JP4946254B2 - ガス吸着剤 - Google Patents
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Description
一方、タバコは燃焼させるとその煙中で、粒体相と蒸気相を発生するが、蒸気相中では、例えば、一酸化炭素や窒素酸化物(NOx)、アンモニア等の他に、カルボニル化合物や有機酸、フェノール、クレゾール、カテコール等のフェノール誘導体、シアン化水素、硫化水素に代表される硫化物等の有害物質を含有している。この中でも、カルボニル化合物は、最近、化学物質過敏症の主原因物質としても注目されているなど、人体に有害な化学物質として知られている。
なお、ここでカルボニル化合物とは、アルデヒド、ケトン等、カルボニル基(C=O)を有する化合物をいう。これらは生活環境中において遭遇する可能性が高い有害ガス成分の一つである。例えば、脂肪族アルデヒドはタバコの煙中に含有される種々の有害ガス成分のなかでも主要なものであり、また、ホルムアルデヒドは近年、建材から放出されるシックハウス症候群の主要な原因成分として知られている。なお、タバコに含まれる有害ガス成分のうち、カルボニル化合物については、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、芳香族アルデヒド化合物のベンズアルデヒド誘導体等が報告されている。
このような有害なガス成分を除去して快適な生活環境を維持するためには、有害ガス成分に対して吸着性の高いガス吸着剤が要求されており、家庭生活にも様々なガス吸着剤が使用されている。
また、多孔質ガス吸収剤を単独で用いると、吸着物質の選択性が低いため、タバコや室内芳香剤にとって必要なメントールやリモネン、フィトンチット等の芳香又は風味成分も同時に吸着してしまい、標的とする有害ガス成分のみを特異的に吸着させることは困難である。このことからも、有害ガス成分のみを選択的且つ効果的に除去するガス吸着剤が求められている。
特許文献1は、前記反応体の最も好ましい形態としては、シリカゲルに結合された3−アミノプロピルシリル基を含有するタバコフィルターであり、3−アミノプロピルシリル基の一級アミノ基が、アルデヒド類と化学的に反応して共有結合するので、選択的に除去できることを提案している。しかしながら、このシリカゲルに結合された3−アミノプロピルシリル基を含有するタバコフィルターは、アミノ基の含有量が少ないため、アルデヒド類の吸着量や吸着速度が充分とは言えず、シアン化水素等の他の酸性有害物質も除去されにくい。また、3−アミノプロピルトリエトキシシランとシリカゲルからガス吸着剤であるプロピルシリル基が結合したシリカゲルを調製する際、未反応の3−アミノプロピルトリエトキシシランが残存する。得られたガス吸着剤はオーブンで乾燥するが、ガス吸着剤中に未反応の3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が大量に残存すると、アミン臭を放出し、臭気や風味に影響するおそれがある。
さらに、特許文献4では、窒素原子がアルキル化されていてもよいビニルアミンとポリビニル化合物とから主として成る構造の架橋重合体であるガス吸着剤を開示している。特許文献4は、芳香族ジビニル化合物を架橋性成分としたビニルアミン系イオン交換樹脂であり、ガス吸着能に直接関与するビニルアミン成分を多く含んだガス吸着剤である。
(V)該ガス吸着剤5gに25℃のプロピオンアルデヒド100ppm水溶液100.0mlを接触させ、3分経過した後における該プロピオンアルデヒド水溶液の濃度が80ppm以下である。
(IV)単位質量当たりの該ガス吸着剤からのアミン溶出量が、10μ当量/g以下である。
従って、本発明のガス吸着剤は、タバコの煙中の有害ガスを除去することができ、タバコのフィルターとして好適に用いられる。
<第一のガス吸着剤>
下記の(I)及び(II)の条件を満たすことを特徴とするガス吸着剤。
(I)単位質量当たりのガス吸着剤へのプロピオンアルデヒドの吸着量が、2重量%のプロピオンアルデヒド水系溶媒溶液を用いて測定したときに240mg/g以上である。
(II)単位質量当たりのガス吸着剤中の下記式1で表される単環芳香族化合物の含有量が5μg/g以下である。
下記の(III)及び(IV)の条件を満たすことを特徴とするガス吸着剤。
(III)単位質量当たりの該ガス吸着剤へのプロピオンアルデヒドの吸着量が、2重量%のプロピオンアルデヒド水系溶媒溶液を用いて測定したときに330mg/g以上である。
(IV)単位質量当たりのガス吸着剤からのアミン溶出量が10μ当量/g以下である。
下記の(V)及び(II)の条件を満たすことを特徴とするガス吸着剤。
(V)該ガス吸着剤5gに25℃のプロピオンアルデヒド100ppm水溶液100.0mlを接触させ、3分経過した後における該プロピオンアルデヒド水溶液の濃度が80ppm以下である。
(II)単位質量当たりの該ガス吸着剤中の下記式1で表される単環芳香族化合物の含有量が5μg/g以下である。
下記の(V)及び(IV)の条件を満たすことを特徴とするガス吸着剤。
(V)該ガス吸着剤5gに25℃のプロピオンアルデヒド100ppm水溶液100.0mlを接触させ、3分経過した後における該プロピオンアルデヒド水溶液の濃度が80ppm以下である。
(IV)単位質量当たりの該ガス吸着剤からのアミン溶出量が、10μ当量/g以下である。
以下において、上記本発明のガス吸着剤について詳しく説明する。
プロピオンアルデヒド吸着試験は、例えば、以下のような手順で行われる。
被検体であるガス吸着剤を、上記所定濃度に調整したプロピオンアルデヒド水系溶媒溶液と混合し、室温で充分に振とうした後、上澄み液をサンプリングし、例えば、ガスクロマトグラフ法や、液体クロマトグラフ法等のプロピオンアルデヒドを定量することができる分析方法で、プロピオンアルデヒドの濃度を測定し、吸着量を算出する。
すなわち本発明の第三及び第四のガス吸着剤では、上記条件(V)に規定されたように、該ガス吸着剤5gに25℃のプロピオンアルデヒド100ppm水溶液100.0mlを接触させ、3分経過した後における該プロピオンアルデヒド水溶液の濃度が80ppm以下である。3分後におけるプロピオンアルデヒド濃度は好ましくは70ppm以下である。また、10分後におけるプロピオンアルデヒド濃度は通常60ppm以下であり、好ましくは50ppm以下であり、更に好ましくは45ppm以下である。
上記プロピオンアルデヒド吸着速度試験は、例えば、以下のような手順で行われる。
300mlの三角フラスコに、ガス吸着剤(水切り状態のもの)5.0gを加え、この中へあらかじめ25℃に温度調整した100.0mlの濃度100ppmのプロピオンアルデヒド水溶液を瞬時に注入する。25℃に設定した振盪機に樹脂が懸濁状態を維持する条件で振盪し、プロピオンアルデヒド水溶液投入から、3分後、10分後の上澄み液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(GC)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりプロピオンアルデヒドの濃度を測定する。
しかしながら、合成段階で用いた重合性の単環芳香族化合物の一部は、未反応のままか、又は、マトリクス構造にまで成長できなかったオリゴマーとなって残存し、イオン交換樹脂中に不純物となって残留する。そのため、カルボニル化合物吸着性の良好な従来のガス吸着剤は、トルエン、スチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、ジエチルベンゼン、フェノール等のベンゼン環を有する単環芳香族化合物を放出するが、これらの単環芳香族化合物は、ガス吸着剤そのものに由来する遊離性有害ガス成分であり、例えば、健康上への影響のほか、ガス吸着量並びにガス吸着速度の低下や臭気等の原因となることが知られている。
すなわち本発明の第一及び第三のガス吸着剤は、カルボニル化合物吸着性を備えるだけでなく、上記条件(II)に規定されたように、単位質量当たりのガス吸着剤中の上記式1で表される単環芳香族化合物の含有量が5μmg/g以下、好ましくは1μg/g以下、さらに好ましくは0.8μg/g以下であり、ガス吸着剤そのものに由来する有害な芳香族化合物、特に、ベンゼン環を有する単環芳香族化合物の放出量が非常に少ない。
<芳香族化合物溶出試験法>
被検体であるガス吸着剤をカラムに充填し、溶離剤として、例えばイソプロパノールやアセトン、テトラヒドロフラン等の極性有機溶媒を通液し、芳香族化合物を溶離させる。得られた溶離液を、例えばガスクロマトグラフ法や、液体クロマトグラフ法、質量分析法、核磁気共鳴スペクトル法等の芳香族化合物を定量することができる分析法により測定する。
メタノール、アセトン、プロパノール、THF(テトラヒドロフラン)等の有機溶媒で洗浄する等の方法で遊離状態の単環芳香族化合物を除去すればよい。なお、上記洗浄は、必要に応じて加熱してもよい。また、洗浄法はバッチ洗浄であっても、カラム通液であっても良い。上記洗浄に加え、または単独で、最終製品の段階で、上記の有機溶媒で洗浄してもよい。
しかしながら、その合成段階で用いたアミノ化合物の一部が、マトリクス構造のベースに固定されずに未反応のまま残存し、ガス吸着剤中に不純物となって含有される。この未反応のアミノ化合物は、アミン臭やアミン化合物漏洩の原因となる。
一般に、ガス吸着剤中に固定されるアミノ基の量が多いほどカルボニル化合物に対する吸着性は向上するが、未反応のアミノ化合物の残存量も多くなる。そのため、カルボニル化合物吸着性の良好な従来のガス吸着剤は、ガス吸着剤そのものに由来するアミン臭成分を含有し、これは悪臭であるためにガス吸着剤としての使用を妨げていた。
すなわち本発明の第二及び第四のガス吸着剤は、カルボニル化合物吸着性を備えるだけでなく、上記条件(IV)に規定されたように、単位質量当たりのガス吸着剤からのアミン溶出量が、10μ当量/g以下、好ましくは5μ当量/g以下、さらに好ましくは1μ当量/g以下、とりわけ好ましくは0.1μ当量/g以下であり、ガス吸着剤そのものに由来する悪臭、特にアミン臭が非常に少ない。
<アミン溶出試験法>
被検体であるガス吸着剤をカラムに充填し、溶離剤として、例えば0.5〜5Nの塩酸水溶液を通液し、アミンを溶離させる。得られた溶離液を、例えばガスクロマトグラフ法や液体クロマトグラフ法、イオンクロマトグラフ法、質量分析法、核磁気共鳴スペクトル法等のアミンを定量することができる分析法により測定する。
そこで本発明においては、ガス吸着剤の単位質量当りの酸吸着容量を指標として、ガス吸着剤の酸性有害ガス全般、特にタバコの煙中に含まれるシアン化水素及び硫化水素に対する吸着性を規定することが好ましい。
本発明において、単位質量当たりのガス吸着剤の酸吸着容量を規定する場合には、酸吸着容量を、好ましくは1.5ミリ当量/g以上とし、さらに好ましくは3.0ミリ当量/g以上、特に好ましくは4.0ミリ当量/g以上、とりわけ好ましくは4.5ミリ当量/g以上とする。
<酸吸着容量測定試験法>
被検体であるガス吸着剤に水酸化ナトリウム水溶液を接触させて、その酸性成分吸着能を再生した後、0.5〜5Nの塩酸水溶液の所定量と混合して充分に接触させる。次に、混合物中の溶液部分をサンプリングし、所定濃度の塩基性溶液、例えば0.5〜5Nの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、酸吸着に用いた塩酸水溶液の量と、滴定で消費した塩基性溶液の量から酸吸着容量を計算する。
ガス吸着剤10.0mlをメスシリンダーで採取し、ガラスカラムに充填し、2N−塩酸水溶液200mlで通液した後、脱塩水で水洗する。次に2N−水酸化ナトリウム水溶液250mlを通液する。更に脱塩水を流出液が中性を示すまで通液する。得られた吸着剤を500mlの三角フラスコに入れ0.2N−塩酸水溶液を300ml加え、8時間振盪する。振盪後、上澄み液20.0mlをホールピペットでサンプリングし、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、吸着された塩酸量を体積当たりに換算し、酸吸着容量を求める。
<数平均粒子径測定法>
篩目の径が1180μm、850μm、710μm、600μm、425μm、300μmの篩を、下方になる程、篩目の径が小さくなる様に積み重ねる。この積み重ねた篩をバットの上に置き、最上段に積み重ねられた1180μmの篩の中にガス吸着剤を約100mL入れる。
水道水につないだゴム管から樹脂上にゆるやかに水を注ぎ小粒を下の方へ篩別する。1180μmの篩の中に残ったガス吸着剤は、さらに以下の方法により、厳密に小粒を篩別する。即ち、別のバットの1/2位の深さまで水を満たし、1180μmの篩を前記バットの中で上下及び回転運動を与えて動揺させることを繰り返し、小粒を篩別する。
前記バットの中の小粒は次の850μmの篩の上へ戻し、また1180μmの篩の上に残ったガス吸着剤はさらに別のバットに採取する。篩の目にガス吸着剤が詰まっていれば、篩をバットに逆に置き、水道水につないだゴム管に密着させ、水を強く流して篩の目に詰まったガス吸着剤を取り出す。取り出したガス吸着剤は、1180μmの篩上に残ったガス吸着剤を採取したバットに移し、合計をメスシリンダーで容積を測定する。この容積をa(mL)とする。1180μmの篩を通ったアニオン交換樹脂は850μm、710μm、600μm、425μm、300μmの篩についてそれぞれ同様の操作を行い、メスシリンダーを用いて容積b(mL)、c(mL)、d(mL)、e(mL)、f(mL)を求め、最後に300μmの篩を通った樹脂の容積をメスシリンダーで測定しg(mL)とする。
V=a+b+c+d+e+f+gとし、a/V×100=a’(%)、b/V×100=b’(%)、c/V×100=c’(%)、d/V×100=d’(%)、e/V×100=e’(%)、f/V×100=f’(%)、g/V×100=g’(%)を算出する。
前記a’〜g’より片軸に各篩の残留分累計(%)、他の軸に篩目の径(mm)をとり、これを対数確率紙上にプロットする。残留分の多い順に3点を取り、この3点を出来るだけ満足するような線を引き、この線から残留分累計が50%に相当する篩目の径(mm)を求め、これを数平均粒子径とする。
なお、上記数平均粒子径の算出法は、例えば三菱化学株式会社イオン交換樹脂事業部発行「ダイヤイオンI基礎編」第14版(平成11年9月1日)第139〜141頁に記載される公知の算出法である。
上記数平均粒子径を有する本発明のガス吸着剤は、例えば既知の分級方法により得られる。分級法としては、篩による分別、水流を用いる水篩、気流を用いる風篩などが利用できる。
通常、ガス吸着には捕捉したい分子の数倍の大きさを有する細孔構造が最適であるという分子ふるい的な拡散や表面拡散が考えられていたが、本発明者が検討した結果、ガス吸着剤の細孔半径はさらに大きな構造(Knudsen拡散領域)が必要条件であることが分かった。この理由は明らかではないが、以下のメカニズムが推定される。
一般に、ガス中の有害成分の分子は、平均自由行程の範囲内を移動する。この平均自由行程は、例えば25℃、大気圧の条件で、カルボニル化合物の一種であるアセトアルデヒドでは約300Å、アセトンでは約200Å、シアン化水素では約500Åであることが知られている。従って、この平均自由行程以上の細孔径を有するガス吸着剤であれば、有害成分の分子をガス吸着剤の細孔に誘導することができる(図1参照)。
なお、細孔の平均細孔半径は、水銀ポロシメーターを用いることにより測定することができる。また、「乾燥状態における」とは、例えば、真空乾燥機で80℃、8時間処理することにより得られる絶乾状態をいう。
一般に圧力を加えてガス吸着剤の細孔に侵入させた時の圧力と、その圧力において水銀が侵入可能な細孔径との関係は、下記計算式1のようなWashburnの式で示される。
計算式1:
Pr=−2σcosθ
上記計算式1においてPは圧力、rは細孔半径、σは水銀の表面張力で通常は480dyne/cm程度、θは水銀と細孔壁面との接触角で通常は140°程度。
圧力と試料細孔内に侵入した水銀の侵入量から、細孔を円筒形と仮定して上記計算式1を基に平均細孔半径を計算することができる。
以下に測定法の具体例を示す。
<細孔物性の測定法>
真空乾燥した樹脂(ガス吸着剤)をガラスセルに入れ、水銀ポロシメーターで樹脂の細孔半径、細孔容積を測定する。細孔容積、細孔半径をそれぞれ縦軸、横軸とした細孔の分布を示すヒストグラムにより、細孔容積の合計が最も多い部分の細孔半径を平均細孔半径とする。
ここで、芳香族系高分子樹脂とは、高分子の主鎖又は側鎖の連鎖中に芳香環を含む高分子樹脂であり、例えば、モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーの共重合体が挙げられる。
(メタ)アクリル系高分子樹脂とは、高分子の主鎖又は側鎖の連鎖中に(メタ)アクリル系モノマー由来の繰り返し単位を含む高分子樹脂であり、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル系モノマーの重合体、或いは、1種又は2種以上の(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外の1種又は2種以上のビニル系モノマーの共重合体が挙げられる
フェノール系高分子樹脂とは、1種又は2種以上のフェノール系化合物の重縮合体である。
また、後述で例示するように特定の合成方法により、本発明で特定された上記条件を有する有機又は無機のベース材料を合成することによっても、本発明のガス吸着剤が得られる。この場合は、官能基導入後の洗浄処理を要しない場合もあるが、洗浄処理を行うことが好ましい。
あるいは、アニオン交換樹脂やカチオン交換樹脂からなる既存のイオン交換樹脂(合成吸着剤)や、シリカ、アルミナ又は活性炭等の無機材料をベースとする既存の吸着剤が有する特性を洗浄処理等により調整することによって、本発明のガス吸着剤とすることができる。
なお、ベース材料は、洗浄、後処理の条件下で、収縮、膨潤により、最終製品と物性が異なる場合がある。従って、有機又は無機のベース材料を合成する際、または既存の吸着剤をベース材料とする場合は、「最終製品」が、本発明で特定された上記条件を有するように、ベース材料を設計する必要がある。具体的には、例えば以下のような調整が必要となる。
(i)ベースポリマーの平均細孔半径が条件(I)より大きめになるように設計する。
(ii)ベースポリマーの酸吸着容量が条件(V)より多めになるように設計する。
以上の諸条件を満たす材料であれば、その材料の種類を問わず本発明のガス吸着剤として用いることができ、例えば、アニオン交換樹脂やカチオン交換樹脂からなる合成吸着剤や、シリカ、アルミナ又は活性炭等の無機材料をベースとする吸着剤のなかから適切なものを選択することができる。
具体的には、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤等を挙げることができる。
多価アルコールのポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。このうち、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。また、重合性の不飽和基と官能基を有するエステル及び/又はエーテルとしては、重合性のビニル基又はイソプロペニル基を1個有するカルボン酸(好ましくは炭素数3〜12)のグリシジルエステル、前記カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、重合性のビニル基又はイソプロペニル基を1個有するアルケニル(好ましくは炭素数3〜12)のグリシジルエーテル等が挙げられる。このうち、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
具体的には、例えばエチレングリコールジメタクリレートとグリシジルメタクリレート、ジビニルベンゼンを重合させて得られるメタクリル系架橋重合体を樹脂骨格とするマトリクスを挙げることができる。
具体的には、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等を挙げることができる。フェノール系合成吸着剤は、例えばカテコール、フェノール、パラホルムアルデヒド及び希釈溶媒を塩酸水溶液中に混合し、逆相での懸濁重合で重縮合を行うこと等により製造することができる。
ここで、「弱塩基性アニオン交換樹脂」とは、1級乃至3級アミノ基等の弱塩基性アニオン交換基を有する樹脂である。弱塩基性アニオン交換樹脂は、一般に、酸性乃至中性溶液中でのみアニオン交換を行うことができ、HClやH2SO4等の強酸やNH4Cl等の弱塩基の塩は容易にアニオン交換できるが、弱酸はアニオン交換しづらい。
一方、「強塩基性アニオン交換樹脂」とは、第4級アンモニウム基等の強塩基性アニオン交換基を有する樹脂である。強塩基性アニオン交換樹脂は、一般に、酸性乃至アルカリ性まで全pH域の溶液中でアニオン交換を行うことができ、強酸や中性塩だけでなく、弱酸もアニオン交換できる。
好ましい弱塩基性アニオン交換樹脂としては、公知の弱塩基性アニオン交換樹脂を酸により洗浄したもの、高温重合反応により得られた架橋ポリスチレンにイオン交換基を導入したものが挙げられる。
洗浄を行う公知の弱塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、ダイヤイオンCR20(商品名、三菱化学社製)、WA21(商品名、三菱化学社製)、WA30(商品名、三菱化学社製)、HPA25(商品名、三菱化学社製)、Duolite A361(商品名、ロームアンドハース社製)、Pulorite A103(商品名、ピュロライト社製)、Amberlite IRA93(商品名、ロームアンドハース社製)、Duolite A378(商品名、ロームアンドハース社製)、Lewatit MP64(商品名、ランクセス社製)、Dowex MWA1(商品名、ダウケミカル社製)、Amberlite IRA904(商品名、ロームアンドハース社製)等が挙げられる。
洗浄は上記イオン交換樹脂を強酸中に攪拌することにより行う。酸の液温は高温である方が、洗浄効果が高く、室温〜120℃、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃である。洗浄方法は、バッチ式の洗浄であっても、カラム洗浄でも良い。
即ち、公知の弱塩基性アニオン交換樹脂を温度40〜80℃、濃度0.1〜5Nの塩酸、硫酸などの強酸を用い、十分に攪拌して洗浄する。洗浄後、カラムに上記樹脂を充填し、温度40〜80℃、濃度0.1〜5Nの上記強酸をカラム内へ通液し、次に脱塩水を通液して過剰の強酸を除去する。
次にカラム内の樹脂に、メタノールを2BV〜4BV(「BV」とは、樹脂(ガス吸着剤)1Lに対する体積量(L)を表す。)通液し、さらに室温〜50℃、濃度0.1〜3Nの水酸化ナトリウム水溶液を通液して、カラム内の樹脂のイオン交換基をOH形に変換する。最後に脱塩水を通液することにより、本発明に必要な条件を満たす弱塩基性アニオン交換樹脂が得られる。
高温重合反応により得られた架橋ポリスチレンにイオン交換基を導入して得られる弱塩基性アニオン交換樹脂としては、架橋ポリスチレンの重合において、通常の反応温度より高温にて重合させて得られる架橋ポリスチレンをベースに用いた弱塩基アニオン交換樹脂が挙げられる。通常より高温の重合反応を行うことにより、ベース樹脂由来の低重合体成分や遊離重合体成分等の不純物の残存や分解物の発生を抑制することが出来るため、本発明に必要な条件を満たす弱塩基性アニオン交換樹脂が得られる。
高温重合としては、例えば重合反応の少なくとも一部を、通常100℃以上の高温で行なう重合反応が挙げられる。以下に好ましい高温重合の条件について説明する。
高温重合反応は、以下の技術的意義がある。即ち、高温条件により、上記低重合体成分や遊離重合体成分等の不純物がガラス転移状態又はこれに近い状態となって重合反応に組み込まれ易くなり、残存する低重合体成分や遊離重合体成分の量が減少するものと考えられる。また、重合によって生じるポリマー鎖の構造がより堅牢で緻密なものになるため、残存した低重合体成分や遊離重合体成分がこのポリマー鎖の構造内に閉じ込められて、その後に溶出してくる可能性が減るものと考えられる。従って、かかる観点から、重合温度は通常100℃以上、中でも110℃以上、の温度で行なうことが好ましい。具体例を挙げると、架橋ポリスチレンのガラス転移点は、通常架橋度5%では105℃程度、通常架橋度10%では108℃程度であり、この温度付近で架橋ポリスチレンの重合反応を行うことにより、ベース樹脂由来の低重合体成分や遊離重合体成分等の不純物の残存や分解物の発生を抑制することができる。
但し、あまりに温度が高過ぎると、重合溶液の温度を上昇させるのに時間を要したり、重合開始剤の選択の幅が小さくなったり、製造設備が高価になったり、重合温度を上昇させても溶出を軽減させる効果がそれ以上改善しなかったり、生成した重合体が変性し、又は分解されるおそれがあるので、温度の上限は通常160℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
高温重合反応は連続的に行なっても良く、途中に100℃以下の温度となる期間を挟んで数回に分けて断続的に行なっても良い。その場合、100℃以上である時間が通算で上記の範囲内であればよい。但し、上述の効果を十分に得る観点からは、高温重合反応を連続的に行なうことが好ましい。
(i)高温重合反応を行なう前に、原料モノマーの転換率(conversion rate)を少なくとも70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上にしてから、100℃以上に昇温して高温重合反応を行なうことが好ましい。
(ii)反応器内の上部を冷却するのも好ましい。具体的には、反応器内の上部の温度を100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下になるようにする。冷却の手法は特に制限されないが、例としては冷却水、好ましくは脱塩水を散水する手法、反応器上部に冷却媒体(例えば、水、脱塩水、空気、窒素等)を循環させる手法、反応器上部を冷却用フィン等により空冷する手法などが挙げられる。これらの手法に応じて適宜、適切な構成の反応器を選択して用いればよい。
(iii)反応器の内壁に重合禁止剤を含む塗布剤をコーティングしておくのも好ましい。
上述の(i)〜(iii)等の付着防止対策により、反応器上部(例えば重合缶内部の鏡面部分)における原料モノマーの付着量は、原料モノマーの使用量に対して1000ppm以下に抑制することができる。
上記ゲル型架橋共重合体を製造する場合の有機溶媒としては、比較的蒸気圧が高く、原料モノマーに対して溶解度が高く、重合反応に影響を与えにくいものが好ましい。例えば、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、THF等の有機溶媒が好ましい。
重合反応の方法は特に限定されるものではなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等、公知の種々の方法を何れか単独で、或いは二種以上を組み合わせて採用することができる。これらは目的とする重合体の種類や用途に応じて、適宜選択すればよい。
特に、得られる重合体を後述のようにイオン交換樹脂又は合成吸着剤として使用する場合には、重合体の形状を粒状、中でも球状又は略球状とすることが好ましいが、この様な粒状(球状又は略球状)の重合体を製造するためには、油中水型又は水中油型の懸濁重合を行なうことが有効である。
本発明では、重合反応系内の酸素量を、全原料モノマーに対する比率として、通常5ppm以下、中でも3ppm以下、更には1ppm以下と、できるだけ少なくすることが好ましい。なお、米国特許第4192921号公報、特開昭53−124184号公報等において、酸素ガスを含む窒素を流通させながら重合する方法も提案されている。しかしながら、重合反応(特にラジカル重合反応)において、反応系内に酸素が存在すると、末端ラジカルは酸素と共重合しやすいため、原料モノマーの重合反応に酸素が取り込まれ、過酸化物結合を含むポリマーが生成する。この結果、樹脂の製造工程や洗浄工程の際、あるいは樹脂の使用中に、この過酸化物結合が化学的及び熱的に開裂して、オリゴマーの発生及び溶出を引き起こしたり、この過酸化物結合が分解されてホルムアルデヒドやベンズアルデヒド等の分解物を生じ、その溶出を引き起こしたりする原因ともなる。従って、こうしたオリゴマーや分解物の溶出を抑制するためにも、重合反応系内の酸素量を極めて低く抑え、その状態を維持することは重要である。
上述の様に、重合反応の少なくとも一部は100℃以上の高温で行なう必要があるが、この高温重合反応をより低い温度での重合反応と組み合わせ、複数段に分けて実施しても良い。
例えば、上述したように、反応系中に有機溶媒が存在しない場合(例えば、ゲル型の重合体を製造する場合等)には、原料モノマーの転換率(conversion rate)がまだ低い段階で100℃以上の高温にすると、原料モノマーが水とともに蒸気となって反応器中に充満し、その一部が反応器の蓋部で重合してしまい、これが凝集体となって付着するという問題が生じる。よって、まず100℃未満の比較的低温で重合反応を行ない(これを適宜「前段重合」という。)、モノマーの転換率をある程度高めた状態にした上で、100℃以上の高温重合反応を行なう(これを適宜「後段重合」という。)ことが好ましい。
この場合、前段重合の温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下の範囲が好ましい。前段重合の温度が低すぎると、重合性単量体の転換率が低く、後段重合の際の付着物量が増加するという理由から好ましくない。また、前段重合の温度が高すぎると、付着物量が増加する、スチレン特有の熱重合による二量体構造物、三量体構造物が副生する等の理由から好ましくない。
前記弱塩基性アニオン交換樹脂は上述の重合によって得られる重合体(架橋ポリスチレン)にイオン交換基を導入することにより得られる。
そのイオン交換基(アニオン交換基)としては、4級アンモニウム基、1級乃至3級アミノ基(−N+HnR3−n)等が挙げられる(Rは任意の置換基を表わし、nは1以上3以下の整数を表わす。)。4級アンモニウム基、1級乃至3級アミノ基の具体例としては、アンモニア基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチレンジアミノ基、ジエチレントリアミノ基、トリエチレンテトラミノ基、ポリエチレンイミン基、ブチレンジアミノ基、ヘキサンジアミノ基、エタノールアミノ基等が挙げられる。
なお、以上のイオン交換基は何れか一種を単独で導入しても良く、二種以上を任意の組み合わせで同一の重合体に導入してもよい。
例えば、弱塩基性アニオン交換基として1級乃至3級アミノ基を導入する場合、特開2001−106725号公報等に記載の手法が用いられる。
本発明においては、ガス吸着剤の水分含有率が3〜20%、5〜20%が好ましく、5〜15%であることが特に好ましい。水分含有率が上記範囲内であることで、ミクロポアー内でガス拡散性が適切に保たれ、ガス吸着剤としての性能を維持することができる。
<水分含有率の測定>
被検体であるガス吸着剤にNaOH水溶液を接触させて、そのアニオン交換基を再生した後、遠心分離機等の適切な機器によって脱水し、脱水したガス吸着剤の適切量を秤量する。秤量したガス吸着剤を更に真空乾燥し、真空乾燥させたガス吸着剤の質量を測定する。そして脱水後の質量と、真空乾燥後の質量から、ガス吸着剤の水分含有量を算出することができる。また、カールフィッシャー水分計で、樹脂中の水分を直接測定することもできる。
シリカをベースとして1級乃至3級アミノ基または4級アンモニウム基を固定したものとしては、例えば、シリカゲル粒子に3−アミノプロピルシリル基を導入した反応体を例示できる。
また、環状飽和第二アミンと、不揮発性酸、尿素及びチオ尿素から選ばれた少なくとも1種とを活性炭に担持させてなる吸着剤を例示できる。
また、前記シリカ、アルミナ担体におけると同様、重合性単量体を含む溶液を含浸させ、重合した後、必要に応じ、イオン交換基を導入した担体が挙げられる。必要に応じ、イオン交換基を有する重合性単量体を用いても良い。例えば、アミノメチルスチレンあるいは、アミノエチル(メタ)アクリレート単量体等が挙げられる。また、溶出をできるだけ小さくするため、重合性単量体に多官能性重合性単量体を添加しても良い。
また、活性炭にリン酸とエチレンジアミン及び/又はトリエタノールアミンを添着せしめてなるか、或いは、活性炭にエチレンジアミンリン酸塩及び/又はトリエタノールアミンリン酸塩を添着せしめてなるか、或いは、活性炭にリン酸を添着した後、エチレンジアミン及び/又はトリエタノールアミンを加えてアミンリン酸塩として添着せしめた吸着剤を例示できる。
また、本発明のガス吸着剤と非処理ガスとの接触面積を大きくとれるように、ガス吸着剤それ自体を非常に粒径の小さい粒子または多孔質粒子の形態に加工して用いることが好ましい。
なお、本発明の吸着剤は、単独で使用することも可能であるが、他のガス吸着剤と併用することも可能である。
200mlの三角フラスコに、樹脂(ガス吸着剤)10.0gを加え、この中へ50.0gの10重量%メタノール水溶液ベースの2重量%プロピオンアルデヒド水溶液を加え、室温で1日間振盪した。振盪終了後、上澄み液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(GC)により以下の条件でプロピオンアルデヒドの濃度を測定し、吸着量を算出した。
内径15mmφのカラムに、遠心分離器で水切りした樹脂(ガス吸着剤)50gを、脱塩水を用いて充填し、溶離液としてイソプロピルアルコールを室温でSV1(「SV」とは樹脂(ガス吸着剤)1Lに対する1時間当りの体積流量(L/h)を示す。)の速度で5BV通液し、溶離液を回収した。回収した溶離液をガスクロマトグラフィー(GC)、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、トルエン、スチレン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジエチルベンゼン、フェノールの含有量を測定した。GC分析条件並びにHPLC分析条件は以下の通り。
HPLC分析:カラム ODSカラム 50%アセトニトリル水溶液から100%アセトニトリル溶液まで5%/分のグラジエントで溶離、10分到達後、5分間100%アセトニトリル溶液で5分間保持。 UV検出器、測定波長254nm。
内径15mmφのカラムに、遠心分離器で水切りした樹脂(ガス吸着剤)50gを、脱塩水を用いて充填し、溶離液として2Nの塩酸水溶液をSV1(「SV1」とは、樹脂(ガス吸着剤)1Lに対する1時間当りの体積流量(L/h)を表す。)で5BV(「5BV」とは、樹脂(ガス吸着剤)1Lに対し1時間で5L通液したことを表す。)通液し、溶離液を回収した。回収した溶離液の吸光度(波長254nm)を測定し、イオンクロマトグラフィーや更に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で以下の条件により分析した。
なお、「BV」とは、樹脂(ガス吸着剤)1Lに対し1時間で1L通液したことを表す。
吸着剤10.0mlをメスシリンダーで採取し、ガラスカラムに充填し、2N−塩酸水溶液 200mlで通液した後、脱塩水で水洗する。次に2N−水酸化ナトリウム水溶液250mlを通液する。更に脱塩水を流出液が中性を示すまで通液した。この樹脂を500mlの三角フラスコに入れ0.2N−HCl水溶液を300ml加え、8時間振盪する。振盪後、上澄み液20.0mlをホールピペットでサンプリングし、0.1N−NaOH水溶液で滴定し、吸着された塩酸量を重量当たり及び体積当たりに換算し、酸吸着容量を求めた。
真空乾燥した樹脂(ガス吸着剤)をガラスセルに入れ、水銀ポロシメーター(オートポア9220型、島津製作所製)で樹脂の細孔半径、細孔容積を測定した。測定した細孔容積、細孔半径をそれぞれ縦軸、横軸とした細孔の分布を示すヒストグラムにより、細孔容積の合計が最も多い部分の細孔半径を平均細孔半径として求めた。
また、樹脂(ガス吸着剤)の表面積は窒素吸着法(フローソーブ2300型、マイクロメトリクス社製)で測定した。
なお、表中で表面積0は、細孔が認められないか、ほとんど認められない場合を示す。
ダイヤイオン(登録商標)CR20(商品名、三菱化学社製のアミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)をセントルで水切りした後、100ml取り、冷却管、攪拌羽根を取り付けた1Lの4つ口フラスコに入れた。この中へ2N−HClを400ml加え、80℃で5時間攪拌した。溶液を抜き出し、更に新しい2N−HCl溶液を400ml加え、更に5時間攪拌し、洗浄した。
フラスコを室温まで冷却した後、上記樹脂をガラスカラムに充填し、1N−HCl水溶液を室温で、SV1で5BV通液した。更に1N−HCl水溶液で洗浄した後、脱塩水で10BV通液して洗浄し、過剰の塩酸溶液を除いた。
次に、洗浄後のカラム内の樹脂のイオン交換基がCl形のまま、メタノールを室温で、SV1で5BV通液した。更に脱塩水で5BV通液してメタノールを除去した。
この樹脂を、1N−NaOH水溶液で5BV通液し、カラム内の樹脂のイオン交換基をOH形(フリー形)にイオン交換し、最後に、脱塩水5BVを通液したものを実施例1のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
ダイヤイオン(登録商標)CR20(商品名、三菱化学社製のアミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)の前駆体である下記式2に示す構造を主骨格とするクロロメチル化ポリマーを、実施例1と同様の方法で洗浄(1N−HCl水溶液で洗浄した後、脱塩水で10BV通液して洗浄し、過剰の塩酸溶液を除く段階まで)したもの(以下、「洗浄前駆体」と称する。)を、下記の様にアミノ化した。
冷却管、攪拌羽根を取り付けた500mlの4つ口フラスコに上記洗浄前駆体を50g取り、脱塩水を250ml加え、室温で1時間攪拌した。この中に45%水酸化ナトリウム水溶液30gと50%ジメチルアミン水溶液70gを加え、50℃で5時間攪拌した。
反応後、樹脂を取り出し、ガラスカラムに充填し、脱塩水で20BV水洗して、反応で使用したアミンを除去したものを実施例2のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
実施例2で用いた同様の洗浄前駆体を、下記の様にアミノ化した。
冷却管、攪拌羽根を取り付けた500mlの4つ口フラスコに上記洗浄前駆体を50g取り、脱塩水150ml、45%水酸化ナトリウム水溶液30g、ジエチレントリアミン(DETA、東京化成品)200gを加え、120℃で5時間攪拌した。
反応後、樹脂を取り出し、ガラスカラムに充填し、脱塩水で20BV水洗して、反応で使用したアミンを除去したものを実施例3のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
ダイヤイオン(登録商標)CR20(商品名、三菱化学社製のアミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)そのものを比較例1のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
デュオライトA7(商品名、ロームアンドハース社製のフェノール系弱塩基性アニオン交換樹脂)そのものを比較例2のガス吸着剤(フェノール系弱塩基性アニオン樹脂)として試験に供した。
1Lの4つ口フラスコに、シクロヘキサン400mlとエチルセルロース800mgを入れ重合浴溶液を調製した。一方、これとは別にビニルホルムアミド(CH2=CH−NHCHO)(純度94%、主な不純物は蟻酸)180g、ジビニルベンゼン(純度80%)20.0g、脱塩水4.5g、V−50(アゾ系重合開始剤、商品名、和光純薬(株)製)400mgのモノマー溶液を調製した。両溶液とも予め窒素でバブリングをした。
窒素雰囲気下でシクロヘキサン溶液を100rpmで攪拌しながら、上記調製したモノマー溶液を徐々に滴下した。30分攪拌し分配平衡にした後、昇温し、65℃で8時間重合した。昇温終了後、モノマー相は約15分でゲル化した。重合終了後、反応溶液をブフナー漏斗上にあけ、得られた架橋共重合体をメタノールで洗浄し、残存するジビニルベンゼン、シクロヘキサン等を除去した後、引き続き水洗した。重合収率は81%であった。得られた架橋共重合体は、外見上は白色であるが、顕微鏡観察では、僅かに不透明状であった。得られた重合体は、膨潤度4.63ml/g、水分含有量68.9%のゲル型の架橋共重合体であり、比表面積は0m2/gであった。
上記の水切りした架橋共重合体100ml、脱塩水100mlを500mlのフラスコ内に入れ、この中へ水酸化ナトリウム25gを加えた。90℃で4時間加水分解した。反応終了後、架橋共重合体を水洗したものを比較例3のガス吸着剤(アミノ基を有するゲル型弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
なお、得られた架橋共重合体は平均粒形が約330μmで膨潤度は7.33ml/g、水分含有量は78.9%であった。
粒状活性炭(キシダ化学製)を100倍量の体積の脱塩水(100BV)で洗浄後、比較例4のガス吸着剤(活性炭)として試験に供した。
以下の方法によりアミノ化されたシリカゲルを作成した。
1.5Lの加圧反応缶に「ワコーゲル C−200」(商品名、和光純薬社製のシリカゲル)20.0g、トルエン100g、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン20.0gを加え、130℃で10時間攪拌し反応させた。次に前記反応により生成したシリカ担体をメタノールで3回洗浄し、最後に水洗し、真空乾燥した。得られたアミノ化されたシリカゲルを比較例5のガス吸着剤(アミノ基含有シリカゲル)として試験に供した。
一方で、比較例3のガス吸着剤では、優れたアルデヒド類並びに酸性成分に対する吸着性を示したが、単環芳香族化合物の含有量や、アミン溶出量が多かった。
また、デュオライトA7をガス吸着剤とした比較例2や、比較例4の活性炭ベースのガス吸着剤、アミノ化されたシリカゲルをガス吸着剤として用いた比較例5では、アルデヒド類や酸性成分等の有害酸性成分に対する吸着性は低かった。
(6)プロピオンアルデヒドの吸着速度試験
300mlの三角フラスコに、水切り状態の樹脂(ガス吸着剤)5.00gを加え、この中へあらかじめ25.0℃に温度調整した100.0mlの濃度100ppmのプロピオンアルデヒド水溶液を瞬時に注入し、25.0℃に設定した振盪機に樹脂が懸濁状態を維持する条件で振盪した。プロピオンアルデヒド水溶液投入から、3分後及び10分後の上澄み液をそれぞれサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(GC)によりプロピオンアルデヒドの濃度を測定し、吸着量を算出した。
GC分析条件は以下の通りである。
GC分析条件:カラムHP−5(HP社) 30℃の定温で分析。 保持時間は約2.51分。 サンプル注入量は5.0μL、 スプリット比25:1 FID検出器
実施例2で用いた同様の洗浄前駆体を、下記の様にアミノ化した。
冷却管、攪拌羽根を取り付けた500mlの4つ口フラスコに上記洗浄前駆体を50g取り、脱塩水100ml、45%水酸化ナトリウム水溶液44g、ジエチレントリアミン(DETA、東京化成品)49gを加え、室温から120℃まで昇温し、120℃で5時間攪拌した。
反応後、樹脂を取り出し、溶液が中性になるまで樹脂を脱塩水で水洗した。その後、実施例1で示された方法で、樹脂を精製処理したものを実施例4のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
実施例4において、ジエチレントリアミン(DETA、東京化成品)の仕込み重量を49gから12.25gに代えた以外は、実施例4と同様に処理したものを実施例5のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
実施例4において、ジエチレントリアミン(DETA、東京化成品)の仕込み重量を49gから6.12gに代えた以外は、実施例4と同様に処理したものを実施例6のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
実施例1で得られたガス吸着剤を0.5L取り出し、金網の篩で3段階に分級した。各段階の樹脂の数平均粒子径はそれぞれ550μm、760μm、380μmであった。
これらの樹脂を、真空乾燥器で水分含有率が約10%になるまで乾燥した。その後、25℃、相対湿度75%の恒温恒湿器内に3日間入れた。その間、定期的に樹脂を流動し、混合した。調湿後の樹脂の水分は約12.5%で調湿後の樹脂の数平均粒子径は、それぞれ510μm、700μm、350μmであった。
510μmの数平均粒子径を有するガス吸着剤を、実施例7のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)、700μmの数平均粒子径を有するガス吸着剤を、実施例8のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)、350μmの数平均粒子径を有するガス吸着剤を、実施例9のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として、それぞれ試験に供した。
攪拌羽根、窒素導入管、圧力ゲージ、圧力センサー、温度計用保護管を取り付けた3LのSUS製加圧反応器に、下記の有機相と水相を加えた。
有機相:63%ジビニルベンゼン83.9g、スチレン129.5g、イソオクタン254.7g、純度75%過酸化ベンゾイル1.28g、PBZ(t−ブチルパーベンゾエート、日本油脂製)1.185gの溶液を調製した。
水相:脱塩水985ml、3%ポリビニルアルコール溶液53.3ml、0.1%NaNO2水溶液21mlを調製した。
次に、反応羽根を攪拌しながら、反応缶を5kPaまで減圧状態にした後、0.3MPaの窒素ガスを圧入した。この操作を5回繰り返し、更に200ml/分で15分間攪拌しながら、窒素ガスをバブリングし、反応器の中の溶存酸素を0.1ppm以下まで除去した。
反応器を25℃に温度調整し、120rpmで1時間攪拌した。その後、80℃で4時間攪拌した後、更に115℃に昇温し、4時間攪拌した。80℃における圧力は0.09MPa、115℃における圧力は0.25MPaであった。反応器を冷却後、樹脂を取り出し、脱塩水で洗浄した後、わずかにイソオクタン臭がする白色の樹脂を得た。
この樹脂200gを、攪拌羽根、冷却管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに入れ、水蒸気蒸留で、樹脂中に残留するイソオクタンを除去した。
この段階で、水分含有率59.5%、比表面積34m2/g、平均細孔半径1101Å、細孔容積1.67ml/gの樹脂を得た。重合収率は99.5%以上であった。また、樹脂中に残留するスチレンは1.2ppm、EVB(エチルビニルベンゼン)は0.4ppm、DVB(ジビニルベンゼン)は0.1ppmであった。
上記手順によって得られた樹脂50gにクロロメチルメチルエーテル300gを加え、50℃で1時間攪拌した。ここに塩化亜鉛15gを加えることによりクロロメチル化し、次に実施例2と同様にアミノ化処理したものを実施例10のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
攪拌羽根、窒素導入管、圧力ゲージ、圧力センサー、温度計用保護管を取り付けた3LのSUS製加圧反応器に、下記の有機相と水相を加えた。
有機相:63%ジビニルベンゼン138.5g、スチレン210.6g、トルエン419g、純度75%過酸化ベンゾイル1.16g、PBZ(t−ブチルパーベンゾエート、日本油脂製)0.87gの溶液を調製した。
水相:脱塩水1624ml、3%ポリビニルアルコール溶液51.3ml、0.1%NaNO2水溶液34mlを調製した。
次に、反応羽根を攪拌しながら、反応缶を5kPaまで減圧状態にした後、0.3MPaの窒素ガスを圧入した。この操作を5回繰り返し、更に200ml/分で15分間攪拌しながら、窒素ガスをバブリングし、反応器の中の溶存酸素を0.2ppm以下まで除去した。
反応器を25℃に温度調整し、115rpmで1時間攪拌した。その後、室温から80℃に昇温し4時間攪拌した後、更に120℃に昇温し、4時間重合した。反応器を冷却後、樹脂を取り出し、トルエンで樹脂を洗浄した。この操作を4回繰り返した。
この樹脂200gを、攪拌羽根、冷却管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに入れ、水蒸気蒸留で、樹脂中に残留するトルエンを除去し、次に実施例2と同様にアミノ化処理したものを実施例11のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
実施例2で用いた同様の洗浄前駆体を、以下の様にアミノ化した。
冷却管、攪拌羽根を取り付けた500mlの4つ口フラスコに上記洗浄前駆体を50g取り、脱塩水80ml、45%水酸化ナトリウム水溶液44g、ジエチレントリアミン(DETA、東京化成品)19.6g、トルエン75gを加え、80℃まで昇温し、5時間攪拌した。
反応後、樹脂を取り出し、溶液が中性になるまで樹脂を脱塩水で水洗した。得られた樹脂を攪拌機、蒸留装置のついた1Lのフラスコに移し、脱塩水を0.5L加え、バス温度を110℃(内温108℃)で水蒸気蒸留した。水の留出に伴い、脱塩水を滴下し、液面を一定に保った。この水蒸気蒸留により樹脂内に残留するトルエンを除去したものを実施例12のガス吸着剤(アミノ基含有弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
粒状活性炭(キシダ化学製)を50倍量の体積の脱塩水で、上澄み液が無色透明になるまで10回洗浄したものを比較例6のガス吸着剤(活性炭)として試験に供した。
ダイヤイオン(登録商標)SA12A(商品名、三菱化学社製のスチレン系ゲル型強塩基性アニオン交換樹脂)そのものを比較例6のガス吸着剤(スチレン系ゲル型強塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
なお、比較例7のガス吸着剤は、ゲル型のアニオン交換樹脂であるため、細孔は確認されなかった(表面積は0であった。)。
ダイヤイオン(登録商標)DCA11(商品名、三菱化学社製のスチレン系ポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂)そのものを比較例8のガス吸着剤(スチレン系ポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂)として試験に供した。
一方で、デュオライトA7をガス吸着剤とした比較例2や、比較例6の活性炭ベースのガス吸着剤では、アルデヒド類に対する吸着性が低く、単環芳香族化合物の含有量が多かった。
また、ゲル型強塩基性アニオン交換樹脂そのものをガス吸着剤とした比較例7や、ポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂そのものをガス吸着剤とした比較例8では、アルデヒド類に対する吸着性が極めて低かった。
2 有害成分分子の平均自由行程
3 ガス吸着剤
4 細孔径
5 イオン交換基
Claims (5)
- 下記の(V)及び(IV)の条件を満たすタバコフィルター用のガス吸着剤であって、該ガス吸着剤が、スチレン−ジビニルベンゼン架橋構造骨格を有し、アミノ基を含有する弱塩基性アニオン交換樹脂より成り、該弱塩基性アニオン交換樹脂が、温度40〜100℃、濃度0.1〜5Nの強酸により洗浄して得られたもの、又は、重合反応の少なくとも一部を110℃以上160℃以下で行い、110℃以上である時間を1時間以上とすることにより得られた重合体にアミノ基を導入したものであることを特徴とするガス吸着剤。
(V)該ガス吸着剤5gに25℃のプロピオンアルデヒド100ppm水溶液100.0mlを接触させ、3分経過した後における該プロピオンアルデヒド水溶液の濃度が80ppm以下である。
(IV)単位質量当たりの該ガス吸着剤からのアミン溶出量が、10μ当量/g以下である。 - 単位質量当たりの前記ガス吸着剤の酸吸着容量が、1.5ミリ当量/g以上である請求項1に記載のガス吸着剤。
- 25℃、相対湿度50%における数平均粒子径が50μm以上1500μm以下である請求項1又は2に記載のガス吸着剤。
- 弱塩基性アニオン交換樹脂が、強酸による洗浄後に、さらにメタノールにより洗浄されたものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス吸着剤。
- 弱塩基性アニオン交換樹脂がOH形である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス吸着剤。
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