JP4942008B2 - コイン形電池 - Google Patents

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本発明は、コイン形二酸化マンガンリチウム電池(CR電池)などのコイン形電池に関する。
前記コイン形電池にあっては、高温の環境下で使用されたり貯蔵されたりすることがある。高温の環境下では、電池内での電解液の分解などによってガスが発生し、このガスによって電池内圧が上昇して電池缶が膨張する。この電池缶の膨張に伴って電池缶内の正極材と負極材との間隔が広がり、十分な放電電流が得られなくなる。
これに対して、特許文献1−3には、バネの付勢力によって正極材をセパレータを介して負極材側に押し付ける形式が開示されている。このバネを備えた電池では、電池缶が膨張しても正極材と負極材との間隔を小さくできて十分な放電電流を得ることができる。
特開昭61−133571号公報(第1図) 特開平3−22346号公報(第1図) 特公平6−7493号公報(第3−4図)
特許文献1−3では、電池缶内にバネを配する分だけ電池の内部空間が小さくなる。これに伴って、正極材や負極材の大きさが小さくなり、電池容量が減少するところに問題がある。
そこで本発明の目的は、電池容量を減少させることなく、電池内圧の上昇による電池缶の膨張を的確に抑えるコイン形電池を提供することにある。
本発明に係るコイン形電池は、図1および図2に示すごとく、電池缶1の上面壁13および底面壁11の少なくとも一方に、帯板状の端子板26・27が少なくとも2点でスポット溶接されている。端子板26・27は、そのスポット溶接に係る溶接点間の引っ張り強度を電池缶1の上面壁13および底面壁11の引っ張り強度以上に設定しておき、スポット溶接のうちの少なくとも2点の溶接点P1・P2は、図1に示すごとく一方の溶接点P1が電池缶1の上面壁13もしくは底面壁11の中心点Oを挟んで他方の溶接点P2の反対側に配される。
ここで、端子板26・27の引っ張り強度が電池缶1の上面壁13および底面壁11の引っ張り強度以上であるとは、端子板26・27における溶接点P1・P2間の引っ張り強度が、少なくとも電池缶1の上面壁13および底面壁11における溶接点P1・P2間の引っ張り強度以上であることをいう。電池缶1の上面壁13および底面壁11は、円形や四角形や三角形などが該当する。前記スポット溶接の溶接点は、2点でもよいが、溶接強度的には溶接点は多いほうが好ましい。この場合、溶接点が多すぎると電池の製造効率が低下するため、溶接点は3〜6点に設定することが好ましい。スポット溶接は、電気抵抗溶接やレーザー溶接などで行うことができる。
詳しくは、スポット溶接のうちの少なくとも2点の溶接点P1・P2は、電池缶1の上面壁13もしくは底面壁11の中心点Oを介して点対称位置に配する。端子板26・27は、引っ張り強度が高くて加工性の優れた材質が好ましく、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼、例えばSUS304のステンレス鋼で形成されることが望まれる。
端子板26・27の厚さ寸法は、好ましくは0.2〜0.6mmに設定する。端子板26・27の厚さ寸法が0.2mmよりも小さいと、電池缶1の膨張を確実には抑え切れない。一方、端子板26・27の厚さ寸法を0.6mmより大きく設定しても、電池缶1の膨張の抑制効果が頭打ちになるのに対して、端子板26・27の材料コストは増えることになり、さらに端子板26・27が厚くなる分だけ、溶接が困難になるうえに溶接温度を高くしなければならず電池缶1内の電池要素2の溶解などを招くおそれがある。端子板26・27の厚さ寸法は、0.25mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましい。また、端子板26・27の厚さ寸法は、0.5mm以下であることがより好ましい。
スポット溶接のうち、最も離れているスポット溶接の溶接点P1・P2間の距離L2は、電池缶1の外径寸法L1の20〜50%に寸法設定すればよい。溶接点P1・P2間の距離L2が電池缶1の外径寸法L1の20%よりも小さいと、電池缶1の中央付近の膨張は抑えられるが、電池缶1の周辺側の膨張を確実には抑え切れないことになる。一方、溶接点P1・P2間の距離L2が電池缶1の外径寸法L1の50%よりも大きいと、電池缶1の中央付近の膨張を確実には抑え切れないからである。
本発明によれば、外部機器に電池を接続するために電池缶1の上面壁13や底面壁11の外面にスポット溶接される端子板26・27において、そのスポット溶接の溶接点や厚さ寸法などを変更するだけで、電池缶1の膨張を抑えることができる。
したがって、電池缶1内にバネなどを設けなくても済む分だけ電池容量の減少を防ぐことができ、溶接点や端子板26・27の厚さなどを設計変更するだけの簡単な手法で、電池缶1の膨張を確実に抑えることができて、電池缶1の膨張による電池缶1内で正極材7と負極材9との間隔が広がることを確実に防止できる。
(実施例1) 図面は、本発明に係るコイン形電池の実施例1を示す。電池缶1は、図2に示すごとく、電池要素2を収容する正極缶5と、ガスケット3と共に正極缶5の開口内縁にかしめ固定されて正極缶5を密封する負極缶6とで構成されていて、全体が扁平なコイン形に形成されている。電池要素2は、円盤形状の正極材7と、円盤形状の負極材9と、両者間に介装されるセパレータ10とを含む。電池缶1内には、非水電解液が充填される。電池缶1は、外径寸法L1(図1参照)を24mm、厚さ寸法を5mmとした。
正極材7は、平均粒径が55μmの二酸化マンガンと、導電助剤としての人造黒鉛とを含んでおり、バインダーとしてのテトラフルオロエチレンを用いる。これらの混合比率は、二酸化マンガンが91.7重量%、人造黒鉛が7.6重量%、テトラフルオロエチレンが0.7重量%である。正極材7の成形用の金型内にステンレス鋼製の円筒形台座D(図3)を装填し、二酸化マンガンと人造黒鉛とテトラフルオロエチレンとを前記金型内に注入して加圧することにより、前記台座D内に充填された状態の正極材7が成形される。成形後の正極材7は、直径寸法を19mm、厚さ寸法を3mmとした。
負極材9は、厚さ寸法が1.0mmの金属リチウム板と、厚さ寸法が6μmのアルミニウム箔とを積層することで形成した。負極材9の直径寸法は19mmである。セパレータ10は、微孔性のポリプロピレンフィルムと、ポリプロピレン製の不織布とを積層することで形成した。
電解液の溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)と、1,2−ジメトキシエタン(DME)とを1:1(体積比)で、溶質として0.5M過塩素酸リチウム(LiClO4 )を溶解させたものを使用した。
図3に示すごとく、電池組み立て前のブランク状態における正極缶5は、円形の底面壁11と、底面壁11の外周から上向きに折り曲げた周側壁12とを含む深い丸皿状を呈している。負極缶6は、円形の上面壁13と、上面壁13の外周から下向きに折り曲げた周側壁15とを含む浅い丸皿状を呈している。
これら正極缶5および負極缶6は、SUS430のステンレス鋼で形成されており、電池外面側がニッケルでメッキされている。正極缶5および負極缶6の厚さ寸法はそれぞれ0.2mmとした。
負極缶6の周側壁15は、上面壁13の外周から斜め下方向に段状に張り出す拡径部16と、拡径部16に連続して垂直方向に伸びるストレート部17と、ストレート部17に連続して上向きに折り返されたシール部19とを備える。
ガスケット3は、弾性と絶縁性とに優れたポリフェニレンサルファイド樹脂を素材にして、リング状に形成した射出成形品である。ガスケット3は、図3に示すごとく、電池要素2の受け入れを許す中央開口部20を有する円形リング状のベース部21と、該ベース部21の外縁部から上向きに張り出し形成されて、正極缶5の周側壁12および負極缶6の周側壁15に挟持される外筒壁22と、ベース部21の内縁部から上向きに張り出し形成されて、負極缶6のストレート部17の内面に当接する内筒壁23とを備える。同心状に形成した内外筒壁23・22間には、負極缶6の周側壁15の下端部を受け入れる円環状の溝25が形成されている。ガスケット3は、弾性と絶縁性とに優れたプラスチック材であればよく、ポリプロピレン樹脂などであってもよい。
負極缶6の上面壁13の外側上面には、図2に示すごとく、ステンレス鋼製の帯板状の負極端子板26をスポット溶接で固定し、正極缶5の底面壁11の外側下面には、ステンレス鋼製の帯板状の正極端子板27をスポット溶接で固定する。負極端子板26は、負極缶6の上面壁13の上面から横外側方に向けて水平に、かつ直線状に延びている。正極端子板27は、正極缶5の底面壁11の下面から負極端子板26と同一方向に水平に、かつ直線状に延びている。
図1において負極端子板26は、一方のスポット溶接点P1から端辺(左側)までの寸法を3mm程度に設定し、同様に正極端子板27は、一方のスポット溶接点から端辺までの寸法を3mm程度に設定した。
負極端子板26および正極端子板27を形成するステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼、例えばSUS304を挙げることができる。負極端子板26および正極端子板27の表面にはニッケルメッキを施す。SUS304のステンレス鋼は、クロムが18重量%、ニッケルが8重量%の含有率で含まれている。負極端子板26および正極端子板27は、幅寸法を3mm、厚さ寸法を0.2mmに設定した。
負極端子板26に対するスポット溶接は2点で行い、これら溶接点P1・P2は、一方の溶接点P1が負極缶6の上面壁13の中心点Oを挟んで他方の溶接点P2の反対側に設けた。詳しくは、溶接点P1・P2は、負極缶6の上面壁13の中心点Oを介して点対称位置に設け、各溶接点P1・P2は、前記中心点Oからそれぞれ6mmだけ離れている。両溶接点P1・P2間の距離L2は12mmとしたが、これは電池缶1の外径寸法L1(24mm)の50%に相当する。
同様に、正極端子板27に対するスポット溶接は2点で行い、これら溶接点は、正極缶5の底面壁11の中心点を介して点対称位置にそれぞれ設け、底面壁11の中心点に対して6mmずつ離れた点対称位置にそれぞれ設定した。
電池の組み立てに際しては、正極缶5の内部に正極材7などの電池要素2を入れ、正極缶5内に電解液を注入したうえで、負極缶6の周側壁15にこれの下方からガスケット3を装着して、正極缶5に負極缶6を嵌合する。次いで、正極缶5の周側壁12の開口上端部12aを内方に向けてかしめ加工する。これにて正極缶5の周側壁12と負極缶6の周側壁15の拡径部16、ストレート部17、シール部19との間において、ガスケット3を圧縮状態に加圧し、正極缶5を密封状に封口する。次に、負極缶6の上面壁13に負極端子板26をスポット溶接し、正極缶5の底面壁11に正極端子板27をスポット溶接する。
高温下での使用で電池内にガスが発生すると、その圧力で電池が膨張しようとする。つまり、負極缶6の上面壁13の中央部分は上方向に膨張し、正極缶5の底面壁11の中央部分は下方向に膨張しようとする。この膨張に伴って負極端子板26および正極端子板27は、それぞれスポット溶接の溶接点P1・P2間で引っ張られるが、端子板26・27の引っ張り強度は、正極缶5の底面壁11および負極缶6の上面壁13よりもそれぞれ大きい。このため、正極缶5の底面壁11および負極缶6の上面壁13の膨張が、負極端子板26および正極端子板27によってよく抑制できた。
(実施例2) 実施例2では、負極端子板26および正極端子板27の厚さ寸法を0.25mmに設定した。その他の点は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
(実施例3) 実施例3では、負極端子板26および正極端子板27の厚さ寸法を0.3mmに設定した。その他の点は、実施例1と同じにした。
(実施例4) 実施例4では、負極端子板26および正極端子板27の厚さ寸法を0.5mmに設定した。その他の点は、実施例1と同じにした。
(比較例1) 比較例1では、負極端子板26および正極端子板27を省略した。その他の点は、実施例1と同じにした。
(比較例2) 比較例2では、負極端子板26および正極端子板27の厚さ寸法を0.1mmに設定した。その他の点は、実施例1と同じにした。
(比較例3) 比較例2では、負極端子板26および正極端子板27の厚さ寸法を1mmに設定した。その他の点は、実施例1と同じにした。
本発明の実施例1〜4に係る電池と、比較例1〜3の電池とをそれぞれ125℃で貯蔵して、該貯蔵開始から5時間後、10時間後、25時間後および50時間後における電池の膨れ量をそれぞれ測定した。表1は、その結果を示す。なお、貯蔵開始時の各電池の厚さ寸法は5.0mmである。
Figure 0004942008
表1に示すごとく、実施例1〜4では、50時間後でも電池の膨れ量は0.11〜0.27mmとあまり膨張しておらず、正負の端子板26・27を配していない比較例1の1/2程度以下になっていた。
比較例2では、50時間後の電池の膨れ量が0.49mmもあって比較例1とあまり変わらない。これは、正負の端子板26・27の厚さ寸法が0.1mm程度では、負極缶6の上面壁13および正極缶5の底面壁11の膨張を抑え切れないためと考えられる。
比較例3では、50時間後でも電池の膨れ量が0.09mmしかなく、実施例3・4と同程度である。つまり、正負の端子板26・27の厚さ寸法は、0.5mm程度もあれば電池の膨張を十分に抑えることができることがわかる。
負極端子板26および正極端子板27に対するスポット溶接の溶接点は3点以上であってもよく、3〜6点がより好ましい。この場合でも、各溶接点は、負極缶6の上面壁13および正極缶5の底面壁11の中心点Oを挟む両側に設定することになる。また、最も離れているスポット溶接の溶接点間の距離は、電池缶1の外径寸法の20〜50%の範囲内に設定すればよい。
正負の端子板26・27に対するスポット溶接の強度は、正負の端子板26・27の溶接位置で直角に折り曲げて、負極缶6の上面壁13および正極缶5の底面壁11と垂直に10mm/分で引っ張り試験を行った場合に、30N以上であることが好ましく、60N以上であることがより好ましい。
本発明に係るコイン形電池は、円盤形状に限られず、扁平な四角形や三角形などであってもよい。正負の端子板26・27を形成するステンレス鋼としては、SUS430などを用いることができる。なお、SUS430のステンレス鋼は、クロムが18重量%の含有率で含まれており、ニッケルは含まれていない。
コイン形電池の上面図 コイン形電池の縦断面図 コイン形電池の分解図
符号の説明
1 電池缶
2 電池要素
5 正極缶
6 負極缶
11 正極缶の底面壁
13 負極缶の上面壁
26 負極端子板
27 正極端子板

Claims (4)

  1. 電池缶の上面壁および底面壁の少なくとも一方には、帯板状の端子板が少なくとも2点でスポット溶接されており、
    前記端子板は、そのスポット溶接に係る溶接点間の引っ張り強度が前記電池缶の前記上面壁および前記底面壁の引っ張り強度以上に設定されており、
    前記スポット溶接のうちの少なくとも2点の溶接点は、一方の溶接点が前記電池缶の前記上面壁もしくは前記正極缶の前記底面壁の中心点を挟んで他方の溶接点の反対側に配されており、
    前記スポット溶接のうちの少なくとも2点の溶接点が、前記電池缶の前記上面壁もしくは前記底面壁の中心点を介して点対称位置に配されているコイン形電池。
  2. 前記端子板が、オーステナイト系ステンレス鋼で形成されている請求項1記載のコイン形電池。
  3. 前記端子板の厚さ寸法が、0.2〜0.6mmに設定されている請求項2記載のコイン形電池。
  4. 前記スポット溶接のうち、最も離れているスポット溶接の溶接点間の距離が、前記電池缶の外径寸法の20〜50%に寸法設定されている請求項3記載のコイン形電池
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