SART2がプロセシングされてHLAに結合できる形態となったペプチドは、特にHLAクラスIIに結合するものが好ましく、任意の長さまたは配列のものであり得る、と当業者に理解されるであろう。
以下の実施例で実証されるように、SART2タンパク質は、適切にプロセシングされ、HLAクラスII分子により提示され、そしてCD4陽性T細胞を刺激するのに有効である。SART2由来のペプチド、例えば配列番号4,6または8のペプチドは、一端または両端に付加された1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸を有し得る。このようなペプチドの抗原性部分は、HLA、特にHLAクラスIIによる提示のために生理学的条件下で切り取られる。HLAクラスIIペプチド長は約10アミノ酸〜約30アミノ酸の間で変動し得るということも当業界で周知である(エンゲルハード(Engelhard)、アニューアル・レビュー・オブ・イムノロジー(Annual review of immunology)、1994年12巻、p.181−201)ことから、本発明のペプチドとして、配列番号4,6または8のアミノ酸配列(もしくは配列番号4,6または8のアミノ酸配列の一部分)を含有する約10アミノ酸〜約30アミノ酸残基からなるペプチドが好ましい。繰込み組のHLAクラスII結合ペプチドが同定されており、この場合、ペプチドは、コア配列を共有するが、しかしアミノおよび/またはカルボキシル末端に異なるアミノ酸を有する。本明細書中に開示されたペプチドより少ないアミノ酸を有するSART2のペプチドも、本発明に含まれる。したがって、付加的SART2のHLAクラスII結合ペプチドならびにSART2のHLAクラスII結合ペプチドと相同のSART2のHLAクラスII結合ペプチドは、本明細書中に記載した手法にしたがって当業者により同定され得る。
実施例に記載された手法は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドを同定するために利用され得る。したがって、細胞をSART2ポリペプチドに接触させることにより、または当該SART2タンパク質の発現を指図する核酸分子を細胞に導入することにより、例えば抗原提示細胞、例えば正常血液ドナーの樹状細胞に組換え体SART2タンパク質(またはその断片)を装入し得る。次に、抗原提示細胞を用いて、SART2のHLAクラスII結合ペプチドを認識する特定のCD4陽性T細胞の活性化および増殖をin vitroで誘導し得る。次に、例えばCD4陽性T細胞の活性化および増殖を刺激するために用いられるSART2タンパク質のペプチド断片で細胞を刺激することにより、実施例に記載したように、ペプチドの配列が確定され得る。あるいは、SART2タンパク質由来のペプチドを抗原提示細胞に装入し得る。HLAクラスII結合ペプチドを選択するためのコンピューターソフトウェアも利用可能である。HLAクラスII分子はペプチドが結合することのできるポケット構造を有しており、HLAクラスIIのサブタイプにより化学的な性質あるいは構造の大きさが異なる。これらのポケット構造をプロファイルすることで、その構造に相互作用できるペプチドを推測することが可能である。例えばTEPITOPEアルゴリズム;(ステゥーニオロ(Sturniolo)、外10名、「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)、1999年、第17巻、p.555−561,マニシ(Manici)、外10名、「ザ・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メデシン(The Journal of experimental medicine)」、1999年、第189巻、p.871−876」、SYFPEITHIアルゴリズム(ラメンセー著(Rammensee),外4名,「イムノジェネティクス(Immunogenetics)」、1999年、第50巻、p.213−219)、ProPredアルゴリズム(シン(Singh),外1名、「バイオインフォマティクス(Bioinformatics)」、2001年、第17巻、p.1236−1237)あるいはRANKPEPアルゴリズム(レイチェ(Reche),外2名,「ヒューマン・イムノロジー(Human immunology)」、2002年、第63巻、p.701−709)が利用可能である。このように選択されたペプチドは、特定のCD4陽性T細胞を誘導するために、ならびにペプチドの同定のために、本明細書中に記載した検定中で用いられ得る。HLAクラスII結合のためのペプチドを選択および試験するさらに別の方法は、当業界で周知である。
上記のように、本発明でいう、SART2のHLAクラスII結合ペプチドは、SART2のHLAクラスII結合ペプチドの機能的変異体を包含する。本明細書中で用いる場合、HLAクラスII結合ペプチドの「変異体」または「誘導体」とは、HLAクラスII結合ペプチドの一次アミノ酸配列に対して1つまたはそれ以上の修飾を含有し、本明細書中に開示されたHLAクラスIIおよびT細胞受容体結合特性を保持するペプチドである。SART2のHLAクラスII結合ペプチド機能的変異体を作製する修飾は、例えば、1)SART2のHLAクラスII結合ペプチドの特性、例えば発現系でのペプチド安定性またはHLA−ペプチド結合のようなタンパク質−タンパク質結合の安定性を強化するために、2)SART2のHLAクラスII結合ペプチドに対する新規の活性または特性、例えばCTLを誘導するCTLエピトープ等の抗原性エピトープの付加または検出可能部分の付加を提供するために、あるいは3)同一または類似のT細胞刺激特性を生じる異なるアミノ酸配列を提供するためになされ得る。SART2のHLAクラスII結合ペプチドに対する修飾は、ペプチドをコードする核酸に対してなされることができ、その例としては、欠失、点突然変異、切頭化、アミノ酸置換およびアミノ酸の付加が挙げられる。あるいは、修飾は、例えば開裂、リンカー分子の付加、検出可能部分(例えばビオチン)の付加、脂肪酸の付加、あるアミノ酸の別のアミノ酸による置換等により、ポリペプチドに対して直接なされ得る。変異体は、無作為ペプチドあるいは1つまたはそれ以上の位置に置換を含むSART1ペプチドの配列を基礎にしたペプチドであり得るペプチドのライブラリーからも選択され得る。例えば、ペプチドライブラリーは、HLAクラスII分子に結合されたSART2のヘルパーエピトープペプチドの複合体との競合検定に用いられ得る(例えば、SART2のHLAクラスII結合ペプチドを装入された樹状細胞)。HLAクラスII分子とのSART2ペプチドの結合に関して競合するペプチドは、シーケンシングされ、他の検定に用いられて(例えばCD4陽性T細胞の増殖)、SART2ペプチド機能的変異体としての適合性を確定され得る。他の機能的変異体としては、ペプチド模倣化合物が挙げられる。ペプチド模倣物は、HLAクラスII結合のために調製されCD4陽性T細胞の刺激に関して試験され得る。
SART2のHLAクラスII結合ペプチドのアミノ酸配列は、天然または非天然起源であり得る。即ち、それらは、天然SART2のHLAクラスII結合ペプチド分子を含み得るか、あるいはアミノ酸配列が、提示される場合にヘルパーT細胞を刺激する能力を保持し、HLAクラスII分子との結合の特性を保持する限り、修飾化配列を含み得る。例えば、SART2のHLAクラスII結合ペプチドは、この情況においては、SART2のHLAクラスII結合ペプチドおよび非関連アミノ酸配列、標識化ペプチド、SART2発現癌を有する患者から単離されたペプチド、SART2を発現する培養細胞から単離されたペプチド、非ペプチド分子に結合されたペプチド、ならびに配列番号4,6または8を含むその他の分子を含む融合タンパク質であり得る。
次に、HLAクラスII結合分子との変異体ペプチドの結合、およびT細胞の刺激が、標準手法により確定される。例えば、下記で例示されるように、変異体ペプチドは、SART2ペプチドを結合するHLAクラスII分子を含有する抗原提示細胞と接触されて、変異体ペプチドと抗原提示細胞との複合体を形成し得る。次にこの複合体は、HLAクラスII結合分子により提示されるSART2のHLAクラスII結合ペプチドを認識するT細胞と接触され得る。T細胞は、SART2の発現を特徴とする症状を有する患者から得られる。T細胞による変異体ペプチドの認識は、TNFまたはIFNγ産生のようなT細胞刺激の指標を測定することにより確定され得る。同様の手法は、他のSART2のHLAクラスII結合ペプチドの同定および特性化のために実行され得る。HLAクラスII結合分子との変異体ペプチドの結合、およびHLAクラスII結合分子により提示される変異体ペプチドによるT細胞の刺激は、変異体ペプチドが機能的変異体であることを示す。本方法は、機能的変異体によるT細胞の刺激の有効性の鑑定として、SART2のHLAクラスII結合ペプチドによるT細胞の刺激および機能的変異体によるT細胞の刺激を比較する過程も包含し得る。機能的変異体をSART2のHLAクラスII結合ペプチドと比較することにより、T細胞刺激特性の増大を示すペプチドが調製され得る。
上記の方法のいずれかにより調製されるSART2のHLAクラスII結合ペプチドの変異体をシーケンシングして、必要な場合には、アミノ酸配列を確定し、したがって、このような変異体をコードするヌクレオチド配列を推定し得る。
さらに本発明の一部は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドまたはその変異体をコードする核酸配列、ならびに上記のヌクレオチド配列からなる核酸分子とハイブリダイズする他の核酸配列である。核酸ハイブリダイゼーションパラメーターは、このような方法を編集する参考文献、例えばサムブルック(Sambrook)著、「モレキュラー・クローニング ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年、第1−3巻に見出され得る。
本発明のポリヌクレオチド分子には「本発明のポリヌクレオチド分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド分子」も包含される。ポリヌクレオチド分子としてDNA分子を代表例にとると、「DNA分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA分子」は、例えば前述のMolecular Cloningに記載の方法によって得ることができる。ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、例えば、6×SSC、0.5%SDSおよび50%ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5%SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件でも依然として陽性のハイブリダイズのシグナルが観察されることを表す。用いられ得る条件、試薬等があるが、当業者はこのような条件に通じており、従ってこの条件に限定されない。
しかしながら、本発明のSART2のHLAクラスII結合ペプチドをコードする核酸の相同体および対立遺伝子の明瞭な同定を可能にする方法で当業者は条件を操作し得ることを理解されたい。当業者は、その後ルーチンに単離されるこのような分子の発現に関する細胞およびライブラリーのスクリーニングとその後の関連核酸分子の単離およびシーケンシングのための方法にも周知している。
概して、相同体および対立遺伝子は、典型的にはそれぞれSART2のHLAクラスII結合ペプチドのアミノ酸配列またはこのようなペプチドをコードする核酸と少なくとも90%のアミノ酸同一性および/または少なくとも75%のヌクレオチド同一性を共有する。いくつかの場合には、相同体および対立遺伝子は、少なくとも95%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも90%のアミノ酸同一性を共有し、そしてさらにその他の場合には、少なくとも90%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも95%のアミノ酸同一性を共有する。上記の核酸の相補体も本発明に包含される。
SART2のHLAクラスII結合ペプチドをコードする核酸に関するスクリーニングでは、32Pプローブと一緒に上記の条件を用いて、核酸ハイブリダイゼーション、例えばサザンブロットまたはノーザンブロットが実施され得る。SART2のHLAクラスII結合ペプチドをコードするDNAが最後に移された膜を洗浄後、放射能シグナルを検出するために、その膜はX線フィルムに対して配置される。
本発明は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドの同一アミノ酸残基をコードする代替的コドンを含む核酸配列の使用も包含する。例えば、本明細書中に開示されているように、ペプチドQLNLKNVQRNLILLHPQLLLLVDQIHL(配列番号4)は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドである。ロイシン残基(配列番号4の第2番目のアミノ酸)は、コドンUUA,UUG,CUU,CUC,CUAおよびCUGによりコードされ得る。6つのコドンは各々、ロイシン残基をコードするという目的に関して等価である。したがって、ロイシンコードヌクレオチドトリプレットのいずれかを用いて、in vitroまたはin vivoでタンパク質合成装置を指図して、ロイシン残基を組み入れ得る、ということは当業者には明らかであろう。同様に、配列番号4のSART2のHLAクラスII結合ペプチドを含む他のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列トリプレットとしては、以下のものが挙げられる:CGA、CGC、CGG、CGT、AGAおよびAGG(アルギニンコドン);AAAおよびAAG(リシンコドン);GUA、GUC、GUGおよびGUU(バリンコドン);GAAおよびGAG(グルタミンコドン);UUCおよびUUU(フェニルアラニンコドン)ならびにUACおよびUAU(チロシンコドン)。その他のアミノ酸残基は、ポリヌクレオチド配列により同様にコードされ得る。したがって本発明は、遺伝子コードの縮重のためにコドン配列中のネイティブSART2のHLAクラスII結合ペプチドコード核酸とは異なる縮重核酸を包含する。
本発明は、1つまたはそれ以上のヌクレオチドの付加、置換および欠失を含む修飾核酸分子も提供する。好ましい実施形態では、これらの修飾核酸分子および/またはそれらがコードするポリペプチドは、非修飾核酸分子および/またはポリペプチドの少なくとも1つの活性または機能、例えば抗原性、酵素活性、受容体結合、MHCクラスIおよびクラスII分子によるペプチドの結合による複合体の形成等を保持する。ある種の実施形態では、修飾核酸分子は、修飾ポリペプチド、好ましくは本明細書中に別記されているような保存的アミノ酸置換を有するポリペプチドをコードする。修飾核酸分子は、非修飾核酸分子に構造的に関連があり、好ましい実施形態では、修飾および非修飾核酸分子が当業者に既知のストリンジェントな条件下でハイブリダイズするよう十分に構造的に非修飾核酸分子と関連する。
例えば、単一アミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする修飾核酸分子が調製され得る。これらの核酸分子は各々、本明細書中に記載したような遺伝子コードの縮重に対応するヌクレオチド変化と相容れない1、2または3つのヌクレオチド置換を有し得る。同様に、2つのアミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする修飾核酸分子が調製され得るが、これらは例えば2〜6のヌクレオチド変化を有する。例えばアミノ酸2および3、2および4、2および5、2および6等をコードするコドンのヌクレオチドの置換を含めたこれらと同様の多数の修飾核酸分子が当業者により容易に意図される。上記の例では、2つのアミノ酸の各組合せは、修飾核酸分子の組に、ならびにアミノ酸置換をコードするすべてのヌクレオチド置換に含まれる。当業者に容易に意図されるように、さらなる置換(即ち、3またはそれ以上)、付加または欠失(例えば、停止コドンまたはスプライス部位(単数または複数)の導入による)を有するポリペプチドをコードする付加的核酸分子も調製され得るし、本発明に包含される。上記の核酸またはポリペプチドはいずれも、本明細書中に開示された核酸および/またはポリペプチドに対する構造的関連または活性の保持に関して、ルーチン実験により試験され得る。
本発明のポリヌクレオチド分子はDNAまたはRNAの形態をとることができ、DNAにはcDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAが包含される。また、DNAおよびRNAは一本鎖または二本鎖であってよく、一本鎖の場合はセンス鎖またはアンチセンス鎖の両者が包含され得る。
SART2のポリペプチド、例えばSART2またはそれらに由来するHLAクラスII結合ペプチドの理想的な形態は、少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらに好ましくは2つ以上のHLA型に結合することが可能で、CD4陽性T細胞を増殖させることのできる性質を持つことである。例えば、実施例で示すように本発明のペプチドは2つのHLA型に結合することが可能で、CD4陽性T細胞を増殖させることのできる性質を持つ。
本発明は、発現ベクター中での、ならびに原核生物(例えば大腸菌)または真核生物(例えば樹状細胞、CHO細胞、COS細胞、酵母発現系、細胞内寄生原虫発現系、乳酸菌発現系および昆虫細胞における組換えバキュロウイルス発現)である宿主細胞および細胞株をトランスフェクトするための本配列の使用を包含することも理解されたい。発現ベクターは、関連配列、即ち上記のものがプロモーターと操作可能的に結合されることを必要とする。ヒトHLA分子はSART2のHLAクラスII結合ペプチドを提示することが見出されているので、発現ベクターは、HLA分子をコードする核酸配列も含み得る(他のSART2のHLAクラスII結合ペプチドに関しては、異なるHLA分子が用いられ得る)。ベクターが両コード配列を含有する情況では、それは正常ではいずれか一方を発現しない細胞をトランスフェクトするために用いられ得る。
本明細書中で用いる場合、「ベクター」とは、異なる遺伝子環境間の輸送のための、または宿主細胞中での発現のための制限および結紮により所望の配列が挿入され得る多数の核酸のいずれかであり得る。ベクターは、典型的にはDNAで構成されるが、RNAベクターも利用可能である。ベクターとしては、プラスミド、ファジミドおよびウイルスゲノムが挙げられるが、これらに限定されない。クローニングベクターは、宿主細胞中で自律的に複製可能であるかまたはゲノム中に組み込まれ得るクローニングベクター、ならびに新規の組換えベクターが宿主細胞中で複製するその能力を保持するようにベクターが決定可能様式で切断され、そして所望のDNA配列が結紮され得る1つまたはそれ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位によりさらに特性化されるクローニングベクターである。プラスミドの場合、所望の配列の複製は、プラスミドが宿主細菌内でコピー数を増大する場合は多数回起こり得るし、あるいは宿主が有糸分裂により繁殖する前には宿主当たり1回だけ起こり得る。ファージの場合は、複製は、溶菌期中は能動的に起こり、溶原期中は受動的に起こり得る。発現ベクターは、調節配列に操作可能的に連結され、そしてRNA転写体として発現され得るように、所望のDNA配列が制限および結紮により挿入され得るベクターである。
ベクターは、ベクターで形質転換またはトランスフェクトされていたか、またはされていなかった細胞の同定に用いるのに適した1つまたはそれ以上のマーカー配列をさらに含有し得る。マーカーとしては、例えば、抗生物質またはその他の化合物に対する耐性または感受性を増大または低減するタンパク質をコードする遺伝子、その活性が当業界で既知の標準検定により検出可能である酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼまたはルシフェラーゼ)をコードする遺伝子、ならびに形質転換化またはトランスフェクト化した細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に視覚的に作用する遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質)が挙げられる。好ましいベクターは、それらが操作可能的に連結されるDNAセグメント中に存在する構造遺伝子産物の自律的複製および発現が可能なベクターである。
好ましくは、発現ベクターは、タンパク質またはペプチドが発現される細胞のエンドソームに対してSART2のポリペプチド、例えばSART2またはそれらに由来するHLAクラスII結合ペプチドを標的化する配列を含有する。HLAクラスII分子は、HLAクラスII分子との他の分子の結合を妨害する不変鎖(Ii)を含有する。この不変鎖はエンドソーム中で切断され、それによりHLAクラスII分子によるペプチドの結合を可能にする。したがって、SART2のHLAクラスII結合ペプチドおよびその前駆体(例えばSART2タンパク質)はエンドソームに対して標的化され、それによりHLAクラスII分子と結合するSART2のHLAクラスII結合ペプチドを強化することが好ましい。エンドソームに分子を向けるためのターゲッティングシグナルは当業界で既知であり、これらのシグナルは、エンドソームターゲッティングシグナルを含有する融合タンパク質が産生されるよう、発現ベクター中に組み入れられ得るのが便利である。サンダーソン(San derson)(「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイデッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」、1995年、第92巻、p.7217−7221)、ウ(Wu)(「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイデッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」、1996年、第92巻、p.11671−11675)およびトムソン(Thomson)(「ジャーナル・オブ・バイロロジー(Journal of virology)、1998年、第72巻、p.2246−2252)は、エンドソームターゲッティングシグナル(不変鎖Iiおよびリソソーム関連膜タンパク質LAMP−1を含む)ならびにエンドソームおよび/またはリソソーム細胞区画に抗原を向ける場合のそれらの使用を記載している。
本明細書中で用いる場合、コード配列および調節配列は、調節配列の影響または制御下にコード配列の発現または転写を置くような方法でそれらが共有結合される場合、「操作可能的に」連結されるといわれる。コード配列が機能性タンパク質に翻訳されるのが望ましい場合、5’調節配列中のプロモーターの誘導がコード配列の転写を生じ、二つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入を生じない、(2)コード配列の転写を指図するプロモーター領域の能力を妨げない、または(3)タンパク質に翻訳される対応するRNA転写体の能力を妨げないならば、二つのDNA配列は操作可能的に連結されるといわれる。したがって、結果的に生じる転写体が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得るようにプロモーター領域がそのDNA配列の転写を実行可能であった場合には、プロモーター領域はコード配列と操作可能的に連結される。
遺伝子発現に必要とされる調節配列の的確な性質は、種または細胞型間で変わり得るが、しかし概して、必要な場合には、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等のような、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写化および5’非翻訳化配列を含む。特に、このような5’非転写化調節配列は、操作可能的に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列は、望ましい場合には、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列も含み得る。本発明のベクターは、5’リーダーまたはシグナル配列を任意に含み得る。適切なベクターの選定および設計は、当業者の能力および自由裁量の範囲内である。
発現のための必要な素子をすべて含有する発現ベクターは市販されており、当業者に既知である(例えば、サムブルック(Sambrook)著、「モレキュラー・クローニング ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年、第1−3巻を参照)。細胞は、SART2のHLAクラスII結合ポリペプチドをコードする異種DNA(あるいはRNA)の細胞への導入により遺伝子工学処理される。その異種DNA(あるいはRNA)は、宿主細胞中での異種DNAの発現を可能にするために転写性素子の操作可能制御下に置かれる。本明細書中に記載されているように、このような発現構築物は、エンドソームターゲッティングシグナル、好ましくはヒト不変鎖またはそのターゲッティング断片をコードするヌクレオチド配列も任意に含有する。
哺乳類細胞中でのmRNA発現のための好ましい系は、G418耐性を付与する遺伝子(安定トランスフェクト化細胞株の選択を促す)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー−プロモーター配列のような選択可能マーカーを含有するpRc/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CAから入手可能)のような系である。さらに、霊長類またはイヌ細胞株中での発現に適しているのは、エプスタイン−バーウイルス(EBV)複製起点を含有し、多コピー染色体外素子としてのプラスミドの保持を促すpCEP4ベクター(Invitrogen)である。別の発現ベクターは、in vitroでの転写を効率的に刺激するポリペプチド延長因子1αのプロモーターを含有するpEF−BOSプラスミドである。本プラスミドは、ミジズマ(Mishizuma)ら(「ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic acids research)」、1990年、第18巻、p.5322)により記載されており、トランスフェクション実験におけるその使用は、例えばデモウリン(Demoulin)ら(「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and cellular biology)、1996年、第16巻、p.4710−4716」により開示されている。さらに別の好ましい発現ベクターは、スタンフォード-ペリカウデット(Stratford-Perricaudet)らにより記載されたアデノウイルスであり、これはE1およびE3タンパク質を欠いている(「ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インバスティゲーション(The Journal of clinical investigation)」、1992年、第90巻、p.626−630)。Adeno.P1A組換え体としてのアデノウイルスの使用は、P1Aに対する免疫感作のためのマウスにおける皮内注射において、ワーニアー(Warnier)らにより開示されている(「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International journal of cancer)」、1996年、第67巻、p.303−310)。
「障害」または「症状」という用語が本明細書中で用いられる場合、それは、SART2のHLAクラスII結合ペプチドが発現される任意の病理学的症状を指す。このような障害としては、癌、例えばグリオーマを含む脳腫瘍、頭、首、肺,子宮または食道の扁平上皮癌、メラノーマ,肺または子宮の腺癌,腎癌が挙げられる。
開示に基づいたいくつかの療法的アプローチは、SART2のHLAクラスII結合ペプチド提示細胞に対する対象の免疫系による応答の誘導において前提とされる。このようなアプローチの1つは、組織での表現型の異常細胞を有する対象への、SART2のHLAクラスII結合ペプチドとHLAクラスII分子の複合体を認識する白血球、好ましくは本発明のペプチドに特異的な自家CD4陽性T細胞の投与である。このようなCD4陽性T細胞をin vitroで開発することは当業者の技術の範囲内である。一般に、対象から採取される細胞の試料、例えば血球は、複合体を提示し、CD4陽性T細胞を惹起し得る細胞と接触されて、増殖する。標的細胞は、HLAクラスII分子を保有する抗原提示細胞、例えば樹状細胞またはB細胞であり得る。標的細胞は、細胞の試料がまず分類されてCD4陽性T細胞集団を単離する場合、COS細胞のようなトランスフェクト体でもあり得る。上記の四量体技術は分類のために用いられ得る。これらのトランスフェクト体はそれらの表面の所望の複合体を提示し、問題のCD4陽性T細胞と組合されると、その増殖を刺激する。COS細胞は、他の適切な宿主細胞と同様に、広範に利用可能である。CD4陽性T細胞の特異的産生は、下記に記載される。クローン拡張性自家CD4陽性T細胞が次に対象に投与される。次にCD4陽性T細胞は対象の免疫応答を刺激し、それにより所望の療法的目標を達成する。
上記の療法は、対象の異常細胞の少なくともいくつかが関連HLA/ペプチド複合体を提示するものと仮定する。これは、特定のHLA分子を提示する細胞の同定方法、ならびに関連配列、この場合にはSART2配列のDNAを発現する細胞の同定方法を当業界が非常に熟知しているので、非常に容易に確定され得る。上記の療法は、本発明による利用可能な療法の唯一の形態というわけではない。CD4陽性T細胞は、多数のアプローチを用いてin vivoでも惹起され得る。一アプローチは、複合体を発現する非増殖性細胞の使用である。このアプローチに用いられる細胞は、複合体を正常に発現する細胞、例えば樹状細胞、あるいは複合体の提示に必要な遺伝子の一方または両方でトランスフェクトされた細胞であり得る。同様に、当該遺伝子の一方または両方を保有するベクターが用いられ得る。ウイルスまたは細菌ベクターが特に好ましい。例えば、SART2のHLAクラスII結合ペプチドをコードする核酸は、ある種の組織または細胞型におけるSART2のHLAクラスII結合ペプチドの発現を指図するプロモーターおよびエンハンサー配列と操作可能的に連結され得る。核酸は、発現ベクター中に組み入れられ得る。発現ベクターは、SART2のHLAクラスII結合ペプチドをコードするもののような外因性核酸の挿入を可能にするよう構築されるか、または修飾された非修飾細胞外染色体核酸、プラスミドまたはウイルスゲノムであり得る。SART2のHLAクラスII結合ペプチドをコードする核酸は、レトロウイルスゲノム中にも挿入され、それにより標的組織または細胞型のゲノムへの核酸の組込みを促し得る。これらの系では、当該遺伝子は微生物、例えばワクシニアウイルス、概してポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルスまたは細菌BCG、ならびに事実上、宿主細胞を「感染」させる物質により保有される。結果として生じる細胞は、当該複合体を提示し、自家CD4+T細胞により認識され、次にこれが増殖する。
同様の作用は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドをアジュバントと組合せて、in vivoでのHLAクラスII提示細胞中への組み入れを促すことにより達成され得る。HLAクラスII結合部分より大きい場合、SART2のHLAクラスII結合ペプチドはHLA分子のペプチド相手を産生するのに必要な場合にプロセシングされ得る。一般に、対象は、有効量のSART2のHLAクラスII結合ペプチドの皮内注射を受けることができる。当業界での免疫感作プロトコール標準に従って、初期用量と、その後の追加免疫用量を投与することができる。
上記の組成物またはプロトコールのいずれかは、細胞溶解性T細胞応答の誘導のためのSART2のHLAクラスI結合ペプチドも含み得る。例えば、下記で実証されるように、SART2タンパク質は細胞中でプロセシングされて、HLAクラスIおよびHLAクラスII応答の両方を生じ得る。HLAクラスIおよびクラスII分子を結合するSART2ペプチド(またはこのようなペプチドをコードする核酸)を投与することにより、免疫応答改善がTヘルパー細胞およびTキラー細胞の両方を誘導することにより提供され得る。
さらに、非SART2腫瘍関連ペプチドも、HLAクラスIおよび/またはクラスIIにより免疫応答を増大するために投与され得る。癌細胞が1つより多い腫瘍関連遺伝子を発現し得ることは十分に確立されている。特定の対象が付加的腫瘍関連遺伝子を発現するか否かを当業者が確定し、次に上記のSART2組成物および治療剤および予防剤中にこのような遺伝子の発現産物に由来するHLAクラスIおよび/またはHLAクラスII結合ペプチドを含むことは、ルーチン実験の範囲内である。
本発明は、本明細書中に記載されているように、多数の用途を有し、そのいくつかが本明細書中に記載されている。以下の用途はSART2のHLAクラスII結合ペプチドに関して記載されるが、しかし他の構造的または機能的に関連するSART2のHLAクラスII結合ペプチドに等しく適用可能である。第一に、本発明は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドの発現を特徴とする疾患を当業者が診断するのを可能にする。これらの方法は、生物学的試料中でのSART2のHLAクラスII結合ペプチド、またはSART2のHLAクラスII結合ペプチドとHLAクラスII分子の複合体の発現を確定する過程を含む。ペプチドまたはペプチドとHLAクラスII分子の複合体の発現は、ペプチドまたは複合体に関する結合相手、例えば抗体を用いて検定することにより確定され得る。
本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体に対する抗体は、例えば、レイル(Lane)ら著、「アンティボディーズ;ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies; A Laboratory Manual)、第1版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harber Laboratory Press)、1989年」などに記載の方法により、本発明のペプチドを用いて適切な方法で適切な動物を免疫することにより、腫瘍抗原タンパク質を認識する抗体、あるいはその活性を中和する抗体を容易に作製できる。抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、cDNAライブラリーのスクリーニング、免疫学的診断法、医薬等が挙げられる。
本発明のペプチドおよび/又は本発明のポリヌクレオチド分子および/又は本発明のペプチドに反応する白血球および/又は本発明のペプチドに対する抗体を有効成分とする医薬組成物は、SART2を発現している癌細胞に反応し、その増殖を抑制させることで、SART2の発現を特徴とする症状を治療するという効果も期待できるであろう。これら医薬組成物はSART2の発現を特徴とする症状が発症する前に投与されることで、その症状、例えば腫瘍、に対する予防剤となりうる。また、SART2の発現を特徴とする症状が発症する後にこれら医薬組成物を投与することで、その症状、例えば腫瘍、に対する治療剤となりうる。さらに、本発明のペプチド、本発明のポリヌクレオチド分子、本発明のペプチドに反応する白血球、本発明のペプチドに対する抗体をを適宜選択した2種類以上を組み合わせて使用することで、SART2の発現を特徴とする症状を治療する効果を高めるという効果も期待できるであろう。
治療剤および予防剤も、SART2のHLAクラスII結合ペプチドまたはその前駆体をコードする裸DNAまたはRNAを包含するが、これらはin vitroで産生され、注射、粒子衝撃、鼻腔吸入およびその他の方法により投与され得る。「裸核酸」型の治療剤および予防剤は、裸核酸によりコードされるペプチドに特異的なCTLの生成を含めた免疫学的応答を惹起することが実証されている。治療剤および予防剤は、ウイルス、リポソームまたはその他の粒子、例えば薬剤送達に有用なポリマー粒子中に充填された核酸も含む。
免疫感作プロトコールの一部として、免疫応答を増強する物質が、癌の治療剤および予防剤の核酸またはペプチド構成成分とともに投与され得る。このような免疫応答増強化合物は、アジュバントまたはサイトカインとして分類され得る。アジュバントは、抗原の貯蔵所(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、かつ特定組のリンパ球を刺激することにより、免疫学的応答を強化し得る。多数の種類のアジュバントが、当業界で周知である。特定の例としては、MPL(SmithKline Beecham)、サルモネラ属のSalmonella minnesota Re 595リポ多糖類の精製および酸加水分解後に得られる同類物;QS21(SmithKline Beecham)、Quillja saponaria抽出物から精製される純QA−21サポニン;PCT出願WO96/33739(SmithKline Beecham)に記載されたDQS21;QS−7、QS−17、QS−18およびQS−L1(ソ(So)、外10名、「モレキュルズ・アンド・セル(Molecules and cells)」、1997年、第7巻、p.178−186);フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;ビタミンE;モンタニド;ミョウバン;CpGオリゴヌクレオチド(例えば、クレイグ(Kreig)、外7名、「ネイチャー(Nature)」、第374巻、p.546−549)を参照);ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールのような生分解性油から調製される種々の油中水エマルションが挙げられる。好ましくは、ペプチドは、DQS21/MPLの組合せと混合されて投与される。DQS21対MPLの比は、典型的には約1:10〜10:1,好ましくは約1:5〜5:1、さらに好ましくは約1:1である。典型的には、ヒト投与に関しては、DQS21およびMPLは、約1μg〜約100μgの範囲でワクチン処方物中に存在する。その他のアジュバントが当業界で既知であり、本発明に用いられ得る(例えば、ゴッディング(Goding)著,「モノクローナル・アンチボディーズ:プリンシプル・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」、第2版、1986年を参照)。ペプチドおよびアジュバントの混合物またはエマルションの調製方法は、予防接種の当業者には周知である。
対象の免疫応答を刺激するその他の因子も、対象に投与され得る。例えばその他のサイトカインも、リンパ球刺激特性の結果として、予防接種プロトコールに有用である。このような目的のために有用な多数のサイトカインは当業者に既知であり、その例としては、ワクチンの防御作用を強化することが示されているインターロイキン−12(IL−12)、GM−CSF、IL−18およびFlt3-Ligandが挙げられる。
投与される場合、本発明の治療用組成物は、製薬上許容可能な調製物中で投与される。このような調製物は、製薬上許容可能な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、相溶性担体、補助免疫増強剤、例えばアジュバントおよびサイトカイン、ならびに任意にその他の療法的作用物質をルーチンに含有し得る。
本発明はさらに、本発明の腫瘍抗原に関するペプチドもしくはその変異体・誘導体を含有する医薬を提供する。本発明の腫瘍抗原タンパク質および腫瘍抗原ペプチドは、細胞性免疫が効果的に成立するようにアジュバントとともに投与したり、粒子状の剤型にして投与したりすることができる。また、剤型としては、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッド(脂質)を結合させた製剤などが用いられる。また、腫瘍抗原ペプチドをパルスした樹状細胞やマイクロファージなどの抗原提示細胞や本発明の腫瘍抗原ペプチドをコードするDNAあるいはRNAを導入した細胞を投与する方法も考えられる。この場合に導入するDNAあるいはRNAの望ましい形態として、本発明のペプチドを含む様々なヘルパーエピトープあるいはCTLエピトープである腫瘍抗原ペプチドもしくは腫瘍抗原をコードするDNAあるいはRNAを一つ、もしくはそれ以上を細胞に導入するか、これらDNAあるいはRNAを一つ、もしくはそれ以上を連結させて細胞に導入する方法が考えられる。また、前述したDNAあるいはRNAの代わりにペプチド、ポリペプチドあるいはタンパク質を細胞に導入することも考えられる。
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチド分子またはオリゴヌクレオチド分子もしくはその化学的修飾体を含有する医薬に関する。本発明のポリヌクレオチド分子またはオリゴヌクレオチド分子を含有する「医薬」は、例えば、本発明のDNAを腫瘍患者等に投与することで腫瘍を治療または予防することができる。本発明のDNAを投与し細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターによる方法およびその他の方法(日経サイエンス、1994年4月、p.20−45、月刊薬事、1994年,第36巻,第1号,p.23−48、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号、およびこれらの引用文献等)のいずれの方法も適用することができる。
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス等のRNAウイルスまたはDNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
これらの本発明のポリヌクレオチド分子またはオリゴヌクレオチド分子を有するプラスミドも本発明の範囲に含まれる。
本発明の腫瘍抗原ペプチドをコードする遺伝子を実際に医薬として作用させるには、遺伝子を直接体内に導入するin vivo方法、およびヒトからある種の細胞を採取し体外で遺伝子を該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo方法がある(日経サイエンス,1994年4月,p20−45、月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23−48、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号、およびこれらの引用文献等)。In vivo方法がより好ましい。
In vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することが出来る。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明のDNAを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、本発明のDNAを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中の本発明のDNA含量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常本発明のDNAとして、0.0001mg〜100mg、好ましくは0.001mg〜10mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体を用いて、腫瘍抗原タンパク質をコードする遺伝子の発現を制御することができる。この方法によって腫瘍抗原タンパク質の生産量を減らすことで、自己免疫疾患を治療または予防することができる。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する医薬も本発明に包含される。
アンチセンスオリゴヌクレオチドを発現プラスミドに組み込む場合、このアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に導入する方法としては例えば、実験医学、1994年、第12巻に述べられている方法が挙げられ、リポソームや組換えウイルスなどを利用した方法が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの発現プラスミドは通常の発現ベクターを用いてプロモーターの後ろに逆向きに、すなわち本発明の遺伝子が3'から5'の向きに転写されるように、本発明の遺伝子をつなぐだけで簡単に作製できる。
このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドを有するプラスミドも本発明に包含される。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体をそのまま投与する場合、安定化剤、緩衝液、溶媒などと混合して製剤された後、投与時には抗生物質、抗炎症剤、麻酔薬などと同時に用いることもできる。こうして作製された製剤は様々な方法で投与可能である。投与は連日または数日から数週間おきになされるのが好ましい。また、この様な頻回の投与を避けるために徐放性のミニペレット製剤を作製し患部近くに埋め込むことも可能である。あるいはオスモチックポンプなどを用いて患者に連続的に徐々に投与することも可能である。通常投与量は作用部位における濃度が0.1nM-10μMになるように調製する。
このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体を含有する医薬も本発明に包含される。
本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体に対する抗体を腫瘍の治療に用いることも可能である。例えば、SART2の発現を特徴とする症状を発症した患者に本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体に対する抗体を有効量投与することで、癌の治療に望ましい応答を誘導することができる。本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体に対する抗体の投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体、あるいは本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体に対する抗体、あるいは本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体で誘導したT細胞、例えば単離性CD4陽性T細胞、および樹状細胞などの単離抗原提示細胞における癌に対する治療効果は動物モデルを用いて検証することもできる。例えば、免疫不全マウス(ヌードマウス、スキッドマウス等)あるいはヒトHLAトランスジェニックマウスに腫瘍細胞を移植する前あるいは移植後、有効量でかつ最適の投与方法でペプチド、抗体あるいは細胞を投与することで、癌に対する治療効果を判定できるが、これに限定されるわけではない。この場合の本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体、あるいは本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体に対する抗体の投与量としては、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましいし、細胞の投与量としては、通常1〜1000000000個、好ましくは1000000〜1000000000個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
本発明の治療用組成物を用いて免疫応答を刺激するのが望ましい場合、これは、血清中の抗体力価の増大、細胞傷害性リンパ球のクローン性拡張またはいくつかのその他の望ましい免疫学的応答を引き起こす体液性抗体応答の刺激を包含し得る。投与方式によって、1ナノグラム/キログラム〜100ミリグラム/キログラムの範囲の免疫原の用量が有効であると考えられる。好ましい範囲は、500ナノグラム〜500マイクログラム/キログラムであると思われる。絶対量は、種々の要因、例えば投与のために選定される物質、投与が1回投与であるか多数回投与であるか、ならびに個々の患者パラメーター、例えば年齢、健康状態、サイズ、体重および疾患の段階によるであろう。これらの要因は当業者には周知であり、ルーチン実験で取り扱われ得る。
また、本発明のペプチドを有効成分として含む腫瘍の診断剤を提供することもできる。つまり、SART2の発現を特徴とする症状を免疫学的に診断することも可能である。免疫学的診断法は、イムノブロット法、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光あるいは発光測定法等より適宜選択できる。例えば、本発明の腫瘍抗原ペプチドもしくはその変異体・誘導体を固相化し、SART2の発現を特徴とする症状をもつ患者由来の血清もしくは血漿を反応させることで、患者血清もしくは血漿中のSART2に対する抗体価を測定することが可能である。
これらの単離SART2のHLAクラスII結合ペプチド、かかるペプチドを含むタンパク質、あるいはペプチドおよびHLAクラスII分子の複合体は、アジュバントのような物質と組合されて、SART2のHLAクラスII結合ペプチドの発現を特徴とする障害を治療するのに有用な治療剤および予防剤を生成し得る。さらに、この治療剤および予防剤は、それらの表面にSART2のHLAクラスII結合ペプチド/HLA複合体を提示する細胞、例えば樹状細胞、B細胞、非増殖性トランスフェクト体等から調製され得る。治療剤および予防剤として細胞が用いられるすべての場合に、これらは、CD4陽性T細胞を刺激するのに必要な構成成分の一方または両方に関するコード配列でトランスフェクトされた細胞、あるいはトランスフェクションを必要とせずにすでに両分子を発現している細胞であり得る。例えば、自己抗原提示細胞は、患者から単離され、HLAクラスIおよびHLAクラスII分子の会合中でSART2エピトープを提示する細胞を得るよう処理され得る。これらの細胞は、CD4陽性およびCD8陽性細胞応答の両方を刺激することが可能である。樹状細胞は、HLAクラスIおよびHLAクラスIIエピトープでも装入され得る。
本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体をワクチンとして接種することは、腫瘍の予防方法および予防用組成物を提供することができる。例えば、腫瘍抗原ペプチドもしくはその変異体・誘導体を接種しておき、腫瘍抗原に対する抗体の作用を期待する液性免疫、例えば抗体依存性細胞傷害、もしくは腫瘍抗原に対するT細胞の作用を期待する細胞性免疫の誘導を促すことで、腫瘍の発生を予防することができる。
本発明は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドの発現を特徴とする障害を有する対象を当業者が治療するための治療剤又は治療方法の提供を可能にする。治療は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドとHLAクラスII分子の複合を対象中で高濃度化する因子を治療剤として投与する過程、およびこのような複合体に特異的であるCD4陽性T細胞を治療剤として投与する過程を包含する。上記の治療に有用な因子としては、SART2のHLAクラスII結合ペプチドおよびその機能的変異体、このようなSART2ペプチドを含むエンドソーム標的化融合タンパク質、このようなタンパク質およびペプチドを発現する核酸(核酸を含有するウイルスを含む)、このようなペプチドおよびHLAクラスII結合分子の複合体、SART2のHLAクラスII結合ペプチドおよびHLAクラスII結合分子の複合体を保有する抗原提示細胞、例えば樹状細胞、B細胞、非増殖性トランスフェクト体等が挙げられる。本発明は、当業者が、SART2のHLAクラスII結合ペプチドに特異的なCD4陽性T細胞に関してT細胞の集団を選択的に高濃度化することも可能にする。SART2のHLAクラスII結合ペプチドの単離は、SART2のHLAクラスII結合ペプチドをコードする核酸を単離するのも可能にする。核酸は、in vivoで、あるいは原核生物または真核生物宿主細胞中でSART2のHLAクラスII結合ペプチドを生成するために用いられ得る。熟練従事者に周知の種々の方法を用いて、単離SART2のHLAクラスII結合ペプチドを得ることができる。例えば、発現ベクターを細胞中に導入して、ペプチドの産生を生じ得る。別の方法では、mRNA転写体が微量注射され、そうでなければ細胞中に導入されて、コード化ポリペプチドの産生を生じ得る。細胞無含有抽出物、例えば網状赤血球溶解物系におけるmRNAの翻訳も、ペプチドを産生するために用いられ得る。本発明のSART2のHLAクラスII結合ペプチドを含むペプチドは、in vitroでも合成され得る。当業者は、単離SART2のHLAクラスII結合ペプチドを生成するために、既知のペプチド単離方法にも容易に従い得る。これらの例としては、免疫クロマトグラフィー、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび免疫アフィニティークロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。
製剤中の本発明の腫瘍抗原ペプチドの投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
本発明の調製物は、有効量で投与される。有効量とは、単独でまたはさらなる用量とともに、所望の応答を刺激する製剤調製物の量である。癌を治療する場合、望ましい応答は、癌の進行の抑制である。これは、疾患の進行を一時的に遅くすることのみを包含し得るが、しかしさらに好ましくは、永続的に疾患の進行を停止させることを包含する。免疫応答を誘導する場合には、望ましい応答は、用いられるSART2免疫原(単数または複数)に特異的である抗体またはT細胞の増大である。これらの望ましい応答は、ルーチン法により監視され得るし、あるいは本明細書中で考察される本発明の診断方法により監視され得る。
本発明のポリヌクレオチドには、本発明のペプチド配列を含むDNA領域をPCR法により増幅できるプライマーが含まれている。該プライマーは、SART2の発現を特徴とする症状をもつ患者からの組織、血液などからRNA、cDNAを調整し、PCR法により診断をすることに用いることができる。さらに、SART2の発現を特徴とする症状をもつ患者からの組織、血液などからRNAを調整し、本発明のポリヌクレオチドをプローブに用いたノーザンブロット法によって腫瘍の診断が可能となる。また、本発明のポリヌクレオチド分子を用いたDNAチップは、SART2の発現を特徴とする症状をもつ患者からの組織、血液などから調整したcDNAを材料にした腫瘍の診断を可能とする。これらは、本発明のポリヌクレオチド分子を有効成分として含む腫瘍の診断剤の一態様であるが、本発明のポリヌクレオチド分子を有効成分とする腫瘍の診断剤はこのような態様に限定されない。
さらに、本発明のペプチドに対する抗体はSART2の発現を特徴とする症状に対する診断剤を提供することができる。例えば、本発明のペプチドに対する抗体を有効成分として含む腫瘍の診断剤をSART2の発現を特徴とする症状をもつ患者由来の組織と反応させ、SART2の発現を検出することが可能である。腫瘍組織においてSART2は顕著に発現していることから、前記方法により腫瘍の診断を行うことが可能である。
本明細書中に記載した治療のいずれかにより生成されるか、または強化される免疫応答は、当業界で既知の種々の方法によりモニタリングされ得る。例えば、所定の抗原に特異的なT細胞の存在は、抗原性ペプチドを提示する可溶性蛍光原性MHC分子四量体によるT細胞受容体の直接標識により検出され得る(ダンバー(Dunbar)、外5名、「カレント・バイオロジー(Current biology)」、1998年、第8巻、p.413−416)。要するに、β2−ミクログロブリンおよびクラスI分子を結合するペプチド抗原の存在下で、可溶性MHCクラスI分子がin vitroで折り畳まれる。精製後、MHC/ペプチド複合体は精製され、ビオチンで標識される。ビオチニル化ペプチド−MHC複合体を標識化アビジン(例えば、フィコエリスリン)と4:1のモル比で混合することにより、四量体が形成される。四量体は次に、末梢血またはリンパ節のようなCTLの供給源と接触させられる。四量体は、ペプチド抗原/MHCクラスI複合体を認識するCTLを結合する。四量体により結合された細胞は、蛍光活性化細胞分類により分類されて、反応性CTLを単離し得る。単離CTLは次に、本明細書中に記載したような使用のためにin vitroで拡張され得る。四量体としてのMHCクラスII分子の使用は、近年、クラウフォード(Crawford)ら(「イムニティー(Immunity)」、1998年、第8巻、p.675−682)により実証された。多量体性可溶性MHCクラスII分子は、共有的に結合されたペプチドと複合化された。クラスII四量体は、適切化特異性および親和性で特異的T細胞と結合することが示された。したがって、四量体を用いて、予防接種プロトコールに対するCD4陽性およびCD8陽性細胞応答の両方をモニタリングすることができる。
本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体を投与する場合、in vitroで培養した樹状細胞にパルスすることで効果を上げることができる。
すなわち、骨髄、臍帯血あるいは患者末梢血から、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とIL-3(あるいはIL-4)により樹状細胞を誘導し、その培養系に腫瘍関連ペプチドを加えることにより、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導することができる。この樹状細胞を有効量投与することで、癌の治療に望ましい応答を誘導できる。さらに好ましくは、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導後、T細胞を樹状細胞と相互作用させて増殖させ、投与することである。
用いる細胞は、健康人から提供された骨髄や臍帯血、患者本人の骨髄や末梢血等を用いることができるが、患者本来の自家細胞を使う場合は、安全性が高く、重篤な副作用を回避することも期待できる。末梢血または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料のいずれでもよい。末梢血は、全血を培養してもよいし、白血球成分だけを分離して培養してもよいが、後者の方が効率的で好ましい。さらに白血球成分の中でも単核球を分離してもよい。また、骨髄や臍帯血を起源とする場合には、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これから単核球を分離して培養してもよい。末梢血やその白血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が含まれている。用いられるサイトカインは、安全性と生理活性が確認された特性のものであれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生産手法については問わないが、好ましくは医療用に用いられる品質が確保された標品が必要最低量で用いられる。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞が誘導される濃度であれば特に限定されず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度である。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、ヒトの体温である37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5%CO2を通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要数の細胞が誘導される期間であれば特に限定されないが、通常3日〜8週間の間で行われる。細胞の分離や培養に供される機器は、適宜適当なものを用いることができるが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置については、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わらず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用いることができる。
本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体によりin vitroで培養された樹状細胞およびT細胞の投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常1〜1000000000個、好ましくは1000000〜1000000000個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
本発明のペプチドもしくはその変異体・誘導体はin vivo投与においても、癌の治療に望ましい応答を誘導できる。
樹状細胞増殖因子Flt3-Ligandあるいはその代替物を有効量投与し、腫瘍関連ペプチドあるいはそのペプチド配列をコードするmRNAおよびRNAを投与する。この時、好ましくは樹状細胞を活性化するアジュバントとして有効量のImiguimodあるいはCpG等、さらに好ましくはIL-2とジフテリア毒素由来の融合タンパク質であるOntak等を投与してCD25陽性細胞を除くことで癌の治療に望ましい応答を誘導できる。