以下、本発明に係るカードコネクタの一実施の形態を図面に基づいて詳述する。図1は本実施形態に装着されるカードを示す平面図である。このカードCは外形が略矩形平板状のメモリカードであり、本実施形態へは矢印a方向に挿入される。このカードCの挿入方向前側の一側部には誤挿入防止用の角落とし部C1が設けられ、挿入方向前側の一表面には複数(図では8本)の外部接続端子C2が挿入方向と直交するカード幅方向に一定のピッチで並設される。また、角落とし部C1の後側には後述する本実施形態のスライド部材を係合させるための切り欠き部C3が設けられる。角落とし部C1と切り欠き部C3によってカードCの一側部に段差が形成されるが、角落とし部C1によって形成される段差C4には挿入方向に対して後退角が付けられる。切り欠き部C3によって形成される2の段差のうち挿入方向後側の段差C5にも挿入方向に対して後退角が付けられる。
図2は本実施形態の構成部品を示す分解状態の斜視図、図3は本実施形態のボディを示す平面図、図4は本実施形態の内部構造を示す平面図、図5は図4の右半部を拡大して示す平面図、図6は本実施形態の外観を示す斜視図である。本実施形態は、金属板のプレス成形品で導電性を有して電子機器とカードCとを電気的に接続する複数(図では8本)のコンタクト1を固定した樹脂成形品で絶縁性を有するボディ10と、このボディ10内の一側(図では右側)に組み付けられ、所謂プッシュ(イン)/プッシュ(アウト)方式のカード排出機構30を構成するスライド部材40、コイルバネ50、係合部材である板バネ60、ハート状のカム溝70、ピン部材であるコ字状のフックピン80と、コンタクト1及びカード排出機構30を内蔵するハウジング90をボディ10とで構成する金属板のプレス成形品で導電性を有するカバー100とで構成される。
ボディ10は、矩形状の底板11と、この底板11の前側縁の右端部,左右側縁,後側縁から立ち上げる前側壁12,左右側壁13,後側壁14を一体に形成し、左側壁12の前端部と前側壁12の左側端部間の開口によってカード挿入口15が形成される。このカード挿入口15にはカードCは、図4に示すように、外部接続端子C2が設けられた表面を下にし、角落とし部C1が設けられた一端部から挿入される。また、前側壁12を立ち上げていない底板11の前端縁に切り欠き部16を設けると共に、この切り欠き部16の後側に所定の間隔をおいて抜き孔17を設け、切り欠き部16と抜き孔17間に残された底板11の一部によって横長な矩形状のコンタクト固定部18が形成される。さらに、コンタクト固定部18より右側にある底板11の内表面の後部にはカム溝70が設けられ、スライド部材60をカード挿抜方向に沿って前後方向に移動案内する浅いガイド溝19を、コンタクト固定部18より右側にある底板11の内表面の前端から後端にわたってカム溝70を避けて設けると共に、コイルバネ50の後端部を保持する円筒状の後ボス部20を、後側壁14の内面右端部から前方に突出して設ける。左右側壁13にはカバー100を係合させるための複数の係合爪21を左右外方に突出して設ける。前側壁12の略左半部外面にはこの部分の厚みをカバー100の略板厚分薄くする切り欠き部22が設けられる。
カム溝70は前側に起点部71を設け、後側に係止部73を設けて、起点部71と係止部73が往路72と復路74で繋がれる。
複数のコンタクト1は、ボディ10のコンタクト固定部18に左右方向(カード幅方向)に一定のピッチで並べられて固定される。各コンタクト1は、コンタクト固定部18に埋設固定されてカード挿抜方向に沿って前後方向に延設される被固定部2と、この被固定部2から後上がり傾斜状に後方に延設されて抜き孔17の上側でボディ10内に突出される上下方向(カード厚み方向)に弾性変位自在な片持ち梁状のバネ部3と、このバネ部3の先端部(自由端部)に設けられる下面が凹、上面が凸になる円弧状の接点部4と、被固定部2から前方に延設されて切り欠き部16内に突出される連設部5と、この連設部5から下向きの段差部6を介してさらに前方に延設されて下面が底板11の外表面と略面一になるよう切り欠き16内に突出される半田付け部7とを一体に形成する。
本実施形態ではインサート成形により複数のコンタクト1をボディ10に固定したが、コンタクト固定部18の内表面に複数のコンタクト固定溝を左右方向に一定のピッチで並べて設けておき、この各コンタクト固定溝に各コンタクト1の被固定部2を圧入することにより、複数のコンタクト1をボディ10に固定してもよい。
スライド部材40は、ガイド溝19内に載置されてカード挿抜方向に沿って前後方向に往復移動自在にボディ10内の右側部に組み込まれる。このスライド部材40は樹脂成形品であり、板バネ60を保持する保持部41と、フックピン80の一端部を支持する支持部42と、コイルバネ70の前端部を支持するバネ座部63を一体に形成する。保持部41は前後方向に長い略直方体状に形成され、支持部42が保持部41の前端部よりやや後側から左側方に突出して形成され、バネ座部43が保持部41の前端部から右側方に突出して形成される。また、下面を各部41,42,43の下面と同一面上に位置させ、スライド部材40の前部左側の角部で各部41,42,43を相互に連結する平板状の第1リブ44と、スライド部材40の後部左側の角部で保持部41と支持部42の上下略中間部を相互に連結する平板状の第2リブ45と、上面を各部41,42,43の上面と同一面上に位置させ、スライド部材40の前部右側の角部で保持部41とバネ座部43を相互に連結する平板状の第3リブ46を一体に形成する。
また、バネ座部43の後側面は後側壁14の内面右端部に対向し、このバネ座部43の後側面に、コイルバネ70の前端部を保持する円筒状の前ボス部47を後ボス部21と同軸線上で後方に突出して設ける。コイルバネ50の後端部を後ボス部21の外側に嵌合し、前端部を前ボス部67の外側に嵌合して、コイルバネ50をボディ10内の右側部で相対する後側壁14とバネ座部43間に組み込み、スライド部材50を常時前方に付勢する。さらに、支持部42の前側面はカード挿入口15に対向し、この支持部42の前側面によってボディ10内に挿入されたカードCの段差C4を受け止め、カードCによってスライド部材50をコイルバネ50の付勢力に抗してカード挿入方向(後方)に押し込むための受け止め部48を形成する。コイルバネ50は金属線材からなる。
本実施形態ではカードCの段差C4に挿入方向に対して後退角を付けるため、この段差C4を受け止めるスライド部材50の受け止め部48は、段差C4に沿うよう支持部42の先端前側の角部を斜めに落とした角落とし面よって形成される。
板バネ60はスライド部材40の保持部41に組み付けられ、スライド部材40と一体に移動する。このスライド部材は金属板のプレス成形品であり、厚み方向を左右方向(カード幅方向)に一致させてカード挿抜方向に沿って前後方向に延設したバネ部61の後側がスライド部材40の保持部41に保持され、バネ部60の前側(自由端側)が保持部41の前端部から前方に突出され、この突出端部に折り曲げで左表面が凸、右表面が凹になるよう略U字状の係合部62を設け、この係合部62をボディ10内に挿入されたカードCの切り欠き部C3に係合させて、カードCとスライド部材40をカード挿抜方向で係合させる。
フックピン80はコ字状に曲げた金属線材からなり、一端部をスライド部材40の支持部42に支持し、他端部をボディ10のカム溝72に挿入し、スライド部材40の支持部42とボディ10のカム溝72間に張り渡し、他端部をカム溝72内でスライド部材40の動きに合わせて移動させる。
上記のようにスライド部材40、コイルバネ50、板バネ60、カム溝70、フックピン80をボディ10内の右側部に組み付けてカード排出機構30を構成する。このカード排出機構30は、カードCがボディ10内に挿入されていない場合、スライド部材40が図4,図5に示すカード排出方向の移動終端位置である初期位置に移動し、フックピン80の他端部がカム溝70の起点部71に位置する。
カバー100は、矩形状の天板101と、この天板101の左右側縁から折り曲げで垂下する左右側板102と、この左右側板102の下縁の前後2箇所から折り曲げで天板101と略平行に左右外方に突出する半田付け部103を一体に形成し、左右側板102にボディ10の係合爪21を嵌め込むための複数の係合孔104を設けると共に、天板101にこの一部を切り起こしてフックピン80を下方に押えるための板バネである押さえ部105を設ける。カバー100が本実施形態の組み立て最終工程でボディ10に上方から被着され、天板101がボディ10の開放上面を覆い、左右側板102が左右側壁13の外面に重ね合わされて、係合孔104に係合爪21が嵌め込まれ、カバー100とボディ10が一体に結合されて、カード挿入口15が前側面の左側に片寄せられて開口されたハウジング90が組み立てられる。また、ハウジング90のカバー100の押さえ部105でフックピン80を下方に押え、フックピン80の一端部をスライド部材40の支持部42に押し込み、他端部をカム溝70内に押し込む。カバー100の半田付け部103は、この下面がボディ10の底板11の外表面と略面一になる状態でハウジング90の四隅から左右外方に突出される。
上記のように構成された本実施形態は、電子機器のプリント配線基板に表面実装されて、各コンタクト1の半田付け部7とカバー100の各半田付け部103が基板に半田付けで固定され、接続された状態で使用される。
本実施形態の動作について図7〜図9を参照して説明する。図7は本実施形態にカードが挿入された場合の挿入初期の状態を示す平面図、図8は本実施形態にカードが所定位置まで押し込まれた状態を示す平面図、図9は本実施形態にカードが装着された状態を示す平面図である。図4に示す状態からカードCをカード挿入口15を通してハウジング90内に挿入すると、カードCの段差C4が板バネ60の係合部62を自由位置から右側に押し退けた後、スライド部材40の受け止め部48に当接し、これと略同時に板バネ60の係合部62が元の自由位置に戻ってカードCの切り欠き部C3に嵌まり込んで係合し、図7に示すように、カードCとスライド部材40が板バネ60を介してカード挿抜方向で係合される。
上記の挿入初期の状態からカードCをハウジング90内の押し込むと、受け止め部48がカードCの段差C4でカード挿入方向(後方)へ押圧され、スライド部材40がコイルバネ50の付勢力に抗してカードCと一体に初期位置からハウジング90内奥部へ押し込まれ、ついには、図8に示すように、カードCはこの挿入側端部が後側壁14の直前に位置する所定位置に押し込まれ、スライド部材50もカード挿入方向の移動終端位置である所定位置まで押し込まれる。
上記の所定位置への押し込み状態で、カードCの押し込み力を解除すると、スライド部材40がコイルバネ50の付勢力により所定位置からカード排出方向(前方)へ押し戻され、これに伴ってカードCも所定位置からカード排出方向へ押し戻される。このスライド部材40の初期位置からの一連の動作により、フックピン80の他端部がカム溝70の起点部71から往路72を通過して係止部73に係止され、スライド部材40が所定位置より少し手前で止まり初期位置に戻らなくなる。これにより、図9に示すように、カードCが装着位置に保持され、カードCの各外部接続端子C2と各コンタクト40の接点部4が接触保持され、本実施形態に装着される。この装着状態において、電子機器とカードCとが各コンタクト40を通じて電気的に接続され、機器側からカードCへの給電や両者の間での信号の送受が行える。
上記の装着状態において、再度カードCの押し込みを行い、カードCと共にスライド部材50を所定位置へ押し込むと、このスライド部材40の動作により、フックピン80の他端部がカム溝70の係止部73から外れて起点部71に復帰可能となり、スライド部材40が初期位置に復帰可能になる。この後、カードCの押し込み力を解除することにより、スライド部材40はコイルバネ50の付勢力により所定位置からカード排出方向へ押し戻されて初期位置へと復帰し、これに伴ってカードCが挿入初期の位置へ排出されて、その排出位置で保持される。この挿入初期の位置まで排出されたカードCは、カード挿入口15からハウジング90の前側に突出している端部を指で摘んで引っ張ることにより、板バネ60の係合部62がカードCの切り欠き部C3から抜け出し、カードCとスライド部材40の係合か解除され、ハウジング90内からカード挿入口15を通して抜き去ることができる。
次に本実施形態のフックピン80とこの一端を支持するスライド部材40の支持部42の構造について図10〜図13を参照して説明する。図10は本実施形態のスライド部材を示す平面図、図11は本実施形態のスライド部材の支持部を示す断面図、図12は本実施形態のフックピンを示す側面図、図13は本実施形態のフックピンをスライド部材に組み付ける作業を示す工程図である。
図10,図11に示すように、スライド部材40の支持部42は、この後部上面を第2リブ部45の上面と同一平面上に位置させるよう前部上面より一段下げる段差42aを設けて、上段側(段差42aより前側にある高背の支持部42)の前側面によってハウジング90内に挿入されたカードCの段差C4を受け止める受け止め部48を形成する。下段側(段差42aより後側にある底背の支持部42)には、フックピン80の一端部81が上方から挿入される上下貫通の垂直な円形の孔部42bを形成し、この孔部42bの直前で立ち上がる段差面に、下側の孔部42aの径内に突出されるピン抜け止め部42cを形成する。このピン抜け止め部42cは、下側の孔部42bとの間に所定の隙間を設けるよう下側の孔部42bから上方に離して形成する。また、孔部42bを真上から見たときの形状が円形の一部を直線でカットしたD形になるよう下側の孔部42bの径内に突出される。さらに、孔部42bは奥側に向かって(上から下に向かって)孔径をフックピン80の一端部の直径から漸次拡径するテーパ孔でなり、この孔部42bの上側開口部(最小径部)にはピン抜け止め部48の突出方向に拡径されたピン挿入口42dを設ける。ピン挿入口42dの直径は孔部42bの下側開口部(最大径部)の直径より大径に形成される。ピン抜け止め部42cは拡径されたピン挿入口42dの直径と略同じ幅に形成される。また、段差面には、ピン抜け止め部42cの両側から略直角に立ち上がり、下側の孔部42bの径方向で相対する一対の挿入ガイド壁42eを形成する。
図12に示すように、フックピン80は、コ字状に曲げた金属線材からなり、孔部42に挿入される一端部81と、前記カム溝70内に挿入される他端部82と、前記一端部81と前記他端部82を平行に繋ぐ中間部83を有し、前記中間部82に対する前記一端部81と前記他端部82の曲げ角度θ1,θ2が直角より大きい角度(鈍角)になるよう、前記中間部83はこの軸方向中央部を両端部より所定寸法h盛り上げるよう曲げる。
フックピン80をスライド部材40に組み付けるには、図13の(A)に示すように、一端部81を一対の挿入ガイド壁42e間にピン抜け止め部42cの突出方向の後方に傾けた状態で位置させて、一端部81の下端を孔部42bのピン挿入口42dに臨ませ、この状態で、中間部83の前部を上方から押圧し、一端部81の孔部42bへの挿入を開始し、図13の(B)から(C)へと挿入を進め、図13の(D)に示すように、一端部81を孔部42bに完全に挿入して支持部40に支させることで完了する。
この際、一端部81がピン挿入口42dを通過した図13の(B)の時点で、一端部81の直線部がピン抜け止め部42cに引っ掛かり、干渉が生じる。ここで、フックピン80をさらに押圧すると、図13の(C)に示すように、一端部81の直線部がピン抜け止め部42cを通過し、干渉がなくなり、その後、図13の(C)に示すように、一端部81が孔部42bに完全に挿入される。このように、一端部81を孔部42bに挿入する際には圧入が必要になる。また、一端部81の左右方向への倒伏が一対の挿入ガイド壁42eによって規制されると共に、中間部83が第2リブ45の後端部に当接支持されるので、フックピン80の横倒を防止して安定した挿入姿勢で一端部81を孔部42bに挿入することができると共に、中間部83の第2リブ45への当接によりこの当接部を支点にフックピン80を回動させながら一端部81を孔部42bに挿入することができる。このため、フックピン80をスライド部材40に組み付け易く、作業性が良い。
スライド部材40に組み付けられたフックピン80は、一端部81の直線部の直ぐ上側の曲がり部にピン抜け止め部42cの下端部が当接するため、このピン抜け止め部42cによって一端部81の上方(抜け方向)への動きが規制され、スライド部材40の支持部42から抜け落ち難くなる。また、中間部83は支持部42に支持された一端部81から第2リブ45の上側で後方に延設され、他端部83がスライド部材40の後端(保持部41の後端)よりさらに後側で垂下される。これら中間部83と他端部81は支持部42に支持された一端部81を中心に左右方向に一体的に揺動することができる。
次に本実施形態の板バネ60とこれを保持するスライド部材40の保持部41の構造について図10,図14〜図16を参照して説明する。図14は本実施形態のスライド部材の保持部を示す断面図、図15は本実施形態の板バネを示す(A)平面図,(B)側面図、図16は本実施形態の板バネをスライド部材に組み付ける作業を示す工程図である。
図15に示すように、板バネ60は、金属板のプレス成形品であり、厚み方向を左右方向(カード幅方向)に一致させてカード挿抜方向に沿って前後方向に延設したバネ部61と、このバネ部61の前端部(自由端部)に折り曲げで設けられた左表面が凸、右表面が凹になる略U字状の係合部62と、バネ部61から後側に延設されて面一に連設された被固定部63を一体に形成する。この被固定部63は、下側縁に切り欠き部64を設け、上側縁から折り曲げで左側方に略直角に突出する押圧部65を設ける。また、被固定部63は支点部66を有し、この支点部66が、被固定部63の先端部67と、この先端部67の端縁と切り欠き部64を設けた下側縁を円弧状に繋ぐ摺接部68と、先端部67の上側縁を一段下げる切り欠き部69を設ける。
図10,図14に示すように、スライド部材40の保持部41は、保持部41の上面に保持部41の前端から後端にわたってスリット状の保持溝41aを設ける。この保持溝41aは、溝深を板バネ60の幅と略同じに形成すると共に、溝幅を板バネ60の被固定部63を挿入する後半部は板バネ60の厚みと略同じに形成し、板バネ60のバネ部61を挿入する前半部は前方に向かって漸次拡大形成してバネ部61の左右方向(厚み方向)の撓み変形を許容する。また、後半部の保持溝41a内にはこの部分の溝底から上向きに突出し、被固定部63に設けた切り欠き部64を嵌合させる突部41bを設ける。さらに、保持溝41aは受け部41cを有し、この受け部41cが、突部41bより奥側(後側)に延設される保持溝41aの先端部(一部)41dと、この先端部41dの上部に溝入り口を閉じるように形成される押さえ部41eを設ける。保持部41の上面には板バネ60の押圧部65を嵌め込む切り欠き部41fが設けられる。
板バネ60をスライド部材40に組み付けるには、図16の(A)に示すように、支点部66を受け部41c内に上方から斜めに挿入し、支点部66の摺接部68を受け部41cの溝底に接触させた状態で、押圧部65を上方から押圧し、板バネ60を支点部66を支点に下方に回動させることにより、図16の(B)(C)に示すように、板バネ60の支点部66に近い部分から遠い部分すなわち被固定部63からバネ部61を漸次保持溝41a内に挿入しながら、被固定部63の切り欠き部64を保持溝41a内の突部41bに嵌合させ、図16の(C)に示すように、板バネ60の被固定部63からバネ部61(ただし、係合部62を形成する前端部は除く)を完全に挿入し、板バネ60の被固定部63を保持部41に固定させることで完了する。この際、支点部66を支点に板バネ60を回動させながら、被固定部63はこの厚みと略同じ溝幅の保持溝41aの後半部に圧入しながら、被固定部63の切り欠き部64を保持溝41a内の突部41bに嵌合させることができると共に、バネ部61はこの厚みより大きい溝幅の保持溝41aの前半部に挿入に挿入することができる。このため、板バネ60をスライド部材40に組み付け易く、作業性が良い。
スライド部材40に組み付けられた板バネ60は、厚み方向を左右方向(カード幅方向)に一致させてカード挿抜方向に沿って前後方向に延設されたバネ部61の後側の被固定部63が保持溝41aの後半部で固定保持され、バネ部61が保持溝41aの前半部の中で左右方向に撓み変形可能に挿入され、バネ部60の前側に設けられた係合部62が保持部41の前端部から前方に突出支持される。
本実施形態の組み立ては、フックピン80の一端部81を支持部42に支持させ、板バネ60を保持部41に保持させ、さらに、コイルバネ50の前端部を前ボス部67の外側に嵌合してバネ座部43に保持させたスライド部材40を、複数のコンタクト1を固定したボディ10内に組み込んだ後、カバー100をボディ10に被着することで完了する。スライド部材40をボディ10内に組み込む際、コイルバネ50の後端部を後ボス部20の外側に嵌合して、コイルバネ50をボディ10内の右側部で相対する後側壁14とバネ座部43間に組み込み、さらに、フックピン80の他端部82をボディ10側に設けられたカム溝70内に挿入するのであるが、図2,図3に示すように、カム溝70の前側に設けた起点部71の前端部を、カム溝70の前側にあり、スライド部材40を載置するガイド溝19に開放しておくことにより、コイルバネ50の後端端の後ボス部20への嵌合方向とフックピン80の他端部82のカム溝70内への挿入方向を一致させることができるので、スライド部材40をボディ10内に組み込み易く、作業性が良い。
また、フックピン80,板バネ60,コイルバネ50はスライド部材40の支持部42,保持部41,バネ座部43に完全に独立して保持させれるので、これらのスライド部材40への組み付け順序を自由に設定することができる。例えば板バネ60を組み付けた後に,フックピン80やコイルバネ50を組み付けることで、フックピン80やコイルバネ50を板バネ60より先に組み付ける場合に比べ、それぞれがスライド部材40に組み付け易く、作業性が良い。
ところで、図2,図4〜図9に示すように、本実施形態では絶縁性(樹脂製)のボディ10とでハウジング1を構成する導電性(金属製)のカバー30が、カードCの挿入ガイド部106を有する。図17は本実施形態のカバーの挿入ガイド部を拡大して示す正面図、図18は本実施形態のカバーの挿入ガイド部を拡大して示す底面図である。
図2,図4〜図9,図17,図18に示すように、挿入ガイド部106は、カバー100の前側縁から折り曲げでボディ10の前側壁12の外面側に垂下される第1折り曲げ片107と、この第1折り曲げ片107の左側縁から折り曲げで前側壁12の側端面に沿って後方に延設されるすなわちカード挿入方向に沿ってハウジング90内に延設される第2折り曲げ片108を設ける。
カバー100のボディ10への被着によって、第1折り曲げ片107及び第2折り曲げ片108が前側壁12の外面側から連続して側端面を覆い、カードCをカード挿入口15を通してハウジング90内に挿入する際のカードCの段差がある右側部の接触衝撃から前側壁12を保護すると共に、第2折り曲げ片108の基端側曲げ部によって、カード挿入口15の右側縁に位置し、カードCを摺接させてカード挿入口15内に案内する金属製で円弧状の挿入ガイド面109を形成し、第2折り曲げ片108の先端部によって、円弧状の挿入ガイド面109から連続してカード挿入口15の右側縁に位置し、カードCを摺接させてハウジング90内に案内する金属製で直線状の挿入ガイド面110を形成する。第1折り曲げ片107はこの外面が前側壁12の外面と同一面上に位置するよう前側壁12に設けられた切り欠き部22で前側壁12の外面に重ね合わされる。
金属製のカバー100の一部で各挿入ガイド面109,110を形成するので、例えば、前側壁12の外面と側端面との角部を斜めに落として前側壁12の側端部(樹脂製のボディ10の一部)で各挿入ガイド面109,110を形成する場合に比べ、前側壁12の厚み(樹脂肉厚)を薄くすることができ、カードコネクタの小型化に貢献することができる。
上記の本実施形態は、カム溝70を有するハウジング90内に収納され、カード挿抜方向に沿って移動自在としたスライド部材40と、一端部81を前記スライド部材40に支持して他端部82は前記カム溝70内を前記スライド部材40の動きに合わせて移動させるコ字状のピン部材80とを備えるカードコネクタにおいて、前記スライド部材40が前記ピン部材80の支持部42を有し、この支持部42が段差42aを設けて、下段側に前記ピン部材80の一端部81が上方から挿入される孔部42bを形成し、段差面には前記孔部42bを真上から見たとき下側の前記孔部42bの径内に突出されるピン抜け止め部42cを形成する構成とした。これにより、ピン部材80の一端部81を孔部42bに挿入する際に若干圧入が必要になり、ピン部材80の一端部81が孔部42bに挿入された時点でピン抜け止め部42cが抜け方向の動きを規制するので、ピン部材80がスライド部材40から抜け落ち難くなり、以降の組み立て作業が行い易く、カードコネクタの生産性を向上することができる。
また、前記支持部42が上段側の側面によって前記ハウジング90内に挿入されたカードCを受け止める構成とした。これにより、スライド部材40の支持部42に生じる荷重(ピン部材80の移動抵抗)をカードCによって受け止めるので、支持部42の耐久性を向上させることができる。また、支持部42の必要強度を下げることができ、支持部42をより小形に形成して、カードコネクタの小型化に貢献することができる。
また、前記孔部42bが奥側に向かって孔径を漸次拡径するテーパ孔でなる構成とし、前記孔部42bが前記ピン抜け止め部42cの突出方向に拡径されたピン挿入口42dを設ける構成とした。これにより、ピン部材80の一端部81をピン抜け止め部42cの突出方向に傾けた状態で孔部42bに挿入することができるので、挿入時にピン部材80の一端部81でピン抜け止め部42cを押し潰し、抜け止め機能を低下させたり、消失させるのを防止することができる。また、ピン抜け止め部42cの突出量をより大きくして、より高い抜け止め性能を得ることができるようになる。
また、前記ピン部材80はコ字状に曲げた金属線材からなり、前記孔部42bに挿入される一端部81と、前記カム溝70内に挿入される他端部82と、前記一端部81と前記他端部82を平行に繋ぐ中間部83を有し、前記中間部83に対する前記一端部81と前記他端部82の曲げ角度θ1,θ2が直角より大きい角度になるよう、前記中間部83を曲げた構成とした。これにより、中間部が一直線状で、この中間部に対する一端部と他端部の曲げ角度が直角になるピン部材に比べ、中間部83に対する一端部81と他端部82の曲げ角度θ1,θ2が大きくなり、また、中間部83と一端部81の間の曲り部の曲率が大きくなってピン抜け止め部42cを同じ突出量で孔部42bからより離反した位置に設けることもできるので、ピン部材80の一端部81が孔部42bにより挿入し易くなる。このため、ピン抜け止め部42cの抜け止め機能の低下や消失をより確実に防止することができる。また、ピン抜け止め部42cの突出量をより大きくして、より高い抜け止め性能を得ることができる。
さらに、前記ハウジング90内に挿入されたカードCと前記スライド部材40をカード挿抜方向で係合させる係合部材60を備え、この係合部材60が、厚み方向をカード挿抜方向と直交するカード幅方向に一致させてカード挿抜方向に延設したバネ部61と、このバネ部61の一端側に形成され、前記カードCの一側部に設けられた切り欠き部C3に離脱自在に係合させる係合部62と、前記バネ部61の他端側に連設された被保持部63を設け、この被保持部63の一側縁に切り欠き部64を形成し、前記スライド部材40が前記係合部材60の保持部41を有し、この保持部41が前記被保持部63を挿入自在とし、かつ、一端側から前記バネ部61を突出自在としたスリット状の保持溝41aを設け、この保持溝41a内に溝底から突出し、前記切り欠き部64に嵌合させる突部41bを形成する構成とした。これにより、係合部材60の被保持部63をスライド部材40の保持部41に固定するにあたり、被固定部63を圧入しないのでスライド部材40に圧入代の必要がなく、また、被保持部63の折り曲げで行う必要もなく、被保持部63の形状が立体化しないので、スライド部材40をより小形に形成して、カードコネクタの小型化に貢献することができる。また、平板状の被保持部63をスリット状の保持溝41aに挿入する簡単な作業で、係合部材60をスライド部材40に組み付けることができ、カードコネクタの生産性を向上させることができる。しかも、簡単な組み付け作業で係合部材60をスライド部材40に確実に固定することができる。
また、前記被保持部63が支点部66を有し、この支点部66が、前記被保持部63の先端部67と、この先端部67の端縁と前記切り欠き部64を形成した一側縁を円弧状に繋ぐ摺接部68を設け、前記保持溝41aが受け部41cを有し、この受け部41cが、前記突部41bより奥側に延設される前記保持溝41aの一部41dと、この保持溝41aの一部41dの上部に形成される押さえ部41eを設け、前記支点部66を前記受け部41cに斜めに挿入し、前記摺接部68を前記受け部41cの溝底に接触させた状態で、前記支点部66を支点に前記係合部材60を前記スライド部材方向に回動させることにより、前記保持溝41a内に前記被保持部63を挿入しながら前記突部41bに前記被保持部63の前記切り欠き部64を嵌合させる構成とした。これにより、係合部材60を支点部66を支点にスライド部材方向に回動させるというより簡単な作業でスライド部材40に組み付けることができ、カードコネクタの生産性をより向上させることができる。
さらに、前記ハウジング90は、複数のコンタクト1が設けられた絶縁性のボディ10と、金属板のプレス成形品であって、前記ボディ10に被着されるカバー100を備え、一側面にカード挿入口15を開口し、カードCを前記カード挿入口15を通して挿抜自在とした箱状に形成され、前記カバー100が、前記カードCの挿入ガイド部106を有し、この挿入ガイド部106は、前記カバー10の側縁から折り曲げで前記スライド部材40に近い側の前記カード挿入口15の一側に垂下される第1折り曲げ片107と、この第1折り曲げ片107の前記カード挿入口側の一側縁から折り曲げでカード挿入方向に沿って前記ハウジング90内に延設される第2折り曲げ片108を設け、この第2折り曲げ片108の基端側曲げ部によって前記カードCを前記カード挿入口15内に案内する金属製で円弧状の挿入ガイド面109を形成し、前記第2折り曲げ片108の先端部によって前記カードCをハウジング90内に案内する金属製で直線状の挿入ガイド面110を形成する構成とした。これにより、各挿入ガイド面109,110をボディ10の一部12で形成する場合に比べ、その一部12の厚み(樹脂肉厚)を薄くすることができ、カードコネクタの小型化に貢献することができる。
以上、本実施形態は本発明に係るカードコネクタの一実施の形態を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。