JP4943597B2 - 抗血栓性医療用具 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂組成物からなる抗血栓層を備えた、各種カテーテルチューブ、ガイドワイヤー、体外循環用血液回路等の抗血栓性医療用具の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の対象とする医療用具のうち、カテーテルチューブとは、患者の血管内に挿入、留置して血管内部との連通を保持し、輸液や薬液の注入、輸血、透析等の診断や疾病の治療に使用される医療用チューブである。
【0003】
その中で、ガイディングカテーテルは、当該カテーテル内にバルーンカテーテル等を挿入し目的血管近傍まで誘導するものであり、バルーンカテーテルは、PTA(経皮経管的血管形成術)や、PTCA(経皮経管的冠動脈形成術)において、狭窄した血管を拡張し、再狭窄を防止するために使用されるものである。
【0004】
当然のことながら血管内に挿入されたガイディングカテーテル内には血液が存在し、場合によってはバルーンカテーテルを2本挿入することも行われている。しかして、近年は、患者の負担を低減するために、より小径のガイディングカテーテルを使用する傾向があり、ガイディングカテーテルとバルーンカテーテルを組み合わせ使用するため、これらの隙間で血液の凝固が起こりやすいことが知られている。また、血管造影用カテーテルは、血管内に導入されてその先端部を患部等にセットし、その状態で造影剤を注入するものであり、
【0005】
一方、マイクロカテーテルは、脳領域等で動脈瘤等の診断や治療に使用されるものであって、末梢血管に挿入可能の3.2Fr.(フレンチ,1Fr.≒0.33mm)や2.3Fr程度の非常な細径のカテーテルである。かかるマイクロカテーテルは、通常内径が1mm以下であり、人間の脳の血管系統のごとき曲がりくねった細い血管内で用いられることから、一般的にカテーテルチューブ内の血液凝固の危険性を有しているとされ、またカテーテルを目的部位まで誘導する際に、カテーテル内にガイドワイヤーを配置し使用するため、カテーテルとガイドワイヤー等との隙間部分には血液が滞留して血栓が生成し、血液凝固が起こる危険性が存在するとされている。もし、これら脳血管造影等の処置中にカテーテルチューブ内に生成した血栓が、脳血管内に流れ出ると、脳血管のつまり(塞栓)等の重篤な障害を引き起こす原因となる可能性があるとの指摘もある。
【0006】
以上のごとく、カテーテルチューブやガイドワイヤーとして要求される諸性能のうち、当然のことながら、血液と接触した場合、血液凝固を惹起しその表面に血栓を生成することのない性質(抗血栓性)の付与が重要な課題の一つである。
【0007】
一方、体外循環用血液回路(以下、単に「血液回路」と表記することがある。)は、体外循環治療に使用される回路であって、腎機能の低下した患者や心臓手術等を受ける患者の血液を、当該体外循環用血液回路に搬出して、同回路に装着されている体外治療装置(血液透析器や人工心肺等)で処理(浄化等)して、処理された血液を再び患者の体内へ返還するものである。このような血液の体外循環においても、最も問題となるのは、血栓の形成であり、血液が同回路を循環中に同回路内で凝固したり、同治療終了後、同回路内に残血しないように、同回路内側表面に効果的な抗血栓性を付与することが望ましい。
【0008】
従来、カテーテルチューブ等に抗血栓性を賦与するための薬剤は、種々のものが知られているが、そのうち、所謂アルガトロバンと称される薬剤の使用がその物性から注目されている。アルガトロバン(argatroban)とは、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物に相当する化合物であって、抗凝固剤の中で抗トロンビン剤に分類され、血液凝固反応の開始及びその進展を抑制する作用を有するものである。
【0009】
上記アルガトロバンは、ヘパリンやウロキナーゼなどの抗血栓物質と異なり非プロトン性の極性有機溶媒に溶解するという特性を有することから、従来、これを利用して医療用具に抗血栓性を賦与する方法がいくつか提案されている。例えば、DMFやDMSO等に溶解したアルガトロバンの有機溶媒溶液にカテーテルチューブ等を浸漬してアルガトロバンからなる抗血栓性の皮膜をカテーテルチューブ表面に形成する方法(例えば、特開平6−292718を参照。)、高分子材料とともにDMFやDMSO等に溶解した有機溶媒溶液を塗布・乾燥してカテーテルチューブ等の表面に抗血栓性の皮膜を形成する方法(例えば、特開2000−60960等を参照。)、さらに、アルガトロバンを熱可塑性の高分子材料に配合して溶融成形してアルガトロバンをチューブ全体に含有したカテーテルチューブ成形体とする方法(例えば、特開平6−292717を参照。)等が提案されている。
【0010】
しかしながら、DMFやDMSO等の有機溶媒を使用して塗布や浸漬する方法は、カテーテル等を形成する高分子材料自体が当該溶媒によりその表面が溶解・侵食されて強度低下を伴うおそれがあり、また、沸点の高い有機溶媒を使用するので乾燥に時間がかかり、さらに、当該溶媒蒸気による環境汚染や発火の問題を伴う点で製造上もあまり好ましい方法とは言えない。
【0011】
一方、アルガトロバンを熱可塑性の高分子材料に配合してチューブ状に溶融成形する場合は、有機溶媒使用に伴う問題はないが、カテーテルチューブの厚み方向全体にアルガトロバンを均一に含有せしめた単層構造としているので、チューブとしての強度(引張り強度、耐圧性、耐挫屈性)が低下するおそれがある。また、高価なアルガトロバンの使用量は、塗布・浸漬する方法に比較して過大となるという問題もある。
【0012】
なお、一般的に、カテーテルチューブやガイドワイヤーを血管内に挿入して、診断や治療等を行う際には、当該チューブ及びガイドワイヤーが生体内のいずれの場所に位置しているかを体外からX線等で容易に確認できる性質(造影性)をも有することが好ましい。
【0013】
図4は、かかる目的で使用される抗血栓性と造影性を兼ね備えた従来のカテーテルチューブの一例を示す断面図である。すなわち当該カテーテルチューブ51は、単層構造により形成されており、そのカテーテルチューブ51のチューブの断面が、例えば90度に四等分して区画され、それぞれの対向する区画が合成樹脂に抗血栓剤を添加した材料52Aと、合成樹脂に造影剤を添加した材料52Bから構成されている。しかしながら、かかるカテーテルチューブにおいては、造影剤を含有する材料52Bの部分が血管内の血液に直接触れるので、血栓は、造影剤を含む材料52Bの表面部分に主として発生することが懸念され、また、抗血栓剤を添加した材料52Aは、チューブ全体の約半分を占めているため、高価な抗血栓剤の使用量が多くなり、製造コストを高くする要因にもなっていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルガトロバンを含むカテーテルチューブ並びにガイドワイヤー、体外循環用血液回路等の医療用具において、高価なアルガトロバンの使用量をできるだけ少なくして当該医療用具を構成するチューブの外側表面及び/又は内側表面に血栓を発生することを効果的に防止し、これらの機能を損なうことなく安全に臨床使用できる抗血栓性医療用具を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0016】
〔1〕 血管内に導入及び留置されるカテーテルチューブからなる抗血栓性医療用具において、
当該カテーテルチューブは、少なくとも外層(22)と内層(23)の二層構造を有し
当該外層(22)と内層(23)の少なくともどちらか一方は、その表面が血液と接触する血液接触表面であり、
当該血液接触表面を有する外層(22)と内層(23)の少なくともどちらか一方は、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物を添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層により形成し、
前記二層構造は、外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイに供給し、溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着することにより形成し、
前記外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物のいずれかは、前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含み、さらに、
前記外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物は、添加混合する前記ピペリジンカルボン酸・1水和物の熱分解温度以下で熱成形可能な熱可塑性の合成樹脂からなり、
前記外層(22)及び内層(23)の厚さを、それぞれ1〜200μmに形成し、かつ、
前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む層の厚みを、5〜70μm、
これを含まない層の厚みを、100〜200μmに形成し、かくして
前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む層を、これを含まない層に比較して薄く形成して上記坑血栓層とし、かつ、
前記カテーテルチューブは、ガイディングカテーテル、バルーンカテーテル、血管造影用カテーテル及びマイクロカテーテルからなる群から選択される一つであることを特徴とする抗血栓性医療用具。
【0017】
〔2〕 前記カテーテルチューブが金属補強体を有するものであって、
多層ダイに、円筒状に形成した金属補強体である金属編組を供給し、当該円筒状の金属編組を送り出しながら、この内表面及び外表面に、外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から前記多層ダイにより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着することにより、一段で金属編組を介装させた二層構造とすることを特徴とする〔1〕に記載の抗血栓性医療用具。
【0018】
〔3〕 血管内に導入及び留置されるガイドワイヤーからなる抗血栓性医療用具において、
当該ガイドワイヤーは、少なくとも芯材(34)を内層(33)及び外層(32)で積層した層構造からなり、
当該ガイドワイヤーは少なくとも先端部分が合成樹脂にて被覆され、かつ当該合成樹脂被覆部のうち少なくとも前記外層(32)は、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物を添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層により形成し、
多層ダイに、前記芯材(34)を供給し、当該芯材を進行させながら、芯材の外表面に内層(33)を、さらにその外表面に外層(32)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイにより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着することにより、一段で当該芯材を貫装した二層構造とし、
前記外層(32)をなす合成樹脂組成物は、前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含み、前記内層(33)をなす合成樹脂組成物は、造影剤を含み、
前記外層(32)をなす合成樹脂組成物は、添加混合する前記ピペリジンカルボン酸・1水和物の熱分解温度以下で熱成形可能な熱可塑性の合成樹脂からなり、
前記外層(32)及び内層(33)の厚さを、それぞれ20〜200μmに形成し、
前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む外層(32)の厚みを、20〜80μm、これを含まない内層(33)の厚みを、80〜200μmに形成し、かくして
前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む外層(32)を、これを含まない内層(33)に比較して薄く形成して上記坑血栓層としたガイドワイヤーであることを特徴とする抗血栓性医療用具。
【0019】
〔4〕 血液の体外循環に使用される体外循環用血液回路からなる抗血栓性医療用具において、
当該体外循環用血液回路は、少なくとも外層(42)と内層(43)の二層構造を有し
当該体外循環用血液回路の少なくとも前記内層(43)は、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物を添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層により形成し、
当該二層構造は、外層(42)及び内層(43)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイに供給し、当該ダイより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着して、一段で二層構造とすることにより形成し、
前記内層(43)をなす合成樹脂組成物は、前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含み、
前記内層(43)をなす合成樹脂組成物は、添加混合する前記ピペリジンカルボン酸・1水和物の熱分解温度以下で熱成形可能な熱可塑性の合成樹脂からなり、
前記外層(42)及び前記内層(43)の厚さを、それぞれ0.1〜2000μmに形成し、かつ
前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む内層(43)の厚みを、20〜200μm、これを含まない外層(42)の厚みを、500〜2000μmに形成し、かくして
前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む内層(43)を、外層(42)と比較して薄く形成して上記坑血栓層とした体外循環用血液回路であることを特徴とする抗血栓性医療用具。
【0020】
〔5〕 前記合成樹脂組成物からなる抗血栓層中における前記(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物の添加量が0.05〜80質量%であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の抗血栓性医療用具。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
(カテーテルチューブ)
本発明の抗血栓性医療用具は、まず、血管内に導入及び留置されるカテーテルチューブからなるものであって、当該カテーテルチューブの少なくとも血液接触表面が、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物(アルガトロバン)を添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層で構成されたカテーテルチューブであることを特徴とするものである。そして、好ましくは、当該カテーテルチューブは、ガイディングカテーテル、バルーンカテーテル、血管造影用カテーテル及びマイクロカテーテルからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする。
【0023】
以下、ガイディングカテーテルの例を取って図面を参照しながら説明する。
図1は、ガイディングカテーテル21の一例を示す断面図である。図1に示すガイディングカテーテル21は、合成樹脂からなる外層22及び内層23との積層構造を有し、当該外層と内層の間に、フラット線材からなる金属編組(ステンレス製ワイヤーブレード、ピアノ線、タングステン線、ニッケル・チタン合金線等)や金属線のコイル巻き等の金属補強体24が介装せしめられて、当該カテーテルチューブにガイディング性(適度の弾性、剛性、トルク伝達性、耐挫屈性等)を賦与している。そして、当該外層22及び/又は内層23は、合成樹脂にアルガトロバンを添加して構成される合成樹脂組成物(通常合成樹脂コンパウンドと称される。)から形成されている抗血栓層であり、少なくともその血液接触表面である外側表面及び/又は内側表面を抗血栓性表面としている。
【0024】
ここでアルガトロバンを含有する外層22と内層23は、少なくとも抗血栓性を発揮できる厚さに形成することが好ましい。
【0025】
しかして、当該外層22と内層23は、その肉厚を適度に薄く形成することにより、これに添加する高価なアルガトロバンの配合量を大幅に少なくすることができる。なお、抗血栓性の発現は、基本的に、血液と接触する外層22と内層23の表面部分において行われるものであるから、当該表面部分におけるアルガトロバンの濃度(表面濃度又は表面密度)が、抗血栓性を発揮出来る程度に十分に高ければ良い。また場合によっては、外層22の上に、さらに最外層25を形成することもできる。この場合は、外層22は、アルガトロバンは添加せず、比較的厚く形成して剛性等を保持するとともに、最外層25は、アルガトロバンを添加して充分薄く形成してアルガトロバンの添加量を少量とすることができる。
【0026】
外層22(最外層25)と内層23の肉厚は、特に限定するものではないが、それぞれ、例えば、0.1〜200μm、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは5〜70μm程度に形成することが望ましい。
【0027】
本発明の対象とするガイディングカテーテルは、もちろん図1に示したものに限られるものではないが、例えばこれは、合成樹脂の溶融成形により製造することが好ましい。まず一般的には、アルガトロバンを添加した内層23を構成する合成樹脂組成物や外層22を構成する合成樹脂組成物等を、予めペレット化しておくことが望ましい。すなわち、押出成形機などを用いて基材となる合成樹脂を加熱溶融し、これにアルガトロバンを添加して十分に混練、分散せしめ、この混練した樹脂組成物を、ペレットに成形加工する。
【0028】
このペレットを押出機に供給し、外層22、内層23のチューブを押出機により別々に形成し、これらのチューブの間に金属補強体24である金属編組を装入して両者を積層し熱融着や接着剤又は熱収縮させることにより接合して編組を介装した二層構造のチューブとすることができる。この際、心材となるステンレス芯線等を挿入して使用することもできる。さらにまた、多層ダイに、円筒状に形成した金属編組を供給し、当該円筒状の金属編組を送り出しながら、この内表面及び外表面に、外層22及び内層23をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイにより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着(溶融接着)することにより、一段で金属編組を介装させた二層構造等のガイディングカテーテルチューブとすることもできる。また、これらの方法を組み合わせて製造してもよい。なお、補助的に、アロガトロバンと合成樹脂を有機溶媒に溶解して溶媒を塗布して合成樹脂からなる抗血栓層を形成することも排除するものではない。
【0029】
以上ガイディングカテーテルチューブを例にとって説明したが、同様にして、他のカテーテルである血管造影用カテーテル及びマイクロカテーテル、さらにはバルーンカテーテルも、基本的には、当該ガイディングカテーテル21と同様に、内層、外層及び編組等金属補強体(但し、この場合は編組は必須の要素ではなく、なくても構わない。)から構成されるものであって、これらの構造は相互に類似している為、上記ガイディングカテーテルについて詳述したところに従って、その内層及び/又は外層を、アルガトロバンを添加した合成樹脂組成物で形成することができることは、容易に理解されるところであろう。
【0030】
なお、カテーテルの種類により、カテーテルの内径や外径、体内での使用の態様や血管内における留置時間等が異なるので、それぞれに要求される抗血栓性に従って、抗血栓層の厚みや合成樹脂組成物に添加するアルガトロバンの量を適宜選択することが好ましい。
【0031】
(ガイドワイヤー)
本発明の抗血栓性医療用具は、また、血管内に導入及び留置されるガイドワイヤーからなるものであって、当該ガイドワイヤーは少なくとも(芯材の)先端部分が合成樹脂にて被覆され、かつ当該合成樹脂被覆部の少なくとも外側表面が、アルガトロバンを添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層で構成されたガイドワイヤーである。
【0032】
ガイドワイヤーとは、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルなどのカテーテルの先端部分を、血管の目的部位に挿入する際に、その誘導のために用いられるもので、少なくともその先端部分は可撓性の細い金属線を芯材とし、これを合成樹脂で被覆したものである。このようにガイドワイヤーの先端部は柔軟性を有するように形成された線状体を用いているので、充分柔軟であり、蛇行した血管内、狭窄した血液内に容易に挿入可能であるとともに、本体部のメインワイヤーは剛性が大であり、ガイドワイヤーの手元での操作を先端部に容易に伝達できる。
【0033】
以下、図面を参照しながらガイドワイヤーの一例について説明する。
図2は、本発明のガイドワイヤー31の一例を示す断面図である。図においてガイドワイヤー31は、外層32、内層33及び芯材34から形成される。当該外層32は血液と接触する外側表面を形成する部分であって、合成樹脂にアルガトロバンを添加して構成される合成樹脂組成物からなる抗血栓層を形成している。また内層33は、合成樹脂にX線等の造影剤を添加して構成される合成樹脂組成物から形成される。そしてその中心には、Ni−Ti系、Cu−Al−Mn系、Cu−Zn−Al系、Cu−Al−Ni系の超弾性合金又はSUS304ステンレス鋼等からなる芯材34が貫装されている。
【0034】
アルガトロバンを含有する外層32は、少なくとも抗血栓性を発揮できる厚さに形成するが、抗血栓性の発現は、基本的に、血液と接触する外層32の表面部分において行われるものであるから、当該表面部分におけるアルガトロバンの濃度(表面濃度又は表面密度)が、抗血栓性を発揮出来る程度に十分に高ければよく、外層32をあまり内部まで厚く形成することは、必要ではない。従って、外層32は、内層33に比較してずっと薄く形成することで、これに添加する高価なアルガトロバンの配合量を大幅に少なくすることができる。一方、前記造影剤を含む内層33の肉厚は、少なくとも造影力を発揮できる厚さに形成することが好ましく、その肉厚を適度に厚く形成することにより、造影性を確保することができる。
【0035】
以上のごとくして外層32と内層33の肉厚は、特に限定するものではないが、それぞれ、0.1〜200μm、好ましくは、1〜170μm、さらに好ましくは20〜80μmの範囲で形成することが望ましい。
【0036】
また、内層33に添加する造影剤としては、例えばX線に対する不透過性があって、造影性が大きく、また、基材となる上記合成樹脂に安定的に配合しうるものであれば、特に限定するものではなく、従来公知の造影剤を好適に使用することができる。例えば、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、タングステン等が使用可能である。
【0037】
なお、ガイドワイヤー31のカテーテル内及び血管内での潤滑性(滑り性)を向上させるために、アルガトロバンを添加した外層32に、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸−ポリビニルエーテル共重合体、ポリアクリル酸及びそのエステル系誘導体等の潤滑剤を、有機溶媒に溶解し、この溶液を外層表面に塗布することにより、潤滑剤のコーティング層を形成してもよい。
【0038】
本発明の対象とするガイドワイヤーは、もちろん図2に示した態様のものに限られるものではないが、例えばこれは、すでに述べたガイディングカテーテルと同様にして、合成樹脂の溶融成形により製造することが好ましい。すなわちまず、同様にして、アルガトロバンを添加した外層32を構成する合成樹脂組成物や造影剤を添加する内層33を構成する合成樹脂組成物を、予めペレット化しておくことが望ましい。このペレットを押出機に供給し、外層32、内層33のチューブを押出機により別々に形成し、外層と内層のチューブを積層するとともに、内層の中心部に芯材34を貫装し、これらを熱融着や接着剤又は熱収縮させることにより接合して、芯材34を内層及び外層で積層したガイドワイヤーとすることができる。さらにまた、多層ダイに、芯材34を供給し、当該芯材を進行させながら、芯材の外表面に内層33を、さらにその外表面に外層32をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイにより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着(溶融接着)することにより、一段で芯材を貫装した二層構造等のガイドワイヤーとすることもできる。また、これらを組み合わせて製造してもよい。
【0039】
なお、本発明においては、芯材34を貫装した内層33を溶融成形により形成しておき、この外表面に、アロガトロバンと合成樹脂を有機溶媒に溶解して溶媒を塗布して合成樹脂からなる外層32を抗血栓層として形成してもよい。
【0040】
(体外循環用血液回路)
本発明の抗血栓性医療用具は、また、血液の体外循環に使用される体外循環用血液回路からなるものであって、当該体外循環用血液回路の少なくとも内側表面が、アルガトロバンを添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層で構成された体外循環用血液回路である。
【0041】
本発明における体外循環用血液回路とは、人工透析、血漿交換、血液ろ過及び人工心肺等に使用される体外循環用血液回路である。
以下、図面を参照しながら体外循環用血液回路の一例について説明する。
【0042】
図3は、本発明の体外循環用血液回路41の一例を示す断面図である。
図3に示す体外循環用血液回路41は、外層42と内層43から形成され、当該内層内の内表面が形成する中空部44(管路)内を患者から取り出された血液が流動することになる。従って、少なくとも、当該内層43は、合成樹脂にアルガトロバンを添加して構成される合成樹脂組成物からなる抗血栓層を形成していることが要請される。一方、外層42は、必ずしも抗血栓性は必要ではなく、例えばアルガトロバンを含まないポリ塩化ビニル等の汎用合成樹脂から形成されていてよい。
【0043】
なお、すでに他の抗血栓性医療用具について述べたとおり、抗血栓性の発現は、血液と接触する内層43の表面部分において行われるものであるから、当該表面部分におけるアルガトロバンの濃度(表面濃度又は表面密度)が、抗血栓性を発揮出来る程度に十分に高ければよい。すなわち、アルガトロバンを含有する内層43は、少なくとも抗血栓性を発揮できる厚さに形成すればよく、内層43をあまり内部まで厚く形成することは、必要ではない。
【0044】
従って、血液回路としてのチューブの剛性や強度は、ポリ塩化ビニル等の汎用合成樹脂からなる外層を比較的厚く形成することにより確保することができ、一方、内層43は、外層42に比較してずっと薄く形成することで、これに添加する高価なアルガトロバンの配合量を大幅に少なくすることができるのである。
【0045】
なお、内層43や外層42の肉厚は、特に限定するものではないが、それぞれ、例えば、0.1〜2000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは20〜200μm程度に形成することが望ましい。
【0046】
本発明の図3に例示したアルガトロバンを添加した体外循環用血液回路41の成形方法としては、外層42、内層43のチューブを押出機により別々に形成し、これらのチューブを積層して熱融着や接着剤により接合して二層構造のチューブとすることもできるが、外層42及び内層43をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイにより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着(溶融接着)して、一段で二層構造等の体外循環用血液回路チューブを形成する共押出成形によることが最も好ましい。
【0047】
なお、すでに述べたように、内層43を構成するアルガトロバンを含有する合成樹脂組成物や外層42を構成する合成樹脂組成物を、予めペレット化しておくことが望ましい。例えば、押出成形機などを用いて基材となる合成樹脂を加熱溶融し、これにアルガトロバンを添加して十分に混練、分散せしめ、この混練した樹脂組成物を、ペレットに成形加工する。
【0048】
次に、これらのペレットを別々の押出機に供給して加熱溶融し、多層の円形ダイに同時に供給して溶融状態でチューブ状に共押出成形し、多層チューブとする。なお、積層は、樹脂の溶融物がダイに入る前に行う方法、ダイの中で行う方法、ダイを出てから行う方法があるがいずれでもかまわない。
【0049】
なお、本発明においては、前記体外循環用血液回路41を三層以上で形成する場合、外層42と内層43の間に、さらに一層以上の中間層を配置することができる。当該中間層は、内層と外層の接着性を高める接着樹脂等の接着剤層であってもよい。
【0050】
以上述べたカテーテルチューブ、ガイドワイヤー、体外循環用血液回路等からなる本発明の抗血栓性医療用具において、その外層、内層を構成する基材となる合成樹脂としては、柔軟性、可撓性、弾力性、機械的強度、可滅菌性を有し、かつ添加混合するアルガトロバンの熱分解温度以下で熱成形可能な熱可塑性の合成樹脂が好ましい。例えば、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン、ポリアミド系エラストマー、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル系エラストマー等を用いることができる。
【0051】
ただし、これに限られるものではなく、水、血液、生理食塩水に溶解しない合成樹脂材科であり、かつ、少なくとも血液の凝固を抑制し得る有効量のアルガトロバンを、生体内において当該抗血栓層の表面より徐々に溶出(徐放)することが可能なものであれば、特に前記のものに限定されるものではない。
【0052】
これらのうち、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリテトラメチレンオキシド鎖等のポリエーテル鎖を構造中に有する高分子材料を用いることが望ましい。より具体的には、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のポリウレタン、ポリエステル及びポリエーテルポリアミドなどが、好ましい。
【0053】
なお、特定の理論に拘泥するものではないが、例えばこれらのポリエーテル鎖を構造中に有する合成樹脂は、これにアルガトロバンを添加して合成樹脂からなる抗血栓層を形成した後、当該アルガトロバンに対して親和性を有するポリエーテル鎖部分が上記アルガトロバンを補足し、当該ポリエーテル鎖部分を経路としてアルガトロバンを抗血栓層の外部に放出できると考えられる。
【0054】
また上記したように、アルガトロバン(熱分解温度が220から230℃)を添加混合して使用する場合は、220から230℃以下の温度で成形可能な合成樹脂を使用することが好ましい。
【0055】
なお本発明において、抗血栓剤としては、少なくともアルガトロバンを使用することを必須とするが、アルガトロバンを単独で使用することのみに限定し、他の抗血栓剤を併用することを排除するものではなく、十分な抗血栓性を有し、かつ、外層や内層を構成する基材となる上記合成樹脂と相溶性があり、当該合成樹脂層(または当該樹脂層表面)に安定的に混合されるものであれば従来公知のいずれの抗血栓剤を併用混合することもできる。
【0056】
例えば、シロスタゾール(cilostazol)(6−[4−(1−シクロヘキシル−1H−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノン)、塩酸サルポグレラート(sarpogrelate HCl)((±)−1−[O−[2−(m−メトキシフェニル)エチル]フェノキシ]−3−(ジメチルアミノ)−2−プロピル水素スクシナート・塩酸塩)等を好ましく使用することができる。
【0057】
また、その他、ワルファリンカリウム(warfarin potassium)、塩酸チクロピジン(ticlopidine HCl)、ベラプロストナトリウム(beraprost sodium)、アスピリン(aspirin)等の公知の抗血栓剤を使用することもできるし、さらにこれ以外のものであってもよい。
【0058】
本発明の抗血栓性医療用具における抗血栓層中のアルガトロバンの含有量は、当該医療用具の血液と接触する表面に十分な抗血栓性を付与しつつ、かつ、血管や血液の機能には悪影響を与ず、さらにアルガトロバンを含有することにより合成樹脂組成物からなる抗血栓層の強度を著しく低下させない範囲であることが好ましく、抗血栓層中に、アルガトロバンを0.05〜80質量%、好ましくは1〜75質量%、さらに好ましくは5〜70質量%であることが望ましい。なお、アルガトロバン以外の抗血栓剤を併用する場合は、アルガトロバンは、少なくとも0.05質量%以上含まれることが好ましい。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明がこれらの実施例により限定的に解釈されるものではない。また、特に断りが無い限り、以下%とあるのは質量%を示す。
【0060】
〔実施例1〕
(1)図2に示すガイドワイヤー31について試験を行った。すなわち、外層32を構成する基材となる合成樹脂にエーテル系ポリウレタン(ペレセン2363−80AE、以下、本実施例では単に「ポリウレタンAE」と略記する。)及び抗凝固剤としてアルガトロバン、内層33を構成する基材となる合成樹脂はポリウレタンAE、造影剤としてタングステン粉末をそれぞれ用いた。
【0061】
(2)ラボ用小型混練機を用いて、前記外層32を構成するポリウレタンAEにアルガトロバンを5%添加し、十分溶融混練して成形加工し、アルガトロバン/ポリウレタンAEペレットを作製した。同様に内層33を構成するポリウレタンAEにタングステン粉末を40%添加し、タングステン/ポリウレタンAEペレットを作製した。
【0062】
(3)それぞれ内層33用の押出機に前記タングステン/ポリウレタンAEペレットを供給して溶融し、また、外層32用の押出機にアルガトロバン/ポリウレタンAEペレットを供給して溶融した。
【0063】
当該溶融した樹脂組成物を、押出機から同時に二層被覆ダイに供給しながら、芯材34となるNi−Ti合金線を間欠的に挿入し被覆共押出を行い、アルガトロバンを添加したポリウレタンAEよりなる外層32、タングステン粉末を添加したポリウレタンAEよりなる内層33から形成される二層構造のガイドワイヤーを形成した。当該ガイドワイヤーは、外径0.89mm×長さ45cm規格であった。なお、当該ガイドワイヤー被覆層の各層について、外層32の厚さは50μm、内層33の厚さは150μmであった。
【0064】
(4)当該ガイドワイヤー10cmを、ウサギの腸骨静脈より挿入し、腹部下大静脈に24時間留置した後、表面の血栓の粘着状態を評価した。その結果、24時間後ウサギより抜去したガイドワイヤー表面には、血栓の付着は確認できなかった。すなわち、このガイドワイヤーは十分な抗血栓性を有するものであることが確認された。
【0065】
(5)なお、当該ガイドワイヤーを、X線透視装置(KTM−2009、東芝メデカル社製)を用いて、感電圧60kV、強度4mA・秒の条件で、1m離れた位置より撮影したところ、撮像はきわめて明瞭であり、十分な造影性を有することが確認された。
【0066】
〔比較例1〕
(1)外層32を構成する基材となるポリウレタンAEにアルガトロバンを添加しない他は、実施例1とまったく同様にして二層構造のガイドワイヤーを形成した。
【0067】
(2)当該ガイドワイヤー10cmを、ウサギの腸骨静脈より挿入し、腹部下大静脈に24時間留置した後、表面の血栓の粘着状態を評価した。その結果、24時間後ウサギより抜去したガイドワイヤー表面には、赤色血栓が付着していることが明瞭に認められた。
【0068】
〔実施例2〕
(1)図3に示す二層構造の体外循環用血液回路41について試験を行った。すなわち、内層43を構成する基材となる合成樹脂にエーテル系ポリウレタン(テコフレックスEG−93A、本実施例では単に「ポリウレタンA」と略記する。)及び抗凝固剤としてアルガトロバン、外層42を構成する基材となる合成樹脂にポリ塩化ビニルをそれぞれ用いた。
【0069】
(2)ラボ用小型混練機を用いて、内層43を構成するポリウレタンAにアルガトロバンを10%添加し、十分溶融混練して成形加工し、アルガトロバン/ポリウレタンAペレットを作製した。またヘンシェルミキサーを用いて、ポリ塩化ビニル、フタル酸ジエチルヘキシル、エポキシ化大豆油等一般的な塩化ビニル添加剤を混合後、押出機を用い溶融混練し、可塑化塩化ビニルペレットを作製した。
【0070】
(3)それぞれ内層43用の押出機に前記アルガトロバン/ポリウレタンAペレットを供給して溶融し、また、外層42用の押出機には、可塑化塩化ビニルペレットを供給して溶融した。
【0071】
当該溶融した樹脂組成物を、押出機から同時に二層円形ダイに供給してチューブ状に二層共押出し、アルガトロバンを添加したポリウレタンAよりなる内層43、ポリ塩化ビニルよりなる外層42から形成される二層チューブを形成した。当該チューブは、外径3.5mm×内径5.5mm規格の血液回路41用チューブであった。なお、当該チューブの外層42の厚さは900μm、内層43の厚さは100μmであった。
【0072】
(4)当該二層チューブの一端を溶封し、この中にヒトより採血した静脈血を、それぞれ2mLずつ入れ、37℃の恒温槽中に放置した(各n=3)。3分間静置した後に30秒ごとに傾斜させて血液の流動性を観察する。その後血液の流動性が消失するまでの時間を評価した。アルガトロバンを添加した血液回路41用チューブは、下記比較例2のものと比較していずれも血液凝固時間の大幅な延長を認めた。すなわち、この血液回路用チューブは十分な抗血栓性を有するものであることが確認された。
【0073】
〔比較例2〕
(1)内層43を構成するポリウレタンAにアルガトロバンを添加しないほかは、実施例2とまったく同様にして二層チューブを形成した。
【0074】
(2)当該二層チューブについて、実施例2と同様にしてヒトより採血した静脈血を、それぞれ2mLずつ入れ、37℃の恒温槽中に放置し(各n=3)、同様にして血液の流動性を観察し、液の流動性が消失するまでの時間を評価した。実施例2に記載したチューブと比較して、アルガトロバンを添加しないこの二層チューブの血液凝固時間は、いずれもかなり短いものであった。
【0075】
〔実施例3〕
(1)図1に示す二層構造のガイディングカテーテル用チューブ21について試験を行った。すなわち、内層23を構成する基材となる合成樹脂にポリアミド系エラストマー(ペバックス5533SA、本実施例では単に「ポリアミドA」と略記する。)及び抗凝固剤としてアルガトロバン、外層22を構成する基材となる合成樹脂にポリアミド系エラストマー(ペバックス7033SA、本実施例では単に「ポリアミドB」と略記する。)をそれぞれ用いた。
【0076】
(2)ラボ用小型混練機を用いて、内層23を構成するポリアミドAにアルガトロバンを5%添加し、十分溶融混練して成形加工し、アルガトロバン/ポリアミドAペレットを作製した。
【0077】
(3)押出機に前記アルガトロバン/ポリアミドAペレットを供給して溶融し、芯材となるステンレス芯線を連続的に挿入して被覆共押出を行い、内層23を作製した。その後、内層23の外周にステンレス線からなる補強体24を装着した。
【0078】
(4)次に押出機に前記ポリアミドBペレットを供給して溶融し、補強体24を装着した内層23を連続的に挿入して被覆共押出を行い、外層22を形成した。定尺に切断後、芯材であるステンレス芯線を引き抜いてガイディングカテーテル用チューブ21を製作した。このとき当該チューブは、外径2.4mm×内径2.0mmであり、また、当該チューブの内層23の厚さは60μmであった。
【0079】
(5)当該チューブの一端を溶封し、この中にヒトより採血した静脈血を、それぞれ2mLずつ入れ、37℃の恒温槽中に放置した(各n=3)。3分間静置した後に30秒ごとに傾斜させて血液の流動性を観察した。その後血液の流動性が消失するまでの時間を評価した。アルガトロバンを添加したチューブ21は、下記比較例3のものと比較していずれも血液凝固時間の大幅な延長を認めた。すなわち、このチューブは十分な抗血栓性を有するものであることが確認された。
【0080】
〔比較例3〕
(1)内層23を構成するポリアミドAにアルガトロバンを添加しないほかは、実施例3とまったく同様にしてガイディングカテーテル用チューブを形成した。
【0081】
(2)当該チューブについて、実施例3と同様にしてヒトより採血した静脈血を、それぞれ2mLずつ入れ、37℃の恒温槽中に放置し(各n=3)、同様にして血液の流動性を観察し、液の流動性が消失するまでの時間を評価した。実施例3に記載したチューブと比較して、アルガトロバンを添加しないこのチューブの血液凝固時間は、いずれもかなり短いものであった。
【0082】
【発明の効果】
本発明の医療用具は、血液と接するその外側表面及び/又は内側表面が、合成樹脂にアルガトロバンを添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層で構成されており、当該医療用具の他の部分は従来の汎用合成樹脂組成物より形成しているので、強度的に、抗血栓剤を添加した合成樹脂組成物からなる外層及び/又は内層を薄く形成することできるので、高価な抗血栓剤であるアルガトロバンの使用量を大幅に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガイディングカテーテルの断面図
【図2】本発明のガイドワイヤーの断面図
【図3】本発明の体外循環用血液回路の断面図
【図4】従来のカテーテルチューブの断面図
【符号の説明】
21 ガイディングカテーテル
22 外層
23 内層
24 金属編組等の金属補強体
25 最外層
31 ガイドワイヤー
32 外層
33 内層
34 芯材
41 体外循環用血液回路
42 外層
43 内層
44 中空部(管路)
51 カテーテルチューブ
52A 抗血栓剤を含有する部分
52B 造影剤を含有する部分

Claims (5)

  1. 血管内に導入及び留置されるカテーテルチューブからなる抗血栓性医療用具において、
    当該カテーテルチューブは、少なくとも外層(22)と内層(23)の二層構造を有し
    当該外層(22)と内層(23)の少なくともどちらか一方は、その表面が血液と接触する血液接触表面であり、
    当該血液接触表面を有する外層(22)と内層(23)の少なくともどちらか一方は、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物を添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層により形成し、
    前記二層構造は、外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイに供給し、溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着することにより形成し、
    前記外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物のいずれかは、前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含み、さらに、
    前記外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物は、添加混合する前記ピペリジンカルボン酸・1水和物の熱分解温度以下で熱成形可能な熱可塑性の合成樹脂からなり、
    前記外層(22)及び内層(23)の厚さを、それぞれ1〜200μmに形成し、かつ、
    前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む層の厚みを、5〜70μm、
    これを含まない層の厚みを、100〜200μmに形成し、かくして
    前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む層を、これを含まない層に比較して薄く形成して上記坑血栓層とし、かつ、
    前記カテーテルチューブは、ガイディングカテーテル、バルーンカテーテル、血管造影用カテーテル及びマイクロカテーテルからなる群から選択される一つであることを特徴とする抗血栓性医療用具。
  2. 前記カテーテルチューブが金属補強体を有するものであって、
    多層ダイに、円筒状に形成した金属補強体である金属編組を供給し、当該円筒状の金属編組を送り出しながら、この内表面及び外表面に、外層(22)及び内層(23)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から前記多層ダイにより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着することにより、一段で金属編組を介装させた二層構造とすることを特徴とする請求項1記載の抗血栓性医療用具。
  3. 血管内に導入及び留置されるガイドワイヤーからなる抗血栓性医療用具において、
    当該ガイドワイヤーは、少なくとも芯材(34)を内層(33)及び外層(32)で積層した層構造からなり、
    当該ガイドワイヤーは少なくとも先端部分が合成樹脂にて被覆され、かつ当該合成樹脂被覆部のうち少なくとも前記外層(32)は、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物を添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層により形成し、
    多層ダイに、前記芯材(34)を供給し、当該芯材を進行させながら、芯材の外表面に内層(33)を、さらにその外表面に外層(32)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイにより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着することにより、一段で当該芯材を貫装した二層構造とし、
    前記外層(32)をなす合成樹脂組成物は、前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含み、前記内層(33)をなす合成樹脂組成物は、造影剤を含み、
    前記外層(32)をなす合成樹脂組成物は、添加混合する前記ピペリジンカルボン酸・1水和物の熱分解温度以下で熱成形可能な熱可塑性の合成樹脂からなり、
    前記外層(32)及び内層(33)の厚さを、それぞれ20〜200μmに形成し、
    前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む外層(32)の厚みを、20〜80μm、これを含まない内層(33)の厚みを、80〜200μmに形成し、かくして
    前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む外層(32)を、これを含まない内層(33)に比較して薄く形成して上記坑血栓層としたガイドワイヤーであることを特徴とする抗血栓性医療用具。
  4. 血液の体外循環に使用される体外循環用血液回路からなる抗血栓性医療用具において、
    当該体外循環用血液回路は、少なくとも外層(42)と内層(43)の二層構造を有し
    当該体外循環用血液回路の少なくとも前記内層(43)は、(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物を添加した合成樹脂組成物からなる抗血栓層により形成し、
    当該二層構造は、外層(42)及び内層(43)をなす合成樹脂組成物を別々の押出機から多層ダイに供給し、当該ダイより溶融状態で共押出成形し、これらを熱融着して、一段で二層構造とすることにより形成し、
    前記内層(43)をなす合成樹脂組成物は、前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含み、
    前記内層(43)をなす合成樹脂組成物は、添加混合する前記ピペリジンカルボン酸・1水和物の熱分解温度以下で熱成形可能な熱可塑性の合成樹脂からなり、
    前記外層(42)及び前記内層(43)の厚さを、それぞれ0.1〜2000μmに形成し、かつ
    前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む内層(43)の厚みを、20〜200μm、これを含まない外層(42)の厚みを、500〜2000μmに形成し、かくして
    前記ピペリジンカルボン酸・1水和物を含む内層(43)を、外層(42)と比較して薄く形成して上記坑血栓層とした体外循環用血液回路であることを特徴とする抗血栓性医療用具。
  5. 前記合成樹脂組成物からなる抗血栓層中における前記(2R,4R)−4−メチル−1−[N2−((RS)−3−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリンスルホニル)−L−アルギニル]−2−ピペリジンカルボン酸・1水和物の添加量が0.05〜80質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の抗血栓性医療用具。
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