JP4942880B2 - 熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、単結晶基板、ガラス基板などの被処理体を加熱処理する熱処理装置に関する。本発明は、例えば、メモリやICなどの半導体装置の製造に適した急速熱処理(RTP:Rapid Thermal Processing)装置に好適である。ここで、RTPは、急速熱アニーリング(RTA)、急速クリーニング(RTC)、急速熱化学気相成長(RTCVD)、急速熱酸化(RTO)、及び急速熱窒化(RTN)などを含む技術である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、半導体集積回路を製造するためには、半導体ウェハ等のシリコン基板に対して成膜処理、アニール処理、酸化拡散処理、スパッタ処理、エッチング処理、窒化処理等の各種の熱処理が複数回に亘って繰り返される。
【0003】
半導体製造処理の歩留まりと品質を向上させるため等の目的から急速に被処理体の温度を上昇及び下降させるRTP技術が注目されている。従来のRTP装置は、典型的に、被処理体(例えば、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、光ディスク用基板)を載置するサポートリング(ガードリングその他の名称で呼ばれる場合もある。)と、これらを収納する枚葉式チャンバ(処理室)と、処理室に配置されたウインドウと、ウインドウの外部上部又は上下部に配置された加熱用ランプ(例えば、ハロゲンランプ)と、ランプの被処理体とは反対側に配置されたリフレクタ(反射板)とを有している。
【0004】
リフレクタは、例えば、アルミニウム製で、その反射部には、典型的に、金メッキが施されている。リフレクタには、リフレクタのランプによる温度破損(例えば、高温による金メッキ剥離)と冷却時にリフレクタが冷却を妨げないようにするための冷却機構(冷却管など)が設けられている。RTP技術で要求される急速昇温は、ランプのパワー密度とランプから被処理体への光照射の指向性に依存する。
【0005】
ウインドウは石英より形成(以下、石英ウインドウ)され、板状に構成されたり、被処理体を内部に収納可能な管状に構成されたりする。処理室が真空ポンプにより排気されて内部が減圧環境に維持される場合には、石英ウインドウは数10mm(例えば、30乃至40mm)の肉厚を有して減圧と大気との差圧を維持する。石英ウインドウは、温度が上昇することで発生する各温度差による熱応力を防ぐために、肉薄で耐圧可能な湾曲状に加工される場合もある。
【0006】
ハロゲンランプは、被処理体を均一に加熱するために複数個配列され、リフレクタによって、ハロゲンランプからの赤外線を一様に被処理体に向かって放射する。ハロゲンランプ及びリフレクタは一のランプハウスとして一体的に構成される。処理室は、典型的に、その側壁において被処理体を導出入するゲートバルブに接続され、また、その側壁において熱処理に使用される処理ガスを導入するガス供給ノズルと接続される。
【0007】
被処理体の温度は処理の品質(例えば、成膜処理における膜厚など)に影響を与えるために正確に把握される必要があり、高速昇温及び高速冷却を達成するために被処理体の温度を測定する温度測定装置が処理室に設けられる。温度測定装置は熱電対によって構成されてもよいが、被処理体と接触させねばいけないことから被処理体が熱電対を構成する金属によって汚染されるおそれがある。そこで、被処理体の裏面から放射される赤外線強度を検出し、その放射強度を以下の数式1に示す式に則って被処理体の放射率εを求めて温度換算することによって被処理体の温度を算出するパイロメータが温度測定装置として従来から提案されている。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、EBB(T)は温度Tの黒体からの放射強度、Em(T)は温度Tの被処理体から測定された放射強度、εは被処理体の放射率である。
【0010】
動作においては、被処理体はゲートバルブから処理室に導入されて、中空のサポートリングにその周辺が支持される。熱処理時には、ガス供給ノズルより、窒素ガスや酸素ガス等の処理ガスが導入される。一方、ハロゲンランプから照射される赤外線は被処理体に吸収されて被処理体の温度は上昇する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のウインドウは石英材の曲げ強度が弱いために厚さが数10mm(例えば、30乃至40mm)と厚く、また石英の熱伝導率が1.4乃至1.9W/m・Kと小さいことから以下のような問題を有する。即ち、第1に、石英の熱伝導率が小さいためウインドウの温度変化には斑が生じ易く、ウインドウ内部に温度差が発生する。かかる温度差により、ウインドウ内部でのランプ光の透過率が変化する。従って、被処理体への伝達エネルギーに差が生じ、被処理体を均一に加熱することができない。第2に、ウインドウの厚みのためランプ光が石英に吸収されて被処理体への照射効率を低下させる。第3に、ランプ面とその反対側の面で温度差が生じて、RTPのような急速昇温時には表裏面での熱応力差から石英ウインドウが破壊し易い。第4に、石英ウインドウと同様にランプを湾曲させれば被処理体とランプとの距離が離れてランプの指向性、及び非処理体へ伝達されるエネルギーを悪化させる。第5に、石英ウインドウの温度が上昇し、特に、成膜処理の場合には、その表面に堆積膜や反応副生成物が付着してしまい温度再現性を確保できないと共に処理室110のクリーニングの頻度が増加する。一方、厚さを薄くすると石英ウインドウはランプ光の吸収を減少することができるが、処理室内の減圧環境と大気圧との差圧に耐えられずに容易に破壊してしまい、減圧環境の処理室には適用できないという問題を生じる
そこで、このような課題を解決する新規かつ有用な熱処理装置を提供することを本発明の概括的目的とする。
【0012】
より特定的には、被処理体に減圧環境下で熱処理を施す熱処理装置の減圧環境と大気圧との差圧を石英ウインドウより薄く、かつ、強く維持することができ、かつ、石英材より熱伝導率が大きいウインドウを有する熱処理装置を提供することを本発明の例示的目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み、本発明の一側面としての熱処理装置は、被処理体に熱処理を行う処理室と、前記処理室に気密的に取り付けられて当該処理室を画定すると共に当該処理室の外部より前記被処理体に光を照射可能なウインドウとを有する熱処理装置であって、前記ウインドウは透光性セラミックスより形成され、前記ウインドウは、第1の溝が形成された第1のプレートと、第2の溝が形成された第2のプレートとを、張り合わせて構成され、前記第1の溝と前記第2の溝とが合わさって形成された前記ウインドウの内部の空間と適合する冷却管が該空間内に配置されている。かかる熱処理装置は透光性セラミックスより形成されたウインドウを有する。透光性セラミックスの曲げ強度は石英の曲げ強度より大きくウインドウの強度を高めているのでウインドウを薄くすることができ、この結果、ウインドウによる熱源からの熱の吸収を低減することができる。また、透光性セラミックスの熱伝導率は石英の熱伝導率より高く、ランプの放射光に伴い発生するウインドウ内の温度変化は均一であって、ウインドウ内部に温度差が発生しない。よって、ウインドウでの光透過率はほぼ一様であって、被処理体を均一に照射することができる。また、ウインドウ内部に形成された空間に該空間と適合する冷却管が配置されているため、ウインドウの冷却効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の他の目的及び更なる特徴は以下添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の例示的な熱処理装置100について説明する。なお、各図において同一の参照符号は同一部材を表している。また、同一の参照番号に大文字のアルファベットを付したものはアルファベットのない参照番号の変形例であり、特に断らない限り、アルファベットのない参照番号は大文字のアルファベットを付した参照番号を総括するものとする。ここで、図1は、本発明の例示的一態様としての熱処理装置100の概略断面図である。図1に示すように、熱処理装置100は、処理室(プロセスチャンバー)110と、ウインドウ120と、加熱部140と、サポートリング150と、ベアリング160と、永久磁石170と、ガス導入部180と、排気部190と、放射温度計200と、制御部300とを有する。なお、図1において、加熱部140及びランプ130の形状は簡略化されていることに理解されたい。なお、かかる構成は後述する図面及び本明細書において更に明らかとなるであろう。
【0017】
処理室110は、例えば、ステンレススチールやアルミニウム等により成形され、ウインドウ120と接続している。処理室110は、その円筒形の側壁112とウインドウ120とにより被処理体Wに熱処理を施すための処理空間を画定している。処理空間には、半導体ウェハなどの被処理体Wを載置するサポートリング150と、サポートリング150に接続された支持部152が配置されている。これらの部材は被処理体Wの回転機構において説明する。また、側壁112には、ガス導入部180及び排気部190が接続されている。処理空間は排気部190によって所定の減圧環境に維持される。被処理体Wを導入及び導出するためのゲートバルブは図1においては省略されている。
【0018】
処理室110の底部114は冷却管116a及び116b(以下、単に「116」という。)に接続されており冷却プレートとして機能する。必要があれば、冷却プレート114は温度制御機構を有してもよい。温度制御機構は、例えば、制御部300と、温度センサと、ヒータとを有し、水道などの水源から冷却水を供給される。冷却水の代わりに他の種類の冷媒(アルコール、ガルデン、フロン等)を使用してもよい。温度センサは、PTCサーミスタ、赤外線センサ、熱電対など周知のセンサを使用することができる。ヒータは、例えば、冷却管116の周りに巻かれたヒータ線などとしてから構成される。ヒータ線に流れる電流の大きさを制御することによって冷却管116を流れる水温を調節することができる。
【0019】
ウインドウ120は処理室110に気密的に取り付けられて、処理室110内の減圧環境と大気との差圧を維持すると共に後述するランプ130からの光を透過する。ウインドウ120は、半径約400mm、厚さ約5乃至10mm、例えば5mmの円筒形のプレート121であって、透光性セラミックスより形成される。本実施例において、プレート121に使用される透光性セラミックスはAl2O3より構成されるが、後述するようにこれに限定されるものではない。
【0020】
セラミックスは原料粉末を焼結して得られる多結晶体で、その微細構造は一般に結晶粒、結晶粒界のほかに析出物及び気孔(空孔)からなっている。基本的にセラミックスは不透光性を示すが、焼結プロセス、原料粉末、及び添加物をコントロールし、微細構造を変化させることでセラミックスを透明化することが可能となる。なお、透光性を示すセラミックスを一般的に透光性セラミックスと称する。透光性セラミックスの微構造は気孔や析出物などがほとんど存在せず結晶粒界のみより成る。これにより、透光性セラミックス中を通過する光は物質によるエネルギーの損失がほとんど引き起こされず、拡散光とならずに物体中を通過可能となり透光性を示す。一方、物質中の電子遷移に基づく光エネルギーの吸収現象も透光性を示す要因の一つであり、所望する波長領域に吸収現象の要素を持っていない材料がセラミックスの透明化の対象となる。なお、透光性セラミックスは当業界のいかなる技術をも適用可能であり、本明細書における詳細な説明は省略する。
【0021】
透光性セラミックスは高温強度が大きく、また焼結体の気孔率がほとんど0であることから、平滑な表面が得られガス放出がないなどの特徴を有する。なお、本発明において使用されるプレート121に好適な透光性セラミックスは、更に以下のような性質を有する。第1に、透過率波長依存度が石英と同等以上である。例えば、石英は0.3乃至2.5μmの波長を有する光を80乃至90%以上透過する。第2に、曲げ強度が石英の最大曲げ応力σMAX=68MPaより優れている。第3に、熱伝導率が石英の熱伝導率(1.4乃至1.9W/m・K)より優れていること。第4に、製造性が良いことが挙げられる。
【0022】
プレート121は上述したようにAl2O3より構成される透光性セラミックスであり、文献によると厚さ5mmのプレート121では波長領域3.5乃至6.0μmにおいて80%以上の透過率を示す。また、Al2O3の最大曲げ応力σMAXは500MPaであり、石英より向上している。従って、プレート121は従来のように処理室110から離れる方向に湾曲するドーム型に形成される必要がなく、平面形状を有する。ドーム型に形成される石英ウインドウは被処理体をランプから離間する距離を大きくするのでランプの指向性を悪化させるという問題があったが、本実施例はかかる問題を解決している。
【0023】
ウインドウ120と同条件である周囲固定、等分布荷重pの円板(半径a、厚さt)において、かかる円板に働く最大曲げ応力σMAXは次式で求められる。
【0024】
【数2】
【0025】
周囲固定、等分布荷重の円板において半径が同一である場合、最大曲げ応力は板圧の2乗に反比例する。従って、石英の約7.4倍の最大曲げ応力を有する本発明のプレート121は、石英に対して板圧を約1/2.7倍にすることが可能である。その結果、本発明のプレート121は従来の石英の約1/3程度の厚さで同様な強度を得ることができるため、ウインドウ120の薄型化が可能となる。
【0026】
本実施例のプレート121の厚さは5乃至10mm以下、例えば約5mmであり、従来の石英ウインドウの厚さである30乃至40mmよりも小さい。この結果、本実施例のウインドウ120は、従来の石英ウインドウよりも後述するランプ130からの光の吸収量が小さい。よって、第1に、後述するランプ130からの被処理体Wへの照射効率を従来よりも向上することができるので高速昇温を低消費電力で達成することができる。即ち、従来はランプ光が石英ウインドウに吸収されて被処理体Wへの照射効率を低下させる問題があったが本実施例はそれを解決している。第2に、プレート121の表裏面での温度差(即ち、熱応力差)を従来よりも低く維持することができるために破壊しにくい。即ち、従来は石英ウインドウのランプに対向する面とその反対側の面で温度差が生じて、RTPのような急速昇温時には表裏面での熱応力差から石英ウインドウが破壊し易いという問題があったが本実施例はそれを解決している。第3に、ウインドウ120の温度上昇は従来の石英ウインドウよりも低いために成膜処理の場合にその表面に堆積膜や反応副生成物が付着することを防止することができ、温度再現性を確保することができると共に処理室110のクリーニングの頻度を減少することができる。即ち、従来は石英ウインドウの温度が上昇し、特に、成膜処理の場合には、その表面に堆積膜や反応副生成物が付着してしまい温度再現性を確保できないと共に処理室のクリーニングの頻度が増加するという問題があったが、本実施例はそれを解決している。
【0027】
また、プレート121の熱伝導率は34W/m・Kであり、従来の石英ウインドウの熱伝導率である1.4乃至1.9W/m・Kより大きい。石英と比較しても18乃至24倍高い値を示す。この結果、本実施例のウインドウ120は、石英ウインドウよりも加熱時のウインドウ120内の温度格差が小さい。よって、ランプ130からのエネルギーは被処理体Wへ均一に到達し、被処理体Wを均一に加熱することが可能となる。従って、被処理体Wへ均一な加熱をすることが可能であって、従来と比べ高品質な被処理体Wを提供することが可能となる。
【0028】
更に、透光性セラミックスより構成されるプレート121は石英と比べて加工が容易であり、製造性に優れる。後述するように、プレート121の内部に冷却管を配置する構成も可能である。
【0029】
本実施例において、プレート121はAl2O3より構成されるが、上述した様に本発明はかかる部材に限定されるものではない。プレート121は上述したような作用と効果を有するに足りるものであって、本実施例に適用可能な透光性セラミックスは、例えば、AlN、Sc2O3、MgO、Ca5(PO4)3OH、Si3N4、PLZT−8/65/35、Y2O3、ZrO2、ThO2−5mol%Y2O3、Y2O3−10mol%ThO2等が考えられる。
【0030】
以下、図2乃至図3を参照して、本実施例のウインドウ120の変形例としてのウインドウ120Aを説明する。ここで、図2は図1に示すウインドウ120の変形例であるウインドウ120Aの底面図である。図3は、図2に示すウインドウ120AのA−A断面の一部拡大断面図である。本実施例のウインドウ120Aは、図2に示すプレート121の直下に断面矩形のアルミニウム又はステンレススチール(SUS)製の補強材(又は柱)124を有する。図2において、例示的に、補強材124は直線的に複数形成されている。なお、かかるウインドウ120Aを使用する場合、ランプ130は直線的に配列されることが好ましく、補強材124はランプ130の真下を避ける(即ち、ランプ130のランプ光が補強材によって遮蔽されない)ように配置される。但し、補強材124は曲げ等の形状を有してもよく、本実施例の加熱部140のようにランプ130が同心円状に配置される場合、ランプ130の真下を避けるように曲げ加工を施せばよい。 補強材124は熱伝導率がよく、また、処理室と同様の材質であるので被処理体Wに対する汚染源にはならない。補強材124によりウインドウ120Aのプレート121の厚さは5乃至10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは、例えば、約3mmとなり、上述の長所を更に顕著に有する。本実施例で、補強材124の断面寸法は、図3において高さ約18mm、幅約12mmであり、水冷管125の径は6mm程度であるがこれに限定されるものではない。図3に矢印で示すように、ランプ130からの光は補強材124の側面で反射されて下方に配置された図示しない被処理体Wに導入される。
【0031】
かかる補強材124は、内部に冷却管(水冷管)125を有し、ウインドウ120Aの強度を更に高めている。本実施例の冷却管125は、補強材124とプレート121の両方を冷却する機能を有する。冷却管125はプレート121を冷却し、ランプ光による熱変形を防止する効果を有する。また、補強材124がアルミニウム製であれば200乃至700℃で溶けたり変形したりするので適当な温度制御が必要だからである。冷却管125による温度制御は冷却管116と同様でもよいし、当業界で既知のいかなる方法をも適用することができる。
【0032】
以下、図4を参照して、本実施例のウインドウ120の別の変形例としてのウインドウ120Bを説明する。ここで、図4は、図1に示すウインドウ120の変形例であるウインドウ120Bの一部拡大断面図である。本実施例のウインドウ120Bは、透光性セラミックスより形成された2枚の薄いプレート126及び127より構成されるプレート121と、かかるプレート126及び127の間に配置された冷却管125とを有する。
【0033】
プレート121は、図中の点線で示したプレート126と127を張り合わせる貼り合せ面128に対しプレート126及び127が線対称に構成される。プレート126及び127には冷却管125に適合する溝が形成され、かかる溝に冷却管128を配し両面から張り合わされる。なお、溝はランプ130の各ランプの間であって、ランプの真下を避けるように配置される。透光性セラミックスは石英に比べて局部的な加工が容易であるという長所を有し、かかる構成が可能となる。また、プレート126及び127を張り合わせたときのプレート121の厚さは、ウインドウ120のプレート121と同一であることが好ましい。
【0034】
冷却管125は断面形状が円もしくは楕円より形成された冷却管であって、プレート126及び127の間に配される。冷却管125はプレート126及び127の間に配されるため、ウインドウ120Aと比べてプレート121の冷却効率を向上するという長所を有する。なお、冷却管125は上述したウインドウ120Aと同様の効果を有するものであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0035】
以下、図5乃至図10を参照して、本発明の加熱部140を説明する。ここで、図5は、図1に示す加熱部140の概略底面図であり、図6は、図5に示す加熱部140の一部を示す拡大断面図である。図7は、図5に示すランプ加熱部140よりランプ130をはずしたときの図6に対応する図である。図8は、図6に示すランプ130aの概略断面図である。図9は、図6に示すランプ130bの概略断面である。図10は、図6に示すランプ130の概略底面図である。なお、図5乃至図10におてい加熱部140及びランプ130は多少誇張して描かれており、本発明を特徴的に表すものであることに理解されたい。加熱部140は2種類のランプ130a及びランプ130bと、ランプハウスとしてのランプ保持部142とを有し、被処理体Wに所定の熱処理を施す加熱装置として機能する。ここで、ランプ130はランプ130a及びランプ130bを総括するものとする。本実施例において、加熱部140はランプ130の照射面と被処理体Wまでの距離が約40mmとなるように被処理体Wから離間されている。
【0036】
ランプ130は、本実施例ではシングルエンド型であるが、電熱線ヒータ等その他のエネルギー源を使用してもよい。ここで、シングルエンド型とは、図6に示すように、一の電極部132を有する種類のランプをいう。ランプ130は被処理体Wを加熱する機能を有し本実施例ではハロゲンランプであるが、加熱部140に適用可能なランプがこれに限定されるものではない。また、ランプ130の出力はランプドライバ310によって決定されるが、ランプドライバ310は後述するように制御部300により制御され、それに応じた電力をランプ130に供給する。なお、本実施例において、ランプ130bのパワー密度はランプ130aのパワー密度より大きくなるように制御部300により電力が制御される。より詳細には、ランプ130bはランプ130aの2乃至3倍のパワー密度を有する。
【0037】
図5に示すように、本実施例では、ランプ130はほぼ円形の被処理体Wに対応させてほぼ同心円状に配置されている(図5において、ランプ130はその数が省略して描かれている)。また、ランプ130は被処理体Wの中心近傍に対応する位置に大口径のランプ130aが、サポートリング150及び被処理体Wの端部近傍に対応する位置に小口径のランプ130bが配置される。なお、ランプ130の配置についてはランプ保持部142において述べるものとし、ここでの詳細な説明は省略する。
【0038】
典型的に、ランプ130は一の電極部132と、中間部134と、中間部134を介し電極部132に接続される発光部136とを含み、発光部136は中間部134を介し電極部132に接続するフィラメント137のコイル138部分と、リフレクタ139とを有する。
【0039】
本実施例において、ランプ130はランプ保持部142の後述する溝143と内接する側面部分にねじ山(おねじ)131が形成される。ねじ山131は、本実施例においては三角ねじであって、略三角形状のねじ山が形成される。なお、ねじ山131の形状はかかる形状に限定されるものではなく、四角ねじ又は台形ねじ等であってもよい。但し、ねじ山131はランプ130の例示的な形態を示したものであり、ランプ130が形状においてこれに限定するものではない。後述するようにねじ山131がないランプ130Bであってもよい。
【0040】
本実施例では、例示的に、ランプ130aの電極部132の高さは約25mm、中間部134の高さは約45mm、発光部136の高さは約25mmである。また、中間部134の直径は約10mm、発光部136の直径は約40mmである。一方、例示的に、ランプ130bの電極部132の高さは約25mm、中間部124の高さは約55mm、発光部の高さ約10mmである。また、中間部134の直径は約10mm、発光部136の直径は20mmである。
【0041】
電極部132は一対の電極133を有し、ランプ保持部142を介しランプドライバ310と電気的に接続する部分であって、かかる電極133がフィラメント137に電気的に接続されている。電極部132へ供給される電力はランプドライバ310によって決定され、ランプドライバ310は制御部300によって制御される。電極部132とランプドライバ310との間は後述する封止部143cによって接続されている。
【0042】
中間部134は発光部136と一体、かつ、気密的に形成され、かかる内部には窒素又はアルゴン又はハロゲン気体が封入される。中間部134は電極部132と発光部136の間に位置し所定の長さを有する円筒であって、電極部132と発光部136の間を離間させる。中間部134は、かかる長さにおいて後述するランプ130の温度制御において好ましいという長所を有する。なお、中間部134はかかる内部に位置するフィラメント137も発光するため、当然発光部136の一部である。しかし、本明細書では電極部132と発光部136(最も強く発光する部分)が所定距離離間しているため、かかる領域を中間部134と定義したに過ぎない事に理解されたい。本実施例において、中間部134はセラミックより形成される。なお、中間部134はセラミックの他に金属材料、例えばアルミニウムやSUS(ステンレススチール)より形成されてもよい。
【0043】
発光部136は本実施例において中間部134より大きな径の円筒形状であって、溝143に内接する側面136aと、被処理体Wと対面しランプ光が射出される射出面136bより構成される。発光部136はフィラメント137のコイル138部分とリフレクタ139とを内部に有する。本実施例において、発光部136の側面136aは中間部134と同一材料より中間部134と一体的に成形される。一方、発光部136の射出面136bは石英、又は透光性セラミックスなどのランプ光を透過しやすい材料より形成さる。
【0044】
発光部136は、基本的に、側面136が半球、半楕円球、及び円錐形状に形成されるが、ランプ130の側面には後述するようなねじ山131が形成される。そこで、図6、図8及び図9に示すように、本実施例では発光部136はかかるねじ山131を形成するために側面136bの形状が半球及び円錐形状とは異なっており、例示的に変形されていることに理解されたい。また、後述するリフレクタ137の形状が側面136aと同一な形状ではなく半球形状を有するのは、側面136aの形状が例示的に変形されているに過ぎないからである。
【0045】
フィラメント137は、例えば、タングステン(W)から構成される。図8乃至図10によく示されるように、フィラメント137は電極133に接続すると共に発光部136において光源と成り得るコイル138を構成する。かかるコイル138の軸心は被処理体Wに対し平行するように形成される。フィラメント137から発せられた光はコイル138の法線方向(コイル138の軸心方向と直交する方向)に照射される。従って、少なくともコイル138の被処理体Wと対面する側からの光は被処理体Wに直接(リフレクタ139を介さずに)照射されることとなる。かかる光はリフレクタ139による反射損失が0であり、高エネルギーのまま被処理体Wに照射される。一方、かかる光を除く光に関しては後述するリフレクタ139によって効率よく反射され被処理体Wへと照射される。
【0046】
リフレクタ139はコイル138を覆い、被処理体Wから遠ざかる方向に凸となるような半球形状を有する。リフレクタ139は光を被処理体Wに向けて反射する反射部であって、より詳細には、発光部136の側面136aと同一形状に形成される。但し、図6、図8及び図9では、発光部136がねじ山131を形成するため、上述したように発光部136の形状が変更されていることに理解されたい。また、リフレクタ139の形状は半球形状に限定されず、発光部136の側面と同一であるならばその他の形状を排除するものではない。例えば、リフレクタ139は半楕円球形状や円錐形状であってもよい。また、リフレクタ139は図示しない貫通孔を有し、当該貫通孔よりフィラメント137が電極133と接続することを許容し、コイル138を覆っている。但し、当該貫通孔はリフレクタ139の反射機能を妨げない程度の大きさに形成されることが好ましい。更に、リフレクタ139のコイル138を覆っている側の表面は可視光線及び赤外線を含む光を効率よく反射する為のコーティング処理が施されている。かかるコーティングの塗布材料としては金(Au)、金(Au)及びロジウム(Rh)、金(Au)及びニッケル(Ni)を使用することが考えられる。
【0047】
リフレクタ139はフィラメント137のコイル138より発せられる光を被処理体Wに向けて反射すると共に、ランプ130の指向性を高める機能を有する。リフレクタ139は、上述した形状によりフィラメント137のコイル138部分より放射された光を効率よく、好ましくは少なくとも一回以下の反射で被処理体Wに照射するとともに、ランプ光を被処理体に対し略垂直となる方向に集光する。図11及び図12を参照するに、ランプ130の光路について説明する。ここで、図11は、図6に示すランプ130のフィラメント137より放出される光L(LはL1、L2、及びL3を総括するものとする。)の光路を示した概略側面図である。図12は、図6に示すランプ130のフィラメント137より放出される光Lの光路を示した別の概略側面図である。コイル138の上面側(被処理体Wに対し対向する側)より放射された光L1は被処理体Wから遠ざかる方向、即ちリフレクタ139に向かう。上述したように、リフレクタ139は光を被処理体Wに向かうように反射させる為、かかる光L1はリフレクタ139で一回反射し被処理体Wへ向かう。なお、光L1の一部は再びフィラメント137に到達し被処理体Wに照射されないものがある。しかし、かかる光のエネルギーはコイル138の加熱及び発光に寄与するため、相対的にエネルギーのロスとは成り得ない。また、コイル138の側面側より放射された光L2はリフレクタ139に入射し、大部分は被処理体Wへ照射され、残りは再びフィラメント137にもどり上述したようにコイル138の発光に寄与する。最後に、コイル138の下面側(被処理体Wに対面する側)より放射された光L3はリフレクタ139を介さずに被処理体Wに直接照射される。
【0048】
以上説明したように、本実施例のランプ130はフィラメント137のコイル138部分を平行に配置することで、光は被処理体Wに対し垂直方向に射出される。一の光は被処理体Wに直接照射され、一方その他の光はリフレクタ139に向かう。また、上述したようにリフレクタ139の形状は光を被処理体Wに向けて反射するように形成されている。よって、ランプ130より射出される光は、一回の反射のみで被処理体に照射される。また、ランプ130より放射される光はリフレクタ139の開口部分の接線方向の範囲内に集中する。即ち、本実施例のランプ130は、図26に示すような従来のランプよりもリフレクタ139での反射回数が少ないためエネルギー損失が少ないまま被処理体Wに伝達され、指向性にも優れている。従来は光がリフレクタの多重反射に伴う反射損失により、ランプ光のエネルギーを低下させる問題があったが本実施例はそれを解決している。よって、ランプ130は、被処理体Wへの照射効率を従来よりも向上することができるので高速昇温を低消費電力で達成することができる。なお、リフレクタ139が有する曲率、及び、開口はランプ130に求める指向性により異なるものである。
【0049】
また、本実施例ではランプ保持部142の後述する溝143に適用可能なねじ山131がランプ130の側面に形成されるため、ランプ130の中間部134及び発光部136は強度、及び加工性を考慮して上述の部材より構成される。しかし、本発明のランプ130はかかる部材に限定されず、ランプ130の中間部134及び発光部136の全体を石英、又は透光性セラミックスより形成してもよい。但し、かかる構成にした場合、ランプ130にカバー材を設け当該カバーにおいてランプ保持部142に対するランプ130の強度、及び加工性を得るものとしなければならないことは言うまでもない。更に、かかるカバー材は後述するランプ130の冷却を妨げないよう、熱伝導率の高い部材より選択されることが好ましい。一方、ランプ130は、典型的に、発光部136の側面136bを上述したように半球又は円錐形状に形成してもよい。更に、ランプ130は発光部136と中間部134が同一径を有する円筒形状に形成されてもよい。しかしながら、上述したランプ130の形状は後述する長所を数多く有するという利点がある。
【0050】
以下、図13を参照して、本実施例のランプ130の変形例としてのランプ130Aを説明する。ここで、図13は、図6に示すランプ130の変形例であるランプ130Aの概略底面図である。ランプ130Aは複数のコイル138a乃至138cを構成するフィラメント137Aを有する。コイル138a乃至138cは、上述したフィラメント137と同様に、被処理体Wに対して平行になるように配置される。コイル138a乃至138cを並列に配列することで、図12よりランプ130Aを見たとき、ランプ130Aは発光部136を面光源と見なすことができる。即ち、ランプ130Aはランプ130よりも照射エネルギーを増大させる。よって、被処理体Wへの照射効率をランプ130よりも向上することができるので高速昇温を達成することができる。また、かかるランプ130Aにおいても、ランプ130で述べたようなリフレクタ139の反射損失が少なく、かつ指向性を持たせたランプであることはいうまでもない。
【0051】
なお、ランプ130Aにおいて、フィラメント137Aを構成するコイル138a乃至138cの数は例示的であり、所望する照射エネルギーにより適宜変更可能である。また、フィラメント137Aの配置及び形状は、ランプ130Aが被処理体Wに対して面光源とみなせるに足りるものである。即ち、図14乃至図17に示すようなフィラメント137の配置であっても良い。ここで、図14乃至図16は、図13に示すランプ130Aの有するフィラメント137Aの変形例であるフィラメント137B乃至137Dを示す概略平面図である。図17は、図16に示すフィラメント130Dを示す概略側面図である。図14は複数のコイル138d乃至139gが交差するように配置されたフィラメント137Bである。図15は幅広に形成されたコイル138hを有するフィラメント137Cである。図16乃至図17はコイル138iが螺旋を形成するフィラメント137Dである。上述した形状であっても、ランプ130Aを面光源と見なせることができ、ランプの照射エネルギーを上げることが可能である。
【0052】
図5乃至図7、図18を参照するに、ランプハウスとして機能するランプ保持部142は略直方体形状を有し、各ランプ130を収納する溝143と、隔壁148とを有している。ここで、図18は、図6に示すランプ保持部142のランプ130が熱膨張をしていないときの一部拡大断面図である。
【0053】
溝143はランプを収納するランプ収納部としての機能を有し、ランプ130aを収納する溝143aと、ランプ130bを収納する溝143bより構成される。なお、溝143は溝143a、溝143bを総括するものとする。なお、溝143の詳細な形状については後述するものとし、以下溝143の配置について説明する。
【0054】
図5によく示されるように、溝143aはランプ保持部142の中心(図中、線Xと線Yの交差部分)、即ち被処理体Wの中心に対応する部分から半径方向に、サポートリング150の手前まで同心円を描くように形成される。より詳細には、溝143aはランプ保持部142の中心、及び、当該中心部分から半径が第1の距離づつ大きく形成された複数の同心円の円周上に、溝143aの中心が位置するように複数の溝143aが形成される。かかる第1の距離は、ランプ130aの放射分布の半値幅(ランプ130aの光強度がピーク値と比較して半分の値になったときの放射分布の幅)の約0.5乃至1.5倍に設定される。本実施例において、ランプ130aは射出面136bからランプ光の放射方向に約40mmの点(本実施例における、ランプ130から被処理体Wまでの距離)において、半値幅約40mmを示す。なお、かかる幅は使用するランプによって異なる値であって、本発明を限定するものではない。また、本実施例では、後述する冷却管148を発光部136側に有する為、第1の距離はランプ130aの発光部136の直径より大きな値である50mm(半値幅40mmラ1.25)に設定される。なお、かかる同心円は後述する溝143bと重ならない程度の位置まで広げられるものとする。また、一の円上に形成される各溝143aの間隔は第1の距離ごとに形成されることが好ましい。
【0055】
一方、溝143bはサポートリング150と被処理体Wとが重なる部分、及び、その近傍に対応する位置に複数の同心円を描くように形成される。より詳細には、溝143bは被処理体Wと後述するサポートリング150の重なる領域であって、その略中心を示す第一の円C1、当該円C1より半径が第2の距離だけ大きい第2の円C2と、円C1より半径が第2の距離だけ小さい第3の円C3のそれぞれの円周上に位置するように配置される。なお、第2の距離は、ランプ130bの放射分布の半値幅の約0.5乃至1.5倍に設定される。ランプ130bは射出面136bからランプ光の放射方向に約40mmの点(本実施例における、ランプ130から被処理体Wまでの距離)において、半値幅約20mmを示す。なお、かかる幅は使用するランプによって異なる値であって、本発明を限定するものではない。溝143aと同様に、冷却管を発光部136側に有する為、第2の距離は25mm(半値幅20mmラ1.25)に設定される。また、一の円上に形成される溝143bの間隔は第2の距離ごとに形成されることが好ましい。
【0056】
本実施例では、溝143bは3つの円C1、C2、及びC3上に形成されるが、かかる円(C1、C2、C3)の数は例示的である。溝143bは上述したように、サポートリング150及び被処理体Wの重なる部分、及び、その近傍をランプ130bが照射可能なように形成される。例えば、被処理体Wの端部が円C2より大きい場合は、円C2の外側に第2の距離だけ大きい半径を有する図示しない円上に溝143bが更に形成される。同様に、サポートリング150が円C3より小さい場合は、円C3の内側に第2の距離だけ小さい半径を有する図示しない円上に溝143bが更に形成される。
【0057】
上述した構成において、ランプ保持部142は被処理体Wの中心近傍に対応する位置にランプ130aを、被処理体Wとサポートリングの重なる部分及び当該部分の近傍にランプ130bを配置可能とする。図21及び図22を参照するに、かかる状態においてランプ130を照射すると、被処理体Wの中心部ではランプ130aにより大きな照射面積を得ることができる。一方、被処理体Wの端部近傍ではランプ130bによりランプ130aの照射面積よりも小さな照射面積を得ることができる。ここで、図21は、図1に示す加熱部140のランプ130aより被処理体Wに照射されるランプ光を示した図である。図22は、図1に示す加熱部140のランプ130bより被処理体Wに照射されるランプ光を示した図である。なお、図21及び図22はランプ光を例示的に示したものであって、本実施例のランプ130の数とは一致していない。
【0058】
本実施例では口径の小さなランプ130bをランプ130aの周囲に配置することで、被処理体Wの端部及びサポートリング150が重なり合う部分、及び当該部分の近傍である狭い領域を、効率よく照射することが可能となる。また、上述したように、ランプ130bに投入されている電力はランプ130aに投入されている電力より大きい。一のランプより照射される単位面積あたりのエネルギーはランプ130bの方が大きい。従来の熱処理装置のランプ配置では一の種類のランプしか使用されておらず、被処理体Wの中心部と端部でランプの照射面積を制御することは不可能であった。被処理体Wとサポートリング150が重なり合う部分150、及び、当該部分の近傍はサポートリング150と被処理体Wの比熱が異なる。より詳細には、サポートリング150の比熱は被処理体Wの比熱より小さい。よって、かかる部分は中心部と比べて温度が上昇し難いといった問題を有していた。しかし、本実施例では、温度上昇のしにくい被処理体Wの端部である狭い領域を小口径のランプ130bで照射することでランプ光が漏れることなく効率よく加熱することができる。更に、ランプ130bのパワー密度をあげることで中心部との加熱むらを防止することができ、高品質な処理を行うことができる。また、比較的温度上昇のし易い中心付近に大口径のランプ130aを使用することは、一のランプ130aで広い照射面積を得ることができる。よって、中心付近のランプ130の数を従来より減らすことができ、消費電力の低減を可能とする。本実施例では異なる口径のランプ130を使用し、かつ投入電力を変化させることでかかる問題を解決している。
【0059】
また、図23を参照するに、半径方向に最外部にあるランプ130bをランプ光が隣接するランプ130bと被処理体W上で重なるように、ランプ130bを傾斜させることも考えられる。ここで、図23は、図6に示すランプ130の配置の変形例を示した概略断面図である。かかる構成は、被処理体Wの端部のランプの照射密度を高めるといった効果を有し、中心部との加熱むらを防止する上で更に効果的である。
【0060】
なお、溝143の配置は同心円状に配置されることに限定されず、上述したような条件を満たしているのであればその他の配置状態でもよく、例えば、直線状や、渦巻状に配置されてもよい。また、本実施例ではランプ130のリフレクタ139の開口形状が円であるため、ランプ光の照射形状は円である。しかし、被処理体Wの中心部に照射面積の広いランプ、端部に照射面積が小さいランプを配置するといった概念から考えると、ランプ130は照射形状において限定を有するものではない。例えば、照射面積が三角形になるようにランプ130及び/又はリフレクタ139の形状を変化させても良い。なお、ランプ光の形状は三角形に限定されず、正方形、6角形のその他の多角形であってもよい。また、これと同様な作用を奏するいかなる照射方法をも適用することができる。
【0061】
以下、溝143の形状について説明する。溝143はランプ130と同一な形状を有し、ランプ130の電極部132を収納する部分143cと、中間部134を収納する部分143dと、発光部136を収納する部分143eからなる。部分143cは電極部132と、図1には図示されて図6及び図7には図示されないランプドライバ310とを接続すると共に、両者の間を封止する封止部143cとして機能する。溝143はランプ130が内接する部分にランプ130に対応するねじ山(めねじ)147が形成されている。本実施例において、ねじ山147はランプ130と適合するような三角ねじであって、略三角のねじ山が形成される。なお、ねじ山の形状はかかる形状に限定されるものではなく、ランプ130のねじ山131が四角ねじ又は台形ねじ等であるなら、溝143のねじ山147もそれに対応して形成される。なお、溝143はランプ130が熱膨張したときに、ランプ130と最適に一致するようにねじ山147が形成される。即ち、ランプ130が通常の形態(熱膨張していない状態)であるとき、溝143に形成されたねじ山147の外径、内径、及びねじ山のピッチは、ランプ130のねじ山の外径、内径、及びねじ山のピッチより若干大きい寸法を有する。但し、かかる寸法の差はランプ130の挿入及び溝134との係合を妨げない程度のものであると理解されたい。
【0062】
上述した構成において、溝143とランプ130はナットとボルトの関係であって、ランプ保持部142はランプ130を回転しながら溝143に挿入することでねじ山が互いに係合し、ランプ130を保持する。図18に示すように、ランプ130が通常の形態(熱膨張していない)であるとき、ランプ130と溝143の対応するねじ山は重力方向の面において接触している。即ち、ランプ130と溝143はねじ山において接触面積を確保している。かかる接触面積はランプ130を保持するために必要であると同時に、以下の欠点を解決するものである。従来のランプ保持部の溝はランプと同様な円筒形を有しており、ランプの熱膨張を考慮してランプが膨張により最大となる時に溝とランプが一致するように形成されていた。即ち、従来ではランプが完全に膨張しきっていないときには、溝との接触面積が少なくランプを冷却するためにランプ保持部に配置されている冷却管の冷却効率を低下するという欠点を有したが、本実施例ではそれを解決している。また、溝143のねじ山147はランプ130のねじ山より若干大きく形成されているため、溝143とランプ130には多少の空間を形成する。ランプ130が加熱され熱膨張しているとき、溝143とランプ130は一致するように形成されており、かかる空間によりランプ130の膨張を可能とする。
【0063】
更に、かかる形状のランプ130及び溝143の形状は次の示すような長所を有する。上述した構成のように、一部のランプの出力を上げることは、かかるランプの劣化を早めることとなる。また、リフレクタも大きなパワーで加熱することにより劣化する。従って、高出力ランプは低出力ランプよりも短命になる。同様に、高出力ランプ用リフレクタは低出力ランプ用リフレクタよりも短命になる。この結果、従来のランプ保持部(ランプ保持部)は寿命切れとなったランプ保持部周辺のランプとリフレクタを交換するために、未だ使用可能なランプ保持部中央のランプとリフレクタをも含めたランプ保持部を一体的に交換しなければならなくなり、不経済であった。しかし、本実施例のランプ保持部142の溝143とランプ130は、上述したようにナットとボルトの関係であって、一のランプ130の取り外しは容易である。従って、劣化したランプ130だけを取り替えることで、未だ使用可能なランプ130を継続して使用することが可能である。従って、従来ではランプ保持部を全体的に取り替えることでランプを全部取り替える必要があり不経済であったが、本実施例ではかかる課題を解決している。また、ランプ保持部全体を取り替えることは作業が煩雑であるが、本実施例では劣化したランプだけを交換するだけであるのでメンテナンスの効率を向上させるという更なる長所を有する。
【0064】
以下、図19及び図20を参照し、ランプ保持部142の溝143の変形例である溝143Aについて説明する。ここで、図19は、図5に示す加熱部140のランプ保持部142の構造を示す概略断面図である。図20は、図5に示す加熱部のランプ保持部142の構造を示す概略底面図である。なお、図20では、ランプ130は取り外されている。また、溝143Aに適用可能なランプ130にはねじ山131は必要とされず、ねじ山131が形成されていないランプ130Bを使用する。
【0065】
溝143Aはランプ130Bより多少大きめな形状を有しランプ130Bを収納する。また、溝143Aは当該溝134Aに内接する複数の薄板144を有し、かかる薄板144は板ばねの機能を有し、かつ、ランプ130Bを保持する。
【0066】
薄板144は、本実施例においては矩形に形成され、アルミニウム又はステンレススチールより成形される。薄板144は部材の長手方向の両端が略L字形状になるような曲げ加工が施されている。更に、薄板144は曲率を有し、かかる曲率はランプ130Bの側面の曲率と同一に形成される。図17及び図18によく示されるように、薄板144は溝143Aに内接され、例えば溶接等の手段によって略L字形状の先端が溝143Aに接合される。薄板144は、かかる状態において溝143Aと薄板144の間に空間145を形成する。空間145は、上述した薄板144の曲げ加工により発生するスペースであり、薄板144の曲げ開始位置によって所望の大きさに設定することが可能である。空間145は、後述するようにランプ130Bの熱膨張に対し薄板144が伸縮可能なスペースであるように設定される。薄板144は隣り合う薄板144と所定のギャップ146を保ちながら、溝143Aの円周に沿って8枚配置される。かかる構成において、薄板144は溝143A内で略八角形を形成する。なお、ギャップ146は薄板144が半径方向に伸縮する際、隣接する薄板144同士が接触しない程度に設定される。更に、薄板144は溝143Aの側面に沿って3枚、同様に配置される。即ち、本実施例において、溝143Aは計24枚(8ラ3枚)の薄板144を有する。また、溝143Aは薄板144を有する状態で、ランプ130Bと同一、又はしまりばめとなるように構成される。
【0067】
かかる構成において、溝143Aは薄板144を介し、ランプ130Bを保持する。より詳細には、薄板144が画定する空間にランプ130Bを強く押し込むことで、ランプ130Bは溝143Aに挿入される。このとき、溝143Aはランプ130Bの挿入に伴い弾性変形し、薄板144より構成される壁面に内接する。従って、ランプ130Bは薄板144の復元力及び摩擦力によって保持され、薄板144と全面において接触している状態となる。また、ランプ130Bが熱膨張した場合であっても、溝143Aは薄板144がランプ130Bに追従し伸縮することでランプ130Bを保持する。即ち、従来ではランプが完全に膨張しきっていないときには、溝との接触面積が少なく後述する冷却管の冷却効率が低下するという欠点を有したが、本実施例ではそれを解決している。また、かかる構成でもランプ130の部分的な交換は可能であり、劣化したランプ130だけを取り替えることで、未だ使用可能なランプ130を継続して使用することが可能である。また、ランプ保持部全体を取り替えることは作業が煩雑であるが、本実施例では劣化したランプだけを交換するだけであるのでメンテナンスの効率を向上させるという更なる長所を有する。
【0068】
なお、本実施例において明細書中に記載した薄板144の枚数及び形状は例示的であり、上述した記載に限定されない。例えば、薄板144が形成する画定する空間は多角形であっても良い。しかし、ランプ130との接触面積を増やすためにも多角形は略円と見なせることが好ましい。
【0069】
以上、ランプ130を保持する溝143の好ましい形態について説明したが本発明はこれに限定されず、上述の作用及び効果を達成可能であればその他の形態を排除するものではない。また、溝143の形態はランプ130に限定されず、当該周知のいかなるランプにも適用可能である。
【0070】
隔壁148は図6及び図7に示すように、同心円上に整列する複数の隣接する溝143の間に配置されている。本実施例において、隔壁148は溝143aの部分143c間では約50mm、部分143e間では約10mmである。また、溝143bの部分143c間では約15mm、部分143eの間では約5mmである。隔壁148には、隔壁148に沿って一対の冷却管(水冷管)148a及び148bが内接されている(なお、冷却管148は冷却管148a及び冷却管148bを総括するものとする)。より詳細には、冷却管148aはランプ130の電極部132に対応する場所に位置し、冷却管148bはランプ130の発光部136に対応する場所に位置する。
【0071】
冷却管148は図示しない温度制御機構に接続される。温度制御機構は、例えば、制御部300と、温度センサ又は温度計と、ヒータとを有し、水道などの水源から冷却水を供給される。冷却水の代わりに他の種類の冷媒(アルコール、ガルデン、フロン等)を使用してもよい。温度センサは、例えば、PTCサーミスタ、赤外線センサ、熱電対など周知のセンサを使用することができ、温度センサ又は温度計はランプ130の電極部132及び発光部136の壁面温度を測定する。ヒータは、例えば、冷却管116の周りに巻かれたヒータ線などとしてから構成される。ヒータ線に流れる電流の大きさを制御することによって冷却管148を流れる水温を調節することができる。
【0072】
冷却管148aは、電極133がモリブデンから構成される場合は、モリブデンの酸化による電極部133及び封止部143cの破壊を防止するために封止部143cの温度を350℃以下に維持する。また、冷却管148bは、中間部134及び発光部136がハロゲンサイクルを維持するように発光部134の温度を250乃至900℃に維持する。ここで、ハロゲンサイクルとは、フィラメント137を構成するタングステンが蒸発しハロゲンガスと反応し、タングステン−ハロゲン化合物が生成され、ランプ130内を浮遊する。ランプ130が250乃至900℃に維持された場合、タングステン−ハロゲン化合物はその状態を維持する。また、対流によって、タングステン−ハロゲン化合物がフィラメント137付近に運ばれると、高温のためにタングステンとハロゲンガスに分解される。その後、タングステンはフィラメント137に沈殿し、ハロゲンガスは再び同じ反応を繰り返すことである。なお、ランプ130は、一般に、900℃を超えると失透(発光部134が白くなる現象)が発生し、250℃を下回ると黒化(タングステン−ハロゲン化合物がランプ130の内壁に付着し黒くなる現象)が発生する。
【0073】
本実施例では、冷却管149aをハロゲンサイクルの範囲温度及びモリブデンの酸化防止の共通温度、好ましくは250乃至350℃、冷却管149bをハロゲンサイクルの範囲温度、好ましくは800乃至900℃に維持する。ここで、発光部136の冷却温度は250乃至900℃の範囲で可能であるが、冷却効率を考えた上で冷却温度をハロゲンサイクルの上限に設定したほうが少ない電力で冷却可能となるからである。冷却管149aはハロゲンサイクル並びにモリブデンの酸化防止のための共通温度であり、また冷却管149bにより発光部136はハロゲンサイクル温度内に維持される。また、冷却管149a及び149bによりランプ130にはランプ130の中間部134の長さのため温度勾配が生じ、かかる温度勾配(250乃至950℃)はランプ130全体をハロゲンサイクル温度内に維持する。即ち、発光部136と封止部143cが近いと発光部136の温度(800乃至950℃)が封止部143cの温度(250乃至350℃)に影響する恐れがあるが、本実施例ではランプ130に中間部134を設けることでそれを防止している。
【0074】
本実施例では、ランプ130は失透及び黒化の発生を抑えることができる。また、電極133のモリブデンの酸化により電極部132及び封止部143cが破損することを防止する。更に、ランプ130はハロゲンサイクルの範囲内にあるように冷却される。従来のランプ130の冷却機構は単に封止部143cを冷却するだけであって、上述のようにハロゲンサイクルを考慮したランプ130の冷却は行われていなかった。従って、かかる冷却管148はランプ130の寿命を長くするといった長所を有し、経済的に優れている。なお、溝143とランプ130との接触面積は上述したように従来より大きく、冷却効率を十分に得ることが可能である。
【0075】
なお、例示的に、ランプ130の発光部136に相当する部分の隔壁148を設けずに、かかる部分を空間とし発光部136を空冷にするとした冷却方法も考えられる。なお、封止部143cは上述する冷却管149aにより冷却するものとする。発光部136は800乃至900℃と冷却温度が比較的高いため、かかる部分は空冷であっても冷却可能であり、上述した構成と同様な作用及び効果を得ることができる。当該周知の空冷機構、例えばブロアによって強制的に発光部136を冷却するような方法を使用しても良い。更に、例示的に、隔壁148に封止部143c及び発光部136を冷却可能な共通の冷却管を設けた冷却方法も考えられる。かかる構成においては、冷却管はモリブデンの酸化防止、並びにハロゲンサイクル範囲に共通である温度、例えば250乃至350℃になるように冷却される。このような構成であっても、上述した冷却管149と同様な効果を得ることができる。
【0076】
次に、放射温度計200を説明する。放射温度計200は被処理体Wに関してランプ130と反対側に設けられている。本発明は放射温度計200がランプ130と同一の側に設けられる構造を排除するものではないが、ランプ130の光が放射温度計200に入射することを防止することが好ましい。
【0077】
放射温度計200は処理室110の底部114に取り付けられている。底部114の処理室110内部を向く面は金メッキなどが施されて反射板(高反射率面)として機能する。これは、かかる面を黒色などの低反射率面とすると被処理体Wの熱を吸収してランプ130の照射出力を不経済にも上げなければならなくなるためである。底部114は円筒形状の貫通孔を有する。放射温度計200は当該周知のいかなる技術も適用可能であり、本明細書での詳細な説明は省略する。放射温度計200は制御部300に接続され、かかる制御部300は被処理体Wの温度Tを算出する。なお、この演算は放射温度計200内の図示しない演算部が行ってもよい。いずれにしろ制御部300は被処理体Wの温度Tを得ることができる。
【0078】
制御部300は内部にCPU及びメモリを備え、被処理体Wの温度Tを認識してランプドライバ310を制御することによってランプ130の出力をフィードバック制御する。本実施例において、制御部300はランプ130の電力が一度投入されたら、ランプドライバ310を制御しランプ130の温度をハロゲンサイクル範囲内に維持し続ける。即ち、熱処理装置100を含む図示しないクラスターツールのメイン電源がオンとなり、その後、熱処理に伴いランプドライバ310が駆動された時点から熱処理装置100を含むクラスターツールのメイン電源がオフとなるまでランプドライバ310には電力が投入され続ける。このとき、同時にランプドライバ310を介しランプ130にも電力が投入され続ける。なお、上述したように、ランプ130はハロゲンサイクルの範囲内で制御される。従って、ランプ130は加熱時には約900℃まで上昇し、冷却時であっても250℃を維持される。かかる温度範囲内で、被処理体Wの熱処理を行う。なお、かかるランプ130の温度制御は冷却管149bに接続された温度制御機構の温度センサ又は温度計を使用し、かかる温度によって投入電力を変化させるフィードバック制御でもよい。また、ランプ130の温度と投入電力の関数を予め実験より算出し、かかる関数を使用しランプ130の温度を予想して電力を投入しても良い。
【0079】
従来の熱処理装置100は、熱処理動作以外ではランプドライバ310及びランプ130には電源は投入されておらず、加熱時に再びランプドライバ310を駆動しランプ130に所望の電力を供給するように制御されていた。しかし、ランプ130のフィラメント137は室温において抵抗が非常に小さく、電圧印加の瞬間は回路短絡に近い状態となる。かかる状態においては、外部回路抵抗がある場合であっても定格電流値の7乃至10倍、外部回路抵抗がない場合においては13乃至17倍の電流が流れるラッシュ電流現象が発生する。被処理体Wの温度の昇降に応じてランプ130の点消灯を急激に行う熱処理装置において、その都度ラッシュ電流現象を派生させることは、ランプ及びランプドライバ310の劣化の原因となっていた。
【0080】
本実施例では、ランプ130に電源が投入されるのは熱処理装置100を含むクラスターツールの起動に伴う必要最低限のものであり、被処理体Wの温度の昇降に対応して電源をオン/オフするものではない。即ち、本実施例は上述した課題を解決しており、ランプ130及びランプドライバ310の長寿命化を達成可能とする。また、ランプ130はハロゲンサイクルの範囲内で制御されている為、かかる理由からもランプ130の長寿命化に効果的である。
【0081】
なお、ランプ130の冷却用に冷却管149が配置されているが、ランプドライバ310と合せて制御することで、ランプ130をハロゲンサイクルの範囲で維持することを更に容易にする。また、本実施例は、冷却管149を使用しランプ130の温度を制御する方法、又は、ランプドライバ310でランプ130の温度を制御する方法のどちらか一方のみを使用する冷却方法を排除するものではない。
【0082】
また、制御部300は、後述するように、モータドライバ320に所定のタイミングで駆動信号を送って被処理体Wの回転速度を制御する。更に、制御部300は、温度制御機構と共同しランプ130の温度を認識してヒータを制御することによってランプ130の温度をフィードバック制御する。
【0083】
ガス導入部180は、例えば、図示しないガス源、流量調節バルブ、マスフローコントローラ、ガス供給ノズル及びこれらを接続するガス供給路を含み、熱処理に使用されるガスを処理室110に導入する。なお、本実施例ではガス導入部180は処理室110の側壁112に設けられて処理室110の側部から導入されているが、その位置は限定されず、例えば、シャワーヘッドとして構成されて処理室110の上部から処理ガスを導入してもよい。
【0084】
アニールであればガス源はN2、Arなど、酸化処理であればO2、H2、H2O、NO2、窒化処理であればN2、NH3など、成膜処理であればNH3、SiH2Cl2やSiH4などを使用するが、処理ガスはこれらに限定されないことはいうまでもない。マスフローコントローラはガスの流量を制御し、例えば、ブリッジ回路、増幅回路、コンパレータ制御回路、流量調節バルブ等を有し、ガスの流れに伴う上流から下流への熱移動を検出することによって流量測定して流量調節バルブを制御する。ガス供給路は、例えば、シームレスパイプを使用したり、接続部に食い込み継ぎ手やメタルガスケット継ぎ手を使用したりして供給ガスへの配管からの不純物の混入が防止している。また、配管内部の汚れや腐食に起因するダストパーティクルを防止するために配管は耐食性材料から構成されるか、配管内部がPTFE(テフロン)、PFA、ポリイミド、PBIその他の絶縁材料により絶縁加工されたり、電解研磨処理がなされたり、更には、ダストパーティクル捕捉フィルタを備えたりしている。
【0085】
排気部190は、本実施例ではガス導入部180と略水平に設けられているが、その位置及び数は限定されない。排気部190には所望の排気ポンプ(ターボ分子ポンプ、スパッターイオンポンプ、ゲッターポンプ、ソープションポンプ、クライオポンプなど)が圧力調整バルブと共に接続される。なお、本実施例では処理室110は減圧環境に維持されるが、本発明は減圧環境を必ずしも必須の構成要素とするものではなく、例えば、133Pa乃至大気圧の範囲で適用可能である。
【0086】
以下、被処理体Wの回転機構について図1を参照して説明する。集積回路の各素子の電気的特性や製品の歩留まり等を高く維持するためには被処理体Wの表面全体に亘ってより均一に熱処理が行われることが要求される。被処理体W上の温度分布が不均一であれば、例えば、成膜処理における膜厚が不均一になったり、熱応力によりシリコン結晶中に滑りを発生したりするなど、RTP装置100は高品質の熱処理を提供することができない。被処理体W上の不均一な温度分布はランプ130の不均一な照度分布に起因する場合もあるし、ガス導入部180付近において導入される処理ガスが被処理体Wの表面から熱を奪うことに起因する場合もある。回転機構はウェハを回転させて被処理体Wがランプ130により均一に加熱されることを可能にする。
【0087】
被処理体Wの回転機構は、サポートリング150と、リング状の永久磁石170と、リング状のSUSなどの磁性体172と、モータドライバ320と、モータ330とを有する。
【0088】
サポートリング150は、耐熱性に優れたセラミックス、例えば、SiCなどから構成された円形リング形状を有する。サポートリング150は被処理体Wの載置台として機能し、中空円部において断面L字状に周方向に沿ってリング状の切り欠きを有する。かかる切り欠き半径は被処理体Wの半径よりも小さく設計されているのでサポートリング150は切り欠きにおいて被処理体W(の裏面周縁部)を保持することができる。必要があれば、サポートリング150は被処理体Wを固定する静電チャックやクランプ機構などを有してもよい。サポートリング150は、被処理体Wの端部からの放熱による均熱の悪化を防止する。
【0089】
サポートリング150は、その端部において支持部152に接続されている。必要があれば、サポートリング150と支持部152との間には石英ガラスなどの断熱部材が挿入されて、後述する磁性体172などを熱的に保護する。本実施例の支持部152は中空円筒形状の不透明な石英リング部材として構成されている。ベアリング160は支持部152及び処理室110の内壁112に固定されており、処理室110内の減圧環境を維持したまま支持部152の回転を可能にする。支持部152の先端には磁性体172が設けられている。
【0090】
同心円的に配置されたリング状の永久磁石170と磁性体172は磁気結合されており、永久磁石170はモータ330により回転駆動される。モータ330はモータドライバ320により駆動され、モータドライバ320は制御部300によって制御される。
【0091】
この結果、永久磁石170が回転すると磁気結合された磁性体172が支持部152と共に回転し、サポートリング150と被処理体Wが回転する。回転速度は、本実施例では例示的に90RPMであるが、実際には、被処理体Wに均一な温度分布をもたらすように、かつ、処理室110内でのガスの乱流や被処理体W周辺の風切り効果をもたらさないように、被処理体Wの材質や大きさ、処理ガスの種類や温度などに応じて決定されることになるであろう。磁石170と磁性体172は磁気結合されていれば逆でもよいし両方とも磁石でもよい。
【0092】
次に、RTP装置100の動作について説明する。動作に伴い熱処理装置100を含むクラスターツールの電源がオンされる。クラスターツールなどの搬送アームが被処理体Wを図示しないゲートバルブを介して処理室110に搬入する。被処理体Wを支持した搬送アームがサポートリング150の上部に到着すると、図示しないリフタピン昇降系がサポートリング150から(例えば、3本の)図示しないリフタピンを突出させて被処理体Wを支持する。この結果、被処理体Wの支持は、搬送アームからリフタピンに移行するので、搬送アームはゲートバルブより帰還させる。その後、ゲートバルブは閉口される。搬送アームはその後図示しないホームポジションに移動してもよい。
【0093】
一方、リフタピン昇降系は、その後、図示しないリフタピンをサポートリング150の中に戻し、これによって被処理体Wをサポートリング150の所定の位置に配置する。リフタピン昇降系は図示しないベローズを使用することができ、これにより昇降動作中に処理室110の減圧環境を維持すると共に処理室102内の雰囲気が外部に流出するのを防止する。
【0094】
その後、熱処理装置100は加熱処理を行う。図24を参照するに、制御部300は、第1に、ランプドライバ310を駆動し、ランプ130に電力を供給する(ステップ1000乃至1005)。ここで、図24は、本発明のランプ130の駆動を示した制御フローチャートである。これに応答して、制御部300は、更にランプドライバ310を介しランプ130の電力供給量を上げる(ステップ1010)。次に、制御部300は、ランプ130の温度(例えば、発光部136の温度)がハロゲンサイクルの上限値である900℃になったら、制御部300はランプドライバ310を介しランプ130の電力の供給量をかかる値で維持する(ステップ1015及び1025)。そして、制御部300は被処理体Wを、所定の温度(例えば、約800℃)になるまで加熱する(ステップ1030)。なお、ランプ130が900℃になる前に、被処理体Wの温度が所定の温度に達した場合(ステップ1020)は、その時点で後述する所定の熱処理を行う(ステップ1032)。
【0095】
ランプ130から放射された熱線はウインドウ120を介して処理空間にある被処理体Wの上面に照射されて被処理体Wを、例えば、800℃へ高速昇温する。一般に被処理体Wの周辺部はその中心側と比較して放熱量が多くなる傾向があるが、本実施例のランプ130は同心円状に配置したランプ130a及びランプ130bにより高い指向性と温度制御能力を提供する。
【0096】
更に、制御部300は温度制御機構を制御し、ランプ130を冷却する。制御部300は図示しない温度計の情報によりフィードバック制御を行い、封止部143cが250乃至350℃、例えば300℃になるように冷却管149aの温度を制御する。より詳細には、図25を参照し、制御部300は封止部143cの温度を測定し、350℃以下であるか確認する(ステップ1500乃至1505)。ここで、図25は、本発明のランプ130の冷却を示した制御フローチャートである。封止部143cの温度が350℃以上であるなら冷却管149aを使用し、封止部143cの冷却を開始する(ステップ1510)。制御部300は再び、封止部143cの温度を測定し、封止部143cの温度が250℃以下であるか確認する(ステップ1515乃至1520)。封止部143cの温度が250℃以下であるなら冷却を停止し(ステップ1525)、そうでなければ250℃になるまで冷却は続けられる。上述した工程を繰り返すことで、封止部143cは250乃至350℃の範囲に維持される。
【0097】
更に、発熱部136も同様にフィードバック制御を行い(ステップ1530乃至1555)、発熱部136が800乃至900℃、例えば850℃になるように冷却管149bの温度を制御する。かかる制御は、ランプ130の電極部132の電極133を構成するモリブデンの酸化を防止する。また、ランプ130の発光部136をハロゲンサイクル内で制御する。この結果、ランプ130は破損の原因となりうる要素が減少され、ランプ130の長寿命化を達成できる。
【0098】
同時に、制御部300はモータドライバ320を制御し、モータ330を駆動するように命令する。これに応答して、モータドライバ320はモータ330を駆動し、モータ330はリング状磁石170を回転させる。この結果、支持部152(又は152A)が回転し、被処理体Wがサポートリング150と共に回転する。被処理体Wが回転するのでその面内の温度は熱処理期間中に均一に維持される。
【0099】
加熱中は、ウインドウ120はプレート121の厚さが比較的薄く、かつ熱伝導率が高いので幾つかの長所を有する。これらの長所は、(1)ランプ130からの光を均一に透過するので、被処理体Wに熱斑が発生しにくい、(2)ランプ130からの光をあまり吸収しないので被処理体Wへの照射効率を低下しない、(3)プレート121の表裏面で温度差が小さいので熱応力破壊が発生しにくい、(4)成膜処理の場合でもプレート121の温度上昇が少ないためにその表面に堆積膜や反応副生成物が付着しにくい、(5)透光性セラミックスは曲げ強度が強くウインドウ120の強度を高めているのでプレート120が薄くても処理室110内の減圧環境と大気圧との差圧を維持することができる、を含む。
【0100】
被処理体Wの温度は放射温度計200により測定されて、制御部300はその測定結果に基づいてランプドライバ310をフィードバック制御する。被処理体Wは回転しているためにその表面の温度分布は均一であることが期待されるが、必要があれば、放射温度計200は、被処理体Wの温度を複数箇所(例えば、その中央と端部)測定することができ、放射温度計200が被処理体W上の温度分布が不均一であると測定すれば、制御部300は被処理体W上の特定の領域のランプ130の出力を変更するようにランプドライバ310に命令することもできる。
【0101】
次いで、図示しないガス導入部から流量制御された処理ガスが処理室110に導入される。所定の熱処理(例えば、10秒間)が終了すると(ステップ1032)、制御部300はランプドライバ310を介しランプ130の電力供給量を下げる(ステップ1035)。これに応答して、ランプドライバ310はランプ130が250℃になったかをチェックする(ステップ1040)。もし、ランプ130の温度が250℃になったら、制御部300は電力の供給量をかかる値で維持する(ステップ1045)。そうでないならば、電力の供給量を更に下げ、ランプ130の温度を250℃まで下げる。
【0102】
熱処理後に被処理体Wは上述したのと逆の手順によりゲートバルブから処理室110の外へクラスターツールの搬送アームにより導出される。次いで、必要があれば、搬送アームは被処理体Wを次段の装置(成膜装置など)に搬送する。更に、制御部300は次の熱処理命令を受けた場合は上述の工程を繰り返し、熱処理を行う。このとき、ランプ130の制御はステップ1010より繰り返される(ステップ1050)。熱処理命令がなければランプ130への電力供給は停止され、ランプドライバ310の駆動も停止される(ステップ1055乃至1060)。
【0103】
上述した一連の熱処理方法は、ランプ130及びランプドラバ310に電源が投入されるのは熱処理動作開始の1回のみの必要最低限のものであり、被処理体Wの温度の昇降に対応して電源をオン/オフするものではない。即ち、かかる熱処理方法はラッシュ電流減少を少なくとも一回に抑え、ランプ130及びランプドライバ310の長寿命化を達成可能とする。また、ランプ130はハロゲンサイクルの範囲内で制御されている為、かかる理由からもランプ130の長寿命化に効果的である。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はその要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0105】
【発明の効果】
本発明の例示的一態様である熱処理装置によれば、熱処理装置のウインドウは透光性セラミックスより形成されプレートの強度を高めて薄型化を促進するのでプレートが熱源からの放射光を吸収する量が少なくなる。この結果、被処理体への照射効率の向上やプレートの熱破壊の防止などを達成することができる。また、プレートは熱伝導率が高くウインドウに温度差を発生させないので、ランプの放射光を均一な強さで透過し被処理体を均一に照射する。この結果、高品質で歩留まりのよい処理を被処理体に施すことができる。
【0106】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の例示的一態様としての熱処理装置の概略断面図である。
【図2】 図1に示すウインドウの変形例であるウインドウの底面図である。
【図3】 図2に示すウインドウのA−A断面の一部拡大断面図である。
【図4】 図1に示すウインドウの変形例であるウインドウの一部拡大断面図である。
【図5】 図1に示す加熱部の概略底面図である。
【図6】 図5に示す加熱部の一部を示す拡大断面図である。
【図7】 図5に示すランプ加熱部よりランプをはずしたときの図6に対応する図である。
【図8】 図6に示すランプの概略断面図である。
【図9】 図6に示すランプの概略断面である。
【図10】 図6に示すランプの概略底面図である。
【図11】 図6に示すランプのフィラメントより放出される輻射光の光路を示した概略側面図である。
【図12】 図6に示すランプのフィラメントより放出される輻射光の光路を示した別の概略側面図である。
【図13】 図6に示すランプの変形例であるランプの概略底面図である。
【図14】 図13に示すランプの有するフィラメントの変形例であるフィラメントを示す概略平面図である。
【図15】 図13に示すランプの有するフィラメントの変形例であるフィラメントを示す概略平面図である。
【図16】 図13に示すランプを示すランプの有するフィラメントの変形例であるフィラメントを示す概略平面図である。
【図17】 図16に示すフィラメントを示す概略側面図である。
【図18】 図6に示すランプ保持部のランプが熱膨張をしていないときの拡大断面図である。
【図19】 図5に示す加熱部のランプ保持部のより詳細な構造を示す概略断面図である。
【図20】 図5に示す加熱部のランプ保持部のより詳細な構造を示す概略底面図である。
【図21】 図1に示す加熱部のランプより被処理体Wに照射されるランプ光を示した図である。
【図22】 図1に示す加熱部のランプより被処理体Wに照射されるランプ光を示した図である。
【図23】 図6に示すランプの配置の変形例を示した概略断面図である。
【図24】 本発明のランプの駆動を示した制御フローチャートである。
【図25】 本発明のランプの冷却を示した制御フローチャートである。
【図26】 従来のランプ形状を示す概略断面図である。
【符号の説明】
100 熱処理装置
110 処理室
120 ウインドウ
121 プレート
124 補強材
125 冷却管
130 ランプ
131 ねじ山
132 電極部
134 中間部
136 発光部
140 加熱部
142 ランプ保持部
143 溝
147 ねじ山
150 サポートリング
160 ベアリング
170 永久磁石
180 ガス導入部
190 排気部
200 放射温度計
300 制御部
310 ランプドライバ
Claims (4)
- 被処理体に熱処理を行う処理室と、
前記処理室に気密的に取り付けられて当該処理室を画定すると共に当該処理室の外部より前記被処理体に光を照射可能なウインドウとを有する熱処理装置であって、
前記ウインドウは透光性セラミックスより形成され、
前記ウインドウは、第1の溝が形成された第1のプレートと、第2の溝が形成された第2のプレートとを、張り合わせて構成され、前記第1の溝と前記第2の溝とが合わさって形成された前記ウインドウの内部の空間と適合する冷却管が該空間内に配置されている熱処理装置。 - 前記透光性セラミックスは、AlN、Al2O3、Sc2O3、MgO、Ca5(PO4)3OH、Si3N4、PLZT−8/65/35、Y2O3、ZrO2、ThO2−5mol%Y2O3、Y2O3−10mol%ThO2からなるグループから選択される請求項1記載の熱処理装置。
- 前記処理室に接続されて当該処理室内を減圧状態に維持することができる排気装置を更に有する請求項1記載の熱処理装置。
- 前記ウインドウの厚さは10mm以下である請求項1記載の熱処理装置。
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