しかしながら、上記特許文献1,2に開示された蛇腹装置では、上述した通り、加工装置に装着されることにより、該加工装置による加工の際に発生・飛散したワークの屑や切削液から蛇腹本体を保護することができる一方、上記蛇腹本体が最も収縮された状態においては、該蛇腹本体の最も一端側又は他端側に配置された保護部材の先端(さらには該保護部材に隣合う保護部材の先端)が該蛇腹装置の一端又は他端から、突出することになる。この結果、加工装置の形状や構造によっては、上記蛇腹装置を装着することが不能となる場合があり、この結果加工装置の形状や構造を変更しなければならない。
そこで、本発明は、こうした従来の蛇腹装置が有する課題を解決するために提案されたものであって、蛇腹本体が最も縮小された場合であっても、該蛇腹本体の最も一端側又は他端側に配置された保護装置が突出することがなく、加工装置の構造や形状を何ら変更することなく装着することが可能となり、ひいては極めて汎用性の高い新規な蛇腹装置を提供することを目的とするものである。
上述した目的を達成するため、第1の発明(請求項1記載の発明)は、上端が水平となされた水平部とこの水平部の左右両側から垂下してなる左右の脚部とを有してなるとともに、それぞれ山部と谷部とが交互に形成され伸縮可能に成形されてなる蛇腹本体と、この蛇腹本体の水平部に形成された各山部近傍に固定された保護部材と、を備え、上記保護部材は、上記蛇腹本体の上方に位置し該蛇腹本体の幅と同じか又は該幅よりも長尺となされた長さ及び該蛇腹本体の隣合う山部と山部とが最も離間された際における該隣合う山部と山部との距離よりも長尺な幅を有する天板部と、この天板部の一側から垂下してなる垂下板部と、この垂下板部の下端から折曲され上記天板部と傾斜した状態で対向してなる傾斜板部と、この傾斜板部から折曲され上記蛇腹本体を構成する山部近傍に固定された長方形状の固定板部と、をそれぞれ有してなるとともに、上記個々の天板部は、それぞれ同一の長さ及び幅とされてなる一方、上記個々の垂下板部の高さないし幅は、上記蛇腹本体の一端側から他端側に亘って徐々に短いものとされ、上記個々の傾斜板部の高さないし幅は、該蛇腹本体の一端から他端に亘って徐々に長いものとされ、上記蛇腹本体の最も他端に固定された保護部材は、該保護部材を構成する天板部の先端が該保護部材を構成する固定板部の位置の上方であるか又は上記蛇腹本体の一端側に位置してなることを特徴とするものである。
この第1の発明に係る蛇腹装置では、蛇腹本体に固定された個々の保護部材の形状は、(共通して)天板部,垂下板部,傾斜板部,固定板部を有してなる一方、個々の垂下板部の高さないし幅は、上記蛇腹本体の一端側から他端側に亘って徐々に短いものとされ、上記個々の傾斜板部の高さないし幅は、該蛇腹本体の一端から他端に亘って徐々に長いものとされ、且つ、上記蛇腹本体の最も他端に固定された保護部材は、該保護部材を構成する天板部の先端が該保護部材を構成する固定板部の位置の上方であるか又は上記蛇腹本体の一端側に位置してなることから、該蛇腹本体が最も縮小された際には、該蛇腹本体の最も他端側に固定された保護部材の天板が他端側から突出しない。したがって、この第1の発明に係る蛇腹装置によれば、切断装置,切削装置,穴あけ装置など各種の加工装置の形状や構造を変更する必要性がなく装着することが可能となり、極めて汎用性の高いものとすることができる。
しかも、この第1の発明に係る蛇腹装置では、個々の保護部材を構成する垂下板部の高さないし幅は、上記蛇腹本体の一端側から他端側に亘って徐々に短いものとされてなることから、この蛇腹装置が最も伸長された際も最も縮小された際にも、各天板部は必ず蛇腹本体の一端側から他端側にかけて徐々に低くなるよう傾斜した状態となる。したがって、この蛇腹装置によれば、各天板部に加工装置の使用により発生・飛散した金属屑等が付着した場合であっても、該金属屑は蛇腹本体の一端側から他端側にかけて移動され易く、さらに切削液等が加工時に使用される場合には、該切削液とともに上記金属屑が蛇腹本体の他端側に流れることとなり、より一層天板部と天板部との間から蛇腹本体の水平部に金属屑や切削液が侵入する危険性を抑制することができる。
なお、上記蛇腹装置は、上記切断装置,切削装置,穴あけ装置など各種の加工装置の構造により、必ずしも、蛇腹本体を構成する水平部が水平となされた状態で該加工装着される必要性はなく、該水平部が鉛直方向に位置するように固定されるものであっても良いし、また該水平部が傾斜した状態で固定されるものであっても良い。また、本発明において、山部とは、左右に谷部を有してなる部位を指す。
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記蛇腹本体の一端には、一方のエンドプレートが固定され、該蛇腹本体の他端には、他方のエンドプレートが固定されてなり、上記一方のエンドプレートには、上記蛇腹本体が最も伸長された際、前記個々の保護部材のうちで最も該一方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材を構成する天板部の上部に先端が位置する一方の固定保護板部材が固定され又は一方の固定保護板部が形成され、上記他方のエンドプレートには、上記蛇腹本体が最も伸長された際、前記個々の保護部材のうちで最も該他方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材を構成する天板部の下部に先端が位置する他方の固定保護板部材が固定され又は他方の固定保護板部が形成されてなり、上記蛇腹本体が最も縮小された際、上記保護部材を構成する個々の天板部の全ては、全て上記一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部と上記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部との間に収容されるよう構成されてなることを特徴とするものである。
この第2の発明に係る蛇腹装置では、一方のエンドプレートには、一方の固定保護板部材が固定され又は一方の固定保護板部が形成され、上記他方のエンドプレートには、他方の固定保護板部材が固定され又は他方の固定保護板部が形成されてなる。そして、この一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部は、蛇腹本体が最も伸長された際、前記個々の保護部材のうちで最も該一方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材を構成する天板部の上部に、先端が位置する。また、上記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部には、上記個々の保護部材のうちで最も該他方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材を構成する天板部の下部に、先端が位置する。したがって、蛇腹本体の最も一端側に固定された保護部材の天板部により覆われない(カバーされない)該蛇腹本体の部位を、上記一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部により保護することが可能となり、蛇腹本体の最も他端側に固定された保護部材の天板部により覆われない(カバーされない)該蛇腹本体の部位を、上記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部により保護することが可能となる。
また、この第2の発明では、一方の固定保護板部材等の先端は、蛇腹本体が最も伸長された際に最も一方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材の天板部の上部に位置する一方、上記他方の固定保護板部材等の先端は、最も該他方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材を構成する天板部の下部に位置する。すなわち、この第2の発明では、最も蛇腹本体の一端側に固定された保護部材の天板部の上部には、上記一方の固定保護板部材等の先端が位置していることから、該天板部の先端が異物等の付着により上方に移動するように回動する力が作用しても、上記一方の固定保護板部材等により直接的に該移動が規制され、上記最も蛇腹本体の一端側に固定された保護部材よりも蛇腹本体の他端側に固定された全ての保護部材の上方への移動が間接的に制約される。また、最も蛇腹本体の他端側に固定された保護部材の天板部は、上記他方の固定保護板部材等に直接的に支持され、該保護部材よりも蛇腹本体の一端側に固定された全ての保護部材を構成する天板部は、上記他方の固定保護板部材等に間接的に支持される。したがって、この第2の発明によれば、天板部上に屑等が付着するばかりか、重量を有する異物が不用意に落下した場合であっても、全ての天板部は上記他方の固定保護板部材等により直接的又は間接的に下方から支持されており、蛇腹本体により支持されてはいないことから、蛇腹本体への悪影響が防止できるとともに、上記異物の落下により、該異物に当接した天板部の先端が上方に持ち上がるように回動する力が作用したとしても、該天板部は、間接的に(又は直接的に)上記一方の固定保護板部材等により規制することができる。
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の何れかの発明において、前記保護部材を構成する個々の天板部の左右両側には、前記蛇腹本体を構成する左右の脚部の少なくとも上端側を保護する側板部がそれぞれ形成されてなるとともに、前記一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部並びに前記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部の左右両側には、上記蛇腹本体を構成する左右の脚部の少なくとも上端側を保護する固定側板部がそれぞれ形成されてなることを特徴とするものである。
この第3の発明では、個々の天板部の左右両側には、蛇腹本体を構成する左右の脚部の少なくとも上端側を保護する側板部がそれぞれ形成され、一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部並びに前記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部の左右両側には、上記蛇腹本体を構成する左右の脚部の少なくとも上端側を保護する固定側板部がそれぞれ形成されていることから、上記各側板部又は固定側板部により、蛇腹本体の水平部上に該蛇腹本体の左右両側から金属屑や切削液等が侵入する可能性を防止することができるとともに、該蛇腹本体の脚部の少なくとも上端側を保護することが可能となる。
なお、上記各側板部又は固定側板部は、上記各天板部,一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部,他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部の左右両側に形成されていれば良く、その形状や傾斜角度並びにそれらの長さ等は特に限定されるものではない。特に、これら側板部又は固定側板部の長さは、蛇腹本体を構成する左右の脚部の下端近傍まで達する長さとしても良い。
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1,第2又は第3の何れかの発明において、前記蛇腹本体を構成する左右の脚部の下端には、低摩擦抵抗素材からなるシート体が貼付されてなることを特徴とするものである。
この第4の発明では、蛇腹本体を構成する左右の脚部の下端には、低摩擦抵抗素材からなるシート体が貼付されてなることから、蛇腹本体が最も伸長された際に、左右の脚部の下端が互いに接近するよう変形されこの結果左右の脚部の外側が加工装置に形成された部材に摺接する場合であっても、該部材との摩擦抵抗を低減し、スムーズな蛇腹装置の伸縮動作を実現することができる。なお、上記低摩擦抵抗素材とは、例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂,ポリアセタール樹脂(POM),ABS樹脂,耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)等を挙げることができる。
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る蛇腹装置では、蛇腹本体に固定された個々の保護部材の形状は、(共通して)天板部,垂下板部,傾斜板部,固定板部を有してなる一方、個々の垂下板部の高さないし幅は、上記蛇腹本体の一端側から他端側に亘って徐々に短いものとされ、上記個々の傾斜板部の高さないし幅は、該蛇腹本体の一端から他端に亘って徐々に長いものとされ、且つ、上記蛇腹本体の最も他端に固定された保護部材は、該保護部材を構成する天板部の先端が該保護部材を構成する固定板部の位置の上方であるか又は上記蛇腹本体の一端側に位置してなることから、該蛇腹本体が最も縮小された際には、該蛇腹本体の最も他端側に固定された保護部材の天板が他端側に突出しない。したがって、この第1の発明に係る蛇腹装置によれば、切断装置,切削装置,穴あけ装置など各種の加工装置の形状や構造を変更する必要性がなく装着することが可能となり、極めて汎用性の高いものとすることができる。
しかも、この第1の発明に係る蛇腹装置では、個々の保護部材を構成する垂下板部の高さないし幅は、上記蛇腹本体の一端側から他端側に亘って徐々に短いものとされてなることから、この蛇腹装置が最も伸長された際も最も縮小された際にも、各天板部は必ず蛇腹本体の一端側から他端側にかけて低くなるよう傾斜した状態となる。したがって、この蛇腹装置によれば、各天板部に加工装置により発生・飛散した金属屑等が付着した場合であっても、該金属屑は蛇腹本体の一端側から他端側にかけて移動され易く、さらに切削液等が加工時に使用される場合には、該切削液とともに金属屑が他端側に流れ易くなり、より一層天板部と天板部との間から蛇腹本体の水平部に金属屑や切削液が侵入する危険性を抑制することができる。
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、一方のエンドプレートには、一方の固定保護板部材が固定され又は一方の固定保護板部が形成され、上記他方のエンドプレートには、他方の固定保護板部材が固定され又は他方の固定保護板部が形成されてなる。そして、この一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部は、蛇腹本体が最も伸長された際、前記個々の保護部材のうちで最も該一方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材を構成する天板部の上部に、先端が位置する。また、上記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部には、上記個々の保護部材のうちで最も該他方のエンドプレートに近い位置に固定された保護部材を構成する天板部の下部に、先端が位置する。したがって、蛇腹本体の最も一端側に固定された保護部材の天板部により覆われない(カバーされない)該蛇腹本体の部位を、上記一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部により保護することが可能となり、蛇腹本体の最も他端側に固定された保護部材の天板部により覆われない(カバーされない)該蛇腹本体の部位を、上記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部により保護することが可能となる。
また、この第2の発明では、最も蛇腹本体の一端側に固定された保護部材の天板部の上部には、上記一方の固定保護板部材等の先端が位置していることから、該天板部の先端が上方に移動するように回動する力が作用しても、上記一方の固定保護板部材等により直接的に該移動が規制され、上記最も蛇腹本体の一端側に固定された保護部材よりも蛇腹本体の他端側に固定された全ての保護部材の上方への移動が間接的に制約される。また、最も蛇腹本体の他端側に固定された保護部材の天板部は、上記他方の固定保護板部材等に直接的に支持され、該保護部材よりも蛇腹本体の一端側に固定された全ての保護部材を構成する天板部は、上記他方の固定保護板部材等に間接的に支持される。したがって、この第2の発明によれば、天板部上に屑等が付着するばかりか、重量を有する異物が不用意に落下した場合であっても、全ての天板部は上記他方の固定保護板部材等により直接的又は間接的に下方から支持されており、蛇腹本体により支持されてはいないことから、蛇腹本体への悪影響が防止できるとともに、上記異物の落下により、該異物に当接した天板部の先端が上方に持ち上がるように回動する力が作用したとしても、該天板部は、間接的に(又は直接的に)上記一方の固定保護板部材等により規制することができる。
また、第3の発明(請求項3記載の発明)では、個々の天板部の左右両側には、蛇腹本体を構成する左右の脚部の少なくとも上端側を保護する側板部がそれぞれ形成され、一方の固定保護板部材又は一方の固定保護板部並びに前記他方の固定保護板部材又は他方の固定保護板部の左右両側には、上記蛇腹本体を構成する左右の脚部の少なくとも上端側を保護する固定側板部がそれぞれ形成されていることから、上記各側板部又は固定側板部により、蛇腹本体の水平部上に該蛇腹本体の左右両側から金属屑や切削液等が侵入する可能性を防止することができるとともに、該蛇腹本体の脚部の少なくとも上端側を保護することが可能となる。
また、第4の発明(請求項4記載の発明)では、蛇腹本体を構成する左右の脚部の下端には、低摩擦抵抗素材からなるシート体が貼付されてなることから、蛇腹本体が最も伸長された際に、左右の脚部の下端が互いに接近するよう変形されこの結果左右の脚部の外側が加工装置に形成された部材に摺接する場合であっても、該部材との摩擦抵抗を低減し、スムーズな蛇腹装置の伸縮動作を実現することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態に係る蛇腹装置1を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態に係る蛇腹装置1は、半導体ウェーハを切断する図示しない加工装置に装着されるものである。なお、この加工装置は、半導体ウェーハを上面において保持するテーブルと、このテーブルを左右方向(この蛇腹装置1の伸縮方向)に駆動する駆動機構と、上記テーブルの移動空間の両側に位置する一方及び他方の固定部材とから概略構成されてなるものであり、この実施の形態に係る蛇腹装置1は、上記テーブルの左右両側にそれぞれ装着されるものである。
この蛇腹装置1は、図1に示すように、蛇腹本体2と、この蛇腹本体2に固定された保護部材としてのスラット群3とを備えている。上記蛇腹本体2は、図2に示すように、該蛇腹本体2の上面を形成する水平部2aと、この水平部2aの左側から垂下してなる左脚部2bと、上記水平部2aの右側から垂下してなる右脚部2cとから構成されたいわゆる門型形状に成形されたものである。そして、この蛇腹本体2は、図示しない複数枚貼付された樹脂製シート(符号は省略する。)が上記門型に折曲されるとともに、図1及び図2に示すように、上記水平部2a,左脚部2b及び右脚部2cにそれぞれ山部2d及び谷部2eが交互に形成されるよう折曲されてなるものである。なお、上記左脚部2b及び右脚部2cの下端側には、超高分子量ポリエチレン樹脂を素材とした低摩擦抵抗シート4が貼付されている(図1及び図2参照)。この低摩擦抵抗シート4は、上記蛇腹本体2の素材となる樹脂製シートを折曲する前段階において、該樹脂製シートの左右両側に、該樹脂製シートの両端を覆うように貼付されたものである。
また、上記蛇腹本体2を構成する左脚部2bの内側と、右脚部2cの内側には、それぞれ水遮断部材5,6が貼付されている(図2参照)。これら水遮断部材5,6は、この蛇腹装置1が伸縮動作を繰り返す際に、切削液が蛇腹本体2内において上方に跳ね上げられることを防止するものである。すなわち、この蛇腹装置1が装着される上記加工装置は、上記半導体ウェーハが切断される際に切削液が使用され、該加工装置には、テーブルや蛇腹装置1の上面を通過した切削液が流入する切削液流入溝が左右に形成されており、該蛇腹本体2を構成する上記左脚部2b及び右脚部2cの下端側は、この切削液流入溝内に位置した状態で伸縮動作を繰り返すことから、上記水遮断部材5,6は、その際に、切削液が蛇腹本体2内において上方に跳ね上げられることを防止するものである。また、上記蛇腹本体2の水平部2aの下面であって左側には、図2及び図4に示すように、左制限テープ7が貼付され、右側には右制限テープ8が貼付されている。これら左制限テープ7及び右制限テープ8は、蛇腹本体2が一定以上伸長された場合において緊張され、それ以上該蛇腹本体2が伸長することを防止するものである。
そして、上記蛇腹本体2の一端には、図1及び図5に示すように、一方のエンドプレート10が固定されている。この一方のエンドプレート10は、鉄又はステンレススチール等の金属材料からなるものであり、上記蛇腹本体2の幅とほぼ同じ長さを有し、その高さは該蛇腹本体2の上面よりも上方に突出してなる一方の固定板部10aと、この一方の固定板部10aの上端から逆U字状に蛇腹本体2の他端側に折曲されてなるU字状部10bとから構成されている。なお、この一方のエンドプレート10は、図5に示すように、蛇腹本体2の最も一端側の部位の内側に配置した押さえ板11と上記一方の固定板部10aとにより該蛇腹本体2の樹脂シートを挟んだ状態でネジ12により固定されている。そして、上記U字状部10bの下向きとされた部位には、5つのネジ13(図4参照)により一方の固定保護板部材15が固定されている。この一方の固定保護部材15は、図1及び図5に示すように、一方の固定天板部15aと、この固定天板部15aの左端から折曲され斜め下方に傾斜してなる固定左側板部15bと、上記固定天板部15aの右端から折曲され斜め下方に傾斜してなる固定右側板部15c(図4参照)と、上記固定天板部15aの一端(図5中左側端部)が上方に起立するように折曲されてなる起立板部15dとから構成されている。なお、上記固定天板部15aの先端は、図5に示すように、上記固定左側板部15bや固定右側板部15cの端部よりも蛇腹本体2の他端側に突出しているとともに、やや下方に折曲されている。そして、この一方の固定保護板部材15は、上記起立板部15dが上記5つのネジ13により上記U字状部10bに固定されている。なお、上記一方のエンドプレート10の外側面には、この蛇腹装置1と図示しない加工装置との密着性を向上させるとともに該加工装置を構成するテーブルの駆動に伴い伸縮する蛇腹装置1の振動ないし騒音を吸収するゴム又は発砲樹脂を素材とする弾性板16が固定されている。
また、上記蛇腹本体2の他端には、図1に示すように、他方のエンドプレート20が固定されている。この他方のエンドプレート20は、上記一方のエンドプレート10と同じ素材からなるものであり、該蛇腹本体2の他端に固定され該蛇腹本体2を構成する水平部2aの幅とほぼ同じ長さを有してなる(図4参照)とともに、その高さは、図6に示すように、該蛇腹本体2の高さよりもやや上方に突出してなる他方の固定板部20aと、この他方の固定板部20aの上端から上記一方のエンドプレート10側に折曲されてなる他方の固定保護板部20bと、上記他方の固定板部20aの左端の上端側中途部から上記他方の固定保護板部20bの左端に亘って配置された固定左側板部20cと、上記他方の固定板部20aの右端の上端側中途部から上記他方の固定保護板部20bの右端に亘って配置された固定右側板部20d(図4参照)と、から構成されている。上記他方の固定板部20aは、図6に示すように、上記蛇腹本体2の内側に配置された押さえ板21により該蛇腹本体2の樹脂シートを挟んだ状態でネジ22により固定されている。また、上記他方の固定保護板部20bは、ほぼ水平か又は基端側が低くなるよう僅かに傾斜してなるものであるとともに、その高さは、上記一方のエンドプレート10に固定された一方の固定保護部材15の固定天板部15aよりも低い高さとされている。すなわち、この他方の固定保護板部20bの高さと上記固定天板部15aの高さとの位置関係は、後述するように、蛇腹装置1が最も収縮した際、この他方の固定保護板部20bの上面と上記一方の固定保護部材15を構成する固定天板部15aの下面との間に後述する個々の保護部材を構成する天板部の全てが収容される位置関係とされている。
そして、上述のように構成された蛇腹本体2の水平部2aに形成された各山部2dには、図1に示すように、上記スラット群3(第1から第13のスラット30・・・42)が固定されている。以下、これらのスラット群3を構成する個々のスラット30・・・42について詳細に説明する。これら各スラット30・・・42には、図3に示すように、それぞれ共通して、蛇腹本体2の水平部2aの上方に位置している天板部30a・・・42aと、この天板部30a・・・42aから垂下してなる垂下板部30b・・・42bと、この垂下板部30b・・・42bの下端から折曲され上記天板部30a・・・42aと傾斜した状態で対向してなる傾斜板部30c・・・42cと、この傾斜板部30c・・・42cから折曲され上記蛇腹本体2を構成する山部2d(図5参照)の近傍に固定された固定板部30d・・・42dと、上記天板部30a・・・42aの左端から下方に傾斜してなる左側板部30e・・・42e(図4参照)と、上記天板部30a・・・42aの右端から下方に傾斜してなる右側板部30f・・・42f(図4参照)とから構成されている。
上記個々の天板部30a・・・42aは、図4に示すように、それぞれ蛇腹本体2の幅と同じか又は該幅よりも長尺となされた長さと、該蛇腹本体2に形成された隣合う山部2dと山部2dとが最も離間された際における該隣合う山部2dと山部2dとの距離よりも長尺な幅を有する長方形状に成形されてなる。なお、これらの天板部30a・・・42aの先端側の中途部は、先端が下方に向くようやや折曲されている(図5及び図6参照)。したがって、例えば、上記一方のエンドプレート10に最も近い第1のスラット30の天板部30aの先端側は、第2のスラット31の天板部31a上に必ず位置するとともに、この蛇腹装置1の伸縮動作に伴い、先端は該第2の天板部31a上を摺接し、この第2のスラット31の天板部31aの先端は第3のスラット32の天板部32a上を摺接する、というように縮小方向に隣合う天板上を摺接する。そして、上記個々の天板部30a・・・42aの幅(蛇腹本体2の伸縮方向の長さ)は全て同一とされてなる一方、長さ(蛇腹本体2の伸縮方向と直行する方向の長さ)は、上記第1のスラット30を構成する天板部30aが最も長く、次いで第2・・・第12のスラット31・・・41の天板部31a・・・41aは徐々に短いものとされ、第13のスラット42を構成する天板部42aは最も短いものとされている。但し、これら各天板部30a・・・42aの長さは、上記各左側板部30e・・・42eや右側板部30f・・・42fの傾斜角度(天板部30a・・・42aに対する左側板部30e・・・42eや右側板部30f・・・42fの傾斜角度)が広ければ広い程、同一の長さとすることも可能である。
また、図3に示すように、上記個々の天板部30a・・・42aから垂下してなる垂下板部30b・・・42bは、全ての第1ないし第13のスラット30・・・42に共通してそれぞれ長方形状に成形されている。但し、これら個々の垂下板部30b・・・42bの長さは、上記天板部30a・・・42aの長さに対応したものとされ、その一方、高さないし幅は、第1のスラット30を構成する垂下板部30bが最も長く、第13のスラット42を構成する垂下板部42bに至るまで徐々に均等に短いものとされている。また、上記傾斜板部30c・・・42cは、垂下板部30b・・・42bの下端から折曲されてなるとともに、上記天板部30a・・・42aと傾斜した状態で対向してなり、その形状は長方形状とされている。そして、これら個々の傾斜板部30c・・・42cの長さは、それぞれ上記天板部30a・・・42aの長さに対応しており、その一方、幅ないし高さは、第1のスラット30を構成する傾斜板部30cが最も短く、第13のスラット42を構成する傾斜板部42cに至るまで徐々に均等に長いものとされている。また、上記各固定板部30d・・・42dは、上記個々の傾斜板部30c・・・42cから折曲され上記蛇腹本体2を構成する各山部2dの近傍に固定されている部位であり、全体形状は長方形状に成形されている。なお、これら第1ないし第13の保護部材30・・・42は、上記各固定板部30d・・・42dが蛇腹本体2の外側に配置されるとともに該蛇腹本体2の内側には、該固定板部30d・・・42dの長さよりもやや短いスラット固定プレート45が配置され、これら固定板部30d・・・42dとスラット固定プレート45とにより各山部2dの上端側を挟んでそれぞれネジ又はリベット46(図5参照)により両者を固定した構造で固定されている。また、天板部30a・・・42aの左端から下方に傾斜してなる左側板部30e・・・42eと、上記天板部30a・・・42aの右端から下方に傾斜してなる右側板部30f・・・42fとは、それぞれ同一の形状とされている。
そしてさらに、図6に示すように、上記他方のエンドプレート20に最も近い第13のスラット42は、その構成要素である天板部42aの先端位置が、上記固定板部42dの配置位置(最も他端側に形成された山部2dの位置)の上方よりも僅かに一方のエンドプレート10側に位置しているとともに、上記他方のエンドプレート20を構成する他方の固定保護板部20b上に位置している。
したがって、上述したこの実施の形態に係る蛇腹装置1を、例えば、上記一方のエンドプレート10を介して図示しないテーブルに固定する一方、他方のエンドプレート20を図示しない固定部材に固定する(とともにもう一つの蛇腹装置1を上記テーブルと他方の固定部材に固定する)ことにより、図示しない加工装置に装着し、この状態において上記テーブルが図示しない駆動機構により移動して、図1及び図4に示すように、該蛇腹装置1が最も伸張された際、及び、図7に示すように、最も縮小された際も、蛇腹本体2の上方は、上記一方のエンドプレート10に固定された一方の固定保護部材15の固定天板部15aと、上記スラット群3(第1ないし第13のスラット30・・・42)を構成する各天板部30a・・・42aと、上記他方のエンドプレート20を構成する他方の固定保護板部20bとにより保護される。また、蛇腹本体2の左側は、上記固定左側板部15bと、第1ないし第13のスラット30・・・42を構成する左側板部30e・・・42eと、他方のエンドプレート20を構成する左側板部20cにより保護される。また、蛇腹本体2の右側は、上記固定右側板部15cと、第1ないし第13のスラット30・・・42を構成する右側板部30f・・・42fと、他方のエンドプレート20を構成する右側板部20dにより保護される。このとき、上記一方のエンドプレート10に固定された一方の固定保護部材15の固定天板部15aは、最も高いところに位置し、上記第1ないし第13のスラット30・・・42を構成する天板部30a・・・42aは徐々に下方に傾斜しており、上記他方のエンドプレート20を構成する他方の固定保護板部20bは最も低いとことに位置している。すなわち、一方の固定保護部材15の固定天板部15aから他方の固定保護板部20bに至るまでは傾斜していることから、例えば、加工装置により加工する際に切削液が使用された場合、この切削液は、上記他方のエンドプレート20側に移動する。
そして、図1に示すように、該蛇腹装置1が最も伸張された状態から、上記テーブルが駆動機構により駆動して、該蛇腹装置1が徐々に縮小されて行くと、一方の固定保護部材15の固定天板部15aは、第1のスラット30を構成する天板部30a上を他方のエンドプレート20側に移動し、該第1のスラット30を構成する天板部30aも、第2のスラット31の天板部31a上を同じように移動し、図7に示すように、蛇腹装置1が最も縮小された場合には、他方のエンドプレート20を構成する他方の固定保護板部20b上に第13のスラット42の天板部42aのほぼ全体が移動し、この天板部42a上に第12のスラット43の天板部43aのほぼ全体が移動するというように、ほぼ全ての天板部30a・・・42aが、他方の固定保護板部20bと一方の固定保護部材15の固定天板部15aとの間に収容され、上記第13のスラット42の天板部42aの先端は勿論、第1ないし第12のスラット30・・・41を構成する天板部30a・・・41aも上記他方の固定板部20aよりも図7中左側に突出しない。また、上記各天板部30a・・・42aの先端側は、該各天板部30a・・・42aの先端が下方に向くようにやや折曲されていることから、上記蛇腹装置1の縮小動作により、各天板部30a・・・42a上に付着した塵埃や屑を他方のエンドプレート20側に掻きながら移動させられる。
また、上述した蛇腹装置1では、蛇腹本体2を構成する左脚部2b及び右脚部2cの下端には、前述した低摩擦抵抗シート4がそれぞれ貼付されていることから、図7に示すように、蛇腹装置1が最も縮小した状態から、図1に示すように、最も伸張される際に、該左脚部2bと右脚部2cとの下端が互いに接近するよう変形し、この結果、図示しない加工装置の板に摺接することとなった場合であっても、該蛇腹装置1の伸縮動作に影響を受けないことは勿論、摩擦による異音の発生や破れなどを有効に防止することができる。
なお、上記実施の形態に係る蛇腹装置1では、固定左側板部15b,左側板部30e・・・42e,左側板部20cや、固定右側板部15c,右側板部30f・・・42f,右側板部20dをそれぞれ構成要素としたが、本発明は必ずこれらの要素を構成しなければならないものではない。また、上記実施の形態に係る蛇腹装置1では、本発明の構成要素である一方の固定保護板部材として、一方のエンドプレート10とは別体である上記一方の固定保護板部材15又はこの一方の固定保護板部材15を構成する固定天板部15aを図示して説明したが、本発明では、上記一方のエンドプレート10の構成要素として、一方の固定保護部が形成されているものであっても良い。また、上記実施の形態に係る蛇腹装置1では、本発明の構成要素である他方の固定保護板部として、他方のエンドプレート20に他方の固定保護板部20bを形成したものを図示して説明したが、本発明を構成する上記他方の固定保護板部材が、上記他方のエンドプレート20に、該他方のエンドプレート20とは別体の固定保護板部材を固定したものであっても良い。