JP4954122B2 - 大入熱エレクトロスラグ溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は溶接入熱400kJ/cm以上の大入熱エレクトロスラグ溶接方法に関し、特に、490〜740MPa級の厚板(厚さ40mm以上)の高張力鋼板を溶接する際の溶接継手方向の各部で良好な靱性値を得ることを可能にする大入熱エレクトロスラグ溶接方法に関する。
エレクトロスラグ溶接方法は、主として、鉄骨の4面BOX柱における内ダイアフラムの立向溶接に使用されており、一般に高能率溶接が実現されるサブマージアーク溶接と比べてもエレクトロスラグ溶接方法は高能率であり、大入熱1パス溶接が可能な溶接方法である。
ところでエレクトロスラグ溶接が適用される建築物の部材及び骨組に関して、近年、地震時の塑性変形能力の確保及び長寿命化の観点から、溶接金属部にも高靱性値が要求されている。しかし、エレクトロスラグ溶接は他のアーク溶接と比べて厚板になると溶接入熱が800kJ/cm程度と大きいため、溶接金属の冷却速度が小さくなり、組織が粗大化する結果、溶接金属の靱性が低下するという問題がある。
このような溶接金属の靱性改善のために溶接金属に微量のTiとBを添加することにより、溶接金属組織を微細化し、靭性を改善する方法が公知である。ところが、エレクトロスラグ溶接においては、溶接線方向での靱性値にばらつきが大きく、試験片採取箇所によっては満足な靱性値が得られないという問題点が残存している。
エレクトロスラグ溶接における靭性確保の従来技術としては、特許文献1乃至4が開示されている。
特許文献1及び特許文献2においては、溶接用ワイヤに、C,Si,Mn,Al,Ni,Mo,Ti等を積極添加すると共に、塩基度の低いフラックスを使用することにより、溶接金属におけるアシキュラフェライト生成の核となるTiO系酸化物を微細分散させ、なおかつ、粒界フェライトの成長を抑制するBの添加によって靱性を確保する技術が開示されている。
また、特許文献3には、溶接ワイヤに、C,Si,Mn,Al,Ni,Mo等を添加し、旧オーステナイト粒界から偏析する粒界フェライトの抑制のため、適正B量を添加し、更に、微細なアシキュラフェライトの生成核となる酸化物形成のため、Tiを適正量含有することにより、靱性を確保している。また、特許文献4においては、C,Si,Mn,Mo,Ni,B等を夫々適正な範囲で添加させ、N量を抑制させたエレクトロスラグ溶接用ワイヤが提案されている。
特開2005−246399号公報 特開2004−114053号公報 特開2003−340592号公報 特開2002−79396号公報
しかしながら、特許文献3及び4においては、フラックス成分が規定されていないと共に、靱性に大きく左右する溶接金属の酸素量については考慮されていない。
また、特許文献1及び特許文献2においては、フラックスの塩基度は規定しているものの、溶接金属の酸素量については何ら開示されておらず、溶接金属の適正なB量は酸素量で異なるため、塩基度を規定しただけの特許文献1及び2においては、溶接金属の靱性を確実に向上させているとはいえない。これでは、溶接継手方向で安定した靱性を確保することが困難である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、溶接入熱が400kJ/cmを超える大入熱エレクトロスラグ溶接においても、溶接継手方向で安定した靱性を確保することができ、特に、490〜740MPa級の厚板(厚さ40mm以上)の高張力鋼板を溶接する際に溶接継手方向で良好な靱性値を得ることができる大入熱エレクトロスラグ溶接方法を提供することを目的とする。
本発明に係る大入熱エレクトロスラグ溶接方法は、溶接ワイヤ及び溶接フラックスを使用する大入熱エレクトロスラグ溶接方法において、
前記溶接ワイヤは、ワイヤ全質量当たり、C:0.02乃至0.25質量%、Si:0.05乃至1.80質量%、Mn:0.50乃至3.50質量%、Ni:3.00質量%以下、Mo:0.05乃至2.00質量%、Al:0.005乃至0.080質量%、Ti:0.05乃至0.35質量%、B:0.003乃至0.018質量%、Cr:0.30質量%以下、V:0.030質量%以下、Nb:0.030質量%以下、N:0.012質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
前記溶接フラックスは、フラックス全質量当たり、FeO:4.5質量%以下、B:1.5質量%以下を含有し、
前記フラックスのSiO含有量(質量%)を[SiO]、CaO含有量(質量%)を[CaO]、Al含有量(質量%)を[Al]、CaF含有量(質量%)を[CaF]、MgO含有量(質量%)を[MgO]、MnO含有量(質量%)を[MnO]、TiO含有量(質量%)を[TiO]、FeO含有量(質量%)を[FeO]としたとき、下記数式(1)で与えられる塩基度BLの値を0.5乃至1.5とし、
前記溶接ワイヤ中のB含有量を(B)としたとき、塩基度BLと溶接ワイヤ中のB量(B)から下記数式(2)で与えられる変数(X)が9.8乃至20.8を満足することを特徴とする。
Figure 0004954122
Figure 0004954122
この大入熱エレクトロスラグ溶接方法において、前記溶接ワイヤのNi含有量は、ワイヤ全質量当たり、Ni:0.50乃至3.00質量%であることが好ましい。特に好ましくは、前記溶接ワイヤのNi含有量は、Ni:0.50乃至2.00質量%である。
本発明によれば、490〜740MPa級の厚板(厚さ40mm以上)の高張力鋼板の溶接のように、溶接入熱が400kJ/cmを超える大入熱エレクトロスラグ溶接において、溶接継手方向で安定した靱性を確保することができる。
本発明者等は、入熱が400kJ/cmを超える大入熱エレクトロスラグ溶接においても、溶接継手方向で安定した靱性を確保するためには、主として溶接金属B量と溶接金属酸素量を適切に規定することが必要であるとの知見を得、本発明を完成させたものである。
以下、本発明について更に詳細に説明する。先ず、本発明にて使用する溶接ワイヤの組成及びその成分限定理由について説明する。
「C:0.02乃至0.25質量%」
Cは溶接金属の強度と靱性を確保するために有効な元素であるが、C含有量が0.02質量%未満では、その効果が得られない。一方、C含有量が0.25質量%を超えると、溶接金属の靱性が低下すると共に高温割れ発生の懸念がある。よって、C含有量は0.02乃至0.25質量%とする。
「Si:0.05乃至1.80質量%」
Siは溶接金属の脱酸作用と焼入れ性を確保すると共に、溶接金属の湯流れを安定させるために必要な元素である。しかし、Si含有量が0.05質量%未満ではこの効果が得られない。一方、Si含有量が1.80質量%を超えると、高温割れ発生が懸念され、かつ、溶接金属部の硬化により靱性が劣化する。よって、Si含有量は0.05乃至1.80質量%とする。
「Mn:0.50乃至3.50質量%」
Mnは脱酸剤として作用すると共に、溶接金属の焼入れ性を向上させる元素であり、溶接金属の靱性安定化のために必要な元素である。しかし、Mn含有量が0.50質量%未満の場合、十分な焼入れ性及び靭性が得られない。一方、Mnが3.50質量%を超えると、焼入れ性が高くなり過ぎ、強度が上がり、耐高温割れ性が劣化すると共に、靱性が劣化する。よって、Mn含有量は0.50乃至3.50質量%とする。
「Ni:3.00質量%以下」
本願第1発明においては,Ni含有量は3.00質量%以下である。Niは一般的には溶接ワイヤに添加することにより、マトリックスを強化し、靱性を向上させる効果があるが、本願第1発明では靭性向上効果はMoの添加で補っている。しかし、Ni含有量が3.00質量%を超えると、A3変態点の低下により、固液共存域を増加させ、結果として耐高温割れ性が劣化する。よって、Ni含有量は3.00%以下とする。
「Ni:0.50乃至3.00質量%」
また、本願第2発明においては、Ni含有量は0.50乃至3.00質量%である。更に一層、靭性を向上させようとする場合は、Niを0.50質量%以上と、積極的に添加してもよい。靱性向上の効果を得るためにはNiを0.50質量%以上添加する必要がある。よって、Ni積極添加の際のNi含有量は、0.50乃至3.00質量%とする。なお、溶接ワイヤ中のNi含有量が2.00質量%を超えると、溶接金属の靭性向上効果は飽和する一方で、溶接ワイヤの製造コストが上昇するため、好ましくは、Ni含有量を0.50乃至2.00質量%とする。
「Mo:0.05乃至2.00質量%」
Moは溶接金属の焼入れ性を高め、溶接金属の強度と靱性の向上に大きな効果があるが、Mo含有量が0.05質量%未満であると、上記効果が期待できない。一方、Mo含有量が2.00質量%を超えると、溶接金属の高温割れが発生する可能性があり、かつ、過剰な硬化により溶接金属の靱性が劣化する。よって、Mo含有量は0.05乃至2.00質量%とする。
「Al:0.005乃至0.080質量%」
Alは溶接金属の脱酸効果のために含有される元素である。しかし、Al含有量が0.005質量%未満の場合、その効果が発揮されず、溶接金属の焼入れ性低下、及び靱性劣化が生じる。一方、Al含有量が0.080質量%を超えると、Al酸化物が多量に形成され、アシキュラフェライト生成の核となるTi酸化物の生成を阻害するため、靭性が劣化する。よって、Al含有量は0.005乃至0.080質量%とする。
「Ti:0.05乃至0.35質量%」
TiはTi酸化物としてアシキュラフェライトを生成する核となるので、粗大な粒界フェライトの生成を防止するために必要な元素である。しかし、Ti含有量が0.05質量%未満の場合、酸化物の生成が不十分で、溶接金属の靱性向上が得られない。一方、Tiが0.35質量%を超えると、溶接金属中のTi析出物が多くなりすぎて、靱性が低下する。よって、Ti含有量は0.05乃至0.35質量%とする。
「B:0.003乃至0.018質量%」
Bは溶接金属の焼入れ性を向上させ、初析フェライトの成長の抑制により、靱性を向上させる元素である。しかし、B含有量が0.003質量%未満の場合、上記効果が期待できない。一方、B含有量が0.018質量%を超えると、溶接金属の焼入れ性が過剰となり、高温割れが発生し易くなると共に、マルテンサイト相の生成により溶接金属の靱性が劣化する。よって、B含有量は0.003乃至0.018質量%とする。
「Cr:0.30質量%以下」
Crは一般的には強度と靱性を向上させる元素であるが、本願第1発明及び第2発明では、強度及び靭性の向上は主として、Moの添加により得ており、一方で、Crの含有量が0.30質量%を超えると、高温割れが発生したり、溶接金属の硬化により靱性が劣化する。よって、Cr含有量は0.30質量%以下とする。
「V:0.030質量%以下」
Vは一般的には溶接金属の強度を向上させるが、前述の如く、本発明ではMo等の他の元素の添加で強度を確保しており、一方で、Vの含有量が0.030質量%を超えると、溶接金属が硬化して靭性が劣化する。よって、V含有量は0.030質量%以下とする。
「Nb:0.030質量%以下」
Nbは一般的にはVと同様に溶接金属の強度を向上させるが、本発明ではMo等の他の元素の添加で強度を確保しており、一方で、Nbの含有量が0.030質量%を超えると、溶接金属が硬化して靭性が劣化する。よって、Nb含有量は0.030質量%以下とする。
「N:0.012質量%以下」
Nは溶接金属の靭性を低下させる元素であるため、その含有量は可及的に少なくすることが好ましい。N含有量が0.012質量%を超えると、靱性の劣化が著しい。よってN含有量は0.012質量%以下とする。
次に、本発明における溶接フラックスの組成であるFeO、及びBの成分限定理由について説明する。
「FeO:4.5質量%以下」
FeOが4.5質量%を超えると溶接安定性が劣化し、場合によっては溶接停止が発生すると共に、溶接金属中の酸素が高くなり、溶接金属中のB量と酸素量とのバランスが崩れて、良好な靱性が得られなくなるため、FeOは4.5質量%以下に規制する。
「B:1.5質量%以下」
本発明においては溶接金属中へのBの供給はワイヤにより行っているため、基本的にはBは添加する必要がない。一方、B量が1.5質量%を超えると、溶接金属中のB量が過大となり、マルテンサイト相の生成により溶接金属の靱性が劣化し、高温割れが発生し易くなる。よって、B含有量は1.5質量%以下に規制する。
次に、本発明における溶接用フラックスの塩基度BLの数値限定理由について説明する。溶接用フラックスは、スラグの融点、流動性及び粘性等の特性を考慮して、その組成が決められており、酸化物と弗化物から構成されている。本発明では溶接金属中の酸素量を決める指標として塩基度BLを使用し、この塩基度BLの範囲を適切にすることにより、溶接金属中の酸素量を適切な範囲に調整した。なお、塩基度BLは前記数式1で算出される値である。
「塩基度BL:0.5乃至1.5」
塩基度BLが0.5未満の場合、溶接金属中の酸素量が過剰になり、靱性の向上が期待できない。一方、塩基度BLが1.5を超えると、スラグの融点が高くなり過ぎて、溶接中に停止が発生する。なお、溶接停止とは、スラグ浴の融点が高く、粘性が過大になりすぎて、ワイヤ−スラグ間の通電が悪くなり、溶接中に通電が停止し、溶接が停止する現象である。よって、塩基度BLは0.5乃至1.5とする。
「変数(X):9.8乃至20.8」
次に、溶接フラックスの塩基度BLと溶接用ワイヤのB量の関係について説明する。上述の如く、溶接フラックスの塩基度BLは溶接金属中の酸素量と相関する値である。一方、溶接ワイヤ中のB量は適正な固溶Bの生成により初析フェライト相の成長を抑制するため、靱性に極めて有効である。このような固溶Bの生成にはBの酸化物及び窒化物として固定されないだけのBの添加が必要である。エレクトロスラグ溶接のように安定した靱性を得難い場合には、溶接金属のB量と溶接金属の酸素量を制御することにより固溶Bを生成させ、溶接線方向で安定した靱性を得ることが可能である。そのときは、溶接ワイヤ中のB含有量(B)と、塩基度BLから得られる数式2の値(変数(X))を、9.8乃至20.8にする。(X)が9.8未満である場合は、溶接フラックスの塩基度BLに対して溶接ワイヤのB量が低すぎるため、固溶Bが生成されず、安定した靭性が得られない。一方、(X)が20.8を超えると、溶接フラックスの塩基度BLに対して溶接ワイヤのB量が高すぎるため、固溶B量が過剰となり、溶接金属が硬化し、靱性が劣化し、高温割れが発生する場合がある。よって、(X)の範囲は9.8乃至20.8とする。
なお、溶接フラックスの成分組成は、例えば、以下のとおりである。
SiO:25乃至50質量%
CaO:5乃至25質量%
Al:15質量%以下
CaF:20質量%以下
MgO:16質量%以下
MnO:25質量%以下
TiO:10質量%以下
次に、本発明の実施例について本発明の範囲から外れる比較例と比較して本発明の効果について説明する。図1は溶接試験にて使用した溶接継手であり、JIS規格SN490に規定されたフラットバーを側板cとして使用したものである。図中の数値は、各部材の寸法であり、溶接長は、800mmである。スキンプレートa、ダイアフラムbは厚さが60mmの厚板である。
下記表1はスキンプレートa及びダイアフラムbの組成(質量%)を示す。但し、表1における残部は、Fe及び不可避的不純物である。そして、下記表2に示す溶接条件でエレクトロスラグ溶接を実施した。なお、溶接フラックス投入量は120gで行った。溶接ワイヤの組成を下記表3−1、表3−2、表3−3、表3-4に示す。また、溶接フラックスの塩基度BL、変数(X)の値及び組成を、前記表3−1〜3−4に合わせて示す。この表3−1〜3−4において、フラックスの種類F1〜F6の組成は、下記表4に示すとおりである。
溶接終了後、超音波探査試験で高温割れの有無を確認し、図2に示す採取位置から、引張試験片d及びシャルピー衝撃試験片eを採取し、溶接金属の機械的性質を調査した。引張試験片は、300mmの箇所のみ採取し、引張試験を実施した。衝撃試験片は、溶接線方向の200mm、400mm、600mmの箇所で採取し、試験温度は0℃で実施した(n=3、平均値)。試験結果を下記表5−1,5−2に示す。
Figure 0004954122
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表5−1及び表5−2に示すように、本発明の実施例No.1〜19においては、溶接ワイヤの化学組成、溶接フラックスの塩基度BL、数式2の値(X)について、本発明の範囲を満足するため、良好な引張性能及び溶接線方向においての良好な衝撃性能が得られた。
一方、比較例No.20については、C量が規定範囲より低いため、引張強度が低く、靭性が低かった。比較例No.21については、C量が規定範囲より高いため、高温割れが発生し、試験を中止した。比較例No.22については、Si量が規定範囲より低いため、溶接金属の焼入れ性が不十分となり、引張強度及び靱性が低かった。比較例No.23については、Si量が規定範囲より高いため、高温割れが発生し、試験を中止した。比較例No.24については、Mn量が規定範囲より低いため、焼入れ性が不十分で、引張強度と靱性が低値であった。比較例No.25については、Mn量が規定範囲より高いため、焼入れ性が過大で割れが発生し、試験を中止した。比較例No.26については、Ni量が規定範囲より高いため、高温割れが発生し、試験を中止した。比較例No.27については、Mo量が規定範囲より低いため、焼入れ性が不十分で、引張強度と靱性が低かった。比較例No.28については、Mo量が規定範囲より高いため、高温割れが発生し、試験を中止した。比較例No.29については、Al量が規定範囲より低いため、脱酸効果が十分でなく、靱性値が低かった。比較例No.30については、Al量が規定範囲より高いため、Al酸化物の多量生成により、靱性が劣化した。比較例No.31については、Ti量が規定範囲より低いため、アシキュラフェライト相の生成が十分でなく、靱性値が低かった。比較例NO.32については、Ti量が規定範囲より高いため、溶接金属のTi析出物が過大となり、靱性が劣化した。比較例No.33については、B量が規定範囲より低いため、初析フェライトの成長抑制効果が十分でなく、また、数式2の値(X)が規定範囲より低いため、固溶Bが生成されず、これに伴い初折フェライト抑制効果が不十分となり、靱性値が低かった。比較例No.34については、B量が規定範囲より高いため、また、数式2の値(X)が規定範囲より高いため、固溶Bが過剰で、溶接金属の硬化により高温割れが発生し、試験を中止した。比較例No.35については、Cr量が規定範囲より高いため、高温割れが発生し、試験を中止した。比較例No.36については、V量が規定範囲より高いため、靭性が劣化した。比較例No.37については、Nb量が規定範囲より高いため、靭性が劣化した。比較例No.38については、N量が規定範囲より高いため、靱性が劣化した。比較例No.39については、溶接用フラックスの塩基度BLが規定範囲より低いため、溶接金属の酸素量が過大となり、靱性値が低かった。比較例No.40については、BLが規定範囲より高いため、スラグの融点が高く、溶接が停止したため、中止した。比較例No.41、42については、数式2の値(X)が規定範囲より低いため、固溶Bが生成されず、これに伴い初折フェライト抑制効果が不十分となり、靱性が劣化した。比較例No.43、44、45については、数式2の値(X)が規定範囲より高いため、固溶B量が過剰で、溶接金属の硬化により、靭性が劣化した。比較例No.46については、FeO量が規定範囲より高いため、溶接が安定せず、溶接試験を中止した。比較例No.47についてはB量が規定範囲より高いため、高温割れが発生し、試験を中止した。
なお、溶接金属B量−塩基度と吸収エネルギーの関係を図3に示す。この図3は表5−1,5−2の値をワイヤ中のB量(B)と、塩基度BLの値で整理したものである。図3中、○は靭性値が良好な場合(採取位置3カ所全てで100Jを超える場合)、×は靭性値が低い場合(採取位置3カ所のうち、1つでも100Jを満足しない場合)を示す。この図3に示すように、塩基度BLが0.5乃至1.5であり、数式2の値(X)がワイヤ中のB量(B)及び塩基度BLとの関係で、図3中実線にて示す範囲にある場合は、靭性値が高く、この範囲から外れる場合は、靭性値が低い。
溶接試験に供した溶接継手を示す模式図である。 試験片の採取位置を示す模式図である。 横軸に溶接ワイヤ中のB量をとり、縦軸に塩基度BLをとって、靭性値が高い範囲を示すグラフ図である。
符号の説明
a:スキンプレート
b:ダイアフラム
c:側板
d:引張試験片
e:シャルピー衝撃試験片

Claims (3)

  1. 溶接ワイヤ及び溶接フラックスを使用する大入熱エレクトロスラグ溶接方法において、
    前記溶接ワイヤは、ワイヤ全質量当たり、C:0.02乃至0.25質量%、Si:0.05乃至1.80質量%、Mn:0.50乃至3.50質量%、Ni:3.00質量%以下、Mo:0.05乃至2.00質量%、Al:0.005乃至0.080質量%、Ti:0.05乃至0.35質量%、B:0.003乃至0.018質量%、Cr:0.30質量%以下、V:0.030質量%以下、Nb:0.030質量%以下、N:0.012質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    前記溶接フラックスは、フラックス全質量当たり、FeO:4.5質量%以下、B:1.5質量%以下を含有し、
    前記フラックスのSiO含有量(質量%)を[SiO]、CaO含有量(質量%)を[CaO]、Al含有量(質量%)を[Al]、CaF含有量(質量%)を[CaF]、MgO含有量(質量%)を[MgO]、MnO含有量(質量%)を[MnO]、TiO含有量(質量%)を[TiO]、FeO含有量(質量%)を[FeO]としたとき、下記数式(1)で与えられる塩基度BLの値を0.5乃至1.5とし、
    前記溶接ワイヤ中のB含有量を(B)としたとき、塩基度BLと溶接ワイヤ中のB量(B)から下記数式(2)で与えられる変数(X)が9.8乃至20.8を満足することを特徴とする大入熱エレクトロスラグ溶接方法。
    Figure 0004954122
    ・・・(1)
    (X)=1000×(B)+5.1×BL ・・・(2)
  2. 前記溶接ワイヤのNi含有量は、ワイヤ全質量当たり、Ni:0.50乃至3.00質量%であることを特徴とする請求項1に記載の大入熱エレクトロスラグ溶接方法。
  3. 前記溶接ワイヤのNi含有量は、ワイヤ全質量当たり、Ni:0.50乃至2.00質量%であることを特徴とする請求項2に記載の大入熱エレクトロスラグ溶接方法。
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