JP4942711B2 - プラズマディスプレイパネルのバス電極を作製する方法と材料 - Google Patents
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Description
このうち前面パネルは、パネル本体であるガラス(例えばソーダガラス)基板上に、硼珪酸ガラス等の低融点ガラスからなる誘電体層と、マグネシア等からなる保護層と、これら誘電体層及び保護層に覆われる複数対の表示電極とを備える。かかる表示電極は、典型的にはITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極と、該透明電極の導電性を補うために該透明電極上に設けられた膜状のバス電極とから構成されている。典型的には、バス電極は銀(Ag)または銀を含む合金(Ag合金)によって構成されている。
この種の二層構造のバス電極が記載されている先行技術文献として、例えば特許文献1が挙げられる。また、プラズマディスプレイパネルの電極形成用材料(導電ペースト)に関する先行技術として例えば特許文献2〜5がある。
かかる黄変現象が過度に生じると、白色表示時に色温度が低下するといったようなPDPにおける画質の劣化を招く虞がある。また、黄変現象が過度に生じると、PDP自体が黄色っぽく見えることによりPDPの質感が低下する虞がある。
他方、本発明のバス電極作製方法では、当該方法にて用いられる上層形成用材料は、粉末状ガラスを含まないか、含んだとしても銀系金属粉末に対して1質量%未満(好ましくは0.8質量%以下)しか含まない。このため、本発明のバス電極作製方法によって作製されたバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルによると、ガラス基板等に生じる黄変を大幅に抑制することができる。
ここで、かかる上層形成用材料を用いると、上記黄変現象が抑制される反面、該材料からなる上層に含有されるガラス成分が低減するために、従来の下層形成用材料を用いて下層を積層すると、焼成後のバス電極(焼成膜)における上層と下層との密着性が低下する虞がある。
しかし、本発明のバス電極作製方法によると、当該方法にて用いられる下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、上記無機顔料に対して少なくとも2倍の質量割合(好ましくは2.5倍以上、より好ましくは2.5倍〜3.5倍程度)で含まれている。このことにより、焼成時に上記上層および/または下層(典型的には下層)に発生し得る欠陥(例えば発泡等)を抑制しつつ、上記二層同士の密着強度さらには透明電極との密着強度が高いバス電極を作製することができる。したがって、黄変抑制効果と密着強度(密着性)が高い次元で実現された好適なバス電極を作製することができる。したがって、本発明は、他の側面として、そのようなバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
かかる構成のバス電極作製方法によると、少なくとも上記下層形成用材料中のガラスの軟化点が上記範囲内にあれば、上層および/または下層に発生し得る欠陥を抑制する効果と上下層同士の密着強度のいずれもがより一層高い次元で両立され得る二層構造バス電極を作製することができる。なお、典型的には、上記上層形成用材料に含まれるガラスには上記下層形成用材料中のガラスと同じものが採用され得る。
かかる構成のバス電極作製方法によると、上記各構成成分を含むことにより、上記ガラスの軟化点を容易にバス電極作製に好適な温度域(すなわち500〜650℃)にすることができる。
(1)前記銀系金属粉末 5〜20質量%;
(2)前記無機顔料 5〜15質量%;
(3)前記粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
(4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(5)有機溶媒 20〜70質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製される。好ましくは、上記材料(1)〜(5)の総量は、ペースト状下層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
(6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
(7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
(8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(9)有機溶媒 15〜35質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製される。好ましくは、上記材料(6)〜(9)の総量は、ペースト状上層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
上記範囲の配合比で調製されたペースト状材料(組成物)を用いてバス電極の下層および上層を形成することにより、高い黄変抑制効果と、二層間および透明電極との密着性に優れた好ましいバス電極を形成することができる。
かかる構成のバス電極作製方法では、特に下層に含まれるガラス成分の軟化点を含むかそれ以上の最高焼成温度でバス電極膜を焼成することにより、高い黄変抑制効果と二層間および透明電極との高い密着性を備えた好ましいバス電極を形成することができる。
当該セットは、以下の二つの材料:
(A)プラズマディスプレイパネルの透明電極に前記二層構造のバス電極のうちの下層を形成するために用いられる下層形成用材料であって、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末と、無機顔料とを含み、且つ、該無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で粉末状ガラスを含むことを特徴とする下層形成用材料;および、
(B)前記下層の上に前記二層構造のバス電極のうちの上層を形成するために用いられる上層形成用材料であって、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末を含み、且つ、該金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくは粉末状ガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料;を備える。
かかる構成の材料セットを用いることにより、ここで開示されるバス電極作製方法を容易に実施することができる。したがって、透明電極や基板等の黄変現象を抑制しつつ、下層と上層の二層間の密着強度(さらには下層と透明電極との密着強度)を高い次元で両立し得る好ましいバス電極を作製することができる。
かかる構成のセットを用いることにより、少なくとも上記ガラスが上記範囲の軟化点を有するため、上下各層(典型的には下層)に発生し得る発泡等の欠陥が抑制されつつ、二層間および透明電極との高い密着強度を有する好適な二層構造バス電極を作製することができる。
かかる構成のセットを用いることにより、少なくとも上記下層形成用材料に含まれるガラスの軟化点をバス電極の作製に好適な温度域内に容易にすることができ、上下二層間および透明電極との密着性に優れた好適な二層構造のバス電極を作製することができる。
(1)前記銀系金属粉末 5〜20質量%;
(2)前記無機顔料 5〜15質量%;
(3)前記粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
(4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(5)有機溶媒 20〜70質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製されている。好ましくは、上記材料(1)〜(5)の総量は、ペースト状下層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
また、ここで開示されるバス電極形成用材料セットの他の一態様では、前記上層形成用材料は、以下に示す材料(6)〜(9)を含み、該材料(6)〜(9)の総量を100質量%として、以下の配合比:
(6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
(7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
(8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(9)有機溶媒 15〜35質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製されている。好ましくは、上記材料(6)〜(9)の総量は、ペースト状上層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
かかる構成のセットを用いてバス電極の下層および上層を形成することにより、高い黄変抑制効果と、二層間および透明電極との密着性に優れた好ましいバス電極を形成することができる。
かかるバス電極作製方法は、上記上層および下層を形成する材料の組み合わせ(セット)として、(A)銀系金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくはガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料と、(B)無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で粉末状ガラスを含むことを特徴とする下層形成用材料とを使用することにより特徴づけられる。また、上記上層形成用材料は、典型的には、有機バインダおよび有機溶媒とともに混合されてペースト状に調製されたペースト状材料(組成物)として使用される。上記下層形成用材料も同様に、典型的にはペースト状組成物として使用される。
かかるバス電極作製方法に用いられるバス電極形成用材料は、黄変現象の抑制を実現し得る程度にガラスの含有量が低減された上層形成用材料と、該上層形成用材料からなる上層と強く密着し得る下層を形成するためにガラスの含有量が増加した下層形成用材料との組み合わせによって特徴づけられる材料である。
このため、かかるバス電極形成用材料における粉末状ガラス以外の含有成分(例えば、銀系の金属粉末や無機材料、あるいは感光性化合物等の有機成分)は特に限定されず、適宜種々の成分を配合したり、その組成を変更することができる。
なお、上記以外にも下層形成用ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。これらの添加剤は、従来の導電ペーストの調製に用いられ得るものであればよく、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
ここで開示される下層形成用ペーストに含まれる上記主要な成分、すなわち(1)Ag系金属粉末、(2)無機顔料、(3)粉末状ガラス、(4)有機バインダ、および(5)有機溶媒の各材料(1)〜(5)は、好ましくは以下のような配合比(含有率)で混合され得る。
AgまたはAg主体の合金からなるAg系金属粉末(材料(1))の含有量は、良好な導電性を下層に付与しつつ黄変現象が抑制され得る程度であることが好ましい。このようなAg系金属粉末の含有率としては、上記下層形成用ペーストに含まれる上記材料(1)〜(5)の総量を100質量%として、5〜20質量%程度が適当である。好ましくは10〜16質量%程度である。
また、無機顔料(材料(2))の含有率は、5〜15質量%程度が適当であり、好ましくは9〜11質量%である。
また、有機バインダ(材料(4))の含有率は、0.5〜5質量%程度が適当であり、好ましくは、1〜3質量%である。
また、有機溶媒(材料(5))の含有率は、20〜70質量%程度が適当である。好ましくは35〜55質量%程度である。
ここで、上記材料(1)〜(5)の総量は、下層形成用ペースト全体の90質量%以上を占めることが好ましく、より好ましくは93%質量以上である。
上記のような粉末状ガラスの含有率は、従来の導電ペーストにおけるガラスの含有率に比べて大まかにいって2〜3割程度大きい。このように上記粉末状ガラスを多く含有させた下層形成用ペーストを用いることにより、ガラス成分をごく微量しか含まない後述の上層とでも強く密着できる(すなわち密着強度が高い)下層を形成することができる。なお、上記粉末状ガラスの含有率が上記範囲の上限(下層形成用ペースト全体に対して40質量%)を超えると、導電性が下がる(電気抵抗が高くなる)虞がある。
かかる粉末状ガラスは、上記下層形成用材料に含まれるものと同じものでよく、軟化点が650℃以下(好ましくは500〜650℃、より好ましくは500〜600℃、特に好ましくは500〜550℃)のガラスが適当である。例えば、Bi2O3−SiO2−B2O3系ガラス、ZnO−SiO2−B2O3系ガラス、PbO−SiO2−B2O3系ガラス、PbO−SiO2−B2O3−Al2O3系ガラス、PbO−SiO2−B2O3−ZnO系ガラス、PbO−SiO2−B2O3−Al2O3−ZnO系ガラス等の硼珪酸系ガラスが挙げられる。かかる粉末状ガラスの平均粒径や比表面積についても上記下層形成用材料中の粉末状ガラスと同程度でよい。
ここで開示される上層形成用ペーストに含まれる上記各成分、すなわち(6)Ag系金属粉末、(7)粉末状ガラス、(8)有機バインダ、および(9)有機溶媒の各材料(6)〜(9)は、好ましくは以下のような配合比(含有率)で混合され得る。
AgまたはAg主体の合金からなるAg系金属粉末(材料(6))の含有量は、良好な導電性を上層に付与し得る程度であることが好ましい。このようなAg系金属粉末の含有率としては、上記下層形成用ペーストに含まれる上記成分(6)〜(9)の総量を100質量%として、60〜80質量%程度が適当である。好ましくは65〜75質量%程度である。
また、有機バインダ(材料(8))の含有率は、0.5〜5質量%程度が適当であり、好ましくは、1〜3質量%である。
また、有機溶媒(材料(9))の含有率は、15〜35質量%程度が適当である。好ましくは20〜30質量%程度である。
ここで、上記材料(6)〜(9)の総量は、好ましくは上層形成用ペースト全体の90質量%以上を占めることが好ましく、より好ましくは93質量%以上である。
ここで開示される上記バス電極の作製方法は、上記下層形成用ペーストと上層形成用ペーストを用意する(典型的には、バス電極材料形成用材料セットの下層形成用材料から下層形成用ペーストを調製し、また、該セットの上層形成用材料から上層形成用ペーストを調製する)工程と、下層形成用ペーストを、透明電極の表面に付与(塗布)して所定厚の下層被膜を形成する工程と、当該下層被膜上に上記上層形成用ペーストを重ねて付与(塗布)して所定厚の上層被膜を形成する工程と、上記下層被膜と上層被膜とからなる二層構造被膜を焼成する工程を包含する。なお、かかる製造方法は、本発明に係るバス電極形成用材料(下層形成用材料および上層形成用材料)を用いてバス電極を形成することにより特徴づけられる方法であり、当該材料を用いる方法やバス電極の作製方法自体については、従来のバス電極形成用ペーストを用いる場合と同様でもよい。
以上の一連の工程を行うことによって、後述する図3に示されるような下層15Aと上層15Bの二層構造からなるバス電極15を透明電極14の表面上に形成することができる。
なお、バス電極15の下層15Aおよび上層15Bを形成する材料以外のPDP構成材料ならびにPDPの構築方法自体は従来と全く同様であるため詳細な説明は省略する。
図1および図2に示されるように、前面パネル10は、例えばソーダガラス等から構成される高い透明性の前面ガラス基板12(例えば厚み1.8mm程度)を備える。前面ガラス基板12における背面パネル20と対向する側の面には、PDP1の表示電極を構成する透明電極(ITO電極)14と該透明電極14上に形成された本発明に係るバス電極15が形成されている。透明電極14およびバス電極15を覆うようにして低融点ガラスからなる誘電体層16が形成され、該誘電体層16の表面にはマグネシアからなる保護層18が形成されている。
図3に示されるように、本実施形態に係るバス電極15は、透明電極14に接する下層15Aとその上面に積層された上層15Bとから構成されている。下層15Aはここで開示される下層形成用材料(下層形成用ペースト)からなり、上層15Bはここで開示される上層形成用材料(上層形成用ペースト)からなる。
また、酸化物層24の上面には、アドレス電極26を覆うようにして低融点ガラスからなる誘電体層28が形成されている。この誘電体層28の表面上には隔壁30が所定の間隔で形成されている。これにより、背面パネル20と前面パネル10との間に、隔壁30で仕切られた多数のセル40が形成されている。各セル40の内壁面には蛍光体層32が設けられている。蛍光体層32として、従来公知の赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等がそれぞれのセル40に所定の順序で配置されている。各セル40内には放電ガスが充填されている。放電ガスとしては従来公知のガスを使用すればよい。例えば、キセノンガス(Xe)、ネオンガス(Ne)、ヘリウム−キセノン(He−Xe)混合ガス、ネオン−キセノン(Ne−Xe)混合ガス等を用いることができる。
なお、上記のガラス基板12,22、隔壁30、蛍光体層32、透明電極14、誘電体層16,28、保護層18および酸化物層24としては、上記の構成に限られず一般的なPDPに適用可能な従来公知の構成を特に制限なく適宜選択して用いることができる。また、PDPに適用可能なこれら以外の他の構成を備えていてもよい。
<感光性の下層形成用ペーストの調製>
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、感光性の下層形成用ペーストを調製した。すなわち、10質量%のAg粉末(平均粒径2.5μm、比表面積0.5m2/g〜1.5m2/g)、6質量%の黒色無機顔料(四三酸化コバルト、平均粒径1μm)、4質量%の青色無機顔料(アルミン酸コバルト、平均粒径1μm)、有機溶媒として40質量%のターピネオール(テルピネオールともいう)、有機バインダとして5質量%のセルロース系高分子(セルロース樹脂)、30質量%のガラスフリット(B2O3、SiO2、Bi2O3の3成分を主成分とし、その他の副成分としてZnO、BaO、Al2O3を含む軟化点600℃のBi2O3−SiO2−B2O3系ガラス、平均粒径1μm)に加え、光重合性化合物として4質量%のトリメチロールプロパントリアクリレートを混練して下層形成用ペーストを調製した。
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、ガラス成分(ガラスフリット)の含有率の異なる組成の感光性の上層形成用ペースト5種類(サンプル1〜5)を調製した。
すなわち、有機溶媒(15.9質量%)と、セルロース樹脂およびアクリル樹脂からなる有機バインダ(5.7質量%)と、光重合性化合物のトリメチロールプロパントリアクリレート(7.5質量%)、および光重合開始剤の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(0.9質量%)の計30質量%に、上記下層形成用ペーストと同じ上記Ag粉末とガラスフリットを混練してサンプル1〜5を調製した。
ここで、上記有機溶媒、有機バインダおよび感光性材料(表1では、これらをまとめて「その他」として表記)の合計30質量%を除く、残りの70質量%を占めるAg粉末とガラスフリットの割合を変化させて、サンプル1〜5を調製した。サンプル1〜5の組成を表1に示す。なお、表中の「ガラス/全体」は、ペースト(サンプル)全体に対するガラスフリットの含有率[質量%]、「ガラス/Ag」は、ペースト(サンプル)中のAg粉末に対するガラスの含有率[質量%]をそれぞれ表わす。
また、上記サンプル1〜5を所定条件で上層被膜のみを形成し、焼成して得られた焼成膜の電気抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。表1に示されるように、上記サンプル1および2は、十分な導電性を有することが分かった。
上記得られた下層形成用ペーストと5種類の組成の異なる上層形成用ペースト(サンプル1〜5)を用いてバス電極と同様の試験用焼成膜(焼成された二層構造被膜)を形成し、各焼成膜を構成する下層形成用材料および上層形成用材料のガラスの含有率が与える黄変抑制効果を市販の色彩色差計によるb値(黄色度)の測定に基づいて評価した。なお、本実施例では市販の色彩色差計(コニカミノルタ社製品:CR−300)を取扱説明書通りに使用した。以下に具体的に説明する。
ここで、5種類のパターンとは、
(1)40μm幅のライン状の二層構造被膜を90μmの間隔で複数本形成したもの、
(2)50μm幅のライン状の二層構造被膜を80μmの間隔で複数本形成したもの、
(3)65μm幅のライン状の二層構造被膜を65μmの間隔で複数本形成したもの、
(4)80μm幅のライン状の二層構造被膜を50μmの間隔で複数本形成したもの、
(5)100μm幅のライン状の二層構造被膜を30μmの間隔で複数本形成したもの、
であり、二層構造被膜の幅(設計幅)および隣り合う二層構造被膜同士の間隔を変えた5種類のパターンである。
その後、最高焼成温度(590℃)で焼成した(最高焼成温度の継続時間:20分)。なお、上記5種類のパターンについて、焼成後の二層構造被膜(以下、「二層構造焼成膜」という。)の幅が設計幅から収縮していた。この焼成膜の幅を焼成幅とする。
残り上記4通りのパターン(2)〜(5)の二層構造焼成膜付きガラス基板のそれぞれについても同様にしてb値を測定した。その結果を上記焼成幅とともに表2に示す。
表2〜6および図4に示されるように、ガラスの含有率が上層形成用ペースト全体の0〜0.5質量%の場合(サンプル1および2)には、ガラスの含有率が上層形成用ペースト全体の1〜4質量%(サンプル3〜5)の場合と比べて、いずれの焼成幅においてもb値が低下していた。特に焼成幅30μm〜60μmの範囲でb値が顕著に低下しており、例えば焼成幅30μm前後では、サンプル1および2と、サンプル3〜5との間にはb値に4以上の差が認められた。以上より、ガラスの含有率が低い上層形成用ペーストを用いて得られる二層構造焼成膜は黄変抑制効果が高いことが確認された。なお、焼成幅が80μm以上になるとサンプルによらず同程度のb値に至るのは、色彩色差計による測定領域内に占める黒色部分(焼成膜部分)の面積が大きくなり過ぎ、b値を判定しにくくなるためと考えられる。
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、軟化点530℃の粉末状ガラス(ガラスフリット)の含有量が異なる感光性の下層形成用ペースト(サンプル6〜8)を調製した。すなわち、サンプル6では、15質量%のAg粉末(平均粒径2.5μm、比表面積0.5m2/g〜1.5m2/g)と、6質量%の黒色無機顔料(四三酸化コバルト、平均粒径1μm)、4質量%の青色無機顔料(アルミン酸コバルト、平均粒径1μm)、有機溶媒の38質量%のターピネオールと有機バインダの5質量%のセルロース樹脂、光重合性化合物の4質量%のトリメチロールプロパントリアクリレートと、27質量%のガラスフリット(Bi2O3、SiO2、B2O3の3成分を主成分とし、その他副成分としてZnOおよびBaOを含む軟化点530℃のBi2O3−SiO2−B2O3系ガラス、平均粒径1μm)とを混練してサンプル6を調製した。
サンプル8は、上記サンプル6において上記Ag粉末を25質量%、上記ガラスフリットを17質量%に変更する以外は、全て同じ材料および組成で調製した。
したがって、得られたサンプル6は、軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料(黒色無機顔料および青色無機顔料)に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル7は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル8は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含有している。
ここで、サンプル9〜11は、上記サンプル6〜8と比較して、含まれる粉末状ガラスの軟化点(組成)が異なる以外は同じである。すなわち、サンプル9は、軟化点600℃の粉末状ガラスを上記無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル10は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル11は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含有している。
ここで、サンプル12〜14は、上記サンプル6〜8と比較して、含まれるガラスフリットの軟化点(組成)が異なる以外は同じである。すなわち、サンプル12は、軟化点610℃の粉末状ガラスを上記無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル13は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル14は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含有している。
ここで、サンプル15〜17は、上記サンプル6〜8と比較して、含まれるガラスフリットの軟化点(組成)が異なる以外は同じである。すなわち、サンプル15は、軟化点630℃の粉末状ガラスを上記無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル16は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル17は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対しての2.5倍の質量割合で含有している。
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、サンプル6〜8に対応した上層形成用ペーストを調製した。すなわち、70質量%のAg粉末(サンプル6〜8と同じもの)と、15.9質量%の有機溶媒と、セルロース樹脂およびアクリル樹脂からなる5.7質量%の有機バインダと、光重合性化合物の7.5質量%のトリメチロールプロパントリアクリレートと、光重合開始剤の0.9質量%の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとを混練して調製した。
また、サンプル12〜14に対応した上層形成用ペーストを調製した。これは、含まれる粉末状ガラスが異なる以外は上記サンプル6〜8用の上層形成用ペーストと同じである。
さらに、サンプル15〜17に対応した上層形成用ペーストを調製した。これは、含まれる粉末状ガラスが異なる以外は上記サンプル6〜8用の上層形成用ペーストと同じである。
上述のサンプル1(上層形成用ペースト)および該サンプル1に対応する下層形成用ペーストを用いて得られた二層構造焼成膜と同様にして、上記サンプル6(下層形成用ペースト)、および該サンプル6に対応するサンプル6用上層形成用ペーストを用いてガラス基板上に50μmの間隔で80μm幅のライン状の二層構造被膜を形成し、その後焼成により二層構造焼成膜を形成した。上記サンプル7〜17についても、これと同様にしてそれぞれのサンプルを用いて得られる二層構造焼成膜を形成した。
ここで、サンプル6〜14を用いてなる二層構造焼成膜は全て、最高温度590℃の下で形成(焼成)した。
サンプル6(軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜には、断線ほどではないが、処々に欠けが生じた。
サンプル7(軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜には、欠けは認められず、損傷は殆どなかった。
サンプル8(軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜には、欠けは認められず、損傷は殆どなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図5に示す。
サンプル10(軟化点600℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、断線ほどではないが、一部欠けが生じた。
サンプル11(軟化点600℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、欠けはなく、損傷は認められなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図6に示す。
サンプル13(軟化点610℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる焼成膜は、断線ほどではないが、一部欠けが生じた。
サンプル14(軟化点610℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、欠けはなく、損傷は認められなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図7に示す。
サンプル16(軟化点630℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、断線が生じて損傷した。
サンプル17(軟化点630℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、欠けはなく、損傷は認められなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図8に示す。
10 前面パネル
12 前面ガラス基板
14 透明電極
15 バス電極
15A 下層
15B 上層
16 誘電体層
18 保護層(マグネシア層)
20 背面パネル
22 背面ガラス基板
24 酸化物層
26 アドレス電極
28 誘電体層
30 隔壁
32 蛍光体層
40 セル
Claims (10)
- プラズマディスプレイパネルに二層構造のバス電極を作製する方法であって:
前記プラズマディスプレイパネルの透明電極に、前記二層構造のバス電極のうちの下層を形成する材料を付与して下層被膜を形成する工程、ここで、前記下層を形成する材料として、(1)銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末と、(2)無機顔料と、(3)粉末状ガラスと、(4)有機バインダと、(5)有機溶媒とを含み、且つ、該粉末状ガラスは該無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で含まれており、前記(1)〜(5)の総量を100質量%として以下の配合比:
(1)銀系金属粉末 5〜20質量%;
(2)無機顔料 5〜15質量%;
(3)粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
(4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(5)有機溶媒 20〜70質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製されたことを特徴とする下層形成用材料が使用される;
前記形成した下層被膜の上に、前記二層構造のバス電極のうちの上層を形成する材料を付与して上層被膜を形成する工程、ここで、前記上層を形成する材料として、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末を含み、且つ、該金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくは粉末状ガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料が使用される;および、
前記下層被膜と上層被膜とからなる二層構造の被膜を焼成する工程;
を包含する、二層構造バス電極作製方法。 - 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、500〜650℃の軟化点を有する、請求項1に記載のバス電極作製方法。
- 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、主たる構成成分としてBi2O3、SiO2およびB2O3を含む、請求項1または2に記載のバス電極作製方法。
- 前記上層形成用材料は、以下に示す材料(6)〜(9)を含み、該材料(6)〜(9)の総量を100質量%として、以下の配合比:
(6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
(7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
(8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(9)有機溶媒 15〜35質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製される、請求項1〜3のいずれかに記載のバス電極作製方法。 - 前記二層構造の被膜は、最高焼成温度が500〜1000℃の温度域で焼成される、請求項1〜4のいずれかに記載のバス電極作製方法。
- プラズマディスプレイパネルに二層構造のバス電極を形成するために組み合わせて用いられる材料のセットであって、
以下の二つの材料:
(A)プラズマディスプレイパネルの透明電極に前記二層構造のバス電極のうちの下層を形成するために用いられるペースト状に調製された下層形成用材料であって、(1)銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末と、(2)無機顔料、(3)粉末状ガラスと、(4)有機バインダと、(5)有機溶媒とを含み、且つ、該粉末状ガラスは該無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で含まれており、前記(1)〜(5)の総量を100質量%として以下の配合比:
(1)銀系金属粉末 5〜20質量%;
(2)無機顔料 5〜15質量%;
(3)粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
(4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(5)有機溶媒 20〜70質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製されたことを特徴とする下層形成用材料;および、
(B)前記下層の上に前記二層構造のバス電極のうちの上層を形成するために用いられるペースト状に調製された上層形成用材料であって、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末を含み、且つ、該金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくは粉末状ガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料;
を備える、バス電極形成用材料セット。 - 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、500〜650℃の軟化点を有する、請求項6に記載のバス電極形成用材料セット。
- 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、主たる構成成分としてBi2O3、SiO2およびB2O3を含む、請求項6または7に記載のバス電極形成用材料セット。
- 前記上層形成用材料は、以下に示す材料(6)〜(9)を含み、該材料(6)〜(9)の総量を100質量%として、以下の配合比:
(6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
(7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
(8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(9)有機溶媒 15〜35質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製されている、請求項6〜8のいずれかに記載のバス電極形成用材料セット。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の作製方法により作製された二層構造バス電極、または請求項6〜9のいずれかに記載のバス電極形成用材料セットを用いて作製された二層構造バス電極を備えるプラズマディスプレイパネル。
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