JP4953402B1 - 冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造 - Google Patents
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Abstract
冷凍施設および冷蔵施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造において、建造物下における地盤の冷却による凍上現象を防止し、且つ、建造物内に備わる冷蔵施設、冷凍施設の熱損失の低減が可能な床下構造を提供する。
【解決手段】
冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造において、建造物基礎と、これに続く床材とを備え、上記床材と建造物基礎との間に第一断熱層を備え、建造物基礎を含む建造物構造下面における面構造と、地盤との間に第二断熱層を備え、第一断熱層と第二断熱層との間に屋外外気を貫通させるための貫通孔を有しない空気層を備える。
【選択図】図1
Description
しかしながら、本発明者は鋭意検討により、昨今の環境問題、エネルギー問題とも相まって、これら熱損失、エネルギー効率低下の問題が非常に重要な課題であることを認識し、しかして本発明を提供するものである。即ち、本発明は、冷凍施設および冷蔵施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造において、建造物下における地盤の冷却による凍上現象を防止し、且つ、建造物内に備わる冷蔵施設、冷凍施設の熱損失の低減が可能な床下構造の提供を目的とするものである。
(1)冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造において、
建造物基礎と、これに続く床材とを備え、
上記床材と建造物基礎との間に第一断熱層を備え、
建造物基礎を含む建造物構造下面における面構造と、地盤との間に第二断熱層を備え、
第一断熱層と第二断熱層との間に屋外外気を貫通させるための貫通孔を有しない空気層を備えることを特徴とする冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造、
(2)冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造において、
床材と、建造物基礎との間に第一断熱層を備え、
建造物基礎と、これに続く床材とを備え、
建造物基礎を含む建造物構造下面における面構造と、地盤との間に第二断熱層を備え、
第一断熱層と第二断熱層との間に冷気保持可能な空気層を備えることを特徴とする冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造、
(3)建造物基礎下面を構成する面構造略全面および建造物基礎間における建造物下面を構成する面構造略全面の少なくとも一方に直接または間接に接して第二断熱層が設けられていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造、
(4)基礎構造を含む建造物構造体の外周側面であって少なくとも地盤に埋設されている面に直接または間接に第三断熱層が設けられていることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造、
を要旨とするものである。
まず、図4に示す従来の冷蔵施設および冷蔵施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造(以下、単に「従来の床下構造」ともいう)を説明するための部分概略断面図を示し、次いで、本発明の冷蔵施設および冷蔵施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造(以下、単に「本発明の床下構造」ともいう)の一実施態様における部分概略断面図を図1に示して、本発明を説明する。
床材102と土間コンクリート108との間であって、床材102の下面に接して、断熱材103が設けられており、床材102上方から伝導する冷気がなるべく下方、即ち地盤に伝導しないように断熱が図られている。ただし、断熱材103のみでは、断熱効果は十分ではなく、そのために、後述するとおり、外気の貫通可能な空気層がさらに設けられる。
例えば、建造物に備わる冷凍施設内の温度を−55℃に設定し、地表面から深度3m地点の地盤温度が16.75℃である環境において、床下構造101の各構成の厚みおよび熱伝導率を表1に示す条件とした場合に、本発明者のシミュレーションによれば、符号110で示す温度計算位置Aでは−54.12℃であり、符号111で示す温度計算位置Bでは、+1.51℃となる。これは、空気層106の存在により地盤付近においては0℃以上の温度が示され、凍上現象を充分に防止することができる反面、−55℃という設定温度の冷凍施設に対し熱損失を与えるに充分な高温であり、これを補い−55℃に室温を維持するためには、熱損失を補填する熱エネルギーを要する。
図1に示す本願発明の床下構造1は、ベタ基礎である土間コンクリート7上に続く床材2を備えて構成されている。床材2の上には、図示省略される冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物が存在してよい。尚、図1においては、土間コンクリート7を採用する例を示したが、本発明における基礎構造あるいは基礎構造間において、土間コンクリートに替わってスラブコンクリートなどの床面構造が採用されてもよい。
床材2と土間コンクリート7との間であって、床材2の下面に接して第一断熱層3が設けられており、第一断熱層3と土間コンクリート7との間には、方塊状のコンクリートブロック5が複数配列されている。コンクリートブロック5の内部には複数の空洞が形成されており、この空洞により空気層6が形成されている。空気層6は、屋外外気との貫通を貫通させるための貫通孔を有していないという特徴を有する。
尚、土間コンクリート7上に形成される均しモルタル4は、本願発明における必須の構成ではないが、空気層6を形成するコンクリートブロック5上において、第一断熱層3を設置する設置面を平坦化する他、床材と断熱材を支持する趣旨等で、このような均しモルタル4を設けてもよい。
土間コンクリート7の下面と地盤との間であって、土間コンクリート7の下面に接して第二断熱層8が形成されている。第二断熱層8の下面は、直接に地盤と接していても良いが、水はけなどを良くするために、地盤上に砕石層10を形成し、その上に調整砂を敷き詰めた調整砂層9を形成した上で、第二断熱層8を設置することができる。以下に床下構造1の各構成についてさらに詳細に説明する。
本願発明は、冷凍施設および冷蔵施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造であることが予定される。冷凍施設あるいは冷蔵施設は、冷凍品や冷蔵品を貯蔵する倉庫、冷凍品や冷蔵品の製造、調理、仕分け、荷捌き等を行う作業室を含み、使用の目的によらず、冷凍または冷蔵するための施設をいう。冷凍施設あるいは冷蔵施設内の温度は特に限定されないが、凍上現象の発生の虞がある−20℃〜−55℃程度の温度の施設を有する建造物の床下構造として、本発明は好適であり、凍上現象の発生を防止するとともに、冷凍施設あるいは冷蔵施設の熱損失を従来に比べて大きく低減することが可能である。
本発明における建造物基礎は、上述する建造物の基礎構造として選択され得るいずれの基礎構造であってもよい。一般的な分類では、ベタ基礎、杭基礎、あるいは布基礎等が汎用されるが、これらに限定されず、建造物の規模や地盤に適した任意の基礎構造であってよい。また、冷凍施設あるいは冷蔵施設の特殊性に応じて変形された基礎構造であってもよい。例えば、冷凍施設あるいは冷蔵施設において荷物の収納などのために多段棚を設置する際には、棚を支える支柱の根元が埋めこまれた基礎スラブなどであってもよい。
本発明における床材は、後述する第一断熱層と直接または間接に連続する床材であって、例えば、建造物が2階以上であるか地下室を有する建物である場合には、実質的に建造物基礎と最も近い、最下階の床面を構成する床材を指す。例えば、地下室を有しない建造物であれば、1階床面を構成する床材を意味し、地下室を有する建造物である場合には、最も最下階における地下室の床面を構成する床材を意味する。
本発明における第一断熱層は、上記床材と建造物の基礎構造との間に位置する、断熱作用を発揮する層である。第一断熱層は、連続的であっても、断続的であってもよいが、効率的な断熱作用を発揮させるためには、床材の下面においてその他の建造物の構成を避けた上、連続的に設けることが望ましい。また、建造物において、少なくとも冷蔵施設あるいは冷凍施設が設けられた床面下方においては、第一断熱層が連続的に設けられることが望ましい。
上記熱抵抗値の数値範囲は、本発明の第一断熱層である発泡樹脂材を限定するものではないが、かかる数値範囲内における熱抵抗値を示す発泡樹脂材を第一断熱層とすることにより、該発泡樹脂材おいて充分な断熱効果を発揮させることができ、冷凍施設あるいは冷蔵施設からの冷熱の下方への伝達を有意に小さくすることができる。
本発明における第二断熱層は、建造物基礎を含む建造物構造下面における面構造と地盤との間に備えられる断熱層である。
ここで本発明において面構造とは、建造物の荷重を面で受けて荷重分散可能な面構造(以下、「面構造1」ともいう)、または建造物基礎に含まれて建造物の内部を外界から遮蔽するための面構造(以下、「面構造2」ともいう)、あるいは、建造物基礎と一体化されて建造物の内部を外界から遮蔽するための面構造(以下、「面構造3」ともいう)あればよい。上記面構造1としては、ベタ基礎自体、パイルドラフト工法基礎や杭基礎における基礎スラブ、任意の基礎の底部におけるフーチングなどが含まれるがこれに限定されない。また、上記面構造2としては、一般的な杭基礎における基礎スラブなどが含まれるがこれに限定されない。また上記面構造3としては、任意の基礎構造に一体化して設けられる土間コンクリートなどが含まれるがこれに限定されない。
本発明の建造物基礎は、上述のとおり、ベタ基礎や、基礎スラブと杭体とを備える杭基礎など種々の基礎構造であってよい。したがって、例えば、ベタ基礎が採用される場合であって当該ベタ基礎が、一般的なベタ基礎、即ち、柱脚を適当な位置において縦横に連続した地中梁と、それに囲まれた基礎スラブとから構成される場合には、該基礎スラブが面構造と理解され、該基礎スラブと地盤との間に第二断熱層が設けられる。また、基礎スラブと杭体とを備える杭基礎が採用される場合、該基礎スラブが面構造と理解されるため、杭体部分を除いた領域であって上記基礎スラブ下面と地盤との間に、第二断熱層が設けられる。
断熱効果をより充分に発揮させるためには、特に、建造物基礎下面を構成する面構造略全面あるいは、建造物基礎間における建造物下面を構成する面構造略全面に直接または間接に接して第二断熱層が設けられていることが望ましい。一つの床下構造において、建造物基礎下面を構成する面構造および建造物基礎間における建造物下面を構成する面構造のいずれをも備える場合には、いずれかの面構造、あるいは全ての面構造の略全面に直接または間接に接して第二断熱層が設けられていることが望ましい。
本発明における空気層は、第一断熱層と第二断熱層との間に設けられる、空気の充填された閉空間であり、該閉空間内の空気と屋外外気との入れ替えが実質的に行われない空気層である。即ち、本発明の空気層は、従来の床下構造における空気層のように、屋外外気を貫通させるための貫通孔を有しない。
即ち、第一断熱層は上述のとおり、床材下にあるために、直接的に冷凍施設あるいは冷蔵施設からの冷気が下方向に伝導することを妨げるための構成である。また、第二断熱層は、建造物と地盤とを直接的に断熱するため、凍上現象の発生防止に非常に有効である。そして本発明における空気層は、上述のとおり、外気との空気の入れ替えが行われないため、空気層内の空気の温度は、外気により換気された場合に比べて、非常に低い。しかしながら、当該空気層があることで、第一断熱層を介して上方から伝導する冷熱を有意に低減することができるのである。これは、空気層が貫通孔を有しないため、内部の空気がほぼ静止した状態となり、空気により熱伝導率が0.01〜0.03W/mK程度に示されることによる。したがって、本発明における空気層は、内部を従来の空気層により低温に維持することによって、冷凍施設あるいは冷蔵施設の熱損失を防止するだけではなく、上方から伝導する冷気の熱伝導を低減し、しかして凍上現象の発生防止にも大きく寄与するのである。
さらに、符号13で示される温度計算位置Cでは、+11.5℃となる。この結果から、第二断熱層の設置により、非常に優れた断熱作用が発揮され、空気層内の空気を外気と入れ替えることなく、充分に凍上現象の発生を防止することができることが理解される。
尚、図1および図4に関する上記シミュレーションは、宇田川光弘著「パソコンによる空気調和計算法」の参照および有限要素法解析ソフトウェアの利用により実施した。
基礎構造として直接基礎であるベタ基礎が採用される本発明の床下構造の一実施態様を示す概略断面図を図2に示す。
尚、本発明において選択されるベタ基礎は、建造物の基礎構造として知られるベタ基礎として理解される基礎構造であれば、適宜選択して実施することができる。たとえば、建造物の下面略全面に相当する面積を含む地盤を必要量だけ掘り、そこに鉄筋を配筋しコンクリートを流し込んで作られる基礎スラブを有し、鉄筋コンクリート面全面で建造物の荷重を分散し支持する構造を主体とするものが一般的である。ベタ基礎は、ベタ基礎の主体である基礎スラブが面構造と理解することができる。
また、本発明における空気層は、外気との空気の入れ替えを行なわず、内部の空気が静止し、あるいは静止に近い状態にあるため、熱伝導率が低く、優れた断熱効果をも発揮する。したがってこの観点から、空気層を二層以上に設けることは、凍上現象の発生を防止するために効果的である。
本発明における第三断熱層は、上述する第一断熱層、第二断熱層と同様の材料で形成することができるが、1つの床下構造において、必ずしも、第一断熱層あるいは第二断熱層と同一の材料で形成されなくてもよい。第三断熱層の厚みは、第三断熱層の構成部材や、床下構造の実施環境、地下室あるいは地下ピットの有無、冷凍施設あるいは冷蔵施設の予定される設定温度などを勘案して適宜設定してよいが、例えば第三断熱層を発泡樹脂板で構成する場合には、100mm〜300mm程度で、有意な断熱効果が示されうる。
次に、基礎構造として杭基礎が採用される本発明の床下構造の一実施態様を示す概略断面図を図3に示す。
尚、本発明において選択される杭基礎は、建造物の基礎構造として知られる杭基礎として理解される基礎構造であって、少なくとも杭体と、基礎スラブを備える杭基礎であれば、適宜選択して実施することができる。杭基礎においては、基礎スラブが本発明における面構造と理解される。より詳細に述べれば、建造物の下面に位置する地盤において、適宜決定された位置に、杭体を埋設し、且つ、地盤の表層を必要だけ掘り下げ、上記杭体と直接または間接に結合される基礎スラブが構築される杭基礎構造であればよい。
2 床材
3 第一断熱層
4 均しモルタル
5 コンクリートブロック
6 空気層
7 土間コンクリート
8 第二断熱層
9 調整砂層
10 砕石層
11 温度計算位置A
12 温度計算位置B
13 温度計算位置C
21 本発明の床下構造
22 基礎スラブ
23 梁
24 ベタ基礎
25 コンクリートスラブ
26 地下ピット
28 床材
29 第一断熱層
30 均しモルタル
31 第一空気層
32 コンクリート枠体
33 第二空気層
34 均しモルタル
35 第二断熱層
36 調整砂層
37 砕石層
38 第三断熱層
39 排水板
41 杭体
42 杭頭
43 基礎スラブ
44 梁
45 床コンクリートスラブ
46 地下ピット
47 床材
48 第一断熱層
49 空気層
50 第二断熱層
51 建造物
52 一階部屋
53 第三断熱層
54 壁面断熱層
101 従来の床下構造
102 床材
103 断熱材
104 均しモルタル
105 コンクリートブロック
106 空気層
107 貫通孔
108 土間コンクリート
109 砕石層
110 温度計算位置A
111 温度計算位置B
Claims (4)
- 冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造において、
建造物基礎と、これに続く床材とを備え、
上記床材と建造物基礎との間に第一断熱層を備え、
建造物基礎を含む建造物構造下面における面構造と、地盤との間に第二断熱層を備え、
第一断熱層と第二断熱層との間に屋外外気を貫通させるための貫通孔を有しない空気層を備えることを特徴とする冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造。 - 冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造において、
床材と、建造物基礎との間に第一断熱層を備え、
建造物基礎と、これに続く床材とを備え、
建造物基礎を含む建造物構造下面における面構造と、地盤との間に第二断熱層を備え、
第一断熱層と第二断熱層との間に冷気保持可能な空気層を備えることを特徴とする冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造。 - 建造物基礎下面を構成する面構造略全面および建造物基礎間における建造物下面を構成する面構造略全面の少なくとも一方に直接または間接に接して第二断熱層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造。
- 基礎構造を含む建造物構造体の外周側面であって少なくとも地盤に埋設されている面に直接または間接に第三断熱層が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の冷蔵施設および冷凍施設の少なくとも一方を備える建造物の床下構造。
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