JP4932663B2 - 二重らせん分子からなる人工二重らせん高分子の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、これらの点を改善して分子構造的に不揃いな部分を無くし、ほぼ完全に構造的に揃った相補的人工二重らせん高分子を製造する方法を提供する。
(1)2種類の異なる分子を会合させて相補的な二重らせん構造を有する会合体を予め形成させた後、これらを重合させることにより、相補的な人工の二重鎖らせん高分子を製造する方法。
(2)会合が塩橋によるものである前記(1)に記載の方法。
(3)相補的な二重らせん構造を有する会合体が、アミジン基を有する分子とカルボキシル基を有する分子の会合体である前記(1)又は(2)に記載の相補的な人工の二重らせん高分子を製造する方法。
(4)相補的二重らせん構造を有する会合体が、キラルなアミジン基を有する分子とカルボキシル基を有する分子の会合体である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の相補的な人工の二重らせん高分子を製造する方法。
(5)相補的二重らせん構造を有する会合体が、アミジン基とカルボキシル基とを有するメタ−ターフェニル誘導体からなる会合体である前記(2)〜(4)のいずれかに記載の相補的な人工の二重らせん高分子を製造する方法。
(6)メタ−ターフェニル誘導体の末端にアセチレン結合を有することを特徴とする前記(5)に記載の方法。
(7)メタ−ターフェニル1単位当たり1つ以上の炭化水素基を有する前記(5)又は(6)に記載の方法。
(8)メタ−ターフェニル1単位当たり2つ以上の炭化水素基を有する前記(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)炭化水素基の炭素数が2以上である前記(7)又は(8)に記載の方法。
(10)予め形成する二重鎖会合体の一方の分子である、カルボキシル基を有する分子のカルボキシル基が主鎖に直接結合している前記(3)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)予め形成する二重鎖会合体の一方の分子であるアミジン基を有する分子のアミジン基が、窒素に直接結合するフェニルエチル基、シクロヘキシ基、又はイソプロピル基のいずれかの置換基を有するアミジン基である前記(3)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(12)重合が、極性の低い溶媒中で重合するものである前記(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)極性の低い溶媒が、クロロホルム、塩化エチレン、トルエン、若しくはベンゼンのいずれか、又は、これらの混合物である前記(12)に記載の方法。
(14)極性の低い溶媒が、クロロホルム又は塩化エチレンである前記(12)又は(13)に記載の方法。
(15)重合が、80℃以下で重合することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)重合が、25℃以下で重合することを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17)重合が、金属を含有する触媒を用いて重合することを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18)重合が、触媒としてヨウ化銅又は燐が配位したパラジウムを用いて重合することを特徴とする前記(1)〜(17)に記載のいずれかの方法。
(19)重合が、弱塩基性のアミンの存在下で行われるものである前記(1)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20)弱塩基性のアミンが、テトラメチルエチレンジアミンである前記(19)に記載の方法。
(21)重合が、グレーサー(Glaser)カップリング法により重合するものである前記(1)〜(20)のいずれかに記載の方法。
以下、詳細に説明する。
で表されるメタ−ターフェニル誘導体が挙げられる。
で表されるメタ−ターフェニル誘導体が挙げられる。
一般式(1)及び(2)で表されるメタ−ターフェニル誘導体は、両末端にエチニル基を持ち、中央部のフェニル基のオルト位にカルボキシル基又はアミジン基が結合しているために回転障害が生じて軸不斉となりキラリティーを有するものである。
また、アミジン基の2個の窒素原子は、それぞれR3で示される炭素数1〜40、好ましくは6〜40の炭化水素基で置換されていてもよい。炭化水素基としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数6〜40、炭素数6〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2〜40、好ましくは炭素数6〜40、炭素数6〜20の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数2〜40、好ましくは炭素数6〜40、炭素数6〜20の直鎖状又は分枝状のアルキニル基;炭素数3〜40、好ましくは炭素数6〜40、炭素数6〜20の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6〜40、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1〜40のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアラルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられる。好ましいアミジン基の窒素原子における置換基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基などの炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられる。より好ましいアミジン基の窒素原子における置換基としては、例えば、フェニルエチル基や、シクロヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。一般的には、嵩高いフェニルエチル基を持つことが特に好ましい。
本発明における好ましい一般式(1)で表されるメタ−ターフェニル誘導体としては、次の式(3)、
また、本発明における好ましい一般式(2)で表されるメタ−ターフェニル誘導体としては、次の式(4)、
式(3)で表される(R)−1、及び式(4)で表される(R)−2は、中性域のpHで室温付近のような穏やかな条件の溶液中では、アミジニウム−カルボキシレート塩橋で会合体を形成して次の式(5)、
二重鎖モノマーの合成は、一般に知られた方法のいずれを選択しても構わない。一般的には、水素イオン濃度が大小極端に偏った溶液中や高温条件下では生成した二重鎖モノマーが解離しやすいため、穏やかな条件が選択される。例えば、二重鎖らせん分子(例えば、(R)−1・2)はアミジニウム−カルボキシレート塩橋で会合体を形成しており、酸性条件、強塩基性条件下や、高温条件下では相補鎖(R)−1及び(R)−2は解離する。よって(R)−1・2を二重鎖モノマーとして重合するためには、温和な条件で重合する必要がある。このような穏和な条件を満たすものとして、グレーサー(Glaser)カップリング反応があげられる。
Glaserカップリング反応は、末端エチニル基をカップリングさせる反応であって、触媒として少量のヨウ化銅を用い、テトラメチルエチレンジアミン存在下、室温で末端アセチレン誘導体からジアセチレン誘導体を生成する反応である。
本発明の方法において、原料化合物として前記した(R)−1及び(R)−2を用いてGlaserカップリング反応を利用した場合の反応式の例を次の反応式、
で示す。式中のTMEDAは、テトラメチルエチレンジアミンを示す。
次に二重鎖モノマーから高分子や超分子を製造する方法について述べる。
二重鎖モノマーから高分子や超分子を製造するには、反応中に、二重鎖モノマーが解離しないような条件が必要である。二重鎖モノマーが解離しない条件として、極性の低い溶媒で重合することが望ましい。好ましくはクロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒や、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶媒である。特に好ましくは、クロロホルム、塩化メチレンである。
アミジン鎖を有する(R)−2(89mg,0.085mmol)、カルボン酸鎖を有する(R)−1(73mg,0.085mmol)をクロロホルム中で混合し、溶媒を減圧留去して、相補的な二重鎖モノマー(R)−1・2を定量的に得た(162mg,0.085mmol,収率100% )。
窒素雰囲気下、前記(1)で製造した(R)−1・2(32mg,0.017mmol)とヨウ化銅(I)(1.1mg,0,006mmol)を塩化メチレン(0.30mL)中で混合し、そこにテトラメチレンエチレンジアミン(9.0mL,0.060mmol)を加えて、室温で36時間撹拌した。反応溶液を過剰のアセトニトリルに投入し、生じた沈殿を遠心分離により回収した。回収したポリマーをクロロホルムに溶解させ、メタノールにより再沈殿させ、生じた沈殿を遠心分離して回収した(21mg,0.011mmol,収率66%)。
図1に原料の(R)−1・2(図1の(a)、CDCl3、0.65mM、50℃)及び生成物のポリマー(図1の(b)、CDCl3、0.65mM、50℃)の1H−NMRのチャートを示す。図1の左上は、δ2〜4.5の部分を拡大表示したものである。
図2に生成物のポリマーの円二色性分散(以下、CDと略記)(図2の上段、CHCl3、0.1mM、25℃)、及び紫外可視近赤外分光スペクトル(以下、UV−Visと略記)(図2の下段、CHCl3、0.1mM、25℃)のチャートを示す。図2中の青色がモノマー(R)−1・2を示し、赤色はポリマー6を示す。
アミジン鎖を有する(R)−1(25mg,0.023mmol)をベンゼンに溶解させ、そこにカルボン酸鎖を有する(R)−2(20mg,0.023mmol)をベンゼンに溶解させたものを混合し、凍結乾燥させて、相補的な二重鎖モノマー(R)−1・2を定量的に得た(45mg,0.023mmol,収率100% )。
前記(1)で製造した(R)−1・2(32mg,0.017mmol)、ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウムジクロライド(1.1mg,0.0016mmol)、及びヨウ化銅(I)(0.3mg,0.0016mmol)をトルエン(0.22mL)中で混合し、そこにトリエチルアミン(22mL)を加えて、室温で30分撹拌した。反応溶液を過剰のアセトニトリルに投入し、生じた沈殿を遠心分離により回収した。回収したポリマーをクロロホルムに溶解させ、メタノールに再沈殿させ、生じた沈殿を遠心分離して回収した。
図3に原料の(R)−1・2(図3の下段)及び生成物のポリマー6(図3の上段)のサイズ排除クロマトグラフィー(以下SECと略記)(JAIGEL−1H:カラム20φ、600mm;JAIGEL−2H:カラム20φ、600mm;溶媒CHCl3、流速3.8mL/分)の結果を示す。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に2’−カルボキシ−4,4”−ビス(エチニル)−5’−(1−オクチニル)−1,1’:3’1”−ターフェニル(4)(100mg,0.189mmol)、1,4−ジヨード、2,5−ジオクチルベンゼン(105mg,0.189mmol),ヨー化第2銅(3.6mg,0.0189mmol),及びテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(22.0mg,0.0189mmol)を入れ、脱気したジ−イソ−プロピルアミンとトルエンの混合溶媒(容積比で3対7、3.8mL)を加えて60℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、その溶液をジエチルエーテルに加え、生じた高分子−Cを回収した(70mg,0.0846mmol,収率45% )。
1H−NMR及び13C−NMRにより分子構造を確認した。また、メチルエステル化した後、ゲル浸透性クロマトグラフィ(以下、GPCと略記)によりり分子量を求め、数平均分子量24,000、重量平均分子量83,000を得た。更に、元素分析の結果、計算通りの原子比であることが確かめられた。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に2’−[N,N’−ジ(1−フェニルエチルアミジノ)]−4,4”−ビス(エチニル)−1,1’:3’1”−ターフェニル (5)(30.0mg,0.0697mmol),1,4−ジヨード、2,5−ジオクチルベンゼン(38.6mg,0.0697mmol),ヨー化第2銅(0.65mg,0.0035mmol),及びテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(2.01mg,0.00174mmol)を入れ、脱気したジ−イソ−プロピルアミンとテトラヒドロフランの混合溶媒(容積比で3/7,2.8mL)を加えて60℃で12時間撹拌した。反応溶媒をアセトニトリルに加え、生じた沈殿を回収した。その沈殿をクロロホルムに溶解させ、1モル濃度の塩酸水溶液を加え、生じた高分子Aを回収した(37.0mg,0.0508mmol,収率73%)。
高分子−A(1.48mg,0,0018mg)と高分子−C(1.30mg,0,0018mg)をテトラヒドロフラン(18mL)中で混合し、溶媒を減圧留去し、二重鎖らせん高分子を定量的に得た。
つまり二本鎖らせん高分子はメンブレンフィルターの孔径より大きな会合体であると考えられる。さらに動的光散乱(以下、DLSと略称)により分子サイズを精査した結果、直径が107±34nmであった(図4参照)。高分子A、高分子C単独での直径は、分子量より推定すると数nmほどであり、二本鎖らせん高分子は非常に大きな会合体を形成していることが示された。鎖長の異なる高分子Aと高分子Cは、鎖長の違いによって会合にあずからなかった結合部位により、分子サイズの大きな二次コンプレックスを形成していると考えられる。
更に、例えば、HPLCのキラル検知・分取カラム、キラル蛍光センサー等の他、分子レベルでの混合が可能になる特徴を生かし、従来は酵素反応などの生体反応以外にはなし得なかった生物化学的な反応を低温域あるいは高温域で実施するなども可能になり、遺伝子情報に類似の情報伝達や増殖に似た自発反応の誘起も可能になる。また、安定な二重鎖構造とすることで、二重らせんポリマーからなるフィルムの弾性率や耐熱性、熱物性等の飛躍的な向上が期待できる。
Claims (15)
- キラルなアミジン基を有し末端にアセチレン結合を有するメタ−ターフェニル誘導体とカルボキシル基を有し末端にアセチレン結合を有するメタ−ターフェニル誘導体とを塩橋により会合させて相補的な二重らせん構造を有する会合体を予め形成させた後、これらを重合させることにより、相補的な人工の二重鎖らせん高分子を製造する方法。
- メタ−ターフェニル1単位当たり1つ以上の炭化水素基を有する請求項1に記載の方法。
- メタ−ターフェニル1単位当たり2つ以上の炭化水素基を有する請求項1又は2に記載の方法。
- 炭化水素基の炭素数が2以上である請求項2又は3に記載の方法。
- 予め形成する二重鎖会合体の一方の分子である、カルボキシル基を有する分子のカルボキシル基が主鎖に直接結合している請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 予め形成する二重鎖会合体の一方の分子であるアミジン基を有する分子のアミジン基が、窒素に直接結合するフェニルエチル基、シクロヘキシ基、又はイソプロピル基のいずれかの置換基を有するアミジン基である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 重合が、クロロホルム、塩化エチレン、トルエン、若しくはベンゼンのいずれか、又は、これらの混合物中で重合するものである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 極性の低い溶媒が、クロロホルム又は塩化エチレンである請求項7に記載の方法。
- 重合が、80℃以下で重合することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 重合が、25℃以下で重合することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 重合が、金属を含有する触媒を用いて重合することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
- 重合が、触媒としてヨウ化銅または燐が配位したパラジウムを用いて重合することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
- 重合が、弱塩基性のアミンの存在下で行われるものである請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
- 弱塩基性のアミンが、テトラメチルエチレンジアミンである請求項13に記載の方法。
- 重合が、グレーサー(Glaser)カップリング法により重合するものである請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
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