JP4964299B2 - 振動型電磁発電機及び振動型電磁発電機の製造方法 - Google Patents

振動型電磁発電機及び振動型電磁発電機の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、長さ方向に着磁された複数個の円筒形の磁石を、複数個のソレノイドコイルの中を振動または移動させることにより発電電圧を得る振動型電磁発電機及び振動型電磁発電機の製造方法に関する。特に、複数個の磁石を同じ極が対向するように所定の間隔をあけて一体化することによって発電効率を高めた振動型電磁発電機及び振動型電磁発電機の製造方法に関する。
近年、携帯電話端末やゲーム機などの携帯電子機器の普及が進み、これらに内蔵されている2次電池の量がますます多くなってきている。
また、無線技術の発展にともない、微小電力で信号の送受を行うRFID(Radio Frequency IDentification)の応用が拡がっている。特に、電源を有するアクティブRFIDは、数百メートル以上の通信も可能である。このため、牧場の牛や馬などの健康管理や、子供達の登下校時の安全管理などに期待が高まっている。
一方、地球環境の維持改善のため、できるだけ環境負荷の少ない電池の研究開発も活発に行われている。その中で、通常無意識かつ無駄に消費されているエネルギーを電気エネルギーに変換して、充電し、この電気エネルギーを携帯機器などの電源として利用することが広く考えられている。
特許文献1には、長さ方向に着磁した複数個の永久磁石を、同極同士を微小距離離して対向させて一体化した可動磁石を、隣り合う複数のコイルの極性を逆極性として直列に接続したコイル中を移動させる方式の振動発電機が開示されている。
特許文献2には、複数個の磁石の同じ極性の面を対向させて接合し、隣り合うコイルの極性を逆向きに接続して構成した発電機が開示されている。
特開2006−296144号公報 特表2006−523081号公報
ところで、本発明の発明者は、さらに発電効率を高めるための条件について検討を加えた。この結果、磁石の長さ(磁石長)と微小距離(スペーサ厚さ)の合計寸法で与えられる磁石ピッチと、コイル長とコイル間隔の合計寸法で与えられるコイルピッチを一致させることが、複数個の磁石と複数個のコイルを用いた振動型電磁発電機を構成する場合の最も重要な要件であることを見出した。
もし、この条件を満たさない場合には、複数個のコイルに発生した電圧の位相がずれてしまい、各電圧が互いに打ち消しあうため、合成出力電圧が低くなるという問題がある。しかしながら、特許文献1には、磁石ピッチとコイルピッチを一致させる必要があるとの記載はなく、基準となる磁石長をどのように決めるのかについても開示されていない。
また、特許文献2に開示された発電機の構成要素である複数個の磁石は、磁石スペーサを用いずに直接、同じ極を向かい合わせて接合されている。また、複数個のコイルも、コイル間隔を設けずに並べている。さらに、発電効率を高めるための磁石の寸法とコイルの寸法を具体的にどのように決めるのかについても開示されていない。
また、特許文献2に示すように、磁石の同じ極を直接合わせると、減磁するため、発電効率が劣化してしまう。さらに、同極の反発力が極端に大きくなるため、接合作業が困難になるという問題がある。
本発明は、従来の振動型電磁発電機において、不明であった発電効率を高めるための具体的な条件を明らかにすることによって、より小形で発電効率の高い振動型電磁発電機を提供することを目的とする。
本発明の振動型電磁発電機は、複数のソレノイドコイルが直列に接続された発電コイルと、発電コイルの内側であってかつ巻軸方向に移動可能であり、対向する磁極が互いに同極となるように配置された、複数の磁石を含む可動磁石と、から構成される。そして、複数のソレノイドコイルは、所定のコイル間隔を有するとともに互いに逆方向に巻回され、可動磁石は、所定の厚さの磁石スペーサを介して同極が対向するように接合され、さらに、複数のソレノイドコイルの一つあたりのコイル長とコイル間隔の合計寸法であるコイルピッチと、可動磁石の一つあたりの磁石長と磁石スペーサの厚さとの合計寸法である磁石ピッチとをほぼ等しくするとともに、コイル長を磁石長よりも短くし、磁石スペーサは、磁性体としている。
また、本発明は、複数のソレノイドコイルが直列に接続された発電コイルと、発電コイルの内側であってかつ巻軸方向に移動可能であり、対向する磁極が互いに同極となるように配置された、複数の磁石を含む可動磁石と、を備え、複数のソレノイドコイルは、所定のコイル間隔を有するとともに互いに逆方向に巻回され、可動磁石は、所定の厚さの磁石スペーサを介して同極が対向するように接合され、さらに、複数のソレノイドコイルの一つあたりのコイル長とコイル間隔の合計寸法であるコイルピッチと、可動磁石の一つあたりの磁石長と磁石スペーサの厚さとの合計寸法である磁石ピッチとをほぼ等しくするとともに、コイル長が磁石長よりも短く構成される振動型電磁発電機の製造方法である。
この振動型電磁発電機の製造方法は、所定のコイル径と所定の単位長当たりの巻数を有し、コイル長がコイル径の少なくとも3倍以上のソレノイドコイルを製作するステップと、ソレノイドコイル中を、所定の磁石径を有し、コイル長とほぼ同じ長さの磁石を一定の通過速度で通過させたときの出力電圧の立ち上がり特性を測定するステップと、立ち上がり特性において、最大振幅の10%から90%に達するまでの立ち上がり時間を求めるステップと、立ち上がり時間と通過速度から求めた距離のほぼ2倍の長さを、磁石ピッチの長さとするステップと、を含む。
本発明によれば、磁石スペーサ、磁石、コイルおよびコイル間隔を最適に設計することができるため、発電効率を高めた振動型電磁発電機が得られる。
本発明によれば、磁石の数とコイルの数を増やした場合の最適設計が可能になり、最大の発電電力が得られるという効果がある。また、磁石スペーサ、磁石、コイルおよびコイル間隔を最適に設計できるので、発電機の寸法を小さくすることが可能になるという効果がある。
振動型電磁発電機の1個の円筒形磁石がソレノイドコイルを通過した場合に生じる出力電圧波形の例を示す説明図である。 振動型電磁発電機の構造の例を示す断面図である。 第1〜第3のソレノイドコイルに可動磁石を通した場合の出力電圧波形の例を示す模式図である。 振動型電磁発電機の構造の例を示す断面図である。 第1〜第3のソレノイドコイルに、第1及び第2の磁石を通した場合の出力電圧波形の例を示す説明図である。 円筒形磁石が空間に作る磁界の分布の例を示す断面図である。 磁石長が異なる4種類の円筒形磁石を、一定のコイル長としたソレノイドコイル中に通過させたときの出力電圧波形の実測値の例を示す説明図である。 一定のコイル長の円筒形磁石を、コイル長が異なる3種類のソレノイドコイル中に通過させたときの出力電圧特性の実測値の例を示す説明図である。 A,B 本発明の一実施の形態に係る振動型電磁発電機の構成例を示す外観斜視図である。 本発明の一実施の形態に係る振動型電磁発電機の出力電圧波形の測定例を示す説明図である。 A,B,C 本発明の一実施の形態に係る円筒形磁石と、磁石スペーサと、可動磁石の例を示す外観構成図である。 A,B,C 本発明の一実施の形態に係る円筒形磁石と可動磁石が生じる磁束密度の例を示す説明図である。
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図12を参照して説明する。本実施の形態では、外部から振動を加えて、ソレノイドコイル中に設置された磁石を動かすことによって発電する振動型電磁発電機に適用した例について説明する。
まず、本発明に係る振動型電磁発電機の具体的な構成例について説明する前に、可動磁石とソレノイドコイルで構成される発電機について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、1個の円筒形磁石2と、1個のソレノイドコイル1で構成される振動型電磁発電機10の構成例と、出力電圧波形の例を示す図である。
振動型電磁発電機10を構成するソレノイドコイル1の長さは、円筒形磁石2の長さにほぼ等しい。そして、1個の円筒形磁石2が、ソレノイドコイル1の巻軸方向に沿って通過したときに得られる出力電圧を出力電圧波形3として示している。
出力電圧波形3は、周期が磁石長あるいはコイル長(ソレノイドコイルの長さ)のほぼ2倍であり、正弦波の波形にほぼ等しい1周期分の波形となる。つまり、図1において、出力電圧波形の横軸を時間軸とした場合には、1周期の時間は、磁石長の2倍の長さの距離を通過速度で割った値となる。
ところで、本発明に係る振動型電磁発電機は、ソレノイドコイルと、ソレノイドコイル中を動く可動磁石によって構成される。可動磁石は、同じ極性を対向させて接合された複数個の磁石で構成される。また、ソレノイドコイルは、逆極性に直列接続される複数個のコイルで構成される。そして、本発明に係る振動型電磁発電機の出力電圧は、ソレノイドコイル中を動く可動磁石によって、ソレノイドコイル毎に生じる出力電圧を加えて得られる。このとき、ソレノイドコイル毎に生じる出力電圧の波形は、図1に示す電圧波形が基本となる。そして、全てのコイルが発生する電圧の位相を合わせた上で、この電圧を最大出力とするように加えることが重要である。そのためには、磁石長と磁石スペーサの厚さを加えた磁石ピッチと、コイル長とコイル間隔を加えたコイルピッチを、ほぼ等しくする必要がある。
また、磁石の材質が同じ場合に、小形でより発電効率の高い発電機を得るためには、いかに短い磁石長でより大きな出力電圧が得られるかが重要な課題となる。このため、本発明の発明者は、様々な条件の下で本発明に係る振動型電磁発電機の特性を検証した。
図2は、1個の可動磁石25と、3個のソレノイドコイル(第1のソレノイドコイル21〜第3のソレノイドコイル23)で構成される振動型電磁発電機20の断面図である。
隣り合うソレノイドコイルは、所定の間隔24をあけてある。コイルの巻き方向は、隣り合うソレノイドコイル毎に互いに逆向きの正・逆・正方向である。この直列接続された第1のソレノイドコイル21〜第3のソレノイドコイル23を、発電コイル26と称する。可動磁石25の長さは、コイル長とコイル間隔の合計の長さ(例えば、ソレノイドコイル21と間隔24の合計の長さ)に等しい。
図3は、極性を正・逆・正として直列接続された第1のソレノイドコイル21〜第3のソレノイドコイル23に、可動磁石25を通した場合の出力電圧波形の模式図である。図3の横軸目盛りは磁石長(=コイル長)に対応した時間となっている。
図3において、グラフ中の数字は、それぞれのソレノイドコイルの出力電圧と合成出力電圧の振幅比を示している。
第1のソレノイドコイル21〜第3のソレノイドコイル23の極性は、それぞれ正・逆・正となっている。このため、それぞれの第1のソレノイドコイル21〜第3のソレノイドコイル23に発生する電圧は、コイル長に対応した時間だけ位相がずれ、同時に極性が変化する。
また、第1のソレノイドコイル21〜第3のソレノイドコイル23は、それぞれ直列に接続されている。このため、取り出される電圧は、第1のソレノイドコイル21〜第3のソレノイドコイル23が発生する電圧を足し合わせた合成出力電圧になる。このとき、図3に示す合成出力電圧波形が得られる。
次に、本発明に係る振動型電磁発電機40の構成例について、図4の断面図を参照して説明する。
振動型電磁発電機40は、1個の可動磁石48と、3個のソレノイドコイル(第1のソレノイドコイル41〜第3のソレノイドコイル43)で構成される。
隣り合うソレノイドコイルは、所定の間隔44をあけてある。コイルの巻き方向は、隣り合うソレノイドコイル毎に互いに逆向きの正・逆・正方向である。この直列接続された第1のソレノイドコイル41〜第3のソレノイドコイル43を、発電コイル49と称する。
可動磁石48は、長さ方向に着磁された同じ長さの2個の磁石45、46を、所定の厚さの非磁性体からなる磁石スペーサ47を介した上で、同じ極を向かい合わせて一体に接合される。
磁石長と磁石スペーサ47の合計の寸法である磁石ピッチ51は、ソレノイドコイルとソレノイドコイル間隔の合計の寸法であるコイルピッチ52と等しい。ただし、このような条件においてもコイル長は磁石長よりも短くすることが望ましい。
図5は、図4に示した、正・逆・正に接続された第1のソレノイドコイル41〜第3のソレノイドコイル43に2個の磁石45,46を通した場合の出力電圧波形の模式図である。図5において、グラフ中の数字は、それぞれのソレノイドコイルの出力電圧と合成出力電圧の振幅比を示している。
極性が異なる2個の磁石45,46が各ソレノイドコイルを通過すると、ソレノイドコイル毎に位相がコイル長に対応した時間だけずれた電圧が発生する。これらの電圧がすべて合成された出力電圧は、図5に示す合成出力電圧波形になる。
振動型電磁発電機20,40は、図2と図4に示すように、磁石とソレノイドコイルが近接して配置されている。このため、図3と図5に示したように、出力電圧が合成されてその振幅の一部が数倍になるという基本特性を有する。この基本特性を利用することで、本発明の発明者は、振動型電磁発電機の出力電力を増大させることを目指している。そして、本発明に係る振動型電磁発電機においては、磁石ピッチ51と、コイルピッチ52を等しくすることが重要であると言える。
ここで、円筒形磁石60が空間に作る磁界の分布について、図6を参照して説明する。図6は、円筒形磁石60が空間に作る磁界の分布を示す断面図の例である。
図6より、磁石の端面付近の磁界は円筒形磁石60の長さよりも長い方向まで達することが示される。また、円筒形磁石60の端面付近の磁界の向きは、円筒形磁石60の長さ方向に対して平行になっていないことが示される。従って、コイル長を磁石長よりも短くすることで、ソレノイドコイルと、磁石の長さ方向に平行な磁界とを効率よく結合させる必要がある。
ここまでは、発電効率を高めるためには、磁石ピッチとコイルピッチを等しくする必要があることと、コイル長を磁石長よりも短くする必要があることについて説明した。以下、発電効率を高めるために最適な磁石長および磁石ピッチを決定する方法について説明する。
図7は、磁石長が異なる4種類の円筒形磁石を、一定のコイル長としたソレノイドコイル中に速度1.2m/sで通過させて得られる出力電圧特性の実測値の例を示している。
4種類の円筒形磁石は、直径を同じ4mmとしているが、磁石ピッチが異なる8mm,16mm,24mm,32mmの構成としている。
ソレノイドコイルは、内径6mm、単位長さ当たりの巻数60回、コイル長30mmの構成としている。
図7より、磁石長が増えた場合の出力電圧の立ち上がり特性は、いずれの磁石長の場合もほとんど同じであることが示される。そして、出力電圧の最大値は、磁石長が8mmから16mmに増えたときは増加するが、磁石長が16mmから32mmまで増えてもほとんど一定である。ただし、磁石長が長くなるにつれて出力電圧の最大値が継続する時間が長くなる。
また、図7に示すように、立ち上がり特性は、磁石長によりほとんど変化していない。このことから、立ち上がり特性を決める要因は、磁石の直径とソレノイドコイルの寸法、特にソレノイドコイルの内径と考えられる。このため、ソレノイドコイルの内径を、磁石の直径に近づけることにより、立ち上がり時間をより短くすることができる。
ここで、最大出力電圧を発生している長さ16mm,24mm,32mmの円筒形磁石に注目し、図7の出力電圧の立ち上がり特性より、出力電圧が最大値の10%から90%に達する時間を求める。この場合、図中に示したように約5msであることが示される。このとき、磁石の移動速度は1.2m/sなので、立ち上がり時間5msの2倍に対応する移動距離は、1.2(m/s)×5(ms)×2=12mmとなる。
つまり、磁石長を12mmとすることが、出力電圧をほぼ最大値に等しくし、同時に磁石長を最も短くできることになると言える。
図8は、一定の磁石長の円筒形磁石を、コイル長が異なる3種類のソレノイドコイル中に通過させたときの出力電圧特性の実測値の例を示している。
円筒形磁石は、直径4mm、磁石長8mmの構成としている。
ソレノイドコイルは、単位長当りの巻数が等しく、コイル長が異なる7mm、10mm、30mmの構成としている。
図8から、磁石長8mmの場合、コイル長が7mmから10mmに長くなったとしても、出力電圧がわずかに増加するだけである。また、コイル長が7mmから30mmになっても、出力電圧の最大振幅は、ほとんど一定の値(約0.5V)になっている。
つまり、長さ8mmの一個の磁石に対しては、図1に示したように、コイル長を磁石長と同じ長さの8mmとすれば、出力電圧がほぼ最大値(飽和電圧)となる。
図7と図8を参照して、可動磁石が一つである振動型発電機を例として説明した。しかし、複数個の磁石(少なくとも2つ以上)で構成される可動磁石と、複数個のソレノイドコイルとで構成される振動型発電機40では、同様の条件をもって、所定のコイル寸法に対して出力電圧が最大となる最短の磁石ピッチを選定することができる。
すなわち、磁石長とスペーサ厚さの合計寸法からなる磁石ピッチと、コイル長とコイル間隔の合計寸法からなるコイルピッチを等しくすることにより、高い発電効率を得ながら、全体の寸法を小さくすることができる。なお、磁石ピッチとコイルピッチを等しくするとともに、コイル長を磁石長よりも短くすることが望ましい。
このようにして、複数個の磁石と複数個のソレノイドコイルからなる振動型電磁発電機40では、所定のソレノイドコイル寸法に対して出力電圧が最大となる最も短い磁石長を選定することができる。このため、寸法が小さくても、発電効率が高い振動型電磁発電機40が得られる。
ここで、発電効率を高めるために最適な磁石ピッチを求める手順について、以下に説明する。
(1)まず、所定のコイル径と所定の単位長当たりの巻数を有し、コイル長がコイル径の少なくとも3倍以上のソレノイドコイルを製作する。
(2)次に、このソレノイドコイル中を、所定の磁石径を有し、コイル長とほぼ同じ長さの磁石を一定の速度で通過させて、そのときの出力電圧の立ち上がり特性を測定する。
(3)この立ち上がり特性において、最大振幅の10%から90%に達するまでの時間を求める。
(4)この結果、求めた時間と通過速度から求めた距離のほぼ2倍の長さを、求める磁石ピッチとする。
磁石ピッチを求めた後、ソレノイドコイルのコイル長とコイル間隔の合計寸法を磁石ピッチと等しく設定し、かつ上述のソレノイドコイルのコイル長よりも、磁石長を長くするという条件の下、コイル間隔と磁石スペーサの寸法条件を設定する。こうして、最大出力に近い電圧を得られると共に、発電機本体の寸法を小さくすることが可能な振動型電磁発電機を得ることができる。
なお、上述において、所定のコイル径,所定の単位長当たりの巻数,所定の磁石径とは、それぞれ作製しようとする振動型電磁発電機に用いられる寸法を意味する。
ここで、振動型電磁発電機40の外観構成例について、図9の斜視図を参照して説明する。
図9Aは、振動型電磁発電機40を構成する各部品を分解した状態の斜視図である。
図9Bは、各部品を組み合わせた振動型電磁発電機40のうち、収納ケース55を一部透視した部分透視図である。
第1のソレノイドコイル41〜第3のソレノイドコイル43は、ソレノイドコイル間隔44をあけて、可動磁石48を収納する円筒形の収納ケース55の外周面に巻きつけられている。第1のソレノイドコイル41〜第3のソレノイドコイル43は、直列接続されている。そして、各ソレノイドコイルは互いに逆方向に巻回されており、それぞれ正巻、逆巻、正巻としている。
第1のソレノイドコイル41と第3のソレノイドコイル43からは、それぞれコイル端部53が引き出されており、図示しない外部部品(負荷)に接続される。
可動磁石48を収納ケース55内に収納するため、収納ケース55の両端には、エンドキャップ56が取り付けられる。エンドキャップ56は、可動磁石に対する衝撃を緩和する樹脂等で形成される。
可動磁石48は、収納ケース55の内部をなめらかに動くため、第1のソレノイドコイル41〜第3のソレノイドコイル43の内側であって巻軸方向に移動することとなる。このため、第1のソレノイドコイル41〜第3のソレノイドコイル43は、電圧を生じ、発電機として機能する。
ここで、実際に振動型電磁発電機40を用いて得られる出力電圧波形の実測値の例について、図10を参照して説明する。
可動磁石は、直径4mm、長さ8mmのNd(ネオジム)磁石を2個、厚さ1.5mmの磁石スペーサを介して同極対向接合した構成としている。
ソレノイドコイルは、コイル長6.5mm、コイル内径5mm、巻数3000回のコイルを3個、コイル間隔3mmで正・逆・正に直列接続した構成としている。
そして、ソレノイドコイル中の巻き線軸方向に沿って、可動磁石を速度約1.2m/sで移動させた場合の出力電圧波形を図10に示している。
図10を図5の合成出力電圧波形と比較すると非常によく一致している。このことは、図1から図5を参照して説明した内容の妥当性を示していると言える。
ここで、磁石スペーサの材質が異なる可動磁石毎の磁束密度の例について、図11と図12を参照して説明する。
図11は、円筒形磁石と、磁石スペーサを介して円筒形磁石を接合された可動磁石の構成例を示す。
図11Aは、円筒形磁石61の構成例を示す。円筒形磁石61の軸方向の長さは、約10mmとし、直径は、約5mmとする。
図11Bは、磁石スペーサ71,81の構成例を示す。磁石スペーサ71を形成する材料には、非磁性体材料として、例えば樹脂が用いられる。磁石スペーサ81を形成する材料には、磁性体材料として、例えば純鉄が用いられる。磁石スペーサ71,81の軸方向の長さは、約2mmとし、直径は、約5mmとする。
図11Cは、可動磁石70,80の構成例を示す。可動磁石70は、非磁性体材料で形成された磁石スペーサ71を介して、3つの円筒形磁石61の同極が対向した状態で接合される。一方、可動磁石80は、磁性体材料で形成された磁石スペーサ81を介して、3つの円筒形磁石61の同極が対向した状態で接合される。
図12は、円筒磁石61と可動磁石70、80により生ずる前記円筒磁石61と可動磁石70、80の長さ方向、表面近傍の磁束密度の測定結果の例を示す。
図12Aは、1個の円筒形磁石61の磁束密度の測定結果を示す。
図12Bは、可動磁石70の磁束密度の測定結果を示す。
図12Cは、可動磁石80の磁束密度の測定結果を示す。
図12A〜図12Cにおいて、磁束密度を示す縦軸には、等間隔の目盛り(B〜B)を付して、各図を比較する。
図12Aに示すように、一般に、円筒形磁石61の端部(N極とS極付近)では、磁束が集中するため、磁束密度が高くなる。
また、図12Bと図12Cに示すように、同極を対向して接合された可動磁石のN極とS極付近は、1個の円筒形磁石61の磁束密度よりもピークが高い。これは、同極が対向して接合されることによって、磁束が互いに反発し、磁束密度が高まるためである。
さらに、図12Bと図12Cを比べると、磁性体材料で形成された磁石スペーサ81を含む可動磁石80は、非磁性体材料で形成された磁石スペーサ71を含む可動磁石70よりも磁束密度のピークが高いことが読み取れる。このとき、可動磁石80のピークは、可動磁石70のピークより、3/2倍程度高くなっている。これは、透磁率が高い磁性体材料で形成された磁石スペーサ81は、円筒形磁石61から出る磁力線を引き込みやすいため、磁束の指向性が高まるとともに、磁束密度もまた高まると考えられる。
図12A〜図12Cの測定結果より、磁性体材料で形成された磁石スペーサ81を含む可動磁石80を用いて振動型発電機を構成すると、磁束密度が高くなり、ソレノイドコイルと交差する磁束が多くなる。このため、磁石スペーサに用いられる材質が磁性体材料である場合、非磁性体材料の場合と比べて、さらに振動型電磁発電機の発電効率を高めることができると言える。
以上説明したように、振動型電磁発電機40の発電効率を高めるための具体的な条件を明らかにしたことにより、振動型電磁発電機40の磁石ピッチとコイルピッチを適切に設計することが可能である。このため、小型でありながら発電効率の高い、振動型電磁発電機40が得られるという効果がある。
また、振動型電磁発電機40は、簡易に構成されている。このため、組み付け時の工程が容易になるとともに、壊れにくく、信頼性の高い振動型電磁発電機40が得られるという効果がある。
また、磁石スペーサを磁性体とすると、磁束密度が高くなるため、振動型電磁発電機の発電力が高まるという効果がある。このことから、得られる発電量に注目すると、非磁性体材料で形成された磁石スペーサを用いる振動型電磁発電機より外寸法を小さくしても、同じ発電量を得られる。この場合、ソレノイドコイルの巻き数を少なくしてもよい。このため、振動型電磁発電機をさらに小さくできると共に軽量化することができという効果がある。また、使用部材の量を削減することによって、コスト低減を図ることができるという効果がある。
一方、磁石スペーサを非磁性体とすることによって、磁石スペーサを磁性体とする場合と比べて、安価に製造できるという効果がある。また、非磁性体には、プラスチック等の合成樹脂を用いるため、加工性に優れており、製造速度が高まるという効果がある。
なお、振動型電磁発電機40は、複数個の磁石と複数個のソレノイドコイルの組合せで構成したが、3個以上の磁石、4個以上のソレノイドコイルを組み合わせて振動型電磁発電機を構成してもよい。
また、上述した実施の形態では、隣り合ったソレノイドコイルの間隔をあけるようにしたが、樹脂等の部材でスペーサを形成してもよい。また、磁性体と非磁性体の磁石スペーサを組み合わせて可動磁石を構成してもよい。
また、上述した実施の形態では、可動磁石の形状を円筒形としたが、断面形状が多角形、楕円形、又は曲線と直線とを組合せた形状としてもよい。この場合、ソレノイドコイルと磁石スペーサの断面形状は、可動磁石の断面形状に合わせた形状とすればよい。
また、ソレノイドコイルの内径にガイドレールを設け、可動磁石の側面にローラを取り付けてもよい。逆に、ソレノイドコイルの内径にローラを取り付け、可動磁石にガイドレールを設けるようにしてもよい。このように構成することで、わずかな力を加えただけであっても、可動磁石を滑らかに動かし、発電力が得られるという効果がある。
引用符号の説明
1…ソレノイドコイル、2…円筒形磁石、3…出力電圧波形、10…振動型電磁発電機、20…振動型電磁発電機、21…第1のソレノイドコイル、22…第2のソレノイドコイル、23…第3のソレノイドコイル、24…コイル間隔、25…可動磁石、40…振動型電磁発電機、41…第1のソレノイドコイル、42…第2のソレノイドコイル、43…第3のソレノイドコイル、44…コイル間隔、45…第1の磁石、46…第2の磁石、47…磁石スペーサ、48…可動磁石、61…円筒形磁石、70…可動磁石、71…磁石スペーサ(非磁性体)、80…可動磁石、81…磁石スペーサ(磁性体)

Claims (2)

  1. 複数のソレノイドコイルが直列に接続された発電コイルと、
    前記発電コイルの内側であってかつ巻軸方向に移動可能であり、対向する磁極が互いに同極となるように配置された、複数の磁石を含む可動磁石と、
    から構成された振動型電磁発電機であって、
    前記複数のソレノイドコイルは、所定のコイル間隔を有するとともに互いに逆方向に巻回され、
    前記可動磁石は、所定の厚さの磁石スペーサを介して同極が対向するように接合され、
    さらに、前記複数のソレノイドコイルの一つあたりのコイル長と前記コイル間隔の合計寸法であるコイルピッチと、前記可動磁石の一つあたりの磁石長と前記磁石スペーサの厚さとの合計寸法である磁石ピッチとをほぼ等しくするとともに、
    前記コイル長を前記磁石長よりも短くし、
    前記磁石スペーサは、磁性体であることを特徴とする振動型電磁発電機。
  2. 複数のソレノイドコイルが直列に接続された発電コイルと、
    前記発電コイルの内側であってかつ巻軸方向に移動可能であり、対向する磁極が互いに同極となるように配置された、複数の磁石を含む可動磁石と、を備え、
    前記複数のソレノイドコイルは、所定のコイル間隔を有するとともに互いに逆方向に巻回され、
    前記可動磁石は、所定の厚さの磁石スペーサを介して同極が対向するように接合され、
    さらに、前記複数のソレノイドコイルの一つあたりのコイル長と前記コイル間隔の合計寸法であるコイルピッチと、前記可動磁石の一つあたりの磁石長と前記磁石スペーサの厚さとの合計寸法である磁石ピッチとをほぼ等しくするとともに、
    前記コイル長が前記磁石長よりも短く構成される振動型電磁発電機の製造方法であって、
    所定のコイル径と所定の単位長当たりの巻数を有し、前記コイル長が前記コイル径の少なくとも3倍以上のソレノイドコイルを製作するステップと、
    前記ソレノイドコイル中を、所定の磁石径を有し、前記コイル長とほぼ同じ長さの磁石を一定の通過速度で通過させたときの出力電圧の立ち上がり特性を測定するステップと、
    前記立ち上がり特性において、最大振幅の10%から90%に達するまでの立ち上がり時間を求めるステップと、
    前記立ち上がり時間と前記通過速度から求めた距離のほぼ2倍の長さを、前記磁石ピッチの長さとするステップと、を含むことを特徴とする振動型電磁発電機の製造方法。
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