JP4935317B2 - 回転構造体の振動解析装置および振動解析方法 - Google Patents
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Description
図3は、ターボチャージャの回転部、すなわちタービンとコンプレッサの翼車と、これらの翼車が固定される共通のシャフトと、を模した回転構造体40を示す図である。回転構造体40は、中心軸回りに回転対称である。いくつかの直径の異なる部分を含んだ弾性軸42に、タービンおよびコンプレッサの翼車に相当する剛体円板44,46が固定されている。これらの翼車の弾性振動の固有振動数は、軸の固有振動数に比べて十分高いので、剛体として取り扱うことができ、慣性特性のみを表現する。剛体円板44の質量、直径回りの慣性モーメント、極慣性モーメントをそれぞれ、M1,Id1,Ip1、同様に剛体円板46のそれぞれをM2,Id2,Ip2と記す。回転構造体40は、二つの剛体円板44,46間にある、幅Bの二つの単層のすべり軸受48,50で支持される。また、剛体円板44,46の両側に不釣合い質量Ui(i=1,2,3,4)を想定する。すべり軸受48,50で支持された回転構造体が、速度ωで回転する系が解析対象のモデルとなる。
図3において、x,y方向の振れ回り振動を考え、有限要素法によりその運動方程式を導く。回転構造体40は、弾性軸42をはり要素で分割し、剛体円板44,46を剛体要素で表現する。各要素の特性行列については、ネルソン(Nelson)、山本敏夫・石田幸男らが下記文献で提案した式を用いる。運動方程式の導出については、山本敏夫・石田幸男著の下記文献を参照できる。
山本敏夫・石田幸男著,回転機械の力学、コロナ社
図4に、はり要素の両端における接点変位を示す。u,vは、x,y方向の並進変位、θx,θyは、x,y軸周りの回転変位(たわみ角)を表す。はり要素の接点変位ベクトルqe sを式(1)のように定義する。ここでi,jは、はり要素の両端を示す。
剛体要素の質量は、その重心位置に集中させる。重心位置の節点をiとし、図4の定義に従って、剛体要素の節点変位ベクトルqe dを式(6)で表す。
節点iの不釣合い(アンバランス)の大きさをUi、位相をαiとすると、節点iにおける強制ベクトルFiuは、式(10)と表される。tは時間を表す。
すべり軸受の潤滑流体のよる力、すなわち動圧効果による油膜反力は、レイノルズ方程式を解いて得られる油膜圧力を軸受全面で積分することによって求められる。この解法については、例えば、染谷常雄著「内燃機関の潤滑」を参照できる。油膜反力を求めるに当たっては、負圧による油膜破断を考慮して、正圧の範囲だけで積分するのが精度が良いとされているが、自励振動が発生して、軸が軸受内で大きく振れ回る場合は、正圧の範囲が時々刻々と変化することになる。一方で、すべり軸受の油膜力の計算は、運動方程式の数値積分において、最も負荷が高くなる。ここでは、計算効率と精度を両立させるため、下記ランド(Lund)らの方法を参考にしてレイノルズ方程式の短軸受近似解から、変化する正圧の範囲を考慮した油膜力の解析式を導く。
BADGLEY,R.H.,BOOKER,J.F.,Trans.ASME,J.Tri.,Lud.,Vol.91(10),(1969),p.625-633
前記の要素特性行列と力ベクトルを全要素について組み上げることにより、全系の運動方程式(23)を得る。
図7は、回転構造体40の振れ回り振動の周波数分析結果を示す図である。横軸が振動周波数、縦軸が回転構造体の回転速度、円の直径は振幅を示す。周波数ωの不釣合い振動Vに加えて、(1/2)ωの自励振動Sが発生することが分かる。また、不釣合い振動Vの共振点R付近においては、自励振動Sがなくなっていることが分かる。
図13は、図3に示した回転構造体40を浮動ブッシュ軸受54,56で支持した系を示す図である。回転構造体40については、すでに説明している。回転構造体の振動は、円錐、円筒の剛体モードと、曲げ振動モードを含むx,y方向の振れ回り振動のみを取り扱う。z方向の振動については、固有振動数が対象周波数より十分高いので、ここでは扱わない。二つの剛体円板44,46に模されるコンプレッサおよびタービンの翼車の弾性振動の固有振動数も、対象周波数域より十分高いので、これらの弾性振動も考慮しない。回転構造体40の回転速度ωは一定とする。振れ回り振動の強制力として、コンプレッサおよびタービンのアンバランス修正面Ui(i=1,2,3,4)で定義される不釣合いを考慮する。
回転構造体40についての考察は、すでに示したので、ここでは油膜力についてのみ説明する。
図15に、浮動ブッシュ軸受54,56の寸法諸元の定義を示す。D1,D2は軸径、軸受径、B1,B2は浮動ブッシュ60の内側、外側の油膜有効幅(ブッシュ全幅から面取り長さを引いた幅)、C1,C2は、浮動ブッシュ60の内側、外側の半径隙間を表す。油膜力の計算は、前述した単層のすべり軸受48,50の手法を用いて行う。ただし、浮動ブッシュ軸受は、単層のすべり軸受に比べて構造と潤滑油の流れが複雑であるので、以下の仮定の下に油膜力の近似計算を行う。
・油膜の圧力、粘性摩擦トルクの計算において、軸受側からの強制給油圧と浮動ブッシ ュの油穴の影響は無視する。
・軸受内の軸の傾き、および浮動ブッシュの傾きは無視する。
・軸受内の軸、浮動ブッシュ、軸受の弾性変形は無視する。
・潤滑油の粘度の計算においては、粘性摩擦熱による油膜の温度上昇を簡易的に考慮す る。この温度上昇の計算においては、潤滑油の流量の見積もりが必要なため、軸受側 の強制給油圧と浮動ブッシュの油穴の影響を考慮する。
浮動ブッシュ60の内側油膜62に発生する流体力は、浮動ブッシュに対する軸の相対運動によって決定される。図16に、その相対運動を表す状態量を示す。e1は浮動ブッシュ60の中心Omに対する軸42の中心Osの偏心量、γ1はその偏心角、ωは軸42の回転速度、ωmは、浮動ブッシュの回転速度を表す。なお、R1は軸の半径(=D1/2)である。浮動ブッシュに対する軸のx,y方向の相対変位を(x1,y1)とすると、e1、γ1は次式(31)で表される。
浮動ブッシュの外側油膜64に発生する流体力は、軸受に対するメタルの相対運動によって決定される。ここでは、軸受は固定壁とする。図17に浮動ブッシュ60の運動を表す状態量を示す。e2は軸受中心Obに対する浮動ブッシュの中心Omの偏心量、γ2はその偏心角、ωmは浮動ブッシュの回転速度を表す。なお、R2は浮動ブッシュの外半径(=D2/2)である。軸受に対する浮動ブッシュのx,y方向の相対変位を(x2,y2)とすると、e2,γ2は次式(40)で表される。
回転構造体の要素特性行列と各作用力をまとめると、全系の運動方程式は次の連立常微分方程式(49)として記述される。
図18に軸の振れ回り振動(図13において弾性軸42の左端の変位)の周波数分析結果を示す。不釣合い振動(回転1次成分)Vには、6万rpm付近で曲げモードの小さな共振現象がある。不釣合い振動により低周波数側で自励振動(オイルウィップ)S1,S2が発生する、低速域の2万rpm付近で、(1)に示すように円錐モードの自励振動が発生する。続いて3万rpm付近では、(1)より若干周波寸の低い(2)に示す円錐モードの自励振動が発生する。さらに、不釣合い振動の共振点を超えた8万rpm付近で、(3)に示す曲げモードと円筒モードが練成した自励振動が発生する。これより高速行きでは、(2)のモードの自励振動と、(3)のモードの自励振動が同時に発生する。
Claims (6)
- 回転構造体の振動を解析する回転構造体の振動解析装置であって、
有限要素法を用いて作成された回転構造体の振動解析モデルを取得する手段と、
前記回転構造体を支持するすべり軸受の流体力モデルを取得する手段と、
前記回転構造体の振動解析モデルと前記すべり軸受の流体力モデルから、すべり軸受で支持された回転構造体の運動方程式を導く手段と、
運動方程式を解いて、回転構造体の振動と、軸受流体の発生する力との時刻歴応答を算出する手段と、
算出された時刻歴応答を周波数分析することにより、回転構造体の振動解析を行う手段と、
を有する回転構造体の振動解析装置。 - 請求項1に記載の回転構造体の振動解析装置であって、前記すべり軸受の流体力モデルは、浮動ブッシュ軸受のモデルである、回転構造体の振動解析装置。
- 請求項1または2に記載の回転構造体の振動解析装置であって、
回転構造体の振動解析モデルは、回転構造体の回転の中心となる中心軸と同軸の複数のはり要素にて作成された振動解析モデルである、
振動解析装置。 - 請求項1または2に記載の回転構造体の振動解析装置であって、
回転構造体の振動解析モデルは、回転構造体の回転の中心となる中心軸と同軸の複数のはり要素と少なくとも一つの剛体円板要素にて作成された振動解析モデルである、
振動解析装置。 - コンピュータを、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転構造体の振動解析装置として動作させるためのコンピュータが読み取り可能なプログラム。
- 回転構造体の振動を解析する回転構造体に振動解析方法であって、
有限要素法を用いて回転構造体の振動解析モデルを作成する工程と、
前記回転構造体を支持するすべり軸受の流体力モデルを作成する工程と、
運動方程式を解いて、回転構造体の振動と、軸受流体の発生する力との時刻歴応答を算出する工程と、
算出された時刻歴応答を周波数分析することにより回転構造体の振動解析を行う工程と、
を有する回転構造体の振動解析方法。
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