燃料電池システムを起動するためには、オペレータは、図示されない起動用のスイッチをオンにする(ステップS1)。すると、冷媒供給ポンプ54及び冷媒排出ポンプ51、すなわち、冷媒ポンプがオンになり(ステップS2)、冷媒の循環が開始され、セパレータ本体41内の冷媒流路45を通って冷媒が流通する。続いて、燃料電池スタック20に酸化剤としての空気を供給する装置、すなわち、空気供給系がオンになる(ステップS3)。この場合、燃料電池スタック20の単位セル11に異常反応が発生しないようにするため、空気供給ファン75が供給する空気の量が最大となるように制御される。続いて、燃料電池スタック20に燃料ガスとしての水素ガスを供給する装置、すなわち、水素供給系がオンになり(ステップS4)、起動動作が終了する。これにより、定常運転に移行し、燃料電池スタック20が発生した電流が負荷や二次電池に供給される。
なお、燃料電池システムが、酸素室に供給される空気中に水をスプレーして供給する装置を有するものである場合には、水素供給系がオンになる前に、酸素室に供給される空気中への水の供給を開始させることが望ましい。これは、起動時においては、空気供給系がオンであるか否かに関わらず、単位セル11に空気が存在しているので、固体高分子電解質膜11aが乾燥した状態で水素ガスを供給すると、異常燃焼が発生する可能性があるからである。そのため、異常燃焼によって異常熱が発生した場合であっても、単位セル11がダメージを被らないように、水素ガスを供給する前に水を供給し、あらかじめ単位セル11の空気極11bを濡(ぬ)らしておく必要がある。これにより、異常熱を水の蒸発熱に変換し、更には、固体高分子電解質膜11aの湿潤を促進して、単位セル11のダメージを未然に防止することができる。
なお、起動動作が終了した後は、水素ガス供給量制御、空気供給量制御及び水供給量制御とが並列に実行される。水素ガス供給量制御においては、第1の水素供給調圧弁25a及び第2の水素供給調圧弁25bが、爆発限界以下の所定の濃度で水素ガスが燃料極に供給されるように調節される。そして、起動時に閉状態の水素排気弁62をあらかじめ定められた規則に基づいて開放し、水素分圧の低下した燃料ガスを排気し、燃料極の雰囲気ガスをリフレッシュする処理が行われる。この際のあらかじめ定められた規則は、メモリ82に保存されており、第1の水素供給調圧弁25a及び第2の水素供給調圧弁25bの調節、並びに、水素排気弁62の開閉は、制御装置81が前記規則をメモリ82から読み出すことによって実行される。なお、水素排気弁62を運転時に適宜開放するのは、水素排気弁62を閉じた状態で燃料電池システムの運転を続けると、空気極11bより透過するN2 、O2 又は生成水の影響によって、燃料極11cで消費される水素の分圧が徐々に低下し、これに従って燃料電池スタック20の出力電圧も低下し、安定した電圧が得られなくなるためである。
また、空気供給量制御においては、まず、燃料電池スタック20から排出された直後の排出空気の温度検出が排出空気温度計74によって行われる(ステップS11)。そして、制御装置81は、検出された排出空気の温度が80〔℃〕以下であるか否かを判断する(ステップS12)。ここで、排出空気の温度が80〔℃〕以下でない、すなわち、80〔℃〕を超えている場合、単位セル11が焼き付く可能性があるので、制御装置81は風量アップを行う(ステップS13)。具体的には、空気供給ファン75の回転数を上げて空気の供給量を増加させ、熱発生源である空気極11bの温度を低下させる。
一方、排出空気の温度が80〔℃〕以下である場合、制御装置81は燃料電池スタック20、すなわち、FC本体の負荷を検出する(ステップS14)。そして、制御装置81は空気の供給量、すなわち、風量が最適であるか否かを判断する(ステップS15)。この場合、燃料電池スタック20の負荷とその状態で必要とする風量との関係を、メモリ82内にテーブル形式で保存されている関係に照らし合わせることによって、風量が最適であるか否かを判断する。そして、風量が最適でない場合、制御装置81は風量調節を行う(ステップS16)。具体的には、空気供給ファン75の回転数を調節して風量を調節する。また、風量が最適である場合には処理を終了する。
なお、水素ガス供給量制御においては、水素圧センサ27及び28によって燃料貯蔵手段73側の水素ガスの圧力が検出され、制御装置81は、第1の水素供給調圧弁25a及び第2の水素供給調圧弁25bを調節することによって、燃料電池スタック20に供給される水素ガスの圧力が所定の値となるように調節する。また、制御装置81は、燃料供給電磁弁26の開閉を制御することによって、水素ガスの燃料電池スタック20への供給を制御する。なお、水素ガスの燃料電池スタック20への供給を遮断する場合は、燃料供給電磁弁26を閉鎖する。
このように、本実施の形態において、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、開口率が局所的に変化するように形成され、単位セル11の積層方向に関して傾斜化されている。そのため、単位セル11の積層方向に関する温度分布が解消され、空気極11b及び燃料極11cの温度が上昇することがないので、空気極11b及び燃料極11cを通して単位セル11の外側に散逸する水分の量が抑制される。これにより、単位セル11内部の湿度を適正に維持することができ、単位セル11における発電効率を向上させることができる。この場合、開口率の異なる複数の部材、すなわち、コレクタ母材141と接合部材143とを接合することによって集電体としての空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15を製造するので、開口率を局所的に変化させた多孔体から成る空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15を低いコストで容易に製造することができる。
また、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15が網目状の開口を有するので、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスの流通が空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15によって阻害されることがない。すなわち、酸素室内の空気及び燃料室内の水素ガスは、単位セル11に接触している谷部14a及び15aの開口を通して、単位セル11の空気極側及び燃料極側の電極拡散層に十分に接触することができる。
なお、本実施の形態においては、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の側壁部14b及び15b並びに頂部14c及び15cが開口を有する場合について説明したが、側壁部14b及び15b並びに頂部14c及び15cは開口を有していなくてもよい。
側壁部14b及び頂部14cが開口を有していない空気極側コレクタ14は、コレクタ母材141として開口を有していないブランク材から成るメタル板材を使用することによって製造することができる。なお、接合部材143は、網目状の開口を有するエキスパンドメタル、パンチングメタル等のメタル板材を使用する。そして、開口を有していないコレクタ母材141と、該コレクタ母材141の削除範囲142を塞ぐように載置された網目状の開口を有する接合部材143とを拡散接合によって接合することにより、谷部14aには開口を有しているが側壁部14b及び頂部14cが開口を有していない空気極側コレクタ14を得ることができる。なお、谷部15aには開口を有しているが側壁部15b及び頂部15cが開口を有していない燃料極側コレクタ15も同様にして得ることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図13は本発明の第2の実施の形態における空気極側コレクタの構成を示す二面図、図14は本発明の第2の実施の形態における空気極側コレクタの構成を示す要部拡大図であり図13のG部拡大図である。なお、図13(a)は平面図、図13(b)は側面図である。
図13及び14において、145は本実施の形態における空気極側コレクタである。なお、燃料極側コレクタは、空気極側コレクタ145と実質的に同一の構成を有し、製造方法も実質的に同一であるので、ここでは、空気極側コレクタ145の構成及び製造方法についてのみ説明し、燃料極側コレクタについては説明を省略する。
本実施の形態における空気極側コレクタ145は、網目状の開口を有するエキスパンドメタル、パンチングメタル等のメタル板材から成る平板状多孔板としてのベースコレクタ材146と、該ベースコレクタ材146の一方の面に接合された線状体としての線状材147とを備える。
ここで、ベースコレクタ材146は、前記第1の実施の形態における空気極側コレクタ14と同様に、導電性と耐蝕性を備えた金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金等に金メッキ等の耐蝕導電処理を施したものから成る。また、開口率は、例えば、59〔%〕以上であるが任意に設定することができる。
一方、線状材147は、例えば、断面矩形の中実のワイヤ状又は棒状の開口を有していない部材であり、複数本が互いに平行になるように配列されている。なお、前記線状材147は、ベースコレクタ材146と同一の材質のものであってもよいし、相違する材質のものであってもよい。また、前記線状材147の断面形状は、矩形以外の形状、例えば、円形、楕(だ)円形、三角形等であってもよく、任意に設定することができる。さらに、前記線状材147は、中空のパイプ状のものであってもよい。
そして、線状材147は、拡散接合によってベースコレクタ材146の表面に接合されている。なお、拡散接合の方法は、前記第1の実施の形態と同様である。
これにより、複数の凸条を備える空気極側コレクタ145を得ることができる。この場合、ベースコレクタ材146がMEA接触部としての谷部145aとして機能し、線状材147の両側部がリブ部としての側壁部145bとして機能し、線状材147の頂部がセパレータ接触部としての頂部145cとして機能する。そして、谷部145aは開口を有し、側壁部145b及び頂部145cは開口を有していないのであるから、空気極側コレクタ145は、前記第1の実施の形態における空気極側コレクタ14と同様に、前記式(1)の定義に該当する。
なお、ここでは、空気極側コレクタ145についてのみ説明したが、燃料極側コレクタも同様の構成を有し、同様の方法で製造される。また、その他の点については、前記第1の実施と同様であるので、説明を省略する。
このように、本実施の形態において、空気極側コレクタ145は、開口を有する平板状多孔板としてのベースコレクタ材146に線状材147を接合することによって製造されている。そのため、低いコストで容易に製造することができる。なお、燃料極側コレクタについても同様である。
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。