JP4957185B2 - 塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に原油やガスなどのパイプライン、水道配管、建築・土木用の柱などに好適な電縫鋼管用の熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
電縫鋼管は、ラインパイプや水道配管などの輸送用配管に広く用いられているが、輸送用配管の敷設時や敷設後の座屈防止、地震発生時の地滑りに伴う変形応力対策として、近年、管長手方向の降伏比(以下“YR”という)の低い電縫鋼管に対するニーズが高まりつつある。
一般に、ラインパイプなどに用いられる電縫鋼管は、造管後、防食などの目的で重防食コーティング(塗装焼付け)が施されるが、長手方向に造管歪が残った状態で重防食コーティングが施され、その際に例えば250℃×10分程度で焼付けが行われると、鋼中に残存している固溶元素が固着されて歪時効が起こり、YRが増大してしまう。
一方で、ラインパイプは、海底や凍土地帯に敷設することが多く、溶接部を含む電縫鋼管全体に優れた靭性が要求される。
しかしながら、塗装焼付け後の低YRと高靭性を両立することは容易でない。一般に高靭性を得るには微細組織が有利とされるが、例えば、微細なフェライト組織を形成させると、降伏点が上昇してYRが増加してしまう。すなわち、一般に低YRと高靭性は背反する関係にある。
低YR化を狙いとする電縫鋼管用熱延鋼板としては、例えば、Mo+Crを特定の範囲で含有し、面積率1〜20%のマルテンサイトとフェライトからなる組織を有する鋼板が、特許文献1に提案されている。
特開平10−176239号公報
しかし、特許文献1の技術は、単にマルテンサイトを活用して熱延鋼板を低YR化し、且つパイプ成形後のYS低下を抑えることを狙いとするものであるため、塗装焼付け後の低YRと高靭性を両立させることはできない。
したがって本発明の目的は、塗装焼付け後に低YRを示し、且つ高靭性を有する電縫鋼管を安定して得ることができる、電縫鋼管用熱延鋼板とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、管長手方向が低YR化するとともに、塗装焼付け後にもその低YRが維持され、しかも高靭性を有する電縫鋼管を得るために、電縫鋼管用熱延鋼板が備えるべき化学成分・組織と製造条件について検討を行った。その結果、目的とする熱延鋼板を得るためには、(1)Cr,Moを最適なバランスで添加する必要があること、(2)仕上圧延終了後の冷却過程で積極的に二相分離を進める必要があり、そのためにはポリゴナル状のフェライトの生成が重要であること、(3)ベイナイト変態を積極的に活用し、第二相(ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの1種以上)を生成させる必要があること、という知見を得た。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.01%以下を含有し、さらに、CrおよびMoを、Cr:0.01%以上1.5%未満、Mo:0.05%以上0.3%未満であって、且つ下記(1)式を満足する条件で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、
パーライトの体積率が3%以下(但し、0%を含む)であり、残部が、フェライトと、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの中から選ばれる1種以上の第二相からなり、該第二相の体積率が1.5%以上15%未満である複合組織を有し、アスペクト比1以上4未満のフェライト粒の個数が組織中の全結晶粒の50%超であることを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
−1.11×(Cr)+0.1<Mo<−0.13×(Cr)+0.3 …(1)
但し Cr:Cr含有量(質量%)
Mo:Mo含有量(質量%)
[2]上記[1]の鋼板において、さらに、質量%で、Nb:0.5%以下、Ti:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
[3]上記[1]又は[2]の鋼板において、さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Sn:0.5%以下、Sb:0.5%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの鋼板において、さらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
[5]上記[1]〜[4]に記載のいずれかの成分組成を有する鋼を加熱して熱間圧延し、該熱間圧延ではAr変態点〜Ar変態点+100℃の温度域での圧下率を50%以上とする仕上圧延を行い、圧延を終了して少なくとも0.5秒を経過してから冷媒を用いた冷却を開始するとともに、該冷却の開始から巻取りまでの平均冷却速度を3〜40℃/sとし、400〜600℃で巻取ることを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板の製造方法。
[6]上記[1]〜[4]のいずれかの熱延鋼板を造管して得られたことを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管。
本発明の電縫鋼管用熱延鋼板によれば、塗装焼付け後の降伏比が低く、且つ高靭性を有する電縫鋼管を安定して得ることができる。このため、例えば、輸送用配管の敷設時や敷設後の座屈防止、地震発生時の地滑りに伴う変形応力による破損などを効果的に防ぐことができる。
以下、本発明の熱延鋼板の成分組成について説明する。以下の説明において、各元素の含有量は全て“質量%”である。
C量が0.01%未満では、所望の強度が得られないことに加え、結晶粒の粗大化により靭性の劣化を招く。一方、0.1%を超えるとパーライトが生成しやすくなり、靭性が劣化する。このためC量は0.01〜0.1%とする。
Siは、二相分離を促進し、フェライトをポリゴナル状にすること、およびベイナイト変態の安定化に極めて有用である。しかし、Si量が1.0%を超えると電縫溶接時に酸化物が生成しやすくなり、溶接部靭性が劣化する。このためSi量は1.0%以下、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下とする。なお、二相分離を効果的に促進するには、Si量は0.01%以上とすることが望ましい。
Mnは鋼の強度確保に有効な元素であるが、2.0%を超えて添加すると、固溶強化により降伏比(以下、“YR”という)の増加をもたらすだけでなく、溶接部の靭性を劣化させる。このためMn量は2.0%以下とする。
Pも強度確保に有効であり、且つ第二相の形成にも寄与する。しかし、Pは非常に粒界に偏析しやすい元素であり、このためP量が0.05%を超えるとYRが増加するとともに、靭性も劣化するので好ましくない。このためP量は0.05%以下、好ましくは0.03%以下とする。
S量が0.05%を超えると粗大な硫化物が生成しやすく、溶接部の靭性が劣化する。このためS量は0.05%以下、好ましくは0.01%以下とする。
Alは製鋼段階での脱酸剤として用いられ、0.01%以上含有するように添加する必要がある。しかし、Al量が0.10%を超えると、鋼中酸化物を増加させ、母材および溶接部の靭性を低下させるので好ましくない。このためAl量は0.01〜0.10%、好ましくは0.01〜0.05%とする。
N量が0.01%を超えると、粗大な窒化物形成による靭性の劣化に加え、固溶Nが塗装焼付け後に歪時効を起こし、YRを劣化させる。このためN量は0.01%以下とする。
CrとMoを最適なバランスで添加することは、塗装焼付け後の低YR化と高靭性を確保する上で最も重要な要件の1つである。後述するような本発明の熱延板組織、すなわち、アスペクト比1以上4未満のフェライト粒(ポリゴナル状フェライト粒)の個数が組織中の全結晶粒の50%超を占め、且つ第二相としてベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの中から選ばれる1種以上を有する複合組織を得るには、Cr,Mo量が下記(1)式を満たす必要がある。後述する熱延条件とも関係するが、上記のようなCr,Mn添加量のバランスは、熱延冷却(ランナウト冷却)過程においてフェライトノーズを最適な位置で通過し、ポリゴナル状フェライトを形成させるのに必須の要件であることが判った。
−1.11×(Cr)+0.1<Mo<−0.13×(Cr)+0.3 …(1)
但し Cr:Cr含有量(質量%)
Mo:Mo含有量(質量%)
図1は、熱延鋼板のCr,Moの各含有量と、鋼板を造管して得られた電縫鋼管の塗装後降伏比および溶接シーム部靱性との関係を示したものである。この熱延鋼板は、C:0.03〜0.07%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.9〜1.7%、P:0.005〜0.03%、S:0.001〜0.03%、Al:0.01〜0.07%、N:0.001〜0.006%を含有する鋼スラブを熱間圧延して、Ar点〜Ar点+100℃の温度域での圧下率を50%以上とする仕上圧延を行った後、圧延を終了して少なくとも0.5秒を経過してから冷媒を用いた冷却を開始するとともに、この冷却の開始から巻取りまでの平均冷却速度を3〜40℃/sとし、400〜600℃で巻き取ることにより得られたものである。なお、造管条件や塗装後降伏比および溶接シーム部靱性の評価方法は、後述する実施例と同様とした。
図1によれば、本発明が狙いとする塗装焼付け後の低YR(YP<90%)、と高靭性(vTrs≦−30℃)を両立させるには、Cr,Moの添加量を上記(1)式の範囲とする必要があり、この範囲を外れると、塗装焼付け後のYRまたは靭性若しくはその両方が十分でなくなることが判る。
一方、Cr量が1.5%以上では溶接時に酸化物を生成し、靭性が劣化するので、Cr量は1.5%未満、より望ましくは1.0%以下、特に望ましくは0.8%以下とする。一方、所望の組織を得るという観点から、Crの下限は0.01%とすることが好ましい。また、Mo量が0.3%以上では、大幅なコスト増に繋がるだけでなく、熱延冷却過程において所望の組織を得ることができず、低YRを達成できないので、Mo量は0.3%未満とする。一方、所望の組織を得るという観点から、Mo量は0.05%以上、望ましくは0.10%以上、特に望ましくは0.15%以上とすることが好ましい。但し、コストの面からは、Mo量は0.20%程度を上限とすることが好ましい。
以上の理由から、Cr量は1.5%未満(望ましくは1.0%以下、特に望ましくは0.8%以下)、Mo量は0.3%未満(望ましくは0.05%以上、より望ましくは0.10%以上、特に望ましくは0.15%以上)とし、かつ上記(1)式を満足する範囲とする。
本発明では、さらに、目標とする鋼管の強度や靭性などに応じて、以下のような元素を含有させてもよい。
まず、Nb:0.5%以下、Ti:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下の中から選ばれる1種以上を添加することができる。これらの元素は、主に熱延冷却過程において炭化物を析出する元素であり、強度確保に有用であるばかりでなく、フェライト中の固溶Cを減少させるので、本発明が狙いとする塗装焼付け後の低YR化に寄与する。また、一部は熱延仕上圧延中に析出することでオーステナイト粒の微細化に寄与し、所望のポリゴナル状フェライト+第二相の組織形成に有効に作用する。しかし、いずれも0.5%を超えて添加すると、過剰な析出強化によりYRが高くなる。
また、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Sn:0.5%以下、Sb:0.5%以下の中から選ばれる1種以上を添加することができる。これらの元素の添加は強度上昇に有効である。また、これらの元素は、熱延加熱段階で鋼板表層に濃化する性質を有する。しかし、いずれも0.5%を超えて添加すると、特に粒界に沿ったこれら元素の濃化により、熱間加工性が低下する恐れがある。
さらに、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下の中から選ばれる1種以上を添加することができる。これらの元素を適量添加することで、硫化物の形態制御が可能となる。それにより靭性向上が期待できる。しかし、いずれも0.01%を超えて添加すると、鋼中に酸化物を多く残存させ、逆に靭性を劣化させる。
次に、本発明の熱延鋼板の組織について説明する。
本発明の熱延鋼板は、第一相であるフェライトと、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの中から選ばれる1種以上の第二相とを主体とする複合組織を有し、且つアスペクト比1以上4未満のフェライト粒の個数が組織中の全結晶粒の50%超を占めるものである。
ここで、アスペクト比1以上4未満のフェライト粒とは、いわゆるポリゴナル状フェライトのことであり、本発明者らは、塗装焼付け後の低YRと高靭性を確保するには、鋼板の組織を構成する全結晶粒のうち50%超をポリゴナル状のフェライトにすることが必要であることを見出した。
なお、本発明では、フェライト粒のアスペクト比は、各粒に内接する最大の楕円を求め、この楕円の長辺と短辺の比(=長辺/短辺)と定義する。
一般に、高靭性を得るには、フェライトをできるだけ微細にすることが好ましいとされている。しかしながら、塗装焼付け後の低YRと高靭性を同時に得ようとする場合、フェライト粒を微細にし過ぎることは適切でなく、変態したフェライト粒をある程度成長させて二相分離を進め、フェライトからオーステナイトに成分元素を吐き出すことが重要であることが判った。したがって、フェライト粒を微細にしすぎてはならず、しかも、γ/α界面での成分元素の分配が起こりやすいように、アスペクト比1以上4未満のポリゴナル状のフェライトを主体とする(すなわち、全結晶粒のうち50%超とする)ことが重要である。また、以上のような観点から、ポリゴナル状フェライトの平均粒径は1μm以上であることが望ましい。また、ポリゴナル状フェライトとしては、アスペクト比1以上3.5未満、望ましくはアスペクト比1以上3未満のフェライト粒の個数が組織中の全結晶粒の50%超を占めることがより好ましい。
本発明の熱延鋼板は、第二相として、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの中から選ばれる1種以上を有するものであり、パーライトは原則として含まないことが望ましいが、不可避的に含まれる場合でも体積率で3%程度を上限とすべきである。これら第二相は、結晶粒が微細であるほど靭性を嵩上げする効果がある。第二相全体の体積率は15%未満が望ましい。
したがって、本発明の熱延鋼板の好ましい複合組織は、パーライトの体積率が3%以下(但し、0%を含む)であり、残部が、フェライト(但し、アスペクト比1以上4未満のフェライト粒の個数が組織中の全結晶粒の50%超)と、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの中から選ばれる1種以上の第二相からなり、且つこの第二相の体積率が15%未満の複合組織である。
なお、本発明において、各組織の粒数や体積率は、鋼板の圧延方向断面のミクロ組織を走査型電子顕微鏡にて観察することにより測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡で得られた倍率3000倍の断面組織写真を用い、画像解析により任意に設定した100mm四方の正方形領域内に存在する各組織の粒数を数える。また、第二相全体の体積率の測定は、上記の写真を用いて画像処理により第二相占有面積率を求め、それを第二相の体積率とする。また、フェライト粒のアスペクト比は、同写真を用いて各粒に内接する最大の楕円を求め、その楕円の長辺/短辺として求める。
次に、本発明の熱延鋼板の製造条件について説明する。
本発明では、上述した成分組成を有する鋼(スラブ)を加熱して熱間圧延するが、この熱間圧延の仕上圧延では、Ar変態点〜Ar変態点+100℃の範囲で50%以上、好ましくは60%以上の圧下率を確保する必要がある。このような特定の温度域で高い圧下率を確保するのは、変態前のオーステナイト粒径を小さくし、その後の熱延冷却過程(ランナウト冷却)でのγ→α変態の変態核を増やすためである。また、第二相も細かく分散させることができ、靭性向上にも寄与する。なお、仕上圧延においてAr変態点〜Ar変態点+100℃以外の温度域での圧下率には特に制限はない。
仕上圧延後は、圧延を終了して少なくとも0.5秒を経過してから冷媒を用いた冷却(通常、冷却水を接触させる冷却)を開始するとともに、この冷却の開始から巻取りまでの平均冷却速度を3〜40℃/sの範囲に制御することが極めて重要である。また、より好ましい平均冷却速度は5〜25℃/sである。このように圧延終了後の冷却速度を制御するのは、再結晶したオーステナイト粒からポリゴナル状フェライトを生成させ、二相分離(γ→α変態)を促進させるためである。ここで、冷却速度が小さすぎる場合、フェライト粒が粗大となるとともに、パーライトが析出して靱性が劣化する。一方、冷却速度が大きすぎる場合には、上記アスペクト比を超える針状のフェライトが析出する比率が大きくなる。この場合、二相分離による成分元素の分配が十分に行われず、第二相の生成に不利になるだけでなく、歪時効のために塗装焼付け後のYRが悪化する。すなわち、フェライト中に固溶元素が残りすぎるため、塗装焼付け後に歪時効を起こし、所望の低YRが得られなくなる。
また、仕上圧延後の冷媒を用いた冷却(ランナウト冷却)は、圧延を終了して0.5秒以上、好ましくは1秒以上経過してから開始することが重要であり、これにより再結晶オーステナイトからフェライト変態が開始され、ポリゴナル状フェライトが形成されやすくなる。但し、圧延終了後、冷媒による冷却開始までの時間が長すぎると、パーライトが析出して靱性が劣化するため、パーライトの体積率が3%以下に抑えられるように、冷却開始までの時間を規制することが好ましい。そのために、通常、圧延が終了してから3秒以内に冷媒を用いた冷却を開始することが好ましい。なお、仕上圧延終了後、冷媒を用いた冷却を開始するまでは自然放冷である。
圧延終了後の冷却速度は、例えば、ランナウト冷却において鋼板に注水する冷却水の水量密度を調整することなどにより容易に制御することができる。
巻取温度は400〜600℃とするが、この巻取温度はベイナイト変態を積極的に活用するために重要である。より好ましい巻取温度は450〜570℃である。ポリゴナル状フェライトから排出された炭素などの成分元素が濃化したオーステナイトからのベイナイト変態は、塗装焼付け後の低YR化に非常に有効である。すなわち、ポリゴナル状フェライトを多数形成させた上で、ベイナイト変態を開始させると、オーステナイトに成分元素が濃化しているため、マルテンサイトや残留オーステナイトが生成しやすく、これにより初めて本発明が狙いとする塗装焼付け後の低YR化を実現できる。
本発明の熱延鋼板を用いた電縫鋼管は、基本的に通常の造管方法で製造することができる。すなわち、例えば、熱延鋼板をケージロールフォーミングで成形し、電気抵抗溶接を行い、内外面のビード研削を施した後、ポストアニーラにて熱処理を付与し、サイジングを行う。通常、造管後に重防食のための塗装焼付けを行うが、この重防食コーティングの焼付条件は、例えば、250℃×10分程度である。
上述したような造管工程を経た場合、管長手方向に引張歪若しくは圧縮歪が残留するのが一般的であるが、いずれの歪が残留しても、本発明の効果は損なわれない。
表1に示す成分組成の鋼スラブを1100〜1250℃に加熱した後、表2に示す条件で熱間圧延して板厚20mmの熱延鋼板を製造した。なお、No.3とNo.4以外の実施例においては、仕上圧延終了後、0.5〜1.5秒経過してから冷却水による冷却を開始した。
製造された熱延鋼板について、各組織の粒数および第二相の体積率を、次のようにして測定した。各鋼板の圧延方向断面のミクロ組織を走査型電子顕微鏡にて観察し、倍率3000倍の断面組織写真を得た。この断面組織写真を用いて、画像解析により任意に設定した100mm四方の正方形領域内に存在する各組織の粒数を数えた。また、同写真を用い画像処理により第二相占有面積率を求め、それを第二相の体積率とした。
各熱延鋼板を造管して電縫鋼管(外径20インチ)とし、その溶接シーム部靭性と塗装後YRを以下の方法で測定した。それらの結果を、熱延鋼板の製造条件、組織とともに表2に示す。
(1)溶接シーム部靭性
溶接シーム部靭性は、JIS Z 2202の4号試験片を、電縫鋼管の円周方向から、ノッチが電縫溶接部と平行で且つ中心にくるように採取し、この試験片を用い破面遷移温度vTrs(延性破面率が50%になる温度)で評価した。
(2)塗装後YR
電縫鋼管に重防食コーティング(250℃×10分)を施した後、鋼管長手方向のYR値で評価した。引張特性は小型の丸棒引張試験機を用いて測定した。ここで、YRは、0.5%引張時の応力/引張強さの比と定義される。
なお、本実施例では、目標をYR<90%、vTrs≦−30℃とした。
表2において、No.3は、成分組成および仕上圧延条件は適正であるが、仕上圧延終了後、冷却水による冷却を開始するまでの時間が短すぎるため、アスペクト比1以上4未満のポリゴナル状フェライト粒の割合が小さく、塗装後YRが高い。No.4も、成分組成および仕上圧延条件は適正であるが、仕上圧延終了後、冷却水による冷却を開始するまでの時間が長すぎるため、パーライトが析出し、溶接部靱性が低く、塗装後YRも高い。No.9は、成分組成および仕上圧延条件は適正であるが、仕上圧延終了後、冷却水による冷却を開始してから巻取りまでの平均冷却速度が大きすぎるため、アスペクト比1以上4未満のポリゴナル状フェライト粒の割合が小さく、すなわち二相分離が十分に進まなかったため、塗装後YRが高い。同様に、No.10は、仕上圧延時の圧下率が小さすぎるため、やはりポリゴナル状フェライト粒の割合が小さく、塗装後YRが高い。No.11は仕上圧延終了後、冷却水による冷却を開始してから巻取りまでの平均冷却速度が小さ過ぎるため、パーライトが析出し、塗装後YPが高い。No.12とNo.13は、巻取温度が不適切であるため所望のミクロ組織が得られず、このため溶接部靭性が低く、塗装後YRも高い。No.15〜18は、成分組成が不適切であるため所望のミクロ組織が得られず、このため溶接部靭性が低く、塗装後YRも高い。
Figure 0004957185
Figure 0004957185
熱延鋼板のCr,Moの各含有量と、鋼板を造管して得られた電縫鋼管の塗装後降伏比およびシーム部靱性との関係を示したグラフ

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.01%以下を含有し、さらに、CrおよびMoを、Cr:0.01%以上1.5%未満、Mo:0.05%以上0.3%未満であって、且つ下記(1)式を満足する条件で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、
    パーライトの体積率が3%以下(但し、0%を含む)であり、残部が、フェライトと、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの中から選ばれる1種以上の第二相からなり、該第二相の体積率が1.5%以上15%未満である複合組織を有し、アスペクト比1以上4未満のフェライト粒の個数が組織中の全結晶粒の50%超であることを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
    −1.11×(Cr)+0.1<Mo<−0.13×(Cr)+0.3 …(1)
    但し Cr:Cr含有量(質量%)
    Mo:Mo含有量(質量%)
  2. さらに、質量%で、Nb:0.5%以下、Ti:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
  3. さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Sn:0.5%以下、Sb:0.5%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
  4. さらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼を加熱して熱間圧延し、該熱間圧延ではAr変態点〜Ar変態点+100℃の温度域での圧下率を50%以上とする仕上圧延を行い、圧延を終了して少なくとも0.5秒を経過してから冷媒を用いた冷却を開始するとともに、該冷却の開始から巻取りまでの平均冷却速度を3〜40℃/sとし、400〜600℃で巻取ることを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管用熱延鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の熱延鋼板を造管して得られたことを特徴とする、塗装後降伏比の低い高靱性電縫鋼管。
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