JP4934817B2 - マイクロフロー型バイオセンサおよび希少糖の検出または定量への使用 - Google Patents
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Description
MFIA :Micro Flow Injection Analysisの略。
DTE : D-タガトース-3-エピメラーゼ(D-Tagatose-3-Epimerase)の略。D-タガトースの3位の水酸基をエピメリ化する。本発明者の何森健によって見いだされた酵素である。
DFDH : D-フルクトース デヒドロゲナーゼ(D-Fructose Dehydrogenase)の略。D-フルクトース(D-Fructose)からアクセプターの存在条件下において5-ケト-D-フルクトース(5-keto-D-fructose)を生じさせる酵素である。
CPE : カーボンペーストエレクトロード(Carbon paste electrode)の略。酵素とカーボンペーストを混ぜ合わせたものを電極先端に装着することによって作成した電極である。
イズモリング : 50種類以上に及ぶ自然界に微量にしか存在しない単糖(希少糖)を含む、全単糖の分子構造と生成酵素の関連をリング状に体系化したものである。
また、別の態様では、PETからなる絶縁性基板上に、スクリーン印刷により電極系を形成した。この電極系上にFDHおよびフェリシアン化カリウムをCMC0.5wt%に溶解させた混合水溶液を滴下し、40℃の温風乾燥器中で10分間乾燥させて反応層を形成した。親水性高分子、酵素および電子受容体の混合溶液を一度に滴下、乾燥させることによって製造工程を簡略化させることができる。また、乾燥時の温度範囲としては、酵素の失活がみられず、かつ短時間で乾燥可能な温度ということで20℃から80℃までが適している。
さらにまた、別の態様では、PETからなる絶縁性基板上に、電極部分を形成した。つぎに、電極系と試料供給孔である基板先端部の間にフェリシアン化カリウムをリン酸緩衝液(pH=4.5)に溶かした溶液を滴下、加熱乾燥してフェリシアン化カリウムを含む水素イオン濃度制御層を形成した。加熱温度によって乾燥に要する時間が変化し、その結果フェリシアン化カリウムの結晶粒径をコントロールすることができる。乾燥時間を短くすると結晶粒径は小さくなり、試料液への溶解速度が高められる。よってセンサ応答速度を速くすることが可能である。フェリシアン化カリウムが反応層中で酵素と共存している場合には、加熱によって酵素の活性が低下するため、加熱乾燥の際の温度を自由に設定することはできない。さらに、水素イオン濃度制御層にフェリシアン化カリウムを含ませることは、酵素とフェリシアン化カリウムを分離することになり、センサの保存特性を著しく向上させることができる。
D-プシコースは、D-グルコースやD-フラクトースなどの単糖と比べて脂肪合成を促進せず、体脂肪、特に腹腔内脂肪を蓄積させない糖として、D-プシコースが注目されている(非特許文献2)。また、D-プシコースの有効エネルギー価はほぼゼロであることも報告されている(非特許文献3)。D-プシコースは、D-フラクトースを含有する複合体結晶性糖質として大量生産する方法が確立される可能性が高く(特許文献3)、甘味料としての用途が期待されるところである。
また、ラットにおいて、でんぷんまたは蔗糖を経口投与したときの血糖上昇に対するD-プシコースの効果について実験を行った結果、でんぷんまたは蔗糖を経口負荷した場合に起こる血糖上昇を、同時に経口投与したD-プシコースが顕著に抑制することも確認できた(特許文献4)。
上記のとおり、香川大学では、希少糖を、自然界に多量に存在する糖から世界で初めて大量生産することに成功し、その様々な機能を明らかにして来た。しかしながら、その測定法が確立されていないことや生体内でのモニタリングが困難であるため、応用研究開発の進展が遅れているのが現状である。その定量には労力と時間を必要としている。そこで本発明では、希少糖生産の根幹原料であるD-プシコースを迅速かつ高感度に測定、モニタリングすることを目的とした希少糖測定用新規バイオセンサを構築することを目的とした。すなわち、微量の希少糖の検出をはじめ、生体内での情報伝達への関与や、薬理効果など、様々な効果をモニタリングすることができる、迅速で高感度な希少糖測定用新規バイオセンサの開発と実用化を目的とした。
本発明の更に別の目的は、食品中の希少糖の検出および/または検出における分析用具としてのバイオセンサの使用方法の提供である。
(1)
測定したい試料を第一ラインに向けてインジェクションするインジェクションポートを包含し、測定したい試料中に含まれる特定成分との直接反応で測定対象の基質を生成する酵素を固定化したカラムを装着した第一ライン、生成した測定対象の基質を他の化合物に変換する機能を有する物質を包含する電極系を構成する第二ライン、および第一ラインと第二ラインへの送液を切り換えるスイッチングバルブよりなる2ライン型スイッチングバルブ方式のマイクロフローにおいて、第一ライン用の緩衝液Aの容器がポンプ1とスイッチングバルブ1を介してインジェクションポートに、またはさらに他のスイッチングバルブ3を介して第二ラインに接続され、第二ライン用の緩衝液Bの容器がポンプ2とスイッチングバルブ2,3を介して第二ラインに、またはさらに他のスイッチングバルブ4を介してインジェクションポートに接続されることを特徴とするバイオセンサ。
(2)緩衝液Aおよび緩衝液Bが電子伝達体を包含する(1)に記載のバイオセンサ
。
(3)上記電極系が、マイクロフローセルに配置された作用極および対極を含み、マイクロフローセルには測定対象の基質、緩衝液および電子伝達体を包含する反応液が送液される電極系である(1)または(2)に記載のバイオセンサ。
(4)前記生成した測定対象の基質を他の化合物に変換する機能を有する物質が、前記作用極上またはその近傍に設けられた(3)に記載のバイオセンサ。
(5)特定成分がD-プシコースであり、測定対象の基質がD-フラクトースであり、D-プシコースとの直接反応でD-フラクトースを生成する酵素がD-タガトース-3-エピメラーゼ(DTE)であり、および生成したD-フラクトースを他の化合物に変換する機能を有する物質がD-フラクトース デヒドロゲナーゼ(DFDH)である(1)ないし(4)のいずれかに記載のバイオセンサ。
(6)DTE固定化カラムを装着した第一ライン、DFDH固定化カーボンペースト電極(CPE)を装着した第二ラインよりなる(5)に記載のバイオセンサ。
(7)第一ラインの前に、D-アロースをD-プシコースに転換する酵素を固定化したカラムを装着したラインを設ける(6)に記載のバイオセンサ。
(8)上記CPE表面には選択的透過性を示す膜が装着されている(6)または(7)に記載のバイオセンサ。
(9)測定したい試料を、DTE固定化カラムを装着した第一ラインにインジェクションし、DTEの最適な条件において反応させ、次に、反応が終了すると同時にスイッチングバルブを作動させ、DFDHに最適な条件に設定した第二ラインへ反応液を送液し、第二ラインは、第一ラインの緩衝液よりもイオン強度が高く設定されており、このことによって第二ラインの緩衝液が反応溶液中に少量混合されるだけでpHがDFDHの最適値へと変化し、その後、第二ラインに装着されたDFDH固定化カーボンペースト電極表面にて反応液中のD-フルクトース量を測定することによって、サンプル中のD-プシコース量を測定する(5)、(6)、(7)または(8)に記載のバイオセンサ。
(10)(1)ないし(9)のいずれかに記載のバイオセンサを用いて血清、血漿、血液、汗、尿、細胞からなる群から選ばれる生体試料、医薬品・食品工業における原料または製品の試料中に含まれる特定成分を検出または定量する希少糖の検出または定量法。
よって、本発明により、食品または飲料中の希少糖を検出および/または検出または定量するためのバイオセンサを提供できる。また、食品中の希少糖の検出および/または検出における分析用具としてのバイオセンサの使用方法を提供できる。
本発明のバイオセンサは、希少糖生産の根幹原料であるD-プシコースに着目した上記のD-フラクトースとD-プシコースの関係を用いるものであり、第一ラインでの反応は、イズモリングにおいて、D-プシコースに到る複数の反応を用いる変形が可能である。たとえば、D-アロースについて、イズモリング上のD-アロースとD-プシコースは非常に近く位置しており、これらはL-ラムノースイソメラーゼによって転換される。つまりL-ラムノースイソメラーゼとの最適条件を検討することによってD-プシコースに転換し、その後でD-フラクトースに転換し、D-フラクトースセンサ(第二ライン)にインジェクションすると、D-アロースに相当する電流応答が確認される。
また、各緩衝液が最適なタイミングと比率で切り換えることが可能なスイッチングバルブ方式を採用する。これらの解決策として、本発明は、2ライン型のスイッチングバルブを採用したMFIAシステムとした。
特定成分がD-プシコースであり、測定対象の基質がD-フラクトースである場合、D-タガトース-3-エピメラーゼ(DTE)とD-フラクトース デヒドロゲナーゼ(DFDH)がそれぞれ用いられる。特定成分がD-プシコースとD-タガトース-3-エピメラーゼ( DTE)が効率よく反応するように緩衝剤を、D-フラクトースとD-フラクトースデヒドロゲナーゼ(DFDH)が効率よく反応するようにpH緩衝剤を添加するのが好ましい。
pH緩衝剤を用いる場合は、D-フラクトース デヒドロゲナーゼ(DFDH)の至適pHをも考慮する必要がある。pH緩衝剤としては、後述の実施例に用いるリン酸塩の組み合わせによる緩衝剤の他に例えば、リン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、フタル酸塩、およびグリシンの一種あるいは複数を含む緩衝剤を用いることができる。バッファの組成は、pHが合えば何を使用しても問題はない。使用する2種のバッファに合わせてそれらの比率を最適にすることが重要である。
その他、必要により用いられる界面活性剤としては、本発明の効果を損なわないものであればよく、例えばn−オクチル−β−D-チオグルコシド、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、コール酸ナトリウム、ドデシル−β−マルトシド、ジュークロースモノラウレート、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、N,N−ビス(3−D-グルコンアミドプロピル)デオキシコールアミドおよびポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルなどがあげられる。脂質を使用する場合、例えばレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質を用いるのが好ましく、特に両親媒性脂質を用いるのが好適である。
図1は、本発明における希少糖測定の反応経路である。D-プシコースはDTE(D-タガトース-3-エピメラーゼ)によってD-フルクトースに可逆的に変換(D-プシコース:D-フルクトース=1:3)される。次に、DTEによって変換されたD-フルクトースはDFDH(D-フルクトースデヒドロゲナーゼ)によって5-ケト-D-フルクトースへ転換される。この反応時に、電子伝達体(アクセプター)の受け取る電子を電気化学的に測定することによって、D-プシコースの測定が可能になる。
また、D-アロースは、LRI(L-ラムノースイソメラーゼ)によってD-プシコースへと変換されるため、3酵素反応経路を採用する事によって、D-アロースの測定も可能である。
電子伝達体としては、フェリシアン化カリウム、オスミウム−トリス(ビピリジニウム)やフェロセン誘導体などの金属錯体、p−ベンゾキノンなどのキノン誘導体、フェナジンメトサルフェートなどのフェナジニウム誘導体、メチレンブルーなどのフェノチアジニウム誘導体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸などがあげられる。これらの電子伝達体は、電極の周りに常に存在するように緩衝液Aと緩衝液Bに溶解した形態で用いるのが好ましい。実施例では、フェリシアン化カリウムを0.1Mの濃度で用いた。それより薄い濃度でも(例えば25mM程度)でもメディエータとして十分機能する。このような範囲で濃度を振っているのが各センサでは一般的といえる。また、電子伝達体はポリマーバックボーンに結合した形態、またはそれ自身の一部もしくは全部が高分子鎖を形成するような形態であってもよい(特許文献2参照)。電子伝達体は、これらの一種または二種以上が使用される。
図6のセンサシステムのポンプは、トーソー社製のHPLCポンプ2台を用いている。インジェクターはレオダイン社製、ステンレスラインで構築されているが、ピークチューブでも全く問題はない。カラムはテフロンチューブを切断したものを用いたが、GLサイエンスの空カラム(ステンレス製、既製品)を用いることができる。材質に関しては、それらに限定されることはない。実施例では直径2.1mM、長さ6センチを採用している。フローセル、カーボンペースト電極、参照電極、対極、カーボンペースト、電気化学測定装置、ソフトウエアは全てBAS社を使用している。DFDHはトーヨーボー(東洋紡)製である。ポンプ、スイッチングバルブは目的に合うサイズや性能のものであればなんでも良い。スイッチングをきちっとすることによって、感度、精度が格段にあがる。これに流速の比率をさまざまに変化させることによって各酵素の反応時間を確保して、さらに感度を上げることができる。
希少糖生産の根幹原料であるD-プシコースを迅速かつ高感度に測定、モニタリングすることを目的とした希少糖測定用新規バイオセンサを構築すること。
本センサの反応ストラテジーを図6に示す。本センサはD-プシコースを迅速かつ簡便に測定することと連続測定を念頭に置き、2ライン型スイッチングバルブ方式のMFIAシステムを採用する。
D-プシコースはDTEによってD-フルクトースに可逆的に変換(D-プシコース:D-フルクトース=1:3)される。このため、DTEによって変換されたD-フルクトースを効率よく高感度に測定することができれば、D-プシコースの測定が可能となる。
DFDHはアクセプターの存在下において、D-フルクトースを5-ケト-D-フルクトースに転換する酵素であるが、基質特異性が高く、D-フルクトース以外の各単糖には全く活性を示さない。さらに本発明者らは、DFDHが香川大学にて生産可能な全ての希少糖において活性を示さないことを明らかにしている。
反応は迅速かつ安定でした。最後から2番目にインジェクトしたプシコースは、DTEと反応させない状態でD-フルクトースを測定したものであり、電極応答は認められなかった。また、DTEのみを最後にインジェクトしたものも、電流応答は確認されなかった。この事より、DTEとプシコースは直接電極活性を有さないことが示された。
本センサは、バイオセンサの最も得意としている基質特異性の高い酵素を利用することによって、D-フルクトースを精度よく高感度に測定することができることが確認できた。
そこで、本センサでは2ライン型のスイッチングバルブ方式の流路を採用する(図6中央部)。測定したいサンプルを、DTE固定化カラムを装着した第一ラインからインジェクションし、DTEの最適な条件において効率よく反応させる。次に、反応が終了すると同時にスイッチングバルブを作動させ、DFDHに最適な条件に設定した第二ラインへ反応液を送液する。第二ラインは、第一ラインの緩衝液よりもイオン強度が高く設定されており、このことによって第二ラインの緩衝液が反応溶液中に少量混合されるだけでpHがDFDHの最適値へと変化する。
また、第一ラインと第二ラインの僅かな流速の違いを利用することによって、反応溶液をDFDHに最適なpHへより効率よく変化させることができる。その後、第二ラインに装着されたDFDH固定化CPE(カーボンペースト電極)表面にて反応液中のD-フルクトース量を測定することによって、サンプル中のD-プシコース量を測定することができる。
また、CPE表面には選択的透過性を示す膜を装着することによって、高分子夾雑物質の影響を防ぐ。本センサシステムの測定原理は、D-プシコースの測定だけではなく、性質の異なる2酵素を利用した様々な物質の測定についても、この原理を応用し、測定することができる画期的な流路システムである。
汎用性の高いセンサを開発することは、希少糖研究を加速させることに貢献することができる。本発明にて提案したMFIAシステムは、さらに流路系の開発を進展させることによってマイクロチップ型フロー式バイオセンサへの応用が十分に考えられる。マイクロチップ型フロー式バイオセンサの実用化段階においては、毛細管効果を利用した低コストの簡易型のセンサ開発について検討する。企業や各種研究機関において容易に短時間で高感度に測定できるセンサが利用されることによって希少糖の新規機能の発見等に十分貢献できる。
さらに、イズモリングによって示されている希少糖を含む各単糖同士の関係に着目し、他の希少糖の測定について検討する。本発明によって構築したD-プシコースセンサをさらに改良することによって、希少糖の一つであるD-アロースを測定するセンサを開発する。イズモリング上のD-アロースとD-プシコースは非常に近く位置しており、これらはL-ラムノースイソメラーゼによって転換される。つまり、本センサとL-ラムノースイソメラーゼとの最適条件を検討することによってD-アロースセンサの構築が可能である。D-アロースはHPLCによって測定することが非常に難しく、夾雑物質の影響によっては測定することができないが、D-プシコースセンサを改良したD-アロースセンサは、容易にその量を短時間で高感度に測定することができるため、開発価値の非常に高いセンサである。
本センサを用いた応用研究については以下の様に展開する。D-プシコース測定バイオセンサの検量線を作成した後、マウスより採取した血液とD-プシコースを用いて添加回収実験を行う。これにより、血液中の夾雑物質存在下におけるセンサ応答について確認する。
次にin Vitroの解析としてヒト末血リンパ球とD-プシコースをRPMI 1640培地中で24時間培養し、その培養上清のヒトリンパ腫由来U937細胞に対するD-プシコースの影響と残存するD-プシコース量との相関を本センサを用いてモニタリングする。その他、これまでに確認されたD-プシコース添加によって起こる様々な生物活性について、細胞内外のD-プシコース量の変化をモニタリングすることによって、細胞の代謝に与える影響について確認する。上記の処理を行ったU937細胞についてはその後の細胞増殖や、他の単糖に対する感受性変化についての基礎的知見を得る。
また、in Vivoの解析としては、健康なマウスにD-プシコースまたはD-アロースを投与し、一定期間血液を採取し、本センサを用いて血中希少糖の経時変化をモニタリングする。次にサルコーマ180腫瘍細胞等を用いた担癌マウスモデルを用いて、上記と同様な処理を行い血中の希少糖量の測定を行い、有効性が認められた際のD-プシコースの抗腫瘍活性における最適濃度について検討する。その際、各種抗腫瘍剤をip及び iv投与の他経口投与した場合の抗腫瘍効果と残存希少糖量をモニタリングし、その相関についても検討する。
例えば、バッファに関して、その組成が必ずリン酸バッファとクエン酸バッファでなくても大丈夫である。それぞれの酵素に対する最適なpHに合ってさえいれば、他の組成のバッファ、例えばGood バッファや、Tris-HClバッファ、酢酸バッファ等でも問題はない。インジェクション量も、サンプルによって様々なインジェクション量で作成した検量線を作成しておけば、センサとして機能することがわかる。
複数の性質の全く異なる酵素を使用し、イオン強度の差と流速に差を持たせたシステムに組み込む事によって、これらの酵素を連続反応を可能にさせたことで、これまでに迅速かつ簡便に検出することができなかった希少糖を測定するセンサが構築できた。希少糖測定バイオセンサとしては勿論のこと、通常のセンサとしても、これまでにないセンサが構築できたと言える。
右図Bは、インジェクション量を示している。インジェクトする量を絶対量を500μmolにして、溶かす量を5μlから100μlに変化させた結果である。このセンサ条件では、50μlが最も電流応答値が良かった。測定するサンプルが少なかったり、濃かったりする場合は、サンプルの条件に合わせたインジェクション量で検量線を作成すれば問題なく測定できる。迅速かつ簡便、高感度という3条件を満たすことができる設定として50μlを採用した。
右図Bは、センサシステムの流速を様々に変化させたときの電流応答値を示している。全て10mMを50μlインジェクトしている。流速が遅いほど反応効率が良く、高い電流応答値を示すが、とても時間がかかってしまう。例えば0.05ml/minでは、1サンプルにつき、20分程度かかってしまう。そのため、通常は1サンプル5分程度で測定が終了する流速を選択する。
今回のセンサシステムでは、0.2 ml/mlの設定を採用することにした。
1サンプル約5分で測定が終了する。カラムオーブンやバッファオーブン、メディエータの最適化等を行うことによって、検出感度は向上する。現時点での検量限界値は、0.09mMであったが、更にシステムの条件を最適化すれば、10μM程度までは測定可能である。
試料として用いた蒸留水、飲料A、B、Cのいずれの飲料水にも、D-プシコースは存在していない。それぞれの試料に10mMのD-プシコースを添加して試験をおこなったが、いずれも測定可能であった。結果を表1に示す。
図1の希少糖測定の反応経路を用いてD-アロースセンサを構築した。すなわち、D-アロースセンサは図1に示すD-アロースセンサの測定原理を用いる。D-アロースはL-ラムノースイソメラーゼを用いることによって、D-プシコースへと転換される。ここから先の反応はD-プシコースセンサと同様の測定原理を採用することによって、D-アロースを測定することが可能になる。
各濃度に調製したD-アロース溶液(20mM phosphate buffer, pH7.5に溶解)に酵素(LRI, 酵素濃度を20mg/mlに調製した溶液)を2μl入れて添加して、35℃で30分インキュベートしたものを実施例2のセンサシステムを用いて測定した。測定した結果を図13に示す。D-アロースの濃度依存的にセンサ電流応答が確認され、この測定原理が機能していることが確認できた。
これは、センサシステム構築に対する予備試験的な位置付けのデータである。フロー系の連続測定バイオセンシングシステムとしてD-アロースセンサ構築、あるいはその他の希少糖測定センサシステムの構築が可能であり、実施例1のセンサシステムに希少糖関連酵素をさらに搭載させることによって、他の希少糖も同様な形で測定できることがわかる。すなわち、複数の希少糖関連酵素を測定ターゲットに合わせて適応させることによって、「イズモリング」を構成するあらゆる希少糖の測定が可能であることがわかる。フロー変化プログラムや、温度条件の検討、マイクロ流路の最適化、そして、カラムスイッチングシステム(プログラム)の設定を行うことにより、有用なセンサとして機能させることができる。
Claims (10)
- 測定したい試料を第一ラインに向けてインジェクションするインジェクションポートを包含し、測定したい試料中に含まれる特定成分との直接反応で測定対象の基質を生成する酵素を固定化したカラムを装着した第一ライン、生成した測定対象の基質を他の化合物に変換する機能を有する物質を包含する電極系を構成する第二ライン、および第一ラインと第二ラインへの送液を切り換えるスイッチングバルブよりなる2ライン型スイッチングバルブ方式のマイクロフローにおいて、第一ライン用の緩衝液Aの容器がポンプ1とスイッチングバルブ1を介してインジェクションポートに、またはさらに他のスイッチングバルブ3を介して第二ラインに接続され、第二ライン用の緩衝液Bの容器がポンプ2とスイッチングバルブ2,3を介して第二ラインに、またはさらに他のスイッチングバルブ4を介してインジェクションポートに接続されることを特徴とするバイオセンサ。
- 緩衝液Aおよび緩衝液Bが電子伝達体を包含する請求項1に記載のバイオセンサ
。 - 上記電極系が、マイクロフローセルに配置された作用極および対極を含み、マイクロフローセルには測定対象の基質、緩衝液および電子伝達体を包含する反応液が送液される電極系である請求項1または2に記載のバイオセンサ
。 - 前記生成した測定対象の基質を他の化合物に変換する機能を有する物質が、前記作用極上またはその近傍に設けられた請求項3に記載のバイオセンサ。
- 特定成分がD-プシコースであり、測定対象の基質がD-フラクトースであり、D-プシコースとの直接反応でD-フラクトースを生成する酵素がD-タガトース-3-エピメラーゼ( DTE)であり、および生成したD-フラクトースを他の化合物に変換する機能を有する物質がD-フラクトース デヒドロゲナーゼ(DFDH)である請求項1ないし4のいずれかに記載のバイオセンサ。
- DTE固定化カラムを装着した第一ライン、DFDH固定化カーボンペースト電極(CPE)を装着した第二ラインよりなる請求項5に記載のバイオセンサ。
- 第一ラインの前に、D-アロースをD-プシコースに転換する酵素を固定化したカラムを装着したラインを設ける請求項6に記載のバイオセンサ。
- 上記CPE表面には選択的透過性を示す膜が装着されている請求項6または7に記載のバイオセンサ。
- 測定したい試料を、DTE固定化カラムを装着した第一ラインにインジェクションし、DTEの最適な条件において反応させ、次に、反応が終了すると同時にスイッチングバルブを作動させ、DFDHに最適な条件に設定した第二ラインへ反応液を送液し、第二ラインは、第一ラインの緩衝液よりもイオン強度が高く設定されており、このことによって第二ラインの緩衝液が反応溶液中に少量混合されるだけでpHがDFDHの最適値へと変化し、その後、第二ラインに装着されたDFDH固定化カーボンペースト電極表面にて反応液中のD-フルクトース量を測定することによって、サンプル中のD-プシコース量を測定する請求項5、6、7または8に記載のバイオセンサ。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載のバイオセンサを用いて血清、血漿、血液、汗、尿、細胞からなる群から選ばれる生体試料、医薬品・食品工業における原料または製品の試料中に含まれる特定成分を検出または定量する希少糖の検出または定量法。
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