JP4938957B2 - Cd30またはcd30lのアンタゴニストを使用する自己免疫および慢性炎症性状態の処置法 - Google Patents
Cd30またはcd30lのアンタゴニストを使用する自己免疫および慢性炎症性状態の処置法 Download PDFInfo
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Description
技術分野
本発明は一般的には、CD30およびCD30LまたはIL−1およびIL−1R1間の相互作用を遮断する剤(agent)を投与することを含む、自己免疫および炎症性障害を処置するための方法に関しており、そして、TNFα阻害剤での処置にわずかしか応答しない炎症状態を処置するための化合物の能力を試験するための動物モデルも提供される。
【0002】
背景技術
CD30およびそのリガンド、CD30L、は各々TNFRの膜蛋白質およびTNPリガンドスーパーファミリーであり、種々のリンパ球様および骨髄性細胞で発現される。CD30は最初にホジキン病細胞上の抗原として記載されており、現在、多くの血液悪性腫瘍の臨床マーカーとして広く使用されている(総説として、Horie and Watanabe,Immunol 10:457−470(1998)を参照されたい)。CD30蛋白質の天然に存在する可溶性形はヒト血清で観察され、この蛋白質レベルは、ウイルス感染、アレルギーおよび自己免疫状態および腫瘍性疾患を含む種々の病的状態で上昇する。
【0003】
CD30およびCD30LはT細胞上に発現され、免疫系の調節に関与しているようである。T細胞上のそれらの発現は活性化−依存性である。CD30はTH2型T細胞の特異的マーカーであると報告されている(Romagnani,J Leukocyte Biol 57:726(1995);Romagnani,J Clin Immunol 15:121−129(1995))。CD4+T細胞のTH1およびTH2サブセットは、それらがどのサイトカインを主として発現するかに基づいて区別できる。個々のT細胞は実際にはこれら2つの群のサイトカイン混合物を分泌するであろうが、慢性免疫反応ではCD4+T細胞の一つの型または他の型が優勢になる。TH2サイトカイン(それはIL−4を含んでいる)を産生するT細胞は一般にアレルギー反応の媒介物質であると考えられている。循環CD30+T細胞の検出は、アトピー性皮膚炎のようなTH2−優性アレルギー状態のマーカーとして働くことが示唆されてきた(Yamamoto et al.,Allergy 55:1011−18(2000));しかしながら、CD30発現およびTH2表現型間の相関は期間を通して保たれていない(例えば、Bengtsson et al,J Leukocyte Biol 58:683(1996);Hamann et al.,J Immunol 156:1387−91(1996)を参照されたい)。糖尿病のマウスモデルを使用する実験に基づいて、CD30−媒介シグナリングが自己免疫疾患を保護するかもしれないことも提案されている(Kurts et al.,Nature 398:341−344(1999))。活性化T細胞上のCD30発現をIL−4が上方制御(一方、IFNγは下方制御)するという別の報告もある(Nakamura et al.,J Immuno l 158:2090−98(1997);Gilfillan et al.,J Immunol 160:2180−87(1998))。
【0004】
CD30の天然に存在するリガンド、CD30Lは、CD30と特異的に結合するタイプII膜糖蛋白質であり、従って、その細胞質ドメインを通して、CD30がシグナルを伝達するためのきっかけとなっている。CD30LをコードしているマウスおよびヒトcDNAの単離はU.S.5,480,981に記載されている。活性化T細胞上に発現されるのに加え、CD30Lは単球/マクロファージ、顆粒球およびB細胞のサブセット上にも発現される(例えば、U.S.5,480,981を参照されたい)。CD30Lは、抗CD3共刺激の存在下、マウスB細胞分化および活性化T細胞の増殖を誘導することが報告されている(例えば、Smith et al..Cell 73:1349−1360(1993)を参照されたい)。さらに、CD30Lは”逆シグナリング”、即ち、好中球および抹消血T細胞上に発現されている細胞表面CD30Lはこれらの細胞中の代謝活性を刺激するために架橋により活性化できる、を示すことが報告されている(Wiley et al.,J Immunol 157:3235−39(1996))。
【0005】
CD30およびCD30Lの生物学的活性をより理解し、その知識をヒト疾患の処置に利用することが求められている。
発明の概要
本発明に従うと、CD30LへのCD30の結合を阻害できる剤(agent)が、自己免疫または慢性炎症状態を処置するために使用され、該方法は、患者状態の重度を反映する少なくとも一つの指標の持続的改善を誘導するために適切である前記剤を投与することから成っている。改善とは、もし少なくとも1日隔てた少なくとも二つの時点で患者が改善を示しているとすれば、持続していると考えられる。前記剤は生理学的に受容可能な医薬製剤で処方され、それは前述の使用に記載されている記載物で包装されていてもよい。さらに、本発明に従うCD30/CD30L相互作用の阻害剤は、同一の障害を処置するために使用されている他の処置と同時に投与することができる。好適な態様において、患者はヒトである。
【0006】
本発明の一つの態様において、自己免疫または炎症状態の処置に使用するための好適な剤には、CD30Lに特異的である抗体、CD30に特異的である非アゴニスト的抗体、ヒトCD30の細胞外領域の全てまたは一部を含む可溶性CD30ポリペプチドが含まれる。ヒトCD30のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は配列番号6に示されている。治療剤として使用するために適したCD30ポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸19−390を含む蛋白質、あるいは配列番号6のアミノ酸19−390と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、および最も好適には少なくとも99.5%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、CD30Lへ結合する能力を維持している蛋白質断片を含んでいる。そのようなポリペプチドは、in vivoで投与された場合、内在性CD30Lと結合することが期待され、それにより内在性CD30と内在性CD30L間の相互作用に干渉する。そのようなポリペプチドは、もし望まれるなら、オリゴマー化を促進する別の部分(通常別の蛋白質)と結合されていてもよい。この目的に適した部分は免疫グロブリン分子からのFc領域である。CD30/CD30L相互作用にアンタゴナイズする剤は、本発明の方法に従って、単独でまたは他の処置と同時に、投与される医薬製剤を製造するために使用される。そのような医薬製剤は前述の使用に記載されている記載物で包装される。
【0007】
CD30/CD30L相互作用を阻害するここに記載されている治療剤は、種々の関節炎性状態を含む種々の疾患を処置するために使用される。例えば、リューマチ性関節炎が上記のCD30/CD30Lアンタゴニストで処置される。
【0008】
本発明の一つの側面において、CD30およびCD30Lの相互作用を阻害できる剤は、TNFα、IL−1α、IL−1βまたはIL−4とアンタゴナイズできる第二の剤と同時に使用される。これらの組み合わせ処置に特に応答性であると期待される医学障害には、多発性硬化症(multiple sclerosis)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、急性炎症性脱髄性多発性神経症(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy)、急性運動軸索神経症(acute motor axonal neuropathy)、急性運動感覚軸索神経症(acute motor sensory axonal neuropathy)、フィッシャー症候群(Fisher syndrome)および全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematosus)が含まれる。例として、前記の医学障害はIL−4のアンタゴニストと一緒に使用されるCD30Lの特異的抗体で処置することができる。抗CD30L抗体およびIL−4アンタゴニストは、この目的のための医薬製剤を処方するために使用され、この使用を記載している記載物(a written matter)で、別々にまたは一つの包装に一緒に包装される。この処置法で使用するために適したIL−4アンタゴニストには、IL−4特異的抗体、IL−4R特異的抗体および配列番号16のアミノ酸1−207または2−207を含む可溶性IL−4レセプターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の好適な態様の一つにおいて、全身性紅斑性狼瘡、強皮症(scleroderma)または尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)を患っている患者が、CD30/CD30L相互作用の阻害剤と、IL−4特異的抗体、IL−4R特異的抗体又は可溶性IL−4レセプター(ここで該レセプターは配列番号16のアミノ酸1−207またはアミノ酸2−207を含んでいる)で同時に処置される。
【0009】
本発明の別の側面において、TNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症状態を処置するための化合物、医薬調整物および処置法が提供される。この方法はCD30LへのCD30の結合、またはIL−R1へのIL−1α若しくはIL−1βの結合を阻害できる剤を、それらを必要としている患者へ投与し、それによりCD30またはIL−1によるシグナル伝達を遮断することから成っている。前記剤は、患者の状態の重度を反映する少なくとも一つの指標における持続された改善を誘導するために適している用量および頻度の投与計画に従って投与され、もし少なくとも1日離れた少なくとも二つの時点で患者が改善を示すとすれば、改善は持続されたと考えられる。そのような方法での使用に適した剤には、CD30、CD30L、IL−1α、IL−1βまたはIL−1R1に特異的である抗体が含まれ、ここで抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体であることができる。この目的のために使用される剤は医薬製剤内へ処方することができ、それはそのような使用を記載している記載物で包装することができる。この目的のための剤の一例は、配列番号8のアミノ酸1−333を含むIL−1R2の可溶性断片、またはIL−1α若しくはIL−1βと結合できるその一部であり、それによりIL−1α若しくはIL−1βによるシグナル伝達を遮断(blocking)する。そのような疾患を処置するために適した別の剤は、配列番号6のアミノ酸19−390を含むポリペプチドまたはそのCD30L−結合断片のような、CD30Lを結合する可溶性CD30ポリペプチドである。
【0010】
本発明のさらに別の側面において、治療剤をスクリーニングするための動物モデルもまた提供され、動物モデルはそのp55およびp75 TNFαレセプター蛋白質を不活性化する遺伝子修飾を保持していることにより、そしてまた実験的に誘導された関節炎に遺伝的に感受性があることにより特徴付けられている。好適な態様において、動物モデルはコラーゲン誘導関節炎に対して遺伝的に感受性を持っている。例えば、p55およびp75 TNFαレセプター蛋白質の不活性化は野生型DBA/1、BUB若しくはB10.Qマウス内へ、またはDA、BB−DR若しくはLEWラット内へ(これらすべてがコラーゲン誘導関節炎に対して感受性である)導入できる。好適な態様において、動物は、p55およびp75レセプター遺伝子の両方に二重ヌル突然変異を持つように遺伝的に修飾されているDBA/1マウスである。
【0011】
本発明はまた、TNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症状態の処置における効力(efficacy)を決定するための候補治療剤をスクリーニングするために、前記動物モデルを使用する方法も提供する。この方法はp55およびp75 TNFレセプターが不活性化されている動物に関節炎を誘導し、動物に候補治療剤を投与し、そして候補剤が投与された後に動物の関節炎の重度が軽減されるならば、前記剤が有効であると決定する、アッセイから成っている。好適な態様において、スクリーニングアッセイは、コラーゲン誘導関節炎に感受性を持ち、およびp55およびp75蛋白質が遺伝子修飾により不活性化されているマウスまたはラットの系統を用いる。そのようなマウスにおいて、コラーゲンを注射することにより関節炎が誘導され、候補治療剤が投与され、次いで、動物の足における紅斑および浮腫の量を観察することにより関節炎の重度を評価する。好適な態様において、スクリーニングアッセイはDBA/1マウス、BUBマウス、B10.Qマウス、DAラット、BB−DRラットまたはLEWラットを用いる。これらのアッセイでの使用に特に適した動物は、p55およびp75TNFαレセプター遺伝子に二重ヌル突然変異を保持しているDBA/1マウスである。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明はTNFα阻害剤での処置に抵抗する状態を含む、自己免疫または慢性炎症疾患を処置または防止するための方法および化合物、ならびにTNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または炎症性状態の処置における、剤の効力についてスクリーニングするためのモデル系を開示している。本発明に従って処置される患者は、その状態が連続的または断続的である患者である。本方法により処置可能な疾患には、例えば、関節炎、全身性紅斑性狼瘡のような疾患、および多発性硬化症のような神経系の退行性(degenerative)状態が含まれる。
【0013】
好適には、処置を受けている患者は哺乳類であり、より好適にはヒトである。本方法はペットおよび農場動物を含む家畜へ応用可能である。TNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症性疾患を処置するために、CD30またはIL−1シグナル伝達を遮断する阻害剤を使用するための方法もまたここに提供される。加えて、IL−4阻害剤、TNFα阻害剤およびCD30/CD30L相互作用の阻害剤から選択される二つまたはそれより多くの阻害剤と同時に、ここに記載された自己免疫または慢性炎症性疾患を処置することを含む方法が提供される。この開示の目的のためには、用語“病気”、“疾患”、“医学的状態”、“異常状態”、“疾病(malady)”、“医学的障害”、“障害”などは相互交換的に使用される。
【0014】
自己免疫状態は、天然の宿主分子と反応する抗体またはエフェクターT細胞の産生により特徴付けられる。ほとんどのB細胞応答はヘルパーT細胞に依存しており、それ故、自己抗体の存在は一般的にT細胞機能のいくつかの異常制御に関係している。しかしながらいくつかの場合、宿主自身の組織と抗原性エピトープを共有している外来性蛋白質に対する正常TおよびB細胞応答から自己抗体が生じる。例えば、宿主分子に似ている抗原を発現する病原性細菌により自己抗体が惹起されうる。いくつかの場合、女性における関節炎性症候群は、妊娠間に彼女の循環系に逸脱した胎児細胞への暴露に起源しているであろう。本明細書中で使用されるような句“慢性炎症性状態”とは、進行中の徴候がウイルスまたは細菌感染により起こされてはいないような慢性障害を指しており、たとえこれらの疾患が、ある場合には感染により引き金が引かれていても、それはもはや存在していない。そのような疾患は、腫瘍壊死因子(TNFα)、リンホトキシンα、および/またはインターロイキン−1(IL−1)のような炎症性サイトカインの放出により特徴付けられることで“炎症性”であり、そして、それらはまた自己免疫状態を含むこともできる。いくつかの場合において、遺伝的素因が、本方法により処置可能である自己免疫または慢性炎症性疾患に役割を果たしている。そのような患者に対しては、必要に応じ、本治療法が予防的に与えられる。
【0015】
本発明の一つの側面において、自己免疫または慢性炎症性疾患がCD30によるシグナル伝達を阻害する剤を投与することにより処置される。CD30シグナル伝達を阻害する剤の能力は、細胞がCD30Lと接触した場合に起こるであろうCD30+細胞により現わされる生物学的活性を、剤が妨害することを決定することを含むアッセイのような、生物学的アッセイを使用して示すことができる。あるいは、CD30Lが培養細胞表面上に発現されるCD30へ結合できないようにする能力を決定することにより、CD30アンタゴニストを同定してもよい。本発明の治療剤にはCD30LへのCD30の特異的結合をアンタゴナイズする剤が含まれるが、それに限定されるわけではない。用語“アンタゴニスト(antagonist)”および“阻害剤(inhibitor)”はここでは相互交換的に使用される。
【0016】
用語“CD30−リガンド”(CD30L)とは、Smith et al.(1993)および米国特許第5,480,981号に記載されているようなヒトまたはマウスCD30−結合蛋白質を指しており、それらのCD30−結合突然変異蛋白質を含んでいる。ヒトCD30Lのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は配列番号1および2に示されており、マウスCD30Lのものは配列番号3および4に示されている。ヒトCD30Lの細胞外領域は、配列番号2のアミノ酸1−215に相当している。CD30を結合できる可溶性ヒトCD30L分子を形成するためには、配列番号2のアミノ酸44、45、46または47からアミノ酸215を含んでいるポリペプチドを使用することができる。マウスCD30Lの細胞外領域は、配列番号4のアミノ酸1−220に相当している。CD30に結合できる可溶性マウスCD30L分子を形成するためには、配列番号4のアミノ酸49−220を含んでいるポリペプチドを使用することができる。
【0017】
本明細書中で使用される句“CD30Lの断片”とは、CD30へ結合する能力を維持している、あるいは、配列番号2若しくは4またはそれらの小部分のCD30Lポリペプチドと特異的に結合する抗体を惹起できる、完全長CD30Lポリペプチドの一部を指している。そのような断片は、好適には、少なくともCD30Lの細胞外領域の一部を含んでいるであろう。
【0018】
本明細書中で使用される用語“CD30”とは、配列番号5のヌクレオチド配列によりコードされている595アミノ酸のヒトCD30ポリペプチドを指しており、そのアミノ酸配列は配列番号6に示されている。CD30のクローニングはDurkop et al.(Cell 68:421(1992))に記載されている。ヒトCD30の細胞外部分は配列番号6のアミノ酸1−390、または、もしシグナルペプチドが除去されるならば、配列番号6のアミノ酸19−390に相当している。句“可溶性CD30”(sCD30)とは、CD30蛋白質の細胞外ドメインの全部または一部を含み、そして、CD30Lと特異的に結合する能力を保持している可溶性分子を指している。本発明の可溶性CD30ポリペプチドは高度に精製された形の、組換えsCD30および天然に存在するsCD30蛋白質を包含している。もし望まれるならば、sCD30を、患者体内での半減期を延長させるためにポリエチレングリコールと結合させてもよいし(即ち、PEG化)、またはオリゴマー化を促進する別の蛋白質部分へ連結させてもよい。
【0019】
本明細書中で使用される場合、句“CD30の断片”とは、CD30Lへ結合する能力を保持し、またはアミノ酸配列、配列番号6を持っているCD30ポリペプチドまたはそれらのサブ部分と特異的に結合する抗体を惹起できる完全長CD30ポリペプチドの一部、または、NF−κBの活性化のような生物学的シグナルを伝達できる、完全長CD30の一部を指している。
【0020】
本発明による可溶性CD30ポリペプチドはまた、配列番号6のアミノ酸1−390に示されたような、ヒトCD30分子細胞外領域の長さの少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、および最も好適には少なくとも90%であるポリペプチドも含んでいる。治療剤としてさらに含まれているものは、配列番号6のアミノ酸1−390と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、または少なくとも99%、および最も好適には少なくとも99.5%の配列同一性を持っている可溶性CD30ポリペプチドを含んでいる蛋白質であり、ここで配列同一性は、重なりおよび同一性が最大になるように、一方、配列ギャップを最少にするように並べられた場合に、2つのポリペプチドのアミノ酸配列を比較することにより決定される。もしくは、2つのアミノ酸配列のパーセント同一性は、Devereux et al.(Nucl.Acids Res.12:387,1984)に記載され、およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータープログラム バージョン6.0を使用して配列情報を比較することにより決定できる。これらの比較を行う際にGAPプログラムで使用された好適な省略時パラメーターには以下のものが含まれる:(1)ヌクレオチドの単項(unary)比較マトリックス(同一性に対して1、および非同一性に対して0の値を含んでいる)、およびGribskov and Burgess,Nucl.Acids Res.14:6745,1986、の加重比較マトリックス、Schwartz and Dayhoff,編,Atlas of Polypeptide Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353−358,1979に記載されているような;(2)各々のギャップに対して3.0のペナルティー、および各々のギャップ中の各々の記号に対して追加の0.10のペナルティー;および(3)末端ギャップにはペナルティーなし。例えば、National library of Medicineウェブサイトを通しての使用が利用可能なBLASTNプログラム バージョン2.0.9、またはblast−wust1ウェブサイトに記載されている標準デフォルトパラメーターセッティングを使用するUW−BLAST 2.0アルゴリズムのような、配列比較の当業者により使用されている他のプログラムを使用してもよい。加えて、BLASTアルゴリズムはBLOSUM62アミノ酸スコアリングマトリックスを使用し、使用される任意のパラメーターは以下のようである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列セグメント(Wootton & Federhen(Computers and Chemistry,1993)のSEGプログラムによりにより決定されるような;また、Wootton JC and Federhen S,1996,配列データベースにおける組成的に偏りのある領域の分析,Methods Enzymol,266:554−71、も参照されたい)、あるいは短周期内部反復からなるセグメント(Claverie & States(Computers and Chemistry,1993)のXNUプログラムにより決定されるような)をマスクするためのフィルターの包含、並びに(B)データベース配列、またはE−スコア(単に偶然により観察された一致の予測される確率、Karlin and Altschul(1990)の確率モデルに従って;もし、一致とされた統計的有意性がこのE−スコア閾値よりも大きいならば、一致は報告されないであろう)に対して報告された統計的有意性閾値;好適なE−スコア閾値は0.5であるか、または以下の順序でより好ましくなる、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75またはe−100。
【0021】
本明細書中で使用される場合、句“CD30/CD30L相互作用”とは、CD30Lに対するCD30の特異的結合を指しており、その結果、CD30によるシグナル伝達が生じる。これには、少なくとも一つの結合相手がCD30かまたはCD30Lの断片である例が含まれ、即ち、本用語はCD30Lに対するCD30断片、CD30L断片に対するCD30、またはCD30L断片に対するCD30断片の結合相互作用を指すことができる。加えて、CD30/CD30L相互作用は、CD30Lへ特異的に結合できるCD30類似体(対立遺伝子変異体(allelic variant)若しくは突然変異体蛋白質(mutein)のような)を含むことができ、またはCD30と特異的に結合できるCD30L類似体(対立遺伝子変異体または突然変異体蛋白質のような)を含んでいてもよい。さらに、CD30/CD30L相互作用は、内在性のCD30かまたはCD30L蛋白質を含むことができ、または組換え蛋白質をコードしている核酸でトランスフェクトされた細胞により発現された組換えCD30またはCD30Lを含んでいてもよい。同様に、句“IL−1/IL−1R相互作用”とはIL−1およびIL−1R間の特異的結合を指し、少なくとも一つの結合相手が完全長ポリペプチドの断片である例を含んでおり、および少なくとも一つの結合相手が、結合相手と特異的に結合する能力を保持している対立遺伝子変異体または突然変異蛋白質である例を含んでいる。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語“IL−1”とはIL−1αおよびIL−1βの両方を含んでいる。IL−1αおよびIL−1βは二つの別個の蛋白質であり、両方とも炎症の手段となるものであり、その両方が同一の二つの細胞表面レセプターを結合する。IL−1αおよびIL−1βの両方が結合する細胞表面レセプターはタイプIおよびII IL−1レセプター、または“IL−1R1”および“IL−1R2”として知られている。IL−1によるシグナル伝達は最初にIL−1R1により媒介され、一方、IL−1R2は、その機能がIL−1の生物学的活性を下方制御する“おとり(decoy)”レセプターであると考えられている。ヒトIL−1R2は米国特許第5,350,683号に記載されている。IL−1R2蛋白質をコードしている核酸配列は配列番号7に示されており、アミノ酸配列は配列番号8に示されている。
【0023】
一つの態様において、本発明はTNFαを阻害する薬剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症性状態を処置する方法を提供する。そのような患者において、TNFα阻害に対する応答の欠如は部分的または全面的であってもよい。これらの疾患に非応答性であるTNFαを阻害剤には、一つまたはそれより多くの以下のものが含まれる:エタネルセプト(p75 TNFR:FC、ENBRELRとして販売されている;Immunex Corporation); LENERCEPTR(p55 TNFR−Ig融合蛋白質;Roche);または、インフリキシマブ(REMICADER;Centocor)、D2E7(BASF Pharma)若しくはCDP571(HUMICADER;Celltech)のようなヒト化抗体を含むTNFαに対する抗体。これらの一つまたは別のTNF阻害剤に抵抗性である関節炎は、“TNFα−独立性関節炎”と称されている。TNFα阻害剤での処置に抵抗する疾患は、CD30/CD30L相互作用および/またはIL−1/IL−1R相互作用の阻害剤のような、CD30またはIL−1によるシグナル伝達を阻害する一つまたはそれ以上の剤を投与することにより処置することができる。加えて、TNFα阻害剤に決して完全には応答性ではない疾患は、TNFα阻害剤と同時に投与されるCD30/CD30L相互作用阻害剤および/またはIL−1/IL−1R相互作用阻害剤の組合せで処置される。
【0024】
治療剤
CD30によるシグナル伝達を遮断(block)できる任意の生理学的に受容可能な剤を、処置法に開示されている治療剤として使ってもよく、非限定的に下記のものが含まれる:CD30Lへ特異的に結合し、それによりそのCD30への結合を阻害する抗体;CD30Lへ特異的に結合し、生物学的シグナルを伝達するその能力を阻害する非アゴニスト的抗体;CD30へ結合するが生物学的シグナルの伝達を刺激しない、CD30Lの対立遺伝子変異体またはその断片のような突然変異蛋白質または類似体;CD30Lへ結合できる、CD30の細胞外ドメインまたはその一部を含むsCD30分子;およびCD30によるシグナル伝達を遮断する、またはCD30Lの生物学的機能化に干渉する小有機分子。
【0025】
本明細書に記載されているように、治療剤として使用される可溶性CD30分子はCD30の細胞外領域を含んでいる。CD30蛋白質の例は配列番号6に示されており、配列番号6のアミノ酸1−390は細胞外領域に相当する。もし全細胞外ドメインよりも小さいものを使用するならば、断片はCD30Lを結合する能力を保持していなければならず、その能力は通常の結合アッセイ様式を使用して確認することができる。sCD30中のシグナルペプチドの存在は任意である。適したアッセイは、表面CD30を発現している細胞への標識CD30L結合を競合的に遮断する、または細胞表面CD30またはELISAプレートまたはクロマトグラフィーマトリックス(アガロースビーズのような)のような固相支持体へ繋がれているCD30への、単離CD30Lまたは細胞発現表面CD30L結合を遮断する能力の試験を含んでいる。治療的に使用される場合、これらのsCD30は細胞発現CD30Lに対する膜結合CD30の結合を遮断する。
【0026】
開示された治療方法において、CD30アンタゴニストとして有用なsCD30には、オリゴマーsCD30ポリペプチド(二量体または三量体のような)、ならびに単量体が含まれる。オリゴマーは、異なったsCD30ポリペプチド上のシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合により連結することができる。本発明の一つの態様において、治療剤は、CD30の細胞外ドメイン(またはそのCD30L結合部分)を抗体(好適にはヒト抗体)のFc領域に、CD30LへのCD30部分の結合に干渉しない様式で融合させることにより作製されたsCD30である。得られた融合蛋白質はCD30:Fcであり、それは二つの融合蛋白質鎖上のFc領域間での、ジスルフィド結合の自発的形成により二量化するであろう。これらの構築物の作製に天然のFc領域ポリペプチドまたはその突然変異蛋白質を使用することができる。適したCD30:Fcは、CD30を刺激するアゴニスト的抗CD30抗体の能力を減少または破壊するであろうし、あるいは膜結合CD30へのCD30Lの結合を競合的に阻害するであろう。本方法で使用することができる適したCD30:Fc蛋白質の例は、U.S.5,677,430に記載されているように構築されたものである。
【0027】
他の適したオリゴマーsCD30ポリペプチドは、CD30の細胞外ドメイン(またはその断片)を、存在すると蛋白質のオリゴマー化を促進するペプチドである“ロイシンジッパー”へ融合させることにより調製することができる。ロイシンジッパーはいくつかのDNA結合蛋白質に観察されるモチーフであり(例えば、Landschulz et al.,Science 240:1759(1988)を参照されたい)、そして、天然に存在するロイシンジッパーペプチドおよびその誘導体は、それらが存在する蛋白質鎖の二量体または三量体の形成を促進できる。可溶性オリゴマー蛋白質の製造に有用なロイシンジッパードメインの例はWO94/10308に記載されている。
【0028】
可溶性CD30ポリペプチドの多コピーを連結する別の方法は、単量体と一緒に適したペプチドリンカーを融合させることである。ペプチドリンカーにより分離されている二つまたはそれ以上のsCD30のコピーを含んでいる融合蛋白質は、組換えDNA技術により製造することができる。そのようなペプチドリンカーは最適には5から100アミノ酸長であり、好適には、グリシン、アスパラギン、セリン、スレオニンおよびアラニンからなる群より選択されたアミノ酸を含んでいる。ペプチドリンカーを含んでいる組換え融合蛋白質の製造はU.S.5,073,627に例示されている。
【0029】
さらに別の態様において、例えば、CD30またはCD30L mRNAの翻訳を阻害または防止するためのよく知られたアンチセンスまたはリボザイム法;CD30またはCD30L遺伝子の転写を阻害するための三重ヘリックス法;または、CD30またはCD30L遺伝子またはそれらの内在性プロモーターまたはエンハンサー要素を不活性化または“ノックアウト”するための標的化相同組換え、を使用することにより内在性CD30またはCD30L遺伝子発現のレベルを減少させるようにアンタゴニストを設計できる。そのようなアンチセンス、リボザイムおよび三重ヘリックスアンタゴニストは損傷されていない、または適切なら、突然変異体CD30またはCD30L遺伝子活性を減少または阻害するように設計することもできる。そのような分子の製造および使用のための技術は当業者にはよく知られている。
【0030】
アンチセンスRNAおよびDNA分子は、標的化された内在性mRNAへハイブリダイズすることにより、それにより翻訳を防止することによって、mRNAの翻訳を直接的に遮断するように作用できる。あるいは、アンチセンスRNAおよびDNAは標的遺伝子の転写を阻害または防止できる。アンチセンス法は、CD30またはCD30L mRNAと相補的である、または、遺伝子の転写を調節する制御要素のような標的遺伝子の一部と相補的であるオリゴヌクレオチド(DNAかまたはRNA)を設計することを含んでいる。アンチセンス核酸は少なくとも6ヌクレオチド長でなければならず、および好適には、6から約50ヌクレオチド長の範囲のオリゴヌクレオチドである。
【0031】
本発明の一つの態様において、CD30またはCD30L mRNA転写体を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子がCD30またはCD30L mRNAの翻訳およびCD30またはCD30Lポリペプチドの発現を防止するために使用される(例えば、WO 90/11364または米国特許第5,824,519号を参照されたい)。
【0032】
TNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症性状態を処置するための治療法がここに提供される。本発明のこの態様に従った治療法は、TNFα阻害剤での処置に対して部分的または完全に非応答性であるとすでに認められている患者に与えられる。自己免疫または慢性炎症性状態がTNFα阻害剤での処置に抵抗性である患者を処置するためには、上記阻害剤の一つのような、CD30LへのCD30の結合を遮断できる剤の有効量が患者に投与される。あるいは、患者の体内で産生されるIL−1量を減少させることにより、またはIL−1R1へのIL−1の結合に干渉することにより、IL−1によるシグナル伝達を阻害できるIL−1アンタゴニストが患者に投与される。TNFα阻害剤での処置に部分的に応答性である患者の場合、本発明のこの態様に従った処置を、TNFα阻害剤と同時に与えることができる。本発明のこの態様に従った治療剤は一般的に、生理学的に受容可能な組成物の形で投与される。
【0033】
本発明のさらなる態様において、IL−4のアンタゴニストが同時に投与される、CD30/CD30L相互作用の阻害剤で患者が処置される。IL−4は広範囲の活性を持つサイトカインであり、CD30+T細胞により発現される。IL−4が結合する細胞表面レセプターは“IL−4レセプター”または“IL−4R”と称される(例えば、米国特許第5,599,905号を参照されたい)。IL−4とそのレセプターの相互作用は、米国特許第5,599,905号に記載されている可溶性IL−4レセプター(sIL−4R)のようなsIL−4Rを投与することにより阻害できる。この相互作用の防止は、IL−4媒介生物学的活性を妨げる(hinder)または防止する(prevent)であろう。IL−4はいくつかの疾患において慢性炎症性効果を誘導でき、そしていくつかの自己免疫障害を悪化させうる。そのような疾患において、TH2細胞の浸潤および増殖はIL−4およびCD30シグナル伝達によりあおられる。これらの細胞はIL−4の過剰産生を起こす。従って、このことが起こる疾患(アトピー性皮膚炎、喘息、全身性紅斑性狼瘡、強皮症または尋常性天疱瘡を含む)はCD30およびCD30L間の相互作用を阻害する剤と同時に、IL−4を阻害する剤を投与することにより効果的に処置される。前者は、好適には、CD30Lに特異的な抗体である。
【0034】
免疫または炎症性応答を処置するためにIL−4を使用する方法は、例えば、米国特許第5,767,065号に例示されている。CD30/CD30L相互作用の阻害剤と組み合わせて投与してもよいIL−4アンタゴニストには、IL−4レセプター(IL−4R)および他のIL−4結合分子、IL−4またはIL−4レセプターと特異的に結合してシグナル伝達を遮断するIL−4突然変異蛋白質および抗体、ならびにIL−4またはIL−4Rへ標的化されたアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。IL−4またはIL−4Rに特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体は標準法を使用して調製される。IL−4レセプターの内、ここに記載した使用に適しているのはIL−4への結合能力を保持しているヒトIL−4Rの可溶性断片である。そのような断片はIL−4R細胞外領域のすべてまたは一部を保持し、IL−4を結合できる。本発明の好適な態様において、患者はsIL−4RおよびCD30Lに特異的な抗体で同時に処置される。
【0035】
IL−4レセプターは米国特許第5,599,905号;Idzerda et al.,J.Exp.Med.171:861−873,1990年3月(ヒトIL−4R);およびMosley et al.,Cell 59:335−348,1989(マウスIL−4R)に記載されており、その各々はその全体が参照文献として本明細書に援用される。これら三つの参照文献に記載されている蛋白質は、時には、科学文献においてIL−4Rαと称されている。特に指定しない限り、ここで使用される用語“IL−4R”および“IL−4レセプター”はIL−4アンタゴニストとして機能できる種々の形(可溶性断片、融合蛋白質、オリゴマーおよびIL−4を結合できる変異体が含まれるが、これらに限定されるわけではない)のこの蛋白質を包含している。適したIL−4Rは、50位のイソロイシンがバリンに置き換えられている変異体(Idzerda et al,,1990、を参照されたい)を含み、および徐放性処方を含み、そして、PEG化誘導体(ポリエチレングリコールで修飾された)が企図され、IL−4ポリペプチドのN末端またはC末端へ融合された異種ポリペプチド(Hopp et al.,Bio/Technology 6:1204,1988および米国特許第5,011,912号に記載されているようなシグナルペプチド、免疫グロブリンFc領域、ポリ−HisタグまたはFLAGRポリペプチドを含む)を含んでいる組換え融合蛋白質、ならびにオリゴマー促進ロイシンジッパー部分を持つIL−4レセプターの融合体が含まれる。IL−4Rおよび免疫グロブリン定常領域からなる可溶性組換え融合蛋白質は、例えば、EP 464,533に記載されている。ヒトIL−4レセプターをコードしているヌクレオチド配列は配列番号15に示されており、ヒトIL−4レセプターのアミノ酸配列は配列番号16に示されている。好適な態様において、CD30/CD30L相互作用の阻害剤と組み合わせて使用されるべきIL−4アンタゴニストは、配列番号16のアミノ酸1から207を含んでいる可溶性ヒトIL−4レセプターであり、別の好適な態様においては、IL−4アンタゴニストは配列番号16のアミノ酸2から207を含んでいる。本明細書中に記載した処置法に有用なIL−4アンタゴニストはまた、これらの分子に対して標的化されたアンチセンス核酸またはリボザイムのような、内在性IL−4またはIL−4Rの合成を選択的に遮断する分子も含んでいる。
【0036】
ここに記載した処置法に有用でありうる種々のIL−4アンタゴニストは、例えば、IL−4に応答して正常に増殖する細胞中での3H−チミジン取り込みを阻害する能力、またはIL−4Rを発現する細胞へのIL−4の結合を阻害する能力で同定できる。IL−4アンタゴニストを検出するための一つのアッセイにおいて、ヒトB細胞表面上のCD23発現におけるIL−4誘導促進を遮断する推定アンタゴニストの能力が測定される。例えば、ヒト末梢血から単離されたB細胞が、IL−4および推定アンタゴニスト存在下、マイクロタイターウェル中でインキュベートされる。インキュベーション後、洗浄した細胞を次に、CD23発現レベルを決定するため、CD23に対する標識モノクローナル抗体(Pharmingenから入手可能)とインキュベートする。hIL−4およびhIL−13両方の結合および機能を遮断することが以前に示されている抗−huIL−4RマウスmAb(R&D Systems)をIL−4によるCD23誘導中和の陽性対照として使用することができる。あるいは、IL−4が上皮細胞とインキュベートされた場合に生じる上皮細胞の傷つけられた障壁機能を防止または軽減する能力を決定する、ことにより適したIL−4アンタゴニストを同定してもよい。この目的のためには、Calu−3(肺)またはT84(腸上皮)のようなヒト上皮細胞株のコンフルエント単層を使用することができる。そのような単層とIL−4のインキュベーションは、約48時間以内にその障壁機能の著しい損傷を起こす。IL−4アンタゴニストをアッセイするには、アンタゴニスト存在下または不在下、IL−4とインキュベートされる細胞に放射性標識マンニトールを加えることにより、その透過性を試験することができる。あるいは、電圧計を使用して、経上皮抵抗(無傷の障壁を示している)を決定してもよい。
【0037】
本発明の別の態様において、CD30/CD30L相互作用のアンタゴニストはIL−1アンタゴニストと同時に投与される。あるいは、TNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症性状態を処置するためにIL−1アンタゴニストを単独で投与してもよい。IL−1によるシグナル伝達を阻害するために適した剤にはIL−1またはIL−1R1に特異的な抗体、特にヒト化抗体が含まれる。他の適したIL−1アンタゴニストには以下のものが含まれる:IL−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra);天然のIL−1がIL−1R1へ結合することを遮断するIL−1のレセプター結合断片;IL−1またはIL−1R1に向けられた抗体;並びに、遺伝子的に修飾された突然変異蛋白質、多量体形および徐放性放出処方を含む、IL−1のレセプターのすべてまたは一部を含んでいる組換え蛋白質またはそれらの修飾変異体。IL−1raは天然に存在するIL−1の内在性アンタゴニストであり、IL−1R1およびIL−1Rsの両方を結合する。好適なIL−1アンタゴニストには、IL−1を結合でき、およびIL−1R2の細胞外ドメインのすべてまたは一部を含んでいる可溶性IL−1R2分子が含まれる。これらの可溶性IL−1R2分子はIL−1が膜結合IL−1R1と相互作用するのを遮断する。他の有用なIL−1アンタゴニストには、IL−1とIL−1R1の相互作用を競合的に阻害でき、そしてさらにIL−1β変換酵素(ICE)阻害剤(一般的に小さな有機分子である)を含んでいるIL−1R1の可溶性形が含まれる。好適なIL−1アンタゴニストは配列番号8のアミノ酸1−333またはIL−1αまたはIL−1βと特異的に結合できるそのサブ部分を含むIL−1R2の可溶性断片である。本発明に従って使用されるべき可溶性IL−1R2には、例えば、少なくとも20アミノ酸を持ち、天然分子の膜貫通領域を欠き、およびIL−1を結合できる、天然のIL−1R2の類似体または断片が含まれる。IL−1を結合する(IL−1αまたはIL−1βの断片への結合を含んで)可溶性IL−1R2の能力はELISAまたは他の都合のよいアッセイを使用してアッセイできる。
【0038】
他の適したIL−1アンタゴニストは、上に説明したIL−1アンタゴニストの一つが、二量体、三量体またはより高度の多量体の自発的形成を促進するもう一つのポリペプチドへ融合されたキメラ蛋白質である。二量化を促進するために適したポリペプチド部分はヒト免疫グロブリンのFc領域である。例えば、可溶性IL−1R2ポリペプチドまたはそれらの断片はヒト免疫グロブリンのFc領域と融合でき、二量化できるキメラ蛋白質を形成させることができる。ICE阻害剤を除き、前記のIL−1アンタゴニストは、体内での半減期を延長させるためにポリエチレングリコールへ共有結合で連結(PEG化)することができる。
【0039】
IL−1αおよびIL−1βは最も普通に炎症に関係するIL−1であるが、IL−1の他の形も存在しており、本発明はTNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症性状態を処置するために、これらの他の形を標的とする治療剤の使用も包含することを理解されたい。
【0040】
本治療法での使用に好適な剤には、CD30/CD30L、IL−1/IL−1RまたはIL−4/IL−4R相互作用を遮断する抗体が含まれる。そのような抗体は、それらの標的に対し特異的に免疫反応性であり、即ち、それらは標的蛋白質に抗体の抗原結合部位を通して結合し、無関係の蛋白質には有意な程度には結合しない。CD30Lに特異的な抗体は、内在性CD30Lに結合するであろうし、それ故、細胞表面CD30への結合に利用可能な内在性CD30Lの量を減少させる。また、本発明の治療剤として使用するために適しているのは生物学的に活性な抗体断片である。例えば、抗CD30L抗体の生物学的に活性な断片は、無傷の抗体と比較して切断されているが(truncated)、CD30Lを特異的に結合する、およびCD30との相互作用を遮断する能力は保持している抗体蛋白質である。抗体の抗原結合断片には、FabおよびF(ab’)2断片が含まれ(限定するわけではない)、慣用の方法により生成することができる。
【0041】
CD30、IL−1またはIL−4シグナル伝達をアンタゴナイズする抗体は、生物学的機能に基づいたアッセイまたは物理的結合の検出に基づいたアッセイを含む、任意の適したアッセイで同定できる。そのようなアッセイの例は、例えば、U.S.5,677,430に開示されている。一つに好適なアッセイは、細胞表面CD30への細胞表面CD30Lの結合を遮断する抗体の能力を試験している。そのようなアッセイに適した細胞株には、CD30+HDLM−2またはL540細胞株が含まれ、またはCD30を発現している活性化T細胞を使用することができる。生物学的機能に基づいたアッセイは、例えば、抗体がCD30+細胞(CD30Lの刺激に対して応答性である)の増殖を刺激する膜結合CD30Lの能力をアンタゴナイズできるかどうかを決定することが必要であろう。さらに別のアッセイはCD30+K299ヒト細胞株を用いている。これらの細胞の増殖は、CD30Lがトランスフェクトされた細胞との接触により阻害されることが観察されている。CD30L(または他のCD30Lを遮断するアンタゴニスト)に特異的な抗体は、CD30Lのこの効果を抑制でき、従って、このアッセイにおいてこれらの細胞の増殖を促進する。別の例において、抗体は、細胞表面CD30への標識組換えCD30Lの結合を遮断する能力で試験される。別の例において、アッセイはヒトCD30L、IL−1R1、IL−1R2またはIL−4RをコードしているDNAでトランスフェクトされた細胞を用いている。例えば、CD30/CD30L相互作用を遮断するヒトCD30Lに対するモノクローナル抗体の能力は、FACS分析で評価されるような、ヒトCD30Lでトランスフェクトされた細胞か、または活性化ヒトT芽細胞へのヒトCD30:Fcの結合を遮断できるかどうかを決定することにより評価できる。同様に、IL−4Rに対する抗体の特異性は、IL−4Rへの標識IL−4の結合を抗体が遮断するかどうかを決定することにより試験できる。
【0042】
他の適したアッセイは、結合相手両者の可溶性形(例えば、sCD30およびsCD30L)を利用する。例えば、sCD30は、カラムクロマトグラフィーマトリックスまたはELISAプレートのような固相へ結合されていてもよい。sCD30およびsCD30Lを使用するELISAアッセイでは、CD30:FcのようなsCD30はELISAプレートを固定し、そしてCD30Lに対して作成された抗体を、繋がれたsCD30への可溶性CD30Lロイシンジッパー構築物の結合を阻害する能力を検査することにより、それがアンタゴニストであるかどうかを見るために試験する。このアッセイにおいて、ELISAプレートへのロイシンジッパー構築物または他の可溶性CD30Lの結合は、ビオチニル化非中和抗CD30Lモノクローナル抗体を使用して、あるいは、CD30L構築物のロイシンジッパー末端に対する抗体を使用して測定される。別のアッセイは細胞表面IL−1R1へのIL−1の結合を遮断する抗体の能力を試験する。
【0043】
本方法での使用に適した治療剤にはヒトCD30に対する非アゴニスト的抗体が含まれる。そのような抗体はCD30/CD30L相互作用を遮断できる。ヒトCD30に対するモノクローナル抗体は、例えば、U.S.5,677,430に記載されているように調製でき、次に、それらがアゴニスト的または非アゴニスト的かどうかを決定するために試験される。CD30に対する非アゴニスト的抗体は、U.S.5,677,430に記載されているアッセイのような適した生物学的アッセイにおけるCD30に対する効果を試験することにより、アゴニスト的抗体と区別することができる。一つのそのようなアッセイにおいて、CD30に対して特異的な抗体は、末梢血から調製された活性化T細胞の増殖を誘導できるかどうか、あるいはホジキン病由来細胞株HDLM−2またはL−540の増殖を誘導できるかどうかを決定するために試験される。アゴニスト的抗体はそのような増殖を誘導するであろう。対照的に、CD30に対する非アゴニスト的抗体はCD30と特異的に結合するであろうが、CD30によるシグナル伝達に頼っているこれらまたは他のアッセイにおいて、標的細胞の増殖を誘導しないであろう。
【0044】
本発明に従った治療剤は、自己免疫または慢性炎症性疾患を処置するため、一つまたはそれより多くの追加の治療分子と同時に投与してもよい。ここで使用される場合、“同時”とは組合せ処置での薬剤が同一の期間にわたってまたは交互に投与される例を含んでいる。このことは同時または連続的投与を含んでおり、異なった薬剤は同一または別々の医薬組成物に存在することができる。そのような組合せにおいて、異なった薬剤の投与頻度および経路は同一でも異なっていてもよい。そのような組合せで使用されるであろう治療剤には、例えば、前記のようなCD30、IL−1またはIL−4のアンタゴニストが含まれ、およびまた、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、コルチコステロイド、鎮痛剤、サイトカイン抑制剤、疾患変性抗リューマチ剤(DMARD)、メトトレキセートなどが含まれる。例として、CD30またはIL−1のアンタゴニストはお互いに、または、自己免疫性または慢性炎症に寄与することができるTNFα、IL−2、IL−6、RANK若しくは他のサイトカインのアンタゴニストと組み合わせてもよい。いくつかの好適な態様において、追加の治療剤はサイトカインを標的にしている。サイトカインを標的にするアンタゴニストはサイトカインに対する可溶性レセプターを含むことができ、そして、通常、サイトカインに対するレセプター細胞外領域の一部またはすべてを含んでいる。可溶性サイトカインレセプターは単量体として、または二量体またはより高度の多量体(例えば、可溶性レセプターがヒト免疫グロブリンの二量体促進Fc部分へ結合されている融合分子として)として使用することができる。別の態様において、可溶性レセプターは、その血清半減期を増加させるためにPEG化されている。いくつかの態様において、可溶性サイトカインアンタゴニストは可溶性TNFレセプター(タイプIまたはII)を含んでいる。炎症性サイトカインを阻害する小有機分子もまた本治療剤と組み合わせて使用することができる。自己免疫または慢性炎症性疾患を処置するため、CD30シグナル伝達アンタゴニストの一つ以上を同時に投与してもよく、そして、単独で、あるいは、同一の自己免疫若しくは慢性炎症性状態に対して有効である、または同一の患者の異なった状態を処置するために投与されている他の薬剤と一緒に投与してもよい。
【0045】
多発性硬化症を処置するために使用される組合せには、この状態を処置するために使用される他の薬剤、ミトキサントロン(NOVANTRONER;Immunex Corporation)、インターフェロンβ−1a(AVONEXR;Ares−Sorono Group)、インターフェロンβ−1b(BETASERONR;Berlex Laboratories,Inc.)および/またはグラチラマー アセテート(COPAXONER;Teva Pharmaceuticals)が含まれるがそれらに限定されるわけではない、と共に投与されるCD30の阻害剤が含まれる。IL−4アンタゴニストは任意の前記組合せに加えることができる。
【0046】
種々のリューマチ性状態(リウマチ性関節炎を含む)を処置するためには、CD30シグナル伝達を阻害できる剤は単独で、またはTNFαに対する抗体(例えば、REMICADER(Centocor)、D2E7(BASF Pharma)またはHUMICADER(Celltech)のようなヒト化抗体);TNFレセプターの可溶性形(ENBRELR(Immunex Corporation)またはLENERCEPTR(Roche)またはPEG化可溶性TNFレセプターのような)と同時に投与することができる。
【0047】
治療用抗体の調製
治療用抗CD30L抗体の産生における免疫原としての使用に適したCD30Lポリペプチドには、完全長CD30L(組換え体または天然に存在する供給源から調製された)またはそれらの免疫原性断片、特に、CD30Lの細胞外ドメインのすべてまたは一部を含んでいる断片が含まれるが、それらに限定されるわけではない。免疫原として有効であるには、CD30Lの断片はCD30へ結合する能力を保持している必要はないが、免疫原であるのに十分大きくなければならない。抗原性であるためには、ペプチドは一般に少なくとも20のアミノ酸を含んでいなければならない。完全長ヒトCD30Lのアミノ酸配列は配列番号2に、およびマウスCD30Lは配列番号4に示されている;これらの蛋白質のどちらかの少なくとも20の隣接するアミノ酸に相当するペプチドを、ここに記載したような使用のための治療剤を調製するために、免疫原として使用することができる。
【0048】
非アゴニスト的抗CD30抗体の製造において、免疫原としての使用に適したCD30ポリペプチドには、完全長CD30蛋白質(組換え体または天然に存在する供給源から調製された)またはそれらの免疫原性断片、特に、配列番号6のアミノ酸1−390により定義されたような細胞外ドメインのすべてまたは一部を含んでいる断片が含まれるが、それらに限定されるわけではない。抗CD30抗体を作成させるための免疫原は、好適には、配列番号6に示された蛋白質の少なくとも20の隣接するアミノ酸を含んでいる。
【0049】
アンタゴニスト的抗体の製造において、免疫原としての使用に適したIL−1またはIL−1Rポリペプチドには、完全長蛋白質(組換え体または天然に存在する供給源から調製された)またはそれらの免疫原性断片、特に、配列番号8のアミノ酸1−333により示されたようなヒトIL−1R2細胞外ドメインのすべてまたは一部を含んでいる断片が含まれるがそれらに限定されるわけではない。好適な免疫原は配列番号8に示された蛋白質の少なくとも20の隣接するアミノ酸を含んでいる。
【0050】
TNFα、TNFR、IL−4またはIL−4Rに対する治療的抗体を作成させるための免疫原は、標的蛋白質の少なくとも20のアミノ酸セグメントから成っているであろう。治療用抗体を上作成せるために適した抗原はまた、N末端“フラッグ”(例えば、Hopp et al.,Bio/Technology 6:1204(1988);米国特許第5,011,912号を参照されたい)に融合された、あるいは免疫グロブリン分子(好適にはヒト免疫グロブリン)のFc部分へ融合された蛋白質を含む、別の蛋白質へ融合された任意の前記免疫原が含まれる。好適な治療剤には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体(MAB)が含まれ、そのどちらも免疫原として前記のポリペプチドを使用して発生させることができる。
【0051】
ポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、ウサギ、マウス、ラットまたはトリの種々の種のような種々の温血動物を使用する標準プロトコールに従って発生させることができる。一般に動物は、CD30L、CD30、IL−1、IL−1R1、TNFα、TNER1若しくはTNFR2、またはそれらから誘導された免疫原を用い、腹腔内、筋肉内または皮下注射により免疫される。免疫原性ポリペプチドの免疫原性は通常、RIBIR(Corixa)または完全若しくは不完全フロイントアジュバント、または他の適したアジュバントのようなアジュバントの共投与により増加する。数回の追加免疫化後、血清試料を集め、ELISA、抗体捕捉(“ABC”)または改良ABCアッセイ、またはドットブロットアッセイのような任意の適した方法により、標的ポリペプチドとの特異的反応性を試験する。抗体の力価が標的への反応性に関してプラトーに達したら、ポリクローナル抗血清を採取する。
【0052】
ABCアッセイでは、ELISAプレートのようなプラスチックディッシュを、標的ポリペプチドに対する抗体を作成させるために使用した動物と同じ種からの免疫グロブリンのFc部分に特異的に反応性である抗体で被覆する。例えば、もし標的蛋白質がウサギに注射され、生じた抗標的ポリクローナル抗体の特異性が評価されるべきであれば、プレートはウサギIgGのFc部分に特異的に反応性である抗体で被覆される。次の工程において、免疫化ウサギからの抗体試料を、ウサギIgGおよび繋がれた抗ウサギ抗体間の結合を促進する条件下、ディッシュ中でインキュベートする。次に、標識標的蛋白質を加え、抗体結合を促進する条件下、ディッシュをインキュベートする。もし試験されている試料が標的蛋白質に特異的であれば、標識標的蛋白質は捕捉されたウサギ抗体に結合されるようになるであろうし、プレート洗浄後に検出できる。例えば、もし標的蛋白質がビオチンで標識されているとしたら、結合された標的蛋白質は、着色生成物を発生できるストレプトアビジン−タグ付け酵素を使用することにより検出できる。
【0053】
モノクローナル抗体を発生させるために適した方法には、本分野で記載されているいくつかの方法が含まれる(例えば、米国特許第4,411,993号;Kennett et al.(編),Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York(1980);およびHarlow and Lane(編), Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1988)を参照されたい)。マウスおよびラットが一般的に最初の免疫化のために使用され、それはポリクローナルを作成させるために上に説明されたように実施される。免疫化後、免疫した動物の脾臓細胞を採取し、標準法に従ってミエローマ細胞株と融合させると、モノクローナル抗体を産生する不死化ハイブリドーマ細胞が得られる。ハイブリドーマに適した多くのミエローマ株が知られており、多くはAmerican Type Culture Collection(ATCC),Rockville,Maryland(細胞株&ハイブリドーマカタログ、ATCC、を参照されたい)から入手可能である。個々のハイブリドーマ細胞は、所望の特異的免疫反応性を持っているモノクローナル抗体を産生するものを同定するためのスクリーニングのため、融合工程後に単離される。治療的使用には、高親和性の抗体が好適である。所望の規格を持つハイブリドーマは、ELISA、ABC、改良ABCまたはドットブロットアッセイのようなアッセイにより同定され、続いて単離し、繁殖させる。モノクローナル抗体を採取し、標準法を使用して精製する。
【0054】
CD30に対するモノクローナル抗体はU.S.5,677,430に記載されている方法に従って、または、モノクローナル抗体を上昇させるための、本分野で既知の種々の方法により上昇させ、特異的反応性をスクリーニングする。スクリーニングは、細胞表面CD30への細胞表面CD30Lの結合をアンタゴナイズする、あるいは細胞表面CD30によるシグナル伝達をアンタゴナイズするモノクローナル抗体の能力を決定することを含んでいる。
【0055】
本治療的方法に有用な抗体にはまた、キメラ抗体、および蛋白質工学または組換えDNA技術により生成または修飾された抗体が含まれる(例えば、Alting−Mees et al.,Strategies in Molecular Biology 3:1(1990年1月)を参照されたい)。キメラおよび他の工学的処理された抗体の産生は、従来の技術に記載されている(例えば、Reichmann et al.,Nature 332:323(1988);Liu et al.,PNAS 84:3439(1987);Larrick et al.,Bio/Technology 7:934(1989);およびWinter and Harris,TIPS 14:139(1993)を参照されたい)。
【0056】
本方法に従ってヒト患者に治療剤として抗体が投与されるべき場合は、ヒト化抗体が好適である。さらにより好適であるのはヒト抗体である。ヒト化抗体は非ヒト抗体(例えば、ラットまたはマウス)から誘導された抗原結合ドメインを含み、非ヒト抗体の全可変領域を含むかまたは抗原結合部位を含む非ヒト抗体の可変領域の一部のみを含んでいてもよい。本発明の好適な態様において、ヒト化抗体の非ヒト部分は超可変領域のみである。ヒト化抗体を製造するための方法は既知であり、組換えDNA技術を伴う技術を含んでいる。ヒト化抗体の製造は、例えば、Winter and Hartis,1993、に記載されている。ヒト化抗体を作るには、標的に方向付けられたモノクローナル抗体の抗原結合部位をコードしているDNAを単離し、ヒト抗体を産生している細胞のゲノム内に直接挿入する(Reichmann et al.(1988)を参照されたい)。例えば、この方法はCD30、CD30L、IL−1、IL−1R1、TNFα、TNFR−1、TNFR−2、IL−4またはIL−4Rに対する抗体に使用できる。
【0057】
ヒト化抗体を調整する一つの方法において、所望の特異性を持っている非ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株から誘導されたmRNA鋳型上でcDNAが製造される。本質において、モノクローナル抗体の可変領域をコードするcDNAの断片(または抗原結合部位を含んでいるその断片)を単離し、このcDNA断片を、ヒト抗体分子の残りのヒト対応物をコードしているDNAと融合させ、それにより機能性抗体分子を再構築する。宿主細胞を融合遺伝子含有発現ベクターでトランスフェクトし、所望の組換え融合蛋白質を産生させるように培養する。免疫グロブリン鎖の可変領域をコードしているDNAを単離するには、例えば、リーダー配列に相当する上流プライマー、および定常領域の保存配列に基づいた下流プライマーの混合物を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を伴うLartick et al.(1989)の方法を用いることができる。マウスまたはヒトハイブリドーマ細胞免疫グロブリンmRNAからの可変領域を増幅するためのPCRプライマーは市販品として入手可能である(例えば、Stratacyte,La Jolla,Californiaから)。PCRプライマーは重または軽鎖可変領域DNAを増幅するために使用することができ、得られた増幅DNAは、大腸菌での発現のため、各々ImmunoZAP*HまたはImmunoZAP* L(Stratacyte)のようなベクター内へ挿入することができる。
【0058】
本発明に従った治療剤として使用するためのヒト化抗体を産生するためには、所望の特異性を持つ抗体を発現するマウスまたはラットから可変領域DNAを単離し、このDNAをヒト抗体コードcDNAから増幅された定常領域DNAと融合させる。これらまたは類似の技術は、例えば、ペプチドリンカーを通してVHドメインへ融合されたVLドメインを含んでいる一本鎖抗原結合蛋白質(Bird et al.,Science 242:423(1988)を参照されたい)を産生させるために使用することができる。抗体の超可変領域以外のすべてをヒト配列で置き換えるために、さらなる遺伝子操作を実施することができる。
【0059】
ヒト抗体は、非ヒト動物を含んでいる方法を使用して発生させることができる。例えば、一つまたはそれ以上の全ヒト免疫グロブリン鎖をコードしているDNAをマウス内へ導入してトランスジェニック動物を作製することができ、続いてマウス由来の培養細胞から抗体を単離する。受容体マウス内の内在性免疫グロブリン遺伝子は種々の手段により不活性化することができ、そして不活性化遺伝子を置き換えるためにマウス内へヒト免疫グロブリン遺伝子が導入される。これらの遺伝子操作は、少なくともいくつかの場合で内在性免疫グロブリン鎖のヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖での置き換えを生じるであろうし、そのようなマウスにおいては、免疫化により産生される抗体のいくつかまたはほとんどがヒト抗体であろう。そのようなトランスジェニック動物の産生および使用のための技術例は米国特許第5,814,318、5,569,825および5,545,806号に記載されている。
【0060】
TNFα阻害剤での処置に抵抗性である疾患の動物モデル
TNF阻害は、リューマチ性関節炎患者および他の種類の関節炎または慢性炎症性疾患を持つ患者の有意なパーセンテージにおいて有益な効果を示してきた。しかしながら、リューマチ性関節炎患者のサブセットはTNF阻害剤での処置に対して不十分にしか応答しないか、またはすこしも応答しない(TNF独立性リューマチ性関節炎)。TNFα阻害剤での処置に対する応答においてわずかの改善しか、または全く改善を示さない自己免疫または慢性炎症性状態を持つ患者に対する有効な処置を同定する手段を提供するため、本明細書においてそのような疾患に効果的であることができる候補治療剤をスクリーニングするために有用な動物モデルが提供される。モデル動物は、p55およびp75TNFαレセプター蛋白質を不活性化する遺伝子修飾を保持していることにより、そして、実験的に誘導される関節炎に対して遺伝的に感受性であることにより特徴付けられる。動物モデルは実験的に誘導される関節炎に対して遺伝的に感受性であることがすでに知られている動物系統を遺伝子修飾することにより作製される。TNFα阻害剤での処置に対して抵抗性である医学的障害の処置における候補治療剤の効力を決定するためのスクリーニング法も提供される。そのような医学的障害にはリューマチ性関節炎患者および他の種類の関節炎が含まれる。
【0061】
本動物モデルは、修飾以前は実験的に誘導される関節炎に対して遺伝的に感受性である動物の系統(通常は哺乳類)内へ遺伝子修飾を導入することにより作製される。遺伝子修飾の結果、動物のp55およびp75TNFαレセプター(TNFR)蛋白質の不活性化を生じる。p55およびp75TNFRは各々、タイプIおよびII TNFRとも称されている。
【0062】
本発明に従った動物モデルは、いくつかの異なった型の突然変異戦略の結果として、そのp55およびp75TNFR蛋白質に欠陥を持つこともできる。例えば、翻訳可能TNFRメッセンジャーRNAの転写を阻害する、または、TNFαに結合しない欠陥TNFR蛋白質の産生を生じる突然変異から欠陥を生じさせることができる。本動物モデルからの細胞は、野生型のこれらTNFR蛋白質の少なくとも一つを発現する動物と比較して、検出可能TNFαを結合しないであろう。TNFαを結合しない本動物モデルからの細胞の能力は、例えば、Peschon et al.(1998)により記載されているように、または他の適した方法によりアッセイすることができる。例えば、遺伝的に修飾された動物から採られた細胞を、標識ビオチニル化TNFαおよびストレプトアビジン−結合フィコエリスリンとインキュベートし、次いでフィコエリスリンが細胞に捕捉されたかどうかを決定するためにフローサイトメトリーで分析することにより、機能性TNFR IおよびIIの発現を試験することができる。そのような結合アッセイで使用するため、試験動物から種々の細胞を単離することができ、コンカナバリンA−刺激胸腺細胞、チオグリコレート−惹起腹腔滲出細胞およびリポサッカリドの鼻孔内投与後に集められた気管支肺胞洗浄細胞(Peschon et al.,1998)が含まれる。もし突然変異動物からのそのような細胞が標識TNFαを結合しないとしたら、そのことはタイプIおよびII TNFRの両方が適切に不活性化されていることを示している。
【0063】
本発明の好適な態様において、p55およびp75蛋白質が不活性化されている動物は、実験的コラーゲン誘導関節炎(CIA)に感受性である齧歯類系統である。好適な態様において、突然変異はこの齧歯類ゲノム内へ導入され、p55およびp75TNFαレセプターをコードしている遺伝子の不活性化を生じる。一つの好適な態様において、齧歯類はマウスまたはラットの系統である。CIAに感受性であるマウスには、H−2q MHCハロタイプまたはH−2r MHCを運んでいるマウスが含まれる。CIA感受性マウス系統の例にはDBA/1、BUBおよびB10.Q系が含まれ、CIA感受性ラット系統の例にはDA、BB−DRおよびLEW系が含まれる(例えば、Joe and Wilder,Mol Med Today 5:367−369 (1999)およびAnthony and Haqqi,Clin Exp Rheumatol 17:240−244(1999)を参照されたい)。
【0064】
本発明に従った動物モデルの例は、そのp55およびp75TNFR遺伝子に二重ヌル突然変異を運んでいるDBA/1マウス、即ち、p55-/-p75-/-DBA/1マウスである。ここで使用される場合、“ヌル”突然変異とは、対応する野生型レセプター蛋白質に特異的な抗体により認識可能な蛋白質を生じないように、野生型遺伝子と比較して十分に変化されている遺伝子を意味している。このことは、野生型遺伝子内へ欠損または挿入を導入することにより、または他の手段により達成することができる。マウスの系統が確立されたら、適切な遺伝子操作により異なった系統へヌル突然変異を移すことができる。二重ヌル突然変異とは、そのような遺伝子の両対立遺伝子がヌル突然変異を保持していることを意味している。
【0065】
別の態様において、例えば、Joe and Wilder(1999)に記載されている関節炎感受性系統の一つのような、CIA以外の関節炎を形成することに感受性である齧歯類系統内へ遺伝子修飾が導入されてもよい。
【0066】
本明細書において、候補治療剤がTNFα阻害剤での処置に抵抗性である自己免疫または慢性炎症性疾患を処置するために有効であるかどうかを決定するためのスクリーニングアッセイに本動物モデルを適用する方法が提供される。これらの疾患が非応答性であるTNFα阻害剤には、ENBRELR(Immunex Corporation)およびLENERCEPTR(Roche)のようなレセプターに基づいたTNFα阻害剤、または、可溶性TNFR、REMICADER(Centocor)、D2E7(BASF Pharma)またはCDP571(HUMICADER;Celltech)のようなTNFαに対するヒト化抗体、またはその医薬有効性が内在性TNFαを減少させることに基づいた小分子(例えば、ペントキシフィリン、サリドマイドまたはその他のような)を取り込んだ他の薬剤が含まれる。
【0067】
本アッセイで試験される候補治療剤は、本動物モデルに投与された場合、剤が動物に誘導されている関節炎の重度の軽減をもたらすとすれば有効であると決定される。動物における関節炎の重度は、例えば、各々の動物に、動物四肢の膨潤または硬直の程度を反映する数的評点を割り当てることに基づく任意の望ましい方法により評価することができる。疾患の重度を減少させる試験剤(test agent)の効力は、試験剤を受けた関節炎動物群で平均したこの評点と、プラセボを受けた群に対する評点を比較することにより決定される。試験剤およびプラセボは一般的に少なくとも1週間の期間にわたって投与されるが、より長い期間、例えば、2、3、4、5、6、7または8またはそれ以上の週にわたって投与してもよい。もしくは、単一投与量の効果をこのモデルを使用して評価することもできる。
【0068】
もし、CIAを持つDBA/1 p55-/-p75-/-マウスがこのアッセイで使用されるならば、有効な治療剤はマウスにおけるCIAの徴候を部分的または完全に回復させるであろう。もし、マウスの剤処置群に対する平均臨床評点(以下に説明するように決定される)が、プラセボを与えられた陰性対照マウス群に対する平均臨床評点よりも臨床評点単位で1またはそれ以上低いならば、関節炎重度の軽減がDBA/1 p55-/-p75-/-マウスに存在すると決定される。好適には、剤処置DBA/1 p55-/-p75-/-マウスにおける平均臨床評点は、プラセボ処置マウスよりも少なくとも2臨床評点単位低く、より好適には、少なくとも5単位は低いであろう。
【0069】
CIAが誘導されている個々のDBA/1 p55-/-p75-/-マウスに対する臨床評点を決定するため、以下の指標を使用することができ、ここで各々の足は以下に基づいた臨床単位の評点に帰属される:
0=正常外観
1=1−2の足指(digit)における紅斑/浮腫
2=>2の足指における紅斑/浮腫、または踝/手関節における軽度の膨潤
3=足全体(paw)における紅斑/浮腫
4=基部関節内へ拡大した足全体の大きな紅斑/浮腫;関節硬直、機能喪失
そのマウスに対する最終評点を決定するため各々のマウスで足評点を合わせ、次に試験剤群中のすべての動物に対する最終評点を平均し、プラセボ処置群に対する平均評点と比較した。一般に、各々の試験群は5から30匹の動物を含んでいるであろうが、より小さな数からより大きな数の動物を使用してもよい。このまたは類似の臨床評点システムはDBA/1 p55-/-p75-/-マウスにおけるCIAを評価するために適しているばかりではなく、また、他の種およびCIA以外の実験的関節炎型を伴う動物モデルにも適している。もし望むなら、例えば、炎症程度を反映する分子または特異的疾患マーカーである分子の、血液または他の組織中のレベルに基づいたシステムのような、他の種種の関節炎評点システムを使用することもできる。
【0070】
DBA/1 p55-/-p75-/-マウスが使用された場合、CIAは実施例2に与えられた手順に従って、または類似のプロトコールを使用して誘導される。一つの好適なスクリーニングアッセイにおいて、試験剤がCIA誘導を受けるDBA/1 p55-/-p75-/-マウスに投与されるが、剤の最初の用量はコラーゲンブースターが与えられる日に投与されているか、または、徴候の発症まで(一般的にこれらのマウスに現れるには15−60日がかかる)最初の用量は遅延される。このアッセイにおいて、陰性対照DBA/1 p55-/-p75-/-マウスは、ラットまたはマウスIgGまたは生理学的に受容可能な食塩水のようなプラセボで処置される。もし望むなら、これらのマウスにおけるCIAに対して効くことが知られている剤を陽性対照としてアッセイに含ませることができる;例えば、CD30LまたはIL−1R1に対する抗体を陽性対照として使用できるが(実施例4参照)、このことは任意である。試験剤および対照剤の用量は毎日、2日毎、3日毎、週に2回、週に1回、もし望むならより頻度を落として投与される。試験期間の持続は変動でき、例えば、3日間、1週間、2週間、3または4またはそれ以上の週続けることができる。
【0071】
本アッセイにおいて、経口的に投与される液体または固体形、局所応用、エアロゾル吸入、試験剤を発現する組換えDNAによる宿主細胞のトランスフェクションを含む任意の適した経路により、または、腹腔内、静脈内、皮下または筋肉内注射を含む注射により試験剤およびプラセボを投与することができる。もし望むなら、試験剤は緩効性放出インプラントを経て投与することができる。試験剤が緩効性放出処方に含まれている場合、非常に少ない用量しか必要とされず、単用量が使用される。もし試験剤が抗体であり、および被検体がマウスであるとすれば、候補治療用試験剤は20−75μg/マウスの用量で投与され、毎日、2または4日毎、または週に1回、投与される。もし試験剤が有機分子のような小分子であれば、試験するために適した用量は0.5−1000μg/マウスであり、剤は1から10日毎に投与することができる。もしより大きなモデル動物種が使用されるとしたら、より大きな種の平均体重に比例して用量はより多い方に調節される。
【0072】
DBA/1 p55-/-p75-/-マウスまたは別の動物系統における試験剤の効力(efficacy)は、試験および陰性対照群において関節炎を患った動物のパーセンテージを比較することにより、または、試験期間に重度の疾患を示している動物のパーセンテージを比較することにより、および/または対照群および試験剤投与後の試験群の平均臨床評点を比較することにより決定される。平均臨床評点は実施例2に説明した指標に従って、または他の適した手段により決定することができる。もし、試験剤が投与された動物が、試験剤の代わりにプラセボを受けた対照動物と比較して減少した疾患重度を示すとしたら、試験剤はTNFα阻害剤に抵抗性である障害を処置するために有用であると決定される。一つの好適な態様において、観察された改善は統計的に有意である、即ち、p<0.05。任意に、いくつかの異なった用量で試験剤を投与することにより、治療応答の用量依存性が確立される。
【0073】
本動物モデルにおいてスクリーニングされるべき候補治療剤には、TNFα阻害剤での処置に抵抗性である疾患を処置するために有効である可能性を持つ任意の剤が含まれる。これには、例えば、時には炎症に関係するTNFα以外のサイトカイン(例えば、GM−CSF、インターフェロン−γ、リンホトキシン−α、IL−1、IL−4、IL−8、IL−15、IL−17およびIL−18のような)を標的とする剤が含まれる。候補治療剤は可溶性レセプター分子および標的サイトカインまたはそれらのレセプターに特異的な抗体を含んでいる。小有機分子もまた、本動物モデルを使用してスクリーニングすることができ、CD30またはIL−1シグナル伝達に干渉する可能性を持つ剤を含むがそれに限定されるわけではない。
【0074】
治療法
上記剤の一つの有効量を、それらを必要としている患者に投与することにより、種々の自己免疫または慢性炎症性疾患を処置するための方法が、本明細書中に開示される。以下に掲げる医学的障害を処置するためにCD30シグナル伝達の遮断剤が使用され、ならびに、TNFαアンタゴニストでの処置に対して不十分にしか応答しないか、またはすこしも応答しない以下に掲げる障害を処置するためにCD30またはIL−1シグナル伝達の遮断剤が使用される。いくつかの場合において、疾患は一般にTNFαアンタゴニストでの処置に対して応答性であるが、ある種の患者においては非応答性である。そのような疾患の例はリューマチ性関節炎である。TNFαアンタゴニストに対して不十分にしか応答しないか、またはすこしも応答しないリューマチ性関節炎患者は、CD30/CD30LまたはIL−1/IL−1R相互作用のアンタゴニストによる処置で特に利益を得るであろう。
【0075】
好適には、患者はヒトであり、子供であっても大人であってもよい。本発明の一つの態様において、TH2駆動であると信じられている状態、または活性化T細胞上の高レベルCD30発現により特徴付けられる状態が、IL−4阻害剤と同時にCD30阻害剤を投与することにより処置される。
【0076】
本治療法のためには、治療剤は、好適には、生理学的に受容可能な担体、添加剤および/または希釈剤と共に精製組換え蛋白質を含んでいる、生理学的に受容可能な組成物の形で投与される。そのような担体は、用いられる用量および濃度では受容体には無毒である。in vivo投与に適した組成物は本分野ではよく知られた方法に従って処方することができる。そのような処方で普通に用いられる成分には、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16版,1980,Mack Publishing Company、に記載されているものが含まれる。通常、そのような組成物の製造は治療剤を、緩衝液、アスコルビン酸のような抗酸化剤、低分子量ポリペプチド(10より少ないアミノ酸を持っているもののような)、蛋白質、アミノ酸、グルコース、スクロースまたはデキストリンのような炭水化物、EDTAのようなキレート剤、グルタチオンおよび他の安定化剤および添加剤と混和することを必要とする。非特異的血清アルブミンと混合された中性緩衝化食塩水または食塩水は適した希釈剤の例である。もし望むなら、治療剤は、希釈剤としてスクロースのような適した添加剤溶液を使用する凍結乾燥物として処方することができる。適した投与量は標準投与試行で決定でき、選択された投与経路に従って変化するであろう。適した工業的標準に従い、ベンジルアルコールのような保存剤を添加してもよい。
【0077】
投与の量および頻度は、処置されている適応症の性質および重度、望まれる応答、処置の持続時間、患者の年齢、体重および状態などのような因子に依存して変化するであろう。治療剤の用量は、種々の投与経路に合わせて、または担当医により決定されたような個々の患者の必要性に従って調節することができる。
【0078】
関節炎はここに開示した方法および組成物により処置することができる。ここで使用される場合、用語“関節炎”とは、主として関節または関節を取り巻いている結合組織に影響を及ぼす慢性炎症性状態を指しているが、種々の体器官にもまた影響を及ぼすことができる。関節炎は自己免疫または外傷起源によるものであるか、あるいは、外来性抗原への暴露により引き金が引かれたが、その後、引き金を引いた抗原の引き続く存在にはもはや依存しない慢性状態が導かれたものである。用語“関節炎”には以下のものが含まれる:変形性関節炎(arthritis deformans);骨関節炎(osteoarthritis);リューマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)(成人性および若年性);ライム病関節炎(Lyme disease arthritis);ライター病(Reiter’s disease)を含む反応性関節炎(reactive arthritis);乾癬性関節炎(psoriatic arthritis);結節関節炎(arthritis nodosa);血清陰性脊椎関節症(seronegative spondylarthropathies)(強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)を含むがそれに限定されるわけではない)。関節炎疾患の処置における抗CD30L処置の効力は、実施例2および4に例示されている。
【0079】
本阻害剤、組成物および組合せ療法は種々のリューマチ性障害の処置において有用であり、それはここでは慢性障害として定義されており、しばしば、関節、筋肉、神経、腱、皮膚、眼、結合組織または種々の他器官系の痛みおよび多部位局所性炎症を伴っている。これらには以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:関節炎;強皮症;痛風(gout);全身性紅斑性狼瘡;リウマチ性多発性筋痛;線維筋痛;スティル病;慢性ブドウ膜炎;皮膚筋炎を含む随意筋の炎症を生じる障害、および散発性封入体筋炎を含む多発性筋炎;慢性背部または頚部痛および坐骨神経痛のような慢性炎症性状態が含まれるが、それらに限定されるわけではない。全身性紅斑性狼瘡は関節、皮膚、腎臓、心臓、肺、血管および脳の炎症を起こすことができる。その進行した形において、全身性紅斑性狼瘡状態は腎不全を起こすことができる。CD30Lに対する抗体での処置は、この疾患のマウスモデルにおいて腎不全の悪化を遅延させるようである(実施例6参照)。
【0080】
若年性または成人性発症糖尿病(自己免疫、糖尿病のインスリン依存性型、非インスリン依存性型および肥満媒介糖尿病を含む);特発性(idiopathic)副腎萎縮;アジソン病;甲状腺機能低下症;グレーブス病;ハシモト甲状腺炎のような自己免疫甲状腺炎;並びに多発性自己免疫症候群(タイプIおよびII)を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)種々の内分泌系障害を処置するために本阻害剤、組成物または組合せ療法を使用する方法も提供される。
【0081】
自己免疫硬化性胆管炎;小児脂肪便症(coeliac disease);
クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患;慢性膵臓炎を含む自己免疫膵臓炎;特発性胃不全麻痺;並びに胃および十二指腸潰瘍を含む特発性潰瘍、を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)胃腸系の状態もまた、本阻害剤、組成物または組合せ療法で処置可能である。
【0082】
自己免疫および特発性糸球体腎炎;並びに、前立腺肥大症を含む慢性特発性前立腺炎(非細菌性)のような泌尿生殖器系の障害を処置するための、本阻害剤、組成物または組合せ療法を使用する方法も含まれている。
【0083】
悪性貧血(pernicious anemia)および再生不良性貧血(aplastic anemia)を含む貧血症および血液学的疾患、およびファンコーニ再生不良性貧血;自己免疫溶血性貧血;特発性血小板減少性紫斑病(ITP);骨髄形成異常症候群(myelodysplastic sydrome)(不応性貧血(refractory anemia)、筒状担鉄赤芽球(ringed sideroblast)を伴う不応性貧血、過剰芽細胞(excess blast)を伴う不応性貧血、形質転換している過剰芽細胞(excess blast in transformation)を伴う不応性貧血を含んで);並びに自己免疫リンパ滲出性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome)(ALPS)を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)種々の血液学的疾患の障害を処置するために本阻害剤、組成物または組合せ療法を使用する方法もまた提供される。
【0084】
加えて、本阻害剤、組成物または組合せ療法はゴーシェ病、ハンチントン病および筋ジストロフィーのような遺伝性状態を処置するために使用される。
開示された本阻害剤、組成物または組合せ療法はさらに、ウイルス感染によるものではない、自己免疫または慢性炎症性肝炎のような肝臓に影響する状態を処置するために使用される。
【0085】
加えて、開示された本阻害剤、組成物または組合せ療法は、難聴を伴う種々の自己免疫または慢性炎症性障害を処置するために使用される。これらの一つは、自己免疫過程の結果と考えられている(即ち、自己免疫難聴)内耳性または蝸牛神経関連難聴である。この状態は現在ステロイド、メトトレキセートおよび/またはシクロホスファミドで処置されており、それはCD30/CD30L相互作用の阻害剤と同時に投与することができる。
【0086】
特発性リンパ管筋腫症;慢性非感染性気管支炎若しくは肺気腫を付随する慢性閉塞性肺疾患(COPD);並びに、嚢胞性線維症および特発性肺線維症のような線維性肺疾患を含む多くの炎症性肺障害もまた開示された本阻害剤、組成物または組合せ療法で処置できる。
【0087】
対宿主性移植片疾患(graft−versus−host disease)を含む移植に関連する障害もまた開示された本阻害剤、組成物または組合せ療法で処置可能である。対宿主移植片疾患を防止または軽減するため、骨髄移植または固形器官移植(心臓、肝臓、皮膚、腎臓または他の器官の移植を含む)に先立って、または同時に投与することができる。
【0088】
本阻害剤または開示された組成物または組合せ療法はまた、慢性炎症性眼疾患(自己免疫ブドウ膜炎を含む)を処置するために有用である。
本阻害剤または開示された組成物または組合せ療法はまた、多着床不全/不妊症;胎児損失症候群またはIV胚損失(自然流産);並びに子宮内膜症を含む女性生殖器系に影響を及ぼす炎症性障害を処置するためにも有用である。
【0089】
開示された本阻害剤、組成物または組合せ療法で処置可能な他の医学的障害には中枢神経系の慢性退行性疾患(chronic degenerative disease)が含まれる。これには例えば、多発性硬化症、全身性硬化症およびギラン−バレー症候群のような脱髄(demyelination)に関連した疾患(急性炎症性脱髄多発性神経障害、急性運動性軸索神経障害、急性運動感覚性軸索神経障害およびフィッシャー症候群を含む)が含まれる。好適な態様において、多発性硬化症はCD30/CD30L相互作用のアンタゴニスト(最も好適にはCD30Lに対する抗体)単独で、あるいはTNFα阻害剤またはIL−4阻害剤(最も好適にはsIL−4R)と同時に処置される。多発性硬化症は中枢神経系の慢性、退行性疾患の代表であり、脱随状態の他にまた、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ルー ゲーリッグ病);ベル麻痺;パーキンソン病および特発性慢性ニューロン退化を含んでおり、これらのすべてがCD30およびCD30Lの相互作用を阻害できる剤で処置することができる。多発性硬化症様疾患の軽減における抗CD30L抗体の効力は実施例5に例示されている。
【0090】
開示された本阻害剤、組成物または組合せ療法で処置可能な他の慢性炎症性状態には、寒冷凝集素症;ベーチェット症候群;シェーグレン症候群;および特発性腱鞘炎、ならびに遺伝性欠損症に関連する種々の慢性炎症性障害が含まれる。本阻害剤、組成物または組合せ療法はさらに、現在コルチコステロイドで処置されているであろう、ベル麻痺(特発性顔面麻痺);(進行中の感染に関連していない)慢性疲労症候群;慢性変性性椎骨盤疾患;湾岸戦争症候群;および重症筋無力症を処置するために有用である。
【0091】
皮膚または粘膜に関する障害もまた本阻害剤、組成物または組合せ療法で処置可能である。これらには以下のものが含まれる:ダリエー病、毛包性角化症、尋常性天疱瘡および腫瘍随伴性天疱瘡を含む棘細胞性疾患;赤鼻;円形脱毛症;水疱性類天疱瘡;湿疹;多形性紅斑および水疱性多形性紅斑(スティーヴェンズ-ジョンソン症候群)を含む紅斑;炎症性皮膚疾患;扁平苔癬;線状IgA嚢胞症(小児期の慢性水泡性皮膚症);皮膚弾性の損失;好中性皮膚炎(スイート症候群);毛孔性紅色粃糠疹;乾癬;壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum);皮膚弾性の損失;および中毒性表皮壊死症。
【0092】
本阻害剤、組成物または組合せ療法で処置できる他の疾患には以下のものが含まれる:自己免疫関連粘膜皮膚カンジダ症;アレルギー;サルコイドーシス;多中心性網組織球症;ヴェグナー肉芽腫症;巨細胞性動脈炎を含む動脈炎; 血管炎および慢性自己免疫心筋炎。
【0093】
ここに提供された化合物および組成物を使用して医学障害を処置するため、本発明に従った治療剤の治療的有効量がそれを必要としている哺乳類に投与される。障害の重度を反映する少なくとも一つの指標の持続的改善を誘導するために適した、用量および頻度の投与計画に従って剤が投与される。もし、患者が少なくとも1日離れた少なくとも2つの時点(しかし好適にはそれは1週、2週、3週または4またはそれ以上の週離れている)で改善を示すならば、改善は“持続的”であると考えられる。障害の重度は症候または徴候に基づいて決定されるが、慢性疾患状態の状態を評価するために医者によりしばしば使用される生活の質質問表のような、患者に与えられる質問票により決定されてもよい。
【0094】
患者の病気の重度を反映する一つまたはそれ以上の指標が、薬剤処置の頻度および持続時間が十分かどうかを決定するために評価されるであろう。選択した指標のベースライン値は、治療剤の最初の用量投与に先立った患者の試験により確立される。好適には、最初の用量投与の約60日以内にベースライン試験が行われる。
【0095】
例えば、もし処置されている状態が、リューマチ性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎のような関節炎状態であれば、処置の十分さを決定するための一つまたはそれ以上の指標を以下のものから選択することができる:圧痛、有痛または膨潤した関節の数;関節疼痛、圧痛または膨潤の程度;患者の自己評価(例えば、生活の質(quality of life)質問表);および医者の評価。多くの関節炎疾患には、患者の自己評価が満足すべき指標である。典型的自己評価質問票は、日常的活動を行う患者の能力、満足のいく状態の知覚、痛みのレベルなどを反映するであろう。関節炎またはここに説明された様な、処置可能な他の型の疾患に対し、測定可能な改善を誘導するために必要とされる処置の持続時間は典型的には1から数週間である。
【0096】
もし処置されている状態が多発性硬化症であれば、処置の十分さを決定するために適した指標は、以下の一つまたはそれ以上の改善を観察することを含んでいる:膀胱または腸制御;疲労;痙性;体または手の震え;筋衰弱;歩行能力;四肢のしびれ;集中する能力(例えば、単純記憶試験の実行);および痛みの自覚レベル。もしくは、指標は上記の生活の質質問表での患者評点であることもできる。
【0097】
もし処置されている状態が全身性紅斑性狼瘡であれば、処置の十分さを決定するための指標は、以下のものの一つにおいて観察された改善から成っている:疲労;熱;口および鼻の潰瘍;顔面発疹(“蝶型紅斑”);光感受性(SLEはしばしば日光への暴露後に再発する);胸膜炎;心膜炎;レイノー現象(寒さへの暴露で手の指および足の指への循環の減少);腎臓機能;および白血球数(SLE患者はしばしば白血球の数が減少している)。
【0098】
患者の状態における改善は、選択された指標(類)のベースラインを超える改善を患者が示すまで、本発明に従った治療剤用量を繰り返して投与することにより誘導される。慢性状態の処置において、満足すべき程度の改善は、通常、剤(単数又は複数)を少なくとも1ヶ月またはそれ以上(例えば、1、2または3ヶ月またはより長く)の期間にわたって繰り返して投与した後に得られる。いくつかの場合、1ヶ月もたたない内に、例えば、3週間、2週間、1週間後、または1回投与後にさえ改善を起こすことができる。1から6週間の処置持続時間、または1回投与でさえも、再発中間の寛解へ行き易い慢性状態を患っている患者の不定期的再発を処置するためには十分であることができる。持続的状態に対しては、もし望むなら処置を無期限に続けてもよい。状態が改善を示した後でさえ、維持療法を同一のレベルでまたは投与の用量または頻度を減らして無期限に続けてもよい。投与の用量または頻度が減らされていたら、患者の状態が悪くなった場合には以前のレベルで再び続けることができる。加えて、本発明の阻害剤での処置は、自己免疫または慢性炎症性状態へ成り易い患者へ予防的に与えることができる。
【0099】
本治療剤、組合せおよび組成物を治療的に投与するために、任意の有効な投与経路を使用することができる。もし注射されるとしたら、剤は例えば、関節間、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内または皮下経路で投与することができる。大量注射または連続的注入を使用してもよい。他の適した投与手段には、微粒子からの徐放性放出、インプラント等、エアロゾル吸入、点眼剤、ピル、シロップ、トローチ剤またはチューインガムを含む経口処方、ローション、ゲル、スプレー、軟膏または他の適した技術のような局所製剤が含まれる。
【0100】
あるいは、抗体またはその抗原結合断片のような蛋白様の剤は、蛋白質を発現する培養細胞の移植により投与することができる。一つの態様において、患者自身の細胞が、CD30/CD30L、IL−1/IL−1R、IL−4/IL−4RまたはTNF/TNFR相互作用を遮断する蛋白質をコードするDNAを用い、in vivoまたはex vivoでのトランスフェクションにより治療剤を発現するように誘導される。このDNAは、剤をコードする裸のDNAまたはリポソーム−カプセル化DNAを使用することにより、カルシウム−リン酸沈降DNAを使用することにより、または、トランスフェクションの他の手段により、患者の細胞内へ導入できる。ex vioでトランスフェクトされた自己由来細胞が患者体内に戻される。
【0101】
選択された投与経路に関わらず、処置計画は医薬品の一般的原理に従い、患者の要求に依存して調整することができることは言うまでもない。
治療剤が、例えば、CD30、CD30L、IL−1、IL−1R1、TNFα、IL−4またはIL−4Rに対する抗体のような抗体である場合、ヒトにおける治療的または予防的目的に対する好適な用量範囲は、0.1から20mg/kg、またはより好適には0.5−10mg/kgである。別の好適な用量範囲は、実施例2の実験で例示されているように(DeVita et al.,編,Cancer−Principles & Practice of Oncology,第4版,J.B.Lippincott,1993に従って、ヒト体重に調整された)、0.75から7.5mg/kgである。抗原に対する抗体の親和性の差を適応させるため、より多いまたは少ない投薬量当たりの抗体量を使用することができる。CD30:Fcの適した用量は0.01−20mg/体重kg、より好適には0.1−10mg/体重kgである。本発明に従って、阻害剤として使用される他の可溶性蛋白質に対しては、適した用量範囲は2−500μg/体重kg、0.5−10mg/体重kg、および10から50mg/体重kgである。患者の要求および処置している疾患の性質に従い、当業者が投与量および頻度を調節するであろうことは言うまでもない。
【0102】
以下の実施例は例示のために提供されるのであり、制限のためではない。当業者は、特に、ここに引用した種々の参照文献の教えを考えて、実施例に具体化された本発明の変形を作ることができることを認識するであろう。
【0103】
実施例1
モノクローナル抗体:CD30Lに方向付けられた
マウスCD30Lに方向付けられたモノクローナル抗体は以下のようにラット中で産生された。完全長マウスCD30Lを発現している10−20x106のトランスフェクトされたCHO細胞を用い、腹腔内経路によりLewisラットを繰り返し免疫した。ラットに血清力価が検出されたら、10x106のトランスフェクトされたCHO細胞を用いて、それらに静脈内追加免疫を与えた。3日後、免疫したラットからの脾臓細胞をAG8.653マウス骨髄腫細胞と融合させた。96ウェル中でハイブリドーマが首尾よく確立されたら、各々のウェルからの上清を、CD30LをコードしているDNAでトランスフェクトされたCHO細胞を用いるELISAアッセイ(CELISA)によりスクリーニングした。CELISAでは、組換えCD30Lを発現しているCHO細胞をELISAプレートに付着させ、各々の上清を、CHO細胞上に発現されたCD30Lと反応する能力でスクリーニングした。陽性ウェルからのハイブリドーマ細胞を48ウェルプレート中で増殖させ、CELISAにより、そしてまた、トランスフェクトされたおよびトランスフェクトされていないCHO細胞を使用する蛍光活性化セルソーター(FACS)によってスクリーニングした。トランスフェクトされたCHO細胞には結合したが、トランスフェクトされていないCHO細胞には結合しないハイブリドーマ細胞を選別し、天然にCD30Lを発現するマウスリンパ腫細胞(EL4細胞)に対して、FACSによりさらにスクリーニングした。組換え体および天然に発現されたCD30Lの両方を認識するハイブリドーマ単離物は、限界希釈クローニングにより2回クローン化し、その間、上清の活性をCELISAおよび/またはFACSアッセイにより各々の段階で追跡した。これらのクローンの一つ、M15クローンがさらなる繁殖のために選別された。追加の実験において、マウスCD30およびCD30L間の結合相互作用を、M15抗体が特異的に遮断することが決定された。
【0104】
実施例2
マウスにおけるコラーゲン誘導関節炎の処置
コラーゲン誘導関節炎(CIA)の処置に有効である関節炎処置はまた、ヒトにおける関節炎の処置に有効であり(例えば、Anthony and Haqqi,Clin Exp Rheumatol 17:240−244(1999)を参照されたい)、それ故、CD30/CD30L相互作用をアンタゴナイズする影響をCIAマウスで試験された。コラーゲン誘導関節炎(CIA)は、オスDBA/1マウス(Harlan,UK)を用い、タイプIIニワトリコラーゲン(Sigma)をマウスに注射することにより惹起した。0日目に完全フロイントアジュバントに加えた100μgのコラーゲンを注射し、21日目に不完全フロイントアジュバント中、200μgの投与量で追加投与した。コラーゲン注射は尾の基部に、皮内で行われた。このモデルにおいて、一般に75−100%のマウスが影響を受け、即ち、75−100%のマウスがコラーゲン注射後に関節炎徴候を示した。これらの実験において、CIAの表示は通常、冒されたマウスにおいて23日目に出現した。
【0105】
上記のようにコラーゲンが注射されたマウスに、実施例1に説明したように製造した、0.15−150μgの用量範囲のM15モノクローナル抗体を腹腔内で注射した。4回の実験が実施され、各々が試験群当たり13−15匹のマウスを含んでいた。4回の実験の各々において、陽性対照マウスは、CIAに対して有効であることが知られている、150μgのエタネルセプト(ENBRELR,Immunex Corporation)を受け、および陰性対照マウスは同量のヒトIgG(huIgG)またはラットIgGを受けている。M15、エタネルセプトまたはIgGの毎日の注射は21日目、即ち、第二のコラーゲン注射の日、に開始し、33日目まで続けた。
【0106】
これらの実験の間、処置群を知らされていない独立した観察者により、関節炎の臨床徴候を週3回マウスで評価した。このモデル系で確立されている関節炎指標システムを使用して疾患を評価した。評点するため、各々の足を指標に基づいた臨床評点に割り当てた。足評点は各々の動物で合わせ、その動物に対する臨床評点を決定した。使用された指標は以下のようである:
0=正常外観
1=1−2の足指における紅斑/浮腫
2=>2の足指における紅斑/浮腫、または踝/手関節における軽度の膨潤
3=足全体における紅斑/浮腫
4=基部関節内へ拡大した足全体の大きな紅斑/浮腫;関節硬直、機能喪失
改善された平均臨床評点は、M15を受けたすべての群において、M15投与の5日目までには、および一つの実験では投与の3日目までには明らかになった。4回の実験の最終結果は以下に示された表1−4に要約されている。平均臨床評点、疾患発生のパーセント(CIAを示しているマウス数を群のマウス総数で割った)、および重度疾患を示している影響を受けたマウスのパーセントはマウスの各々の群で計算した。“重度の疾患”を持っていると考えられたマウスとは、実験期間中の任意の時間に2よりも大きな臨床評点を持っていたマウスである。統計的有意性は、実験最終日での評点に基づき、マウスの陰性対照群および他群間の平均臨床評点の相違として決定される。統計的有意性はダネット法を用いたワンウエー分散分析法(ANOVA)を使用して決定した(H.J.Motuisky,Analyzing Data with GraphPad Prism,1999,GrdphPad Software,Inc.,San Diego,CA)。ワンウエーANOVAはデータが一方向に類別される場合に、3つまたはそれ以上の群を比較する。ダネット法は対照群と処置群を比較する。
【0107】
最初の実験はCIAマウスに150μg/日の用量のM15抗体を投与した効果を試験した。この実験の4または5日までに、陰性対照動物およびM15またはエタネルセプトを受けた動物間で、平均臨床評点の相違が現れ始めた。この最初の実験の結果は表1に要約されている。予期されるように、エタネルセプトを受けたマウス(陽性対照群)は、HuIgGを受けた陰性対照マウスと比較した場合、より低い疾患発生および減少した重度疾患発生を示した。M15を受けたマウスもまた、陰性対照マウスと比較して、より低い疾患発生および減少した重度疾患を持つマウスのパーセンテージを示した(表1)。加えて、M15群は実験最終日に(33日目)、陰性対照よりも低い平均臨床評点を持っていた。エタネルセプトおよびM15群の両方に対し、陰性対照と比較した平均臨床評点の最終日の相違は統計的に有意であることが観察された(p=0.05またはそれ未満)。
【0108】
【表1】
【0109】
第二の実験はM15の50μgおよび150μg用量を比較するために同様のプロトコールを用いた。結果は表2に示されている。この実験では、平均臨床評点の統計的に有意な改善は、エタネルセプト群および両用量のM15群の両方に対し、実験最終日に観察された。
【0110】
【表2】
【0111】
第三の実験において、M15の15、50および150μg用量が比較され、結果が表3に要約されている。再び、M15を受けたマウスは、陰性対照と比較してより低い疾患の発生、ならびにより低い重度疾患の発生を示した。対照と比べ、この実験におけるM15の3つすべての用量で、平均臨床評点の統計的に有意な改善が観察された。
【0112】
【表3】
【0113】
第四の実験において、陰性対照としてラットIgGを使用し、M15の0.15、1.5、15および150μg用量が試験された。この実験の結果は表4に示されている。表4に見られるように、平均臨床評点の改善は、より高い用量での用量依存性を示した。15および150μg用量では、臨床評点の改善が統計的に有意であった。
【0114】
【表4】
【0115】
実施例3
マウスコラーゲン誘導関節炎のTNF独立モデル
前に説明したp55およびp75 TNFαレセプター両方での標的化ヌル突然変異(Peschon et al.,J Immunol 160:943−952.1998)をCIA非感受性C57BL/6遺伝的背景からCIA感受性DBA/1遺伝的背景へ移動することにより新規マウスを発生させた。
【0116】
p55およびp75レセプターが二重に欠損されたDBA/1マウス(DAB/1p55-/-p75-/-)は、C57BL/6p55-/-p75-/-マウス(Peschon et al.,1998)とJackson Laboratoriesから得られたDBA/1を交配することにより発生させた。生じた二重ヘテロ接合体を再びDBA/1マウスと交配した。生じた両方の突然変異に対してヘテロ接合体であった子孫は、C57BL/6およびDBA/1 MHC対立遺伝子に特異的な抗体を使用するFACS分析により、DBA/1 MHC複合体(CIA感受性に必要とされる)でのヘテロ接合性をさらに試験した。C57BL/6およびDBA/1 MHC対立遺伝子に対する抗体はBD PharMingenから購入した。
【0117】
DBA/1 MHCに対してホモ接合性であった子孫は、p55およびp75 TNFレセプター突然変異の両方がヘテロ接合性のDBA/1マウスを発生させるため、さらに3世代DBA/1と交配した(DBA/1 N5 p55+/-p75+/-;“N5”は第5戻し交雑世代を示している)。DBA/1 N5 p55+/-p75+/-マウスは、p55およびp75 TNFレセプターが二重に欠損しているDBA/1マウス(DBA/1 N5 p55-/-p75-/-)のコロニーを確立するために異種交配させた。ヌル突然変異の各々がホモ接合性であるマウスを同定するため、耳穿孔で抽出されたDNAを用い、後者の交配による子孫からのDNAを、マウスp55およびp75 TNFR遺伝子に特異的なRCPを使用して分析した。
【0118】
p55遺伝子中の突然変異追跡のためには、以下のPCRプライマーが使用された:
p60−B: 5’−GGATTGTCACGGTGCCGTTGAAG−3’(配列番号9)
p60−E: 5’−CCGGTGGATGTGGAATGTGTG−3’(配列番号10)
p60−spe: 5’−TGCTGATGGGGATACATCCATC−3’(配列番号11)
pgk5’−66: 5’−CCGGTGGATGTGGAATGTGTG−3’(配列番号12)
上に掲げた4つのプライマーの各々25ピコモルを耳穿孔DNAへ加え、混合物を、94°1分、65°1分および72°30秒で32サイクルのPCRにかけた。PCR産物をTAE緩衝液中で流す3%USB高分解能アガロース(カタログ番号73422)ゲル上で分離し、可視化し、エチジウム ブロミドで染色した。上記プライマーを使用して予期されるPCR産物は、p55+/+については120bp、およびp55-/-については155bpであった。ヘテロ接合体マウスは両方の産物が得られることが予想された。約300−500bpに移動する追加の非特異的生成物がp55-/-マウスで時折見られた。
【0119】
以下のプライマーがp75突然変異を追跡するために使用された:
p80−Kas: 5’−AGAGCTCCAGGCACAAGGGC−3 ’(配列番号13)
p80i−1: 5’−AACGGGCCAGACCTCGGGT−3 ’(配列番号14)
pgk5’−66: 5’−CCGGTGGATGTGGAATGTGTG−3 ’(配列番号12)
これらのPCR反応は、94°1分、65°1分および72°30秒での32−34サイクルに50ピコモルのp80−Kas、100ピコモルのp80i−1および20ピコモルのpgk5’−66を使用した。PCR産物をTAE緩衝液中で流す3%USB高分解能アガロースゲル上で分離し、可視化し、エチジウムブロミドで染色した。上記プライマーを使用して予期されるPCR産物は、p75+/+マウスでは275bp産物が得られることが予想され、およびp75-/-マウスでは160bp産物が得られることが予想された。ヘテロ接合体マウスは両方の産物が得られることが予想された。追加の非特異的生成物が約50−100bpに時折見られた。
【0120】
ヘテロ接合性DBA/1p55-/-p75-/-マウスはPCRを使用してこのように同定され、その後同系交配された。
実施例4
DBA/1p55 -/- p75 -/- マウスにおけるコラーゲン誘導関節炎
実施例3のp55-/-p75-/-DBA/1マウスを使用する以下の実験は、CD30かまたはIL−1によるシグナル伝達を阻害する試験剤を投与することにより、TNFα−独立性CIAが効果的に処置できることを示している。
【0121】
実施例2に説明したプロトコールに従って異種タイプIIコラーゲンを投与することによりp55-/-p75-/-DBA/1マウスにCIAが誘導された。2つの実験が実行され、各々、試験群当たり15匹のマウスを使用した。これらの実験は、試験されている阻害剤がこれらのマウスにおけるCIAの発生を防止できるかどうかを決定するために設計された。追加免疫の時点でマウスを無作為に群に分割し(n=15)、試験剤かまたは対照蛋白質を14日間、毎日注射した。
【0122】
野生型DBA/1と比較し、コラーゲンを注射したDBA/1p55-/-p75-/-マウスは遅延された発症および疾患のより遅い進行を示した。しかしながら、第二のコラーゲン注射15−60日後に、著しい臨床徴候が突然変異マウスに現れた。予想されるように、p75 TNFR.Fc(ENBRELR;Immunex Corporation)で処置した場合、DBA/1p55-/-p75-/-マウスでは関節炎徴候の減退は観察されなかった。対照的に、CIAを持つ野生型DBA/1マウスにおいては、関節炎徴候の軽減にENBRELRは非常に有効であった(上記実施例2参照)。従って、p55-/-p75-/-DBA/1マウスで観察された関節炎はTNFαにより仲介されていない。
【0123】
TNFα以外の分子がDBA/1p55-/-p75-/-マウスにおけるCIAにおいてなにか役割を果たしているかどうかを決定するために実験が行われた。これらの実験において、CD30/CD30LまたはIL−1/IL−1R1相互作用を阻害する剤が、この動物モデルにおけるCIAに影響するかどうかをみるために試験された。IL−1R1(M147;Immunex Corporation)かまたはマウスCD30L(M15;実施例1に調製が記載されている)に対するモノクローナル抗体が、これらのマウスに腹腔内注射により投与され、一方、対照マウスはラットIgGを受けた。各々の実験群は15匹のマウスから成っていた。抗体処置は21日目に開始され(コラーゲン追加免疫の時に)、実験#1では21日間、および実験#2では28日間投与された。M15抗体については、1日当たり50μgの用量が投与され、M147抗体については、2日毎に50μgの用量が投与された。実施例2で記載した臨床評価システムを使用し、臨床評点が週に3回決定された。
【0124】
表5(実験#1)および表6(実験#2)に例示されているように、M147またはM15の投与は、DBA/1p55-/-p75-/-マウスにおいて関節炎を著しく軽減し、M147は疾患のほとんど完全な回復を生じた。
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
これら2つの実験の結果は、コラーゲン誘導関節炎がTNF独立性様式で確立できること、およびIL−1/IL−1R1かまたはCD30/CD30L相互作用の阻害はこれらのマウスにおける疾患を効果的に軽減することを示している。
【0128】
実施例5
マウス実験的脳脊髄炎モデル
この実施例は、多発性硬化症を処置するための、CD30/CD30L相互作用アンタゴニストの効力を示している。多発性硬化症のためのマウスモデルがこの目的に用いられた。この疾患のよく受け入れられている実験的モデルである、慢性実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、Mendel et al.(Eur.J.Immunol.25:1951−59,1995)により記載されているプロトコールを一部変更したものを使用し、メスC57BL/6マウス(Taconic Farms Inc.,Germantown,NY)で誘導された。簡単には、疾患誘導は、ラット ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質に由来するMOG35−55ペプチドでのマウスの免疫化を含んでいる(Mendel et al.,1995)。Mendelらの疾患誘導プロトコールの変更には、より低い用量の免疫化MOG35−55の使用(下記参照)、追加免疫化なし、および完全フロイントアジュバントの代わりのRIBIRアジュバント使用が含まれる。
【0129】
EAEを誘導するには、年齢および体重が一致したマウス群(群当たり11−13マウス)に100μg用量のMOG35−55を与えた。MOG35−55を0.2mlのRIBIアジュバント(Corixa Corporation)に乳化し、毛を剃ったわき腹の3カ所に皮下注射した。発症が促進されたEAEを誘導するには、マウスに第二の実験で(実験2)、500ngの百日咳毒素(List Biological Laboratory Inc,Campbell,CA)の静脈内注射を行い、それはマウスにMOG35−55投与した48時間後に投与した。実験1のマウスは百日咳毒素を与えておらず、従って、実験2における疾患発症は実験1と比較すると促進されていた。
【0130】
抗体またはプラセボの投与は、MOG35−55を投与した(1日目)次の日に開始し、11日目まで続けられた。各々のマウスに0.2mlの発熱物質を含まないリン酸緩衝化食塩水(PBS)または以下のものを含んでいる0.2mlのPBSを1日おきに腹腔内注射した:(i)100μg M15(抗CD30L);(ii)100μg ラットIgG(Sigma);または(iii)75μg M147(抗IL−1R1)。エンドトキシンレベルはすべての試薬で<10EU/mg蛋白質であった。処置群について知らされていない独立した観察者により、体重損失、疾患発症およびEAEの臨床徴候の重度についてマウスを35日(実験1)または30日(実験2)間、毎日モニターした。
【0131】
EAEの重度は標準指標システムを使用して評価した:このシステムにおいては、“0”は無徴候マウスを示すために使用し、0.5から4の臨床評点範囲が上行性麻痺の変化の程度を示すために使用されている。EAEの重度は普通に使用されているEAE評点システムをわずかに変更したものを使用して評価した。本システムにおいて、“0”は疾患の証拠を持っていないマウスを示すために使用し、1−5の評点は以下のように上行性麻痺の変化の程度を示すために使用した:1、尾麻痺;2、後脚衰弱;3、部分的後脚麻痺;4完全後脚麻痺;5瀕死または死亡。上で説明した疾患プロトコールは対照マウスに疾患の急性挿入(ピーク評点2−4)を誘導し、それから少なくとも部分的にはほとんどが回復した。それ故、疾患の急性挿入は致死的ではなく、マウスの評点は5には届いていない。前記のスケールは、EAEの初期徴候を示すものの、尾の完全な麻痺は示さない“0.5”の評点をマウスに与えることを含むように変更した。0.5の評点を与えられたマウスは以下の徴候のいくつかまたはすべてを示した:1−2グラムの一夜体重損失;尾をつかんで持ち上げた場合の著しい震え;および尾先端の衰弱。
【0132】
EAE発症日の中央値はKaplan−Meier Survival分析により決定した。群間の発症の有意な相違をLog−Rank比較を使用して評価した。マウス群間のEAE発生における相違の統計的有意性を分析するため、Fischer抽出検定を使用した。
【0133】
これら二つの実験の結果は、EAE発症、発生および臨床過程の重度に対する、両方の試験抗体の改善効果を示した。下記表7に示されているように、抗CD30L(M15)または抗IL−1R1(M147)の投与は、遅延された疾患発症および両方の実験での減少した疾患の発生を生じた。
【0134】
【表7】
【0135】
表7において、M15またはM147を受けたマウスの合わせた結果は、ラットIgG群と比較した場合、疾患の発生はp<0.05。実験1において、M15マウスに対する発症日の中央値、ラットIgGに対してp=0.067およびPBSに対してp<0.05。表5の実験2において、発症日の中央値、M15およびM147群はラットIgGに対してp<0.005。
【0136】
これら同一の二つの実験について、表8は急性疾患過程を通した各々の群内での体重における平均パーセント変化を示している。表8に示されているように、抗CD30Lかまたは抗IL−1R抗体を受けたマウスは、ラットIgGまたはPBSを受けたマウスよりもこの期間の体重損失が少なかった。
【0137】
【表8】
【0138】
表8の体重データを計算するため、各々のマウスの基準体重は、免疫化に関して12日目(実験1)または10日目(実験2)の体重として定義した。各々の実験におけるすべてのマウスは0日目には一致した体重であり、すべての群の平均体重は0−12日(実験1)または0−10日(実験2)の間に同様な様式で増加したので、これらの日を参照時点として選択した。種々の群の平均体重は、EAE発症に関連する体重損失のため、これらの時点後は発散した。表8の左欄は、各々の群におけるすべてのマウスで計算した平均パーセント体重変化を示しており、即ち、臨床的に冒された(少なくとも0.5の臨床評点)および臨床的に冒されていないマウスの両方がこの計算には含まれている。表8の右欄は、臨床的に冒されているマウスのみに対する、疾患の急性期間の平均体重変化を示している。冒されたマウスの体重変化は、各々のマウス個体の基準体重および疾患発症後にマウスで観察された最少体重間の相違に基づいて計算した。疾患の臨床的証拠を決して示さなかったマウスに対しては、各々の冒されていないマウスの基準体重と実験25日目のその体重を比較することにより表8のパーセント体重変化を計算した。
【0139】
表8のデータは、MOG35−55を注射したマウスで観察された体重損失を遅くすることにおいて、抗CD30Lかまたは抗IL−1Rは有効であることを例示している。これらの体重相違の統計的有意性を決定するため、Student t検定を使用した。統計的に有意であると認められた数字が表8においてアステリスクで印を付けられており、p値は以下のようであった:*ラットIgG対照に対してp<0.05、**ラットIgG対照に対してp<0.01、***ラットIgG対照に対してp<0.001。
【0140】
表9は実験1および2の臨床評点結果を示している。群平均およびSEMは各々のマウスについての臨床評点ピークに基づいて計算した(0は冒されていないマウス;0.5から4は冒されたマウスに対して)。各々の抗体処置群の平均臨床評点を、Student t検定を使用してラットIgG処置群と比較し、p値が表9の最後の欄に示されている。
【0141】
【表9】
【0142】
表9に示されているように、対照マウスと比較すると、M15かまたはM147で処置したマウス群では臨床評点に著しい相違が観察された。統計的に有意であると決定された相違(p<0.05)は表9においてアステリスクで印を付けられている。
【0143】
実施例6
CD30Lの遮断は全身性紅斑性狼瘡のマウスモデルにおいて腎不全を遅延させる
メス(NZBxNZW)F1ハイブリッドマウス(以後“NZB/Wマウス”と称される)は、二本鎖DNA(dsDNA)に対する血清自己抗体の存在により特徴付けられる狼瘡様疾患を自発的に発症する。(最終的には全腎不全を経験する)これらのマウスは、ヒトにおける狼瘡をよりよく理解するおよび処置することを目指した実験のモデルとしてしばしば使用される。期間を通して、NZB/Wマウスにおけるこの状態は蛋白尿症の発現により明白となるように、腎臓機能不全へ進行する。これらのマウスにおける疾患の発症および進行を研究するための試行実験において、26週齢までには、約半数が血清抗dsDNA力価を持ち、約10%が蛋白尿症を持っていた。38週齢までには、20%のマウスが死亡し、残りのマウスの内の52%が蛋白尿症陽性であり、98%が血清抗dsDNA力価を持っていた。
【0144】
32週齢のメスNZB/Wマウスが、抗CD30Lが狼瘡様疾患の発生を遅延できるかどうかを決定するための実験に使用された。32週齢の老齢マウス群の内、98%はdsDNAに対する抗体について血清陽性であったが(ELISAにより決定された)、蛋白尿症(CHEMSTRIPR;Rocheを使用して検出された)による評価によると、40%のみしか腎疾患へ進行していなかった。蛋白尿症が陰性であったこの群からのマウスが以下の実験に使用された。
【0145】
蛋白尿症を持たない32週齢NZ/Bマウスを2群に分割し、各々の群を、腹腔内注射により投与した、150μgの抗CD30L(M15)(10匹のマウスの群)または対照としてラットIgG(9匹のマウスの群)で処置した。処置を5週間続け、マウスは蛋白尿症の存在を週毎に評価した。この実験の結果から計算されたおおよその値が下記表10に要約されている。
【0146】
【表10】
【0147】
表10のデータは、対照マウスと比較して、抗CD30Lで処置されたマウスは蛋白尿症の発生が減少する傾向を示している。1−5からのスケールをこれらのマウスの蛋白尿症の程度を評価するために使用した。5週において、この実験における対照マウスの平均蛋白尿症指標は1.7であり、一方、M15処置マウスは0.6の平均蛋白尿症指標を持っていた。このことは、全身性紅斑性狼瘡を患っているヒトは、CD30Lに対する抗体またはCD30/CD30L相互作用のアンタゴニストを用いた処置により恩恵を受けるであろうことを示唆している。
【0148】
上に示された結果を確認するため、メスNZB/Wマウスの第二の群を、dsDNAに対する抗体が血清に最初に現れたとして処置群に無作為に割り当てた。この実験は、抗dsDNA力価の進行および蛋白尿症の進行に対する処置の効果を試験するために計画された。マウスの一つの群は150μgの抗CD30L(M15)で処置し、他の群は対照としてラットIgGで処置した。処置は、3週間の期間、腹腔内注射により週3回行った。dsDNAに対する血清抗体の力価および蛋白尿症の出現について、マウスを毎週モニターした。
【0149】
別の実験において、抗CD30L処置の効力が、化学的に誘導された狼瘡モデルで試験されるであろう。このモデルにおいて、イソプレノイドアルカン プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)の投与は自己抗体産生および免疫複合体仲介腎炎を誘導する。このモデルの一つの利点は、特定のマウス系統に制限されないことである。最初の実験はマウス正常BALB/cおよびC57BL/6系統で進行中である。
【配列表】
Claims (7)
- リューマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、多発性硬化症、および全身性紅斑性狼瘡からなる群より選択される状態を処置するための組成物であって、CD30Lに対して特異的であり、そしてCD30LへのCD30の結合を阻害できる抗体を含み、ここで前記抗体は、患者の状態の重度を反映する少なくとも一つの指標における持続された改善を誘導するために適している用量および頻度の投与計画に従って投与され、もし少なくとも1日離れた少なくとも二つの時点で患者が改善を示すとすれば、改善は持続されたと考えられる、前記組成物。
- 患者がヒトである、請求項1に記載の組成物。
- 状態がリューマチ性関節炎である、請求項1に記載の組成物。
- 状態が多発性硬化症である、、請求項1に記載の組成物。
- 状態が全身性紅斑性狼瘡である、請求項1に記載の組成物。
- TNFα阻害剤での処置に抵抗性であるリューマチ性関節炎、多発性硬化症、または全身性紅斑性狼瘡を処置するための組成物であって、CD30Lに対して特異的であり、そしてCD30LへのCD30の結合を阻害し、それによりCD30またはIL−1によるシグナル伝達を遮断することのできる抗体を含み、ここで、前記抗体は、患者の状態の重度を反映する少なくとも一つの指標における持続された改善を誘導するために適している用量および頻度の投与計画に従って投与され、もし少なくとも1日離れた少なくとも二つの時点で患者が改善を示すとすれば、改善は持続されたと考えられる、前記組成物。
- 前記抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体からなる群より選択される、請求項1または6に記載の組成物。
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