以下に、本発明に係る透過型スクリーン、投写型表示装置および画像表示方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態に係る投写型表示装置の構成を示す図である。図1では、投写型表示装置100の断面構成を示している。投写型表示装置100は、プロジェクタ10と透過型スクリーン20とを有しており、プロジェクタ10からの画像を透過型スクリーン20に拡大投影して画像表示を行う背面投写型の表示装置である。
本実施の形態の投写型表示装置100は、透過型スクリーン20の第1の光拡散部(第1の光拡散部)31と第2の光拡散部(第2の光拡散部)41とが透過型スクリーン20内で互いに内側を向いて近づくよう透過型スクリーン20内に配置されており、これにより第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41との距離を短くしている。
プロジェクタ10は、照明光学系11、ライトバルブ12、投写光学系13を備えている。照明光学系11は、原点Oの方向が光軸方向であり、後述する光源9からの照明光をライトバルブ12へ導く。ライトバルブ12は、画像信号に応じて照明光学系11からの光量を調整し画像を形成する。投写光学系13は、ライトバルブ12で形成された画像を透過型スクリーン20に拡大投影する。
透過型スクリーン20は、フレネルレンズスクリーン30とレンチキュラースクリーンなどの像表示要素40とを備えている。フレネルレンズスクリーン30は、観測者1から見て背面側(発光体側)に配置され、像表示要素40は、観測者1から見て前面側(観測者側)に配置されている。
フレネルレンズスクリーン30は、入光面側フレネルレンズ(フレネル光学素子)32と、入光面側フレネルレンズ32を保持するための第1の基盤33と、入光面側フレネルレンズ32よりも観測者1側に配置される第1の光拡散手段31と、を含んで構成されている。
像表示要素40は、第2の基盤43と、第2の光拡散手段41と、を含んで構成されている。像表示要素40では、第2の光拡散手段41が第2の基盤43よりも発光体側(プロジェクタ10側)に配置されている。像表示要素40の発光体側の表面には、レンズ要素6が形成され、観測者側の表面には表面処理層44が形成されている。
第1の光拡散手段31や第2の光拡散手段41は、光を拡散させる。例えば、第1の光拡散手段31や第2の光拡散手段41の表面の凹凸で光を拡散させるよう第1の光拡散手段31や第2の光拡散手段41を作製しておく。また、第1の光拡散手段31や第2の光拡散手段41の媒質とは異なる屈折率を有した種々の粒径の微粒子を混在させて第1の光拡散手段31や第2の光拡散手段41を作製し、この微粒子によって光を拡散させてもよい。
なお、図1では第2の光拡散手段41と第2の基盤43とを別々に示しているが、第2の基盤43が第2の光拡散手段41を備える構成としてもよい。この場合、例えば、第2の基盤43の発光体側に第2の基盤43とは屈折率が僅か(例えばΔn=0.01〜0.05)だけ異なる微粒子を練り込んでおき、微粒子を練り込まれた層を光拡散手段41とする。第1の光拡散手段31や第2の光拡散手段41に形成される凹凸や微粒子の長さは、例えば可視光の波長(およそ380〜780nm)より大きく1〜50μm程度である。
また、ここでは像表示要素40にレンズ要素6と表面処理層44が形成されている場合について説明したが、像表示要素40はレンズ要素6や表面処理層44を有しない構成であってもよい。
投写型表示装置100では、照明光学系11によって導かれた有限大の発光体からの光が、画像を作るライトバルブ12を照明し、投写光学系13によって透過型スクリーン20に画像が拡大投影される。
発光体がレーザー光源などのコヒーレント光源の場合は当然ながら、超高圧水銀ランプなどのインコヒーレント光源においても、照明光学系11、投写光学系13を経由する間にコヒーレンスが発生し、部分的にコヒーレントな光となる。このコヒーレンスを表す物理量として複素コヒーレンス度がある。複素コヒーレンス度は、数学的には等価光源と瞳関数の自己相関との相対関係で表される。このようなコヒーレンスの伝搬は、相互伝達係数(transmission cross coefficient)に関連するので、レンズ設計がなされるとコヒーレンスの伝搬特性も同時に決まることとなる。
例えば、2つの光拡散部(第1の光拡散手段31、第2の光拡散手段41)を離して配置しておくことによって、光の波面が乱れるので像がぼやけるが、波面が乱れると複素コヒーレンス度が減ることとなる。このため、2つの光拡散手段31,41を離して配置しておけば、シンチレーション等のぎらつきの不具合を低減させることが可能となる。また、レンズの開口を大きくすると解像力が上がることが知られている。逆に言うと、小さいレンズを使うと解像力が低下し、その結果、像がぼやけてぎらつきも減ることとなる。
また、部分的にコヒーレントな光で光拡散手段31,41を照明すると、第1の波面の振幅分布の重ね合わせで作られる第1の強度分布や、第N(Nは自然数)の波面の振幅分布の重ね合わせで作られる第Nの強度分布など、第1〜第Nまでの複数の強度分布が重ね合わさって観測者1にはsubjective speckleに分類される無数の明暗の斑点が無秩序に認識されることとなる。このため、ランプ光源のような単色光ではない連続スペクトルや、空間的に大きさを持つインコヒーレントな光源であってもシンチレーション等のぎらつきの不具合が観測されることとなる。
シンチレーションを低減させるために透過型スクリーン20の位置を変位させる場合について説明する。ここでは第1の光拡散手段31を含んで構成されているフレネルレンズスクリーン30を変位させる場合について説明するが、2つの光拡散部(第1の光拡散手段31、第2の光拡散手段41)を相対的に変位させるのであれば足り、第2の光拡散手段41を含んで構成されている像表示要素40を変位させてもよい。
ここで、コヒーレンスの伝搬について説明する。図2は、コヒーレンスの伝搬を説明するための図である。発光体である光源9からの光は照明光学系11によりライトバルブ12へ導かれてライトバルブ12を照明する。ライトバルブ12で作られた画像が投射光学系13により共役な位置関係にある透過型スクリーン20にへ拡大投射される。ここでは、簡単に理解するため、光源9と透過型スクリーン20の間にある照明光学系11、ライトバルブ12、投射光学系13は図示せず、あたかも光源9が透過型スクリーン20(これはライトバルブ12と共役な関係にある)を照明しているかのように構成要素を単純に描いている。等価光源71は、複素コヒーレンス度から求められる仮想的な光源(人間の目の水晶体81に形成される仮想的な光源)のことで、図2では光源9である発光体と共役な位置になる。また、人間の目の網膜82は透過型スクリーン20と共役な位置になる。
光源9からの光(部分的にコヒーレントな光)は、透過型スクリーン20を経由して観測者に観測されるので、等価光源71の大きさは透過型スクリーン20の光学性能(曇り度など)に依存する。また、光の複素コヒーレンス度は、等価光源71と瞳関数83の自己相関との相対関係で表される。このため、等価光源71が瞳関数83に対して相対的に大きい場合には、等価光源71からの光がインコヒーレントに近づき、反対に小さい場合には等価光源71からの光がコヒーレントに近づくこととなる。
透過型スクリーン20が変位しても等価光源71と瞳関数83の相対関係は変わらないので、瞬間的(瞬時の)な光のコヒーレンスは変わらない。このため、透過型スクリーン20を変位させてもぎらつきが無くなるわけではなく、ぎらつきの強度パターンが変わる(変位する)だけである。しかしながら、このような透過型スクリーン20の変位では、光強度が所定時間の間で平均化される。このため、透過型スクリーン20では、変位によるぎらつきの強度の移動平均によって、ぎらつきを低減させることが可能となる。
透過型スクリーン20を変位させる際には、透過型スクリーン20にただ変位を与えればよいというものではない。まず、透過型スクリーン20内の光拡散部が1つだけ(ここでは変位する第1の光拡散手段31だけ)の場合について説明する。第1の光拡散手段31を目の応答速度(約1/30秒=30Hz)に比べて十分ゆっくり(数Hz)で動かすと、ぎらつきの輝点がぎらつきのパターンを保持したまま、フレネルレンズスクリーン30の変位に従って移動する。同じパターンがゆっくりと動いていると、人間は意識的にどうしても目でパターンを追従してしまう。このため、第1の光拡散手段31を低速で変位させると、人間にぎらつきを認識させてしまうといった問題が発生する。
そこで、本実施の形態では、透過型スクリーン20内に第1の光拡散手段31とは異なる第2の光拡散手段41を配設しておく。第1の光拡散手段31が作るぎらつきのパターンは、フレネルレンズスクリーン30の変位に従って、ぎらつきのパターンを保持したまま変位するが、この第1の光拡散手段31からの光で第2の光拡散手段41を照明することとなる。このため、第2の光拡散手段41の作るぎらつきのパターンは、第2の光拡散手段41と第1の光拡散手段31との相対関係(相対位置)に従って変化することとなる。この結果、人間の目によってぎらつきのパターンが追従されることなく、光強度を時間平均化して人間に認識させることが可能となる。
なお、この場合でも瞬間的なコヒーレンスは変わらないので、あくまでも所定時間内での平均としてみた場合にぎらつき(変位によるぎらつきの移動平均)が低減するだけであり、瞬間的なぎらつきが無くなるわけではない。このことは、移動平均が変化するとぎらつきの見え方も変わることを意味している。
このため、透過型スクリーン20の変位のさせ方は、例えば図3に示す等速円運動などの等速運動が好ましい。これは、透過型スクリーン20の速度が0となる極限操作では、光強度の時間(移動)平均の効果がなくなるためである。実際には、速度が0でなくても、透過型スクリーン20の移動速度が変わると時間平均の効果も変わる。このため、ぎらつきの見え方も変化し、その結果ぎらつきが認識されやすくなる。そこで、本実施の形態では、透過型スクリーン20を例えば等速円運動などの等速運動によって変位させる。
ここで、実際にフレネルレンズスクリーン30もしくは像表示要素40に変位を与える場合について説明する。本実施の形態の投写型表示装置100へ配設する透過型スクリーン20は、例えば対角で50〜100インチ程度の大きさとする。この場合、フレネルレンズスクリーン30および像表示要素40の大きさは、透過型スクリーン20の縦横比(4:3、16:9など)に依存するが、例えば一辺数メートル程度の大きさとなる。投写型表示装置100では、このように大きな透過型スクリーン20を数Hzの速度で動かすが、透過型スクリーン20を動かす量は、コヒーレンスに応じて例えば数ミリ程度(例えば透過型スクリーン20の大きさに対して1%未満)とする。
一般的な投写型表示装置では、スクリーンが大きい場合には、スクリーンの大きさに比べてスクリーンの移動量が相対的に小さくても、ほんの少しの歪み、撓み、位置ずれによってフレネルレンズスクリーンが、レンチキュラースクリーンや筐体(フレネルレンズスクリーンや像表示要素の外周にある筐体)に衝突し、スクリーンが壊れる場合がある。また、フレネルレンズスクリーンとレンチキュラースクリーンは、熱や湿度などによって変形するとともに、予め初期の撓みを持っている。
このため、本実施の形態では、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間隔を、所定寸法以上あけておく。例えば、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間には、2mm〜10mm程度の間隔を空けておく。
フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間隔が広くなりすぎると、像がぼやける方向に働く。一方、像のぼやけに合わせて複素コヒーレンス度も減少する方向に働くので、瞬間的なコヒーレンスも減少しぎらつきが減る。
本実施の形態では、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40とを相対的に動かすので、振動による時間平均(移動平均)でぎらつきを低減させることができる。したがって、第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41とを必要以上に離す必要がないので像がぼやけが少ない。換言すると、第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41をできるだけ近づけることによって解像感を向上させることが可能となる。
従来の出光面側フレネルレンズは、出光面側に光拡散部を配置することができない構造になっている。そこで、本実施の形態では、フレネルレンズスクリーン30に、プリズムが入光面側に形成されている入光面側フレネルレンズ32を用いることによって、第1の光拡散手段31をフレネルレンズスクリーン30の出光面側に配置する。
図4は、第1の光拡散部をフレネルレンズスクリーンの出光面側に配置した場合の、投写型表示装置の構成を示す図である。図4の投写型表示装置101は、図1の投写型表示装置100と比べて、フレネルレンズスクリーン30の構成が異なっている。投写型表示装置101のフレネルレンズスクリーン30では、第1の光拡散手段31がフレネルレンズスクリーン30の出光面側に配置されている。これにより、第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41の距離が近づき、解像感を向上させることが可能となる。
リアプロジェクタなどの背面投写型の表示装置は従来、投写光学系の光軸と透過型スクリーンの中心が略一致していた。このため、投写型表示装置の奥行きを薄くするまたは小型化するために、反射鏡によってプロジェクタからの光束を折り曲げていた。また、さらなる薄型化を達成する方法として、プロジェクタからの光束を透過型スクリーンに斜め急角度に投影する方法がある。
例えば、コヒーレンスの大きいレーザ光源などを照明光源に用いると、レーザ光源からは小さい面積から小さい広がり角で光が放出されるので、照明光学系、投写光学系を小型にできる利点がある。プロジェクタ内の照明光学系や投写光学系が小型になれば、投写型表示装置全体も薄くまたは小型化しやすくなる。
そこで、本実施の形態では、プロジェクタ10からの光束を透過型スクリーン20に対して急峻な角度で投影してもよい。図5は、プロジェクタからの光束を透過型スクリーンに対して急峻な角度で投影した場合の、投写型表示装置の構成を示す図である。図5の投写型表示装置102は、透過型スクリーンの中心が投射光学系の光軸と一致している従来の投写型表示装置よりも、プロジェクタ10からの光束を透過型スクリーン20に対して急峻な角度で投影している。
本実施の形態の投写型表示装置100は、投写倍率の大きい場合、発光体が小さい場合、発光体が線スペクトルのようなコヒーレンスの高い光学系である場合などに発生するぎらつきを低減することを1つの目的としている。コヒーレンスの大きいレーザ光源などは小さい面積から小さい広がり角で光を放出するので、斜め急角度から透過型スクリーン20に光を投影する方法には、コヒーレンスの大きい光源が適している。
そこで、本実施の形態では、斜め急角度から透過型スクリーン20への画像光の投写と、コヒーレンスの高い光源とを、組み合わせて用いる。この組合せにより、従来と違いフレネルレンズスクリーン30の入光面側に種々のレンズを配置できるので、従来よりも光拡散部を相互に近づけることができる。
ここで、フレネルレンズスクリーン30として、プリズムが入光面側に形成されている入光面側フレネルレンズ32について説明する。図5に示すように、入光面側フレネルレンズ32には、例えば混合式フレネルレンズ34、入光面側全反射式フレネルレンズ35、入光面側部分全反射式フレネルレンズ36等がある。
なお、図5では、混合式フレネルレンズ34、入光面側全反射式フレネルレンズ35、入光面側部分全反射式フレネルレンズ36を1つの入光面側フレネルレンズ32内に示したが、プロジェクタ10の設計に合わせて適宜選択すればよい。したがって、1つの透過型スクリーン20内に3種類のフレネルレンズを混在させる必要はない。以下、プリズムが入光面側に形成されている入光面側フレネルレンズ32の詳細な構成について説明する。
図6は、入光面側全反射式フレネルレンズの断面構成を示す図である。入光面側全反射式フレネルレンズ35は、プリズムに入光した画像光2の光束を、対面(入光面裏面)で全反射し、出光面方向に偏光するフレネルレンズである。入光面側全反射式フレネルレンズ35では、プロジェクタ10から照射される画像光2の光束を屈折させる屈折面51と、屈折面51で屈折された光束を第1の基盤33側に全反射させる反射面(入光面裏面)52と、が鋸歯状に複数配置されることによって全反射プリズム(フレネルプリズム)を構成している。これにより、入光面側全反射式フレネルレンズ35では、画像光2の光束が第1の屈折面51によって所定方向に屈折させられるとともに、屈折後の光束が反射面52によって第1の基盤33側に全反射させられる。
図7は、混合式フレネルレンズの断面構成を示す図である。混合式フレネルレンズ34は、プリズムに入光した光束のうち、屈折光のみを出光面方向に偏光する屈折式フレネルレンズと、入光面側全反射式フレネルレンズ35とが、1つのプリズム内に混合されたフレネルレンズ(入光面側全反射・屈折混合式フレネルレンズ)である。
混合式フレネルレンズ34では、屈折面51と反射面52からなる全反射プリズムと、プロジェクタ10から照射される画像光2の光束を屈折させる第2の屈折面53(屈折プリズム)とが1つのピッチに形成されている。これにより、混合式フレネルレンズ34では、画像光2の光束が第1の屈折面51によって所定方向に屈折させられるとともに、屈折後の光束が反射面52によって第1の基盤33側に全反射させられる。さらに、屈折面51に入光しない画像光2の光束は、第2の屈折面53によって第1の基盤33側に屈折させられる。
図8は、入光面側部分全反射式フレネルレンズの断面構成を示す図である。入光面側部分全反射式フレネルレンズ36は、入光面側全反射式フレネルレンズ35の谷の部分(凹部)を、出光面(第1の基盤4の主面)と並行にしたフレネルレンズである。入光面側部分全反射式フレネルレンズ36では、画像光2の光束が非入射面54(凹部)へ入射することはない。
なお、入光面側部分全反射式フレネルレンズ36の構成を、プリズム先端の一部分を入射光線と略並行になるよう欠けさせた構成としてもよい。図9は、プリズムの先端部を欠けさせた場合の、入光面側部分全反射式フレネルレンズの断面構成を示す図である。図9の入光面側部分全反射式フレネルレンズ36では、プリズムの先端部が削ぎ落とされたことによって、入射光線と略並行な先端削除面(入射光平行面)55がプリズムの各先端部に形成されている。
なお、入光面側フレネルレンズ32の混合式フレネルレンズ34、入光面側全反射式フレネルレンズ35、入光面側部分全反射式フレネルレンズ36は、何れもフレネルレンズの1周期内で画像が上下に反転するので、入光面側フレネルレンズ32の周期mを、投影される画素に応じた大きさにしておく。具体的には、周期mを、少なくとも透過型スクリーン20に投影される画素よりも十分細かなサイズ(少なくとも投影される画素の1/5、出来れば1/10よりも小さいのが好ましい)としておく。
このように、投写型表示装置100は、従来の出光面側フレネルレンズとは異なり、入光面側フレネルレンズ32を用いているので、プリズム内部での全反射現象を利用して光の方向を大きく曲げることができる。これにより、プロジェクタ10から入光面側フレネルレンズ32への入射角が大きい場合であっても、プロジェクタ10からの光束を像表示要素40に導くことが可能となる。
また、本実施の形態では、同心円状に配置される入光面側フレネルレンズ32の同心円の中心を、図3に示したように透過型スクリーン20面(画面)の外側に配置する。換言すると、入光面側フレネルレンズ32は、円弧の中心が画面の外側にある。そして、この円弧の中心が投写光学系13の光軸と略一致するよう、プロジェクタ10が投写型表示装置100内に配設しておく。このように円弧の中心、および投射光学系13の光軸を配置の基準位置とすることで、組み立て調整を簡単にすることができる。なお、投写光学系13の光軸は、図1や図4などではプロジェクタ10から原点Oへの破線で示しており、図3では、プロジェクタ10から原点Oへの実線で示している。
また、本実施の形態では、プロジェクタ10から透過型スクリーン20への光路の途中に所定の反射鏡(後述の反射鏡3)を設け、この反射鏡3によって光束を折り曲げてもよい。図10および図11は、反射鏡を介して透過型スクリーン20へ光束を導く場合の投写型表示装置の構成を示す図である。
図10では、反射鏡3を透過型スクリーン20の主面と平行な方向に配置した場合の投写型表示装置103の構成を示している。また、図11では、反射鏡3を透過型スクリーン20の主面と垂直な方向に配置した場合の投写型表示装置104の構成を示している。
このように、プロジェクタ10から透過型スクリーン20への光路の途中に反射鏡3を設け、この反射鏡3によって光束を折り曲げるので、投写型表示装置100を薄型化や小型化することが可能となる。図10の投写型表示装置103では、透過型スクリーン20の主面と垂直な方向の寸法を小さくできる。また、図11の投写型表示装置104では、透過型スクリーン20の主面と平行な方向の寸法を小さくできる。
また、透過型スクリーン20に対する反射鏡3やプロジェクタ10の配置位置は何れの方向であってもよい。したがって、透過型スクリーン20は、図10や図11に示した上下方向に限定されるものではない。
つぎに、レンズ開口と像のぼやけの関係について詳細に説明する。レンズ開口(瞳関数に対応)が有限であれば波面を切り取ることになり、空間周波数が一部遮断される。すなわち、レンズがローパスフィルタの働きをする。この結果、小さい開口のレンズを使うと解像力が劣化することとなる。同様にコヒーレンスの伝搬でも、瞳関数が小さくなると等価光源が相対的に大きくなるのでインコヒーレントに近づき、複素コヒーレンス度が小さくなる。換言すると、開口が小さいレンズを使うと、収差が大きくなるので像がぼやけるとともに、コヒーレンス度が小さくなるので瞬間的なぎらつきも低減されることとなる。
投写型表示装置100では、透過型スクリーン20に投影される画素によって画像が形成されるので、画像内に画素より細かい構造はない。したがって、少なくとも画素の大きさよりも小さなサイズのレンズを透過型スクリーン20に用いれば、像のぼやけを十分無視することが可能となる。以上のことから、本実施の形態では、投影される画素よりも小さい周期(後述の周期P)のレンズ要素6を用いる。これにより、解像感を向上させつつ、ぎらつきを低減した透過型スクリーン20を得ることが可能になる。
例えば、一般的な観測者(視力1.0)が一般的な観測距離(透過型スクリーン20の高さの3倍の距離)から見た場合に、観測者が分解できる限界が約1mmとなる。例えば、スクリーンの主面幅が1mであり、横方向の画素数が1000画素であるとすると、投写画素の横方向の大きさは、ちょうど1画素あたり1mm(スクリーンの0.1%)となる。したがって、この場合はレンズ要素6の周期Pは、P<1mmとすればよい。
ここで、レンズ要素6の構成例について説明する。図12〜図15は、レンズ要素の構成を示す図である。図12に示すレンズ要素6では、入光面側にシリンドリカルレンズ37を配置し、シリンドリカルレンズ37の各レンズをレンズ要素6の縦方向に連接配置している。シリンドリカルレンズ37の非集光部に相当する位置(第2の基盤43側)にストライプ状の光吸収部38を形成している。
また、図13に示すレンズ要素6は、入光面側の台形状レンズ39と出光面側の光吸収部38を有している。台形状レンズ39は、複数からなる台形柱状の単位レンズを備えており、各台形の下辺側の側面が入光面側に並び、各台形の上辺側の側面が出光面側に並ぶよう並設(連接配置)されている。台形状レンズ39の各台形の下辺側の側面は、光を全反射する全反射部である。台形状レンズ39では、入光面側から入光した光線の一部を全反射部で全反射させた後、出光面側から出光させる。
光吸収部38は、台形状レンズ39の単位レンズの各谷部に配置されている。そして、レンズ要素6を出光面側から見ると、光吸収部38と、台形状レンズ39が有する各台形の上辺側の側面と、によってストライプ状をなしている。
また、図14に示すレンズ要素6では、入光面側にシリンドリカルレンズ61を配置し、シリンドリカルレンズ61の各レンズをレンズ要素6の縦方向および横方向にマトリックス状に連接配置している。縦方向および横方向に配設されたシリンドリカルレンズ37の非集光部(凸部の裏面側)に相当する位置には、光吸収部38を形成している。これにより、光吸収部38は、各矩形状がマトリクス状に並べられた構成となっている。すなわち、各矩形状は、縦方向および横方向の格子で区切られたアイランド状をなしている。
また、図15に示すレンズ要素6では、図13に示したレンズ要素6を、主面同士が重なるよう入光面側に2枚重ねて配設している。そして、レンズ要素6の一方の単位レンズをレンズ要素6の横方向に並べ、他方の単位レンズを縦方向に並べることによって、それぞれの単位レンズを直行させている。なお、単位レンズが縦方向に並んだレンズ要素6と、単位レンズが横方向に並んだレンズ要素6とは、何れのレンズ要素6が入光面側であってもよい。
また、このようなレンズ要素6を備えた像表示要素40の観測者側の最表面には、表面処理層44として、例えば光の反射を低減させる反射防止層を形成しておいてもよい。これにより、像表示要素40は、外光からの影響を低減することができる。
また、見た目のぎらつきを押さえるためのアンチグレア層、静電気によるほこりの付着を防止するための帯電防止層、表面を保護するためのハードコート層を、像表示要素40の観測者側の最表面に設けてもよい。また、フレネルレンズスクリーン30および像表示要素40間に、自己潤滑性を持つ媒質やゲル状の媒質などの弾性体を配置してもよい。
なお、本実施の形態の図1などでは第1の光拡散手段31と第1の基盤33とを別々に示しているが、第1の基盤33が第1の光拡散手段31を備える構成としてもよい。換言すると、第1の基盤33と第1の光拡散手段31とを一体に作製してもよい。例えば、第1の基盤33および第1の光拡散手段31を、第2の基盤43および第2の光拡散手段41と同様の方法によって作製しておく。
また、本実施の形態の図4などでは入光面側フレネルレンズ32と第1の基盤33の境界を破線で示しているが、入光面側フレネルレンズ32と第1の基盤33は、別々に作成してもよいし、一体に作製してもよい。例えば、光硬化樹脂の入光面側フレネルレンズ32を第1の基盤33に貼り合わせてもよいし、第1の基盤33の主面を型に押しつけて入光面側フレネルレンズ32となる形状を第1の基盤33の表面に成形してもよい。
また、投写型表示装置100では、第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41とがそれぞれ所定の拡散能力となるよう第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41とに拡散能力を配分してもよい。第1の光拡散手段31から第2の光拡散手段41まで光が伝搬する間に像がぼやけるので、例えば第1の光拡散手段31の拡散能力を小さくし、第2の光拡散手段41の拡散能力を大きくしておく。
2つの光拡散層の相対変位によってぎらつきを低減させるスクリーンの場合、振動する側に所定値以上の拡散能力が必要となる。これは、例えばレンズやミラーなど拡散能力の無いものでは、波面が乱れずに伝搬するのでぎらつきのパターンが作られず、結果として移動平均化がなされないからである。
光拡散層の拡散能力を曇り度(Haze)によって表す場合、振動させる側の光拡散層にヘイズを30%〜60%程度与え、他方の振動しない側の光拡散層にヘイズを80%〜90%程度を与える。例えば、第1の光拡散手段31を振動させる側の光拡散層とすると、第1の光拡散手段31に30%〜60%のヘイズを与え、第2の光拡散手段41に80%〜90%のヘイズを与える。一方、第2の光拡散手段41を振動させる側の光拡散層とすると、第2の光拡散手段41に30%〜60%のヘイズを与え、第1の光拡散手段31に80%〜90%のヘイズを与える。
また、本実施の形態の図1などでは投写型表示装置100が、プロジェクタ10と透過型スクリーン20を有している場合について説明したが、投写型表示装置100は、これら以外の構成要素を有していてもよい。投写型表示装置100は、例えば、透過型スクリーン20やプロジェクタ10を入れる筐体、透過型スクリーン20やプロジェクタ10を固定する保持機構、投写型表示装置100内の空気を調整する空気調整機構、スピーカ、テレビ台、リモートコントローラからの信号受光部、電気回路、幾何学補正回路、色補正回路などを有していてもよい。また、発光体は、ランプのような連続スペクトル、レーザ、LED(Light Emitting Diode)などの離散的スペクトルを持つものの何れであってもよい。
このように実施の形態1によれば、第1の光拡散手段31が入光面側フレネルレンズ32よりも観測者1側に配置され、第2の光拡散手段41が第2の基盤43よりも発光体側に配置されているので、スペックルによる画像劣化を低減しつつ、解像力の高い画像表示を行うことが可能となる。
また、第1の基盤33の出光面側に第1の光拡散手段31を配置しているので、第1の光拡散手段31を第2の光拡散手段41に近付けうることが可能となり、解像感を向上させることが可能となる。
また、第1の基盤33を変位させることによって、第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41との相対位置を変位させるので、観測者に第1の基盤33の動作を認識させることなく第1の光拡散手段31と第2の光拡散手段41との相対位置を変位させることが可能となる。
実施の形態2.
つぎに、図16を用いてこの発明の実施の形態2について説明する。前述したように、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間には、自己潤滑性を持つ媒質やゲル状の媒質などの弾性体を配置してもよい。実施の形態2では、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間に弾性体を配置した場合の投写型表示装置について説明する。
図16は、実施の形態2に係る投写型表示装置の構成を示す図である。図16の各構成要素のうち図4に示す実施の形態1の投写型表示装置101と同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。実施の形態2に係る投写型表示装置105は、フレネルレンズスクリーン30(第1の素子)と像表示要素40(第2の素子)との間に弾性体を有している。
投写型表示装置105のフレネルレンズスクリーン30は、入光面側フレネルレンズ32と、第1の基盤33と、光拡散手段31と、弾性体である第1の保護層201と、を含んで構成されている。フレネルレンズスクリーン30では、フレネルレンズスクリーン30を構成する各要素が、入光面側から出光面側の方向へ向かって、入光面側フレネルレンズ32、第1の基盤33、光拡散手段31、第1の保護層201の順番で配置されている。
像表示要素40は、レンズ要素6と、第2の基盤43と、第2の光拡散手段41と、表面処理層44と、弾性体である第2の保護層202と、を含んで構成されている。像表示要素40では、像表示要素40を構成する各要素が、入光面側から出光面側の方向へ向かって、第2の保護層202、レンズ要素6、第2の光拡散手段41、第2の基盤43、表面処理層44の順番で配置されている。
このように、投写型表示装置105では、第1の保護層201がフレネルレンズスクリーン30の出光面側に配置され、第2の保護層202が像表示要素40の入光面側に配置されている。
フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間には、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40を振動させるための空間的な余裕が設けられている。また、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間には、初期状態でフレネルレンズスクリーン30や像表示要素40が有している撓みや、熱や湿度によって変形等が起こった場合のための空間的な余裕が設けられている。ところが、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40に想定以上の撓みや変形が生じたり、輸送時に振動が生じたりすることによって、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40の一部が一時的に接触したりすることも考えられる。
この場合、接触した一部分が擦られて削れられると、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40に削りカスが付着したり、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40に傷が出来て、投写する画像の均一性が劣化するといった不具合が生じる。特にフレネルレンズスクリーン30の第1の光拡散部31や像表示要素40のレンズ要素6の表面に凹凸の形状を有している場合は、凹凸の形状を有していない平面の場合に比べて、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40の表面の劣化の割合が大きくなる。そこで、本実施の形態では、フレネルレンズスクリーン30に第1の保護層201を配置するとともに、像表示要素40に第2の保護層202を配置している。
第1の光拡散手段31が表面の凹凸で光を拡散させる場合、第1の光拡散手段31の出光面側の表面に配置される第1の保護層201は、第1の光拡散手段31の出光面側の表面に形成されている凹凸形状を保つことができるよう層の膜厚(層の厚み)を薄くしておく。
この凹凸形状は、例えばビーズ状(球形やラグビーボール状など)のガラス系またはアクリル系の微粒子と、これを保持する媒質とによって構成されている。この凹凸形状の粒径は、可視光の波長(およそ380〜780nm)より大きく、例えば1〜50μm(一般的には5〜20μm)程度である。このため、第1の光拡散手段31の表面に形成されている凹凸形状が1〜50μmの場合、第2の保護層201の膜厚を例えば1μm未満とする。このように、第1の光拡散手段31の表面の凹凸形状を保つよう第1の保護層201を薄く構成することによって、光を拡散させる機能を劣化させることなく、第1の光拡散手段31とレンズ要素6の接触を防止することが可能となる。したがって、第1の光拡散手段31による光拡散機能を維持しつつ、第1の光拡散手段31の表面の凹凸形状を劣化させずに保つことが可能となる。
また、像表示要素40のレンズ要素6が表面に凹凸形状を有している場合も、第1の光拡散手段31が表面に凹凸形状を有している場合と同様に、第2の保護層202を薄く構成するとよい。レンズ要素6の凹凸の周期は例えば10〜200μm程度であるので、第2の保護層202層の膜厚は、例えば数μm程度で十分となる。第1の保護層201や第2の保護層202は、自己潤滑性の高い媒質であり、具体的にはシリコンオイル、シリコン樹脂、シリコーンなどである。
なお、図16では、投写型表示装置105が第1の保護層201と第2の保護層202を有している場合について説明したが、投写型表示装置105は、第1の保護層201または第2の保護層202の何れか一方を有する構成であってもよい。これにより、投写型表示装置105は、簡易な構成となり、生産性が向上するとともに低コストで生産することが可能となる。
投写型表示装置105が第1の保護層201と第2の保護層202の両方を有している構成の場合、投写型表示装置105が第1の保護層201または第2の保護層202の一方のみを有している構成の場合よりも確実にフレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との接触による磨耗を防止することが可能となる。
このように実施の形態2によれば、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間に弾性体を配設したので、簡易な構成で光拡散手段31やレンズ要素6を保護することが可能となる。
実施の形態3.
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3では、第1の保護層201の膜厚や屈折率、第2の保護層202の膜厚や屈折率を適切な膜厚や屈折率としておくことによって、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40を透過する信号光の透過率の低下を防止する。
実施の形態2で説明したように、第1の光拡散手段31が表面の凹凸で光を拡散させる場合、第1の光拡散手段31の表面に配置される第1の保護層201は、表面の凹凸形状を保つことができるよう、膜厚を例えば1μmとしておく。
例えば、第1の保護層201の屈折率を屈折率n3とし、第1の保護層201の膜厚を膜厚hとした場合、n3、h、λ(波長)の関係は、n3h〜(2m−1)λ/4となる。mが正の整数となるなるよう第1の保護層201の膜厚hや屈折率n3を調整すると、第1の保護層201の反射率は低減され透過率が高くなる。以上のように、第1の保護層201の膜厚や屈折率を制御すれば、フレネルレンズスクリーン30の表面の凹凸形状を保護しつつ、フレネルレンズスクリーン30を透過する信号光の透過率の低下を防止でき、投影される画像光が明るくなる。また、信号光以外の不要光は、信号光とは反対に低減されるので、結果としてS/N比(Signal to Noise ratio)が改善される。したがって、明るく解像感のよい画像を得ることが可能となる。
第1の保護層201は、例えばフレネルレンズスクリーン30を屈折率n3の溶液に浸した後、第1の保護層201を溶液からゆっくりと引き上げることで、膜厚hを制御した第1の保護層201を形成することが可能となる。この方法によって第1の保護層201を形成する場合、第1の保護層201は入光面側フレネルレンズ32の表面(入光面側)にも形成される。
入光面側フレネルレンズ32を構成する各レンズの大きさは、投写光学系13により拡大投影されるライトバルブ12の画素の約1/10程度(例えば、投影された画素が1mmであれば100μm程度)である。このため、入光面側フレネルレンズ32では、1μm未満の第1の保護層201の厚みによって光の屈折や反射方向が大きく変わることはない。
第1の保護層201が入光面側フレネルレンズ32の表面に形成された場合であっても、上述のように第1の保護層201を適切な膜厚や屈折率にしておくことで、第1の保護層201の反射率が低くなり透過率が高くなる。
なお、第2の保護層202を適切な膜厚や屈折率にして第2の保護層202を像表示要素40に形成する場合も、第1の保護層201と同様の処理によって第2の保護層202を形成する。第2の保護層202を適切な膜厚や屈折率にして第2の保護層202を像表示要素40に形成することによって、第1の保護層201をフレネルレンズスクリーン30に形成する場合と同様の効果を得ることが可能となる。
このように、実施の形態3によれば、第1の保護層201の膜厚や屈折率、第2の保護層202の膜厚や屈折率を適切な膜厚や屈折率としておくことによって、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40を透過する信号光の透過率の低下を防止することが可能となる。したがって、フレネルレンズスクリーン30や像表示要素40を透過する信号光の透過率の低下を防止しつつ、光拡散手段31の表面やレンズ要素6の表面を保護することが可能となる。
実施の形態4.
つぎに、図17および図18を参照して、この発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4では、実施の形態2の変形例として、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間に弾性体を配置した場合の、投写型表示装置の他の構成例について説明する。
図17は、実施の形態4に係る投写型表示装置の構成を示す図である。図17の各構成要素のうち図4や図16に示す実施の形態1,2の投写型表示装置101,105と同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。実施の形態4に係る投写型表示装置106は、フレネルレンズスクリーン30と像表示要素40との間に弾性体を有するとともに、第1の光拡散部31の入光面側に所定の信号光のみを選択的に透過させる層を配置している。
投写型表示装置106のフレネルレンズスクリーン30は、入光面側フレネルレンズ32と、第1の基盤33と、選択的光透過・吸収層203と、光拡散手段31と、弾性体である第1の保護層201と、を含んで構成されている。フレネルレンズスクリーン30では、フレネルレンズスクリーン30を構成する各要素が、入光面側から出光面側の方向へ向かって、入光面側フレネルレンズ32、第1の基盤33、選択的光透過・吸収層203、光拡散手段31、第1の保護層201の順番で配置されている。選択的光透過・吸収層203は、入光面側フレネルレンズ32で観測者側に偏向された光束が通る光路上の信号光を選択的に透過させ、光路外の信号光を吸収する層である。
解像力が高い透過型スクリーン20を実現したとしても、コントラスト比(明暗の比)が小さく、特に外光の影響を受けやすい(明所コントラストが低い)場合には、細かく解像した像が外光などのノイズに埋もれてしまうという問題がある。
そこで、本実施の形態では、第1の基盤33の出光面側に選択的光透過・吸収層203を配置する。これにより、フレネルレンズスクリーン30では、外光の少なくとも一部が、選択的光透過・吸収層203で吸収される。また、投写型表示装置106では、選択的光透過・吸収層203の出光面側に第1の光拡散部31を配置しているので、スペックルによる画像劣化を低減しつつ、解像力の高い画像表示を行なうことが可能となる。また、第1の保護層201を第1の光拡散部31の出光面側に配置することで、第1の光拡散手段31の表面の凹凸形状を劣化させずに保つことが可能となる。
なお、本実施の形態では、選択的光透過・吸収層203の出光面側に選択的光透過・吸収層203を配置する場合について説明したが、図18に示す投写型表示装置106のように、第1の基盤33の入光面側に選択的光透過・吸収層203を配置してもよい。
このように、実施の形態4によれば、入光面側フレネルレンズ32の出光面がわであって、第1の光拡散部31の入光面側に選択的光透過・吸収層203を配置しているので、スペックルによる画像劣化を低減しつつ、解像力の高い画像表示を行なうことが可能となる。