JP4942711B2 - プラズマディスプレイパネルのバス電極を作製する方法と材料 - Google Patents

プラズマディスプレイパネルのバス電極を作製する方法と材料 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマディスプレイパネルのバス電極を作製する方法、および該バス電極を形成するために用いられる材料(典型的にはペースト状組成物)に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)は、前面パネルと背面パネルとの間に隔壁で仕切られた多数のセルが形成された構造を有し、該セルに封入された希ガスに電圧を印加することによりプラズマ放電が起こって紫外線が発生し、セル壁面に配置された蛍光体が発光して画像を表示し得るように構成されている。
このうち前面パネルは、パネル本体であるガラス(例えばソーダガラス)基板上に、硼珪酸ガラス等の低融点ガラスからなる誘電体層と、マグネシア等からなる保護層と、これら誘電体層及び保護層に覆われる複数対の表示電極とを備える。かかる表示電極は、典型的にはITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極と、該透明電極の導電性を補うために該透明電極上に設けられた膜状のバス電極とから構成されている。典型的には、バス電極は銀(Ag)または銀を含む合金(Ag合金)によって構成されている。
上記バス電極は、典型的には透明電極側に形成される下層と、その上に積層される上層とからなる二層構造を有する。かかるバス電極の下層は、典型的には導電性成分(材料)としてAg粉末を含むほか、四三酸化コバルト(Co)等の黒色顔料を含む下層形成用材料(典型的にはペースト状組成物)により形成されている。下層は黒色顔料により黒く見えるため「黒層」と呼ばれることもある。このような下層を備えた二層構造バス電極は、外光の反射を抑制して明度を低下させることによって画面のコントラストを向上させるため好ましく採用されている。他方、上記上層は、導電性材料としてAg粉末を含む上層形成用材料(典型的にはペースト状組成物)を用いて形成されている。上層は、上記黒層(下層)に対して「白層」と呼ばれることもある。
この種の二層構造のバス電極が記載されている先行技術文献として、例えば特許文献1が挙げられる。また、プラズマディスプレイパネルの電極形成用材料(導電ペースト)に関する先行技術として例えば特許文献2〜5がある。
特開平11−16499号公報 特開平9−147750号公報 特開平5−212833号公報 特開平9−142878号公報 特開2007−95705号公報 特開2002−313241号公報
ところで、銀を導電性成分とするバス電極を備えるプラズマディスプレイパネルの課題として、いわゆる黄変現象が挙げられる(例えば特許文献6参照)。黄変現象とは、バス電極に含まれる銀イオン(Ag)が周囲のガラス基板や誘電体層へ拡散し、さらに当該拡散部分におけるガラス成分と反応することに伴って、当該拡散部分(すなわちガラス基板や誘電体層)が黄色あるいは褐色に着色(変色)する現象をいう。
かかる黄変現象が過度に生じると、白色表示時に色温度が低下するといったようなPDPにおける画質の劣化を招く虞がある。また、黄変現象が過度に生じると、PDP自体が黄色っぽく見えることによりPDPの質感が低下する虞がある。
そこで本発明は、プラズマディスプレイパネルにおいて黄変現象による不具合(画質低下等)を解消すべく創出されたものであり、その目的は、黄変現象を抑制し、且つ二層間および透明電極との密着性が高い二層構造バス電極を作製する方法を提供することである。また、他の目的は、本発明で用いられるバス電極形成用材料セットを提供することである。
上記目的を実現するべく、本発明によって、プラズマディスプレイパネルに二層構造のバス電極を作製する方法が提供される。かかる方法は、前記プラズマディスプレイパネルの透明電極に、前記二層構造のバス電極のうちの下層を形成する材料を付与して下層被膜を形成する工程を包含する。ここで、前記下層を形成する材料として、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末と無機顔料とを含み、且つ、該無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で粉末状ガラスを含むことを特徴とする下層形成用材料が使用される。前記形成した下層被膜の上に、前記二層構造のバス電極のうちの上層を形成する材料を付与して上層被膜を形成する工程を含有する。ここで、前記上層を形成する材料として、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末を含み、且つ、該金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくは粉末状ガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料が使用される。そして前記下層被膜と上層被膜とからなる二層構造の被膜を焼成する工程を包含する。
従来のバス電極作製方法に用いられる上層形成用材料において、その構成成分である粉末状ガラスは、銀系金属粉末に対して1〜3質量%の割合で含まれているのが一般的である。また、従来用いられる下層形成用材料では、一般的にはその構成成分である粉末状ガラスは無機顔料に対して2倍の質量以下(典型的には1.5倍以下)の割合で含まれている。
他方、本発明のバス電極作製方法では、当該方法にて用いられる上層形成用材料は、粉末状ガラスを含まないか、含んだとしても銀系金属粉末に対して1質量%未満(好ましくは0.8質量%以下)しか含まない。このため、本発明のバス電極作製方法によって作製されたバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルによると、ガラス基板等に生じる黄変を大幅に抑制することができる。
ここで、かかる上層形成用材料を用いると、上記黄変現象が抑制される反面、該材料からなる上層に含有されるガラス成分が低減するために、従来の下層形成用材料を用いて下層を積層すると、焼成後のバス電極(焼成膜)における上層と下層との密着性が低下する虞がある。
しかし、本発明のバス電極作製方法によると、当該方法にて用いられる下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、上記無機顔料に対して少なくとも2倍の質量割合(好ましくは2.5倍以上、より好ましくは2.5倍〜3.5倍程度)で含まれている。このことにより、焼成時に上記上層および/または下層(典型的には下層)に発生し得る欠陥(例えば発泡等)を抑制しつつ、上記二層同士の密着強度さらには透明電極との密着強度が高いバス電極を作製することができる。したがって、黄変抑制効果と密着強度(密着性)が高い次元で実現された好適なバス電極を作製することができる。したがって、本発明は、他の側面として、そのようなバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
ここで開示されるバス電極作製方法の好ましい一態様では、少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、500〜650℃の軟化点を有する。
かかる構成のバス電極作製方法によると、少なくとも上記下層形成用材料中のガラスの軟化点が上記範囲内にあれば、上層および/または下層に発生し得る欠陥を抑制する効果と上下層同士の密着強度のいずれもがより一層高い次元で両立され得る二層構造バス電極を作製することができる。なお、典型的には、上記上層形成用材料に含まれるガラスには上記下層形成用材料中のガラスと同じものが採用され得る。
ここで開示されるバス電極作製方法の好ましい一態様では、少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、主たる構成成分として三酸化ビスマス(Bi)、二酸化珪素(SiO)および酸化硼素(B)を含む。
かかる構成のバス電極作製方法によると、上記各構成成分を含むことにより、上記ガラスの軟化点を容易にバス電極作製に好適な温度域(すなわち500〜650℃)にすることができる。
ここで開示されるバス電極作製方法では、前記下層形成用材料は、以下に示す材料(1)〜(5)を含み、該材料(1)〜(5)の総量を100質量%として、以下の配合比:
(1)前記銀系金属粉末 5〜20質量%;
(2)前記無機顔料 5〜15質量%;
(3)前記粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
(4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(5)有機溶媒 20〜70質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製される。好ましくは、上記材料(1)〜(5)の総量は、ペースト状下層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
また、ここで開示されるバス電極作製方法のさらに好ましい一態様では、前記上層形成用材料は、以下に示す材料(6)〜(9)を含み、該材料(6)〜(9)の総量を100質量%として、以下の配合比:
(6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
(7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
(8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(9)有機溶媒 15〜35質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製される。好ましくは、上記材料(6)〜(9)の総量は、ペースト状上層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
上記範囲の配合比で調製されたペースト状材料(組成物)を用いてバス電極の下層および上層を形成することにより、高い黄変抑制効果と、二層間および透明電極との密着性に優れた好ましいバス電極を形成することができる。
ここで開示されるバス電極作製方法の別の好ましい一態様では、前記二層構造の被膜は、最高焼成温度が500〜1000℃の温度域で焼成される。
かかる構成のバス電極作製方法では、特に下層に含まれるガラス成分の軟化点を含むかそれ以上の最高焼成温度でバス電極膜を焼成することにより、高い黄変抑制効果と二層間および透明電極との高い密着性を備えた好ましいバス電極を形成することができる。
また、本発明は、他の側面として、ここで開示されるいずれかのバス電極作製方法に用いられる材料であってプラズマディスプレイパネルに二層構造のバス電極を形成するために組み合わせて用いられる材料のセットを提供する。
当該セットは、以下の二つの材料:
(A)プラズマディスプレイパネルの透明電極に前記二層構造のバス電極のうちの下層を形成するために用いられる下層形成用材料であって、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末と、無機顔料とを含み、且つ、該無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で粉末状ガラスを含むことを特徴とする下層形成用材料;および、
(B)前記下層の上に前記二層構造のバス電極のうちの上層を形成するために用いられる上層形成用材料であって、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末を含み、且つ、該金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくは粉末状ガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料;を備える。
かかる構成の材料セットを用いることにより、ここで開示されるバス電極作製方法を容易に実施することができる。したがって、透明電極や基板等の黄変現象を抑制しつつ、下層と上層の二層間の密着強度(さらには下層と透明電極との密着強度)を高い次元で両立し得る好ましいバス電極を作製することができる。
ここで開示されるバス電極形成用材料セットの好ましい一態様では、少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、500〜650℃の軟化点を有する。
かかる構成のセットを用いることにより、少なくとも上記ガラスが上記範囲の軟化点を有するため、上下各層(典型的には下層)に発生し得る発泡等の欠陥が抑制されつつ、二層間および透明電極との高い密着強度を有する好適な二層構造バス電極を作製することができる。
ここで開示されるバス電極形成用材料セットの好ましい一態様では、少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、主たる構成成分としてBi、SiOおよびBを含む。
かかる構成のセットを用いることにより、少なくとも上記下層形成用材料に含まれるガラスの軟化点をバス電極の作製に好適な温度域内に容易にすることができ、上下二層間および透明電極との密着性に優れた好適な二層構造のバス電極を作製することができる。
ここで開示されるバス電極形成用材料セットの一態様では、前記下層形成用材料は、以下に示す材料(1)〜(5)を含み、該材料(1)〜(5)の総量を100質量%として、以下の配合比:
(1)前記銀系金属粉末 5〜20質量%;
(2)前記無機顔料 5〜15質量%;
(3)前記粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
(4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(5)有機溶媒 20〜70質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製されている。好ましくは、上記材料(1)〜(5)の総量は、ペースト状下層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
また、ここで開示されるバス電極形成用材料セットの他の一態様では、前記上層形成用材料は、以下に示す材料(6)〜(9)を含み、該材料(6)〜(9)の総量を100質量%として、以下の配合比:
(6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
(7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
(8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
(9)有機溶媒 15〜35質量%;
で各原料が混合されてペースト状に調製されている。好ましくは、上記材料(6)〜(9)の総量は、ペースト状上層形成用材料全体の90質量%以上を占める。
かかる構成のセットを用いてバス電極の下層および上層を形成することにより、高い黄変抑制効果と、二層間および透明電極との密着性に優れた好ましいバス電極を形成することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、バス電極形成用材料の組成やバス電極の構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばプラズマディスプレイパネルの構築プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
上述したように、ここで開示されるバス電極作製方法は、プラズマディスプレイパネルの透明電極に、二層構造のバス電極のうちの下層を形成する材料を付与(典型的には塗布)して下層被膜を形成する工程と、形成した下層被膜の上に上記バス電極のうちの上層を形成する材料を付与して上層被膜を形成する工程と、上記下層被膜と上層被膜とからなる二層構造の被膜を焼成する工程とを包含する。
かかるバス電極作製方法は、上記上層および下層を形成する材料の組み合わせ(セット)として、(A)銀系金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくはガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料と、(B)無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で粉末状ガラスを含むことを特徴とする下層形成用材料とを使用することにより特徴づけられる。また、上記上層形成用材料は、典型的には、有機バインダおよび有機溶媒とともに混合されてペースト状に調製されたペースト状材料(組成物)として使用される。上記下層形成用材料も同様に、典型的にはペースト状組成物として使用される。
かかるバス電極作製方法に用いられるバス電極形成用材料は、黄変現象の抑制を実現し得る程度にガラスの含有量が低減された上層形成用材料と、該上層形成用材料からなる上層と強く密着し得る下層を形成するためにガラスの含有量が増加した下層形成用材料との組み合わせによって特徴づけられる材料である。
このため、かかるバス電極形成用材料における粉末状ガラス以外の含有成分(例えば、銀系の金属粉末や無機材料、あるいは感光性化合物等の有機成分)は特に限定されず、適宜種々の成分を配合したり、その組成を変更することができる。
まず、二層構造バス電極のうち下層を形成するために用いられる下層形成用材料(すなわち、上記バス電極形成用材料セットのうちの(A)材料)について説明する。下層形成用材料には、下層に導電性を付与する導電性材料として銀(Ag)またはAg主体の合金からなるAg系金属粉末が含まれる。このような金属粉末としては、例えばAg、または銀−パラジウム(Ag−Pd)、銀−白金(Ag−Pt)等の白金族金属との合金、あるいは銀−銅(Ag−Cu)等の低融点金属との合金等が挙げられる。かかる金属粉末の形状は球状、フレーク状、デンドライト状など種々のものを用いることができるが、良好な光特性(例えば二層構造の被膜のパターン形成時における露光のし易さ)や上記金属粉末の分散性を得るためには、球状のものを用いることが好ましい。また、上記金属粉末の粒径については、例えば膜厚30μm以下(典型的には1μm〜10μm)で幅200μm以下(典型的には10μm〜100μm)の微細な線状のバス電極(下層被膜)を形成する場合には、好ましい粒径(例えばSEM観察等により得られる平均粒径)は0.1μm〜10μm程度であり、より好ましくは0.5μm〜5μm程度である。かかる粒径範囲を上回ると焼成後に得られる下層の緻密性が低下し、下回ると上記のような光特性が低下して上記金属粉末の分散性が悪くなるためにパターン精度の高い均質な下層が得られにくくなる。上記金属粉末の比表面積については、好ましくは0.4m/g〜2.5m/g(より好ましくは0.8m/g〜2m/g)である。
ここで開示される下層形成用材料は、バス電極の明度を抑えてコントラストを向上させ得るために無機顔料を含有する。かかる無機顔料は、典型的には黒色顔料であって、従来の下層形成用材料に含有される無機顔料と同様のものでよく、特に制限はない。かかる顔料の好適例として、四三酸化コバルト(Co)や酸化ルテニウム(RuO)、あるいはFe(鉄)−Cr(クロム)−Mn(マンガン)系顔料、Cu−Cr−Mn系顔料等が挙げられる。特に好ましくはコバルト系顔料(典型的には四三酸化コバルト)である。コバルト系顔料を用いることにより、上記の黒色顔料を添加する目的の達成およびバス電極自体の導電性の向上がより高い次元で実現され得る。また、上記無機顔料として、例えば視覚的に黄変現象の抑制を実現するために黄色と補色関係にある青色顔料(例えばアルミン酸コバルト(CoO・nAl)や錫酸コバルト(CoO・nSnO)等、黒色顔料以外の顔料を含んでもよい。上記無機顔料は、比表面積が1m/g〜20m/g程度(より好ましくは2m/g〜15m/g程度)の微粉末形態であることが好ましい。
ここで開示される下層形成用材料は、バス電極の形成時(すなわち上層被膜と下層被膜とからなる二層構造被膜の焼成時)に無機バインダとして機能させ得るために粉末状ガラス(典型的にはガラスフリット)をさらに含有する。かかる粉末状ガラスは、後述の上層形成用材料を用いて形成される上層との密着強度および透明電極との密着(接着)強度を高める役割をも果たし得るものである。このようなガラスにおいて、特に限定しないが、比表面積が0.5m/g〜10m/g程度であるものが好ましく、平均粒径は1μm〜2μmのものが好ましい。比表面積が上記範囲の下限より小さすぎる場合には、焼成後に得られるバス電極の抵抗値が増大し得る。また比表面積が小さ過ぎると平均粒径が上記上限を大きく上回り、得られるバス電極のパターン精度や緻密性が低下し得る。その一方、比表面積が大き過ぎる(平均粒径が上記範囲の下限よりも下回り過ぎる)と、上記粉末状ガラスの分散性が悪くなって均質な下層が得られにくい。
上記粉末状ガラスの軟化点は、650℃以下が好ましく、より好ましくは500〜650℃である。このような軟化点を有する粉末状ガラスを用いることにより、下層形成用材料に含まれるガラスの配合比(含有率)を後述のような範囲内に抑えつつ、下層上に積層される上層との密着強度を高めることができる。また、上記ガラスの軟化点が650℃を超えると、上記材料を用いてなる下層と基板(透明電極)との間の焼成後の密着(接着)強度が十分ではなく、加えて導電性が低下し得る(電気抵抗値が上昇し得る)。また、上記軟化点が低すぎると、焼成時に生じ得る発泡等による欠陥が下層に発生したり、耐水性や上記基板との接着性が低下する虞がある。
上記のような粉末状ガラスとして、例えば硼珪酸系ガラスが好ましく、具体的にはBi−SiO−B系ガラス(すなわち、Bi、SiOおよびBの3成分を主成分とするガラス)、ZnO−SiO−B系ガラス(すなわち、ZnO、SiOおよびBの3成分を主成分とするガラス)、PbO−SiO−B系ガラス(すなわち、PbO、SiOおよびBの3成分を主成分とするガラス)、PbO−SiO−B−Al系ガラス(すなわち、PbO、SiO、BおよびAlの4成分を主成分とするガラス)、PbO−SiO−B−ZnO系ガラス(すなわち、PbO、SiO、BおよびZnOの4成分を主成分とするガラス)、PbO−SiO−B−Al−ZnO系ガラス(すなわち、PbO、SiO、B、AlおよびZnOの5成分を主成分とするガラス)等が好適例として挙げられる。また、かかる粉末状ガラスの軟化点を調整するには、該ガラスの組成(配合比)を変化させればよい。例えば、上記Bi−SiO−B系ガラスの軟化点を低下させる場合には、SiOの量を減らし、Biの量を増やす等調整すればよい。また、上記粉末状ガラスは、目的に応じて主成分以外の種々の副成分(典型的には金属酸化物)を含んでもよい。
上述のように、ここで開示される下層形成用材料は、典型的には上記下層形成用材料の主たる構成要素(上記Ag系の金属粉末、粉末状ガラスおよび無機顔料)である混合粉末材料を含有するペースト状組成物(以下「下層形成用ペースト」という。)として提供される。かかる場合には、ペーストを構成するための種々の成分を上記混合粉末材料に加えることができる。すなわち、ここで開示される下層形成用ペーストは、上記混合粉末材料に加えて、従来の導電ペーストに含まれる成分と同様の物質を含有し得る。ここで開示される下層形成用ペーストに必須の成分としては、上記混合粉末材料を分散させる分散媒(典型的には有機系分散媒、あるいは有機ビヒクル)が挙げられる。
上記有機系分散媒は、典型的には有機バインダ(典型的にはポリマー)と有機溶媒とから構成される。かかる有機バインダと有機溶媒との組み合わせとしては、粉末材料(Ag系金属粉末、無機顔料および粉末状ガラス等)を良好に分散させ得るものであればよく、従来の導電ペーストに採用されているものを特に制限なく組み合わせて用いることができる。例えば、有機バインダとしては、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系高分子(セルロース誘導体)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(典型的にはポリビニルブチラール)等が挙げられる。また、有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、ブチルカルビトール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、その他ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ミネラルスピリット等の高沸点有機溶媒、またはこれら二種以上の組み合わせを好ましく使用することができる。なお、例えばフォトリソグラフィ法により、現像処理を行って透明電極上の二層構造被膜にバス電極のパターンを形成するにあたり現像液を水で行う場合には、上記有機バインダおよび有機溶媒として水溶性のものを組み合わせて選択することが好ましい。
また、ここで開示される下層形成用ペーストは、従来の導電ペーストと同様の種々の有機添加剤を必要に応じて含有してもよい。かかる有機添加剤として、上記下層形成用ペーストに良好な粘性、および被膜形成能(透明電極またはガラス基板に付与して好適な被膜を形成し得る性質)を付与し得る添加剤が好ましい。このような添加剤の例としては、各種の有機バインダ(上記有機バインダと重複してもよく、別途異なるバインダを添加してもよい。)や、セラミック基材との密着性向上を目的としたシリコン系、チタネート系およびアルミニウム系等の各種カップリング剤等が挙げられる。
また、用途に応じて上記下層形成用ペーストに光硬化性(感光性)を付与する場合には、種々の光重合性化合物および光重合開始剤を適宜添加してもよい。かかる光重合性化合物および光重合開始剤としては、従来の導電ペーストと同様のものを採用すればよく、特に限定されない。光重合性化合物としては、例えば、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好適に用いることができる。また、光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4−ジエチルチオキサントン等を好適に用いることができる。
なお、上記以外にも下層形成用ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。これらの添加剤は、従来の導電ペーストの調製に用いられ得るものであればよく、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
上記下層形成用ペーストの調製は、従来の導電ペーストの場合と同様にして、上記の各成分を混和することにより容易に実施できる。該調製方法としては、典型的には上記各成分の粉末材料および液体材料を所定の配合比で混練機(例えば三本ロールミル等)に投入して混合し、相互に混練することにより、所望の組成の下層形成用ペーストを調製することができる。
ここで開示される下層形成用ペーストに含まれる上記主要な成分、すなわち(1)Ag系金属粉末、(2)無機顔料、(3)粉末状ガラス、(4)有機バインダ、および(5)有機溶媒の各材料(1)〜(5)は、好ましくは以下のような配合比(含有率)で混合され得る。
AgまたはAg主体の合金からなるAg系金属粉末(材料(1))の含有量は、良好な導電性を下層に付与しつつ黄変現象が抑制され得る程度であることが好ましい。このようなAg系金属粉末の含有率としては、上記下層形成用ペーストに含まれる上記材料(1)〜(5)の総量を100質量%として、5〜20質量%程度が適当である。好ましくは10〜16質量%程度である。
また、無機顔料(材料(2))の含有率は、5〜15質量%程度が適当であり、好ましくは9〜11質量%である。
また、有機バインダ(材料(4))の含有率は、0.5〜5質量%程度が適当であり、好ましくは、1〜3質量%である。
また、有機溶媒(材料(5))の含有率は、20〜70質量%程度が適当である。好ましくは35〜55質量%程度である。
ここで、上記材料(1)〜(5)の総量は、下層形成用ペースト全体の90質量%以上を占めることが好ましく、より好ましくは93%質量以上である。
また、粉末状ガラス(材料(3))については、上記無機顔料に対して少なくとも2倍の質量割合で上記下層形成用ペーストに含有されていることが適当である。好ましくは2.5倍以上、より好ましくは凡そ2.5〜3.5倍程度である。このことを考慮すれば、該粉末状ガラスの含有率としては、上記下層形成用ペーストに含まれる上記材料(1)〜(5)の総量を100質量%として15〜40質量%が適当であり、好ましくは25〜35質量%である。ここで、上記粉末状ガラスの軟化点と含有率の相関性については、500〜650℃の温度域の下限に近い(500〜550℃、例えば530℃)場合には、該ガラスの含有量は無機顔料の2倍程度以上の質量割合でよい。一方、上記ガラスの軟化点が650℃に近い(600〜650℃、例えば630℃)場合には、その含有量は無機顔料の2.5倍程度以上の質量割合であることが好ましい。すなわち、上記粉末状ガラスを無機顔料の2.5倍程度以上の質量割合で含有させれば、500〜650℃程度の温度域の軟化点を有するガラスを好適に用いることができる。
上記のような粉末状ガラスの含有率は、従来の導電ペーストにおけるガラスの含有率に比べて大まかにいって2〜3割程度大きい。このように上記粉末状ガラスを多く含有させた下層形成用ペーストを用いることにより、ガラス成分をごく微量しか含まない後述の上層とでも強く密着できる(すなわち密着強度が高い)下層を形成することができる。なお、上記粉末状ガラスの含有率が上記範囲の上限(下層形成用ペースト全体に対して40質量%)を超えると、導電性が下がる(電気抵抗が高くなる)虞がある。
また、上記下層形成用ペーストを感光性ペーストとして調製するために上記光重合性化合物および光重合開始剤を含有させる場合には、上記各材料(1)〜(5)を含んでなる下層形成用ペースト全体を100質量%として0.1〜5質量%程度の割合で光重合性化合物を含有させればよく、0.2〜1.5質量%程度の割合で光重合開始剤を含有させればよい。
次に、上層形成用材料(すなわち、上記バス電極形成用材料セットのうちの(B)材料)について説明する。ここで開示される上層形成用材料には、上述の下層形成用材料と同様に、上層に導電性を付与する導電性材料としてAgまたはAg主体の合金からなるAg系の金属粉末が含まれる。かかる金属種として、例えばAg、またはAg−Pd、Ag−Pt等の白金族金属との合金、あるいはAg−Cu等の低融点金属との合金等が挙げられ、下層形成用材料に含まれるものと同じでよい。かかる金属粉末の形状は球状が好ましい。上記金属粉末の粒径についても、下層形成用材料に含まれるものと同様でよく、例えば膜厚30μm以下(典型的には1μm〜10μm)で幅200μm以下(典型的には10μm〜100μm)の微細な線状のバス電極を形成する場合には、0.1μm〜10μm程度が適当であり、より好ましくは0.5μm〜5μm程度である。上記金属粉末の比表面積については、好ましくは0.4m/g〜2.5m/g(より好ましくは0.8m/g〜2m/g)である。
ここで開示される上層形成用材料は、上記下層形成用材料と同様に無機バインダとしての粉末状ガラス(ガラスフリット)をさらに含んでもよいし、含まなくてもよい。後述するように、該ガラスを含む場合には黄変が生じない程度であることが好ましい。
かかる粉末状ガラスは、上記下層形成用材料に含まれるものと同じものでよく、軟化点が650℃以下(好ましくは500〜650℃、より好ましくは500〜600℃、特に好ましくは500〜550℃)のガラスが適当である。例えば、Bi−SiO−B系ガラス、ZnO−SiO−B系ガラス、PbO−SiO−B系ガラス、PbO−SiO−B−Al系ガラス、PbO−SiO−B−ZnO系ガラス、PbO−SiO−B−Al−ZnO系ガラス等の硼珪酸系ガラスが挙げられる。かかる粉末状ガラスの平均粒径や比表面積についても上記下層形成用材料中の粉末状ガラスと同程度でよい。
ここで開示される上層形成用材料は、下層形成用材料と同様に、典型的には上記上層形成用材料の主たる構成要素(上記Ag系金属粉末および/または粉末状ガラス)である混合粉末材料を含有するペースト状組成物(以下「上層形成用ペースト」という。)として提供される。すなわち、上記上層形成用ペーストは、上記混合粉末材料とともに、ペーストを構成するための成分であって従来の導電ペーストに含まれる成分と同様の物質を含有し得る。ここで開示される上層形成用ペーストに必須の成分としては、下層形成用ペーストと同様に、上記混合粉末材料を分散させる有機系分散媒(有機バインダおよび有機溶媒からなる分散媒)が挙げられる。かかる有機バインダおよび有機溶媒としては、従来の導電ペーストに採用されているものを特に制限なく用いることができる。例えば、下層形成用ペーストと同様のものでよい。また、上記上層形成用ペーストは、各種カップリング剤等、従来の導電ペーストと同様の種々の有機添加剤を必要に応じて含有してもよい。
また、上記上層形成用ペーストに光硬化性(感光性)を付与する場合には、種々の光重合性化合物および光重合開始剤を適宜添加してもよい。かかる光重合性化合物および光重合開始剤としては、従来の導電ペーストと同様のものを採用すればよく、上記下層形成用ペーストと同じものを採用すればよい。なお、上記のほかにも上層形成用ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。
上記上層形成用ペーストの調製は、上記下層形成用ペーストの場合と同様にして、上記の各成分を混和することにより容易に実施できる。該調製方法としては、典型的には上記各成分の粉末材料および液体材料を所定の配合比で混練機(例えば三本ロールミル等)に投入して混合し、相互に混練することにより、所望の組成の上層形成用ペーストを調製することができる。
ここで開示される上層形成用ペーストに含まれる上記各成分、すなわち(6)Ag系金属粉末、(7)粉末状ガラス、(8)有機バインダ、および(9)有機溶媒の各材料(6)〜(9)は、好ましくは以下のような配合比(含有率)で混合され得る。
AgまたはAg主体の合金からなるAg系金属粉末(材料(6))の含有量は、良好な導電性を上層に付与し得る程度であることが好ましい。このようなAg系金属粉末の含有率としては、上記下層形成用ペーストに含まれる上記成分(6)〜(9)の総量を100質量%として、60〜80質量%程度が適当である。好ましくは65〜75質量%程度である。
また、有機バインダ(材料(8))の含有率は、0.5〜5質量%程度が適当であり、好ましくは、1〜3質量%である。
また、有機溶媒(材料(9))の含有率は、15〜35質量%程度が適当である。好ましくは20〜30質量%程度である。
ここで、上記材料(6)〜(9)の総量は、好ましくは上層形成用ペースト全体の90質量%以上を占めることが好ましく、より好ましくは93質量%以上である。
上述のように、上記上層形成用ペーストは、下層形成用ペーストに比べてAg系金属粉末を多く含有するので、ガラス基板や透明電極における黄変現象を回避するためにはガラス成分を含まないことが好ましい。あるいは、上記上層形成用ペーストが粉末状ガラス(ガラス成分)を含有する場合には、該ガラスの含有量は最小限とすることが好ましい。そして、このような粉末状ガラス(材料(7))の含有量については、上記Ag系金属粉末に対して1質量%未満の質量割合で含有されることが適当であり、好ましくは0〜0.8質量%(例えば0.7質量%程度)である。このことを考慮すれば、該粉末状ガラスの含有率としては、上記上層形成用ペーストに含まれる上記材料(6)〜(9)の総量を100質量%として0〜0.5質量%が好ましい。このような粉末状ガラスの含有率は、従来の導電ペーストにおける粉末状ガラスの含有率(一般的には、Ag系金属粉末に対して1〜3質量%)と比較しても十分に小さい。このような低い含有率で上記粉末状ガラスを含有させた上層形成用ペーストを用いることにより、好適に透明電極やガラス基板等の黄変現象を抑制することができる。
なお、上記上層形成用ペーストを感光性ペーストとして調製するために上記光重合性化合物および光重合開始剤を含有させる場合には、上記各材料(6)〜(9)を含んでなる上層形成用ペースト全体を100質量%として、光重合性化合物を0.1〜5質量%程度の割合で含有させればよく、光重合開始剤については0.2〜1.5質量%程度の割合で含有させればよい。
次に、上記下層形成用材料および上層形成用材料を用いた二層構造バス電極の作製方法(形成方法)について説明する。
ここで開示される上記バス電極の作製方法は、上記下層形成用ペーストと上層形成用ペーストを用意する(典型的には、バス電極材料形成用材料セットの下層形成用材料から下層形成用ペーストを調製し、また、該セットの上層形成用材料から上層形成用ペーストを調製する)工程と、下層形成用ペーストを、透明電極の表面に付与(塗布)して所定厚の下層被膜を形成する工程と、当該下層被膜上に上記上層形成用ペーストを重ねて付与(塗布)して所定厚の上層被膜を形成する工程と、上記下層被膜と上層被膜とからなる二層構造被膜を焼成する工程を包含する。なお、かかる製造方法は、本発明に係るバス電極形成用材料(下層形成用材料および上層形成用材料)を用いてバス電極を形成することにより特徴づけられる方法であり、当該材料を用いる方法やバス電極の作製方法自体については、従来のバス電極形成用ペーストを用いる場合と同様でもよい。
ここで開示されるバス電極作製方法の好適例の一つとして、以下のような工程により二層構造バス電極を作製することができる。すなわち、上記下層形成用ペースト(典型的には感光性ペースト)と上層形成用ペースト(典型的には感光性ペースト)の用意(調製)工程では、下層形成用材料の上記各構成成分(含有され得る成分)を所定の配合比で配合し、三本ロールミル等の混練機を用いて混合、混練して所定粘度(好ましくは10Pa・s〜150Pa・s、例えば100Pa・s)にペースト化する。上層形成用ペーストについても同様にペースト状に調製する。次いで、上記各ペーストを付与する工程では、例えば厚膜スクリーン印刷法やバーコータ塗布等により、透明電極の表面に下層形成用ペーストを塗布し、所定厚さ(例えば10μm)の下層被膜を形成する。この下層被膜に対して、例えば遠赤外線乾燥機等の乾燥機を用いて所定温度(例えば80〜120℃)の温度条件下で所定時間(例えば15分間)乾燥処理を施して、上記下層被膜から有機溶媒を揮発させる。次いで、乾燥後の上記下層被膜の上に適当な上層形成用ペーストを塗布し、所定厚さ(例えば10μm)の上層被膜を形成する。上記下層被膜と同様に上記上層被膜を乾燥させることにより、透明電極上に形成された二層構造の被膜を得ることができる。
次いで、得られた二層構造の被膜に例えばフォトリソグラフィ法を実施して、上記二層構造被膜にバス電極の所定パターンを形成する。すなわち、所定の開口パターンのフォトマスクを介して所定強度(例えば300mJ/cm)の光(例えば350nm程度の紫外線)を照射して露光処理を実施する。これにより、フォトマスクに覆われなかった露光部分を、上層および下層に含まれる光重合性化合物による硬化反応(光重合反応)を起こして硬化させ、透明電極上に強固に接着(固着)させる。他方、フォトマスクに覆われていた未露光部分は、光重合反応が起こらないので硬化せず、透明電極には固着しない。次いで、現像処理として、例えば現像液(例えば水)を所定の吐出圧力で上記透明電極上の二層構造被膜に吹き付ける。このことにより、上記未露光部分のみが洗い流されて選択的に除去され、所定パターンの露光部分が残存する。このようにして、高精度にパターニングされた二層構造被膜(バス電極膜)を形成する。上記パターニングは、上層を積層する前の下層に対して行い、その後積層された上層に対して再度行ってもよい。また、かかる二層構造バス電極膜の形成には、上記方法以外にスクリーン印刷法等を採用して、最初から所望のバス電極に対応する所定のパターンに沿って下層形成用ペーストと上層形成用ペーストを塗布してもよい。
次に、上記未焼成の二層構造バス電極膜を焼成する。焼成条件は、従来のバス電極を焼成する場合と同様でよく、特別な処理は不要である。例えば、焼成温度(最高焼成温度)は500〜1000℃(好ましくは500〜800℃、例えば500〜700℃)程度が適当である。焼成雰囲気は特に限定されないが、酸素含有雰囲気(例えば大気)下で常圧で焼成することが好ましい。
以上の一連の工程を行うことによって、後述する図3に示されるような下層15Aと上層15Bの二層構造からなるバス電極15を透明電極14の表面上に形成することができる。
本発明により提供されるバス電極形成用材料セット(すなわち下層形成用材料および上層形成用材料)を用いて作製されたバス電極は、例えば以下に示されるような態様のプラズマディスプレイパネル(PDP)に好ましく備えられる。かかるバス電極を備えるPDPの好ましい一態様について、図1〜3を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネル(PDP)1を模式的に示す一部破断の斜視図である。図2は、前面パネル10側の構成を示す部分断面図である。また、図3は、バス電極15の二層構造を模式的に示す部分断面図である。
なお、バス電極15の下層15Aおよび上層15Bを形成する材料以外のPDP構成材料ならびにPDPの構築方法自体は従来と全く同様であるため詳細な説明は省略する。
図1に示されるように、本実施形態に係るPDP1は、対向配置された前面パネル10と背面パネル20とから構成される。
図1および図2に示されるように、前面パネル10は、例えばソーダガラス等から構成される高い透明性の前面ガラス基板12(例えば厚み1.8mm程度)を備える。前面ガラス基板12における背面パネル20と対向する側の面には、PDP1の表示電極を構成する透明電極(ITO電極)14と該透明電極14上に形成された本発明に係るバス電極15が形成されている。透明電極14およびバス電極15を覆うようにして低融点ガラスからなる誘電体層16が形成され、該誘電体層16の表面にはマグネシアからなる保護層18が形成されている。
図3に示されるように、本実施形態に係るバス電極15は、透明電極14に接する下層15Aとその上面に積層された上層15Bとから構成されている。下層15Aはここで開示される下層形成用材料(下層形成用ペースト)からなり、上層15Bはここで開示される上層形成用材料(上層形成用ペースト)からなる。
一方、図1に示されるように、背面パネル20は、典型的には上記前面ガラス基板12と同様の材質(例えばソーダガラス等)から構成される高い透明性の背面ガラス基板22を備える。背面ガラス基板22の前面パネル10に対向する側の面には、酸化物層(例えばマグネシア層)24が形成されており、その表面にはAg粉末を導電性材料とするアドレス電極26が形成されている。かかる酸化物層24によってアドレス電極26を構成するAgとソーダガラスからなる背面ガラス基板22との反応(例えば黄変現象)を抑制することができる。
また、酸化物層24の上面には、アドレス電極26を覆うようにして低融点ガラスからなる誘電体層28が形成されている。この誘電体層28の表面上には隔壁30が所定の間隔で形成されている。これにより、背面パネル20と前面パネル10との間に、隔壁30で仕切られた多数のセル40が形成されている。各セル40の内壁面には蛍光体層32が設けられている。蛍光体層32として、従来公知の赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等がそれぞれのセル40に所定の順序で配置されている。各セル40内には放電ガスが充填されている。放電ガスとしては従来公知のガスを使用すればよい。例えば、キセノンガス(Xe)、ネオンガス(Ne)、ヘリウム−キセノン(He−Xe)混合ガス、ネオン−キセノン(Ne−Xe)混合ガス等を用いることができる。
なお、上記のガラス基板12,22、隔壁30、蛍光体層32、透明電極14、誘電体層16,28、保護層18および酸化物層24としては、上記の構成に限られず一般的なPDPに適用可能な従来公知の構成を特に制限なく適宜選択して用いることができる。また、PDPに適用可能なこれら以外の他の構成を備えていてもよい。
以下本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<感光性の下層形成用ペーストの調製>
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、感光性の下層形成用ペーストを調製した。すなわち、10質量%のAg粉末(平均粒径2.5μm、比表面積0.5m/g〜1.5m/g)、6質量%の黒色無機顔料(四三酸化コバルト、平均粒径1μm)、4質量%の青色無機顔料(アルミン酸コバルト、平均粒径1μm)、有機溶媒として40質量%のターピネオール(テルピネオールともいう)、有機バインダとして5質量%のセルロース系高分子(セルロース樹脂)、30質量%のガラスフリット(B、SiO、Biの3成分を主成分とし、その他の副成分としてZnO、BaO、Alを含む軟化点600℃のBi−SiO−B系ガラス、平均粒径1μm)に加え、光重合性化合物として4質量%のトリメチロールプロパントリアクリレートを混練して下層形成用ペーストを調製した。
<感光性の上層形成用ペースト(サンプル1〜5)の調製>
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、ガラス成分(ガラスフリット)の含有率の異なる組成の感光性の上層形成用ペースト5種類(サンプル1〜5)を調製した。
すなわち、有機溶媒(15.9質量%)と、セルロース樹脂およびアクリル樹脂からなる有機バインダ(5.7質量%)と、光重合性化合物のトリメチロールプロパントリアクリレート(7.5質量%)、および光重合開始剤の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(0.9質量%)の計30質量%に、上記下層形成用ペーストと同じ上記Ag粉末とガラスフリットを混練してサンプル1〜5を調製した。
ここで、上記有機溶媒、有機バインダおよび感光性材料(表1では、これらをまとめて「その他」として表記)の合計30質量%を除く、残りの70質量%を占めるAg粉末とガラスフリットの割合を変化させて、サンプル1〜5を調製した。サンプル1〜5の組成を表1に示す。なお、表中の「ガラス/全体」は、ペースト(サンプル)全体に対するガラスフリットの含有率[質量%]、「ガラス/Ag」は、ペースト(サンプル)中のAg粉末に対するガラスの含有率[質量%]をそれぞれ表わす。
また、上記サンプル1〜5を所定条件で上層被膜のみを形成し、焼成して得られた焼成膜の電気抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。表1に示されるように、上記サンプル1および2は、十分な導電性を有することが分かった。
<二層構造バス電極の形成と黄変抑制に関する評価試験>
上記得られた下層形成用ペーストと5種類の組成の異なる上層形成用ペースト(サンプル1〜5)を用いてバス電極と同様の試験用焼成膜(焼成された二層構造被膜)を形成し、各焼成膜を構成する下層形成用材料および上層形成用材料のガラスの含有率が与える黄変抑制効果を市販の色彩色差計によるb値(黄色度)の測定に基づいて評価した。なお、本実施例では市販の色彩色差計(コニカミノルタ社製品:CR−300)を取扱説明書通りに使用した。以下に具体的に説明する。
まず、市販のガラス基板(ここでは旭硝子株式会社から入手可能なカラーPDP用ガラス基板、商品名「PD200」を使用した。)上に、上記下層形成用ペーストを膜状に塗布した。その後、熱風式乾燥機により110℃で10分間の乾燥処理を行い、ガラス基板上に下層被膜を形成した。
次に、乾燥後の上記下層被膜の上に、サンプル1の上層形成用ペーストを膜状に塗布し、その後、熱風式乾燥機により110℃で10分間の乾燥処理を行って上層被膜を形成した。次いで、樹脂印刷版「Poly#355」を使用して、以下(1)〜(5)に示す5種類のパターンになるように、露光機により300mJ/cmの強度で露光した。
露光後、0.4%のNaCO現像した後に、純水で15秒間洗浄した。これにより、5種類のパターンの二層構造被膜が形成された。
ここで、5種類のパターンとは、
(1)40μm幅のライン状の二層構造被膜を90μmの間隔で複数本形成したもの、
(2)50μm幅のライン状の二層構造被膜を80μmの間隔で複数本形成したもの、
(3)65μm幅のライン状の二層構造被膜を65μmの間隔で複数本形成したもの、
(4)80μm幅のライン状の二層構造被膜を50μmの間隔で複数本形成したもの、
(5)100μm幅のライン状の二層構造被膜を30μmの間隔で複数本形成したもの、
であり、二層構造被膜の幅(設計幅)および隣り合う二層構造被膜同士の間隔を変えた5種類のパターンである。
その後、最高焼成温度(590℃)で焼成した(最高焼成温度の継続時間:20分)。なお、上記5種類のパターンについて、焼成後の二層構造被膜(以下、「二層構造焼成膜」という。)の幅が設計幅から収縮していた。この焼成膜の幅を焼成幅とする。
上記パターン(1)の二層構造焼成膜付きガラス基板を、試験台上に置いた白紙の上にガラス基板が上面となるように配置した。すなわち、下から白紙、上層、下層、ガラス基板の順に積層された状態で試験台上に配置した。この状態で、上記色彩色差計を用いてb値を測定した。
残り上記4通りのパターン(2)〜(5)の二層構造焼成膜付きガラス基板のそれぞれについても同様にしてb値を測定した。その結果を上記焼成幅とともに表2に示す。
上記サンプル1と同様にして、サンプル2〜5のそれぞれについても、サンプルごとに上記5通りのパターン(1)〜(5)の二層構造焼成膜付きガラス基板を作製し、それぞれのb値を測定した。サンプル2の上層形成用ペーストを用いてなる二層構造焼成膜付きガラス基板の結果を表3に、サンプル3を用いてなる二層構造焼成膜付きガラス基板の結果を表4に、サンプル4を用いてなる二層構造焼成膜付きガラス基板の結果を表5に、そしてサンプル5を用いてなる二層構造焼成膜付きガラス基板の結果を表6に、それぞれ示す。
表2〜表6に示される結果より、ガラスの含有率が異なる上層形成用ペーストごとに、二層構造焼成膜の焼成幅に対するb値の変化をグラフに示した。このグラフを図4に示す。
表2〜6および図4に示されるように、ガラスの含有率が上層形成用ペースト全体の0〜0.5質量%の場合(サンプル1および2)には、ガラスの含有率が上層形成用ペースト全体の1〜4質量%(サンプル3〜5)の場合と比べて、いずれの焼成幅においてもb値が低下していた。特に焼成幅30μm〜60μmの範囲でb値が顕著に低下しており、例えば焼成幅30μm前後では、サンプル1および2と、サンプル3〜5との間にはb値に4以上の差が認められた。以上より、ガラスの含有率が低い上層形成用ペーストを用いて得られる二層構造焼成膜は黄変抑制効果が高いことが確認された。なお、焼成幅が80μm以上になるとサンプルによらず同程度のb値に至るのは、色彩色差計による測定領域内に占める黒色部分(焼成膜部分)の面積が大きくなり過ぎ、b値を判定しにくくなるためと考えられる。
次に、以下に示す粉末状ガラスの軟化点と含有率が異なる下層形成用ペースト(サンプル6〜17)を調製し、かかる下層形成用ペーストと以下に示す上層形成用ペーストを用いてバス電極と同様の試験用焼成膜を形成し、各焼成膜を構成するバス電極形成用材料における粉末状ガラスの含有率が与える密着効果を、市販のスクラッチ試験機を用いたスクラッチ試験に基づいて評価した。なお、本実施例では市販のスクラッチ試験機(株式会社東京精密製 型番E−R M−W50B)を使用した。以下に具体的に説明する。
<感光性の下層形成用ペースト(サンプル6〜17)の調製>
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、軟化点530℃の粉末状ガラス(ガラスフリット)の含有量が異なる感光性の下層形成用ペースト(サンプル6〜8)を調製した。すなわち、サンプル6では、15質量%のAg粉末(平均粒径2.5μm、比表面積0.5m/g〜1.5m/g)と、6質量%の黒色無機顔料(四三酸化コバルト、平均粒径1μm)、4質量%の青色無機顔料(アルミン酸コバルト、平均粒径1μm)、有機溶媒の38質量%のターピネオールと有機バインダの5質量%のセルロース樹脂、光重合性化合物の4質量%のトリメチロールプロパントリアクリレートと、27質量%のガラスフリット(Bi、SiO、Bの3成分を主成分とし、その他副成分としてZnOおよびBaOを含む軟化点530℃のBi−SiO−B系ガラス、平均粒径1μm)とを混練してサンプル6を調製した。
サンプル7は、上記サンプル6において上記Ag粉末を20質量%、上記ガラスフリットを22質量%に変更する以外は、全て同じ材料および組成で調製した。
サンプル8は、上記サンプル6において上記Ag粉末を25質量%、上記ガラスフリットを17質量%に変更する以外は、全て同じ材料および組成で調製した。
したがって、得られたサンプル6は、軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料(黒色無機顔料および青色無機顔料)に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル7は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル8は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含有している。
次いで、軟化点600℃の粉末状ガラス(Bi、SiO、Bの3成分を主成分とし、その他副成分としてZnO、BaO、Alを含む軟化点600℃のBi−SiO−B系のガラスフリット、平均粒径1μm)の含有量が異なる感光性の下層形成用ペースト(サンプル9〜11)を調製した。
ここで、サンプル9〜11は、上記サンプル6〜8と比較して、含まれる粉末状ガラスの軟化点(組成)が異なる以外は同じである。すなわち、サンプル9は、軟化点600℃の粉末状ガラスを上記無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル10は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル11は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含有している。
次いで、軟化点610℃の粉末状ガラス(Bi、SiO、Bの3成分を主成分とし、その他副成分としてZnO、BaO、Alを含む軟化点610℃のBi−SiO−B系のガラスフリット、平均粒径1μm)の含有量が異なる感光性の下層形成用ペースト(サンプル12〜14)を調製した。
ここで、サンプル12〜14は、上記サンプル6〜8と比較して、含まれるガラスフリットの軟化点(組成)が異なる以外は同じである。すなわち、サンプル12は、軟化点610℃の粉末状ガラスを上記無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル13は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル14は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含有している。
次いで、軟化点630℃の粉末状ガラス(Bi、SiO、Bの3成分を主成分とし、その他副成分としてZnO、BaO、Alを含む軟化点630℃のBi−SiO−B系のガラスフリット、平均粒径1μm)の含有量が異なる感光性の下層形成用ペースト(サンプル15〜17)を調製した。
ここで、サンプル15〜17は、上記サンプル6〜8と比較して、含まれるガラスフリットの軟化点(組成)が異なる以外は同じである。すなわち、サンプル15は、軟化点630℃の粉末状ガラスを上記無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含有している。また、サンプル16は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含有している。サンプル17は、上記粉末状ガラスを無機顔料に対しての2.5倍の質量割合で含有している。
<感光性の上層形成用ペーストの調製>
以下に示す材料を以下に示す配合比で混練し、サンプル6〜8に対応した上層形成用ペーストを調製した。すなわち、70質量%のAg粉末(サンプル6〜8と同じもの)と、15.9質量%の有機溶媒と、セルロース樹脂およびアクリル樹脂からなる5.7質量%の有機バインダと、光重合性化合物の7.5質量%のトリメチロールプロパントリアクリレートと、光重合開始剤の0.9質量%の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとを混練して調製した。
次いで、サンプル9〜11に対応した上層形成用ペーストを調製した。これは、含まれる粉末状ガラスが異なる以外は上記サンプル6〜8用の上層形成用ペーストと同じである。
また、サンプル12〜14に対応した上層形成用ペーストを調製した。これは、含まれる粉末状ガラスが異なる以外は上記サンプル6〜8用の上層形成用ペーストと同じである。
さらに、サンプル15〜17に対応した上層形成用ペーストを調製した。これは、含まれる粉末状ガラスが異なる以外は上記サンプル6〜8用の上層形成用ペーストと同じである。
<二層構造バス電極の形成と密着強度に関する評価試験>
上述のサンプル1(上層形成用ペースト)および該サンプル1に対応する下層形成用ペーストを用いて得られた二層構造焼成膜と同様にして、上記サンプル6(下層形成用ペースト)、および該サンプル6に対応するサンプル6用上層形成用ペーストを用いてガラス基板上に50μmの間隔で80μm幅のライン状の二層構造被膜を形成し、その後焼成により二層構造焼成膜を形成した。上記サンプル7〜17についても、これと同様にしてそれぞれのサンプルを用いて得られる二層構造焼成膜を形成した。
ここで、サンプル6〜14を用いてなる二層構造焼成膜は全て、最高温度590℃の下で形成(焼成)した。
次に、スクラッチ試験機を用いて上記各二層構造焼成膜付きガラス基板の密着強度を測定した。すなわち、上記ガラス基板上に形成された焼成膜の表面に、スクラッチ試験機におけるタングステン製のスクラッチ端子(先端部は直径2.5mmを有して円錐形状に尖った形状を備える)を上記焼成膜の表面に対して直角になるように当接させて、上記先端部を2mm/秒、負荷過重100gで水平に(すなわち上記表面上で)微小振動させた。これにより上記焼成膜における剥離、断線、破壊等の損傷の状況を観察し、その損傷の状況から上記各焼成膜の下層と上層との密着強度、および/または該焼成膜とガラス基板との密着強度を評価した。
上記スクラッチ試験により、以下のような結果が得られた。すなわち、
サンプル6(軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜には、断線ほどではないが、処々に欠けが生じた。
サンプル7(軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜には、欠けは認められず、損傷は殆どなかった。
サンプル8(軟化点530℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜には、欠けは認められず、損傷は殆どなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図5に示す。
サンプル9(軟化点600℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、断線ほどではないが、処々に欠けが生じた。
サンプル10(軟化点600℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、断線ほどではないが、一部欠けが生じた。
サンプル11(軟化点600℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、欠けはなく、損傷は認められなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図6に示す。
サンプル12(軟化点610℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、断線ほどではないが、処々に欠けが生じた。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図9に示す。
サンプル13(軟化点610℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる焼成膜は、断線ほどではないが、一部欠けが生じた。
サンプル14(軟化点610℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、欠けはなく、損傷は認められなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図7に示す。
サンプル15(軟化点630℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して1.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、断線が生じ、大きく損傷した。
サンプル16(軟化点630℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、断線が生じて損傷した。
サンプル17(軟化点630℃の粉末状ガラスを無機顔料に対して2.5倍の質量割合で含む)を用いてなる二層構造焼成膜は、欠けはなく、損傷は認められなかった。また、当該焼成膜のスクラッチ試験後のSEM像を図8に示す。
以上の結果より、下層形成用材料(ペースト)に含まれる粉末状ガラスの割合が高いと、かかる下層形成用材料を用いてなる二層構造焼成膜の密着強度は向上することがわかった。本実施例に係る結果によれば、軟化点が500℃程度の粉末状ガラスであれば無機顔料に対して2倍の質量割合以上で含有させることが適当であり、また、軟化点が600〜650℃の温度域にある粉末状ガラスでは、無機顔料に対して2.5倍以上の質量割合で含有させることにより、好適な密着強度を備えたバス電極(二層構造焼成膜)を得ることができる。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えうるものである。
本発明の一実施形態に係るPDPの構造を模式的に示す一部破断の斜視図である。 本発明の一実施形態に係るPDPの前面パネル側の構成を示す部分断面図である。 本発明の一実施形態に係るバス電極の二層構造を示す部分断面図である。 本発明の実施例に係る粉末状ガラスの含有率の異なる上層を備えた焼成膜の黄変抑制に関する評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係るサンプル8の密着強度に関する評価結果を示す図である。 本発明の実施例に係るサンプル11の密着強度に関する評価結果を示す図である。 本発明の実施例に係るサンプル14の密着強度に関する評価結果を示す図である。 本発明の実施例に係るサンプル17の密着強度に関する評価結果を示す図である。 本発明の実施例に係るサンプル12の密着強度に関する評価結果を示す図である。
符号の説明
1 プラズマディスプレイパネル(PDP)
10 前面パネル
12 前面ガラス基板
14 透明電極
15 バス電極
15A 下層
15B 上層
16 誘電体層
18 保護層(マグネシア層)
20 背面パネル
22 背面ガラス基板
24 酸化物層
26 アドレス電極
28 誘電体層
30 隔壁
32 蛍光体層
40 セル

Claims (10)

  1. プラズマディスプレイパネルに二層構造のバス電極を作製する方法であって:
    前記プラズマディスプレイパネルの透明電極に、前記二層構造のバス電極のうちの下層を形成する材料を付与して下層被膜を形成する工程、ここで、前記下層を形成する材料として、(1)銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末と、(2)無機顔料と、(3)粉末状ガラスと、(4)有機バインダと、(5)有機溶媒とを含み、且つ、該粉末状ガラスは該無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で含まれており、前記(1)〜(5)の総量を100質量%として以下の配合比:
    (1)銀系金属粉末 5〜20質量%;
    (2)無機顔料 5〜15質量%;
    (3)粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
    (4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
    (5)有機溶媒 20〜70質量%;
    で各原料が混合されてペースト状に調製されたことを特徴とする下層形成用材料が使用される;
    前記形成した下層被膜の上に、前記二層構造のバス電極のうちの上層を形成する材料を付与して上層被膜を形成する工程、ここで、前記上層を形成する材料として、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末を含み、且つ、該金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくは粉末状ガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料が使用される;および、
    前記下層被膜と上層被膜とからなる二層構造の被膜を焼成する工程;
    を包含する、二層構造バス電極作製方法。
  2. 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、500〜650℃の軟化点を有する、請求項1に記載のバス電極作製方法。
  3. 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、主たる構成成分としてBi、SiOおよびBを含む、請求項1または2に記載のバス電極作製方法。
  4. 前記上層形成用材料は、以下に示す材料(6)〜(9)を含み、該材料(6)〜(9)の総量を100質量%として、以下の配合比:
    (6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
    (7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
    (8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
    (9)有機溶媒 15〜35質量%;
    で各原料が混合されてペースト状に調製される、請求項1〜のいずれかに記載のバス電極作製方法。
  5. 前記二層構造の被膜は、最高焼成温度が500〜1000℃の温度域で焼成される、請求項1〜のいずれかに記載のバス電極作製方法。
  6. プラズマディスプレイパネルに二層構造のバス電極を形成するために組み合わせて用いられる材料のセットであって、
    以下の二つの材料:
    (A)プラズマディスプレイパネルの透明電極に前記二層構造のバス電極のうちの下層を形成するために用いられるペースト状に調製された下層形成用材料であって、(1)銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末と、(2)無機顔料、(3)粉末状ガラスと、(4)有機バインダと、(5)有機溶媒とを含み、且つ、該粉末状ガラスは該無機顔料の少なくとも2倍の質量割合で含まれており、前記(1)〜(5)の総量を100質量%として以下の配合比:
    (1)銀系金属粉末 5〜20質量%;
    (2)無機顔料 5〜15質量%;
    (3)粉末状ガラス 15〜40質量%(ただし前記無機顔料含有量の2倍以上とする);
    (4)有機バインダ 0.5〜5質量%;
    (5)有機溶媒 20〜70質量%;
    で各原料が混合されてペースト状に調製されたことを特徴とする下層形成用材料;および、
    (B)前記下層の上に前記二層構造のバス電極のうちの上層を形成するために用いられるペースト状に調製された上層形成用材料であって、銀または銀主体の合金からなる銀系金属粉末を含み、且つ、該金属粉末に対して1質量%未満の粉末状ガラスを含むか若しくは粉末状ガラスを含まないことを特徴とする上層形成用材料;
    を備える、バス電極形成用材料セット。
  7. 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、500〜650℃の軟化点を有する、請求項に記載のバス電極形成用材料セット。
  8. 少なくとも前記下層形成用材料に含まれる粉末状ガラスは、主たる構成成分としてBi、SiOおよびBを含む、請求項またはに記載のバス電極形成用材料セット。
  9. 記上層形成用材料は、以下に示す材料(6)〜(9)を含み、該材料(6)〜(9)の総量を100質量%として、以下の配合比:
    (6)前記銀系金属粉末 60〜80質量%;
    (7)前記粉末状ガラス 0〜0.5質量%;
    (8)有機バインダ 0.5〜5質量%;
    (9)有機溶媒 15〜35質量%;
    で各原料が混合されてペースト状に調製されている、請求項のいずれかに記載のバス電極形成用材料セット。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の作製方法により作製された二層構造バス電極、または請求項のいずれかに記載のバス電極形成用材料セットを用いて作製された二層構造バス電極を備えるプラズマディスプレイパネル。
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