JP4952964B2 - 電子出版システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は情報ネットワークを利用した電子出版システムに係り、特に、読者個人の要求や読者の個人情報に応じた編集を行うことで、出版物の違法コピーを防止することができ、且つ、個人のニーズに合致した出版物を提供することができる電子出版システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターネットを始めとする情報通信網、パーソナルコンピュータ、高解像度の印刷装置の普及や、活版印刷とほとんど変わらない印字品質を実現できるPDF(Portable Document Format)などの文書形式の普及により、ネットワークを介した電子出版が普及する条件は整いつつある。
【0003】
殊に、PDFはプラットフォームに依存せず、また、PDF文書作成時に使用したソフトやフォントを必要とせずにディスプレイへの表示、プリンタからの印刷ができ、更に、拡大、縮小しても美しいレイアウトが保て、マルチメディア情報やインタラクティブな仕組みを作り込めることなど、電子出版に向いた特徴を持っている。
【0004】
また、必要なときに必要な部数を提供する仕組みとして、オンデマンド印刷(on-demand printing)があり、配布先を限定して作成するような印刷物を作ることができるので余分な在庫を抱えることもなく、少ロット短納期でメリットを生む構造になっている。
【0005】
このオンデマンド印刷は、予め出来あがっている固定された内容を電子ないし紙などの媒体で利用者に提供するものであるが、電子出版の持つ「再編集可能」という特徴を活用しきっていないのが現状である。
【0006】
また、米国ボイジャー社が1992年に開発した電子出版のためのソフトとして、エキスパンドブック(Expanded book )がある。これは本の紙面デザインに似せてマウス・クリックでぺージをめくるようにして読んでいくタイプのもので、WindowsとMacintoshの両方のプラットホームに対応しているのが特徴である。最近では、エキスパンドブックのデータをインターネット上で配布・閲覧するネットエキスパンドブック(Net Expanded book )という新しい利用法も登場している。
【0007】
しかし、この方式も紙媒体で出版された内容をCD−ROM等の電子媒体に移転したものであって、百科事典などの巨大なボリュームのものをコンパクトにし、所望する記事を容易に検索できるなどの利点はあるものの、先に述べた電子出版の持つ「再編集可能」であるという特徴を活用しきっていない。
【0008】
この「再編集可能」であるという特徴を活用しきっていないのは、電子出版の持つ「再編集可能」であるという利点、そして容易にコピーができ、劣化がないという利点が、逆に不正コピーの危険性を増幅し、電子出版の持つ可能性の活用を妨げている要因となっているためである。
【0009】
著作物の不正コピーを防止する技術としては、例えば、特開平7−239828号公報に示されている暗号化技術や、電子すかし技術などがあり、これらにより電子出版物の保護が図られてきている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の不正コピー防止技術を以ってしても、未だ決定的な防止技術とはなっていない。それは、暗号を復号化する技術や電子すかしを削除する技術等が出現する可能性を否定できないためであり、実際に、DES(data encryption standard)やRSA(Rivest-Shamir-Adleman scheme)といった暗号技術がパソコン等に搭載されたプログラムによって解読されてしまうといった事態も生じている。このような不正コピー防止技術は、言わば保護しようとする側と解読しようとする側との「いたちごっこ」になってしまい、その結果として莫大な労力や資金を暗号技術の開発などに振り向けざるを得ない状況を生じぜしめている。
【0011】
また、従来の出版システムでは、著作物を一冊、一作品、といった単位で出版しているため、例えば、コンピュータ分野などのように次々と新たな技術が生み出されるような分野の書籍は、すぐに古い内容になってしまう。そのため、新たな技術に対応するためには、発行者側はその度に改訂版を出す必要があり、読者側は1冊の書籍の中の一部の改訂でも必要があれば改訂版を購入せざるを得ない。
【0012】
さらにまた、例えば専門書などは、入門者向け、中級者向け、上級者向けなど、ある程度読者層を絞って作られているが、読者にとってその必要とする情報は千差万別であり、必ずしも上記区分けが読者のニーズに合致していない場合が多い。
【0013】
しかも、ある情報を得るためには、何冊もの書籍を入手しなければならない場合もあり、その結果、入手した中には一部重複した内容が含まれているといったことも往々にしてある。
【0014】
本発明は、以上に述べたような問題を鑑みて成されたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、利用者である読者固有の内容や構成になっている出版物を発行することができる電子出版システムを提供することを目的とする。
【0016】
本発明により出版される出版物は読者固有の内容や構成になっているため、出版物に暗号や電子すかし等の特別な保護措置を講じることなく、自ずと不正コピー等を防止することができ、また、読者個人のニーズに合致した出版物を提供することができる。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、著作物の読者に、電子出版物を提供する電子出版システムであって、
著作物の記事の中に読者情報変数が含まれた著作物データと、その著作物に対する検索キーが登録された第1のデータベースと、
読者のデータが記憶された第2のデータベースと、
読者システムから前記読者の求める著作物データの条件が入力されると、前記第1のデータベースを検索して前記読者の求める著作物データを抽出し、抽出したファイルを合体して一つのファイルにするとともに、前記著作物データに含まれた前記読者情報変数を前記第2のデータベースの前記読者のデータに基づき書き換え、かつ、前記読者システムからの入力に基づき出力書式を決定したPDFファイルを作成し、前記読者システムに送信する再編集処理手段と、を備え、
前記読者に、前記PDFファイルを提供する。
ここで、第2のデータベースには、読者の名前、メールアドレス、性別、年齢、使用言語のうちいずれか一つ以上が記憶され、読者情報変数は、第2のデータベース内の情報に基づき書き換えられることが好ましい。
【0018】
また、著作物データの条件は、著作者名、分野、キーワード、レベルのいずれか一つ以上であり、電子出版物は、読者の知識水準、必要性、嗜好に応じて作成された出版物であることが好ましい。さらに、第1のデータベースには記事単位で著作物データが登録されることが好ましい。
【0019】
本発明により、利用者である読者の個人情報や要求に基づき、出版の対象となる原稿の内容や構成を動的に再編集し、読者固有の内容や構成になっている出版物を発行することができ、それによって出版される出版物は読者固有の内容や構成になっているため、出版物に暗号や電子すかし等の特別な保護措置を講じることなく、自ずと不正コピー等を防止することができ、また、読者個人のニーズに合致した出版物を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は本発明に係る電子出版システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【0022】
図1において、本発明に係る電子出版システムは、書籍の編集及び出版を行うセンターシステム1を中心に、著者用システム2と編集者用システム3、読者用システム4a〜4cとで構成されている。
【0023】
著作物の執筆者である著者は、著者用システム2を用いて著作物データをセンターシステム1に送る。この際に著者は著作物データを直接センターシステム1に送っても良いし、一旦編集者の元に送って、編集者が著作物データを編集・加工した上で編集者用システム3を用いて著作物データをセンターシステム1に送っても良い。
【0024】
著者もしくは編集者がセンターシステム1に著作物データを登録する際には、必ずしも1冊単位、作品単位である必要はなく、雑誌の各記事、書籍の各節、などの比較的少量に区分けされている単位で登録できる。
【0025】
著作物データを受取ったセンターシステム1は、これを自システム内のデータベース9の著作物マスタ90に格納し、管理する。当然、この著作物マスタ90には複数人の著者の著作物データが格納される。
【0026】
一方、書籍の購入者である読者Aは、自分の手元にある読者用システム4を用いて、書籍を発注する。発注する際には、後で説明する読者の個人情報や読者個人の要求内容などからなる発注情報8をセンターシステム1に送る。
【0027】
発注情報8を受取ったセンターシステム1は、読者Aの要求内容に従って、関連のある著作物データの一覧を読者用システム4の画面に表示する。
【0028】
読者Aはその一覧の中から更に自分の求める著作物を取捨選択し、読者用システム4を用いて編集要求をセンターシステム1に送る。
【0029】
この編集要求を受取ったセンターシステム1は、選択された著作物からなる著作物を、読者Aの個人情報を組み込みながら動的に(ダイナミックに)一冊の電子書籍6aに再編集する。本明細書では、これを動的再編集という。
【0030】
完成した電子書籍6aは、その読者Aに最も相応しい内容及び構成になっており、世界でたった1冊のものとなる。ここで重要なことは、読者Aには読者Aの発注情報8が反映された電子出版物6aが、読者Bには読者Bの発注情報8が反映された電子出版物6bが、同様に読者Cには電子出版物6cが提供されるということである。
【0031】
この電子出版物6a〜6cは、特別に暗号などのコピープロテクションを施すことなく、それぞれの読者A〜Cの手元に送られる。
【0032】
このようにして出版された電子出版物6a〜6cは、その内容及び構成が読者個人のリクエストに従って再編集されており、更に読者の個人情報もその中に組み込まれているため、コピーして第3者に配るなどの不正コピー行為が技術的には可能であっても、その行為を抑制する作用が働くのである。
【0033】
すなわち、読者Aが電子出版物6aをコピーして読者Bに渡しても、その内容と構成は読者Aにとって有用なものとなっており、読者Bにとって有用なものであるとは限らないということである。更に、電子出版物6aには読者Aの個人情報も組み込まれていることから、読者Aには電子出版物6aを不正に配布しようとする意欲を失わせ、また、第3者である読者Bには電子出版物6aを不正に受取る意欲を失わせるのである。
【0034】
次に本発明に係る電子出版システムを構成する各システムの詳細について、図面に基づいて説明する。
【0035】
図2は図1に示した本発明に係る電子出版システムの機能ブロック図である。
【0036】
図2において、センターシステム1、著者用システム2、編集者用システム3、読者用システム4はネットワーク10に接続された構成となっている。
【0037】
このネットワーク10は、インターネットのようなワールド・ワイドなネットワークでも良いし、パソコン通信などの閉じたネットワークなどでも良い。
【0038】
センターシステム1は、入力手段11と出力手段12と通信手段13とデータベース機能9を備えており、これらの各機能の動作を演算手段15と制御手段14で制御している。これらの動作を規定する手段として、読者との対話機能17、著者や編集者との対話機能18、出版処理機能19などのプログラム群を保持している。入力手段11と出力手段12はセンターシステムの保守のためのもので、キーボードやマウスなどの入力装置や、モニターやプリンターなどの出力装置で構成される。通信手段13は、ネットワーク10に接続するために必要なモデム、ターミナル・アダプタなどのネットワーク接続用機器である。
【0039】
また、データベース機能9としてはRDBMS(リレーショナル・データベース管理システム)やSQL(structured query language)などが考えられ、プログラム17〜19はプラットホームに依存しないJavaを使ったソフトウェアが考えられる。センターシステム1から出版される電子出版物の形式は、先に述べたPDF形式やエキスパンドブック形式でも良いし、HTML(hypertext markup language)などでも良い。
【0040】
続いて、著者用システム2について説明する。
【0041】
著者用システム2は、入力手段21と出力手段22と通信手段23とを備えており、これらの各機能の動作を演算手段25と制御手段24で制御している。
【0042】
入力手段21は原稿データを執筆するため、あるいは執筆した原稿を入力するためのもので、キーボードやポインティング・デバイス、FDやCD−ROMなどの記録メディアを読み取るドライブ、スキャナーなどの入力機器で構成される。また、出力手段22はモニターやプリンターなどの出力装置で構成される。
【0043】
通信手段23は、ネットワーク10に接続するために必要なモデム、ターミナル・アダプタなどのネットワーク接続用機器である。
【0044】
また、原稿を執筆するための編集機能27としてテキスト・エディタなどのテキスト編集ソフトやワープロソフトと、出来あがった電子出版物を読むための閲覧機能26としてブラウザ(browser )などの閲覧用ソフトウェアを搭載している。
【0045】
これらの各手段は、原稿を執筆するだけでなく、センターシステム1や編集者用システム3との対話にも用いられる。著者用システム2からセンターシステム1や編集者用システム3へ送る原稿の形式は、単純なテキスト形式で良い。
【0046】
また、編集者用システム3と読者用システム4の構成も、基本的には著者用システム2と同様で、読者用システム4には編集機能は必ずしも必要でない。編集者用システム3の編集機能37は、著者から送られてきた原稿データを、更に編集・加工して付加価値をつけた後、センターシステム1に送るための機能である。編集者用システム3からセンターシステム1へ送る際の原稿データの形式は、著者用システム2と同様に単純なテキスト形式でも良いし、編集した書式を原稿データに付加するためにTeX形式のようなファイルにしても良い。
【0047】
次に、本発明に係る電子出版システムの動作例を図3乃至図5を用いて説明する。図3乃至図4は動作例を表した流れ図であり、図5はセンターシステム1が備えているデータベース9の論理構成図である。
【0048】
図3は、読者側(読者用システム4)とセンター側(センターシステム1)との対話の一例を流れ図に表したものである。
【0049】
読者(ここでは便宜上読者Aとする)は読者用システム4を用いて、先ずネットワーク10を介してセンターシステムにアクセスする(Step01)と、センターシステム1側はアクセスしてきた読者が登録ユーザーかどうかの確認を行う(Step02)。登録ユーザーかどうかの確認は、読者情報マスタ50に当該読者のデータが登録済みか否か確認することで可能である。
【0050】
読者Aが登録済みである場合にはリクエストの入力要求(Step06)に移行するが、登録済みでない場合には読者Aに対してユーザー登録を要求する(Step03)。読者A側の表示装置42上には、例えば、センターのサービスを利用するためには登録が必要という旨のメッセージが表示され、更に以下のような項目の入力が促される(Step04)。
【0051】
(1)ユーザーの氏名
(2)ユーザーのメール・アドレス
(3)性別
(4)年齢
(5)使用言語 など
読者Aにより上記項目が入力されると、センターシステム1は読者Aのための読者コードを発行し、且つ、入力された内容を本発明の電子出版システムを実現するための情報としてデータベース9内の読者情報マスタ50に格納する(Step05)。
【0052】
次に読者Aは、求める著作物の条件(リクエスト内容)の入力が促される(Step06)。その項目は、例えば以下の項目である。
【0053】
(1)著作者名
(2)分野
(3)キーワード
(4)レベル など
分野には、例えば、コンピュータ、バイオ、環境などの大分類から、C言語、遺伝子組替え、風力発電、といった中小分類まで含まれる。キーワードは、例えば、「TCP/IP」「Delphi」「APEC」といった技術用語などであり、レベルは、超入門、入門、標準、高度、専門家レベル、などである。
【0054】
センターシステム1は、これらの項目をベースにして著作マスタ80に対して論理積(AND)や論理和(OR)などの論理検索を行い(Step07)、読者が求める著作物の集合を構成し、そのタイトルからなる一覧表を読者側の表示装置42に表示させる(Step08)。例えば、風力発電関連の著作物を検索した場合には、図6のように表示される。
【0055】
読者Aが各々の著作物の概要を更に知りたいような場合には、該当する著作物をクリックすれば、要約文が表示される。
【0056】
読者Aは、表示装置42上に表示された一覧の中から、自分にとって有用と思われる著作物を必要なだけ選択(例えば、チェックボックスをポインティング・デバイス41でクリックする)する(Step09)。
【0057】
図6に例示したように、この一覧には複数の著者の著作物が特定の分類に基づいて表示されているので、その選択された著作物も複数の著者によるものとなる。すなわち、これはちょうどある特定の読者だけのために編集された特注の本のようになる。
【0058】
このようにして成された構成は、読者の嗜好や必要性に応じて千差万別である。仮に、読者Aが自分の知識水準、必要性、嗜好に応じて作成された出版物を第3者である読者Bに譲渡したとしても、あるいは第3者である読者Bが入手したとしても、その構成は汎用性のある内容でないが故に、読者Bにとっては難しすぎたり、やさしすぎたり、あるいは必要とする内容が欠落していたりというように、必ずしも有用なものではないのである。従って、このようなオーダーメードの書籍には、自ずと不正コピーを抑止する作用が働くのである。
【0059】
本発明の電子出版システムでは、原稿データを雑誌の1記事や書籍の1節、1章程度の小さな範囲を1つの単位として、様々な分類を施した上でデータベースに登録する。従って、読者Aは自分の必要とする著作物の中から必要な記事を選択することができるため、従来のように重複した内容を持つ本を何冊も購入する必要はないため、経済的にも必要最小限の負担で済む。また、著者側は、一冊の本のように多くの原稿を一度に作成しなくても、例えば雑誌の記事のように細かなテーマごとに応じて作成し、出来あがったものから分類やキーワードを付与して登録すれば良いのである。
【0060】
続いて、読者Aの表示装置42には、出力書式の入力画面が表示される。ここで読者は、これらの著作物を印刷する時に使用したい書式情報を入力する(Step10)。入力する書誌情報には、例えば以下のような項目がある。
【0061】
(1)文字の大きさ
(2)縦書き/横書き
(3)用紙の大きさ
(4)開始ページ番号
(5)タイトル
(6)ルビの有無
(7)ページ番号の印刷の有無
これら入力された書式情報は、センターシステム1のデータベース9内の書式マスタ60に格納され、読者毎に管理される。次回からは、同じ書式を使用する場合にはワン・クリックで書式設定が終了するし、別の書式に設定し直しても良い。
【0062】
以上で、ネットワークを介した読者用システム4からの要求(注文)は終了する。センターシステム1はこれらの情報に基づいて、この読者Aのための出版物を作成するために、著作物の動的な編集処理を行う。
【0063】
先ず、該当する著作物のテキストデータの集合体を構成する。すなわち、センターシステム1に蓄えられている著作マスタ80の中から、読者Aが選択した著作物を抽出し、抽出したファイルを合体して1つのファイルにする処理である(Step11)。この処理は、例えばHTML、XML、TeXなどのタグ付きテキストにより行えば良い。TeXによる編集例を図7に示す。ここでは、図6で示した一覧の中から、1番目と4番目の著作物データを読者Aが選択したとする。
【0064】
続いて、先に読者によって入力された書式情報に基づいて、構成した著作データに対する書式設定を行う。TeXによる設定例を図8に示す。
【0065】
図8に示した例は、「文字サイズ12ポ、縦書き」を指定している。
【0066】
次に、著者が著作物の記事の中に読者情報変数を挿入している場合に、読者情報変数の変換処理を行う(Step13)。読者情報変数とは、例えば「%読者名前%」のように表記し、その変数を読者情報マスタ50内の読者固有の情報に置き換えるためのもので、本明細書ではこれを読者情報変数という。例えば、読者Aの氏名が「鈴木太郎」であれば、図9のように変換される。
【0067】
このようにして、書籍の内容及び構成が決定し、それは正に発注した読者A固有の(読者A専用の)出版物となるのである。すなわち、読者Aが所望するの条件に基づいて編集された構成からなる出版物は、第3者である読者Bにとっては必ずしも有用ではないし、また、読者情報変数によって読者Aの個人情報が記事の所々に埋め込まれてた出版物は、発注した読者A個人にとってのみ意味のあるものである。したがって、この出版物を容易に複写することができるからといって、読者Aがこれを第3者(例えば読者B)に不正に譲り渡す可能性は極めて少ないし、また、第3者がこれを不正に入手しようとする可能性も極めて少ない。また、仮に不正コピーが行われたとしても、記事の所々に埋め込まれてた個人情報の内容から、複製元の所有者である読者Aが容易に割り出されるのである。
【0068】
以上のようにして、読者Aの注文内容に応じた構成と内容が具体化されたら、次に、センターシステム1は原稿データをファイル変換して、ユーザーの元へ送付する(Step14)。具体的な例としては、TeXを起動して、コンパイルを行い、dviファイルを作成し、更にこれをdvips などのファイルコンバータによりPostscriptファイルに変換する。
【0069】
作成されたPostscriptファイルは、さらにAcrobat Distiller などのコンバータソフトによりPDFファイルに変換され、センターシステム1内の送信フォルダ(図示せず)に転送される。このように作成されるPDFファイルは、発注者である読者ごとにそれぞれユニークなファイル名が付与される。
【0070】
センターシステム1は、一定サイクルで送信フォルダを監視しており、出来あがったPDFファイルを読者システム4宛てに送信する。
【0071】
以上が、読者からの発注から出版物の納品までの動作例である。
【0072】
次に、図4を基に、著者側(著者用システム2)とセンター側(センターシステム1)との対話の一例を説明する。
【0073】
著者(ここでは便宜上著者Aとする)は著者用システム2を用いて、ネットワーク10を介してセンターシステムにアクセスする(Step31)と、センターシステム1側はアクセスしてきた著者Aが登録済みの著者かどうかの確認を行う(Step32)。登録済みかどうかの確認は、著者情報マスタ80に当該著者Aのデータが登録済みか否か確認することで可能である。
【0074】
著者Aが登録済みである場合には登録番号の取得処理(Step36)に移行するが、登録済みでない場合には著者Aに対して著者登録を要求する(Step33)。著者A側の表示装置42上には、例えば、センターへ著作物を登録するためには著者登録が必要という旨のメッセージが表示され、更に以下のような項目の入力が促される(Step34)。
【0075】
(1)著者の氏名
(2)著者のメール・アドレス
(3)電話番号
(4)FAX番号 など
著者Aにより上記項目が入力されると、センターシステム1は著者Aのための著者コードを発行し、且つ、入力された内容を本発明の電子出版システムを実現するための情報としてデータベース9内の著者情報マスタ80に格納する(Step35)。
【0076】
次に、著者Aは登録したい著作物の登録番号(これが著作物コードとなる)を取得するためにセンターシステム1にその旨要求する(Step36)。それに対して、センターシステム1は登録番号を採番して、その番号を著者Aに通知する(Step37)。
【0077】
次に、著者Aは、その著作物に対する検索キーとして、分類やキーワードを設定する(Step38)。更に、著作物に前記登録番号や検索キーを付与して、センターシステム1に送信する(Step39)。
【0078】
この著作物を受信したセンターシステム1は、著作物、登録番号、検索キーなどをデータベース9内の著作物マスタ90に格納する。
【0079】
以上で、著作物登録を行うための著者システム2とセンターシステム1との対話処理が完了する。この著者システム2とセンターシステム1との対話処理は、対話処理プログラムによって、ある程度自動化することも可能である。
【0080】
以上説明した著作物登録処理の流れの中には、編集者が介在していないが、編集者やデザイナも本発明に係る電子出版システムにおいて重要な役割を担っている。先に説明したように、タグ付きのスクリプト言語(例えば、HTML、XML、TeXなど)を利用する実施形態を例示したが、著者システム2からセンターシステム1に送信されたプレインテキスト(Plain Text)を、センターシステム1内で自動的に加工処理してタグ付きのスクリプト言語を作成することもできるが、特異なレイアウトなど機械的には処理できない部分も多く、これらのものは編集者が編集者システム3を用いて加工処理する必要がある。
【0081】
また、写真や挿絵、装丁など、グラフィックデータを作成することも機械的には出来ないため、デザイナが編集者システム3を用いて加工処理する必要がある。
【0082】
その他、原稿データを編集者を経由させることで、内容のチェック、編集者のネームバリュー、など付加価値を著作物に付加させることができる。
【0083】
以上、本発明の電子出版システムについて、詳細に説明したが、本発明は本実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更を成し得るであろう。従って、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ限定されるものでなければならない。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0085】
第1に、本発明により出版される出版物は読者固有の内容及び構成になっているため、出版物に暗号や電子すかし等の特別な保護措置を講じることなく、出版物の不正コピーを防止することができる。また、出版者や著者は、出版物の不正コピー防止技術の開発に資金や労力を投入しないで済む。
【0086】
第2に、本発明により出版される出版物は読者固有の内容及び構成になっているため、読者個人のニーズに合致した出版物を提供することができ、また、重複した内容の書籍を何冊も入手する必要もなく、経済的な負担が低減される。
【0087】
第3に、著者側は、一冊の本のように多くの原稿を一度に作成しなくても、例えば雑誌の記事のように細かなテーマごとに応じて作成し、出来あがったものから分類やキーワードを付与して登録すれば良いので、執筆作業の負担が低減される。また、技術革新のサイクルが短い分野の著作物は、該当する部分の差し替えが容易であり、また、読者も差し替え部分だけを購入することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子出版システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した電子出版システムの機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る電子出版システムの動作の一例を示す流れ図である。
【図4】本発明に係る電子出版システムの動作の一例を示す流れ図である。
【図5】図1に示すセンターシステム内のデータベースの一構成例を示す関連図である。
【図6】読者システムによる著作物の検索結果の例を示す図である。
【図7】センターシステムによる著作物の抽出/合体処理をTexを用いて行った例を示す図である。
【図8】センターシステムによる著作物の書式設定処理をTexを用いて行った例を示す図である。
【図9】センターシステムによる著作物内の読者情報変数の置換処理行った例を示す図である。
【符号の説明】
1....センターシステム
2....著者システム
3....編集者システム
4,4a〜4c....読者システム
5....再編集処理手段
6a〜6c....出版物
7....登録処理手段
8....読者情報
9....データベース
10....ネットワーク
11,21,31,41....入力手段
12,22,32,42....出力手段
13,23,33,43....通信手段
14,24,34,44....制御手段
15,25,35,45....演算手段
17....読者登録手段
18....著者登録手段
19....出版処理手段
26,36,46....閲覧機能
27,37....編集機能

Claims (4)

  1. 著作物の読者に、電子出版物を提供する電子出版システムであって、
    著作物の記事の中に読者情報変数が含まれた著作物データと、その著作物に対する検索キーが登録された第1のデータベースと、
    読者のデータが記憶された第2のデータベースと、
    読者システムから前記読者の求める著作物データの条件が入力されると、前記第1のデータベースを検索して前記読者の求める著作物データを抽出し、抽出したファイルを合体して一つのファイルにするとともに、前記著作物データに含まれた前記読者情報変数を前記第2のデータベースの前記読者のデータに基づき書き換え、かつ、前記読者システムからの入力に基づき出力書式を決定したPDFファイルを作成し、前記読者システムに送信する再編集処理手段と、を備え、
    前記読者に、前記PDFファイルを提供することを特徴とする電子出版システム。
  2. 前記第2のデータベースには、読者の名前、メールアドレス、性別、年齢、使用言語のうちいずれか一つ以上が記憶され、
    前記読者情報変数は、前記第2のデータベース内の情報に基づき書き換えられる
    ことを特徴とする請求項1に記載の電子出版システム。
  3. 前記著作物データの条件は、著作者名、分野、キーワード、レベルのいずれか一つ以上であり、
    前記電子出版物は、読者の知識水準、必要性、嗜好に応じて作成された出版物である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子出版システム。
  4. 前記第1のデータベースには記事単位で著作物データが登録される
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子出版システム。
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