JP4939582B2 - 低温流体用昇圧ポンプ - Google Patents
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Description
本発明による低温流体用昇圧ポンプは、外周面に複数本のリング溝が形成されたピストンと、前記リング溝内に配置される複数本のピストンリングと、これらピストンおよびピストンリングをその内部に形成されたシリンダ内に収容するシリンダブロックとを備えた低温流体用昇圧ポンプであって、前記ピストンリングが、低温流体を圧縮する前記ピストンの一端面側から前記ピストンの他端面側にかけて、その漏れ抵抗が徐々に大きくなるように構成されており、各ピストンリングにおける漏れ抵抗は、各ピストンリングの半径方向内側に配置されたバックアップリングとの組み合わせで調整されている。
このような低温流体用昇圧ポンプによれば、低温流体を圧縮するピストンの一端面(図9において下側の端面)に最も近いところに位置するピストンリングの漏れ抵抗が最も小さくなり、このピストンリングの一端面(図9において下側の端面)側の圧力P1’と、他端面(図9において上側の端面)側の圧力P2’との差が、従来のものよりも大幅に低減されることとなるので、このピストンリングの外周面をシリンダの内周面に押し付ける面圧を低減させることができ、ピストンリングがシリンダの内壁面に沿って摺動することにより発生する摩擦熱を大幅に低減させることができる。
また、このように、ピストンリングおよびシリンダ(すなわち、シリンダブロック)の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
ポンプ部2は、ピストン3と、ピストンロッド4と、シリンダブロック5とを備えたものである。
ピストン3は、例えば、銅からなる、シリンダブロック5の内部に形成されたシリンダ6内に往復動可能に収容された概略円筒状を呈する部材であり、その一端面(図9において下側の端面)により低温流体(例えば、液体水素、液体窒素、液化炭酸ガス、液化天然ガス、液化プロパンガス等)が圧縮され得るようになっている。
また、ピストン3の外周面(すなわち、シリンダ6の内周面(シリンダ壁)と対向する面)には、周方向に沿って複数本(本実施形態では3本)のリング溝7が形成されているとともに、これらリング溝7内には、ピストンリング8がそれぞれ配置されている。
動力伝達部は、駆動源からの動力によりピストンロッド4を、例えば、2mmのストロークで上下方向に直線的に往復動させるものである(図1中の実線矢印参照)。
また、シリンダ6の上面(図9において上側の面)には、ピストンロッド4が貫通する貫通穴14が設けられているとともに、ピストンロッド4と貫通穴14との間にはシール15が設けられている。
ピストンリング8は、樹脂(例えば、ポリ4フッ化エチレン)からなり、その外周面には、周方向に沿って複数本(本実施形態では3本)の周溝8aが設けられている。これら周溝8aは、例えば、ピストンリング8の高さ方向(図1において上下方向)における中間点から一側(図1において上側)にかけて、所定深さだけ彫り込まれるように形成されている。
なお、図1中の符号8bは、ピストンリング8の合口(段付合口)を示している。
また、このようなピストンリング8を備えた低温流体用昇圧ポンプ1によれば、ピストンリング8およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
さらに、ピストンリング8の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング8の他側(図1において下側)から一側(図1において上側)に向かって、低温流体の一部が通過していくこととなるので、ピストンリング8およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱をさらに抑制することができて、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)をさらに抑制することができ、ポンプ効率をさらに向上させることができる。
さらにまた、ピストンリング8の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング8の他側(図1において下側)から一側(図1において上側)に向かって漏れていく低温流体は、周溝8aが設けられていない狭い部分と、周溝8aが設けられている広い部分とを交互に通過していくことになる。周溝8aが設けられていない狭い部分では、圧力が低下し、速度が増加する。周溝8aが設けられている広い部分では、渦流れが起こり、速度が減少する。これにより、ピストンリング8の外周面とシリンダ6の内周面との間を通過していく低温流体の圧力は、徐々に低下させられることになる。すなわち、ラビリンス(labyrinth)効果を得ることができる。
さらにまた、周溝8aの断面形状、配置、数等を変更するだけで、ピストンリング8の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング8の他側(図1において下側)から一側(図1において上側)に向かって通過していく低温流体の量を容易に調整することができる。
本実施形態におけるピストンリング20は、その外周面に周溝8aが形成された周溝加工部21と、この周溝加工部21が取り付けられることにより一本のピストンリング20を形成するピストンリング本体22とを備えているという点で前述した第1参考実施形態のものと異なる。
なお、前述した第1参考実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、ここではそれらについての説明は省略する。
ピストンリング本体22は、樹脂(例えば、ポリ4フッ化エチレン)からなり、その周縁部には、ピストンリング20の高さ方向における中間点から一側(図2において上側)にかけて、周溝加工部21を受け入れる(取り付ける)ための段部22aが設けられている。
その他の作用効果は、前述した第1参考実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
本実施形態におけるピストンリング30は、周溝8aの代わりに縦溝30aが形成されているという点で前述した第1参考実施形態のものと異なる。
なお、図3においては、ピストンリング30の合口(段付合口)を省略し、図示していない。
また、これら縦溝30aは、周溝8aを加工するよりも容易に加工することができるので、ピストンリング30の生産性をさらに向上させることができて、製造コストの低減化をさらに図ることができる。
さらに、このようなピストンリング30を備えた低温流体用昇圧ポンプ1によれば、ピストンリング30およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
さらにまた、ピストンリング30の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング30の他側(図3において下側)から一側(図3において上側)に向かって、低温流体の(極)一部が通過していくこととなるので、ピストンリング30およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱をさらに抑制することができて、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)をさらに抑制することができ、ポンプ効率をさらに向上させることができる。
さらにまた、縦溝30aの断面形状、配置、数等を変更するだけで、ピストンリング30の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング30の他側(図3において下側)から一側(図3において上側)に向かって通過していく低温流体の量を容易に調整することができる。
本実施形態におけるピストンリング40は、縦溝30aの代わりに斜め溝40aが形成されているという点で前述した第3参考実施形態のものと異なる。
なお、図4においては、ピストンリング40の合口(段付合口)を省略し、図示していない。
また、これら斜め溝40aは、周溝8aを加工するよりも容易に加工することができるので、ピストンリング40の生産性を向上させることができて、製造コストの低減化を図ることができる。
さらに、このようなピストンリング40を備えた低温流体用昇圧ポンプ1によれば、ピストンリング40およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
さらにまた、ピストンリング40の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング40の他側(図4において下側)から一側(図4において上側)に向かって、低温流体の(極)一部が通過していくこととなるので、ピストンリング40およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱をさらに抑制することができて、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)をさらに抑制することができ、ポンプ効率をさらに向上させることができる。
さらにまた、ピストンリング40の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング40の他側から一側に向かって進む低温流体の流れを阻害するように斜め溝40aが設けられているので、ピストンリング40の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング40の他側から一側に向かって進む低温流体の流動抵抗を、縦溝30aのものよりも増加させることができる。
さらにまた、斜め溝40aの断面形状、配置(角度)、数等を変更するだけで、ピストンリング40の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング40の他側(図4において下側)から一側(図4において上側)に向かって通過していく低温流体の量を容易に調整することができる。
本実施形態におけるピストンリング50は、斜め溝40aの代わりに反転溝50aが形成されているという点で前述した第4参考実施形態のものと異なる。
なお、図5においては、ピストンリング50の合口(段付合口)を省略し、図示していない。
また、これら反転溝50aは、周溝8aを加工するよりも容易に加工することができるので、ピストンリング50の生産性を向上させることができて、製造コストの低減化を図ることができる。
さらに、このようなピストンリング50を備えた低温流体用昇圧ポンプ1によれば、ピストンリング50およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
さらにまた、ピストンリング50の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング50の他側(図5において下側)から一側(図5において上側)に向かって、低温流体の(極)一部が通過していくこととなるので、ピストンリング50およびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱をさらに抑制することができて、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)をさらに抑制することができ、ポンプ効率をさらに向上させることができる。
さらにまた、ピストンリング50の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング50の他側から一側に向かって進む低温流体の流れを阻害するように反転溝50aが設けられているので、ピストンリング50の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング50の他側から一側に向かって進む低温流体の流動抵抗を、斜め溝40aのものよりも増加させることができる。
さらにまた、反転溝50aの断面形状、配置(角度)、数等を変更するだけで、ピストンリング50の外周面とシリンダ6の内周面との間を、ピストンリング50の他側(図5において下側)から一側(図5において上側)に向かって通過していく低温流体の量を容易に調整することができる。
本実施形態におけるピストンリング60は、その内部に熱伝導率の高い材料61が包含されているという点で前述した実施形態のものと異なる。
なお、図6における符号62は、バックアップリングを示している。
また、このようなピストンリング60を備えた低温流体用昇圧ポンプ1によれば、ピストンリング60の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
本実施形態におけるピストンリング70は、その内部に包含された熱伝導率の高い材料61を、半径方向内側の一面側(図6において上側)により多く分布するように配置させる代わりに、伝熱材71が設けられているという点で前述した実施形態のものと異なる。
なお、図7における符号62は、バックアップリングを示している。
伝熱材71は、熱伝導率の高い材料(例えば、銅やインジウム等)から作り出された平面視輪状の板状部材であり、ピストンリング70の、半径方向内側の一面側(図7において上側)に密着して配置されている。
また、このようなピストンリング70を備えた低温流体用昇圧ポンプ1によれば、ピストンリング70の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
図9に示す低温流体用昇圧ポンプ1については、先に詳しく述べたので、ここではその説明を省略する。
本実施形態に係る低温流体用昇圧ポンプでは、図8(a)に示すように、第1のピストンリングにおける漏れ抵抗が最も小さくなり、第2のピストンリング、第3のピストンリングにいくに従って漏れ抵抗が徐々に大きくなるように構成されている。これにより、図8(b)に示すように、第1のピストンリングの一端面(図9において下側の端面)側の圧力P1’が最も大きくなり、第1のピストンリングの他端面(図9において上側の端面)側の圧力P2’、第2のピストンリングの他端面(図9において上側の端面)側の圧力P3’、第3のピストンリングの他端面(図9において上側の端面)側の圧力P4’が順次小さくなるようになっている。
また、各ピストンリングにおける漏れ抵抗は、第1のピストンリングとして、例えば、段付合口(ステップ合口)等の漏れ抵抗の小さいものを使用し、第3のピストンリングとして、例えば、二重段付合口(ダブルアングル合口)等の漏れ抵抗の大きいものを使用し、第2のピストンリングとして、これら第1のピストンリングと第3のピストンリングとの略中間程度の漏れ抵抗を有するものを使用して調整することもできる。
さらに、第1のピストンリング、第2のピストンリング、および第3のピストンリングが、同じ形状の合口、例えば、段付合口(ステップ合口)を有するものである場合には、合口の開き具合が、第1のピストンリングにおいて最も開き気味になり、第3のピストンリングにおいて最も閉じ気味になるようにして、各ピストンリングにおける漏れ抵抗を調整することも可能である。
また、このように、ピストンリングおよびシリンダ6(すなわち、シリンダブロック5)の発熱が抑制されることとなるので、シリンダ6内に吸入された(流入した)低温流体の蒸発(気化)を抑制することができ、ポンプ効率を向上させることができる。
3 ピストン
5 シリンダ
6 シリンダブロック
7 リング溝
8 ピストンリング
8a 周溝
20 ピストンリング
21 周溝加工部
22 ピストンリング本体
30 ピストンリング
30a 縦溝
40 ピストンリング
40a 斜め溝
50 ピストンリング
50a 反転溝
60 ピストンリング
61 熱伝導率の高い材料
70 ピストンリング
71 伝熱材
Claims (1)
- 外周面に複数本のリング溝が形成されたピストンと、前記リング溝内に配置される複数本のピストンリングと、これらピストンおよびピストンリングをその内部に形成されたシリンダ内に収容するシリンダブロックとを備えた低温流体用昇圧ポンプであって、
前記ピストンリングが、低温流体を圧縮する前記ピストンの一端面側から前記ピストンの他端面側にかけて、その漏れ抵抗が徐々に大きくなるように構成されており、
各ピストンリングにおける漏れ抵抗は、各ピストンリングの半径方向内側に配置されたバックアップリングとの組み合わせで調整されていることを特徴とする低温流体用昇圧ポンプ。
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