JP4940263B2 - 球後麻酔用麻酔針 - Google Patents

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Description

本発明は、眼科手術の際における球後麻酔を行う際に好適な球後麻酔用麻酔針に関するものである。
近年、眼科手術を行う際に使用される麻酔法は、手術の内容に応じて様々な手法が提案され、また、こうした手法に応じて様々な麻酔針が提案されている。そして、こうした様々な麻酔の手法の中においても、特に、眼球の後ろの脂肪組織に麻酔薬を注入することにより神経節をブロックする球後麻酔は、眼窩内のすべての神経を麻酔でき、知覚と眼球運動をほぼ完全に抑制できることから、その有効性は高い。このため、この球後麻酔は、従来白内障,緑内障,硝子体手術などの内眼手術と、網膜剥離手術,眼球摘出手術などに用いられ、また、レーザー網膜光凝固時や絶対緑内障眼の痛みを和らげる場合にも用いられている。
この球後麻酔に用いられる麻酔針は、先端を眼窩下縁の外側皮膚に刺し込むものであり、直線状に成形された直針や先端側が湾曲した曲針が使用されている(曲針に関しては、特許文献1参照)。
登録実用新案第3055504号公報
しかしながら、上述した特許文献1に開示された麻酔針ないし球後麻酔法は、麻酔針の先端を眼窩下縁の外側皮膚に刺し込む必要があるため、麻酔施行時における患者の苦痛と恐怖感は激しい。また、針先が先鋭であるために、麻酔針を所定位置にまで到達させる過程において各部位を損傷させ、この結果、合併症(眼球穿孔、視神経損傷、中心動脈閉塞、脈絡膜循環障害、視神経鞘後注入による視力視野障害、くも膜下誤注入による痙攣や呼吸停止)を引き起こす危険性がある。
そこで、本発明は、上述した球後麻酔用麻酔針が有する課題を解決するために提案されたものであって、患者への苦痛や恐怖感を緩和するばかりか、合併症を引き起こす可能性を低下することができる新規な球後麻酔用麻酔針を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記の課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、 中空状に成形された外筒部と、この外筒部の基端側に形成され使用者によって外周が把持される一方の把持部と、を有する外筒部材と、上記外筒部内に挿通され、該外筒部の全長よりも長尺に成形されてなる中空状の麻酔針本体と、この麻酔針本体の基端に形成され使用者によって外周が把持されるとともに、上記麻酔針本体内に麻酔薬を注入する注射器の先端側を保持する他方の把持部と、を有してなる麻酔針部材と、を備え、上記外筒部には、円弧状に湾曲してなる一方の湾曲部が形成されてなるか、或いは該外筒部は、全体が湾曲されてなるとともに、先端には非先鋭面が形成されてなり、上記麻酔針本体は、上記一方の湾曲部又は上記外筒部の形状に対応して湾曲可能な素材により成形され該一方の湾曲部又は外筒部の形状に倣って湾曲可能とされてなることを特徴とするものである。
この第1の発明に係る球後麻酔用麻酔針によれば、先ず点眼麻酔を施した後に、結膜をやや切開するとともに、該結膜下に形成されたテノン▲のう▼を切開することにより露出した強膜と、上記テノン▲のう▼との間の空間に、上記一方の把持部を把持しながら、上記外筒部の先端を挿入する。なお、上記結膜とテノン▲のう▼は点眼麻酔薬にて容易に麻酔できるため、該テノン▲のう▼を切開して上記外筒部の先端を挿入する操作は、患者に対してほぼ無痛で行うことができる。そしてこの際、この外筒部の先端には非先鋭面が形成されてなることから、強膜を損傷することがない。さらに、上記外筒部には、円弧状に湾曲してなる一方の湾曲部が形成されてなるか、或いは該外筒部全体が湾曲されてなることから、眼球の外側に挿入された外筒部の先端は、該湾曲部又は該外筒部全体の形状によりやがて眼球の背後又はその近傍に到達する。このように、外筒部の先端を眼球の背後又はその近傍に到達させる作業が終了すると、上記麻酔針部材を構成する他方の把持部を把持しながら、上記麻酔針本体の先端を上記外筒部の先端から突出させるとともに、他方の把持部には麻酔薬が充填された注射器の先端を保持させ、該注射器のピストンを押圧操作し前進させることにより、上記麻酔針本体の先端から目的の部位に麻酔液を注入する。
したがって、この球後麻酔用麻酔針によれば、これまでの球後麻酔において使用されていた麻酔針のように、先端を眼窩下縁の外側皮膚に刺し込む必要性はないことから、患者への苦痛や恐怖感を相当程度緩和することが可能である。換言すれば、この第1の発明に係る球後麻酔用麻酔針では、上記外筒部には一方の湾曲部が形成されてなるか、或いは該外筒部全体が湾曲されてなることから、外筒部を挿入する際においては、眼球の外周から容易に眼球の背後(球後)又はその近傍に回り込ませることが可能であるとともに、外筒部の先端は非先鋭面が形成されていることから、外筒部を球後又はその近傍に挿通する作業中において、眼球穿孔、視神経損傷等の合併症を引き起こす危険性も相当程度緩和することができる。
また、第の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記外筒部材を構成する外筒部の基端は、前記一方の把持部の内側に位置してなるとともに、前記他方の把持部の先端面には、上記外筒部の基端が挿入される凹部が形成されてなることを特徴とするものである。
この第の発明に係る球後麻酔用麻酔針では、前記外筒部の基端は、前記一方の把持部の内側に位置してなるとともに、前記他方の把持部の先端面には、上記外筒部の基端が挿入される凹部が形成されてなることから、麻酔針本体の先端を上記外筒部の先端から所定長さ突出させると、上記凹部内に外筒部の基端が挿入され当接する。したがって、上記麻酔針本体の外形が外筒部の内径よりも相当短い場合であっても、該麻酔針本体がぐらつくことなく位置決めすることができ、安定した操作が可能となる。
また、第の発明(請求項記載の発明)は、上記第1又は第2の発明において、前記外筒部材を構成する一方の把持部の外側には、前記外筒部に形成された一方の湾曲部の湾曲方向又は該外筒部全体の湾曲方向と同じ方向を示す方向指示部が形成されてなることを特徴とするものである。
この第の発明に係る球後麻酔用麻酔針では、前記外筒部材を構成する一方の把持部の外側には、外筒部に形成された一方の湾曲部の湾曲方向又は該外筒部全体の湾曲方向と同じ方向を示す方向指示部が形成されていることから、患者の瞼と眼球との間に挿入された外筒部の先端がどの方向に向いているのかを使用者は容易に外部から把握することができる。したがって、この第の発明によれば、より一層患者に苦痛を与えることなく、且つ、眼球穿孔、視神経損傷等の合併症を引き起こす危険性も緩和することができる。なお、この発明を構成する上記方向指示部は、少なくとも外筒部に形成された一方の湾曲部又は該外筒部全体の湾曲方向と同じ方向を示すことが可能なものであれば良く、後述する実施の形態を構成する突出部のような外形形状として把握される性質のものばかりではなく、例えば、一方の把持部の外周面に貼付されたシールや、該一方の把持部に切削され又は着色された線状若しくは点状のものであっても良い。
第1の発明(請求項1記載の発明)では、先端を眼窩下縁の外側皮膚に刺し込む必要性はないことから、患者への苦痛や恐怖感を相当程度緩和することが可能である。換言すれば、この第1の発明に係る球後麻酔用麻酔針では、前記外筒部には一方の湾曲部が形成されてなるか、或いは該外筒部全体が湾曲されてなることから、外筒部を挿入する際においては、眼球の外周から容易に眼球の背後(球後)又はその近傍に回り込ませることが可能であるとともに、外筒部の先端は非先鋭面が形成されていることから、外筒部を球後又はその近傍に挿通する作業中において、眼球穿孔、視神経損傷等の合併症を引き起こす危険性も緩和することができる。
また、第の発明(請求項3記載の発明)では、前記外筒部材を構成する外筒部の基端は、前記一方の把持部の内側に位置してなるとともに、前記他方の把持部の先端面には、上記外筒部の基端が挿入される凹部が形成されてなることから、麻酔針本体の先端を上記外筒部の先端から所定長さ突出させると、上記凹部内に外筒部の基端が挿入され当接する。したがって、上記麻酔針本体の外形が外筒部の内径よりも相当短い場合であっても、該麻酔針本体がぐらつくことなく位置決めすることができ、安定した操作が可能となる。この結果、麻酔針本体の先端が所定の球後位置に到達した後に行われる作業、すなわち注射器のピストンを該注射器の先端側に押圧操作する作業は、上記一方の把持部のみを手指で把持した状態で安定的に行うことができる。したがって、この球後麻酔用麻酔針によれば、作業性を向上することができ、この発明に係る球後麻酔用麻酔針を用いた球後麻酔法を、熟練を要することなく施術することができる。
また、第の発明(請求項記載の発明)では、前記外筒部材を構成する一方の把持部の外側には、外筒部に形成された一方の湾曲部又は該外筒部全体の湾曲方向と同じ方向を示す方向指示部が形成されていることから、患者の瞼と眼球との間に挿入された外筒部の先端がどの方向に向いているのかを使用者は容易に外部から把握することができる。したがって、この第の発明によれば、より一層患者に苦痛を与えることなく、且つ、眼球穿孔、視神経損傷等の合併症を引き起こす危険性も緩和することができる。
本発明の実施の形態に係る球後麻酔用麻酔針の分解斜視図である。 図1に示す球後麻酔用麻酔針の外観斜視図である。 図1に示す球後麻酔用麻酔針に注射器を装着した際における断面図である。 外筒部材の平面図である。 図1に示す外筒部材の外筒部を瞼と眼球との間への挿入を完了した状態を模式的に示す模式図である。 図5に示す状態から麻酔針部材を外筒部材に装着した後の状態を模式的に示す模式図である。 麻酔針本体の先端から麻酔薬を吐出している状態を模式的に示す模式図である。
以下、本発明を実施するための実施の形態に係る球後麻酔用麻酔針について、図面を参照しながら詳細に説明する。
この球後麻酔用麻酔針1は、図1に示すように、外筒部材2と、この外筒部材2の基端側に装着される麻酔針部材3とから構成されている。上記外筒部材2は、金属材料により成形されてなるものであり、中空状に成形された外筒部2aと、この外筒部2aの基端側に固定された一方の把持部2bとから構成されている。上記外筒部2aは、図3に示すように、中空状に成形されてなるものであり、先端には、外筒部の長さ方向と略直交する非先鋭面2cが形成されている。この外筒部材2を構成する外筒部2aの先端面は、上記非先鋭面2cとされてなることから、後述するように、患者の瞼と眼球との間に挿入した場合であっても、眼球の外周に形成された強膜を不用意に損傷することを防止することができる。また、上記一方の把持部2bを構成する上記外筒部2aは、基端側は直線状となされ、中途部から先端には円弧状に湾曲された一方の湾曲部2dが形成されている。なお、この一方の湾曲部2dの曲率は、眼球表面の曲率より大きな曲率とされている。
また、上記一方の把持部2bは、この球後麻酔用麻酔針1を使用する医師が施術中に指で外周面を把持する部位であり、図1又は図3に示すように、全体形状は、ほぼロート状に成形されてなり、上記外筒部2aの先端方向とは逆方向は、円形状の開口2eとなされ、内部は空間が形成されている。また、この一方の把持部2bの外周には、図3に示すように、円筒状に成形された円周面2fと、この円筒面2fの先端側に形成され使用者(医師)により把持される把持面(符号は省略する。)と、この把持面の先端に形成され徐々に縮径された縮径面2gとが形成されている。なお、上記縮径面2gが形成された部位の中心には、上記外筒部2aの基端側中途部が挿通された挿通穴(符号は省略する。)が形成されている。そして、上記把持面は、使用者(医師)がこの一方の把持部2bを把持した際に位置ずれが生じないよう凹凸が形成されている。一方、上記円周面2fの基端にはフランジ部2hが形成されている。そしてさらに、上記一方の把持部2bには、図3に示すように、外周面から該一方の把持部2bの中心方向(一方の把持部2bの軸方向とは直交する方向)であって、上記一方の湾曲部2dの湾曲方向と同じ方向には、軸固定穴2iが穿設され、この軸固定穴2iには、本発明を構成する方向指示部としての軸体4が固定されている。この軸体4は、金属により円柱状に成形されてなるものであり、図3又は図4に示すように、先端は上記一方の把持部2dの外周面(把持面)よりも外側に突出してなり、基端は、後述するように、上記外筒部2aの外周に固定又は当接している。
そして、上述した構成に係る一方の把持部2bに対して、上記外筒部2aは、図3に示すように、直線状に成形された基端側の中途部が、上記縮径面2gが形成された部位の中心において挿通・固定されており、該外筒部2aの基端は、上記一方の把持部2bの基端面(符号は省略する。)とほぼ面一とされている。この実施の形態に係る球後麻酔用麻酔針1では、上記外筒部2aの外径寸法は、後述する注射筒6の先端に形成された上記吐出部6aの内径寸法より僅かに短い径とされているとともに、該外筒部2aの基端の位置を上述した位置とすることにより、後述するように、外筒部2aの先端を瞼と眼球との間に挿入する際に、麻酔薬が充填されていない注射器5を外筒部材2を構成する一方の把持部2bに装着することがきるようにされている。そして、このように上記一方の把持部2b内に基端側が位置する上記外筒部2aの外周に、上記軸体4の基端が固定又は当接されている。したがって、医師は、後述するように、この球後麻酔用麻酔針1を構成する外筒部材2の先端を瞼と眼球との間に挿入し、上記一方の湾曲部2dの先端側が視認できない状態となった場合であっても、上記方向指示部としての軸体4の位置を視認(又は顕微鏡により確認)することによって、上記一方の湾曲部2dの先端側の方向を把握することが可能となる。
また、上記麻酔針部材3は、上記外筒部材2と同じ金属材料により成形されてなるものであって、図1に示すように、麻酔針本体3aと、この麻酔針本体3の基端に固定された他方の把持部3bとから構成されている。上記麻酔針本体3aは、上記外筒部2a内に挿通されるものであって、図3に示すように、内部は、麻酔薬が流通するよう中空状に成形されている。そして、この麻酔針本体3aの先端は、上記麻酔薬が放出される部位であり、球後位置における所定部位を突き刺すことが可能となるよう先鋭状とされている。また、この麻酔針本体3aは、上記外筒部材2を構成する外筒部2aの全長よりも長尺な全長を有してなるとともに、該外筒部2a内に先端側から挿入されることにより、上記一方の湾曲部2dの形状に倣って湾曲可能とされ、さらに、該麻酔針本体3aの先端から中途部に亘っては、上記一方の湾曲部2dの曲率とほぼ同じ曲率にて湾曲した他方の湾曲部3cが形成されている。なお、上記一方の湾曲部2dと他方の湾曲部3cは、何れも人の眼球表面の曲率よりも大きな曲率とされている。
また、上記麻酔針本体3aの基端に形成された他方の把持部3bは、医師がこの麻酔針部材3を操作する際に指で把持する部位であるとともに、図3に示すように、ほぼロート状に成形されてなるものであって、内部には、後述する注射器5を構成する注射筒6の先端(吐出部6a)が挿入され保持される挿入空間(符号は省略する。)が形成されている。また、この他方の把持部3bには、フランジ部3dが形成されてなるとともに、中途部には医師が指で把持する3つのリング部3e・・・3gが形成され、これら3つのリング部3e・・・3gの外周面には凹凸(符号は省略する。)が形成されている。また、上記3つのリング部3e・・・3gが形成された部位から先端側は徐々に径が縮径された縮径部3hが形成されてなり、この縮径部3hの中心には、上記挿入空間と連通してなるとともに上記麻酔針本体3aの基端側が挿入・固定された挿入穴(符号は省略する。)が形成されている。そして、この実施の形態では、上記縮径部3hの先端面(他方の把持部3bの先端面)には、図3に示すように、凹部3iが形成されている。この凹部3iは、上記外筒部2aの基端が挿入される部位であり、この凹部3iの中心には上記麻酔針本体3aが固定されている。
なお、上記注射器5は、図1又は図2に示すように、内部に図示しない麻酔薬が収容され、先端には該麻酔薬が吐出される吐出部6aが形成された注射筒6と、この注射筒6の基端から該注射筒6内に先端から挿入されてなるピストン7とから概略構成されてなるものであり、上記ピストン7が注射筒6の基端側から先端側に押圧操作されることにより、該注射筒6の内部に収容された麻酔薬が、該注射筒6の先端に形成された上記吐出部6aから吐出されるものである。なお、上記注射筒6の外周には、内部に充填される図示しない麻酔薬の量を示すメモリ6bが刻設されており、一方、上記ピストン7の基端には、該ピストン7を前方に押圧操作する際に使用されるフランジ7aが形成され、先端側外周には、図示しないOリングが配置されている。
以下、上述した本実施の形態に係る球後麻酔用麻酔針1を使用して、患者に対し球後麻酔を施術する方法について説明しながら、この球後麻酔用麻酔針1の作用効果を説明する。
この球後麻酔用麻酔針1を使用して球後麻酔を施術する際には、予め患者に点眼麻酔を施す。こうした点眼薬により眼球の周囲に形成された結膜やテノン▲のう▼が麻痺する。こうした点眼薬を施す作業が終了すると、次いで、図示しないメスを使用し、上記結膜をやや切開するとともに、該結膜下に形成されたテノン▲のう▼を切開する。言うまでもなく、こうした切開においては上記点眼薬によりこれらの部位は麻痺していることから、患者は苦痛を伴わない。なお、上記切開する部位、すなわち後述する外筒部2aを挿入する位置は、視神経が存在する鼻側とは反対方向であってやや下側の部位とすることが好ましい。そして、こうした作業が終了すると、次いで、上記外筒部材2を構成する一方の把持部2bを指で把持しながら、上記テノン▲のう▼と強膜との間に上記外筒部2aの先端を挿入する。なお、この球後麻酔用麻酔針1を使用して麻酔を施す際には、顕微鏡を用いて行う。また、上述したように、外筒部2aを挿入する際には、医師の誤操作を防止するために、麻酔薬が充填されていない上記注射器5の吐出部6a内に外筒部2aの基端側を挿入させることにより外筒部材2と注射器5とを一体化して行うこともできる。図5に示す(a)及び(b)は、それぞれ上記外筒部材2の挿入作業を完了した状態を側面から示すものである。この際、この外筒部2aの先端に形成された非先鋭面2cは、鈍角面であることから、誤って強膜を突き刺したり、損傷を与えたりする危険性は極め少ない。さらに、上記テノン▲のう▼と強膜との間に上記外筒部2aの先端を挿入する際、上記外筒部2aには一方の湾曲部2dが形成されており、直線状に成形されているものではなく、また、該一方の湾曲部2dの曲率は眼球Eの表面の曲率より大きな曲率とされていることから、従来のように、眼窩下縁の外側皮膚に刺し込むことなく、上記テノン▲のう▼と強膜との間から挿入でき、極めて容易に球後位置まで挿入することができる。さらにまた、こうした作業を行う際、上記外筒部2aの一方の湾曲部2dが上記テノン▲のう▼と強膜との間に挿入され、医師がこの一方の湾曲部2dを視認(又は顕微鏡で確認)不能な状態となった場合であっても、上記一方の把持部2bの外周には、一方の湾曲部2dの湾曲方向と同じ方向に突出した軸体4が形成されていることから、一方の湾曲部2dの先端側がどの方向に向いているかを、顕微鏡を介して確認でき、またそれを確認しながら操作することができる。特に、この球後麻酔を行う際には、上述したように視神経が存在する部位を避けて行うことが重要であるとともに、上記外筒部2aの挿入にあたっては、該外筒部2aの方向性が後に該外筒部2aから突出される麻酔針本体3aの方向性を決定付ける要因となるため、上記一方の湾曲部2dの方向がどの方向を向いているかは極めて重要であるところ、医師は、上記軸体4の方向を一方の湾曲部2dの湾曲方向として(顕微鏡を介して)確認しながら行うことができることから、麻酔薬を施すことによる患者への悪影響を極めて有効に防止することが可能となる。
そして、図5に示すように、上記外筒部2aの先端を所定の(目標とされる)球後位置近傍まで到達させる作業が終了すると、次いで、左指で外筒部材2の一方の把持部2bを把持したまま、(注射器5が外筒部材2に装着されている場合は、その注射器5を右指で取り外した上で)上記麻酔針部材3を構成する他方の把持部3bを右指で把持し、該麻酔針部材3を構成する麻酔針本体3aの先端を一方の把持部2bに形成された開口2eから挿入する。なお、図示することは省略するが、こうした麻酔針部材3には、予め内部に麻酔薬が充填された注射器5を該麻酔針部材3に装着しておくことが、その後の操作の簡便性と誤操作を防止する観点から好ましい。こうした麻酔針本体3aの挿入により、該麻酔針本体3aは、上記一方の湾曲部2dの形状に倣いながら変形し、やがて上記外筒部材2の先端から突出するとともに、さらに該麻酔針部材3全体を先端側に挿入することにより、目標とする球後位置まで麻酔針本体3aの先端を到達させることができる。図6は、球後位置まで麻酔針本体3aの先端を到達させた状態を示すものであり、この状態においては、外筒部2aの先端は、上述したように、既に球後位置に到達していることからテノン▲のう▼や強膜に損傷を与えることがない。そして、こうした作業は、前述したように予め点眼麻酔を施していることから、患者には殆ど無痛の状態で完了することができる。なお、このように、球後位置まで麻酔針本体3aの先端を到達させた際、上記麻酔針部材3の先端面に形成された凹部3i内には、上記外筒部材2を構成する外筒部2aの基端が嵌り込むことから、該外筒部材3と麻酔針部材3とは極めて安定した状態で相互に連結される。
そして、上記目標とする球後位置まで麻酔針本体3aの先端を到達させると、次いで、上記注射器5のピストン7を前方に押圧操作することにより、該注射器5を構成する注射筒6内に充填されていた麻酔薬は、上記吐出部6aから吐出されるとともに、上記他方の把持部3b内から上記麻酔針本体3a内に流入し、その後、図7に示すように、眼球Eの背後に(球後位置に)おいて放出される。こうした作業により、球後麻酔が完了し、この結果、眼窩内のすべての神経を麻酔でき、知覚と眼球運動をほぼ完全に抑制できる。なお、こうした球後麻酔が完了した後においては、上記注射器5を装着したまま外筒部材2から麻酔針部材3を取り外し、その後に、外筒部材2を取り除く。
したがって、この実施の形態に係る球後麻酔用麻酔針1によれば、より一層患者に苦痛を与えることなく、且つ、眼球穿孔、視神経損傷等の合併症を引き起こす危険性も緩和することができる。
なお、上述した実施の形態に係る球後麻酔用麻酔針1では、外筒部2aの先端側が湾曲されてなるものを図示して説明したが、本発明に係る外筒部は、全体が湾曲してなるものであっても良い。また、上記実施の形態に係る球後麻酔用麻酔針1では、本発明を構成する方向指示部として、上記外筒部材2に軸体4を図示して説明したが、本発明を構成する方向指示部は、上記軸体4に限定されるものではなく、上記外筒部2aに形成された一方の湾曲部2dの湾曲方向又は該外筒部2a全体の湾曲方向と同じ方向を示すものであれば、上記一方の把持部2bに貼付されたシールであっても良いし、或いは、該一方の把持部2bに刻設された目印であっても良い。
球後麻酔用麻酔針
2 外筒部材
2a 外筒部
2b 一方の把持部
2c 非先鋭面
2d 一方の湾曲部
3 麻酔針部材
3a 麻酔針本体
3b 他方の把持部
3c 他方の湾曲部
3i 凹部
4 軸体(方向指示部)
5 注射器
7 ピストン

Claims (3)

  1. 中空状に成形された外筒部と、この外筒部の基端側に形成され使用者によって外周が把持される一方の把持部と、を有する外筒部材と、
    上記外筒部内に挿通され、該外筒部の全長よりも長尺に成形されてなる中空状の麻酔針本体と、この麻酔針本体の基端に形成され使用者によって外周が把持されるとともに、上記麻酔針本体内に麻酔薬を注入する注射器の先端側を保持する他方の把持部と、を有してなる麻酔針部材と、を備え、
    上記外筒部には、円弧状に湾曲してなる一方の湾曲部が形成されてなるか、或いは該外筒部は、全体が湾曲されてなるとともに、先端には非先鋭面が形成されてなり、
    上記麻酔針本体は、上記一方の湾曲部又は上記外筒部の形状に対応して湾曲可能な素材により成形され該一方の湾曲部又は外筒部の形状に倣って湾曲可能とされてなることを特徴とする球後麻酔用麻酔針。
  2. 前記外筒部材を構成する外筒部の基端は、前記一方の把持部の内側に位置してなるとともに、前記他方の把持部の先端面には、上記外筒部の基端が挿入される凹部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の球後麻酔用麻酔針。
  3. 前記外筒部材を構成する一方の把持部の外側には、前記外筒部に形成された一方の湾曲部の湾曲方向又は該外筒部全体の湾曲方向と同じ方向を示す方向指示部が形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の球後麻酔用麻酔針。
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