JP4956265B2 - 板状結晶のBaTiO3を含むグリーンシート及びその製造方法 - Google Patents

板状結晶のBaTiO3を含むグリーンシート及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セラミックス電子部品等の形成に用いる板状結晶のBaTiO、その前駆体、それらの製造方法及びそのBaTiOを用いたグリーンシートに関する。
近年、この種電子部品は小型化・高集積化が進み、これに用いる誘電体材料として、殊に、BaTiO3は高誘電率を有し、かつPbを含まず、地球環境にも優しい材料であることから、多数のセラミックス基板を積層した積層セラミックコンデンサをはじめとした様々なデバイスに用いられている
前記セラミックス基板は、例えば特許文献1に開示されているように、グリーンシートを出発材料として形成される。このグリーンシートはセラミックス粉末と有機バインダーと有機溶剤を混練してスラリー化し、このスラリーをシート状に成形して作製される。
積層セラミックコンデンサなどの電子デバイスにおいて高容量化を実現するために、誘電体層の薄層化が求められており、そのためにはグリーンシートをより薄型化する必要がある。
グリーンシートの薄型化には、シートに含有されるBaTiOの誘電体粒子の粒子サイズが大きく影響するので、粒子サイズの小型化が有効である。
従来、大型のBaTiO粒子を高温合成した後、粉砕処理により粒径を減少して、シート原料粉末に加工していた。
しかしながら、粉砕処理によるBaTiO微粒子の製造過程において、不定形粒子が多く発生してしまうため、均一粒子形態に制御するのが難しいといった問題があった。
一方、かかる薄型化の実現手段として、誘電体粒子自体の微細化がある。例えば、BaTiOのナノ粒子化が提案されているが、高温焼結処理時における粒子の蒸発、粒成長や粒子どうしの凝集といった問題が発生した。特に、粒径を減少すると、誘電特性が劣化する問題を生じていた。非特許文献1に開示されているように、BaTiOの強誘電性セラミックスは、それらの粒径が減少するとき、その強誘電性が低下し、臨界サイズで強誘電性を失う。
特開平9−283369号公報 Y.Sakabe,Y.Yamashita,H.Yamamoto,Journal of the European Ceramic Society 2005,25,2739
グリーンシートは、シート原料材を塗布し、印刷技術を用いて均一膜に成形されるが、薄膜成形を行うためには、グリーンシートに含有させるBaTiO粒子が、膜厚方向に薄く、シート面内方向には大きなサイズを有するのが好ましい。しかしながら、BaTiOは高温で立方晶、室温で正方晶といった等方性結晶構造を具備するため、BaTiO粒子自体の結晶形態を制御するのは極めて困難であった。
従って、この発明の目的は、粉砕による不定形粒子が発生せず、厚さ方向に薄い扁平形状で、かつ大きいサイズの結晶面を具備し、グリーンシートの薄型化を実現することのできるBaTiO及びBaTiO前駆体を提供することにある。また、この発明の目的は、かかるBaTiO及びBaTiO前駆体の製造方法を提供することである。更に、この発明の目的は、かかるBaTiOを用いて薄膜化を実現できるグリーンシートを提供することである。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、BaTiOの前駆体であって、板状結晶形態を有するBaTiOFからなるBaTiOの前駆体である。
本発明の第2の形態は、板状結晶形態を有するBaTiOFを加熱処理することにより製造され、かつ板状結晶形態を有するBaTiOである。
本発明の第3の形態は、(NHTiFと、Ba(NOと、HBOとを溶解させた混合水溶液を作製し、その混合水溶液に水溶性カチオンポリマーを添加し、板状結晶形態に結晶成長させたBaTiOFからなるBaTiO前駆体を製造するBaTiO前駆体の製造方法である。
本発明の第4の形態は、前記第3の形態において、前記混合水溶液のpHが1.8又はその近傍であるBaTiO前駆体の製造方法である。
本発明の第5の形態は、前記第3の形態において、前記水溶性カチオンポリマーがポリアクリルアミド(Polyacrylamide:以下、PAAという。)であるBaTiO前駆体の製造方法である。
本発明の第6の形態は、板状結晶形態を有するBaTiOFからなるBaTiO前駆体を加熱処理することにより、板状結晶形態を有するBaTiOを製造するBaTiOの製造方法である。
本発明の第7の形態は、誘電体粒子と、有機バインダーと、有機溶剤とを混合して調製したスラリーをシート状に形成したグリーンシートにおいて、前記誘電体粒子が、板状結晶形態を有するBaTiOFを加熱処理することにより製造され、かつ板状結晶形態を有するBaTiOからなるグリーンシートである。
本発明者は、BaTiO粒子結晶の形態制御を研究課題として鋭意検討した結果、厚さ方向に薄い扁平形状で、かつ大きいサイズの結晶面を具備し、グリーンシートの薄型化を実現することのできる新規物質である、板状結晶BaTiO及びそのBaTiO前駆体の生成に成功した。
本発明の第1の形態に係るBaTiO前駆体は、板状結晶形態を有するBaTiOFからなる新規物質である。BaTiOFは、Ba:Ti=1:1の組成を備え、しかも軽元素であるO、F以外にはBaとTiを含むだけであるので、加熱処理により単相BaTiOへと相転移させることが可能となる。また、BaTiOFは、PAA等の有機物の添加により結晶成長を制御可能であり、板状結晶化を実現でき、反応時間の短縮化により粒子の微細化も可能となる。従って、本第1の形態に係るBaTiO前駆体を用いて、厚さ方向に薄い扁平形状で、かつ大きいサイズの結晶面を具備し、グリーンシートの薄型化を実現することのできる板状結晶BaTiOを生成することができる。
本発明の第2の形態に係るBaTiOは、板状結晶形態を有するBaTiOFを加熱処理することにより製造され、かつ板状結晶形態を有する新規物質であり、殊に、グリーンシートの薄膜化に寄与して、積層セラミックコンデンサなどの電子デバイスにおける小型化、薄型化及び高容量化を実現することができる。
本発明者は、液相析出法(LPD法:Liquid Phase Deposition)を用いて、前記第1の形態に係るBaTiO前駆体の合成に成功した。即ち、本発明の第3の形態によれば、フッカチタン酸アンモニウム([NHTiF)、硝酸バリウム(Ba(NO)及びホウ酸(HBO)を溶解させた混合水溶液を作製し、その混合水溶液に水溶性カチオンポリマーを添加し、板状結晶形態に結晶成長させたBaTiOFからなるBaTiO前駆体を製造するので、前記水溶性カチオンポリマー(有機物質)の添加による、有機・無機界面における分子認識作用(以下、この作用を有機・無機相互作用という。)を利用して、板状BaTiOFからなるBaTiO前駆体を製造でき、しかも結晶形態を制御可能となる。
本発明者は、前記LPD法によるBaTiO前駆体の合成において、前記混合水溶液のpHの調整により結晶形態を制御できる知見を得た。即ち、本発明の第4の形態によれば、前記混合水溶液のpHを1.8又はその近傍に調製して、板状BaTiOFからなるBaTiO前駆体を高精度に製造することができる。
本発明の第5の形態によれば、前記LPD法によるBaTiO前駆体の合成において、前記水溶性カチオンポリマーとしてポリアクリルアミド(PAA)を使用することにより、特定結晶面へのPAA分子吸着による結晶成長阻害効果を利用して異方成長を促進して、板状結晶のBaTiOFを製造することができる。
本発明の第6の形態によれば、板状結晶形態を有するBaTiOFからなるBaTiO前駆体を加熱処理することにより、板状結晶形態を有するBaTiOを製造することができる。
本発明の第7の形態によれば、誘電体粒子と、有機バインダーと、有機溶剤とを混合して調製したスラリーをシート状に形成したグリーンシートにおいて、前記誘電体粒子が、板状結晶形態を有するBaTiOFを加熱処理することにより製造され、かつ板状結晶形態を有するBaTiOからなるので、セラミックス電子部品に用いることにより、薄型化、小型化及び高容量化を実現することができる。
なお、本発明者によるBaTiO前駆体の合成実験によれば、BaTiOF粒子は加熱処理による相転移の際に凝集する場合がある。従って、例えば、積層セラミックスコンデンサの作製においては、BaTiOF粒子を加熱処理して、予め合成したBaTiOをグリーンシートに用いるよりは、BaTiOF粒子を用いてグリーンシートを作製し、シートの積層の後に焼成処理してBaTiOに相転移させる製造プロセスが好ましい。前記凝集が発生しない条件下では、予め合成したBaTiOをグリーンシートに用いることができる。
本発明者は、BaTiOの結晶形態制御に関する研究開発を通じて、BaTiOの先駆体、つまり、BaTiOFが、正方晶又は立方晶の結晶構造を有し、Ba: Ti=1:1の組成比で、他の金属イオンを含まず、単相BaTiOに変換することができること、及び、BaTiOFが、Ba: Ti=1:1の組成比と異方性の斜方晶の結晶構造を具備し、有機・無機相互作用により、結晶形態を可変できる点に着目した。
以下、各種合成研究の過程に沿って、本発明の実施形態に係るBaTiO及びBaTiOFとそれらの製造方法を説明する。
まず最初に、多針のBaTiOF粒子を合成してから、その結晶粒子を、溶液pHの調整により、多面体の結晶形態に変えることに成功した。次に、PAA(ポリアクリルアミド)のような有機分子を板状粒子への形態制御のために添加した。多面体BaTiOFの大きい平坦な結晶面は、PAA分子の吸着に使用され、その平坦面に垂直な方向に結晶成長が進行するのを抑制できることが判明した。即ち、PAAの添加効果により、BaTiOF含有の水溶液から板状粒子を得ることができた。ついで、この板状BaTiOF粒子をアニーリング(加熱処理)によって単相BaTiO粒子に変換することに成功した。これらの研究成果から得られたBaTiOF粒子、つまりBaTiO先駆体は、大きい平坦な結晶面を具備した、扁平な板状粒子であり、これをグリーンシートの誘電体材料として用いて、積層セラミックスコンデンサ(以下、MLCCという。)等の電子部品における小型化、薄型化及び高容量化を実現することができる。殊に、有機・無機相互作用による粒子の形態制御は、次世代デバイス製作の開発だけでなく、高精度に結晶成長を制御できる結晶成長技術として多くの分野で利用することができる。
以下、本発明に係る結晶合成の実施例を図面を参照して詳述する。
<針状BaTiOF粒子の合成>
まず、本発明に係るBaTiOFの合成成功に至る過程で作製した針状BaTiOF粒子の合成実験について説明する。
本実験における結晶合成はLPD(液相析出)法に基づいて行った。フッカチタン酸アンモニウム([NHTiF、0.15M(M:mol/l))、硝酸バリウム(Ba(NO、0.05M)及びホウ酸(HBO、0.15M)を蒸留水に溶解させた。この混合溶液はBaTiOF粒子の均一核生成により白濁した。この溶液はpH2.8で、70℃で20時間保持した。
上記混合溶液において、BaTiOFの沈殿物が以下の化学反応式に基づいて生成される。
(a)(NHTiF → 2NH +TiF 2−
(b)Ba(NO → Ba 2+ +2NO
(c)TiF 2−+2HO →(又は←)TiF(OH) 2−+2H+2F(d)HBO+3H+4F → BF +3H
(e)Ba2++TiF(OH) 2− → BaTiF(OH)
BaTiOF
BaTiOF単相は反応式(e)により形成される。この合成における利点は、BaTiOの先駆体、即ち、BaTiOFがBa:Ti=1:1の組成比を有することである。従って、アニーリングにより、何ら他の金属イオンが付加されることなく、BaTiOの単相を作製することが可能となる。
上記沈殿生成物は、XRD(X−ray Diffraction:X線回折装置)測定により、図1の(a)に示すように、斜方晶のBaTiOF結晶であることが判明した。XRD回折像は、BaTiOFについてのJCPDS(Joint Committe on Powder Diffraction Standards:無機・有機化合物のX線回折データベース)データNo.28−0161に一致していた。図1では、JCPDSデータの強度は複数種のBaTiOFを明確に理解するために共通の対数目盛りによって表示している。生成物からの3本の強い回折線がJCPDSデータ中に現れている。なお、本実施形態において使用したX線回折装置(RINT−2100;理学製XRD)においては、CuKα線(40kV、30mA)を使用して測定した。
図2の写真(a)に示すように、SEM(走査型電子顕微鏡S−3000N;日立製)によって、直径3−5μmのBaTiOFは多針結晶粒子であることが観察された。本実施形態における合成実験の結晶成長システムにおいて、速い結晶成長速度は多針結晶粒子を得ることになる。SEMに付設されたEDX(Energy Dispensive X−ray Analysis:エネルギー分散型X線分析装置、EDAX Falcon;EDAX製)分析により、構成元素として、Ba、Ti、O及びFが検出され、(Ba:Ti)の組成比は1:1と見積もられた。このEDX分析により見積もられた組成比は、XRDによる分析結果と一致した。
<多角体BaTiOF粒子の合成>
次に、結晶成長速度を遅くすることにより、平坦な結晶面を有するBaTiOF粒子の合成を試みた。
本実験における結晶合成は上記針状結晶の場合と同様に、LPD法に基づいて行った。フッカチタン酸アンモニウム([NHTiF、0.05M)、硝酸バリウム(Ba(NO、0.05M)及びホウ酸(HBO、0.15M)を蒸留水に溶解させた。この混合溶液はBaTiOF粒子の均一核生成により白濁した。その後、硝酸(HNO、1M)を添加して、析出物を完全に溶解させた結果、溶液は透明になり、pHは2.8から1.8に減少した。この溶液は70℃で20時間保持した。析出物BaTiOFは上記多針体粒子の合成と同様の反応式で進行すると考えられる。
低pH1.8の溶液条件下においては、反応式(c)に示すTiF(OH) 2−の生成が高いH濃度により抑制されるため、高pH2.8の溶液条件の場合と比べて、ゆっくりBaTiOFの結晶が成長した。このとき得られた生成物は、XRD測定により、図1の(b)に示すように、斜方晶のBaTiOF単相であることが判明した。
この生成物からの3本の強い回折線がJCPDSデータ中に現れている。生成物のXRD回折のピーク位置はBaTiOFについてのJCPDSデータNo.28−0161に一致したが、相対的な強度はJCPDSデータと大きく異なっており、生成した粒子が強く異方成長していることを示した。これは、pH2.8の速い結晶成長条件と、pH1.8の遅い結晶成長条件では、優先成長する結晶面が異なることによるものと考えられる。SEM観察からは、図2の(b)に示すように、粒径5〜10μm(Φ)の多面体粒子が観察された。粒子のEDX分析結果からは、構成元素として、Ba、Ti、O及びFが検出され、(Ba:Ti)の組成比は1:1と見積もられた。このEDX分析により見積もられた組成比は、XRDによる分析結果と一致した。
<板状BaTiOF粒子の合成>
本実施形態における板状BaTiOF粒子の合成実験を説明する。
上記針状結晶及び多角体結晶の場合と同様に、フッカチタン酸アンモニウム([NHTiF、0.05M)、硝酸バリウム(Ba(NO、0.05M)及びホウ酸(HBO、0.15M)を蒸留水に溶解させた。この混合溶液はBaTiOF粒子の均一核生成により白濁した。その後、硝酸を1Mとなるように添加し、析出物を完全に溶解させた結果、溶液は透明になり、pHは2.8から1.8に減少した。更に、PAA(ポリアクリルアミド)の有機分子を0.1g/l、溶液に添加した後、70℃で5〜20時間保持した。
図4はBaTiOF粒子のSEM写真であり、(4a)、(4b)はそれぞれ、有機物添加なしと、PAA添加の結晶状態を示す。
PAAは正極性を有する水溶性カチオンポリマーであり、水溶液中では高い粘性を備えている。生成物のピーク位置と相対的な強度はXRD測定による評価した結果は、図1の(c)に示すように、多面体粒子と同様のものであった。有機物(分子)の添加による生成粒子は単相の斜方晶のBaTiOF結晶であり、高い配向性を示した。生成物の回折線のうち、最強線の3本がJCPDSデータ中に現れている。高い配向性は、pH2.8の速い結晶成長条件と、pH1.8の遅い結晶成長条件では、優先成長する結晶面が異なることによるものと考えられる。SEM観察により、図3の(c1)と(c2) に示すように、生成粒子が2.5×2.5×1μmから12×12×4μmの間の粒径を持つ扁平な板状粒子であることが示された。この粒径の制御は反応時間を可変して容易に行うことができる。粒子のEDX分析結果からは、構成元素として、Ba、Ti、O及びFが検出され、見積もられた組成比(Ba:Ti=1:1)は、XRDによる分析結果と一致した。
添加されたPAA分子は平坦な結晶面に吸着されることにより、有機・無機相互作用が働いて、垂直な方向に結晶成長が進行するのを抑制する抑制効果を生ずる。その結果、平坦な結晶面に平行に結晶成長が進行し、その結晶は板状結晶形態になる。従って、特定の結晶面における有機分子の吸着によって生ずる有機・無機の相互作用は微細粒子の形態制御に有効であることも判明し、種々の結晶製作に適用することが可能である。
<BaTiOF粒子への有機分子の影響>
PAAと他の有機物の添加による有機・無機相互作用の比較実験を行った。PAA添加に対比するために、これと異なる有機分子、PVA(ポリビニル・アルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)、L・エジプトコブラ(L・アスパラギン酸)、Gly(アミノ酸)又はL・Arg(L・アルギニン)をそれぞれ、PAAの代わりに、0.1g/l、0.1g/l、0.05M、0.05M、0.05M、上記PAAの溶液条件下で、つまり、フッカチタン酸アンモニウム([NHTiF、0.05M)、硝酸バリウム(Ba(NO、0.05M)及びホウ酸(HBO、0.15M)を蒸留水に溶解させ、更に硝酸(1M)を加えた混合溶液中に添加した。この溶液は70℃で5時間保持された。
この比較実験から、PAA添加により得られたBaTiOF粒子は、PAA以外の上記の有機分子を含む溶液からは得られなかった。本実施形態において使用した、PAAは水溶液中で大きい粘性を有する水溶性カチオンポリマー(〔-CHCHCONH-〕:Cas No.9003−05−8(粉末);岸田化学製;12万5000〜14万個の分子量で、分子重量90万〜100万である。)である。
一方、PVAとPEGも水溶性ポリマーであるが、それらは、陰イオン性又は非イオン性である。また、L・エジプトコブラ、Gly及びL・Argはそれぞれ、酸性アミノ酸、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸である。更に、PAAはpH1.8で、正極性のゼータ電位を有する。これらの物性の相違から、前述のように、PAA分子が平坦な負極性の結晶面に吸着され、その結晶面に垂直な方向の結晶成長を抑制することができると考えられる。従って、pH値などの溶液状態条件とPAA添加との組み合わせを調整することにより、結晶成長及び粒子結晶の形態を制御することが可能となる。
<BaTiOF粒子の相転移>
BaTiOF粒子に対する加熱処理による相転移の確認実験を行った。板状BaTiOF粒子を、大気中、600℃〜1400℃の温度範囲で3時間(h)加熱(昇温)処理した。図は、1100℃で3時間アニールした後に得られたBaTiOのX線回折パターンを示す。板状BaTiOF粒子は800℃を超えると、板状結晶のBaTiOに相転移をし始め、1100℃に達したとき、BaTiOF粒子の回折ピークがなくなり、すべて板状結晶のBaTiOに相転移した。図は加熱処理(1100℃で3時間)により得られたBaTiO結晶のSEM写真を示す。XRD回折から、加熱処理されたアニール粒子が正方晶のBaTiO単相であることを示した。XRD回折測定を行う前の、冷却過程で、高温域での立方晶のBaTiOは、低温域の正方晶のBaTiO単相に変形した。これは、BaTiOF粒子が、(Ba:Ti=1:1)の組成比を有しているため、板状結晶のBaTiO単相への相転移が可能となる。
本発明に係るBaTiOF粒子は、薄型MLCC製造用グリーンシートに好適な化学組成と粒子形態を具備している。板状結晶のBaTiOF粒子は、アニーリング期間に凝集する傾向にあり、板状結晶形態が保持されない場合がある。従って、MLCCの薄型グリーンシートに含有使用する場合には、BaTiOF粒子を高温アニーリングの前に使用しておくのが好ましい。また、加熱温度と加熱期間は、板状粒子の余分な凝集が起きない最小限度の範囲で設定するのが好ましい。
なお、BaTiOF粒子(BaTiO前駆体)は、混合溶液のpH値により様々な結晶形態に変化することも検証した。pH値が1.4の付近では、クロスの結晶形態、1.8の付近では立方晶形態、3.0の付近では、金平糖のような多針結晶形態に変化した。また、混合溶液のpH値が大きくなるにつれ、得られる前駆体の粒径は小さくなる傾向が見られた。前述のように、特に、pH値が1.8(又はその近傍)の溶液条件において、PAAを添加することにより、BaTiOF粒子は板状結晶に変化する。
以上のように、本実施形態によれば、液相析出法において、有機・無機相互作用を使用することにより初めて、水溶液中でBaTiOF粒子を合成することに成功し、しかもその粒子結晶の形態制御を可能にすることができた。上記の各合成実験で示したように、多針、多面体又は板状BaTiOF粒子を溶液pHの調整とPAAの添加により作製することができる。正のPAA分子を負のBaTiOF結晶面に吸着させることにより、結晶成長の制御が可能である。
本実施形態に係るBaTiOF粒子は、MLCC等の電子部品及びその製造に使用するグリーンシートの製造素材として好適な、板状結晶形態、化学組成比及び相転移特性を具備し、また、BaTiOF粒子を前駆体として加熱処理して得られるBaTiOもまた、MLCC等の電子部品及びその製造に使用するグリーンシートの製造素材として好適な新規物質である。
<グリーンシートの製造例>
まず、本実施形態に係る板状結晶のBaTiOF粒子(誘電体セラミックス原料粉末)と、有機バインダーと、有機溶剤とを混合し、その混合物を湿式混合してスラリーを調製する。このスラリーに対して減圧脱泡処理を施してスラリー中の気泡を脱泡しておくのが好ましい。
有機バインダーには、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ブチルメタアクリレート等のアクリル系樹脂等のバインダー材を使用できる。有機溶剤には、トルエン、エタノール、変性アルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等の1種又はその混合物が使用される。スラリー調製には、上記の含有物の他に各種分散剤、活性剤、可塑剤等も目的に応じて適宜添加される。
<グリーンシート成形>
前記スラリーを、例えばドクターブレード法、押し出し法等により、薄板状に成形してグリーンシートを製造する。このとき、キャリアフィルム(支持シート)上においてグリーンシート成形が行われる。キャリアフィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂が使用される。フィルム厚は、シート厚50〜100μmのフィルムを使用する。成形グリーンシートは前記支持シートとともに巻き取って収集される。キャリアフィルムの使用によりグリーンシート形成後の処理工程に向けたハンドリングを簡易にできる。
本実施形態に係る板状結晶のBaTiOF粒子を使用することにより、シート成形時に、より薄いグリーンシートを製造することが可能となる。そして、MLCC製作のために、かかるグリーンシートを多層積層して、焼成加熱処理することにより、高密度で高誘電特性を実現できる、板状結晶のBaTiOに変化させることができる。
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例や設計変更をその技術的範囲内に包含するものであることはいうまでも無い。
本発明に係る板状結晶のBaTiOを用いて、極薄のグリーンシートを成形することが可能であり、これを用いて、高密度化された、小型ないし薄型のセラミックス電子部品を製造することができる。このセラミックス電子部品は、各種電子部品、例えば、家電用電子部品、自動車用電子部品、産業用電子部品、宇宙用電子部品などの広範囲な分野に利用できる。
本発明の実施形態における生成物(BaTiOF)のX線回折パターンを示す、X線回折強度―2θ測定図である。 前記生成物のSEM写真である。 前記生成物の別のSEM写真である。 PAA添加の有無に対応したBaTiOF粒子のSEM写真である。 加熱処理(1100℃で3時間)により得られたBaTiO 結晶のSEM写真である。 1100℃で3時間アニールした後に得られたBaTiO のX線回折パターンを示す図である。

Claims (4)

  1. 板状結晶形態を有するBaTiOF粒子からなるBaTiO前駆体、有機バインダー及び有機溶剤を少なくとも含有するスラリーをシート状に形成し、このシートを加熱処理して製造されたことを特徴とするグリーンシート。
  2. 前記BaTiOF粒子が前記加熱処理により、板状結晶形態を有するBaTiO粒子に変化する請求項1に記載のグリーンシート。
  3. (NHTiFと、Ba(NO32と、HBOとを溶解させた混合水溶液を作製し、その混合水溶液に水溶性カチオンポリマーを添加し、板状結晶形態に結晶成長させたBaTiOF粒子からなるBaTiO前駆体を生成し、前記BaTiO前駆体、有機バインダー及び有機溶剤を混合して調整したスラリーをシート状に形成し、このシートを加熱処理してグリーンシートを製造することを特徴とするグリーンシートの製造方法。
  4. 前記水溶性カチオンポリマーがポリアクリルアミドである請求項3に記載のグリーンシートの製造方法。
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