JP4948196B2 - セメント質硬化体の表面改質剤及びセメント質硬化体の製造方法 - Google Patents

セメント質硬化体の表面改質剤及びセメント質硬化体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面の色むらの発生を防止するためのセメント質硬化体の表面改質剤及びセメント質硬化体の製造方法に関する。
モルタル、コンクリート等のセメント質硬化体では、白華(エフロレッセンス)と呼ばれる白色物質が表面に析出する。これは、セメント質硬化体中の水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ成分が、乾燥に伴う水分移動によって、セメント質硬化体の表面に析出し、空気中の二酸化炭素と反応して結晶化したものである。セメント質硬化体の表面に不均一(部分的)に白華が発生すると、表面に色むらを生じ、製品の見栄えが悪くなる。
近年、例えば、下水道、水路、地下道等を構築するカルバート(函渠)等に使用される、圧縮強度が100N/mm以上の超高強度のセメント質硬化体が提案されている(特許文献1)。このような超高強度のセメント質硬化体として、例えば、セメント、ポゾラン質微粉末、細骨材、水及び減水剤等を含む配合物を混練し、この混練した配合物を型枠内に流し込んで成形し、20℃で48時間前置き(一次養生)後、脱型し、その後、60〜90℃で3〜48時間程度蒸気養生(二次養生)して得られるセメント質硬化体が挙げられる。このように、一次養生後、さらに二次養生して得られる超高強度なセメント質硬化体は、二次養生終了時に、すでにアルカリ成分がセメント質硬化体の表面に析出して不均一に白華が発生し、製品に色むらを生じる場合がある。
セメント質硬化体の白華を防止する方法は、従来から種々提案されている。例えば、アニオン界面活性剤を含有した合成樹脂塗料を、セメント質硬化体に塗布して、表面に塗膜を被覆して、白華を防止する方法が提案されている(特許文献2)。この方法は、塗膜中に含まれるアニオン界面活性剤によって、時間の経過とともに表面の塗膜まで浸透してきたアルカリ成分を、水に対する溶解性が低い塩に変えて塗膜中にトラップすることで、アルカリ成分を表面に析出しないようにして、白華を防止する方法である。
特開2001−207516号公報 特開平7−291768号公報
しかしながら、特許文献2の白華を防止する方法は、時間の経過とともにセメント質硬化体の表面まで浸透してきたアルカリ成分を、塗膜中にトラップして、白華を防止する方法であるため、二次養生終了時に、すでにアルカリ成分が表面に析出し、表面に不均一に白華が発生しているようなセメント質硬化体に対しては、白華を防止することができず、色むらの発生を防止することができない。
そこで、本発明は、二次養生することによって得られるセメント質硬化体等において、表面の色むらの発生を防止することのできるセメント質硬化体の表面改質剤及びセメント質硬化体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の材料からなる表面改質剤を、セメント、水等を含む配合物からなる成形体(硬化体)の表面に塗布することにより、白華を促進して、硬化体の表面に均一に白華を発生させることができ、表面の色むらの発生を防止することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1] アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなることを特徴とするセメント質硬化体の表面改質剤。
[2] (A)セメントと、水とを少なくとも含む配合物を混練し、混練した配合物を型枠に流し込んで未硬化の成形体を形成する成形工程と、(B)上記未硬化の成形体を一次養生し、硬化した成形体を得る一次養生工程と、(C)上記硬化した成形体を脱型し、該成形体の表面に、アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなる表面改質剤を塗布する塗布工程と、(D)上記表面改質剤を塗布した成形体を二次養生し、セメント質硬化体を得る二次養生工程とを含むことを特徴とするセメント質硬化体の製造方法。
[3] 上記(D)二次養生工程後に得られるセメント質硬化体の圧縮強度が100N/mm以上である上記[2]記載のセメント質硬化体の製造方法。
[4] 上記(D)二次養生工程における二次養生が蒸気養生である上記[2]又は[3]記載のセメント質硬化体の製造方法。
[5] 上記(D)二次養生工程において、上記(C)塗布工程において成形体に表面改質剤を塗布した後、5時間以内に二次養生を開始する上記[2]〜[4]のいずれかに記載のセメント質硬化体の製造方法。
本発明のセメント質硬化体の表面改質剤によれば、白華を促進して、セメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることができ、表面の色むらの発生を防止することができる。
本発明のセメント質硬化体の製造方法によれば、一次養生後に、得られた成形体の表面に、特定の材料からなる表面改質剤を塗布することによって、その後の二次養生において、成形体の表面の白華を促進させることができ、二次養生後に得られるセメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることができるので、セメント質硬化体の表面の色むらの発生を防止することができる。
また、本発明のセメント質硬化体の製造方法は、二次養生(蒸気養生)を行うことによって、白華を促進させ、均一に白華を発生させることができるので、セメント質硬化体を得るために二次養生を行う必要のある圧縮強度100N/mm以上のセメント質硬化体の色むらの発生を防止する方法として、好適である。
本発明のセメント質硬化体の表面改質剤は、アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなる。
アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。また、アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。白華の促進やコスト等の観点から、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムを使用することが好ましい。また、アルカリ金属炭酸水素塩又はアルカリ金属炭酸塩のいずれか一方を所定濃度となるようにして使用してもよく、両方を混合して所定濃度となるようにして使用してもよい。また、複数種類のアルカリ金属炭酸水素塩又は複数種類のアルカリ金属炭酸塩を混合して所定濃度になるようにして使用してもよい。
水溶液中のアルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩の濃度は3質量%〜飽和濃度である。該濃度が1質量%未満では、二次養生後に得られるセメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることが困難であり、色むらを生じてしまう場合がある。該濃度が飽和濃度を超えると、コスト高になるうえに、水溶液中に粉粒物が発生してしまうので、表面改質剤を均一に塗布(特に、噴霧)することが困難になる。
なお、アルカリ金属炭酸水素塩として、例えば、炭酸水素ナトリウムを使用する場合、水溶液中の炭酸水素ナトリウムの飽和濃度は、水溶液の温度等にもよるが、通常、10質量%以下である。
保水剤としては、尿素やグリセリン等が挙げられる。水溶液中の保水剤の濃度は15質量%〜飽和濃度である。保水剤の濃度が5質量%未満では、塗布作業中に、表面改質剤が乾燥してしまうおそれがあり、その結果、表面改質剤を均一に塗布することができず、二次養生後に得られるセメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることが困難であり、色むらを生じてしまう場合がある。該濃度が飽和濃度を超えると、コスト高になるうえ、水溶液の粘度が増加するので、表面改質剤を成形体に塗布(特に、噴霧)することが困難になる。
なお、保水剤として、例えば、尿素を使用する場合、水溶液中の尿素の飽和濃度は、水溶液の温度等にもよるが、通常、60質量%以下である。
増粘剤としては、セルロース系増粘剤やアクリル系増粘剤が挙げられる。コスト等の観点から、セルロース系増粘剤が好ましく、特にメチルセルロースが好ましい。
水溶液中の増粘剤の濃度は、0.3〜0.7質量%であり、好ましくは0.35〜0.6質量%である。増粘剤の濃度が0.3質量%未満であると、成形体の表面に塗布した表面改質剤が流れ落ちやすく、均一に塗布することが困難であり、その結果、二次養生後に得られるセメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることが困難となり、色むらが生じてしまう場合がある。水溶液中の増粘剤の濃度が0.7質量%を超えると、コスト高になるうえ、水溶液の粘度が増加するので、表面改質剤を成形体に塗布(特に、噴霧)することが困難であり、その結果、二次養生後に得られるセメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることが困難となり、色むらを生じてしまう場合がある。
次に、本発明のセメント質硬化体の製造方法を説明する。図1は、本発明のセメント質硬化体の製造方法の一例を示すフロー図である。
図1に示すように、本発明のセメント質硬化体の製造方法は、(A)セメントと、水とを少なくとも含む配合物を混練し、混練した配合物を型枠に流し込んで未硬化の成形体を形成する成形工程と、(B)上記未硬化の成形体を一次養生し、硬化した成形体を得る一次養生工程と、(C)上記硬化した成形体を脱型し、該成形体の表面に、アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなる表面改質剤を塗布する塗布工程と、(D)上記表面改質剤を塗布した成形体を二次養生し、セメント質硬化体を得る二次養生工程を含む。
本発明の製造方法は、二次養生(例えば、蒸気養生)を行うことによって、成形体の表面に塗布した表面改質剤による白華が促進され、セメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させて色むらの発生を防止することができるので、一次養生後に、二次養生を行う必要がある圧縮強度100N/mm以上のセメント質硬化体を得る場合に、適用することが好ましい。なお、圧縮強度が100N/mm未満であるセメント質硬化体を得る場合には、通常、一次養生を行うのみでセメント質硬化体を得ることができ、二次養生を行う必要が少ないので、本発明の製造方法を適用する必要性に乏しい。
先ず、本発明の製造方法によって得られるセメント質硬化体の材料及び好ましい配合割合について詳細に説明する。
本発明の製造方法によって得られるセメント質硬化体としては、セメント、ポゾラン質微粉末、細骨材、水及び減水剤を含む配合物を硬化させたものであることが好ましい。
セメントの種類としては、特に限定されることがなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントを使用することができる。
本発明において、セメント質硬化体の早期強度を向上させようとする場合には、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、配合物の流動性を向上させようとする場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
ポゾラン質微粉末としては、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。
一般に、シリカフュームやシリカダストは、その平均粒径が1.0μm以下であり、粉砕等を行なう必要がないので、本発明のセメント質硬化体に用いるポゾラン質微粉末として、好適である。
ポゾラン質微粉末を配合することによって、そのマイクロフィラー効果及びセメント分散効果が発揮されて、セメント質硬化体が緻密化し、圧縮強度が向上する。一方、ポゾラン質微粉末の添加量が多過ぎると、単位水量が増大し、硬化後の強度、緻密性や耐衝撃性等が低下するので、ポゾラン質微粉末の添加量は、セメント100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂またはこれらの混合物を使用することができる。本発明においては、配合物の作業性や分離抵抗性、硬化後の強度発現性やクラック抵抗性等の面から、85%質量累積粒径が2mm以下の細骨材を用いることが好ましい。また、配合物の分離抵抗性や硬化後の強度発現性等の面から、最大粒径が2mm以下の細骨材を用いることがより好ましく、最大粒径が1.5mm以下の細骨材を用いることが特に好ましい。
細骨材の配合量は、配合物の作業性や分離抵抗性、硬化後の強度発現性、緻密性や耐衝撃性等の面から、セメント100質量部に対して50〜250質量部が好ましく、80〜180質量部がより好ましい。
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用することができる。中でも、ポリカルボン酸系の高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用することが好ましい。減水剤を配合することによって、配合物の流動性や分離抵抗性、硬化後の緻密性や強度等が向上する。
減水剤の配合量は、配合物の流動性や分離抵抗性、硬化後の緻密性や強度、コスト等の面から、セメント100質量部に対して固形分換算で0.1〜4.0質量部が好ましく、0.2〜1.5質量部がより好ましい。
水としては、水道水等を使用することができる。
本発明において、水/セメント比は、配合物の流動性や分離抵抗性、セメント質硬化体の強度、耐久性、緻密性や耐衝撃性等の面から、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
本発明においては、硬化後の曲げ強度や破壊エネルギーを向上するために、配合物に繊維を含ませることが好ましい。繊維としては、鋼繊維、アモルファス繊維等の金属繊維や、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維等の有機質繊維や、炭素繊維を使用することができる。中でも、強度、コスト、入手のし易さ等の面から、金属繊維としては、鋼繊維が好ましく、有機質繊維としては、ビニロン繊維が好ましい。
本発明で使用する繊維は、直径0.01〜1.0mm、長さ2〜30mmのものが好ましい。直径が0.01mm未満では、繊維自身の強度が不足し、張力を受けた際に切れ易くなる。直径が1.0mmを超えると、同一配合量での本数が少なくなり、硬化体の曲げ強度等を向上する効果が低下する。長さが2mm未満では、マトリックスとの付着力が低下して、曲げ強度等を向上する効果が低下する。長さが30mmを超えると、混練の際にファイバーボールが生じ易くなる。
繊維の配合量は、金属繊維の場合には、配合物の体積の4.0%以下が好ましく、0.5〜3.5%がより好ましい。また、有機質繊維又は炭素繊維の場合には、配合物の体積の10%以下が好ましく、1.0〜7.0%がより好ましい。
繊維の配合量は、流動性とセメント質硬化体の曲げ強度や破壊エネルギーの観点から定められる。すなわち、一般に、繊維の含有量が多くなると、曲げ強度や破壊エネルギーが向上する反面、流動性を確保するために単位水量が増大する。そのため、繊維の配合量は、上記の数値範囲内とするのが好ましい。
本発明においては、配合物の流動性や硬化後の強度、緻密性等を向上するために、配合物に無機粉末を含ませることが好ましい。無機粉末としては、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。中でも、スラグ、石灰石粉末、石英粉末は、コストの点や硬化後の品質安定性の点で好ましい。
無機粉末の平均粒径は、3〜20μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。この範囲内の平均粒径を有する無機粉末を配合することによって、配合物の流動性が向上し、セメント質硬化体がより緻密化する。無機粉末の平均粒径が上記範囲外では、配合物の流動性、セメント質硬化体の緻密性や強度等が低下する。
無機粉末の配合量は、配合物の流動性、セメント質硬化体の緻密性や強度等の面から、セメント100質量部に対して50質量部以下が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。
本発明においては、硬化後の靭性を向上するために、配合物に繊維状粒子もしくは薄片状粒子を含ませることが好ましい。繊維状粒子としては、例えば、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられ、薄片状粒子としては、例えば、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
繊維状粒子もしくは薄片状粒子の平均粒度は1mm以下である。前記粒度の繊維状粒子もしくは薄片状粒子を配合することによって、硬化体の靭性が向上する。平均粒度が1mmを超えると、配合物の流動性やセメント質硬化体の強度が低下するので好ましくない。なお、本発明における粒子の粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に、繊維状粒子ではその長さ)である。
繊維状粒子もしくは薄片状粒子の配合量は、配合物の流動性、硬化後の強度や靭性等の面から、セメント100質量部に対して35質量部以下が好ましく、1〜25質量部がより好ましい。
なお、繊維状粒子においては、硬化体の靭性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いるのが好ましい。
次に、本発明のセメント質硬化体の製造方法について、詳細に説明する。
[(A)成形工程]
本工程は、セメントと、水とを少なくとも含む配合物を混練し、該混練した配合物を型枠に流し込んで未硬化の成形体を形成する工程である。
上記配合物は、上述のように、好ましくはセメント、ポゾラン質微粉末、細骨材、水及び減水剤を含むものである。
配合物の混練方法は、特に限定されるものではない。
また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。
混練した配合物を成形する成形方法は、特に限定されるものではなく、流し込み成形等の慣用の成形方法を採用することができる。例えば、上記配合物を所定の型枠内に流し込み、未硬化の成形体を形成する。なお、上記材料を混練して得られる配合物は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定したフロー値が、200mm以上と流動性に優れるものであり、型枠への流し込み等の作業性に優れるものである。
[(B)一次養生工程]
本工程は、(A)成形工程において形成した未硬化の成形体を一次養生し、硬化した成形体を得る工程である。
一次養生としては、未硬化の成形体を型枠に収容したままの状態で、常温(例えば、20℃)で所定時間(4〜200時間程度)静置する方法が挙げられる。
ここで、例えば、得られるセメント質硬化体の寸法が大きい場合(例えば、機械定盤等に使用される、寸法の大きいセメント質硬化体等)は、未硬化の成形体の内部の最大温度と最小温度の差、または、未硬化の成形体の内部の最大温度と該成形体の表面の温度の差が15℃以下に保たれるように、上記成形体の周囲の温度を調整しつつ、上記成形体を一次養生する方法が挙げられる。
図2は、未硬化の成形体の周囲の温度を調整する手段の一形態を示す説明図である。図2に示すように、未硬化の成形体の周囲の温度を調整する手段としては、例えば、床面7上に置かれた架台1上に、未硬化の成形体2を収容した型枠3を載置し、該型枠3の両側にそれぞれ蒸気供給管4,5を配置し、架台1、型枠3及び蒸気供給管4,5を全体的に箱体状の枠体6で覆った形態等が挙げられる。本形態によれば、蒸気供給管4,5から蒸気を供給することによって、箱体状の枠体6で覆われた閉状態の空間が、蒸気雰囲気で満たされ、この蒸気の熱が架台1上に載置された型枠3内に収容された未硬化の成形体2に伝達されるので、成形体2の内部の最大温度と最小温度、または、成形体2の内部の最大温度と成形体の表面の温度の差を15℃以下に保つことができる。
なお、寸法が大きいセメント質硬化体を得る場合は、(A)成形工程において、予め型枠内の底面上に、表面が平滑なシートを敷設した後、該型枠内に混練した配合物を供給して、成形体を形成することが好ましい。(A)成形工程において、型枠内の底面に敷設したシート上に、混練した配合物を供給すれば、その後の(B)一次養生工程において、上記配合物が硬化時に自己収縮する際に、型枠の底面によって拘束されずに、シート上を自由に移動することができ、同時に、未硬化の成形体の内部の最大温度と最小温度の差、または、未硬化の成形体の内部の最大温度と該成形体の表面の温度の差が15℃以下に保たれるように、上記成形体の周囲の温度を調整しつつ、一次養生することによって、得られる成形体の寸法が大きい場合であっても、ひび割れの発生を防止することができるため、好ましい。
[(C)塗布工程]
本工程は、(B)一次養生工程において得られた成形体を脱型し、該成形体の表面に、アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなる表面改質剤を塗布する工程である。
脱型した成形体の圧縮強度は、好ましくは10〜100N/mmであり、より好ましくは10〜80N/mmであり、特に好ましくは15〜60N/mmである。成形体の圧縮強度が10N/mm未満であると、脱型が困難になる。成形体の圧縮強度が100N/mmを超えると、二次養生を行う必要性が乏しくなり、二次養生を行わない場合は、表面改質剤による白華が促進されず、表面に不均一に白華を発生し、色むらを生じる場合があるため、好ましくない。
脱型後、得られた成形体の表面に、アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなる表面改質剤を塗布する。
表面改質剤の塗布量は、500g/m以上が好ましく、コスト等を考慮して、600〜1000g/mがより好ましい。表面改質剤の塗布量が500g/m未満では、得られたセメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることが困難になり、色むらを生じる場合があるので好ましくない。
なお、表面改質剤の塗布方法は、特に限定されるものではなく、噴霧器を用いて、成形体の表面に噴霧してもよいし、刷毛やローラー等を用いて、成形体の表面に塗布してもよい。
上記表面改質剤は、脱型後、好ましくは3時間以内に成形体に塗布し、より好ましくは2時間以内に成形体に塗布し、特に好ましくは1時間以内に成形体に塗布する。脱型後、3時間を超えて、成形体に表面改質剤を塗布すると、二次養生工程中に白華が促進されず、セメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることが困難となり、色むらを生じる場合があるので好ましくない。
[(D)二次養生工程]
本工程は、(C)塗布工程において表面改質剤が塗布された成形体を、二次養生してセメント質硬化体を得る工程である。
二次養生としては、表面改質剤が塗布された成形体を、60〜95℃で3〜48時間蒸気養生する方法が挙げられる。また、二次養生として、蒸気養生、オートクレーブ養生等の方法が挙げられるが、表面改質剤が塗布された成形体の表面の白華を促進するため、蒸気養生を行うことが好ましい。
成形体に表面改質剤を塗布した後、二次養生を開始するまでの時間は、好ましくは5時間以内であり、より好ましくは4時間以内であり、特に好ましくは3時間以内である。成形体に表面改質剤を塗布した後、5時間を超えて二次養生を開始すると、塗布した表面改質剤が乾燥してしまうおそれがあり、その結果、二次養生を行っても、表面改質剤による白華が促進されず、セメント質硬化体の表面に不均一に白華が発生する場合があり、色むらが生じる場合があるので、好ましくない。また、表面改質剤を塗布した後、長時間を置いて二次養生を開始すると、生産性が低下するため好ましくない。
本発明の製造方法によって得られるセメント質硬化体の圧縮強度は、好ましくは100N/mm以上、より好ましく120N/mm以上である。圧縮強度が100N/mm以上のセメント質硬化体を得る場合には、例えば、汎用的なコンクリート(セメント質硬化体)を得る場合とは異なり、一次養生後に、二次養生を行う必要があり、二次養生を行うことで、表面改質剤による白華の発生が促進され、得られるセメント質硬化体の表面に均一に白華を発生させることができ、色むらを防止することができるため好ましい。
圧縮強度が100N/mm以上のセメント質硬化体は、極めて緻密であり、表面に均一に白華を発生させて色むらを防止した場合においても、凍結融解抵抗性、耐摩耗性、非透水性、耐久性等に非常に優れている。
以下、実施例によって本発明を説明する。
1.配合物の使用材料
以下に示す材料を、セメント質硬化体に使用した。
(1)セメント;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)ポゾラン質微粉末;シリカフューム(平均粒径:0.7μm)
(3)細骨材;珪砂5号
(4)金属繊維;鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
(5)高性能減水剤;ポリカルボン酸系高性能減水剤
(6)水;水道水
(7)無機粉末;石英粉末(平均粒径:7μm)
(8)繊維状粒子;ウォラストナイト(平均長さ:0.3mm、長さ/直径の比:4)
2.表面改質剤の材料
以下に示す材料を、表面改質剤に使用した。
(1)アルカリ金属炭酸水素塩;炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、試薬:特級)
(2)保水剤;尿素(関東化学社製、試薬:特級)
(3)増粘剤;メチルセルロース(信越化学社製)
(4)水 ;水道水
3.セメント質硬化体の白華促進試験
[実施例1〜5及び比較例1,2]
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム32質量部、骨材105質量部、石英粉末35質量部、ウォラストナイト4質量部、高性能減水剤0.8質量部(固形分換算)、水22質量部及び鋼繊維(配合物中の全体積の2%)を二軸練りミキサに投入し、混練して配合物を得た。該配合物を、縦70mm×横70mm×厚さ20mmの型枠に流し込み、未硬化の成形体を形成した((A)成形工程)。
上記未硬化の成形体を、一次養生として20℃で24時間静置し、その後脱型し、硬化した成形体を得た((B)一次養生工程)。脱型後の成形体の圧縮強度は20〜25N/mmであった。
上記成形体の表面に、表1に示す濃度のアルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム)、保水剤(尿素)、増粘剤(メチルセルロース)を含む水溶液からなる表面改質剤(No.1〜No.7)を、噴霧によって、均一に塗布した((C)塗布工程)。表面改質剤(No.1〜No.7)の塗布量を、表1に示す。なお、表面改質剤の塗布は、成形体を脱型した後、3時間以内に行った。
表面改質剤を塗布後、表1に示す時間が経過した後、成形体の二次養生を開始した。二次養生は、90℃で48時間蒸気養生することによって行い、二次養生後に、セメント質硬化体を得た((D)二次養生工程)。なお、表1に示す表面改質剤(No.1〜No.7)は、一つの表面改質剤(例えば、No.1)を10枚の成形体の各々に塗布し、その後、二次養生して、10枚のセメント質硬化体を得た(実施例1〜5及び比較例1,2)。この10枚のセメント質硬化体の表面を目視で観察し、その結果、10枚のセメント質硬化体に共通している状態を表2に記載した。また、比較例3として、一次養生後に得られた硬化した成形体に、表面改質剤を塗布することなく、表面改質剤を塗布した成形体(実施例1)と同様の時間が経過した後、二次養生して10枚のセメント質硬化体を得た。この比較例3の10枚のセメント質硬化体の表面を目視で観察した結果を、併せて表2に示す。
表2に示すとおり、本発明の表面改質剤を塗布した後、二次養生して得られたセメント質硬化体(実施例1〜5)は、いずれもセメント質硬化体の表面に均一に白華が発生しており、色むらは認められなかった。また、上記セメント質硬化体(実施例1〜5)について、一定の時間(6ヶ月)が経過した後、再度、セメント質硬化体の表面を目視で観察したところ、いずれのセメント質硬化体についても、色むらは認められなかった。
一方、増粘剤の濃度が本発明の範囲外である表面改質剤を塗布して得られたセメント質硬化体(比較例1及び2)は、セメント質硬化体の表面に不均一に白華が発生し、色むらを生じた。なお、比較例1及び2のセメント質硬化体についても、一定の期間(6ヶ月)が経過した後、再度、セメント質硬化体の表面を目視で観察したが、比較例1及び2のセメント質硬化体は、表面に色むらを生じたままであった。また、表面改質剤を塗布していないセメント質硬化体(比較例3)は、10枚中、5枚のセメント質硬化体には、不均一に白華が発生し、色むらを生じていた。
Figure 0004948196
Figure 0004948196
次に、本発明の製造方法によって得られたセメント質硬化体の性状(圧縮強度、曲げ強度、非透水性、凍結融解抵抗性)を調べた。
4.セメント質硬化体の性状試験
(1)セメント質硬化体の圧縮強度試験
上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」で使用した配合物を、φ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後(一次養生)、脱型して、硬化した成形体を得た。該成形体の表面に、上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」の実施例1で使用した表面改質剤(No.1)を600g/m塗布し、塗布後3時間経過した後、90℃で48時間蒸気養生(二次養生)し、セメント質硬化体(3本)を得た。該セメント質硬化体の圧縮強度(3本の平均値)は230N/mmであった。
なお、表面改質剤を塗布しないこと以外は、上述のセメント質硬化体と同様にして、セメント質硬化体(3本)を得た。該セメント質硬化体の圧縮強度(3本の平均値)は230N/mmであった。
(2)セメント質硬化体の曲げ強度試験
上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」で使用した配合物を、4×4×16cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後(一次養生)、脱型して、硬化した成形体を得た。該成形体の表面に、上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」の実施例1で使用した表面改質剤(No.1)を600g/m塗布し、塗布後3時間経過した後、90℃で48時間蒸気養生(二次養生)し、セメント質硬化体(3本)を得た。
該セメント質硬化体の曲げ強度(3本の平均値)は47N/mmであった。
なお、表面改質剤を塗布しないこと以外は、上述のセメント質硬化体と同様にして、セメント質硬化体(3本)を得た。該セメント質硬化体の曲げ強度(3本の平均値)は47N/mmであった。
(3)透水試験
上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」で使用した配合物を、φ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後(一次養生)、脱型して、硬化した成形体を得た。該成形体の表面に、上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」の実施例1で使用した表面改質剤(No.1)を600g/m塗布し、塗布後3時間経過した後、90℃で48時間蒸気養生(二次養生)し、セメント質硬化体(3本)を得た。該セメント質硬化体の透水係数を「JIS A 1404(建築用セメント防水剤の試験方法)」に準じて、変数位透水試験方法により測定した。その結果、水の浸透が全く認められず、浸透深さはゼロであった。
(4)凍結融解試験
上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」で使用した配合物を、10×10×40cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後(一次養生)、脱型して、硬化した成形体を得た。該成形体の表面に、上述の「3.セメント質硬化体の白華促進試験」の実施例1で使用した表面改質剤(No.1)を600g/m塗布し、塗布後3時間経過した後、90℃で48時間蒸気養生(二次養生)し、セメント質硬化体(3本)を得た。該セメント質硬化体の凍結融解試験のおける耐久性指数を「JIS A 1148(コンクリートの凍結融解試験方法)」に準じて測定した。その結果、耐久性指数(3本の平均値)は、99.8であった。
上述の(1)〜(4)の試験の結果から、表面改質剤を塗布することによって、表面に均一に白華を発生させたセメント質硬化体の性状は、表面改質剤を塗布していないセメント質硬化体の性状と同様に、圧縮強度及び曲げ強度が大きく、非透水性、凍結融解抵抗性に優れていることが分かった。
本発明のセメント質硬化体の製造方法の一例を示すフロー図である。 成形体の周囲の温度を調整する手段の一形態を示す説明図である。
符号の説明
1 架台
2 成形体
3 型枠
4,5 蒸気供給管
6 枠体
7 床面

Claims (5)

  1. アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなることを特徴とするセメント質硬化体の表面改質剤。
  2. (A)セメントと、水とを少なくとも含む配合物を混練し、混練した配合物を型枠に流し込んで未硬化の成形体を形成する成形工程と、
    (B)上記未硬化の成形体を一次養生し、硬化した成形体を得る一次養生工程と、
    (C)上記硬化した成形体を脱型し、該成形体の表面に、アルカリ金属炭酸水素塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩を質量%〜飽和濃度と、保水剤を15質量%〜飽和濃度と、増粘剤を0.3〜0.7質量%とを含む水溶液からなる表面改質剤を塗布する塗布工程と、
    (D)上記表面改質剤を塗布した成形体を二次養生し、セメント質硬化体を得る二次養生工程と
    を含むことを特徴とするセメント質硬化体の製造方法。
  3. 上記(D)二次養生工程後に得られるセメント質硬化体の圧縮強度が100N/mm以上である請求項2記載のセメント質硬化体の製造方法。
  4. 上記(D)二次養生工程における二次養生が蒸気養生である請求項2又は3記載のセメント質硬化体の製造方法。
  5. 上記(D)二次養生工程において、上記(C)塗布工程において成形体に表面改質剤を塗布した後、5時間以内に二次養生を開始する請求項2〜4のいずれかに記載のセメント質硬化体の製造方法。
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